説明

インクジェット捺染用ポリエステル布帛及びそれを得るための前処理剤

【課題】
水洗、ソーピング工程がないインクジェット捺染法を提供する。
【解決手段】
高分子として水に分散または乳化させたアクリル樹脂、ポリエステル樹脂及びウレタン樹脂からなる群から選ばれる少なくとも一種が含まれる水性組成物0.1〜20重量%と、架橋剤としてエポキシ、メチロールメラミン、イソシアネート及びオキサゾールからなる群から選ばれる少なくとも一種の水性組成物0.01〜10重量%が、ポリエステル布帛に対して1〜20重量%片面または両面に付着させ乾燥した後、分散染料インクを付与し架橋剤が架橋する温度以上で熱処理をする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット捺染に適した布帛に関するものであり、更に詳しくはインクジェット捺染に適したポリエステル布帛及びそれを得るための前処理剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェット捺染したポリエステル布帛は十分な染色堅牢度を得るために、水洗、ソーピングの後工程をする必要があり排水処理に大きな負担がかかり更には生産効率も低下していた。このため、特許文献1に示すように、前処理剤の改良が検討された。
【特許文献1】特開2003−3385
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで後工程である、水洗、ソーピング工程がないインクジェット捺染法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、高分子として水に分散または乳化させたアクリル樹脂、ポリエステル樹脂及びウレタン樹脂からなる群から選ばれる少なくとも一種が含まれる水性組成物0.1〜20重量%と、架橋剤としてエポキシ、メチロールメラミン、イソシアネート及びオキサゾールからなる群から選ばれる少なくとも一種の水性組成物0.01〜10重量%が、ポリエステル布帛に対して1〜20重量%片面または両面に付着させ十分に乾燥した後、分散染料インクを付与し架橋剤が架橋する温度以上で熱処理をすることにより、水洗、ソーピングの後工程が無くとも、十分な堅牢度を有するポリエステル布帛が得られることを見出し、本発明を完成した。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、水洗、ソーピング工程等の後工程を必要とすることなしにインクジェット捺染に適したポリエステル布帛を簡単、迅速に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
高分子は水に分散または乳化させた状態でありアクリル樹脂、ポリエステル樹脂及びウレタン樹脂からなる群から選ばれる少なくとも一種が含まれる水性組成物であり、その水性組成物を0.1〜20重量%を前処理剤に配合する。
架橋剤としてエポキシ、メチロールメラミン、イソシアネート及びオキサゾールからなる群から選ばれる少なくとも一種の水性組成物であり、その水性組成物を0.01〜10重量%前処理剤に配合する。
【0007】
使用する分散染料及び加工品の特性等に応じ還元防止剤、酸化防止剤、均染剤、濃染剤、帯電防止剤、ブリード防止剤、金属封鎖剤、粘度調整剤、防腐剤及び消泡剤といった添加剤を前処理剤に入れることが好ましい。
還元防止剤として、パラニトロベンゼンスルホン酸ナトリウム、塩素酸ナトリウムが挙げられる。
還元防止剤は前処理剤に、0.01〜5重量%配合するのが好ましい。
酸化防止剤として、アスコルビン酸ナトリウム、イソアスコルビン酸ナトリウムが挙げられる。
【0008】
酸化防止剤は前処理剤に、0.01〜5重量%配合するのが好ましい。
均染剤、濃染剤として、アニオン系、非イオン系及び両性界面性剤が使用できる。
アニオン系の界面活性剤としては、スルホン酸型、カルボン酸型、硫酸エステル型、リン酸エステル型が挙げられ、スルホン酸型としては、アルキルスルホネート、アルキルアリルスルホネートエステルのスルホネート系界面活性剤、カルボン酸型としては、石鹸、脂肪蛋白質縮合物、硫酸エステル型としては、高級アルコール硫酸エステル、高級アルコールEO付加物流酸エステル、オレフィンの硫酸エステル、脂肪酸の硫酸エステル及びリン酸エステル型としては、高級アルコールリン酸エステル、高級アルコールEO付加物リン酸エステルが挙げられる。
【0009】
非イオン系の界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテル、アセチレングリコール等のエーテル型や、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ソルビタン脂肪酸エステル等のエステル型、ポリオキシエチレンアルキルアミン等のアミノエーテル型及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等のエーテルエステル型を使用することができる。また、両性界面活性剤としてはベタイン型を使用することができる。
【0010】
均染剤、濃染剤は前処理剤に0.01〜5重量%配合することが好ましい。
金属封鎖剤として、エチレンジアミンテトラ酢酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム及びメタリン酸ナトリウムが好ましい。
金属封鎖剤は前処理剤に0.01〜1重量%配合することが好ましい。
帯電防止剤として、アニオン系を0.01〜5重量%、ブリード防止剤としてホワイトカーボンなどを前処理剤に1〜20重量%配合することが好ましい。
粘度調整剤として、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース等のセルロース系物質、アルギン酸ナトリウム、ローカストビーンガム、トラガントガム、グアガム等の多糖類、及び合成高分子としてポリビニルアルコール、アクリル酸系水溶性高分子が挙げられる。
【0011】
粘度調整剤は前処理剤に0.1〜10重量%配合するのが好ましい。
防腐剤、消泡剤は前処理剤に0.1〜1重量%配合するのが好ましい。
前処理において上記物質等を布帛に付着させる方法は、特に制限されないが、通常行われる浸漬法、パッド法、スプレー法、コーティング法のなど方法で付着できる。
前処理剤を付与する面は片面もしくは両面に付着する。
【実施例1】
【0012】
前処理剤の配合は固形分45重量%の水系アクリル樹脂を8重量%、固形分30重量%のメチロールメラミン架橋剤を1重量%、固形分20重量%のオキサゾール架橋剤1重量%、カルボキシメチルセルロースを2重量%及び水を88重量%の混合物。
ポリエステル布帛はポンジーを使用し、前処理法はパッド法を採用し、10秒浸漬させ十分に前処理剤が両面に付与したものをしぼり率は80%でしぼり、シリンダー乾燥機で120℃、3分で乾燥させた。
【0013】
ポンジーとは経糸及び緯糸が75デニールのウーリ加工した織物である。
次ぎにインクジェット捺染機(株式会社ミマキエンジニアリング製のTX2−1600)インクは昇華染料インクで花柄画像を付与した。
花柄画像を付与したポンジーを常温で乾燥させた後、185℃×40秒の熱処理を行った。
(洗濯堅牢度試験)
JISL0844の(A−3法)洗濯に対する染色堅牢度試験方法に準じて洗濯堅牢度試験を行い、評価法はJISL0801に従った。
評価 4−5等級で白場汚染もなく、変退色も見られなかった。
【実施例2】
【0014】
前処理剤の配合は固形分25重量%の水系ポリエステル樹脂10重量%、40重量%の水系ウレタン樹脂20重量%、固形分40重量%のエポキシ架橋剤を2重量%、固形分40重量%のブロック化イソシアネート架橋剤を1重量%、グアガムを2重量%及び水65重量%を配合した混合物。
実施例1と同様に試験及び評価を行った。
評価 4−5等級で白場汚染もなく、変退色も見られなかった。
【0015】
この結果は従来のポリエステル布帛に対するインクジェット捺染加工で行っていた水洗、ソーピングの後処理をしたインクジェット捺染布とほぼ同等の評価であった。
所望の結果が得られたのは、ポンジーに付着した前処理剤を構成している水性組成物である高分子と架橋剤及びインクジェット捺染機で捺染させた昇華染料インクが、架橋剤が反応する温度で架橋し、ポンジーに固着し、十分な洗濯堅牢度を得られたものと推論できる。
【産業上の利用可能性】
【0016】
高分子は水に分散または乳化させたアクリル樹脂、ポリエステル樹脂及びウレタン樹脂からなる群から選ばれる少なくとも一種が含まれる水性組成物0.1〜20重量%と架橋剤はエポキシ、メチロールメラミン、イソシアネート及びオキサゾールからなる群から選ばれる少なくとも一種の水性組成物0.01〜10重量%を配合した前処理剤を、ポリエステル布帛に対して1〜20重量%片面または両面に均一に付着させ乾燥した後、分散染料インクを付与し熱処理により、水洗、ソーピングの後工程が無くとも、滲みがなく鮮明な捺染柄のポリエステル布帛が得られ、インクジェット捺染法による捺染が効率よくでき、かつ水洗、ソーピングという後工程をなくとも十分な染色堅牢度を得ることができ、更には大きな負担がかけていた排水処理がなくなり生産効率が向上し、大幅に工程短縮することができる。







【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル布帛にインクジェット法で捺染する前に付着させるものであって、高分子としてアクリル樹脂、ポリエステル樹脂及びウレタン樹脂からなる群から選ばれる少なくとも一種と、架橋剤としてエポキシ、メチロールメラミン、イソシアネート及びオキサゾールからなる群から選ばれる少なくとも一種が含まれる水性組成物からなることを特徴とする前処理剤。
【請求項2】
請求項1の高分子は水に分散または乳化させたアクリル樹脂、ポリエステル樹脂及びウレタン樹脂からなる群から選ばれる少なくとも一種が含まれる水性組成物が0.1〜20重量%からなる前処理剤。
【請求項3】
請求項1の架橋剤はエポキシ、メチロールメラミン、イソシアネート及びオキサゾールからなる群から選ばれる少なくとも一種が含まれる水性組成物が0.01〜10重量%からなる前処理剤。
【請求項4】
ポリエステル布帛に請求項1の前処理剤を片面又は両面に布帛に対して1〜20重量%付着させ乾燥させたインクジェット用ポリエステル布帛。















【公開番号】特開2009−249773(P2009−249773A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−99863(P2008−99863)
【出願日】平成20年4月8日(2008.4.8)
【出願人】(592226866)株式会社大力 (6)
【Fターム(参考)】