インクジェット装置
【課題】駆動信号を設定して制御するノズル数を少なくしても隣接画素間の膜厚ばらつきを低下することなく、信頼性の高いインクジェット装置を実現する。
【解決手段】一つの画素を複数のノズルからの吐出で塗布する構成とし、前記複数のノズルは、2つのノズル群に分けられ、第1のノズル群のノズルはノズル毎に駆動信号を設定する制御装置と接続されており、第2のノズル群のノズルは共通の駆動信号を設定する制御装置と接続されている。
【解決手段】一つの画素を複数のノズルからの吐出で塗布する構成とし、前記複数のノズルは、2つのノズル群に分けられ、第1のノズル群のノズルはノズル毎に駆動信号を設定する制御装置と接続されており、第2のノズル群のノズルは共通の駆動信号を設定する制御装置と接続されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット装置に関し、例えば有機ELパネルの発光層などの塗布工程に用いられるインクジェット装置の塗布量の制御と装置の安定性及び信頼性確保のための吐出技術に関する。
【背景技術】
【0002】
有機ELディスプレイは、有機発光層の形成方法によって、以下の2つに大別されうる。一つは、有機発光層を蒸着により形成する方法であり、有機発光層が低分子有機材料からなる場合に用いられる。他の一つは、有機発光層を溶媒塗布法により形成する方法であり、有機発光層が低分子有機材料の場合はもちろん、高分子有機材料からなる場合にも用いられることが多い。
【0003】
溶媒塗布法により有機発光層を形成する代表的な手段の一つに、インクジェット装置を用いて、有機発光材料を含むインクの液滴を、ディスプレイ基板の画素に吐出して、有機発光層を形成する方法がある(例えば、特許文献1参照。)。このとき吐出されるインクの液滴には、有機発光材料と溶媒が含まれる。
【0004】
インクジェット装置は、複数のノズルを有するインクジェットヘッドを有し、インクジェットヘッドのノズルと基板との位置関係を制御しながら、ノズルからインクを吐出させるものである(例えば、特許文献2参照。)。特許文献2には、基板に着滴した液滴が等方向に広がって所定の線幅を有する画素を形成することが開示されている。一方、液滴を吐出されるディスプレイ基板の画素は、バンクと称される隔壁で規定されていることが多い。吐出されたインクが画素に位置選択的にとどまるようにするためである。バンクは、各画素毎に、それぞれを区画されている。
【0005】
インクジェット装置は、複数のノズルを有するインクジェットヘッドを備え、ピエゾ素子等の圧電素子を駆動することで液滴を吐出し、インクジェットヘッドあるいは基板を走査させて、基板上の画素に液滴を吐出して有機発光層を形成するものである。しかし、各ノズルに対して、同じ駆動電圧、駆動波形を印加しても吐出されるインクの吐出量は、同じではなく吐出量に差が発生する。そのため、各画素に塗布されたインクの量が違うため、有機発光層の膜厚に違いが生ずる。その結果、点灯表示したときに表示むらが発生する。
【0006】
各画素に同じ量のインクを塗布する方法として、各ノズル毎に液滴吐出量を制御する方法が開示されている。(特許文献3参照)。
【0007】
特許文献3にについて、図13を用いて説明する。図13は、従来の液滴吐出ヘッド及び駆動回路基板の回路構成図である。30は、駆動回路基板を示す。駆動回路基板30は、インクジェットヘッドの各ノズルのインクの吐出量を制御するためのものである。図13に示すように駆動回路基板30は、インターフェース31、描画データメモリ32、アドレス変換回路33、第1の駆動波形メモリ34、第2の駆動波形メモリ35、第1のD/Aコンバータ36、第2のD/Aコンバータ37、第3のD/Aコンバータ38及び第4のD/Aコンバータ39を備えている。インクジェットヘッド100は、COM選択回路40、スイッチング回路50及び圧電素子PZ1〜PZ180からなる圧電素子群60を備えている。この駆動回路基板30が制御するインクジェットヘッドのノズル数は、180ノズルである。この方法により、各ノズルの液滴吐出量は正確に制御することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−362818号公報
【特許文献2】特開2003−266669号公報
【特許文献3】特開2008−191447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献3に示す従来例では、液滴を吐出する基板が小型である場合は特に問題とならないが、基板が大型化したとき、制御するノズル数が増加し、各ノズル毎に駆動波形を制御する回路基板は、複雑となり、信頼性が低下するという問題が発生する。たとえば、20インチパネルでは、基板寸法は370mm×470mmであり、ノズル間ピッチを1200dpi(ドット パー インチ)とするとピッチは21.1667mmとなり約23,000ノズル必要となる。さらに40インチパネルでは、寸法が680mm×880mmとなる。将来は、ディスプレイ業界では、コストダウンを図るために1枚の基板に多面取りするために、1300mm×1500mm、2200mm×2500mmの基板も用いられることも予測される。
【0010】
本発明は、上記従来のインクジェット装置により有機発光層を形成するときに生じる問題点を考慮してなされたものであり、駆動回路基板を複雑にすることなく、信頼性の高いインクジェット装置を提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る第1のインクジェット装置は、ノズルからインクを吐出して基板上に設けられた画素にインクを塗布するインクジェット装置であって、前記ノズルは、一つの画素を第1のノズル群に属するノズルからの吐出と第2のノズル群に属するノズルからの吐出とで塗布するよう配置され、第1のノズル群のノズルはノズル毎に駆動信号を設定する制御装置と接続されており、第2のノズル群のノズルは共通の駆動信号を設定する制御装置と接続することにより駆動回路基板を複雑にすることなく、信頼性が高く、駆動回路基板の高コスト化を抑えることができる。
【0012】
本発明の第2のインクジェット装置においては、前記の第1の観点における前記第1のノズル群の前記ノズルの数が、前記画素に着弾塗布可能なノズルの数より少ない。
【0013】
本発明に係る第3のインクジェット装置においては、前記の第2の観点における前記第1のノズル群のノズルが、前記画素に対して、前記ノズルの内、1ノズル分だけである。
【0014】
本発明に係る第4のインクジェット装置においては、前記の第2の観点における前記第1のノズル群のノズルは、不吐出になったときに補完するためのノズルを有し、前記補完するためのノズルは、前記ノズルが塗布する着弾位置に対して隣接して塗布する位置である。
【0015】
本発明に係る第5のインクジェット装置においては、前記の第4の観点における前記補完するためのノズルは、前記ノズルが塗布する着弾位置に対して片側あるいは両側に塗布する位置に配置されている。
【0016】
本発明に係る第6のインクジェット装置においては、前記の第5の観点における前記片側に配置された前記補完するためのノズルは、前記画素の中央から遠い位置に着弾するノズルである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、基板上の画素に塗布するとき、制御するノズル数を減らしても各画素の塗布量を一定にすることができるため、駆動回路基板を複雑にすることなく、信頼性の高いインクジェット装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る実施の形態1の有機電界発光ディスプレイの製造方法におけるインクを塗布すべき基板の平面図
【図2】実施の形態1の有機電界発光ディスプレイの製造方法における基板の拡大断面図であり、図1に示した基板のA−A線による断面図
【図3】実施の形態1の有機電界発光ディスプレイの製造方法において用いられるインクジェット装置のインクジェットヘッドと基板の位置関係を示す図
【図4】実施の形態1乃至4の有機電界発光ディスプレイの製造方法において用いられるインクジェット装置におけるインクジェットヘッドの配置を示す図
【図5】実施の形態1乃至4の有機電界発光ディスプレイの製造方法において用いられるインクジェット装置におけるインクジェットヘッドのノズル列の拡大図
【図6】実施の形態1の有機電界発光ディスプレイの製造方法においてインクジェットヘッドのノズル毎に駆動信号を設定して制御するノズル列10と共通の駆動信号を設定して制御するノズル列11の配置図
【図7】実施の形態1の有機電界発光ディスプレイの製造方法において、画素に液滴を塗布したときの、各ノズルから吐出されたインクの着弾時の塗布位置を示す図
【図8】実施の形態1の有機電界発光ディスプレイの製造方法において、インクジェット装置を用いて形成された有機発光層を有する有機ELディスプレイの概略層構成を示す断面図
【図9】実施の形態1の有機電界発光ディスプレイの製造方法におけるプロセスを示すフローチャートを示す図
【図10】本発明に係る実施の形態2の有機電界発光ディスプレイの製造方法における画素4に液滴を塗布したときの、各ノズルから吐出されたインクの着弾時の塗布位置を示す図
【図11】本発明に係る実施の形態3の有機電界発光ディスプレイの製造方法における画素4に液滴を塗布したときの、各ノズルから吐出されたインクの着弾時の塗布位置を示す図
【図12】本発明に係る実施の形態4の有機電界発光ディスプレイの製造方法における画素4に液滴を塗布したときの、各ノズルから吐出されたインクの着弾時の塗布位置を示す図
【図13】従来のインクジェットヘッドの各ノズルの吐出量を制御するための駆動回路基板を示す図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る好適な実施の形態のインクジェット装置について説明する。
【0020】
なお、以下の説明においては有機発光膜を有する有機電界発光ディスプレイ(以下、有機ELディスプレイと略称)の製造方法について例示として添付の図面を参照しつつ説明する。なお、本発明のインク塗布方法及びインクジェット装置は、有機ELディスプレイの製造方法に限定されるものではなく、各種電子機器のディスプレイ、例えば、液晶表示デバイスのカラーフィルター等にも応用可能である。
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0022】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1の有機ELディスプレイの製造方法における、有機発光材料を含むインクを塗布すべき基板を上方から見た平面図である。図2は、図1に示した基板の拡大断面図であり、図2は図1に示した基板1のA−A線による断面図である。
【0023】
図1及び図2に示すように、基板1はベース基板2上に画素4を規定するためのバンク3が形成されている。バンク3が形成されているベース基板2には、図示省略するが反射陽極、正孔注入層等の有機ELディスプレイとして必要な要素が形成されている。バンク3の断面形状は、図2に示すように順テーパ型であってもよく、裾が狭くなった逆テーパ型であってもよい。
【0024】
実施の形態1におけるバンク3の材料としては、絶縁性を有する材料であれば任意に用いることが可能であり、耐熱性、溶媒に対する耐性を持つ絶縁性樹脂(例えばポリイミド樹脂等)であることが好ましい。また、バンク3は撥水性をもたせるためフッ素が添加されている。バンク3の形成方法としては、フォトリソグラフィ技術等が用いられており、パターニングにより形成される。例えば、バンク材料を塗布した後、ベーク処理→マスク露光処理→現像処理等により所望の形状がベース基板2上に形成される。
【0025】
バンク3により規制され区画される領域にはインク9が吐出され塗布される。バンク3は撥水性を有するため、後述するようにインク9が画素4に塗布されたときバンク3間で盛り上がってもバンク3により確実に保持され、バンク3間に確実に収納される。
【0026】
図1の平面図に示すように、ベース基板2上に形成されたバンク3は、R(レッド),G(グリーン),B(ブルー)用のそれぞれの複数の画素4を含むよう構成され、それぞれライン状に配列されている。
【0027】
各画素4間のバンク3の幅は60μmで形成されている。上記のように形成されたR,G,B用のバンク3は基板1において350μmのピッチで繰り返して形成されている。
【0028】
図3は、実施の形態1のインクジェット装置におけるR,G,B用の3つのインクジェットラインヘッド5R,5G,5Bと、図1に示した基板1との位置関係を示す図である。後述する走査動作において、バンク3により囲まれた列領域内がインク9の着滴位置(いわゆる、着弾地点)となるよう配置されている。図3において、符号Xで示す矢印がインクジェットヘッド6の走査方向である。
【0029】
図4は、インクジェットラインヘッド5(5R,5G,5B)における基板対向面を示す図である。インクジェットラインヘッド5R,5G,5Bは、斜めに配置されたインクジェットヘッド6を並べた構成になっている。R,G,B用の3つのインクジェットヘッド6R,6G,6Bはそれぞれ同じ構成であるため以下の説明においてはインクジェットラインヘッド5として説明する。
【0030】
7は、ノズル列を示す。ノズル列7は、それぞれ2ラインづつ隣接し、合計:8ラインある。直線A,直線B,直線Cは、走査方向に対して、ノズル列7が斜めに配置されていることによりベース基板2上で等間隔に塗布できることを説明するために記した直線である。
【0031】
図5は、ノズル列7の一部を拡大した図を示し、ノズル8がライン状に配置されている。
【0032】
図4に示すように、インクジェットラインヘッド5において、複数のノズル8が基板1に対向する面に形成されている。インクジェットラインヘッド5においては、基板1への走査方向(図4における矢印X方向)に対して、複数のノズル8がライン状に配置されたノズル列7が斜めに配置されており、複数のノズル8を有する列が複数列で互いに平行に配置されている。
【0033】
インクジェットラインヘッド5において、複数のノズル8がライン状に配置されたノズル列7が、走査方向に対して斜めに配置しているのは、バンク3により囲まれた列領域内にインク9を塗布するとき、ノズル8から吐出されたインク9が着滴位置で互いに連結するように、ノズル8間のピッチを短く、例えば、約20μmとするためである。このように、複数のノズル8のノズル列7を走査方向に対して斜めに配置することにより、ノズルピッチの間隔を所望の距離に短く設定することが可能となる。
【0034】
図6は、インクジェットヘッド6のノズル列7におけるノズル8において、ノズル毎に駆動信号を設定して制御するノズル列10と共通の駆動信号を設定して制御するノズル列11の配置図である。ノズル毎に駆動信号を設定して制御するノズル列10は黒丸で、共通の駆動信号を設定して制御するノズル列11は白丸で表している。ノズル列7の内、2列のノズル群のみノズル毎に駆動信号を設定して制御する構成となっている。
【0035】
図7は、画素4に液滴を塗布したときの、各ノズルから吐出されたインクの着弾時の塗布位置を示す。図7において、黒丸は、ノズル毎に駆動信号を制御して吐出されたインク9の着弾位置を示し、白丸は、共通の駆動信号で制御されたノズルから吐出されたインク9の着弾位置を示す。符号Xで示す矢印がインクジェットラインヘッド5の走査方向を示す。
【0036】
図7は、画素4に液滴を塗布する場合を示す。本実施の形態では1つの画素あたりの寸法は、60μm×170μmで、26滴塗布する場合を示す。高精細になるほど狭い領域への塗布となる。着弾時の塗布位置のピッチは、約20μmである。画素4に塗布される液滴数は、所望の膜厚になるように設定される。画素4の長手方向の最大塗布液滴数は、長手方向の寸法を170μmとしたときに、ノズル間ピッチが20μmであることから、170/20=8.5より長手方向に9滴塗布が可能となる。
【0037】
画素4に26滴塗布する場合は、たとえば、9滴、8滴、9滴とライン状に塗布する。本実施形態では、5.29μm毎に3ライン分で塗布する例を示す。何ラインでどの位置に塗布するかは、膜厚の均一性を考慮し決めるのが良い。走査方向Xでの塗布ピッチは、4800dpiで塗布する場合、5.29μmとなり、走査方向の画素4の長さを60μmとしたときに、60μm/5.29μm=11.4から11ライン状での塗布が可能である。しかし、混色などを防ぐため、できるだけ画素4の中心部に近い位置で塗布することになる。そのため、3ラインで塗布するか、1ライン飛ばしで、5ライン分の距離で塗布することになる。
【0038】
以下、実施の形態1における有機ELディスプレイの製造方法において実行される具体的な塗布方法について説明する。
【0039】
インクジェットラインヘッド5におけるノズル8のインク9の吐出量は、事前に測定する。測定方法には、たとえば、重量法やレーザー顕微鏡による評価方法がある。重量法は、1つのノズル8に対して、一定時間だけインク9を吐出させ、インクの重量を化学天秤などの高精度なはかりで測定する方法である。インクジェットヘッド6の駆動周波数より一定時間の吐出回数がわかるため、一回あたりの吐出量がわかる。重量法はインクの吐出量そのものがわかる。レーザー顕微鏡による方法は、1つのノズル8から、例えば、50滴のインク9を吐出し、インク9を乾燥させ、乾燥後の体積を測定し、吐出液滴数で割って、1ノズル8の体積を求め、乾燥前のインク9に換算して吐出量を算出する方法である。
【0040】
インクジェットラインヘッド5による基板1に対する塗布方法は、インクジェットラインヘッド5を基板1に対して走査しつつ、ノズル8からインクを吐出する。このときの走査方向は、図3に示したように、基板1におけるライン状に配置されたR,G、Bの画素4を含むバンク3に直交する方向と同じ方向である。R,G,B用の各列領域にノズル8から所定のインク9が吐出されるように想定されて、インクジェットラインヘッド5(5R,5G,5B)が基板1に対して塗布動作を行う。
【0041】
以下、本実施形態でのノズルの制御方法のプロセスについて説明する。各ノズルの吐出量は、図3と図7に示すように、画素4に塗布するノズル8の位置が事前にわかるため、まず、各画素の吐出量を算定する。次に吐出量の総量が所望の量より多くなると予測されるときは、黒丸で表されるノズル毎に駆動信号を制御して吐出するノズルのインク吐出量を減らして所望の値に近づける。吐出量の総量が所望の量より少なくなると予測されるときは、黒丸で表されるノズル毎に駆動信号を制御して吐出するノズルのインク吐出量を増やして所望の値に近づける。
【0042】
たとえば、ノズル8から吐出する狙いの吐出量を7plとしたとき、画素4内に26滴塗布したときは、182plが吐出量の狙いとなる。実際のノズル8の吐出量から算定したとき、画素4内に入る吐出量が少ない場合、たとえば、172plの場合は、あと10pl追加すれば良い。画素4内に入るノズル毎に駆動信号を設定して制御するノズル列10内のノズル8は、2ノズルそれぞれ3回吐出することになるため、10÷9=1.11plより、駆動信号を設定して制御するノズル列7内のノズル8の吐出量は、7+1.11=8.11pl吐出すればよいことがわかる。画素4内に塗布する吐出量が、逆に182plより多いときは、画素4内に入るノズル毎に駆動信号を設定して制御するノズル列10内のノズル8の吐出量を少なくして調整すればよいことになる。たとえば、画素4内に塗布する吐出量が、192plの場合、10pl多いため、10÷9=1.11plとなり、駆動信号を設定して制御するノズル列7内のノズル8の吐出量は、7−1.11=5.89pl吐出すればよいことがわかる。以上の方法をインクジェットラインヘッド5(5R,5G,5B)のライン方向の各画素に対応するノズル毎に駆動信号を設定して制御するノズル列10内のノズル8の吐出量を調整する。
【0043】
また、本実施形態では、インクジェットヘッド6のノズル8を駆動するための制御基板(図示せず)の信号を中継するフレキシブル基板(図示せず)は、はんだ接合やACF(異方性導電粒子)接合されている。ノズル毎に駆動信号を設定して制御するノズル列10が8列中の2列であり、回路を接続するフレキシブル基板の構成が、シンプルとなりフレキシブル基板を実装しやすいというメリットがある。
【0044】
以上のように、本発明に係る実施の形態1のインクジェット装置においては、基板1上のバンク3により区画され規定された画素4に対してインク9を吐出するときに、画素4内に吐出する、ノズル毎に駆動信号を設定して制御するノズル列10内のノズル8の吐出量を制御することにより、全てのノズル8を制御することなく、制御するノズル数を減らしても各画素の塗布量を一定にすることができるため、駆動回路基板を複雑にすることなく、信頼性の高い塗布を実現することができる。また、駆動回路基板の高コスト化を抑えることができる。
【0045】
また、回路を接続するフレキシブル基板の構成が、シンプルとなりフレキシブル基板を実装しやすいというメリットがある。
【0046】
実施の形態1のインクジェット装置において、ノズル8からの塗布速度は、走査方向のDPI(ドットパーインチ)が4800dpiであるため、走査方向に5.291667μmの距離となる。インクジェット装置による基板1に対する塗布処理は、一回の走査動作において行うことができる構成である。R,G,Bのインク9の塗布順序は、特に限定されない。なお、塗布後に形成されるR,G,Bの有機発光層の厚みは、約50〜100nm(例えば、70nm)であることが好ましい。
【0047】
塗布後の厚みは、塗布処理後において、真空乾燥して有機発光膜を形成してその膜厚を測定する。乾燥条件は、塗布後1分間放置した後、乾燥炉に入れ、5分間で1Paまで真空に引いた後、温度を40℃、真空度を1Paに保持した状態で20分間乾燥させたものである。
【0048】
<実施例>
実施の形態1において、インクジェットラインヘッド5におけるノズル8のインク9の吐出量は、事前に測定する。測定方法には、重量法を用いた。ノズル8の駆動周波数を10kHzで実施した。
【0049】
インクジェットラインヘッド5による基板1に対する塗布方法は、インクジェットラインヘッド5を基板1に対して走査しつつ、ノズル8からインクを吐出する。このときの走査方向は、図3に示したように、基板1におけるライン状に配置されたR,G,Bの画素4を含むバンク3に直交する方向と同じ方向である。R,G,B用の各列領域にノズル8から所定のインク9が吐出されるように想定されて、インクジェットラインヘッド5(5R,5G,5B)が基板1に対して塗布動作を行う。基板1の寸法は、370mm×470mmの大きさの基板を用いた。
【0050】
各ノズルの吐出量は、図3と図7に示すように、画素4に塗布するノズル8の位置が事前にわかるため、各画素の吐出量を算定する。たとえば、ノズル8から吐出する狙いの吐出量を7plとしたとき、画素4内に26滴塗布したときは、182plが吐出量の狙いとした。画素4内に入るノズル毎に駆動信号を設定して制御するノズル列10内のノズル8の吐出量を調整し、画素4内に吐出される吐出量を182plとなるように制御した。
【0051】
以上の方法により、インク9を塗布し、真空乾燥して有機発光膜を形成してその膜厚を測定した結果、隣接画素間のバラツキが、制御前の膜厚ばらつきが、3σで2.5%に対して、ノズルの吐出量を制御することにより、1.2%のバラツキに改善された。
【0052】
実施の形態1のインクジェット装置において、インク9に含まれる有機発光材料は高分子系発光材料であることが好ましく、高分子系発光材料の例としては、ポリフェニレンビニレン(Poly phenylene vinylene(PPV))及びその誘導体、ポリアセチレン(Poly acetylene)及びその誘導体、ポリフェニレン(Polyphenylene)及びその誘導体、ポリパラフェニレンエチレン(Poly para phenyleneethylene)及びその誘導体、ポリ3−ヘキシルチオフェン(Poly 3−hexyl thiophene (P3HT))及びその誘導体、ポリフルオレン(Poly fluorene (PF))及びその誘導体等が含まれる。なお、インクの粘度は、約10mPa・s前後が用いられる。
【0053】
図8は、実施の形態1のインクジェット装置を用いて形成された有機発光層等を有する有機ELディスプレイの一例を示すものであり、有機ELディスプレイにおける層構成の概略を示す断面図である。図8に示す各層の相対的な膜厚及び形状は、実際の膜厚及び形状を示すものではなく、説明上わかりやすく記載したものである。
【0054】
図8に示す有機ELディスプレイは、ベース基板にある平坦化膜14上に反射陽極15、正孔注入層16が形成されており、その正孔注入層16上に前述のバンク3が形成されている。前述のようにバンク3により区画される領域にインターレイヤー層(IL層)17及び有機発光層18が形成されている。反射陽極15は図1に示した画素4に対応して分離して作成されており、ディスプレイの発光部となる。
【0055】
なお、実施の形態1のインクジェット装置は、有機発光層18の形成における塗布処理において用いると共に、インターレイヤー層(IL層)17の形成における塗布処理においても同様の構成のインクジェット装置が用いられる。
【0056】
図8に示すように、有機ELディスプレイにおいては有機発光層18及びバンク3を覆うように電子輸送層19、陰極21、封止層21及び樹脂層22が形成されている。そして、樹脂層22の上部には基板23及び偏光板24等が設けられて有機ELディスプレイが構成されている。
【0057】
上記のように構成された有機ELディスプレイは、図9のプロセスフローチャートに示すように製造されている。即ち、平坦化膜形成→反射陽極形成→正孔注入層形成→バンク形成→インタレイヤー層(以降IL層と記す)形成→有機発光層形成→電子輸送層形成→陰極形成→封止層形成→樹脂層形成の順に製造される。この製造プロセスにおいて、IL層及び有機発光層が実施の形態1において説明したインクジェット装置を用いて所定の材料が塗布されて生成される。
【0058】
以上のように、実施の形態1の有機ELディスプレイの製造方法において、インクジェット装置は、基板1上のバンク3により区画され規定された画素4に対してインク9を吐出するときに、画素4内に入るノズル毎に駆動信号を設定して制御するノズル列10内のノズル8の吐出量を制御することにより、全てのノズル8を制御することなく、制御するノズル数を減らしても各画素の塗布量を一定にすることができるため、駆動回路基板を複雑にすることなく、信頼性が高く、駆動回路基板の高コスト化を抑えることができる。
【0059】
実施の形態1の有機ELディスプレイの製造方法によれば、画素4間の膜厚の均一性を確保することができるため、輝度ムラのない高品質の有機ELディスプレイを提供することができる。
【0060】
(実施の形態2)
以下、本発明に係る実施の形態2のインクジェット装置について図面を参照しつつ説明する。
【0061】
実施の形態2のインクジェット装置において、前述の実施の形態1と主要部の構成は同じである。実施の形態1のインクジェット装置と異なる点は、画素4内に吐出するノズル8において、駆動信号を設定して制御するノズルが1ノズルであることである。実施形態2の説明において、前述の実施形態1において説明したものと同じ構成を有するものには同じ符号を付してその説明は実施の形態1の説明を援用して実施の形態2においては省略する。
【0062】
図10は、画素4に液滴を塗布したときの、各ノズルから吐出されたインクの着弾時の塗布位置を示す。図10において、黒丸は、ノズル毎に駆動信号を制御して吐出されたインク9の着弾位置を示し、白丸は、共通の駆動信号で制御されたノズルから吐出されたインク9の着弾位置を示す。符号Xで示す矢印がインクジェットラインヘッド5の走査方向を示す。図10は、前述の実施の形態1と同様、画素4に26滴塗布する場合を示す。
【0063】
以下、実施の形態2における有機ELディスプレイの製造方法において実行される具体的な塗布方法について説明する。
【0064】
インクジェットラインヘッド5におけるノズル8のインク9の吐出量は、実施の形態1と同様、事前に測定する。インクジェットラインヘッド5による基板1に対する塗布方法は、インクジェットラインヘッド5を基板1に対して走査しつつ、ノズル8からインクを吐出する。
【0065】
このときの走査方向は、図3に示したように、基板1におけるライン状に配置されたR,G,Bの画素4を含むバンク3に直交する方向と同じ方向である。R,G,B用の各列領域にノズル8から所定のインク9が吐出されるように想定されて、インクジェットラインヘッド5(5R,5G,5B)が基板1に対して塗布動作を行う。各ノズルの吐出量は、図3と図10に示すように、画素4に塗布するノズル8の位置が事前にわかるため、各画素の吐出量を算定する。
【0066】
たとえば、ノズル8から吐出する狙いの吐出量を7plとしたとき、画素4内に26滴塗布したときは、182plが吐出量の狙いとなる。実際のノズル8の吐出量から算定したとき、画素4内に入る吐出量が少ない場合、たとえば、172plの場合は、あと10pl追加すれば良い。画素4内に入るノズル毎に駆動信号を設定して制御するノズル列10内のノズル8は、1ノズル3回吐出することになるため、10÷3=3.33plより、駆動信号を設定して制御するノズル列7内のノズル8の吐出量は、7+3.33=10.33pl吐出すればよいことがわかる。
【0067】
画素4内に塗布する吐出量が、逆に182plより多いときは、画素4内に入るノズル毎に駆動信号を設定して制御するノズル列10内のノズル8の吐出量を少なくして調整すればよいことになる。たとえば、画素4内に塗布する吐出量が、192plの場合、10pl多いため、10÷3=3.33plとなり、駆動信号を設定して制御するノズル列7内のノズル8の吐出量は、7―3.33=3.67pl吐出すればよいことがわかる。
【0068】
以上の方法をインクジェットラインヘッド5(5R,5G,5B)のライン方向の各画素に対応するノズル毎に駆動信号を設定して制御するノズル列10内のノズル8の吐出量を調整する。
【0069】
以上のように、本発明に係る実施の形態2のインクジェット装置においては、基板1上のバンク3により区画され規定された画素4に対してインク9を吐出するときに、画素4内に吐出するノズル8に対して駆動信号を設定して制御するノズルが1ノズルとすることにより、全てのノズル8を制御することなく、制御するノズル数を減らしても各画素の塗布量を一定にすることができるため、駆動回路基板を複雑にすることなく、信頼性の高い塗布を実現することができる。また、駆動回路基板の高コスト化を抑えることができる。
【0070】
実施の形態2の有機ELディスプレイの製造方法によれば、画素4間の膜厚の均一性を確保することができるため、輝度ムラのない高品質の有機ELディスプレイを提供することができる。
【0071】
(実施の形態3)
以下、本発明に係る実施の形態3のインクジェット装置について図面を参照しつつ説明する。
【0072】
実施の形態3のインクジェット装置において、前述の実施形態2と主要部の構成は同じである。実施形態2のインクジェット装置と異なる点は、画素4内に吐出するノズル8において、駆動信号を設定して制御するノズルの隣接ノズルも駆動信号を設定して制御できることである。実施の形態1では、ノズル配置から4つのノズル8おきに吐出する構成となっているため、隣接ノズルは存在しない。
【0073】
実施の形態2も1ノズル8だけであるので、隣接ノズルは存在しない。実施形態3の説明において、前述の実施形態1において説明したものと同じ構成を有するものには同じ符号を付してその説明は実施の形態1の説明を援用して実施の形態3においては省略する。
【0074】
図11は、画素4に液滴を塗布したときの、各ノズルから吐出されたインクの着弾時の塗布位置を示す。図11において、黒丸は、ノズル毎に駆動信号を制御して吐出されたインク9の着弾位置を示し、白丸は、共通の駆動信号で制御されたノズルから吐出されたインク9の着弾位置を示す。斜線の丸は、黒丸の位置に着弾させる駆動信号を制御して吐出するノズル8が不吐出になった場合の補完ノズルの着弾位置である。
【0075】
ノズル8が不吐出になった場合の補完ノズルの着弾位置(駆動信号を制御して吐出するノズルが不吐出になった場合の補完ノズルの着弾位置26)は、画素4の中心から遠い方に配置する。これは、本来のノズル毎に駆動信号を制御して吐出されるノズル8の着弾位置は、画素4の中心部に近い方が、画素の均一性が良好であるからである。なお、実施の形態1及び実施の形態2では、隣接ノズルは存在しないため、補完ノズルは有していないことになる。
【0076】
符号Xで示す矢印がインクジェットラインヘッド5の走査方向を示す。図11は、前述の実施の形態1と同様、画素4に26滴塗布する場合を示す。
【0077】
以下、実施の形態2における有機ELディスプレイの製造方法において実行される具体的な塗布方法について説明する。
【0078】
インクジェットラインヘッド5におけるノズル8のインク9の吐出量は、実施の形態1と同様、事前に測定する。インクジェットラインヘッド5による基板1に対する塗布方法は、インクジェットラインヘッド5を基板1に対して走査しつつ、ノズル8からインクを吐出する。このときの走査方向は、図3に示したように、基板1におけるライン状に配置されたR,G,Bの画素4を含むバンク3に直交する方向と同じ方向である。R,G,B用の各列領域にノズル8から所定のインク9が吐出されるように想定されて、インクジェットラインヘッド5(5R,5G,5B)が基板1に対して塗布動作を行う。
【0079】
各ノズルの吐出量は、図3と図11に示すように、画素4に塗布するノズル8の位置が事前にわかるため、各画素の吐出量を算定する。たとえば、ノズル8から吐出する狙いの吐出量を7plとしたとき、画素4内に26滴塗布したときは、182plが吐出量の狙いとなる。仮に黒丸の位置に着弾させる駆動信号を制御して吐出するノズル8が不吐出になった場合、182plから共通の駆動信号で制御されたノズルから吐出されたインク9の量を引いた残りの吐出量を補完ノズルでインク9の量を補うことにより182plを画素4の供給することができる。
【0080】
以上のように、本発明に係る実施の形態3のインクジェット装置においては、基板1上のバンク3により区画され規定された画素4に対してインク9を吐出するときに、画素4内に吐出するノズル8に対して駆動信号を設定して制御するノズルが不吐出となっても、隣接して配置された補完ノズルにより、各画素の塗布量を一定にすることができる。その結果、駆動信号を制御して吐出するノズル数は全数ではなく、少なくすることができるため、駆動回路基板を複雑にすることなく、信頼性の高い塗布を実現することができる。また、駆動回路基板の高コスト化を抑えることができる。
【0081】
実施の形態3の有機ELディスプレイの製造方法によれば、画素4間の膜厚の均一性を確保することができるため、輝度ムラのない高品質の有機ELディスプレイを提供することができる。
【0082】
(実施の形態4)
以下、本発明に係る実施の形態4のインクジェット装置について図面を参照しつつ説明する。
【0083】
実施の形態4のインクジェット装置において、前述の実施形態3と主要部の構成は同じである。実施形態3のインクジェット装置と異なる点は、画素4内に吐出するノズル8において、駆動信号を設定して制御するノズル8が不吐出になったときに補完するノズルが両側にあることである。実施形態4の説明において、前述の実施形態1において説明したものと同じ構成を有するものには同じ符号を付してその説明は実施の形態1の説明を援用して実施の形態4においては省略する。
【0084】
図12は、画素4に液滴を塗布したときの、各ノズルから吐出されたインクの着弾時の塗布位置を示す。図12において、黒丸は、ノズル毎に駆動信号を制御して吐出されたインク9の着弾位置を示し、白丸は共通の駆動信号で制御されたノズルから吐出されたインク9の着弾位置を示す。斜線の丸は、黒丸の位置に着弾させる駆動信号を制御して吐出するノズル8が不吐出になった場合の補完ノズルの着弾位置である。ノズル毎に駆動信号を制御して吐出されたインク9の着弾位置の両側に着弾するノズルを表す。
【0085】
符号Xで示す矢印がインクジェットラインヘッド5の走査方向を示す。図12は、前述の実施の形態1と同様、画素4に26滴塗布する場合を示す。
【0086】
以下、実施の形態2における有機ELディスプレイの製造方法において実行される具体的な塗布方法について説明する。
【0087】
インクジェットラインヘッド5におけるノズル8のインク9の吐出量は、実施の形態1と同様、事前に測定する。インクジェットラインヘッド5による基板1に対する塗布方法は、インクジェットラインヘッド5を基板1に対して走査しつつ、ノズル8からインクを吐出する。
【0088】
このときの走査方向は、図3に示したように、基板1におけるライン状に配置されたR,G,Bの画素4を含むバンク3に直交する方向と同じ方向である。R,G,B用の各列領域にノズル8から所定のインク9が吐出されるように想定されて、インクジェットラインヘッド5(5R,5G,5B)が基板1に対して塗布動作を行う。各ノズルの吐出量は、図3と図12に示すように、画素4に塗布するノズル8の位置が事前にわかるため、画素の吐出量を算定する。たとえば、ノズル8から吐出する狙いの吐出量を7plとしたとき、画素4内に26滴塗布したときは、182plが吐出量の狙いとなる。仮に黒丸の位置に着弾させる駆動信号を制御して吐出するノズル8が不吐出になった場合、182plから共通の駆動信号で制御されたノズルから吐出されたインク9の量を引いた残りの吐出量を補完ノズルでインク9の量を補うことにより182plを画素4の供給することができる。
【0089】
以上のように、本発明に係る実施の形態3のインクジェット装置においては、基板1上のバンク3により区画され規定された画素4に対してインク9を吐出するときに、画素4内に吐出するノズル8に対して駆動信号を設定して制御するノズルが不吐出となっても、隣接して配置された補完ノズルのより、各画素の塗布量を一定にすることができる。その結果、駆動信号を制御して吐出するノズル数は全数ではなく、少なくすることができるため、駆動回路基板を複雑にすることなく、信頼性の高い塗布を実現することができる。
【0090】
また、駆動回路基板の高コスト化を抑えることができる。
【0091】
実施の形態3の有機ELディスプレイの製造方法によれば、画素4間の膜厚の均一性を確保することができるため、輝度ムラのない高品質の有機ELディスプレイを提供することができる。
【0092】
<他の実施の形態>
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記1乃至4の実施の形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【0093】
例えば、実施の形態1乃至実施の形態4においては、1枚の基板にR,G,Bの画素がある基板に塗布する場合を説明したが、多面どりするために、基板内に、多数個のパターンが存在する場合も、画素の部分のみ塗布する場合を考慮して同様に扱うことができる。
【0094】
実施の形態1の実施例においては、ノズルから吐出するインクの通常の吐出周波数を10kHzとして説明したが、特にこの周波数に限定されるものではなく、製造される有機ELディスプレイの仕様等に応じて適宜設定される。
【0095】
実施の形態1乃至実施の形態4においては、インクジェットヘッドにおいて複数のノズルがライン状に配置された列を走査方向に対して斜めに配置して、走査方向に直交する方向のノズル間のピッチを約20μm(例えば、21.16666μm)として設計した。これは、ノズルから吐出されたインクが着滴位置において互いに連結するようにするためである。したがって、走査方向に直交する方向のノズル間のピッチは、10μm〜50μmの範囲内であることが好ましいが、特に限定する必要はない。
【0096】
また、実施の形態1乃至実施の形態4において、ノズルから吐出されるインクの一滴当たりの量は、7plとしたが、1pl〜15plの範囲内であることが好ましく、特に限定されるものではない。
【0097】
実施の形態1の実施例においてインクの粘度が10mPa・s のものを用いたが、本発明においてはインクの粘度をこの数値に限定するものではなく、約5〜20mPa・sの範囲内が好ましく、特に限定されるものではい。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明のインク塗布方法及びインクジェット装置は、制御するノズル数を減らしても各画素の塗布量を一定にすることできるといった効果を有し、有機ELパネルの発光層などの塗布工程に用いられるインクジェット装置や、プリンタの記録工程やカラーフィルター製造に用いられるインクジェット装置等に広く適用可能である。
【符号の説明】
【0099】
1,23 基板
2 ベース基板
4 画素
5,5R,5G,5B インクジェットラインヘッド
6,6R,6G,6B,100 インクジェットヘッド
7 ノズル列
8 ノズル
9 インク
10 ノズル毎に駆動信号を設定して制御するノズル列
11 共通の駆動信号を設定して制御するノズル列
12 ノズル毎に駆動信号を制御して吐出されたインク9の着弾位置
13 共通の駆動信号で制御されたノズルから吐出されたインク9の着弾位置
26 駆動信号を制御して吐出するノズルが不吐出になった場合の補完ノズルの着弾位置
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット装置に関し、例えば有機ELパネルの発光層などの塗布工程に用いられるインクジェット装置の塗布量の制御と装置の安定性及び信頼性確保のための吐出技術に関する。
【背景技術】
【0002】
有機ELディスプレイは、有機発光層の形成方法によって、以下の2つに大別されうる。一つは、有機発光層を蒸着により形成する方法であり、有機発光層が低分子有機材料からなる場合に用いられる。他の一つは、有機発光層を溶媒塗布法により形成する方法であり、有機発光層が低分子有機材料の場合はもちろん、高分子有機材料からなる場合にも用いられることが多い。
【0003】
溶媒塗布法により有機発光層を形成する代表的な手段の一つに、インクジェット装置を用いて、有機発光材料を含むインクの液滴を、ディスプレイ基板の画素に吐出して、有機発光層を形成する方法がある(例えば、特許文献1参照。)。このとき吐出されるインクの液滴には、有機発光材料と溶媒が含まれる。
【0004】
インクジェット装置は、複数のノズルを有するインクジェットヘッドを有し、インクジェットヘッドのノズルと基板との位置関係を制御しながら、ノズルからインクを吐出させるものである(例えば、特許文献2参照。)。特許文献2には、基板に着滴した液滴が等方向に広がって所定の線幅を有する画素を形成することが開示されている。一方、液滴を吐出されるディスプレイ基板の画素は、バンクと称される隔壁で規定されていることが多い。吐出されたインクが画素に位置選択的にとどまるようにするためである。バンクは、各画素毎に、それぞれを区画されている。
【0005】
インクジェット装置は、複数のノズルを有するインクジェットヘッドを備え、ピエゾ素子等の圧電素子を駆動することで液滴を吐出し、インクジェットヘッドあるいは基板を走査させて、基板上の画素に液滴を吐出して有機発光層を形成するものである。しかし、各ノズルに対して、同じ駆動電圧、駆動波形を印加しても吐出されるインクの吐出量は、同じではなく吐出量に差が発生する。そのため、各画素に塗布されたインクの量が違うため、有機発光層の膜厚に違いが生ずる。その結果、点灯表示したときに表示むらが発生する。
【0006】
各画素に同じ量のインクを塗布する方法として、各ノズル毎に液滴吐出量を制御する方法が開示されている。(特許文献3参照)。
【0007】
特許文献3にについて、図13を用いて説明する。図13は、従来の液滴吐出ヘッド及び駆動回路基板の回路構成図である。30は、駆動回路基板を示す。駆動回路基板30は、インクジェットヘッドの各ノズルのインクの吐出量を制御するためのものである。図13に示すように駆動回路基板30は、インターフェース31、描画データメモリ32、アドレス変換回路33、第1の駆動波形メモリ34、第2の駆動波形メモリ35、第1のD/Aコンバータ36、第2のD/Aコンバータ37、第3のD/Aコンバータ38及び第4のD/Aコンバータ39を備えている。インクジェットヘッド100は、COM選択回路40、スイッチング回路50及び圧電素子PZ1〜PZ180からなる圧電素子群60を備えている。この駆動回路基板30が制御するインクジェットヘッドのノズル数は、180ノズルである。この方法により、各ノズルの液滴吐出量は正確に制御することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−362818号公報
【特許文献2】特開2003−266669号公報
【特許文献3】特開2008−191447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献3に示す従来例では、液滴を吐出する基板が小型である場合は特に問題とならないが、基板が大型化したとき、制御するノズル数が増加し、各ノズル毎に駆動波形を制御する回路基板は、複雑となり、信頼性が低下するという問題が発生する。たとえば、20インチパネルでは、基板寸法は370mm×470mmであり、ノズル間ピッチを1200dpi(ドット パー インチ)とするとピッチは21.1667mmとなり約23,000ノズル必要となる。さらに40インチパネルでは、寸法が680mm×880mmとなる。将来は、ディスプレイ業界では、コストダウンを図るために1枚の基板に多面取りするために、1300mm×1500mm、2200mm×2500mmの基板も用いられることも予測される。
【0010】
本発明は、上記従来のインクジェット装置により有機発光層を形成するときに生じる問題点を考慮してなされたものであり、駆動回路基板を複雑にすることなく、信頼性の高いインクジェット装置を提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る第1のインクジェット装置は、ノズルからインクを吐出して基板上に設けられた画素にインクを塗布するインクジェット装置であって、前記ノズルは、一つの画素を第1のノズル群に属するノズルからの吐出と第2のノズル群に属するノズルからの吐出とで塗布するよう配置され、第1のノズル群のノズルはノズル毎に駆動信号を設定する制御装置と接続されており、第2のノズル群のノズルは共通の駆動信号を設定する制御装置と接続することにより駆動回路基板を複雑にすることなく、信頼性が高く、駆動回路基板の高コスト化を抑えることができる。
【0012】
本発明の第2のインクジェット装置においては、前記の第1の観点における前記第1のノズル群の前記ノズルの数が、前記画素に着弾塗布可能なノズルの数より少ない。
【0013】
本発明に係る第3のインクジェット装置においては、前記の第2の観点における前記第1のノズル群のノズルが、前記画素に対して、前記ノズルの内、1ノズル分だけである。
【0014】
本発明に係る第4のインクジェット装置においては、前記の第2の観点における前記第1のノズル群のノズルは、不吐出になったときに補完するためのノズルを有し、前記補完するためのノズルは、前記ノズルが塗布する着弾位置に対して隣接して塗布する位置である。
【0015】
本発明に係る第5のインクジェット装置においては、前記の第4の観点における前記補完するためのノズルは、前記ノズルが塗布する着弾位置に対して片側あるいは両側に塗布する位置に配置されている。
【0016】
本発明に係る第6のインクジェット装置においては、前記の第5の観点における前記片側に配置された前記補完するためのノズルは、前記画素の中央から遠い位置に着弾するノズルである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、基板上の画素に塗布するとき、制御するノズル数を減らしても各画素の塗布量を一定にすることができるため、駆動回路基板を複雑にすることなく、信頼性の高いインクジェット装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る実施の形態1の有機電界発光ディスプレイの製造方法におけるインクを塗布すべき基板の平面図
【図2】実施の形態1の有機電界発光ディスプレイの製造方法における基板の拡大断面図であり、図1に示した基板のA−A線による断面図
【図3】実施の形態1の有機電界発光ディスプレイの製造方法において用いられるインクジェット装置のインクジェットヘッドと基板の位置関係を示す図
【図4】実施の形態1乃至4の有機電界発光ディスプレイの製造方法において用いられるインクジェット装置におけるインクジェットヘッドの配置を示す図
【図5】実施の形態1乃至4の有機電界発光ディスプレイの製造方法において用いられるインクジェット装置におけるインクジェットヘッドのノズル列の拡大図
【図6】実施の形態1の有機電界発光ディスプレイの製造方法においてインクジェットヘッドのノズル毎に駆動信号を設定して制御するノズル列10と共通の駆動信号を設定して制御するノズル列11の配置図
【図7】実施の形態1の有機電界発光ディスプレイの製造方法において、画素に液滴を塗布したときの、各ノズルから吐出されたインクの着弾時の塗布位置を示す図
【図8】実施の形態1の有機電界発光ディスプレイの製造方法において、インクジェット装置を用いて形成された有機発光層を有する有機ELディスプレイの概略層構成を示す断面図
【図9】実施の形態1の有機電界発光ディスプレイの製造方法におけるプロセスを示すフローチャートを示す図
【図10】本発明に係る実施の形態2の有機電界発光ディスプレイの製造方法における画素4に液滴を塗布したときの、各ノズルから吐出されたインクの着弾時の塗布位置を示す図
【図11】本発明に係る実施の形態3の有機電界発光ディスプレイの製造方法における画素4に液滴を塗布したときの、各ノズルから吐出されたインクの着弾時の塗布位置を示す図
【図12】本発明に係る実施の形態4の有機電界発光ディスプレイの製造方法における画素4に液滴を塗布したときの、各ノズルから吐出されたインクの着弾時の塗布位置を示す図
【図13】従来のインクジェットヘッドの各ノズルの吐出量を制御するための駆動回路基板を示す図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る好適な実施の形態のインクジェット装置について説明する。
【0020】
なお、以下の説明においては有機発光膜を有する有機電界発光ディスプレイ(以下、有機ELディスプレイと略称)の製造方法について例示として添付の図面を参照しつつ説明する。なお、本発明のインク塗布方法及びインクジェット装置は、有機ELディスプレイの製造方法に限定されるものではなく、各種電子機器のディスプレイ、例えば、液晶表示デバイスのカラーフィルター等にも応用可能である。
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0022】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1の有機ELディスプレイの製造方法における、有機発光材料を含むインクを塗布すべき基板を上方から見た平面図である。図2は、図1に示した基板の拡大断面図であり、図2は図1に示した基板1のA−A線による断面図である。
【0023】
図1及び図2に示すように、基板1はベース基板2上に画素4を規定するためのバンク3が形成されている。バンク3が形成されているベース基板2には、図示省略するが反射陽極、正孔注入層等の有機ELディスプレイとして必要な要素が形成されている。バンク3の断面形状は、図2に示すように順テーパ型であってもよく、裾が狭くなった逆テーパ型であってもよい。
【0024】
実施の形態1におけるバンク3の材料としては、絶縁性を有する材料であれば任意に用いることが可能であり、耐熱性、溶媒に対する耐性を持つ絶縁性樹脂(例えばポリイミド樹脂等)であることが好ましい。また、バンク3は撥水性をもたせるためフッ素が添加されている。バンク3の形成方法としては、フォトリソグラフィ技術等が用いられており、パターニングにより形成される。例えば、バンク材料を塗布した後、ベーク処理→マスク露光処理→現像処理等により所望の形状がベース基板2上に形成される。
【0025】
バンク3により規制され区画される領域にはインク9が吐出され塗布される。バンク3は撥水性を有するため、後述するようにインク9が画素4に塗布されたときバンク3間で盛り上がってもバンク3により確実に保持され、バンク3間に確実に収納される。
【0026】
図1の平面図に示すように、ベース基板2上に形成されたバンク3は、R(レッド),G(グリーン),B(ブルー)用のそれぞれの複数の画素4を含むよう構成され、それぞれライン状に配列されている。
【0027】
各画素4間のバンク3の幅は60μmで形成されている。上記のように形成されたR,G,B用のバンク3は基板1において350μmのピッチで繰り返して形成されている。
【0028】
図3は、実施の形態1のインクジェット装置におけるR,G,B用の3つのインクジェットラインヘッド5R,5G,5Bと、図1に示した基板1との位置関係を示す図である。後述する走査動作において、バンク3により囲まれた列領域内がインク9の着滴位置(いわゆる、着弾地点)となるよう配置されている。図3において、符号Xで示す矢印がインクジェットヘッド6の走査方向である。
【0029】
図4は、インクジェットラインヘッド5(5R,5G,5B)における基板対向面を示す図である。インクジェットラインヘッド5R,5G,5Bは、斜めに配置されたインクジェットヘッド6を並べた構成になっている。R,G,B用の3つのインクジェットヘッド6R,6G,6Bはそれぞれ同じ構成であるため以下の説明においてはインクジェットラインヘッド5として説明する。
【0030】
7は、ノズル列を示す。ノズル列7は、それぞれ2ラインづつ隣接し、合計:8ラインある。直線A,直線B,直線Cは、走査方向に対して、ノズル列7が斜めに配置されていることによりベース基板2上で等間隔に塗布できることを説明するために記した直線である。
【0031】
図5は、ノズル列7の一部を拡大した図を示し、ノズル8がライン状に配置されている。
【0032】
図4に示すように、インクジェットラインヘッド5において、複数のノズル8が基板1に対向する面に形成されている。インクジェットラインヘッド5においては、基板1への走査方向(図4における矢印X方向)に対して、複数のノズル8がライン状に配置されたノズル列7が斜めに配置されており、複数のノズル8を有する列が複数列で互いに平行に配置されている。
【0033】
インクジェットラインヘッド5において、複数のノズル8がライン状に配置されたノズル列7が、走査方向に対して斜めに配置しているのは、バンク3により囲まれた列領域内にインク9を塗布するとき、ノズル8から吐出されたインク9が着滴位置で互いに連結するように、ノズル8間のピッチを短く、例えば、約20μmとするためである。このように、複数のノズル8のノズル列7を走査方向に対して斜めに配置することにより、ノズルピッチの間隔を所望の距離に短く設定することが可能となる。
【0034】
図6は、インクジェットヘッド6のノズル列7におけるノズル8において、ノズル毎に駆動信号を設定して制御するノズル列10と共通の駆動信号を設定して制御するノズル列11の配置図である。ノズル毎に駆動信号を設定して制御するノズル列10は黒丸で、共通の駆動信号を設定して制御するノズル列11は白丸で表している。ノズル列7の内、2列のノズル群のみノズル毎に駆動信号を設定して制御する構成となっている。
【0035】
図7は、画素4に液滴を塗布したときの、各ノズルから吐出されたインクの着弾時の塗布位置を示す。図7において、黒丸は、ノズル毎に駆動信号を制御して吐出されたインク9の着弾位置を示し、白丸は、共通の駆動信号で制御されたノズルから吐出されたインク9の着弾位置を示す。符号Xで示す矢印がインクジェットラインヘッド5の走査方向を示す。
【0036】
図7は、画素4に液滴を塗布する場合を示す。本実施の形態では1つの画素あたりの寸法は、60μm×170μmで、26滴塗布する場合を示す。高精細になるほど狭い領域への塗布となる。着弾時の塗布位置のピッチは、約20μmである。画素4に塗布される液滴数は、所望の膜厚になるように設定される。画素4の長手方向の最大塗布液滴数は、長手方向の寸法を170μmとしたときに、ノズル間ピッチが20μmであることから、170/20=8.5より長手方向に9滴塗布が可能となる。
【0037】
画素4に26滴塗布する場合は、たとえば、9滴、8滴、9滴とライン状に塗布する。本実施形態では、5.29μm毎に3ライン分で塗布する例を示す。何ラインでどの位置に塗布するかは、膜厚の均一性を考慮し決めるのが良い。走査方向Xでの塗布ピッチは、4800dpiで塗布する場合、5.29μmとなり、走査方向の画素4の長さを60μmとしたときに、60μm/5.29μm=11.4から11ライン状での塗布が可能である。しかし、混色などを防ぐため、できるだけ画素4の中心部に近い位置で塗布することになる。そのため、3ラインで塗布するか、1ライン飛ばしで、5ライン分の距離で塗布することになる。
【0038】
以下、実施の形態1における有機ELディスプレイの製造方法において実行される具体的な塗布方法について説明する。
【0039】
インクジェットラインヘッド5におけるノズル8のインク9の吐出量は、事前に測定する。測定方法には、たとえば、重量法やレーザー顕微鏡による評価方法がある。重量法は、1つのノズル8に対して、一定時間だけインク9を吐出させ、インクの重量を化学天秤などの高精度なはかりで測定する方法である。インクジェットヘッド6の駆動周波数より一定時間の吐出回数がわかるため、一回あたりの吐出量がわかる。重量法はインクの吐出量そのものがわかる。レーザー顕微鏡による方法は、1つのノズル8から、例えば、50滴のインク9を吐出し、インク9を乾燥させ、乾燥後の体積を測定し、吐出液滴数で割って、1ノズル8の体積を求め、乾燥前のインク9に換算して吐出量を算出する方法である。
【0040】
インクジェットラインヘッド5による基板1に対する塗布方法は、インクジェットラインヘッド5を基板1に対して走査しつつ、ノズル8からインクを吐出する。このときの走査方向は、図3に示したように、基板1におけるライン状に配置されたR,G、Bの画素4を含むバンク3に直交する方向と同じ方向である。R,G,B用の各列領域にノズル8から所定のインク9が吐出されるように想定されて、インクジェットラインヘッド5(5R,5G,5B)が基板1に対して塗布動作を行う。
【0041】
以下、本実施形態でのノズルの制御方法のプロセスについて説明する。各ノズルの吐出量は、図3と図7に示すように、画素4に塗布するノズル8の位置が事前にわかるため、まず、各画素の吐出量を算定する。次に吐出量の総量が所望の量より多くなると予測されるときは、黒丸で表されるノズル毎に駆動信号を制御して吐出するノズルのインク吐出量を減らして所望の値に近づける。吐出量の総量が所望の量より少なくなると予測されるときは、黒丸で表されるノズル毎に駆動信号を制御して吐出するノズルのインク吐出量を増やして所望の値に近づける。
【0042】
たとえば、ノズル8から吐出する狙いの吐出量を7plとしたとき、画素4内に26滴塗布したときは、182plが吐出量の狙いとなる。実際のノズル8の吐出量から算定したとき、画素4内に入る吐出量が少ない場合、たとえば、172plの場合は、あと10pl追加すれば良い。画素4内に入るノズル毎に駆動信号を設定して制御するノズル列10内のノズル8は、2ノズルそれぞれ3回吐出することになるため、10÷9=1.11plより、駆動信号を設定して制御するノズル列7内のノズル8の吐出量は、7+1.11=8.11pl吐出すればよいことがわかる。画素4内に塗布する吐出量が、逆に182plより多いときは、画素4内に入るノズル毎に駆動信号を設定して制御するノズル列10内のノズル8の吐出量を少なくして調整すればよいことになる。たとえば、画素4内に塗布する吐出量が、192plの場合、10pl多いため、10÷9=1.11plとなり、駆動信号を設定して制御するノズル列7内のノズル8の吐出量は、7−1.11=5.89pl吐出すればよいことがわかる。以上の方法をインクジェットラインヘッド5(5R,5G,5B)のライン方向の各画素に対応するノズル毎に駆動信号を設定して制御するノズル列10内のノズル8の吐出量を調整する。
【0043】
また、本実施形態では、インクジェットヘッド6のノズル8を駆動するための制御基板(図示せず)の信号を中継するフレキシブル基板(図示せず)は、はんだ接合やACF(異方性導電粒子)接合されている。ノズル毎に駆動信号を設定して制御するノズル列10が8列中の2列であり、回路を接続するフレキシブル基板の構成が、シンプルとなりフレキシブル基板を実装しやすいというメリットがある。
【0044】
以上のように、本発明に係る実施の形態1のインクジェット装置においては、基板1上のバンク3により区画され規定された画素4に対してインク9を吐出するときに、画素4内に吐出する、ノズル毎に駆動信号を設定して制御するノズル列10内のノズル8の吐出量を制御することにより、全てのノズル8を制御することなく、制御するノズル数を減らしても各画素の塗布量を一定にすることができるため、駆動回路基板を複雑にすることなく、信頼性の高い塗布を実現することができる。また、駆動回路基板の高コスト化を抑えることができる。
【0045】
また、回路を接続するフレキシブル基板の構成が、シンプルとなりフレキシブル基板を実装しやすいというメリットがある。
【0046】
実施の形態1のインクジェット装置において、ノズル8からの塗布速度は、走査方向のDPI(ドットパーインチ)が4800dpiであるため、走査方向に5.291667μmの距離となる。インクジェット装置による基板1に対する塗布処理は、一回の走査動作において行うことができる構成である。R,G,Bのインク9の塗布順序は、特に限定されない。なお、塗布後に形成されるR,G,Bの有機発光層の厚みは、約50〜100nm(例えば、70nm)であることが好ましい。
【0047】
塗布後の厚みは、塗布処理後において、真空乾燥して有機発光膜を形成してその膜厚を測定する。乾燥条件は、塗布後1分間放置した後、乾燥炉に入れ、5分間で1Paまで真空に引いた後、温度を40℃、真空度を1Paに保持した状態で20分間乾燥させたものである。
【0048】
<実施例>
実施の形態1において、インクジェットラインヘッド5におけるノズル8のインク9の吐出量は、事前に測定する。測定方法には、重量法を用いた。ノズル8の駆動周波数を10kHzで実施した。
【0049】
インクジェットラインヘッド5による基板1に対する塗布方法は、インクジェットラインヘッド5を基板1に対して走査しつつ、ノズル8からインクを吐出する。このときの走査方向は、図3に示したように、基板1におけるライン状に配置されたR,G,Bの画素4を含むバンク3に直交する方向と同じ方向である。R,G,B用の各列領域にノズル8から所定のインク9が吐出されるように想定されて、インクジェットラインヘッド5(5R,5G,5B)が基板1に対して塗布動作を行う。基板1の寸法は、370mm×470mmの大きさの基板を用いた。
【0050】
各ノズルの吐出量は、図3と図7に示すように、画素4に塗布するノズル8の位置が事前にわかるため、各画素の吐出量を算定する。たとえば、ノズル8から吐出する狙いの吐出量を7plとしたとき、画素4内に26滴塗布したときは、182plが吐出量の狙いとした。画素4内に入るノズル毎に駆動信号を設定して制御するノズル列10内のノズル8の吐出量を調整し、画素4内に吐出される吐出量を182plとなるように制御した。
【0051】
以上の方法により、インク9を塗布し、真空乾燥して有機発光膜を形成してその膜厚を測定した結果、隣接画素間のバラツキが、制御前の膜厚ばらつきが、3σで2.5%に対して、ノズルの吐出量を制御することにより、1.2%のバラツキに改善された。
【0052】
実施の形態1のインクジェット装置において、インク9に含まれる有機発光材料は高分子系発光材料であることが好ましく、高分子系発光材料の例としては、ポリフェニレンビニレン(Poly phenylene vinylene(PPV))及びその誘導体、ポリアセチレン(Poly acetylene)及びその誘導体、ポリフェニレン(Polyphenylene)及びその誘導体、ポリパラフェニレンエチレン(Poly para phenyleneethylene)及びその誘導体、ポリ3−ヘキシルチオフェン(Poly 3−hexyl thiophene (P3HT))及びその誘導体、ポリフルオレン(Poly fluorene (PF))及びその誘導体等が含まれる。なお、インクの粘度は、約10mPa・s前後が用いられる。
【0053】
図8は、実施の形態1のインクジェット装置を用いて形成された有機発光層等を有する有機ELディスプレイの一例を示すものであり、有機ELディスプレイにおける層構成の概略を示す断面図である。図8に示す各層の相対的な膜厚及び形状は、実際の膜厚及び形状を示すものではなく、説明上わかりやすく記載したものである。
【0054】
図8に示す有機ELディスプレイは、ベース基板にある平坦化膜14上に反射陽極15、正孔注入層16が形成されており、その正孔注入層16上に前述のバンク3が形成されている。前述のようにバンク3により区画される領域にインターレイヤー層(IL層)17及び有機発光層18が形成されている。反射陽極15は図1に示した画素4に対応して分離して作成されており、ディスプレイの発光部となる。
【0055】
なお、実施の形態1のインクジェット装置は、有機発光層18の形成における塗布処理において用いると共に、インターレイヤー層(IL層)17の形成における塗布処理においても同様の構成のインクジェット装置が用いられる。
【0056】
図8に示すように、有機ELディスプレイにおいては有機発光層18及びバンク3を覆うように電子輸送層19、陰極21、封止層21及び樹脂層22が形成されている。そして、樹脂層22の上部には基板23及び偏光板24等が設けられて有機ELディスプレイが構成されている。
【0057】
上記のように構成された有機ELディスプレイは、図9のプロセスフローチャートに示すように製造されている。即ち、平坦化膜形成→反射陽極形成→正孔注入層形成→バンク形成→インタレイヤー層(以降IL層と記す)形成→有機発光層形成→電子輸送層形成→陰極形成→封止層形成→樹脂層形成の順に製造される。この製造プロセスにおいて、IL層及び有機発光層が実施の形態1において説明したインクジェット装置を用いて所定の材料が塗布されて生成される。
【0058】
以上のように、実施の形態1の有機ELディスプレイの製造方法において、インクジェット装置は、基板1上のバンク3により区画され規定された画素4に対してインク9を吐出するときに、画素4内に入るノズル毎に駆動信号を設定して制御するノズル列10内のノズル8の吐出量を制御することにより、全てのノズル8を制御することなく、制御するノズル数を減らしても各画素の塗布量を一定にすることができるため、駆動回路基板を複雑にすることなく、信頼性が高く、駆動回路基板の高コスト化を抑えることができる。
【0059】
実施の形態1の有機ELディスプレイの製造方法によれば、画素4間の膜厚の均一性を確保することができるため、輝度ムラのない高品質の有機ELディスプレイを提供することができる。
【0060】
(実施の形態2)
以下、本発明に係る実施の形態2のインクジェット装置について図面を参照しつつ説明する。
【0061】
実施の形態2のインクジェット装置において、前述の実施の形態1と主要部の構成は同じである。実施の形態1のインクジェット装置と異なる点は、画素4内に吐出するノズル8において、駆動信号を設定して制御するノズルが1ノズルであることである。実施形態2の説明において、前述の実施形態1において説明したものと同じ構成を有するものには同じ符号を付してその説明は実施の形態1の説明を援用して実施の形態2においては省略する。
【0062】
図10は、画素4に液滴を塗布したときの、各ノズルから吐出されたインクの着弾時の塗布位置を示す。図10において、黒丸は、ノズル毎に駆動信号を制御して吐出されたインク9の着弾位置を示し、白丸は、共通の駆動信号で制御されたノズルから吐出されたインク9の着弾位置を示す。符号Xで示す矢印がインクジェットラインヘッド5の走査方向を示す。図10は、前述の実施の形態1と同様、画素4に26滴塗布する場合を示す。
【0063】
以下、実施の形態2における有機ELディスプレイの製造方法において実行される具体的な塗布方法について説明する。
【0064】
インクジェットラインヘッド5におけるノズル8のインク9の吐出量は、実施の形態1と同様、事前に測定する。インクジェットラインヘッド5による基板1に対する塗布方法は、インクジェットラインヘッド5を基板1に対して走査しつつ、ノズル8からインクを吐出する。
【0065】
このときの走査方向は、図3に示したように、基板1におけるライン状に配置されたR,G,Bの画素4を含むバンク3に直交する方向と同じ方向である。R,G,B用の各列領域にノズル8から所定のインク9が吐出されるように想定されて、インクジェットラインヘッド5(5R,5G,5B)が基板1に対して塗布動作を行う。各ノズルの吐出量は、図3と図10に示すように、画素4に塗布するノズル8の位置が事前にわかるため、各画素の吐出量を算定する。
【0066】
たとえば、ノズル8から吐出する狙いの吐出量を7plとしたとき、画素4内に26滴塗布したときは、182plが吐出量の狙いとなる。実際のノズル8の吐出量から算定したとき、画素4内に入る吐出量が少ない場合、たとえば、172plの場合は、あと10pl追加すれば良い。画素4内に入るノズル毎に駆動信号を設定して制御するノズル列10内のノズル8は、1ノズル3回吐出することになるため、10÷3=3.33plより、駆動信号を設定して制御するノズル列7内のノズル8の吐出量は、7+3.33=10.33pl吐出すればよいことがわかる。
【0067】
画素4内に塗布する吐出量が、逆に182plより多いときは、画素4内に入るノズル毎に駆動信号を設定して制御するノズル列10内のノズル8の吐出量を少なくして調整すればよいことになる。たとえば、画素4内に塗布する吐出量が、192plの場合、10pl多いため、10÷3=3.33plとなり、駆動信号を設定して制御するノズル列7内のノズル8の吐出量は、7―3.33=3.67pl吐出すればよいことがわかる。
【0068】
以上の方法をインクジェットラインヘッド5(5R,5G,5B)のライン方向の各画素に対応するノズル毎に駆動信号を設定して制御するノズル列10内のノズル8の吐出量を調整する。
【0069】
以上のように、本発明に係る実施の形態2のインクジェット装置においては、基板1上のバンク3により区画され規定された画素4に対してインク9を吐出するときに、画素4内に吐出するノズル8に対して駆動信号を設定して制御するノズルが1ノズルとすることにより、全てのノズル8を制御することなく、制御するノズル数を減らしても各画素の塗布量を一定にすることができるため、駆動回路基板を複雑にすることなく、信頼性の高い塗布を実現することができる。また、駆動回路基板の高コスト化を抑えることができる。
【0070】
実施の形態2の有機ELディスプレイの製造方法によれば、画素4間の膜厚の均一性を確保することができるため、輝度ムラのない高品質の有機ELディスプレイを提供することができる。
【0071】
(実施の形態3)
以下、本発明に係る実施の形態3のインクジェット装置について図面を参照しつつ説明する。
【0072】
実施の形態3のインクジェット装置において、前述の実施形態2と主要部の構成は同じである。実施形態2のインクジェット装置と異なる点は、画素4内に吐出するノズル8において、駆動信号を設定して制御するノズルの隣接ノズルも駆動信号を設定して制御できることである。実施の形態1では、ノズル配置から4つのノズル8おきに吐出する構成となっているため、隣接ノズルは存在しない。
【0073】
実施の形態2も1ノズル8だけであるので、隣接ノズルは存在しない。実施形態3の説明において、前述の実施形態1において説明したものと同じ構成を有するものには同じ符号を付してその説明は実施の形態1の説明を援用して実施の形態3においては省略する。
【0074】
図11は、画素4に液滴を塗布したときの、各ノズルから吐出されたインクの着弾時の塗布位置を示す。図11において、黒丸は、ノズル毎に駆動信号を制御して吐出されたインク9の着弾位置を示し、白丸は、共通の駆動信号で制御されたノズルから吐出されたインク9の着弾位置を示す。斜線の丸は、黒丸の位置に着弾させる駆動信号を制御して吐出するノズル8が不吐出になった場合の補完ノズルの着弾位置である。
【0075】
ノズル8が不吐出になった場合の補完ノズルの着弾位置(駆動信号を制御して吐出するノズルが不吐出になった場合の補完ノズルの着弾位置26)は、画素4の中心から遠い方に配置する。これは、本来のノズル毎に駆動信号を制御して吐出されるノズル8の着弾位置は、画素4の中心部に近い方が、画素の均一性が良好であるからである。なお、実施の形態1及び実施の形態2では、隣接ノズルは存在しないため、補完ノズルは有していないことになる。
【0076】
符号Xで示す矢印がインクジェットラインヘッド5の走査方向を示す。図11は、前述の実施の形態1と同様、画素4に26滴塗布する場合を示す。
【0077】
以下、実施の形態2における有機ELディスプレイの製造方法において実行される具体的な塗布方法について説明する。
【0078】
インクジェットラインヘッド5におけるノズル8のインク9の吐出量は、実施の形態1と同様、事前に測定する。インクジェットラインヘッド5による基板1に対する塗布方法は、インクジェットラインヘッド5を基板1に対して走査しつつ、ノズル8からインクを吐出する。このときの走査方向は、図3に示したように、基板1におけるライン状に配置されたR,G,Bの画素4を含むバンク3に直交する方向と同じ方向である。R,G,B用の各列領域にノズル8から所定のインク9が吐出されるように想定されて、インクジェットラインヘッド5(5R,5G,5B)が基板1に対して塗布動作を行う。
【0079】
各ノズルの吐出量は、図3と図11に示すように、画素4に塗布するノズル8の位置が事前にわかるため、各画素の吐出量を算定する。たとえば、ノズル8から吐出する狙いの吐出量を7plとしたとき、画素4内に26滴塗布したときは、182plが吐出量の狙いとなる。仮に黒丸の位置に着弾させる駆動信号を制御して吐出するノズル8が不吐出になった場合、182plから共通の駆動信号で制御されたノズルから吐出されたインク9の量を引いた残りの吐出量を補完ノズルでインク9の量を補うことにより182plを画素4の供給することができる。
【0080】
以上のように、本発明に係る実施の形態3のインクジェット装置においては、基板1上のバンク3により区画され規定された画素4に対してインク9を吐出するときに、画素4内に吐出するノズル8に対して駆動信号を設定して制御するノズルが不吐出となっても、隣接して配置された補完ノズルにより、各画素の塗布量を一定にすることができる。その結果、駆動信号を制御して吐出するノズル数は全数ではなく、少なくすることができるため、駆動回路基板を複雑にすることなく、信頼性の高い塗布を実現することができる。また、駆動回路基板の高コスト化を抑えることができる。
【0081】
実施の形態3の有機ELディスプレイの製造方法によれば、画素4間の膜厚の均一性を確保することができるため、輝度ムラのない高品質の有機ELディスプレイを提供することができる。
【0082】
(実施の形態4)
以下、本発明に係る実施の形態4のインクジェット装置について図面を参照しつつ説明する。
【0083】
実施の形態4のインクジェット装置において、前述の実施形態3と主要部の構成は同じである。実施形態3のインクジェット装置と異なる点は、画素4内に吐出するノズル8において、駆動信号を設定して制御するノズル8が不吐出になったときに補完するノズルが両側にあることである。実施形態4の説明において、前述の実施形態1において説明したものと同じ構成を有するものには同じ符号を付してその説明は実施の形態1の説明を援用して実施の形態4においては省略する。
【0084】
図12は、画素4に液滴を塗布したときの、各ノズルから吐出されたインクの着弾時の塗布位置を示す。図12において、黒丸は、ノズル毎に駆動信号を制御して吐出されたインク9の着弾位置を示し、白丸は共通の駆動信号で制御されたノズルから吐出されたインク9の着弾位置を示す。斜線の丸は、黒丸の位置に着弾させる駆動信号を制御して吐出するノズル8が不吐出になった場合の補完ノズルの着弾位置である。ノズル毎に駆動信号を制御して吐出されたインク9の着弾位置の両側に着弾するノズルを表す。
【0085】
符号Xで示す矢印がインクジェットラインヘッド5の走査方向を示す。図12は、前述の実施の形態1と同様、画素4に26滴塗布する場合を示す。
【0086】
以下、実施の形態2における有機ELディスプレイの製造方法において実行される具体的な塗布方法について説明する。
【0087】
インクジェットラインヘッド5におけるノズル8のインク9の吐出量は、実施の形態1と同様、事前に測定する。インクジェットラインヘッド5による基板1に対する塗布方法は、インクジェットラインヘッド5を基板1に対して走査しつつ、ノズル8からインクを吐出する。
【0088】
このときの走査方向は、図3に示したように、基板1におけるライン状に配置されたR,G,Bの画素4を含むバンク3に直交する方向と同じ方向である。R,G,B用の各列領域にノズル8から所定のインク9が吐出されるように想定されて、インクジェットラインヘッド5(5R,5G,5B)が基板1に対して塗布動作を行う。各ノズルの吐出量は、図3と図12に示すように、画素4に塗布するノズル8の位置が事前にわかるため、画素の吐出量を算定する。たとえば、ノズル8から吐出する狙いの吐出量を7plとしたとき、画素4内に26滴塗布したときは、182plが吐出量の狙いとなる。仮に黒丸の位置に着弾させる駆動信号を制御して吐出するノズル8が不吐出になった場合、182plから共通の駆動信号で制御されたノズルから吐出されたインク9の量を引いた残りの吐出量を補完ノズルでインク9の量を補うことにより182plを画素4の供給することができる。
【0089】
以上のように、本発明に係る実施の形態3のインクジェット装置においては、基板1上のバンク3により区画され規定された画素4に対してインク9を吐出するときに、画素4内に吐出するノズル8に対して駆動信号を設定して制御するノズルが不吐出となっても、隣接して配置された補完ノズルのより、各画素の塗布量を一定にすることができる。その結果、駆動信号を制御して吐出するノズル数は全数ではなく、少なくすることができるため、駆動回路基板を複雑にすることなく、信頼性の高い塗布を実現することができる。
【0090】
また、駆動回路基板の高コスト化を抑えることができる。
【0091】
実施の形態3の有機ELディスプレイの製造方法によれば、画素4間の膜厚の均一性を確保することができるため、輝度ムラのない高品質の有機ELディスプレイを提供することができる。
【0092】
<他の実施の形態>
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記1乃至4の実施の形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【0093】
例えば、実施の形態1乃至実施の形態4においては、1枚の基板にR,G,Bの画素がある基板に塗布する場合を説明したが、多面どりするために、基板内に、多数個のパターンが存在する場合も、画素の部分のみ塗布する場合を考慮して同様に扱うことができる。
【0094】
実施の形態1の実施例においては、ノズルから吐出するインクの通常の吐出周波数を10kHzとして説明したが、特にこの周波数に限定されるものではなく、製造される有機ELディスプレイの仕様等に応じて適宜設定される。
【0095】
実施の形態1乃至実施の形態4においては、インクジェットヘッドにおいて複数のノズルがライン状に配置された列を走査方向に対して斜めに配置して、走査方向に直交する方向のノズル間のピッチを約20μm(例えば、21.16666μm)として設計した。これは、ノズルから吐出されたインクが着滴位置において互いに連結するようにするためである。したがって、走査方向に直交する方向のノズル間のピッチは、10μm〜50μmの範囲内であることが好ましいが、特に限定する必要はない。
【0096】
また、実施の形態1乃至実施の形態4において、ノズルから吐出されるインクの一滴当たりの量は、7plとしたが、1pl〜15plの範囲内であることが好ましく、特に限定されるものではない。
【0097】
実施の形態1の実施例においてインクの粘度が10mPa・s のものを用いたが、本発明においてはインクの粘度をこの数値に限定するものではなく、約5〜20mPa・sの範囲内が好ましく、特に限定されるものではい。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明のインク塗布方法及びインクジェット装置は、制御するノズル数を減らしても各画素の塗布量を一定にすることできるといった効果を有し、有機ELパネルの発光層などの塗布工程に用いられるインクジェット装置や、プリンタの記録工程やカラーフィルター製造に用いられるインクジェット装置等に広く適用可能である。
【符号の説明】
【0099】
1,23 基板
2 ベース基板
4 画素
5,5R,5G,5B インクジェットラインヘッド
6,6R,6G,6B,100 インクジェットヘッド
7 ノズル列
8 ノズル
9 インク
10 ノズル毎に駆動信号を設定して制御するノズル列
11 共通の駆動信号を設定して制御するノズル列
12 ノズル毎に駆動信号を制御して吐出されたインク9の着弾位置
13 共通の駆動信号で制御されたノズルから吐出されたインク9の着弾位置
26 駆動信号を制御して吐出するノズルが不吐出になった場合の補完ノズルの着弾位置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズルを有し、前記ノズルからインクを塗布するインクジェット装置において、
前記複数のノズルのうち、第1のノズル群のノズルは、ノズル毎に駆動信号を設定する制御装置と接続されており、第2のノズル群のノズルは、共通の駆動信号を設定する制御装置と接続されていること、
を特徴とするインクジェット装置。
【請求項2】
前記第1のノズル群のノズルの数は、前記第2のノズル群のノズルの数より少ない、請求項1記載のインクジェット装置。
【請求項3】
前記第1のノズル群のノズルは、1ノズルのみである、請求項1又は2記載のインクジェット装置。
【請求項4】
前記第1のノズル群のノズルは、インクが不吐出になったときに補完するための補完ノズルを更に備え、前記補完ノズルは、インクの着弾位置に対して隣接して配置されてなる、請求項1〜3の何れか一項に記載のインクジェット装置。
【請求項5】
前記補完ノズルは、インク着弾位置に対して片側あるいは両側に塗布する位置に配置されてなる、請求項4記載のインクジェット装置。
【請求項6】
前記補完ノズルは、前記画素の中央から遠い位置に着弾するノズルである、請求項5記載のインクジェット装置。
【請求項1】
複数のノズルを有し、前記ノズルからインクを塗布するインクジェット装置において、
前記複数のノズルのうち、第1のノズル群のノズルは、ノズル毎に駆動信号を設定する制御装置と接続されており、第2のノズル群のノズルは、共通の駆動信号を設定する制御装置と接続されていること、
を特徴とするインクジェット装置。
【請求項2】
前記第1のノズル群のノズルの数は、前記第2のノズル群のノズルの数より少ない、請求項1記載のインクジェット装置。
【請求項3】
前記第1のノズル群のノズルは、1ノズルのみである、請求項1又は2記載のインクジェット装置。
【請求項4】
前記第1のノズル群のノズルは、インクが不吐出になったときに補完するための補完ノズルを更に備え、前記補完ノズルは、インクの着弾位置に対して隣接して配置されてなる、請求項1〜3の何れか一項に記載のインクジェット装置。
【請求項5】
前記補完ノズルは、インク着弾位置に対して片側あるいは両側に塗布する位置に配置されてなる、請求項4記載のインクジェット装置。
【請求項6】
前記補完ノズルは、前記画素の中央から遠い位置に着弾するノズルである、請求項5記載のインクジェット装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−238479(P2012−238479A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−106841(P2011−106841)
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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