説明

インクジェット塗布用液晶配向剤

【課題】 液晶配向膜の性能と、インクジェット装置にて塗布された場合に良好な塗膜状態を実現する液晶配向剤を提供すること。
【解決手段】 アミック酸繰り返し単位およびそのイミド化繰り返し単位の少なくともいずれか一方を有する重合体とその溶媒であるN−メチルピロリドンとを含有するインクジェット塗布用液晶配向剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット印刷用液晶配向剤に関する。更に詳しくは、インクジェット印刷法により基板に塗布する際に優れた塗布安定性、膜厚均一性を示す液晶配向剤に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、透明導電膜が設けられている基板の当該表面にポリイミドなどからなる液晶配向膜を形成して液晶表示素子用の基板とし、その2枚を対向配置してその間隙内に液晶の層を形成してサンドイッチ構造のセルとし、この液晶表示素子をTFT駆動により動作させたいわゆるTFT液晶パネルが従来のブラウン管モニターにかわって広く普及しつつある。
【0003】
液晶表示素子としては、液晶として正の誘電異方性を有するネマティック型液晶を用い、液晶分子の長軸が一方の基板から他方の基板に向かって連続的に90度捻れるようにした、いわゆるTN(Twisted Nematic)型液晶セルを有するTN型液晶表示素子が知られている。また、TN型液晶表示素子に比してコントラストが高くて、その視角依存性の少ないSTN(Super Twisted Nematic)型液晶表示素子や、垂直配向型液晶表示素子、及び横電界駆動型液晶表示素子が開発されている。
【0004】
これらの液晶表示素子において液晶の配向を制御しているのが液晶配向膜である。液晶配向膜は、ポリイミドの前駆体であるポリアミック酸溶液や、溶剤に可溶なポリイミド溶液などからなる液晶配向剤を、フレキソ印刷法により基板に塗布し、これを焼成して樹脂膜を形成し、これに液晶配向能を付与して得られる。
【0005】
しかし近年、フレキソ印刷法では基板に応じて印刷版を取り替えなければならないなど、印刷版のメンテナンスの煩雑さが問題視されてきていることから、インクジェット印刷法が注目されている。インクジェット印刷法では、印刷版のメンテナンスフリー、印刷のパターン設定が自由なことなどのメリットがあり、液晶パネルのコストダウン、歩留まり改善が期待されている。
【0006】
液晶配向剤には、液晶の配向規制力の他、電圧保持特性、低残像特性、高信頼性などの性能が必要である。また、液晶表示素子の種類によって、任意のプレチルト角(液晶分子の基板に対する傾斜角)発現性が必要となる。一方、インクジェット印刷法は液晶パネルのコストダウン、歩留まり改善が可能であるなどのメリットがあるが、特許文献1および特許文献2に提案されている液晶配向剤では、吐出安定性は実現されるものの、膜厚均一性、膜エッジのシャープネスが不十分であるという問題点があった。さらに、特許文献2では、ノズルの材質の制限上、N−メチルピロリドンを含有せず、γ−ブチロラクトンとブチロセロソルブの少なくとも少なくとも1種を含有し、その合計含有量が溶剤全体に対して90重量%以上含有されなければならないことが開示されているが、昨今のノズルの材質改良の結果、N−メチルピロリドンを含有する液晶配向剤を用いても犯されないノズルが開発されている。一方インクジェット塗布法にて膜厚均一性、膜エッジのシャープネスを実際の液晶ディスプレイの品質を満足するまで、向上させるためには、γ−ブチロラクトンとブチロセロソルブの少なくとも少なくとも1種を含有し、その合計含有量が溶剤全体に対して90重量%以上含有する液晶配向剤では不十分であった。
【0007】
また、インクジェット塗布法においては、微細なノズルから液晶配向剤を高速で噴出させる必要があり、液晶配向剤の粘度特性が重要なファクターとなる。すなわち、溶液に強い外力がかかったときの抵抗が少なく流動性に優れることが必要である。また、基板に着弾後の液滴形状の制御のため、溶液の表面張力と粘度特性が重要なファクターとなる。これらを最適な値に制御することにより、焼成後の膜の表面均一性を確保でき、安定した性能を持つ液晶配向膜を得ることが出来る。液晶配向剤は用途・目的に応じて焼成後の膜厚の制御が必要となるが、この制御法の一つとして固形分濃度の調節が挙げられる。固形分濃度の制御は通常、粘度特性・表面張力特性に影響を及ぼすが、これらの特性を維持しつつ固形分濃度を調整することが必要となる。
【0008】
他方、液晶配向膜としての要求性能は、ますます高度になってきており、高電圧保持率、高液晶配向性、低残留DCなどが要求されている。
【特許文献1】特開2000−204250号公報
【特許文献2】特開2003−215915号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上の状況から鋭意研究を進めた結果、本発明では、特定の構造を有するポリマーと特定の溶剤を混合することにより、固形分濃度・粘度特性・表面張力特性、含有溶剤特性をコントロールし、インクジェット印刷装置における膜厚均一性、膜エッジのシャープネスに優れ、且つ高性能な液晶パネルをもたらす液晶配向剤の製造に成功し、本発明に到達した。
【0010】
すなわち、本発明の目的は、液晶配向膜の性能と、インクジェット装置にて塗布された場合に良好な塗膜状態を実現する液晶配向剤を提供することにある。
【0011】
本発明のさらに他の目的および利点は、以下の説明から明らかになろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、本発明の上記目的および利点は、下記式(I−1)で表される繰り返し単位および下記式(I−2)で表される繰り返し単位よりなる群から選ばれる少なくとも一種の繰り返し単位を有する重合体およびその溶媒としてのN−メチルピロリドンとを含有することを特徴とするインクジェット塗布用液晶配向剤により達成される。
【0013】
【化1】

【0014】
(式中、Q1 は2価の有機基でありそしてP1は4価の有機基である。但しP1の少なくとも一部は下記式(I−3)で表わされる基である)
【0015】
【化2】

【0016】
(式中、Q2 は2価の有機基でありそしてP2は4価の有機基である。但しP2の少なくとも一部は下記式(I−3)で表わされる基である)
【0017】
【化3】

【発明の効果】
【0018】
本発明の液晶配向膜によれば、インクジェット印刷法を用いて優れた液晶表示素子を作成することができる。
【0019】
本発明の液晶配向膜を有する液晶表示素子は、TN型、STN型、及びVA型液晶表示素子に好適に使用できる以外に、使用する液晶を選択することにより、SH(Super Homeotropic)型、IPS(In−Plane Switching)型、OCB(Optically Compensated Bend)型、強誘電性および反強誘電性の液晶表示素子などにも好適に使用することができる。
【0020】
さらに、本発明の液晶配向膜を有する液晶表示素子は、種々の装置に有効に使用でき、例えば卓上計算機、腕時計、置時計、計数表示板、ワードプロセッサ、パーソナルコンピューター、液晶テレビなどの表示装置に用いられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0022】
本発明の液晶配向剤は、上記重合体成分が、溶剤に溶解されて構成される。本発明における重合体成分としては、上記式(I−1)で表される繰り返し単位を有するポリアミック酸、上記式(I−2)で表される繰り返し単位を有するイミド化重合体、上記式(I−1)で表される繰り返し単位を有するアミック酸プレポリマーと上記式(I−2)で表される繰り返し単位を有するイミド化プレポリマーとを有してなるブロック共重合体などが挙げられ、これらは単独で用いても二種以上を組み合わせて用いてもよい。二種以上を組み合わせて用いる場合には、ポリアミック酸とイミド化重合体とを混合して用いることが好ましい。
【0023】
上記において、ポリアミック酸は、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させて得られ、イミド化重合体は、上記ポリアミック酸を脱水閉環させて得られる。なお、イミド化重合体は、繰り返し単位の100%が脱水閉環していなくてもよく、全繰り返し単位におけるイミド環を有する繰り返し単位の割合(以下、「イミド化率」ともいう)が100%未満のものであってもよい。
【0024】
上記式(I−1)におけるP1および上記式(I−2)におけるP2はいずれも4価の有機基である。かかる4価有機基の少なくとも1部すなわち1部ないし全部は上記式(I−3)で表わされる4価の有機基である。P1およびP2はテトラカルボン酸二無水物に由来し、テトラカルボン酸二無水物から2つの無水物基を除去した基に相当する。上記式(I−3)で表わされる4価の有機基は2,3,4−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物に由来する。
【0025】
また、上記式(I−1)におけるQ1および上記式(I−2)におけるQ2はいずれも2価の有機基である。Q1およびQ2はジアミンに由来し、ジアミンから2つのアミノ基を除去した基に相当する。
【0026】
<テトラカルボン酸二無水物>
ポリアミック酸の合成に用いられるテトラカルボン酸二無水物は、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物あるいはそれと、他のテトラカルボン酸二無水物との組合せである。他のテトラカルボン酸二無水物の具体例としては、例えば、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジクロロ−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−テトラメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジシクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物、シス−3,7−ジブチルシクロオクタ−1,5−ジエン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、3,5,6−トリカルボニル−2−カルボキシノルボルナン−2:3,5:6−ジ無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−メチル−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−エチル−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−7−メチル−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−7−エチル−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−エチル−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5,8−ジメチル−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、3−オキサビシクロ[3,2,1]オクタン−2,4−ジオン−6−スピロ−3’−(テトラヒドロフラン−2’,5’−ジオン)、下記式(I)および(II)で表される化合物などの脂環式テトラカルボン酸二無水物;
【0027】
【化4】

【0028】
(式中、R3およびR6は、芳香環を有する2価の有機基を示し、R4およびR5は、水素原子またはアルキル基を示し、複数存在するR4およびR5は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。)
ブタンテトラカルボン酸二無水物などの脂肪族テトラカルボン酸二無水物;
ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、3,3’,4,4’−パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド二無水物、p−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、m−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルエーテル二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルメタン二無水物、エチレングリコール−ビス(アンヒドロトリメリテート)、プロピレングリコール−ビス(アンヒドロトリメリテート)、1,4−ブタンジオール−ビス(アンヒドロトリメリテート)、1,6−ヘキサンジオール−ビス(アンヒドロトリメリテート)、1,8−オクタンジオール−ビス(アンヒドロトリメリテート)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン−ビス(アンヒドロトリメリテート)、下記式(1)〜(4)で表されるステロイド骨格を有する芳香族テトラカルボン酸二無水物などの芳香族テトラカルボン酸二無水物を挙げることができる。これらのテトラカルボン酸二無水物は1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
【0029】
【化5】

【0030】
これらのその他のテトラカルボン酸二無水物のうち、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−テトラメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、シス−3,7−ジブチルシクロオクタ−1,5−ジエン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、3,5,6−トリカルボニル−2−カルボキシノルボルナン−2:3,5:6−ジ無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5,8−ジメチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、ビシクロ[2,2,2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、3−オキサビシクロ[3,2,1]オクタン−2,4−ジオン−6−スピロ−3’−(テトラヒドロフラン−2’,5’−ジオン)、上記式(I)で表される化合物のうち下記式(5)〜(7)のそれぞれで表される化合物、上記式(II)で表される化合物のうち下記式(8)で表される化合物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物が好ましく、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、ピロメリット酸二無水物がさらに好ましい。これらのその他テトラカルボン酸二無水物は1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
【0031】
【化6】

【0032】
2,3,5−トリカルボキシシクロベンチル酢酸二無水物の全テトラカルボン酸二無水物に対する使用割合は、少なくとも1モル%が好ましく20〜100モル%がさらに好ましく、50〜100モル%が特に好ましい
【0033】
<ジアミン>
ポリアミック酸の合成に用いられるジアミンとしては、例えば、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノベンズアニリド、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、1,5−ジアミノナフタレン、3,3−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、5−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、6−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)−10−ヒドロアントラセン、2,7−ジアミノフルオレン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、4,4’−メチレン−ビス(2−クロロアニリン)、2,2’,5,5’−テトラクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジクロロ−4,4’−ジアミノ−5,5’−ジメトキシビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、1,4,4’−(p−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、2,2’−ビス[4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、4,4’−ビス[(4−アミノ−2−トリフルオロメチル)フェノキシ]−オクタフルオロビフェニルなどの芳香族ジアミン;
1,1−メタキシリレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、4,4−ジアミノヘプタメチレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン、テトラヒドロジシクロペンタジエニレンジアミン、ヘキサヒドロ−4,7−メタノインダニレンジメチレンジアミン、トリシクロ[6.2.1.02,7]−ウンデシレンジメチルジアミン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)などの脂肪族および脂環式ジアミン;
2,3−ジアミノピリジン、2,6−ジアミノピリジン、3,4−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノピリミジン、5,6−ジアミノ−2,3−ジシアノピラジン、5,6−ジアミノ−2,4−ジヒドロキシピリミジン、2,4−ジアミノ−6−ジメチルアミノ−1,3,5−トリアジン、1,4−ビス(3−アミノプロピル)ピペラジン、2,4−ジアミノ−6−イソプロポキシ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−メトキシ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−フェニル−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−メチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−1,3,5−トリアジン、4,6−ジアミノ−2−ビニル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−5−フェニルチアゾール、2,6−ジアミノプリン、5,6−ジアミノ−1,3−ジメチルウラシル、3,5−ジアミノ−1,2,4−トリアゾール、6,9−ジアミノ−2−エトキシアクリジンラクテート、3,8−ジアミノ−6−フェニルフェナントリジン、1,4−ジアミノピペラジン、3,6−ジアミノアクリジン、ビス(4−アミノフェニル)フェニルアミンなどの、分子内に2つの1級アミノ基および該1級アミノ基以外の窒素原子を有するジアミン;
下記式(III)で表されるジアミノオルガノシロキサンなどが挙げられる。これらのジアミンは、単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0034】
【化7】

【0035】
(式中、Rは炭素数1〜12の炭化水素基を示し、複数存在するRは、それぞれ同一でも異なっていてもよく、pは1〜3の整数であり、qは1〜20の整数である。)
これらのうちp−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、1,5−ジアミノナフタレン、2,7−ジアミノフルオレン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、1,4−シクロヘキサンジアミン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,6−ジアミノピリジン、3,4−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノピリミジン、3,6−ジアミノアクリジンなどが好ましい。
【0036】
本発明の液晶配向剤に有効なプレチルト角発現性を持たせるためには、上記式(I−1)におけるQおよび/または上記式(I−2)におけるQの1部または全部が下記式(Q−1)および下記式(Q−2)で表される少なくとも一種の基であるように下記式(Q−1)または下記式(Q−2)のそれぞれで表される基を有するジアミン(以下、「特定ジアミン」ともいう)を用いるのが好ましい。これらの特定ジアミンは1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
【0037】
【化8】

【0038】
(式中、Xは、単結合、−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、−NHCO−、−CONH−、−S−またはアリーレン基であり、R1は、炭素数10〜20のアルキル基、炭素数4〜40の脂環式骨格を有する1価の有機基または炭素数6〜20のフッ素原子を有する1価の有機基である。)
【0039】
【化9】

【0040】
(式中、2つのXは、それぞれ独立に単結合、−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、−NHCO−、−CONH−、−S−またはアリーレン基であり、R2 は、炭素数4〜40の脂環式骨格を有する2価の有機基である。)
上記式(Q−1)において、R1で表される炭素数10〜20のアルキル基としては、例えば、n−デシル基、n−ドデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−オクタデシル基、n−エイコシル基などが挙げられる。
【0041】
また、上記式(Q−1)におけるR1および上記式(Q−2)におけるR2で表される炭素数4〜40の脂環式骨格を有する有機基としては、例えば、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロデカンなどのシクロアルカン由来の脂環式骨格を有する基;コレステロール、コレスタノールなどのステロイド骨格を有する基;ノルボルネン、アダマンタンなどの有橋脂環式骨格を有する基などが挙げられる。これらの中で、特に好ましくはステロイド骨格を有する基である。上記脂環式骨格を有する有機基は、ハロゲン原子、好ましくはフッ素原子や、フルオロアルキル基、好ましくはトリフルオロメチル基で置換された基であってもよい。
【0042】
さらに、上記式(Q−1)におけるR1で表される炭素数6〜20のフッ素原子を有する基としては、例えば、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基などの炭素数6以上の直鎖状アルキル基;シクロヘキシル基、シクロオクチル基などの炭素数6以上の脂環式炭化水素基;フェニル基、ビフェニル基などの炭素数6以上の芳香族炭化水素基などの有機基における水素原子の1部または全部を、フッ素原子またはトリフルオロメチル基などのフルオロアルキル基で置換した基が挙げられる。
【0043】
また、上記式(Q−1)および上記式(Q−2)におけるXは、単結合、−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、−NHCO−、−CONH−、−S−またはアリーレン基である。アリーレン基としては、例えばフェニレン基、トリレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基などが挙げられる。これらのうち、特に好ましくは、−O−、−COO−、−OCO−で表される基である。
【0044】
上記式(Q−1)で表される基を有するジアミンの具体例としては、ドデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、ペンタデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、ヘキサデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、オクタデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、下記式(9)〜(14)で表される化合物を好ましいものとして挙げることができる。
【0045】
【化10】

【0046】
また、上記式(Q−2)で表される基を有するジアミンの具体例としては、下記式(15)〜(17)で表されるジアミンを好ましいものとして挙げることができる。
【0047】
【化11】

【0048】
これらのうち、特に好ましいものとしては、上記式(9)、(10)、(13)、(14)、(15)で表される化合物である。
【0049】
特定ジアミンの全ジアミン量に対する使用割合は、発現させたいプレチルト角の大きさによっても異なるが、TN型、STN型液晶表示素子の場合には0〜5モル%、垂直配向型液晶表示素子の場合には5〜100モル%が好ましい。
【0050】
<ポリアミック酸の合成>
ポリアミック酸の合成反応に供されるテトラカルボン酸二無水物とジアミンの使用割合は、ジアミンのアミノ基1当量に対して、テトラカルボン酸二無水物の酸無水物基が0.2〜2当量となる割合が好ましく、さらに好ましくは0.3〜1.2当量となる割合である。
【0051】
ポリアミック酸の合成反応は、有機溶媒中において、例えば−20℃〜150℃、好ましくは0〜100℃の温度条件下で行われる。
【0052】
ここで、有機溶媒としては、合成されるポリアミック酸を溶解できるものであれば特に制限はなく、例えばN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルトリアミドなどの非プロトン系極性溶媒;m−クレゾール、キシレノール、フェノール、ハロゲン化フェノールなどのフェノール系溶媒を挙げることができる。また、有機溶媒の使用量(α)は、テトラカルボン酸二無水物およびジアミン化合物の総量(β)が、反応溶液の全量(α+β)に対して0.1〜30重量%になるような量であることが好ましい。
【0053】
なお、上記有機溶媒には、ポリアミック酸の貧溶媒であるアルコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類、ハロゲン化炭化水素類、炭化水素類などを、生成するポリアミック酸が析出しない範囲で併用することができる。かかる貧溶媒の具体例としては、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、シクロヘキサノール、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン(ジアセトンアルコール)、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エチル、乳酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルメトキシプロピオネ−ト、エチルエトキシプロピオネ−ト、シュウ酸ジエチル、マロン酸ジエチル、ジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコール−n−プロピルエーテル、エチレングリコール−i−プロピルエーテル、エチレングリコール−n−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,4−ジクロロブタン、トリクロロエタン、クロルベンゼン、o−ジクロルベンゼン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどを挙げることができる。
【0054】
以上のようにして、ポリアミック酸を溶解してなる反応溶液が得られる。そして、この反応溶液を大量の貧溶媒中に注いで析出物を得、この析出物を減圧下で乾燥することによりポリアミック酸を得ることができる。また、このポリアミック酸を再び有機溶媒に溶解させ、次いで貧溶媒で析出させる工程を1回または数回行うことにより、ポリアミック酸を精製することができる。
【0055】
<イミド化重合体の合成>
イミド化重合体は、上記ポリアミック酸の1部または全部を脱水閉環することにより合成することができる。好ましいイミド化率は40モル%以上、特に好ましくは70モル%以上である。イミド化率が40モル%以上の重合体を用いることによって、残像消去時間の短い液晶配向膜が形成可能な液晶配向剤が得られる。
【0056】
ポリアミック酸の脱水閉環は、(i)ポリアミック酸を加熱する方法により、または(ii)ポリアミック酸を有機溶媒に溶解し、この溶液中に脱水剤および脱水閉環触媒を添加し必要に応じて加熱する方法により行われる。
【0057】
上記(i)のポリアミック酸を加熱する方法における反応温度は、好ましくは50〜200℃であり、より好ましくは60〜170℃である。反応温度が50℃未満では脱水閉環反応が十分に進行せず、反応温度が200℃を超えると得られるイミド化重合体の分子量が低下することがある。
【0058】
一方、上記(ii)のポリアミック酸の溶液中に脱水剤および脱水閉環触媒を添加する方法において、脱水剤としては、例えば無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸などの酸無水物を用いることができる。脱水剤の使用量は、所望するイミド化率によるが、ポリアミック酸の繰り返し単位1モルに対して0.01〜20モルとするのが好ましい。また、脱水閉環触媒としては、例えばピリジン、コリジン、ルチジン、トリエチルアミンなどの3級アミンを用いることができる。しかし、これらに限定されるものではない。脱水閉環触媒の使用量は、使用する脱水剤1モルに対して0.01〜10モルとするのが好ましい。イミド化率は上記の脱水剤、脱水閉環剤の使用量が多いほど高くすることができる。なお、脱水閉環反応に用いられる有機溶媒としては、ポリアミック酸の合成に用いられるものとして例示した有機溶媒を挙げることができる。そして、脱水閉環反応の反応温度は、好ましくは0〜180℃であり、より好ましくは10〜150℃である。また、このようにして得られる反応溶液に対し、ポリアミック酸の精製方法におけると同様の操作を行うことにより、得られたイミド化重合体を精製することができる。
【0059】
<末端修飾型の重合体>
本発明で用いられる重合体は、分子量が調節された末端修飾型のものであってもよい。この末端修飾型の重合体を用いることにより、本発明の効果が損われることなく液晶配向剤の塗布特性などを改善することができる。このような末端修飾型の重合体は、ポリアミック酸を合成する際に、酸一無水物、モノアミン化合物、モノイソシアネート化合物などを反応系に添加することにより合成することができる。ここで、酸一無水物としては、例えば無水マレイン酸、無水フタル酸、無水イタコン酸、n−デシルサクシニック酸無水物、n−ドデシルサクシニック酸無水物、n−テトラデシルサクシニック酸無水物、n−ヘキサデシルサクシニック酸無水物などを挙げることができる。また、モノアミン化合物としては、例えばアニリン、シクロヘキシルアミン、n−ブチルアミン、n−ペンチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、n−ノニルアミン、n−デシルアミン、n−ウンデシルアミン、n−ドデシルアミン、n−トリデシルアミン、n−テトラデシルアミン、n−ペンタデシルアミン、n−ヘキサデシルアミン、n−ヘプタデシルアミン、n−オクタデシルアミン、n−エイコシルアミンなどを挙げることができる。また、モノイソシアネート化合物としては、例えばフェニルイソシアネート、ナフチルイソシアネートなどを挙げることができる。
【0060】
<重合体の粘度>
以上のようにして得られる重合体の粘度(η)の値は、固形分濃度が1〜5重量%の範囲内で、5〜15mPa・sの範囲にあることが好ましい。
【0061】
<ブロック共重合体>
本発明に用いられる重合体成分としての上述したブロック共重合体は、末端にアミノ基または酸無水物基を有するアミック酸プレポリマーと、末端に酸無水物基またはアミノ基を有するイミド化プレポリマーとをそれぞれ合成し、各プレポリマーの末端のアミノ基と酸無水物基を結合させることにより、ブロック共重合体を得ることができる。アミック酸プレポリマーの合成方法は、上述したポリアミック酸の合成方法と同様であり、イミド化プレポリマーの合成方法は、上述したイミド化重合体の合成方法と同様である。また、末端に有する官能基の選択は、ポリアミック酸合成時のテトラカルボン酸二無水物とジアミンの量を調整することにより行うことができる。
【0062】
<液晶配向剤>
本発明の液晶配向剤は、上記重合体成分が、溶剤中に溶解含有されて構成される。溶剤としては、有機溶媒が用いられる。
【0063】
本発明の液晶配向剤を調製する際の温度は、好ましくは、0℃〜200℃、より好ましくは20℃〜60℃である。
【0064】
本発明の液晶配向剤を構成する有機溶媒としては、N−メチルピロリドンおよびそれとポリアミック酸の合成反応に用いられるものとして例示したその他の溶媒との混合物を挙げることができ、さらにポリアミック酸の合成反応の際に併用することができるものとして例示した貧溶媒も適宜選択して併用することができる。特に、N−メチル−2−ピロリドン、またはN−メチル−2−ピロリドンγ−ブチロラクトンおよび/またはブチルセロソルブの混合物を用いることが好ましい。また、これらの混合溶媒とその他の貧溶媒を混合して用いることもできる。このとき、N-メチル−2−ピロリドンの含有量は溶媒全体に対して10重量%以上である。好ましくは、ブチルセロソルブを溶媒全体に対して、好ましくは5重量%以上、特に好ましくは10重量%以上で含する。
【0065】
本発明の液晶配向剤における固形分濃度は、粘性、揮発性などを考慮して選択され、好ましくは1〜5重量%の範囲である。すなわち、本発明の液晶配向剤は、基板表面に塗布され、液晶配向膜となる塗膜が形成されるが、固形分濃度が下限未満である場合には、この塗膜の膜厚が過小となって良好な液晶配向膜を得ることができず、固形分濃度が上限を超える場合には、インクジェット塗布装置からの吐出安定性が乏しくなる。
【0066】
<接着助剤>
本発明の液晶配向剤には、基板表面に対する接着性を向上させる観点から、官能性シラン含有化合物またはエポキシ基含有化合物が含有されていてもよい。かかる官能性シラン含有化合物としては、例えば3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、N−トリメトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、10−トリメトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、10−トリエトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリエトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリエトキシシランなどを挙げることができる。
【0067】
また、エポキシ基含有化合物としては、例えばエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、2,2−ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,3,5,6−テトラグリシジル−2,4−ヘキサンジオール、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4、4’−ジアミノジフェニルメタンなどを好ましいものとして挙げることができる。これら官能性シラン含有化合物やエポキシ基含有化合物の配合割合は、重合体100重量部に対して、好ましくは、40重量部以下、より好ましくは0.1〜30重量部である。
【0068】
<液晶表示素子>
本発明の液晶配向剤を用いて得られる液晶表示素子は、例えば次の方法によって製造することができる。
(1)パターニングされた透明導電膜が設けられている基板の一面に、本発明の液晶配向剤をインクジェット印刷法により塗布し、次いで、塗布面を加熱することにより塗膜を形成する。
【0069】
ここに、基板としては、例えばフロートガラス、ソーダガラスなどのガラス;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネートなどのプラスチックからなる透明基板を用いることができる。基板の一面に設けられる透明導電膜としては、酸化スズ(SnO2)からなるNESA膜(米国PPG社登録商標)、酸化インジウム−酸化スズ(In23−SnO2)からなるITO膜などを用いることができ、これらの透明導電膜のパターニングには、フォト・エッチング法や予めマスクを用いる方法が用いられる。液晶配向剤の塗布に際しては、基板表面および透明導電膜と塗膜との接着性をさらに良好にするために、基板の該表面に、官能性シラン含有化合物、官能性チタン含有化合物などを予め塗布することもできる。
【0070】
液晶配向剤塗布後の加熱温度は、好ましくは80〜300℃であり、より好ましくは120〜250℃である。なお、ポリアミック酸を含有する本発明の液晶配向剤は、塗布後に有機溶媒を除去することによって配向膜となる塗膜を形成するが、さらに加熱することによって脱水閉環を進行させ、よりイミド化された塗膜とすることもできる。形成される塗膜の膜厚は、好ましくは0.001〜1μmであり、より好ましくは0.005〜0.5μmである。
(2)形成された塗膜面を、例えばナイロン、レーヨン、コットンなどの繊維からなる布を巻き付けたロールで一定方向に擦るラビング処理を行う。これにより、液晶分子の配向能が塗膜に付与されて液晶配向膜となる。
【0071】
また、本発明の液晶配向剤により形成された液晶配向膜に、例えば特開平6−222366号公報や特開平6−281937号公報に示されているような、紫外線を部分的に照射することによってプレチルト角を変化させるような処理、あるいは特開平5−107544号公報に示されているような、ラビング処理を施した液晶配向膜表面にレジスト膜を部分的に形成し、先のラビング処理と異なる方向にラビング処理を行った後にレジスト膜を除去して、液晶配向膜の液晶配向能を変化させるような処理を行うことによって、液晶表示素子の視界特性を改善することが可能である。また垂直配向膜の場合には上記ラビング処理は必要なく、液晶分子の傾倒方向を制御する為の突起やパターニング電極を設けた基板上に塗布され加熱処理される。
(3)上記のようにして液晶配向膜が形成された基板を2枚作製し、TN配向膜であれば、それぞれの液晶配向膜におけるラビング方向が直交または逆平行となるように、2枚の基板を、間隙(セルギャップ)を介して対向配置し、2枚の基板の周辺部をシール剤を用いて貼り合わせ、基板表面およびシール剤により区画されたセルギャップ内に液晶を注入充填し、注入孔を封止して液晶セルを構成する。そして、液晶セルの外表面、すなわち、液晶セルを構成するそれぞれの基板の他面側に、偏光板を、その偏光方向が当該基板の一面に形成された液晶配向膜のラビング方向と一致または直交するように貼り合わせることにより、液晶表示素子が得られる。
【0072】
ここに、シール剤としては、例えば硬化剤およびスペーサーとしての酸化アルミニウム球を含有するエポキシ樹脂などを用いることができる。
【0073】
液晶としては、ネマティック型液晶およびスメクティック型液晶を挙げることができる。その中でもネマティック型液晶が好ましく、例えばシッフベース系液晶、アゾキシ系液晶、ビフェニル系液晶、フェニルシクロヘキサン系液晶、エステル系液晶、ターフェニル系液晶、ビフェニルシクロヘキサン系液晶、ピリミジン系液晶、ジオキサン系液晶、ビシクロオクタン系液晶、キュバン系液晶などを用いることができる。また、これらの液晶に、例えばコレスチルクロライド、コレステリルノナエート、コレステリルカーボネートなどのコレステリック型液晶や商品名「C−15」「CB−15」(メルク社製)として販売されているようなカイラル剤などを添加して使用することもできる。さらに、p−デシロキシベンジリデン−p−アミノ−2−メチルブチルシンナメートなどの強誘電性液晶も使用することができる。
【0074】
また、液晶セルの外表面に貼り合わされる偏光板としては、ポリビニルアルコールを延伸配向させながら、ヨウ素を吸収させたH膜と称される偏光膜を酢酸セルロース保護膜で挟んだ偏光板またはH膜そのものからなる偏光板を挙げることができる。
【実施例】
【0075】
以下、本発明を実施例により、さらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
【0076】
実施例における評価方法を下記に示す。
【0077】
[液晶配向剤のインクジェット塗布性]
固形分濃度を3重量%に調製した液晶配向剤を、JET−CM連続式インクジェットプリンター(紀州技研工業(株)製)の装置を用いて、ITO基板上へ乾燥膜厚が60nmとなる液量で塗布した。次いで230℃で乾燥させ、乾燥膜の凹凸を触針式膜厚計で測定し、最大膜厚と最低膜厚の差が7nm以下のときを良好と判定した。この液量と塗布圧を一定とし、乾燥膜厚の調整は液晶配向剤の固形分濃度を調整することにより行った。
【0078】
[表面張力測定]
CBUP SURFACE TENSIOMETER A1(協和科学(株)製)の表面張力測定装置を用いて測定を行った。
【0079】
[粘度測定]
VISCOMETER RE100(東機産業(株)製)のE型粘度測定装置を用いて測定した。
【0080】
[液晶の配向性]
液晶表示素子に電圧をオン・オフ(印加・解除)したときの異常ドメインの有無を偏光顕微鏡で観察し、異常ドメインのない場合を良好と判定した。
【0081】
[液晶表示素子の電圧保持率]
液晶表示素子に5Vの電圧を60マイクロ秒の印加時間、167ミリ秒のスパンで印加した後、印加解除から167ミリ秒後の電圧保持率を測定した。測定装置は(株)東陽テクニカ製VHR−1を使用した。
【0082】
[残像消去時間]
液晶表示素子に10Vの直流電圧を2時間印加した後、当該電圧の印加を解除し、表示画面を目視により観察して、電圧の印加を解除してから画面上の残像が消去されるまでの時間を測定した。
【0083】
<合成例1〜21>
N−メチル−2−ピロリドンに、表1〜2に示す化合物を、括弧内に示すモル比で、ジアミン、テトラカルボン酸二無水物の順で加え、固形分濃度20%で室温で6時間反応させた。
【0084】
【表1】

【0085】
【表2】

【0086】
TCA:2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物
CB:1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物
PMA:ピロメリット酸二無水物
MTDA:1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−メチル−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン
PDA:p−フェニレンジアミン
DDM:4,4’−ジアミノジフェニルメタン
MTB:2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル
ODA:オクタデシルアミン
PTS:ビスアミノプロピルテトラメチルジシロキサン(上記式(III)で表されるジアミン)
ジアミン(a):上記式(9)で表されるジアミン
ジアミン(b):上記式(10)で表されるジアミン
ジアミン(c):上記式(13)で表されるジアミン
ジアミン(d):上記式(15)で表されるジアミン
【0087】
<合成例22〜37>
PAA2〜4、PAA6〜10、PAA14〜21を、N−メチル−2−ピロリドンにより固形分濃度が5重量%になるように希釈し、各ポリアミック酸の合成に用いたジアミン1モル当たりピリジン5モル〜1モルおよび無水酢酸3モル〜1モルのイミド化触媒を添加し、110℃で4時間撹拌することにより、溶媒可溶性のイミド化重合体PI−1〜PI−17を合成した。この重合体溶液をエバポレーターで濃縮し、γ―ブチロラクトンを加える操作により、N−メチル−2−ピロリドンをγ―ブチロラクトンに置換し、イミド化重合体溶液得た。
【0088】
【表3】

【0089】
<実施例1〜9>
合成例1で得られたポリアミック酸を下記表4に示す混合割合(重量比)でブチルセロソルブ(BC)を含有する混合溶媒に、表4に示す固形分濃度(TSC)になるように溶解した。この溶液を孔径1μmのフィルターを用いて濾過し、本発明の液晶配向剤を調製した。このときの溶液粘度および表面張力を表4に示した。
【0090】
得られた各液晶配向剤をITO付ガラス基板へJET−CM連続式インクジェットプリンター(紀州技研工業(株)製)を用いて塗布し、230℃で10分乾燥して塗膜を得た。液晶配向剤の塗布性を評価し、得られた塗膜の膜厚を測定した。結果を表4に併せて示す。
【0091】
【表4】

【0092】
<評価例>
実施例1で得られた一対の塗膜形成基板の外縁に、直径5.5μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤を塗布した後、一対の液晶挟持基板を液晶配向膜面が相対するように重ね合わせて圧着し、接着剤を硬化させた。次いで、液晶注入口より一対の基板間に、ネマティック型液晶(メルク社製、MLC−6608)を充填した後、アクリル系光硬化接着剤で液晶注入口を封止し、基板の外側の両面に偏光板を張り合わせ、液晶表示素子を作製した。得られた液晶表示素子の配向性は良好であり、電圧保持率は99%と高い値を示した。また、残像消去時間は10秒であった。
【0093】
<参考例>
塗布方法をスピンコートとする以外は評価例と同様にして液晶表示素子を作製した。得られた液晶表示素子の配向性は良好で、電圧保持率は99%と高い値を示した。また、残像消去時間は10秒であった。従って、評価例で得られた液晶表示素子は、参考例で得られた液晶表示素子と同様の性能を有するものであった。
【0094】
<実施例10〜31>
表5に示すポリアミック酸とイミド化重合体を用い、実施例1〜9と同様にして液晶配向剤を調製し、評価例と同様にして液晶表示素子を作製した。液晶配向剤の塗布性は全て良好であり、液晶表示素子の配向性も全て良好であった。液晶配向剤の粘度と表面張力、並びに塗膜の塗布性を表5に併せて示す。
【0095】
【表5】

【0096】
<実施例32〜51>
表6に示すポリアミック酸とイミド化重合体を重量比4:1で用いる以外は実施例1〜9と同様にして液晶配向剤を調製した。得られた各液晶配向剤をITO付ガラス基板へJET−CM連続式インクジェットプリンター(紀州技研工業(株)製)を用いて塗布し、230℃で10分乾燥して塗膜を得た。レーヨン製の布を巻き付けたロールを有するラビングマシーンにより、ロールの回転数400rpm、ステージの移動速度3cm/秒、毛足押し込み長さ0.4mmでラビング処理を行った。上記基板を、超純水中に1分間浸漬した後、100℃のホットプレート上で5分間乾燥し、液晶配向膜を形成した。その基板を用い、評価例と同様にして液晶表示素子を作製した。液晶配向剤の塗布性は全て良好であり、液晶表示素子の配向性も全て良好であった。液晶配向剤の粘度と表面張力、並びに塗膜の塗布性を表6に併せて示す。
【0097】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I−1)で表される繰り返し単位および下記式(I−2)で表される繰り返し単位よりなる群から選ばれる少なくとも一種の繰り返し単位を有する重合体およびその溶媒としてのN−メチルピロリドンとを含有することを特徴とするインクジェット塗布用液晶配向剤。
【化1】

(式中、Q1 は2価の有機基でありそしてP1は4価の有機基である。但しP1の少なくとも一部は下記式(I−3)で表わされる基である)
【化2】

(式中、Q2 は2価の有機基でありそしてP2は4価の有機基である。但しP2の少なくとも一部は下記式(I−3)で表わされる基である)
【化3】

【請求項2】
N−メチルピロリドンの含有量が少なくとも10重量%である請求項1に記載のインクジェット塗布用液晶配向剤。
【請求項3】
固形分濃度が1〜5重量%の範囲にあり、粘度が5〜15mPa・sの範囲にありそして表面張力が30〜45dyne/cmの範囲にある請求項1に記載のインクジェット塗布用液晶配向剤。
【請求項4】
エチレングリコールモノアルキルエーテル、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、ジプロピレングリコールモノアルキルエーテル、ジプロピレングリコールジアルキルエーテルおよびジエチレングリコールジアルキルエーテルよりなる群から選ばれる少なくとも1種の他の溶媒を、少なくとも10重量%さらに含有する請求項1に記載のインクジェット塗布用液晶配向剤。


【公開番号】特開2006−17982(P2006−17982A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−195296(P2004−195296)
【出願日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】