説明

インクジェット捺染法により織物繊維材料を捺染するための方法

織物繊維材料を捺染するためのインクジェット捺染法であって、繊維材料を、以下:
(I) 少なくとも1つのアニオン性酸性染料、及び
(II) ジプロピレングリコール
を含む水性インク(該インクは25℃で5〜20mPa・sの粘度を有する)で捺染する方法であり、かつ該インクを、外部インクリザーバーからインクを受けるインク供給層(b)(該インク供給層は第1面及び第2面を持ち、かつインクが移動できるように中に複数の細孔及びそこを通って伸びる複数の穴を有する多孔性媒体を含む)を含むインクジェットプリントヘッドで繊維材料に適用することにより、高速度に捺染でき、良好な堅牢性の捺染物を与える方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット捺染法によりアニオン性酸性染料を用いて織物繊維材料を捺染するための方法、及び対応する捺染インクに関する。
【0002】
ロータリー及びフラットスクリーン捺染は、織物の捺染法として現在普及している。しかし、これらの従来法では、製品の量が充分に多くない限り、収益が上がらない。更に、プリントパターンの流行がどんどん変化するため、流行の素早い変化に生産が追随できないと、大量の捺染製品が売れずに在庫品となるリスクがある。したがって、捺染版を必要とせず、かつ多品種及び少量生産に適しており、かつ流行に素早く応じる、インクジェットのような電子的な織物捺染システムの確立に対する需要が存在する。
【0003】
インクジェット捺染技術は、色、パターン及びイメージを取り巻く新しいデザインの可能性を切り開く。色やデザインを迅速に変更できることは、従来のロータリースクリーン捺染法に優るインクジェット捺染の主要な利点の1つである。ディジタルシステムでは、デザイン変更は、スクリーンを彫る必要なく、ソフトウェアにより可能である。色の変更もまた、コンピュータで行われるため、スクリーンの洗浄やインクの交換の過程が排除される。新しいデザインの実際の織物見本は、以前必要とされた費用の何分の1かで、かつ以前必要とされた時間の何分の1かで可能である。こうしてデザイナーと、テキスタイルやアパレルの会社とは、互いに交流することにより、ほとんど即時に新しい製品を市場に出すことができる。世界的なインターネットでの即時のデータ転送やローカルエリア・ネットワーク(LAN)を介しての同様のデータ交換により、以前よりも速くアイデアを交換できるようになった。
【0004】
多くの利点にもかかわらず、インクジェットはなお幾つかの欠点を持っており、その幾つかは、捺染速度が上昇するにつれ更に著しくなる。ハードウェアの信頼性(例えば、ノズルの目詰まり)及び速度限界は、インクジェット捺染法の使用を見本の作製に限定している技術的障壁である。最先端のインクジェットテキスタイルプリンターは、2〜8KHzの周波数で作動して2〜30m2/h捺染することができる。短時間運転と見本作成の両方における真の意味での生産法になるには、高い捺染速度(例えば、>200m2/h)でも信頼できるインクジェット法が要求される。しかし、高速で捺染すると、インクを高速かつ高周波数で微細なノズルを通して吐出する必要があるという事実のせいで、高周波数への応答は損なわれがちであり、そしてインクは、インクの物性に応じて不安定になる傾向がある。更には、捺染物の品質は、布上のにじみのため損なわれる傾向にあるが、これは一つにはインクジェットプリンターが高い粘度を有するインクの使用を許さないという理由からであり、そして一つには布は紙よりも通常粗いきめを持つという理由からであって、このため微細な又は繊細なデザインのパターンを捺染することは困難になっている。
【0005】
したがって、高い捺染速度で運転したときにも、かなりの解像度を伴って高い信頼性で実行することができ、そして応用技術の観点から最適な性状を有する、インクジェット捺染法に対するニーズが存在する。これに関連して、粘度、安定性、表面張力及び導電率のような使用されるインクの性質は、決定的に重要な役割を演じる。更には、得られる捺染物の品質に関して、例えば、色の濃さ、繊維染料結合安定性及び耐水堅牢度について、高い要求が生じている。これらの要求は、既知のプロセスでは全ての性状が満たされないため、織物のインクジェット捺染のための新しいプロセスに対するニーズが未だ存在している。
【0006】
本発明は、織物繊維材料を捺染するためのインクジェット捺染法であって、繊維材料を、以下:
(I) 少なくとも1つのアニオン性酸性染料、及び
(II) ジプロピレングリコール
を含む水性インク(該インクは25℃で5〜20mPa・sの粘度を有する)で捺染する方法であり、かつ該インクを、外部インクリザーバーからインクを受けるインク供給層(b)(該インク供給層は第1面及び第2面を持ち、かつインクが移動できるように中に複数の細孔及びそこを通って伸びる複数の穴を有する多孔性媒体を含む)を含むインクジェットプリントヘッドで繊維材料に適用する方法に関する。
【0007】
このインクに使用される染料は、好ましくは低い塩含量であるべき、即ち、これらは染料の重量に基づいて0.5重量%未満の総塩含量であるべきである。調製法の結果として及び/又はその後の希釈剤の添加の結果として比較的高い塩含量を含む染料は、例えば、限外濾過、逆浸透又は透析のような膜分離法により、脱塩することができる。
【0008】
インクは、インクの総重量に基づいて、0.1〜35重量%、好ましくは0.1〜30重量%、特に0.1〜20重量%、そして更には0.1〜15重量%の染料の総含量を好ましくは有する。下限としては、0.5重量%、特に1重量%の限界が好ましい。
【0009】
本発明の方法に適した酸性染料は、例えば、カラーインデックス第3版(Colour Index, 3rd edition)(付加と修正(Additions and Amendments)の85号までを含む1987年第3改訂版)の「酸性染料(Acid Dyes)」の下に記述される染料を含む。使用できるアニオン性染料は、多種多様な染料の分類に属していてよく、そして1個以上のスルホン酸基を含んでよい。これらは、例えば、少なくとも2個のスルホン酸基を有するトリフェニルメタン染料、重金属を含まないモノアゾ及びジスアゾ染料(それぞれ1個以上のスルホン酸基を有する)、並びに重金属含有(即ち、銅−、クロム−、ニッケル−又はコバルト含有)のモノアゾ、ジスアゾ、アゾメチン及びホルマザン染料、特に、金属原子に結合した、2分子のアゾ染料、又は1分子のアゾ染料と1分子のアゾメチン染料を含む、含金属染料(特に、配位子としてモノ−及び/又はジス−アゾ染料及び/又はアゾメチン染料を含み、そして中心原子としてクロム又はコバルトイオンを含むそのような染料)、更にはアントラキノン染料(特に、1−アミノ−4−アリールアミノアントラキノン−2−スルホン酸及び1,4−ジアリールアミノ−又は1−シクロアルキルアミノ−4−アリールアミノアントラキノンスルホン酸)を含む。
【0010】
アニオン性酸性染料として、例えば、以下のものが考慮される:
a) 式(1):
【0011】
【化9】

【0012】
[式中、
1、R2、R3及びR4は、それぞれ他と独立にC1−C4アルキルであり、そして
5は、C1−C4アルキル、C1−C4アルコキシ又は水素である]で示されるトリフェニルメタン染料;
b) 式(2):
【0013】
【化10】

【0014】
[式中、
6は、ベンゾイルアミノ、フェノキシ、クロロフェノキシ、ジクロロフェノキシ又はメチルフェノキシであり、
7は、水素、ベンゾイル、フェニル又はC1−C4アルキルであり、そして
置換基R8は、それぞれ他と独立に、水素、フェニルアミノ又はN−フェニル−N−メチルアミノスルホニルである];式(3):
【0015】
【化11】

【0016】
[式中、
フェニル環B1は、ハロゲン、C1−C4アルキル及びスルホの群から選択される少なくとも1個の置換基により置換されていてもよく;そして
9は、α−ブロモアクリロイルアミノである];式(4):
【0017】
【化12】

【0018】
[式中、
6は、上記と同義であり、
10は、C1−C8アルキルであり、そして
11は、ハロゲンである];及び式(5):
【0019】
【化13】

【0020】
で示されるモノアゾ及びジスアゾ染料;
c) 式(6)+(7):
【0021】
【化14】

【0022】
[式中、
12は、水素、スルホ又はフェニルアゾであり、
13は、水素又はニトロであり、そして
フェニル環B2は、ハロゲン、C1−C4アルキル及びスルホの群から選択される少なくとも1個の置換基により置換されていてもよい]で示されるアゾ及びアゾメチン染料の1:2クロム錯体染料のような、1:2金属錯体染料;
d) 式(8):
【0023】
【化15】

【0024】
[式中、
フェニル環B3は、ハロゲン、C1−C4アルキル及びスルホの群から選択される少なくとも1個の置換基により置換されていてもよく、そして
14及びR15は、それぞれ他と独立に、水素、ニトロ、スルホ、ハロゲン、C1−C4アルキルスルホニル、C1−C4アルキルアミノスルホニル又は−SO2NH2である];及び式(9)又は(10):
【0025】
【化16】

【0026】
[式中、
16は、水素、C1−C4アルコキシカルボニルアミノ、ベンゾイルアミノ、C1−C4アルキルスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ、メチルフェニルスルホニルアミノ又はハロゲンであり、
17は、水素又はハロゲンであり、そして
18は、C1−C4アルキルスルホニル、C1−C4アルキルアミノスルホニル、フェニルアゾ、スルホ又は−SO2NH2であり、
ベンゾ環D1のヒドロキシ基は、ベンゾ環D1上のアゾ基に対してo位に結合している]で示されるアゾ染料の非対称性(混合)又は対称性の1:2クロム錯体染料、好ましくは対称性1:2クロム錯体染料;式(11):
【0027】
【化17】

【0028】
[式中、
19は、−OH又は−NH2基であり、
20は、水素又はC1−C4アルキルアミノスルホニルであり、そして
21は、ニトロ又はC1−C4アルコキシ−C1−C4アルキレンアミノスルホニルである];及び式(12):
【0029】
【化18】

【0030】
[式中、
22は、カルボキシ又はスルホであり、そして
23は、ハロゲンである]で示されるアゾ染料の対称性1:2コバルト錯体;式(13)+(14):
【0031】
【化19】

【0032】
[式中、
一方の置換基R24は、水素であり、そしてもう一方は、スルホである];式(15)+(16):
【0033】
【化20】

【0034】
[式中、
25は、水素又はニトロであり、フェニル環B4及びB5は、それぞれ他と独立に、ハロゲン、C1−C4アルキル及びスルホの群から選択される少なくとも1個の置換基により置換されていてもよく、そして
26は、水素又はハロゲンである];及び式(17)+[(18)〜(21)]:
【0035】
【化21】

【0036】
[式中、
フェニル環B6、B7及びB8は、それぞれ他と独立に、各場合に、ハロゲン、C1−C4アルキル及びスルホの群から選択される少なくとも1個の置換基により置換されていてもよく、
26は、水素又はニトロであり、
27は、水素、メトキシカルボニルアミノ又はアセチルアミノであり、そして
28は、C1−C4アルキルスルホニル、C1−C4アルキルアミノ−スルホニル、フェニルアゾ、スルホ又は−SO2NH2である]で示されるアゾ染料の非対称性1:2クロム錯体染料;式(22):
【0037】
【化22】

【0038】
[式中、
ベンゾ環D2は、スルホ又はスルホンアミドにより置換されている]で示される銅錯体のような、1:2金属錯体染料;
e) 式(23):
【0039】
【化23】

【0040】
[式中、
29は、α−ブロモアクリロイルアミノであり、
置換基R30は、それぞれ他と独立に、水素又はC1−C4アルキルであり、そして
31は、水素又はスルホである];式(24):
【0041】
【化24】

【0042】
[式中、
置換基R32は、それぞれ他と独立に、シクロヘキシル又はジフェニルエーテル基(スルホ又は基−CH2−NH−R29(ここで、R29は、上記と同義である)により置換されていてもよい)である];及び式(25):
【0043】
【化25】

【0044】
[式中、
29は、α−ブロモアクリロイルアミノであり、
30は、式(23)と同義であり、そして
33は、C4−C8アルキルである]で示されるアントラキノン染料;
f) 式(26)及び(27):
【0045】
【化26】

【0046】
[式中、
(R341-5は、C1−C4アルキル(非置換であるか、又はC2−C4アルカノイルアミノ(これもまたアルキル基でハロゲンにより置換されていてもよい)若しくはベンゾイルアミノにより置換されている);C1−C4アルコキシ;C2−C4アルカノイルアミノ及びC2−C4ヒドロキシアルキルスルファモイルの群から選択される、1〜5個の同一の又は異なる置換基を意味し;
35は、C1−C4アルキル、C5−C7シクロアルキル(非置換であるか、又はC1−C4アルキルにより置換されている)、又はフェニル(非置換であるか、又はフェノキシ、C1−C4アルキル若しくはスルホにより置換されており、このフェノキシ基もまた、非置換であるか、又はフェニル環でC1−C4アルキル、C1−C4アルコキシ、ハロゲン若しくはスルホにより(特にC1−C4アルキル若しくはスルホにより)置換されている)であり;
36及びR37は、それぞれ他と独立に、スルホ、C1−C4アルキル(非置換であるか、又はC2−C4アルカノイルアミノ(これもまたアルキル基でハロゲンにより置換されていてもよい)により置換されている)又はフェノキシ(非置換であるか、又はフェニル環でC1−C4アルキル、C1−C4アルコキシ、ハロゲン若しくはスルホにより(特にC1−C4アルキル若しくはスルホにより)置換されている)である]で示される無金属アニオン性アントラキノン染料;並びに
g) 式(28):
【0047】
【化27】

【0048】
[式中、
38は、ハロゲン、フェニルスルホニル、トリフルオロメチル又は下記式:
【0049】
【化28】

【0050】
(式中、R41は、シクロヘキシルであり、そしてR42は、C1−C4アルキルであるか、あるいは基R41及びR42は、これらに結合している窒素原子と一緒になって、アゼピニル環を形成する)で示される基であり、
39は、水素又はハロゲンであり、そして
40は、水素であるか、あるいはフェノキシ(非置換であるか、又はフェニル環でハロゲンにより置換されている)である];式(29):
【0051】
【化29】

【0052】
[式中、
43は、水素、ハロゲン又はスルホであり;
44は、水素;ハロゲン;フェノキシ又はフェノキシスルホニル(非置換であるか、又はフェニル環でC1−C4アルキル、C1−C4アルコキシ若しくはハロゲンにより置換されている);下記式:
【0053】
【化30】

【0054】
(式中、R48は、フェニル(非置換であるか、又はC1−C4アルキル、C1−C4アルコキシ、ハロゲン若しくはスルホにより置換されている)であり、R49は、水素又はC1−C4アルキルであり、そしてR50は、ハロゲンである)で示される基;又は下記式:
【0055】
【化31】

【0056】
(式中、R50は、上記と同義である)で示される基であり;
45は、ヒドロキシ又はアミノであり;そして
46及びR47は、それぞれ他と独立に、水素、C1−C4アルキル又はハロゲンである];式(30):
【0057】
【化32】

【0058】
[式中、
51及びR52は、それぞれ他と独立に、水素、C1−C4アルキル、C1−C4アルコキシ、ハロゲン又はC2−C4アルカノイルアミノ、好ましくは水素又はC1−C4アルキルであり、
53は、フェニル(非置換であるか、又はC1−C4アルキル、C1−C4アルコキシ、ハロゲン若しくはC2−C4アルカノイルアミノにより置換されている)、好ましくは非置換フェニル又はC1−C4アルキルにより置換されているフェニルである];式(31):
【0059】
【化33】

【0060】
[式中、
54は、水素又はC1−C4アルキルであり、
55は、水素又はフェニルスルホニル(非置換であるか、又はフェニル環でC1−C4アルキル、C1−C4アルコキシ、ハロゲン若しくはC2−C4アルカノイルアミノにより置換されている)、好ましくは非置換フェニルスルホニルである];式(32):
【0061】
【化34】

【0062】
[式中、
(R560-2は、C1−C4アルキル、C1−C4アルコキシ、ハロゲン及びフェノキシ(非置換基であるか、又はフェニル環でC1−C6アルキル、C1−C4アルコキシ、スルホ、ハロゲン若しくはC2−C4アルカノイルアミノにより置換されている)、好ましくは非置換フェノキシ又はC1−C6アルキル若しくはハロゲンにより置換されているフェノキシの群から選択される、0〜2個の同一の又は異なる置換基を意味し、そして
57は、ベンゾイル(非置換であるか、又はフェニル環でC1−C4アルキル、C1−C4アルコキシ、スルホ若しくはハロゲンにより置換されている)、好ましくは非置換ベンゾイル、C2−C4アルカノイル(非置換であるか、又はアルキル基でヒドロキシ若しくはC1−C4アルコキシにより置換されている)、好ましくは非置換C2−C4アルカノイル、例えば、アセチル、フェニルスルホニル又はメチルフェニルスルホニルである];及び式(33):
【0063】
【化35】

【0064】
[式中、
58は、水素、C1−C4アルキル、C1−C4アルコキシ、ハロゲン又はC2−C4アルカノイルアミノ(非置換であるか、又はアルキル基でヒドロキシ、C1−C4アルコキシ若しくはハロゲンにより置換されている)であり;
59は、フェニル(非置換であるか、又はC1−C4アルキル、C1−C4アルコキシ、スルホ若しくはハロゲンにより置換されている)、好ましくは非置換フェニルであり、そして
60は、水素又はC1−C4アルキルである];及び式(34):
【0065】
【化36】

【0066】
[式中、
61は、下記式:
【0067】
【化37】

【0068】
(式中、R48、R49及びR50は、それぞれ他と独立に、上の式(29)と同義である)で示される基である]で示されるモノアゾ染料、並びに式(35):
【0069】
【化38】

【0070】
[式中、
62及びR63は、下記式:
【0071】
【化39】

【0072】
(式中、
45、R46及びR47は、それぞれ他と独立に、上の式(29)と同義である)で示される基である];式(36)、(37)及び(38):
【0073】
【化40】

【0074】
[式中、
(R640-2は、C1−C4アルキル及びC1−C4アルコキシの群から選択される、0〜2個の同一の又は異なる置換基を意味し、
(R650-2は、スルホ、C1−C4アルキル、C1−C4アルコキシ、ウレイド、C2−C4アルカノイルアミノ及びウレイドの群から選択される、0〜2個の同一の又は異なる置換基を意味し、そして
(R661-2は、スルホ、C1−C4アルキル及びC1−C4アルコキシの群から選択される、0〜2個の同一の又は異なる置換基を意味する]で示されるジスアゾ染料。
【0075】
1−C4アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル及びイソブチルが、好ましくはメチル及びエチルが考慮される。
【0076】
1−C6アルキル又はC1−C8アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、イソブチル、n−ペンチル、sec−ペンチル、イソペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル及びn−オクチルが考慮される。
【0077】
1−C4アルコキシ基としては、例えば、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ及びイソブトキシが、好ましくはメトキシ及びエトキシが、そして特にメトキシが考慮される。
【0078】
ハロゲンとしては、例えば、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素が、好ましくは塩素及び臭素が、そして特に塩素が考慮される。
【0079】
2−C4アルカノイルアミノ基としては、例えば、アセチルアミノ及びプロピオニルアミノが、特にアセチルアミノが考慮される。
【0080】
1−C4アルキルスルホニル基としては、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、n−プロピルスルホニル、イソプロピルスルホニル及びn−ブチルスルホニルが、好ましくはメチルスルホニル及びエチルスルホニルが考慮される。
【0081】
1−C4アルキルアミノスルホニル基としては、例えば、メチルアミノスルホニル、エチルアミノスルホニル、n−プロピルアミノスルホニル、イソプロピルアミノスルホニル及びn−ブチルアミノスルホニルが、好ましくはメチルアミノスルホニル及びエチルアミノスルホニルが考慮される。
【0082】
1−C4アルコキシカルボニルアミノ基としては、例えば、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、n−プロポキシカルボニルアミノ、イソプロポキシカルボニルアミノ及びn−ブトキシカルボニルアミノが、好ましくはメトキシカルボニルアミノ及びエトキシカルボニルアミノが考慮される。
【0083】
1−C4アルキルスルホニルアミノ基としては、例えば、メチルスルホニルアミノ、エチルスルホニルアミノ、n−プロピルスルホニルアミノ、イソプロピルスルホニルアミノ及びn−ブチルスルホニルアミノが、好ましくはメチルスルホニルアミノ及びエチルスルホニルアミノが考慮される。
【0084】
1−C4アルコキシ−C1−C4アルキレンアミノスルホニル基としては、例えば、メトキシ−メチレンアミノスルホニル、メトキシ−エチレンアミノスルホニル、エトキシ−メチレンアミノスルホニル及びエトキシ−エチレンアミノスルホニルが、好ましくはメトキシエチレンアミノスルホニルが考慮される。
【0085】
2−C4ヒドロキシアルキルスルファモイル基としては、例えば、β−ヒドロキシエチルスルファモイルが考慮される。
【0086】
5−C7シクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル及びシクロヘキシルが、好ましくはシクロヘキシルが考慮される。
【0087】
2−C4アルカノイル基としては、例えば、アセチル及びプロピオニルが、好ましくはアセチルが考慮される。
【0088】
本発明の特定目的の実施態様において、インクは、式(5)、(9)、(22)、(26)、(34)及び(35)の染料を含む。
【0089】
適切な染料は、例えば、下記式の染料である:
【0090】
【化41】

















【0091】
本発明に使用される染料は、単一化合物として、又は2つ以上の染料の混合物として使用することができる。
【0092】
好ましいものは、式(5a)、(5b)、(9a)、(22a)、(26b)、(26c)、(26d)、(26e)、(26f)、(26g)、(28b)、(28d)、(30a)、(32a)、(32b)、(32c)、(32d)、(34a)、(35a)、(37a)、(38a)及び(38b)の染料、特に式(5b)、(9a)、(22a)、(26f)、(26g)、(34a)及び(35a)の染料である。
【0093】
式(1)〜(38)の染料は、既知であるか、又は既知化合物と同様に、例えば、通常のジアゾ化、カップリング、付加及び縮合反応により入手することができる。
【0094】
本発明に適用されるインクは、ジプロピレングリコールを、インクの総重量に基づいて、例えば、5〜55重量%、好ましくは5〜50重量%、特に5〜45重量%の量で含む。下限としては、15重量%、好ましくは25重量%、特に30重量%の限界が好ましい。
【0095】
本発明の好ましい実施態様において、インクは、ジプロピレングリコールを、インクの総重量に基づいて、25〜45重量%、好ましくは30〜45重量%の量で含む。
【0096】
本インクはまた、可溶化剤、例えば、ε−カプロラクタムを、インクの総重量に基づいて、例えば、1〜25重量%、好ましくは1〜20重量%、特に1〜15重量%の量で含んでいてもよい。下限としては、3重量%、特に5重量%の限界が好ましい。
【0097】
本発明の示される実施態様において、インクは、可溶化剤を、インクの総重量に基づいて、3〜15重量%、好ましくは5〜15重量%の量で含んでいてもよい。
【0098】
本発明の興味深い実施態様において、インクは、それぞれインクの総重量に基づいて、25〜45重量%の量のジプロピレングリコール及び1〜15重量%の量のε−カプロラクタムを含む。
【0099】
本インクは、とりわけ粘度の調整を目的として、天然又は合成起源の増粘剤を含んでいてもよい。
【0100】
言及できる増粘剤の例は、市販されているアルギン酸増粘剤、デンプンエーテル類又はローカストビーンフラワーエーテル類(locust bean flour ethers)、特にそのままの、又は変性セルロース(例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース又はヒドロキシプロピルメチルセルロース)と、特に好ましくは20〜25重量%のカルボキシメチルセルロースと混合した、アルギン酸ナトリウムを含む。言及できる合成増粘剤は、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリルアミド類又はポリビニルピロリドン類に基づくものである。
【0101】
本インクは、インクの総重量に基づいて、例えば、0.01〜2重量%、特に0.05〜1.2重量%、そして更には0.1〜1重量%の量でこのような増粘剤を含む。
【0102】
このような粘度調整剤を伴っても又は伴わずとも、インクの粘度は、25℃で6〜14mPa・s、特に25℃で7〜12mPa・s、そして更には25℃で8〜10mPa・sになるように調整される。
【0103】
特に断りない限り、本発明により適用されるインクの粘度を表す数は、ブルックフィールド(Brookfield)DV−II粘度計で測定される。
【0104】
本発明の興味深い実施態様において、ポリC2−C4−アルキレングリコール又はポリC2−C4−アルキレングリコールのモノ−若しくはジ−C1−C4−アルキルエーテルは、粘度調整剤として使用することができ、そしてこのアルキレン残基は、直鎖であっても分岐していてもよく、特にポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールのようなポリC2−C3−アルキレングリコール、又は混合エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体、そして更には混合エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体を使用することができる。モル質量は、例えば、1,000〜35,000g/mol、好ましくは2,000〜25,000g/mol、そして特に3,000〜20,000である。該化合物は、例えば、P41型ポリグリコール類(クラリアント(Clariant))として市販されている。
【0105】
ジプロピレングリコールは、単独で使用されるが、あるいは、2つ以上の有機溶媒の混合物を使用してもよい。ジプロピレングリコールと組合せて使用することができる更に別の有機溶媒は、水混和性有機溶媒、例えば、C1−C4−アルコール類(メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール及びイソブタノールなど);アミド類、例えば、ジメチルホルムアミド及びジメチルアセトアミド;ケトン類又はケトンアルコール類、例えば、アセトン及びジアセトンアルコール;エーテル類、例えば、テトラヒドロフラン及びジオキサン;窒素含有複素環化合物、例えば、N−メチル−2−ピロリドン及び1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン;更に別のグリコール類又はチオグリコール類、例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、ブチレングリコール、チオジグリコール及びヘキシレングリコール;更に別のポリオール類、例えば、グリセロール、1,2,6−ヘキサントリオール;並びに多価アルコール類のC1−C4アルキルエーテル類、例えば、2−メトキシエタノール、2−(2−メトキシエトキシ)エタノール、2−(2−エトキシエトキシ)エタノール、2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]−エタノール及び2−[2−(2−エトキシエトキシ)エトキシ]エタノールである。
【0106】
好ましくは、更に別の有機溶媒を何ら加えることなく、ジプロピレングリコールは単独で使用される。
【0107】
本インクはまた、緩衝物質、例えば、ホウ砂、ホウ酸塩、リン酸塩、ポリリン酸塩又はクエン酸塩を含んでいてもよい。言及できる例は、ホウ砂、ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、ペンタポリリン酸ナトリウム及びクエン酸ナトリウムを含む。これらは、例えば、4〜10、特に5〜9.5、そして更には8〜9のpH値を確立するために、インクの総重量に基づいて、特に0.1〜3重量%、好ましくは0.1〜1重量%の量で使用される。
【0108】
上述の成分の他に、本発明の方法によるインクは、必要に応じて、界面活性剤、湿潤剤、粘度調整剤、緩衝剤、消泡剤、又は真菌及び/若しくは細菌などの増殖を阻害する物質である保存料のような種々の添加剤を含んでいてもよい。
【0109】
適切な界面活性剤は、市販のアニオン性又は非イオン性界面活性剤を含む。本発明のインク中の湿潤剤としては、例えば、尿素又は乳酸ナトリウム(有利には50%〜60%水溶液の形で)、及び好ましくは200〜800の分子量を有するポリエチレングリコール類、例えば、ポリエチレングリコール200が考慮される。
【0110】
保存料としては、ホルムアルデヒド放出剤、例えば、パラホルムアルデヒド及びトリオキサン、特に水性の、例えば、30〜40重量%ホルムアルデヒド溶液、イミダゾール化合物、例えば、2−(4−チアゾリル)ベンゾイミダゾール、チアゾール化合物、例えば、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン又は2−n−オクチル−イソチアゾリン−3−オン、ヨウ素化合物、ニトリル類、フェノール類、ハロアルキルチオ化合物並びにピリジン誘導体、特に1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン又は2−n−オクチル−イソチアゾリン−3−オンが考慮される。細菌、酵母及び真菌による腐敗に対する保存のための広域殺生物剤の一例として、ジプロピレングリコール中の1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンの20重量%溶液(プロキセル(Proxel)(登録商標)GXL)を使用することができる。
【0111】
本インクは、フッ素化ポリマー又はテロマー、例えば、ポリエトキシペルフルオロアルコール類(フォラファック(Forafac)(登録商標)又はゾニール(Zonyl)(登録商標)の製品)のような更に別の成分を、インクの総重量に基づいて、例えば、0.005〜1重量%の量で含んでいてもよい。
【0112】
表面張力は、25℃で20〜40ダイン/cm、そして特に25℃で25〜35ダイン/cmの範囲に調整することが好ましい。
【0113】
更には、このインクの導電率は、25℃で1〜6mS/cm、そして特に25℃で1〜4mS/cmの範囲に調整することが好ましい。
【0114】
本インクは、個々の構成成分を一緒にして所望の量の水中で混合することにより、通常のやり方で調製することができる。
【0115】
上述のインクは、有利には、以下:
− 複数の噴射ノズルを画定する、ノズル層(a)
− インクがそこを通って移動できるように多数の互いにつながった小細孔を有する多孔性材料から形成される、インク供給層(b)(このインク供給層は、後方表面から前方表面までの複数の連結内腔(穴)(connecting bore (hole))を特色とし、各連結内腔は、噴射ノズルの対応するものとの間をつなぐように整列している)、及び
− ノズルを通してインク液滴を噴射させるために連結内腔に関係付けられる複数の変換器を含む、偏向層(c)
を含むことを特徴とする少なくとも1つのインクジェットプリントヘッドを備えたインクジェット捺染装置を利用して、織物繊維材料に適用できることが見出された。
【0116】
本発明により適用されるインクジェットプリントヘッドは、更に、
− 複数の開口部を有する、インク供給層(b)の後方表面に結合している、インクキャビティ層(d)(各開口部は、対応するインクキャビティを少なくとも部分的に画定するために、インク供給層の連結内腔の一方に対応するように配置される)
を含んでいてもよい。
【0117】
本発明に適用されるインクジェットプリントヘッドは、層状構造を含み、その重要な要素は、多孔性材料でできているインク供給層(b)である。このインク供給層(b)は、インクリザーバーと、連結内腔(穴)の個々のインクキャビティ及び/又はインクキャビティ層(d)の個々のインクキャビティの両方と直接連通しており、このためインクの主要供給路と個々のインクキャビティの間の水圧式リンケージとして作用する。
【0118】
多孔性材料は、例えば、焼結材料、最も好ましくは、焼結ステンレス鋼を含む。
【0119】
インクキャビティ層(d)は、割愛することができる。この場合には、偏向層が直接インク供給層に接する。
【0120】
本発明により使用されるインクジェットプリントヘッドは、米国特許第5,940,099号に詳細に記述されており、その開示内容は本明細書に取り込まれる。
【0121】
本発明により適用されるインクジェットプリントヘッドは、ドロップオンデマンド方式のカテゴリーに属するが、ここではインク液滴は必要に応じて選択的に噴射される。
【0122】
変換器は、例えば、圧電性結晶(圧電型)又は熱電素子(熱バブルジェット型)であり、好ましくは圧電性結晶である。
【0123】
本発明の1つの実施態様による装置を用いたインク液滴の噴射は、以下のとおり達成される:
インクキャビティの頂部に位置する、偏向薄板、又は振動板の偏向により、圧力パルスがインクキャビティ中の一定容量のインクに伝えられる。その電極(その一方は通常は金属の偏向板と電気的に接触している)を越えて電圧が印加されるたびに、圧電セラミック結晶の作用により、板は下向きに偏向する。偏向板の下方への屈曲により生じる圧力パルスが、先細ノズルをその出口末端に有する出口にインクを向け、更にそこを通して押出し、特定のサイズの液滴を噴射させる。圧電性結晶は、電源を遮断されると、その平衡位置に戻り、インクキャビティ内の圧力を下げて、出口末端のメニスカスを後退させる。後退したメニスカスは、毛管力を作り出し、そしてこれが、インクリザーバーからインク供給層(b)の多孔性材料を通してインクキャビティ中へ、及びノズルに関係付けられている連結内腔(穴)中へとインクを引き込むように作用する。メニスカスがその平衡位置を回復すると、この補充プロセスは終わる。
【0124】
インクキャビティへの流入のために開いている多孔性材料のミクロン勾配及び表面積は、インクキャビティの補充時間に、そしてそのため最大液滴噴射速度、又は周波数に決定的に重要な影響を及ぼす。本発明のプロセスのインクは、例えば、5〜100kHz、好ましくは10〜50kHz、そして特に25〜40kHzという高い噴射周波数を可能にするシステム性能を実現するために、適切な流動抵抗で、インク供給層(b)の互いにつながった小細孔及びチャネルを通って移動する。更には、このインクは、噴射ノズルの目詰まりを引き起こさない。布上のにじみ又はぼやけ及びブロットが省かれる。このインクは、貯蔵安定性である、即ち、貯蔵の過程で固形物の沈着が観察されない。
【0125】
多孔性材料から形成されたインク供給層を含む、適切なインクジェットプリントヘッド構成の更に別の実施態様は、米国特許第5,940,099号に記述されており、そしてその全てを本発明のプロセスに使用することができる。
【0126】
本発明の好ましい実施態様において、インクジェットプリントヘッドは、
− 複数の噴射ノズルを画定する、ノズル層(a)
− ノズル層に結合している前方表面とキャビティ層(d)に結合している後方表面とを有する、インク供給層(b)[このインク供給層は、後方表面から前方表面までの複数の連結内腔(穴)により形成され、各連結内腔は、インクキャビティの対応するものと噴射ノズルの対応するものとの間をつなぐように整列しており、そしてこのインク供給層は、更に、(i)前方表面において形成するインク分配チャネルのパターン、及び(ii)後方表面から前方表面まで通じ、そしてインク分配チャネルのパターンの少なくとも一部と直接流動的に連通するように配列される、少なくとも1つのインク注入口を特色とする(インク分配チャネルのパターンと少なくとも1つのインク注入口とは、一緒になって、後方表面から少なくとも1つのインク注入口を通して前方表面上のインク分配チャネルのパターンまで、及び多孔性材料を通して複数のインクキャビティまで通る、インク流路の一部を画定する)]、
− ノズルを通してインク液滴を噴射させるための連結内腔に関係する複数の変換器を含む、偏向層(c)
を含む。
【0127】
前方表面上のインク分配チャネルの位置は、インク供給層の多孔性材料を通るインク流が、この層の大半を通って起こることを保証する。好ましくはインク分配チャネルは、各連結内腔が、その最も近いインク分配チャネルからおよそ同じ距離にあるようなパターンで前方表面中に分布している。連結内腔が、2列の方向を有する前方表面上のアレイを画定する典型的な場合に、インク分配チャネルのパターンは、好ましくは、列の方向の一方に実質的に平行に展開され、連結内腔の近接した列の間に挿入される、複数のチャネルを含む。このインク流路は、インクキャビティの全アレイにわたる多孔性層に充分かつ一般に不変のインク供給を提供するには特に有効である。
【0128】
本発明により使用されるインクジェットプリントヘッドは、マルチノズルプリントヘッドであり、その個々のノズルは、有利には、例えば、32×16アレイとして互い違いに並べられた512ノズルを含む、互いに対して、水平に互い違いに、又は斜めに並べられた、水平な列から作られたアレイとして配置される。
【0129】
本発明の好ましい実施態様により使用されるインクジェットプリントヘッドは、米国特許第6,439,702号に詳細に記述されており、その開示内容は本明細書に取り込まれる。
【0130】
多孔性材料から生成されるインク供給層を含む、適切なインクジェットプリントヘッド構成の更に別の実施態様は、米国特許第6,439,702号に記述されており、その全ては、本発明のプロセスにおいて使用することができる。
【0131】
本発明により使用されるインクジェット捺染装置は、少なくとも1つの上述のインクジェットプリントヘッドを含む。好ましくは、この捺染装置は、少なくとも3種のプロセスカラー、例えば、3、4、5又は6種のプロセスカラー、好ましくは6種のプロセスカラーを利用し、そしてここで各カラーは、少なくとも1つのプリントヘッド、例えば、1、2、3、4、5、6又は7つのプリントヘッド、好ましくは7つのプリントヘッドで処理される。
【0132】
本発明により、織物繊維材料を少なくとも50m2/h、好ましくは100〜250m2/h、特に150〜250m2/hの範囲の速度で捺染することができる。
【0133】
考慮される繊維織物材料は、特に窒素含有又はヒドロキシル基含有繊維材料である。窒素含有繊維材料として、天然又は合成ポリアミド材料、例えば、絹、ウール又は合成ポリアミドの繊維織物材料が考慮される。合成繊維ポリアミド材料は、例えば、繊維のポリアミド−6及びポリアミド−66材料である。
【0134】
本発明のプロセスは、特に好ましくは絹又は絹含有混合繊維材料を捺染するのに使用される。絹としては、天然の絹及び養蚕の絹(桑の絹、カイコガ(Bombyx mori))だけでなく、種々の野生の絹、特にタッサーシルク、及びエリア(eria)及びファガール(fagar)シルク、スラブシルク、セネガルシルク、ムガ(muga)シルク、更にまたイガイ(mussel)シルク及びクモ(spider)シルクも考慮される。絹含有繊維材料は、特に絹とポリエステル繊維、アクリル繊維、セルロース繊維、ポリアミド繊維又はウールとの混紡である。該織物材料は、多種多様な加工形、例えば、織物又は編物の形状にすることができる。
【0135】
絹又は絹含有繊維材料を捺染するために、繊維材料は、好ましくは前処理に付される。このために、繊維材料は、増粘剤及び適宜ハイドロトロープ剤を含む水性液で前処理される。好ましく利用される増粘剤は、市販のアルギン酸ナトリウム増粘剤のようなアルギン酸増粘剤であり、そしてこれは、例えば、50〜200g/lの液、好ましくは100〜200g/lの液の量で使用される。好ましく利用されるハイドロトロープ剤は、尿素であり、そしてこれは、例えば、25〜200g/lの液、好ましくは25〜75g/lの液の量で使用される。この液は、更に別の成分、例えば、酒石酸アンモニウムを更に含んでいてもよい。この液は、好ましくはパジング染色法により、特に70〜100%の液の含浸率で繊維材料に適用される。好ましくは、この繊維材料は上記の前処理の後に乾燥する。
【0136】
捺染後、繊維材料は、好ましくは150℃以下、特に80〜120℃の温度で有利には乾燥し、次に必要に応じて、捺染物を仕上げるため、即ち、染料を定着させるため、熱処理工程に付す。
【0137】
熱処理は、例えば、ホットバッチ(hot batch)プロセス、サーモソル(thermosol)プロセスを用いて、又は好ましくは蒸気処理プロセスを用いて行うことができる。
【0138】
蒸気処理プロセスの場合には、捺染した繊維材料を、例えば、有利には95〜180℃の温度で場合により過熱状態の蒸気を含むスチーマー中での、特に飽和蒸気中での処理に付す。
【0139】
続いて捺染した繊維材料を、定着していない染料を除去するために一般には通常どおり水で洗い流す。
【0140】
上述の捺染プロセスを用いて、単一の色調又は種々の色調のいずれかで、繊維材料を捺染することができる。捺染が1つの色調で行われるとき、繊維材料は、全表面にわたって、又はパターンにより捺染することができる。単一インクの使用は、当然この目的に充分であるが、所望の色調はまた、異なる色調の複数のインクで捺染することにより創り出すこともできる。繊維材料に複数の異なる色調を有する捺染を行うとき、繊維材料を、それぞれ所望の色調を有する複数のインクで捺染するか、又は問題の色調が創り出されるようなやり方で捺染することができる(例えば、繊維材料に異なる色調のインクを順に重ねて捺染し、こうして必要な色調を生み出すことによる)。
【0141】
生じた捺染物は、特に、高い着色力及び高い色の鮮明さ、並びに良好な耐光堅牢度及び耐水堅牢度を特徴とする。
【0142】
本発明はまた、以下:
(I) 少なくとも1つのアニオン性酸性染料、及び
(II) ジプロピレングリコール
を含む水性インク(該インクは25℃で5〜20mPa・sの粘度を有する)に関し、ここで成分(I)及び(II)に関連する変形態様は、上記の意味及び優先傾向を有する。
【0143】
本発明のインクは、紙、プラスチック又は織物繊維材料のフィルムのような、異なる種類の物質にプリントするためのインクジェットプリント法において使用することができる。特にこのインクは、本発明のプロセスにおいて使用される。
【0144】
以下の実施例は、本発明を説明するためのものである。特に断らない限り、温度は摂氏度で与えられ、部は重量部であり、そして百分率は、重量パーセントに合致する。重量部は、キログラム対リットルの比で容量部に合致する。
【0145】
実施例1:
a) 絹織物を、150g/lの市販のアルギン酸増粘剤、50g/lの尿素及び50g/lの酒石酸アンモニウム水溶液(25%)を含む水性液(液の含浸率90%)でパジングして、乾燥した。
b) 工程a)により前処理したこの絹織物を、工業用圧電型ドロップオンデマンド式インクジェット捺染装置(レッジャーニ(Reggiani)DReAM)により150m2/hの速度で捺染した。この装置は、6色(6インク)を処理し、そして各プロセスカラーは、7つのプリントヘッド(アプリオン(Aprion))により捺染した。
【0146】
インクは、以下のとおりである:
黄色の水性インク(以下を含む):
− 8.0重量%の式(35a)の染料、
− 5.0重量%のε−カプロラクタム、
− 35.0重量%のジプロピレングリコール、
− 0.3重量%の市販の保存料、
− 51.7重量%の水;
橙色の水性インク(以下を含む):
− 8.0重量%の式(5b)の染料、
− 40.0重量%のジプロピレングリコール、
− 0.3重量%の市販の保存料、
− 51.7重量%の水;
赤色の水性インク(以下を含む):
− 9.0重量%の式(34a)の染料、
− 40.0重量%のジプロピレングリコール、
− 0.3重量%の市販の保存料、
− 50.7重量%の水;
青色の水性インク(以下を含む):
− 8.0重量%の式(26f)及び(26g)の染料の混合物、
− 10.0重量%のε−カプロラクタム、
− 30.0重量%のジプロピレングリコール、
− 0.3重量%の市販の保存料、
− 51.7重量%の水;
青緑色の水性インク(以下を含む):
− 8.0重量%の式(22a)の染料、
− 40.0重量%のジプロピレングリコール、
− 0.3重量%の市販の保存料、
− 51.7重量%の水;
黒色の水性インク(以下を含む):
− 10.0重量%の式(9a)の染料、
− 10.0重量%のε−カプロラクタム、
− 30.0重量%のジプロピレングリコール、
− 0.3重量%の市販の保存料、
− 49.7重量%の水;
【0147】
捺染物は、ライン上で統合熱風乾燥機により100℃で乾燥し、102℃で飽和蒸気中で定着させ、そして次に洗い流した。良好な堅牢性を有する鮮明な多色捺染物を得た。
【0148】
実施例2:
a) 絹織物を、270g/lの市販の低分子量アルギン酸増粘剤、150g/lの尿素及び50g/lの酒石酸アンモニウム水溶液(25%)を含む水性液(液の含浸率90%)でパジングして、乾燥した。
b) 工程a)により前処理したこの絹織物を、工業用圧電型ドロップオンデマンド式インクジェット捺染装置(レッジャーニ DReAM)により150m2/hの速度で、実施例1のプロセスと同様に実施例1のインクを用いて捺染した。捺染物は、作業ライン上で統合熱風乾燥機により100℃で乾燥し、102℃で飽和蒸気中で定着させ、そして次に洗い流した。良好な堅牢性を有する鮮明な多色捺染物を得た。
【0149】
実施例3: 実施例1のインクを使用して、ポリアミド織物を、工業用圧電型ドロップオンデマンド式インクジェット捺染装置(レッジャーニ DReAM)により150m2/hの速度で捺染した。捺染物は、作業ライン上で統合熱風乾燥機により100℃で乾燥し、102℃で飽和蒸気中で定着させ、そして次に洗い流した。良好な堅牢性を有する鮮明な多色捺染物を得た。
【0150】
実施例4: 実施例1のインクを使用して、ウール織物を、工業用圧電型ドロップオンデマンド式インクジェット捺染装置(レッジャーニ DReAM)により150m2/hの速度で捺染した。捺染物は、作業ライン上で統合熱風乾燥機により100℃で乾燥し、102℃で飽和蒸気中で定着させ、そして次に洗い流した。良好な堅牢性を有する鮮明な多色捺染物を得た。
【0151】
実施例5: 実施例1に与えられた橙色インクの代わりに、以下を含む橙色の水性インクを使用することを除いて、実施例1を繰り返した:
− 8.0重量%の式(5a)の染料、
− 40.0重量%のジプロピレングリコール、
− 0.3重量%の市販の保存料、
− 51.7重量%の水。
【0152】
実施例6:
a) 絹織物を、150g/lの市販のアルギン酸増粘剤、50g/lの尿素及び50g/lの酒石酸アンモニウム水溶液(25%)を含む水性液(液の含浸率90%)でパジングして、乾燥した。
b) 工程a)により前処理したこの絹織物を、工業用圧電型ドロップオンデマンド式インクジェット捺染装置(レッジャーニ DReAM)により150m2/hの速度で捺染した。この装置は、6色(6インク)を処理し、そして各プロセスカラーは、7つのプリントヘッド(アプリオン)により捺染した。
【0153】
黄色の水性インク(以下を含む):
− 8.0重量%の式(35a)の染料、
− 5.0重量%のε−カプロラクタム、
− 35.0重量%のジプロピレングリコール、
− 0.3重量%の市販の保存料、
− 51.7重量%の水;
赤色の水性インク(以下を含む):
− 9.0重量%の式(34a)の染料、
− 40.0重量%のジプロピレングリコール、
− 0.3重量%の市販の保存料、
− 50.7重量%の水;
赤色の水性インク(以下を含む):
− 1.8重量%の式(34a)の染料、
− 40.0重量%のジプロピレングリコール、
− 0.3重量%の市販の保存料、
− 57.9重量%の水;
青緑色の水性インク(以下を含む):
− 8.0重量%の式(22a)の染料、
− 40.0重量%のジプロピレングリコール、
− 0.3重量%の市販の保存料、
− 51.7重量%の水;
青緑色の水性インク(以下を含む):
− 1.6重量%の式(22a)の染料、
− 40.0重量%のジプロピレングリコール、
− 0.3重量%の市販の保存料、
− 58.1重量%の水;
黒色の水性インク(以下を含む):
− 10.0重量%の式(9a)の染料、
− 10.0重量%のε−カプロラクタム、
− 30.0重量%のジプロピレングリコール、
− 0.3重量%の市販の保存料、
− 49.7重量%の水;
【0154】
捺染物は、作業ライン上で統合熱風乾燥機により100℃で乾燥し、102℃で飽和蒸気中で定着させ、そして次に洗い流した。良好な堅牢性を有する鮮明な多色捺染物を得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
織物繊維材料を捺染するためのインクジェット捺染法であって、繊維材料を、以下:
(I) 少なくとも1つのアニオン性酸性染料、及び
(II) ジプロピレングリコール
を含む水性インク(該インクは25℃で5〜20mPa・sの粘度を有する)で捺染する方法であり、かつ該インクを、外部インクリザーバーからインクを受けるインク供給層(b)(該インク供給層は第1面及び第2面を持ち、かつインクが移動できるように中に複数の細孔及びそこを通って伸びる複数の穴を有する多孔性媒体を含む)を含むインクジェットプリントヘッドで繊維材料に適用する方法。
【請求項2】
水性インクが、アニオン性酸性染料として
式(5):
【化1】


で示されるジスアゾ染料、
式(9):
【化2】


[式中、
16は、水素、C1−C4アルコキシカルボニルアミノ、ベンゾイルアミノ、C1−C4アルキルスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ、メチルフェニルスルホニルアミノ又はハロゲンであり、
17は、水素又はハロゲンであり、そして
18は、C1−C4アルキルスルホニル、C1−C4アルキルアミノスルホニル、フェニルアゾ、スルホ又は−SO2NH2であり、
ベンゾ環D1中のヒドロキシ基はベンゾ環D1上のアゾ基に対してo位に結合している]で示される1:2金属錯体染料、
式(22):
【化3】


[式中、
ベンゾ環D2は、スルホ又はスルホンアミドにより置換されている]で示される銅錯体、
式(26):
【化4】


[式中、
(R341-5は、C1−C4アルキル(非置換であるか、又はC2−C4アルカノイルアミノ(これもまたアルキル基でハロゲンにより置換されていてもよい)若しくはベンゾイルアミノにより置換されている);C1−C4アルコキシ;C2−C4アルカノイルアミノ及びC2−C4ヒドロキシアルキルスルファモイルの群から選択される、1〜5個の同一の又は異なる置換基を意味する]で示される無金属アニオン性アントラキノン染料、
式(34):
【化5】


[式中、
61は、下記式:
【化6】


(式中、R48は、フェニル(非置換であるか、又はC1−C4アルキル、C1−C4アルコキシ、ハロゲン若しくはスルホにより置換されている)であり、R49は、水素又はC1−C4アルキルであり、そしてR50は、ハロゲンである)
で示される基である]で示されるモノアゾ染料;及び
式(35):
【化7】


[式中、
62及びR63は、下記式:
【化8】


(式中、
45は、ヒドロキシ又はアミノであり;そして
46及びR47は、それぞれ他と独立に、水素、C1−C4アルキル又はハロゲンである)で示される基である]で示されるジスアゾ染料を含むことを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
インクの粘度が、25℃で6〜14mPa・s、好ましくは25℃で8〜10mPa・sである、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
ジプロピレングリコールが、インクの総重量に基づいて、25〜45重量%、好ましくは30〜45重量%の量で使用される、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
ε−カプロラクタムが、インクの総重量に基づいて、3〜15重量%、好ましくは5〜15重量%の量で使用される、請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
捺染が、以下:
− 複数の噴射ノズルを画定する、ノズル層(a)
− インクがそこを通って移動できるように多数の互いにつながった小細孔を有する多孔性材料から形成される、インク供給層(b)(該インク供給層は、後方表面から前方表面までの複数の連結内腔を特色とし、該連結内腔のそれぞれは、該噴射ノズルの対応するものとの間をつなぐように整列している)、及び
− ノズルを通してインク液滴を噴射させるために該連結内腔に関係付けられた複数の変換器を含む、偏向層(c)
を含むことを特徴とする少なくとも1つのインクジェットプリントヘッドを備えたインクジェット捺染装置を利用して実施される、請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
捺染が、以下:
− 複数の噴射ノズルを画定する、ノズル層(a)
− ノズル層に結合している前方表面とキャビティ層(d)に結合している後方表面とを有する、インク供給層(b)[該インク供給層は、該後方表面から該前方表面までの複数の連結内腔により形成され、各連結内腔は、該インクキャビティの対応するものと該噴射ノズルの対応するものとの間をつなぐように整列しており、そして該インク供給層は、更に、
(i) 該前方表面において形成されるインク分配チャネルのパターン、及び
(ii) 該後方表面から該前方表面まで通じ、そして該インク分配チャネルのパターンの少なくとも一部と直接流動的に連通するように配列される、少なくとも1つのインク注入口
を特色とする(該インク分配チャネルのパターンと該少なくとも1つのインク注入口とは、一緒になって、該後方表面から該少なくとも1つのインク注入口を通して該前方表面上の該インク分配チャネルのパターンまで、及び該多孔性材料を通して該複数のインクキャビティまで通る、インク流路の一部を画定する)]、
− ノズルを通してインク液滴を噴射させるために該連結内腔に関係付けられた複数の変換器を含む、偏向層(c)
を含むことを特徴とする少なくとも1つのインクジェットプリントヘッドを備えたインクジェット捺染装置を利用して実施される、請求項1〜6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
変換器が、圧電素子である、請求項1〜7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
窒素含有又はヒドロキシル基含有の繊維性材料、特に天然又は合成ポリアミド材料が、捺染される、請求項1〜8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
(I) 少なくとも1つのアニオン性酸性染料、及び
(II) ジプロピレングリコール
を含む、インクジェット捺染法用の水性捺染インク(該インクは25℃で5〜20mPa・sの粘度を有する)。

【公表番号】特表2007−515561(P2007−515561A)
【公表日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−534751(P2006−534751)
【出願日】平成16年10月6日(2004.10.6)
【国際出願番号】PCT/EP2004/052450
【国際公開番号】WO2005/040491
【国際公開日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.バブルジェット
【出願人】(396023948)チバ スペシャルティ ケミカルズ ホールディング インコーポレーテッド (530)
【氏名又は名称原語表記】Ciba Specialty Chemicals Holding Inc.
【Fターム(参考)】