説明

インクジェット記録方法、インクカートリッジ、並びに記録装置

【課題】非吸収性または低吸収性のメディアに対する水性インクを用いた高画質記録を可能とするインクジェット記録方法を提供する。
【解決手段】非吸収性または低吸収性のメディアに対して、水性インクを付着させて画像を形成するインクジェット記録方法であって、前記メディアを加熱しながら画像を形成し、前記水性インクは、沸点210℃〜280℃の第一の溶剤及び沸点150℃〜280℃の第二の溶剤と、水不溶性の着色剤と、水溶性樹脂と、熱可塑性樹脂粒子と、シリコン系界面活性剤と、水と、を含有し、前記第一の溶剤を水溶液とした時の表面張力が、前記第二の溶剤を水溶液とした時の表面張力より高い、インクジェット記録方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録方法、インクカートリッジ、及び記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方法は、微細なノズルヘッドからインクの小滴を吐出して飛翔させ、紙等の記録媒体に付着させて印刷を行う印刷方法である。この方法は、比較的安価な装置で高解像度かつ高品位な画像を、高速で印刷可能であるという特徴を有する。
【0003】
近年、インクジェット記録方法を用いて、プラスチックなどの非吸水性のメディアに記録を行う技術が提案されている。例えば、疎水性基体に直接印刷する使用に適したインクジェット用インキ組成物(特許文献1)や、非多孔質基材上に印刷することのできるポリマーコロイド含有インクジェットインク(特許文献2)が提案されている。
【0004】
【特許文献1】特開2000−44858号公報
【特許文献2】特開2005−220352号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、非吸収性または低吸収性のメディアに記録すると、記録中の加熱の有無にかかわらず、インクが滲み、画質が低下してしまうという問題がある。
本発明は、インク受容層を持たない非吸収性または低吸収性のメディアに対する水性インクを用いた高画質記録を可能とするインクジェット記録方法、インクカートリッジ、及び記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、(1)非吸収性または低吸収性のメディアに対して、水性インクを付着させて画像を形成するインクジェット記録方法であって、前記メディアを加熱しながら画像を形成し、前記水性インクは、沸点210℃〜280℃の第一の溶剤及び沸点150℃〜280℃の第二の溶剤と、水不溶性の着色剤と、水溶性樹脂と、熱可塑性樹脂粒子と、シリコン系界面活性剤と、水と、を含有し、前記第一の溶剤を水溶液とした時の表面張力が、前記第二の溶剤を水溶液とした時の表面張力より低い、インクジェット記録方法;
(2)前記第二の溶剤の沸点が150℃〜210℃未満であり、かつ、前記メディアに付着させるインク滴量が3ng〜30ngである、前記(1)記載のインクジェット記録方法;
(3)前記第二の溶剤の沸点が210℃〜280℃であり、かつ、前記メディアに付着させるインク滴量が3ng〜15ngである、前記(1)記載のインクジェット記録方法;(4)前記水性インクにおける前記シリコン系界面活性剤の含有量は、0.1質量%〜1.5質量%である、前記(1)〜(3)に記載のインクジェット記録方法;
(5)前記メディアの加熱温度は、40℃〜80℃である、前記(1)〜(4)に記載のインクジェット記録方法;
(6)沸点210℃〜280℃の第一の溶剤及び沸点150〜280℃の第二の溶剤と、水不溶性の着色剤と、水溶性樹脂と、熱可塑性樹脂粒子と、シリコン系界面活性剤と、水と、を含有する水性インクであって、前記第一の溶剤を水溶液とした時の表面張力が、前記第二の溶剤を水溶液とした時の表面張力より低い水性インク、を備えたインクカートリッジ;
(7)前記(1)〜(5)の何れかに記載のインクジェット記録方法に用いられる記録装置;
(8)前記(6)記載のインクカートリッジを備えた記録装置;を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明のインクジェット記録方法によれば、非吸収性または低吸収性のメディアへ記録した際に、水性インクの凝集むらが発生せず、高品質の画質を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に、本発明の実施の形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をこの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨を逸脱しない限り、さまざまな形態で実施することができる。
【0009】
本発明のインクジェット記録方法は、非吸収性または低吸収性のメディアに対して、水性インクを付着させて画像を形成するインクジェット記録方法であって、前記メディアを加熱しながら画像を形成し、前記水性インクは、沸点210℃〜280℃の第一の溶剤及び沸点150℃〜280℃の第二の溶剤と、水不溶性の着色剤と、水溶性樹脂と、熱可塑性樹脂粒子と、シリコン系界面活性剤と、水と、を含有し、前記第一の溶剤を水溶液とした時の表面張力が、前記第二の溶剤を水溶液とした時の表面張力より低い、ことを特徴する。
【0010】
上記インクジェット記録方法によれば、非吸収性または低吸収性のメディアへ記録した際に、水性インクの凝集むらが発生せず、高品質の画質を得ることができる。
また、上記第一の溶剤と上記第二の溶剤とを含む水性インクを用いることにより、水性インク中の樹脂同士が固着し合うのを防止することができる。ここでインク中とは、水性インクを入れたインクカートリッジから水性インクを吐出させるヘッドのノズル先端までを指す。水性インク中の樹脂同士が固着するのを防止できるので、水性インクが固化し難くなり、目詰まりなどのインク吐出不良を防止することができる。
【0011】
ここで、非吸収性および低吸収性の記録媒体(メディア)とは、印字面が、ブリストー(Bristow)法において接触開始から30msec1/2までの水吸収量が10mL/m2以下である記録媒体を示す。このブリストー法は、短時間での液体吸収量の測定方法として最も普及している方法であり、日本紙パルプ技術協会(JAPAN TAPPI)でも採用されている。試験方法の詳細は「JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法2000年版」の規格No.51「紙及び板紙−液体吸収性試験方法−ブリストー法」に述べられている。
このような記録媒体の例としては、インク非吸収性の記録媒体として、例えば、インクジェット印刷用に表面処理をしていない(すなわち、インク吸収層を形成していない)プラスチックフィルム、紙等の基材上にプラスチックがコーティングされているものやプラスチックフィルムが接着されているもの等が挙げられる。ここでいうプラスチックとしては、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。インク低吸収性の記録媒体として、アート紙、コート紙、マット紙等の印刷本紙等が挙げられる。
【0012】
(第一及び第二の溶剤)
上記第一の溶剤としては、1,2−ヘキサンジオール、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、1,3−プロパンジオール等が挙げられる。
上記第二の溶剤としては、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、N−メチル
−2−ピロリドン、1,5−ペンタンジオール等が挙げられる。
【0013】
上記インクジェット記録方法は、前記第二の溶剤の沸点が150℃〜210℃未満である場合には、前記メディアに付着させるインク滴量が3ng〜30ngであることが好ましい。
また、上記インクジェット記録方法は、前記第二の溶剤の沸点が210℃〜280℃である場合には、前記メディアに付着させるインク滴量が3ng〜15ngであることが好ましい。
【0014】
また、上記第一及び第二の溶剤の水溶液とした場合の静的表面張力が、第一の溶剤の方が第二の溶剤よりも低いことにより、メディアへの濡れ性を促進することができる。特に、本発明のように加熱しながら印刷する場合においては印刷中に溶剤の乾燥が進む為に、沸点が比較的高い第一の溶剤が、沸点が比較的低い第二溶剤よりもメディアに留まる時間が長くなるようにすることで、良好な画像が得られる。
【0015】
このように、インクのドットサイズや溶剤種を好適範囲とすることにより、非吸収性または低吸収性のメディアへ記録した際のドット間の癒着を防止し、インクの凝集むらを防止して、一層高品質の画質を得ることができる。
【0016】
上記水性インクは、さらに、水不溶性の着色剤、水溶性樹脂、熱可塑性樹脂粒子、及びシリコン系界面活性剤を含む。
【0017】
(水不溶性の着色剤)
水不溶性の着色剤としては、水不溶性の染料または顔料が挙げられるが、顔料であることが好ましい。顔料は、水に不溶あるいは難溶であるだけでなく光やガス等に対しても退色しにくい性質を有している。このため、顔料を用いたインク組成物で印刷した記録物は、耐水性、耐ガス性、耐光性等に優れ、保存性が良好となるからである。
顔料として、公知の無機顔料、有機顔料およびカーボンブラックのいずれも用いることができる。これらの中でも、発色が良好であって、比重が小さいために分散時に沈降しにくい観点から、カーボンブラック、有機顔料が好ましい。
【0018】
好ましいカーボンブラックの具体例としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、もしくはチャンネルブラック等(C.I.ピグメントブラック7)、また市販品としてNo.2300、900、MCF88、No.20B、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、MA100、No2200B等(以上全て商品名、三菱化学株式会社製)、カラーブラックFW1、FW2、FW2V、FW18、FW200、S150、S160、S170、プリテックス35、U、V、140U、スペシャルブラック6、5、4A、4、250等(以上全て商品名、デグサ社製)、コンダクテックスSC、ラーベン1255、5750、5250、5000、3500、1255、700等(以上全て商品名、コロンビアカーボン社製)、リガール400R、330R、660R、モグルL、モナーク700、800、880、900、1000、1100、1300、1400、エルフテックス12等(以上全て商品名、キャボット社製)が挙げられる。なお、これらは本発明に好適なカーボンブラックの一例の記載であり、これらによって本発明が限定されるものではない。これらのカーボンブラックは単独あるいは二種類以上の混合物として用いてもよい。これらのカーボンブラックの含有量は、ブラックインク組成物全量に対して0.5質量%〜20質量%、好ましくは1質量%〜10質量%である。
【0019】
好ましい有機顔料としては、キナクリドン系顔料、キナクリドンキノン系顔料、ジオキサジン系顔料、フタロシアニン系顔料、アントラピリミジン系顔料、アンサンスロン系顔料、インダンスロン系顔料、フラバンスロン系顔料、ペリレン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ペリノン系顔料、キノフタロン系顔料、アントラキノン系顔料、チオインジゴ系顔料、ベンツイミダゾロン系顔料、イソインドリノン系顔料、アゾメチン系顔料またはアゾ系顔料等が挙げられる。
【0020】
本実施形態に係る記録方法で使用する水性インクに用いられる有機顔料の具体例としては、下記のものが挙げられる。
シアンインク組成物に使用される顔料としては、C.I.ピグメントブルー1、2、3、15:3、15:4、15:34、16、22、60等;C.I.バットブルー4、60等が挙げられ、好ましくは、C.I.ピグメントブルー15:3、15:4、および60からなる群から選択される単独あるいは二種類以上の混合物である。また、これらの顔料の含有量は、シアンインク組成物全量に対して0.5質量%〜20質量%程度、好ましくは1質量%〜10質量%程度である。
【0021】
マゼンタインク組成物に使用される顔料としては、C.I.ピグメントレッド5、7、12、48(Ca)、48(Mn)、57(Ca)、57:1、112、122、123、168、184、202、C.I.ピグメントバイオレット19等が挙げられ、好ましくはC.I.ピグメントレッド122、202、209、およびC.I.ピグメントバイオレット19からなる群から選択される単独あるいは二種類以上の混合物である。また、これらの顔料の含有量は、マゼンタインク組成物全量に対して0.5質量%〜20質量%程度、好ましくは1質量%〜10質量%程度である。
【0022】
イエローインク組成物に使用される顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、12、13、14C、16、17、73、74、75、83、93、95、97、98、119、110、114、128、129、138、150、151、154、155、180、185、等が挙げられ、好ましくはC.I.ピグメントイエロー74、109、110、128、138、180および185からなる群から選択される単独あるいは二種類以上の混合物である。また、これらの顔料の含有量は、イエローインク組成物全量に対して0.5質量%〜20質量%程度、好ましくは1質量%〜10質量%程度である。
【0023】
オレンジインク組成物に使用される顔料としては、C.I.ピグメントオレンジ36もしくは43またはこれらの混合物である。また、これらの顔料の含有量は、オレンジインク組成物全量に対して0.5質量%〜20質量%程度、好ましくは1質量%〜10質量%程度である。
【0024】
グリーンインク組成物に使用される顔料としては、C.I.ピグメントグリーン7もしくは36またはこれらの混合物である。また、これらの顔料の含有量は、グリーンインク組成物全量に対して0.5質量%〜20質量%程度、好ましくは1質量%〜10質量%程度である。
【0025】
上記の顔料は、インク組成物中でより安定的に分散保持されやすくするために、各種の方法を適用することができる。その方法としては、たとえば、樹脂分散剤を用いて分散させる方法、界面活性剤を用いて分散させる方法、顔料粒子表面に親水性官能基を化学的・物理的に導入し、分散および/または溶解可能とする方法等が挙げられる。本実施形態に係る記録方法に使用される水性インクには、前記のいずれの方法も用いることができ、必要に応じて各方法を組み合わせた形態で用いることもできる。本実施形態のインク組成物は、後述の水溶性樹脂を含み、該水溶性樹脂が上記の樹脂分散剤としても機能するため、樹脂分散剤を用いる方法の説明は省略する。
【0026】
顔料を分散させるために用いることができる界面活性剤としては、アルカンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アシルメチルタウリン酸塩、ジアルキルスルホ琥珀酸塩、アルキル硫酸エステル塩、硫酸化オレフィン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩、モノグリセライトリン酸エステル塩等のアニオン性界面活性剤、アルキルピリジウム塩、アルキルアミノ酸塩、アルキルジメチルベタイン等の両性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミド、グリセリンアルキルエステル、ソルビタンアルキルエステル等のノニオン性界面活性剤が挙げられる。
【0027】
上記樹脂分散剤または上記界面活性剤の顔料に対する添加量は、顔料1質量%に対して好ましくは1質量%〜100質量%であり、より好ましくは5質量%〜50質量%である。この範囲であることにより、顔料の水中への分散安定性が確保できる。
【0028】
顔料粒子表面に親水性官能基を化学的・物理的に導入し、分散および/または溶解可能とする方法としては、顔料に親水性官能基として、−OM、−COOM、−CO−、−SO3M、−SO2NH2、−RSO2M、−PO3HM、−PO3M2、−SO2NHCOR、−NH3、−NR3(但し、式中のMは、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム又は有機アンモニウムを表し、Rは、炭素数1〜12のアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基または置換基を有していてもよいナフチル基を表す。)等を導入する方法が挙げられる。これらの官能基は、顔料粒子表面に直接および/または他の基を介してグラフトされることによって、物理的および/または化学的に導入される。多価の基としては、炭素数が1〜12のアルキレン基、置換基を有していてもよいフェニレン基又は置換基を有していてもよいナフチレン基等を挙げることができる。
【0029】
また、前記の表面処理方法としては、硫黄を含む処理剤によりその顔料粒子表面に−SO3Mおよび/または−RSO2M(Mは対イオンであって、水素イオン、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、又は有機アンモニウムイオンを示す。)が化学結合するように表面処理されたもの、すなわち、前記顔料が、活性プロトンを持たず、スルホン酸との反応性を有せず、顔料が不溶ないしは難溶である溶剤中に、顔料を分散させ、次いでアミド硫酸、又は三酸化硫黄と第三アミンとの錯体によりその粒子表面に−SO3Mおよび/または−RSO2Mが化学結合するように表面処理され、水に分散および/または溶解が可能なものとされたものであることがより好ましい。
【0030】
前記官能基またはその塩を顔料粒子の表面に直接または多価の基を介してグラフトさせる表面処理手段としては、種々の公知の表面処理手段を適用することができる。例えば、市販の酸化カーボンブラックにオゾンや次亜塩素酸ソーダ溶液を作用し、カーボンブラックをさらに酸化処理してその表面をより親水化処理する手段(例えば、特開平7−258578号公報、特開平8−3498号公報、特開平10−120958号公報、特開平10−195331号公報、特開平10−237349号公報)、カーボンブラックを3−アミノ−N−アルキル置換ピリジウムブロマイドで処理する手段(例えば、特開平10−195360号公報、特開平10−330665号公報)、有機顔料が不溶又は難溶である溶剤中に有機顔料を分散させ、スルホン化剤により顔料粒子表面にスルホン基を導入する手段(例えば、特開平8−283596号公報、特開平10−110110号公報、特開平10−110111号公報)、三酸化硫黄と錯体を形成する塩基性溶剤中に有機顔料を分散させ、三酸化硫黄を添加することにより有機顔料の表面を処理し、スルホン基又はスルホンアミノ基を導入する手段(例えば、特開平10−110114号公報)等が挙げられるが、本発明で用いられる表面処理顔料のための作製手段はこれらの手段に限定されるものではない。
【0031】
一つの顔料粒子にグラフトされる官能基は単一でも複数種であってもよい。グラフトされる官能基の種類及びその程度は、インク中での分散安定性、色濃度、及びインクジェットヘッド前面での乾燥性等を考慮しながら適宜決定されてよい。
【0032】
顔料を水中に分散させる方法としては、樹脂分散剤については顔料と水と樹脂、界面活性剤については顔料と水と界面活性剤、表面処理された顔料については該顔料と水、また各々に必要に応じて水溶性有機溶剤・中和剤等を加えて、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータミル、ヘンシェルミキサー、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、ジェットミル、オングミル等の従来用いられている分散機にて行なうことができる。この場合、顔料の粒径としては、平均粒径で20nm〜500nmの範囲になるまで、より好ましくは50nm〜200nmの範囲になるまで分散することが、顔料の水中での分散安定性を確保する点で好ましい。
【0033】
(水溶性樹脂)
本実施形態に係る記録方法で使用する水性インクは、水溶性樹脂を含有する。水溶性樹脂の機能の1つは、上述した顔料の分散性を高めることである。また、水溶性樹脂組成物の他の機能の1つとしては、インク組成物が記録媒体に付着したときに、記録媒体とインク組成物、および/または、インク組成物中の固形分間の密着性を高めることである。水溶性樹脂としては、ポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン類、ポリアクリル酸、アクリル酸−アクリルニトリル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−α―メチルスチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−α―メチルスチレン−アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、酢酸ビニル−マレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニル−クロトン酸共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体等およびこれらの塩が挙げられる。これらの中で、特に疎水性官能基を有するモノマーと親水性官能基を持つモノマーとの共重合体、疎水性官能基と親水性官能基とを併せ持つモノマーからなる重合体が好ましい。共重合体の形態としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体のいずれの形態でも用いることができる。
【0034】
上記の塩としては、アンモニア、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ジプロピルアミン、ブチルアミン、イソブチルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリ−iso−プロパノールアミン、アミノメチルプロパノール、モルホリン等の塩基性化合物との塩が挙げられる。これら塩基性化合物の添加量は、上記水溶性樹脂の中和当量以上であれば特に制限はない。
【0035】
上記水溶性樹脂の分子量は、重量平均分子量として1,000〜100,000の範囲であることが好ましく、3,000〜10,000の範囲であることがより好ましい。分子量が上記範囲であることにより、着色剤の水中での安定的な分散が得られ、またインク組成物に適用した際の粘度制御等がしやすい。また、酸価としては50〜300の範囲であることが好ましく、70〜150の範囲であることがより好ましい。酸価がこの範囲であることにより、着色剤粒子の水中での分散性が安定的に確保でき、またこれを用いたインク組成物にて印刷された印刷物の耐水性が良好である。
【0036】
以上述べた水溶性樹脂としては市販品を用いることもできる。詳しくは、ジョンクリル67(重量平均分子量:12,500、酸価:213)、ジョンクリル678(重量平均分子量:8,500、酸価:215)、ジョンクリル586(重量平均分子量:4,600、酸価:108)、ジョンクリル611(重量平均分子量:8,100、酸価:53)、ジョンクリル680(重量平均分子量:4,900、酸価:215)、ジョンクリル682(重量平均分子量:1,700、酸価:238)、ジョンクリル683(重量平均分子量:8,000、酸価:160)、ジョンクリル690(重量平均分子量:16,500、酸価:240)(以上商品名、BASFジャパン株式会社製)等が挙げられる。
【0037】
(熱可塑性樹脂粒子)
本実施形態に係る記録方法で使用する水性インクは、熱可塑性樹脂粒子を含有する。該熱可塑性樹脂粒子は、インク乾燥後にインク固化物を記録媒体上に強固に定着させる作用を有する。この作用により樹脂粒子を含有するインク組成物で印刷された印刷物は、インク非吸収性またはインク低吸収性の記録媒体上において耐擦性に優れる。本実施形態に係る記録方法で使用する水性インクには、インク組成物中に完全に溶解するような熱可塑性樹脂粒子が添加されてもよく、インク組成物中で粒子として分散している状態(すなわち、エマルジョン状態またはサスペンジョン状態)となるような熱可塑性樹脂粒子を含有させてもよい。
【0038】
上記の熱可塑性樹脂粒子を構成する成分としては、例えばポリアクリル酸エステルもしくはその共重合体、ポリメタクリル酸エステルもしくはその共重合体、ポリアクリロニトリルもしくはその共重合体、ポリシアノアクリレート、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリイソブチレン、ポリスチレンもしくはそれらの共重合体、石油樹脂、クロマン・インデン樹脂、テルペン樹脂、ポリ酢酸ビニルもしくはその共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルエーテル、ポリ塩化ビニルもしくはその共重合体、ポリ塩化ビニリデン、フッ素樹脂、フッ素ゴム、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルピロリドンもしくはその共重合体、ポリビニルピリジン、ポリビニルイミダゾール、ポリブタジエンもしくはその共重合体、ポリクロロプレン、ポリイソプレン、天然樹脂等が挙げられる。この中で、特に分子構造中に疎水性部分と親水性部分とを併せ持つものがより好ましい。
【0039】
上記のような熱可塑性樹脂粒子としては、公知の材料・方法で得られるものを用いることもできる。例えば、特公昭62−1426号公報、特開平3−56573号公報、特開平3−79678号公報、特開平3−160068号公報、特開平4−18462号公報等に記載のものを用いてもよい。また、市販品を用いることもでき、例えば、マイクロジェルE−1002、マイクロジェルE−5002(以上商品名、日本ペイント株式会社製)、ボンコート4001、ボンコート5454(以上商品名、大日本インキ化学工業株式会社製)、SAE1014(商品名、日本ゼオン株式会社製)、サイビノールSK−200(商品名、サイデン化学株式会社製)、ジョンクリル7100、ジョンクリル390、ジョンクリル711、ジョンクリル511、ジョンクリル7001、ジョンクリル632、ジョンクリル741、ジョンクリル450、ジョンクリル840、ジョンクリル74J、ジョンクリルHRC−1645J、ジョンクリル734、ジョンクリル852、ジョンクリル7600、ジョンクリル775、ジョンクリル537J、ジョンクリル1535、ジョンクリルPDX−7630A、ジョンクリル352J、ジョンクリル352D、ジョンクリルPDX−7145、ジョンクリル538J、ジョンクリル7640、ジョンクリル7641、ジョンクリル631、ジョンクリル790、ジョンクリル780、ジョンクリル7610(以上商品名、BASFジャパン株式会社製)等が挙げられる。
【0040】
上記の熱可塑性樹脂粒子は、以下に示す方法で得られ、そのいずれの方法でもよく、必要に応じて複数の方法を組み合わせて得てもよい。その方法としては、所望の熱可塑性樹脂粒子を構成する成分の単量体中に重合触媒(重合開始剤)と分散剤とを混合して重合(すなわち乳化重合)する方法、親水性部分を持つ熱可塑性樹脂を水溶性有機溶剤に溶解させその溶液を水中に混合した後に水溶性有機溶剤を蒸留等で除去することで得る方法、熱可塑性樹脂を非水溶性有機溶剤に溶解させその溶液を分散剤と共に水溶液中に混合して得る方法等が挙げられる。上記の方法は、用いる熱可塑性樹脂の種類・特性に応じて適宜選択することができる。熱可塑性樹脂粒子を分散する際に用いることのできる分散剤としては、特に制限はないが、アニオン性界面活性剤(例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、ラウリルリン酸ナトリウム塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートアンモニウム塩等)、ノニオン性界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等)を挙げることができ、これらを単独あるいは二種以上を混合して用いることができる。
【0041】
熱可塑性樹脂粒子の平均粒子径は、水性インクの保存安定性・吐出安定性を確保する点から、好ましくは5nm〜400nmの範囲であり、より好ましくは50nm〜200nmの範囲である。
【0042】
熱可塑性樹脂粒子の含有量は、水性インク全量に対して、固形分換算で好ましくは0.1質量%〜15質量%であり、より好ましくは0.5質量%〜10質量%である。この範囲内であることにより、インク非吸収性または低吸収性の記録媒体上においても、本実施形態に係る記録方法に用いられる水性インクを固化・定着させることができる。含有量が0.1質量%未満であるとインク固化・定着の強度が弱くなり、記録媒体表面から剥離しやすくなる場合がある。一方、含有量が15質量%を超えると、水性インクの保存安定性・吐出安定性が確保できない場合がある。
【0043】
(シリコン系界面活性剤)
本実施形態に係る記録方法で使用する水性インクは、シリコン系界面活性剤を含有する。シリコン系界面活性剤は、記録媒体上でインクの濃淡ムラや滲みを生じないように均一に広げる作用を有する。シリコン系界面活性剤の含有量は、インク組成物全量に対して、好ましくは0.1質量%〜1.5質量%である。シリコン系界面活性剤の含有量が0.1質量%未満であると、記録媒体上でインクが均一に濡れ広がりにくいため、インクの濃淡ムラや滲みが発生しやすい。一方、シリコン系界面活性剤の含有量が1.5質量%を超えると、インクに溶解し難くなる、または、溶解しなくなることがあるため、不溶物の発生によりインクの保存安定性が悪くなることがある。
【0044】
シリコン系界面活性剤としては、ポリシロキサン系化合物等が好ましく用いられ、例えば、ポリエーテル変性オルガノシロキサン等が挙げられる。より詳しくは、BYK−306、BYK−307、BYK−333、BYK−341、BYK−345、BYK−346、BYK−348(以上商品名、ビックケミー・ジャパン株式会社製)、KF−351A、KF−352A、KF−353、KF−354L、KF−355A、KF−615A、KF−945、KF−640、KF−642、KF−643、KF−6020、X−22−4515、KF−6011、KF−6012、KF−6015、KF−6017(以上商品名、信越化学株式会社製)等が挙げられる。
【0045】
(水)
本実施形態に係る記録方法で使用する水性インクは、水を含有する。水は前記インク組成物の主となる媒体であり、後述する乾燥工程において揮発する成分である。
水は、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水または超純水のようなイオン性不純物を極力除去したものであることが好ましい。また紫外線照射または過酸化水素添加等により滅菌した水を用いると、顔料分散液およびこれを用いたインク組成物を長期保存する場合にカビやバクテリアの発生を防止することができるので好適である。
【0046】
(その他の添加成分)
本実施形態に係る記録方法で使用する水性インクは、以上に述べた第一の溶剤、第二の溶剤、着色剤、水溶性樹脂、熱可塑性樹脂粒子、シリコン系界面活性剤、および水を少なくとも含んでおり、この構成であればインク非吸収性または低吸収性のメディア上でも濃淡ムラや滲みが少なく耐擦過性に優れた記録物を形成でき、ノズルの目詰まりを生じにくいものとなるが、さらにその特性を向上させる点で、アセチレングリコール系界面活性剤、防腐剤・防かび剤、pH調整剤、キレート化剤等を添加することができる。
【0047】
アセチレングリコール系界面活性剤としては、例えば、サーフィノール104、104E、104H、104A、104BC、104DPM、104PA、104PG−50、104S、420、440、465、485、SE、SE−F、504、61、DF37、CT111、CT121、CT131、CT136、TG、GA(以上全て商品名、Air Products and Chemicals. Inc.社製)、オルフィンB、Y、P、A、STG、SPC、E1004、E1010、PD−001、PD−002W、PD−003、PD−004、EXP.4001、EXP.4036、EXP.4051、AF−103、AF−104、AK−02、SK−14、AE−3(以上全て商品名、日信化学工業株式会社製)、アセチレノールE00、E00P、E40、E100(以上全て商品名、川研ファインケミカル株式会社製)等が挙げられる。
【0048】
pH調整剤としては、例えば、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、アンモニア、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。
【0049】
防腐剤・防かび剤としては、例えば、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、1,2−ジベンジソチアゾリン−3−オン等が挙げられる。市販品では、プロキセルXL2、プロキセルGXL(以上商品名、アビシア社製)や、デニサイドCSA、NS−500W(以上商品名、ナガセケムテックス株式会社製)等が挙げられる。
【0050】
防錆剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
キレート化剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸およびそれらの塩類(エチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム塩等)等が挙げられる。
【0051】
(水性インクの物性)
水性インクのpHは、好ましくは中性またはアルカリ性であり、より好ましくは7.0〜10.0の範囲内である。pHが酸性であると、インク組成物の保存安定性および分散安定性が損なわれることがある。また、インクジェット記録装置内のインク流路に用いられている金属部品の腐食等の不具合が発生しやすくなる。pHは、上述したpH調整剤を用いて中性またはアルカリ性に調整することができる。
【0052】
水性インクの粘度は、20℃において1.5mPa・s〜15mPa・sの範囲であることが好ましい。この範囲内であれば、下述する第1の工程においてインクの吐出安定性を確保することができる。
【0053】
水性インクの表面張力は、25℃において20mN/m〜40mN/mであることが好ましく、25mN/m〜35mN/mであることがより好ましい。この範囲内であれば、下述する第1の工程においてインクの吐出安定性を確保することができ、インク非吸収性または低吸収性の記録媒体に対する適正な濡れ性を確保することができる。
【0054】
記録時の前記メディアの加熱温度は、40℃〜80℃であることが好ましい。
加熱温度を40℃〜80℃とすることにより、インクの流れ出しによる滲みを防止しつつ、乾燥むらの発生と記録メディアの劣化を防止することができる。
記録時の前記メディアの加熱温度は、40℃〜50℃であることがさらに好ましい。
加熱温度を40℃〜50℃とすることにより、乾燥むらの発生を一層防止することができる。
【0055】
本発明のインクカートリッジは、沸点210℃〜280℃の第一の溶剤及び沸点150〜280℃の第二の溶剤と、水不溶性の着色剤と、水溶性樹脂と、熱可塑性樹脂粒子と、シリコン系界面活性剤と、水と、を含有し、前記第一の溶剤を水溶液とした時の表面張力が、前記第二の溶剤を水溶液とした時の表面張力より低い水性インク、を備える。
【0056】
(水性インクの製造方法)
本実施形態に係る記録方法で用いられる水性インクは、上述した材料を任意な順序で混合し、必要に応じて濾過等をして不純物を除去することにより得られる。ここで、着色剤は、あらかじめ水溶性樹脂と共に均一に分散させた状態を調製した上で混合した方が、取り扱いの簡便さ等から好ましい。
各材料の混合方法としては、メカニカルスターラー、マグネチックスターラー等の撹拌装置を備えた容器に順次材料を添加して撹拌混合する方法が好適に用いられる。濾過方法としては、遠心濾過、フィルター濾過等を必要に応じて行なうことができる。
【0057】
本発明の記録装置は、上記インクジェット記録方法に用いられる。
本発明の記録装置は、上記インクカートリッジを備える。
【実施例】
【0058】
以下、本発明を実施例および比較例によって詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0059】
(顔料分散液の調製)
本実施例で使用する水性インクは、着色剤として水不溶性の顔料を使用した。顔料をインク組成物に添加する際には、あらかじめ該顔料を水溶性樹脂で分散させた。
顔料分散液は、以下のようにして調製した。まず、30%アンモニア水溶液(中和剤)0.6質量部を溶解させたイオン交換水84.4質量部に、水溶性樹脂としてアクリル酸−アクリル酸エステル共重合体(重量平均分子量:25,000、酸化:180)3質量部を加えて溶解させた。そこに、下記の顔料12質量部を加えてジルコニアビーズによるボールミルにて10時間分散処理を行なった。その後、遠心分離機による遠心ろ過を行って粗大粒子やゴミ等の不純物を除去し、顔料濃度が12質量%となるように調整した。以下に、顔料分散液の製造に使用した顔料種を示す。
カーボンブラックMA77(商品名、三菱化学社製、ブラック顔料分散液に使用)
C.I.ピグメントイエロー74(イエロー顔料分散液に使用)
C.I.ピグメントレッド122(マゼンタ顔料分散液に使用)
C.I.ピグメントブルー15:3(シアン顔料分散液に使用)
【0060】
(インク組成物およびインクセットの調製)
表1に示す有機溶剤と、表2に示す組成と、によりインク組成物を調製した。まず、上記の「顔料分散液の調製」で調製した顔料分散液を用いて、表1表2に示す材料組成にて、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの4色のインク組成物を調製して1組のインクセットとし、異なる組成を有する実施例1〜4のインクセットおよび比較例1〜4のインクセットを得た。各インク組成物は、表1表2に示す材料を容器中に入れ、マグネチックスターラーにて2時間撹拌混合した後、孔径5μmのメンブランフィルターにて濾過してゴミや粗大粒子等の不純物を除去することにより調製した。なお、表1表2中の数値は、全て質量%を示し、イオン交換水は、最終的に表2の配合となるように添加した。
表1において、表面張力の数値は、50質量%水溶液とした時の数値である。
表2において、熱可塑性樹脂粒子は、スチレン−アクリル酸共重合体を用いた。シリコン系界面活性剤として使用した「BYK−348」は商品名であり、ビックケミー・ジャパン株式会社製である。
【0061】
【表1】

【0062】
【表2】

【0063】
〔印刷試験〕
PX-G930(セイコーエプソン(株)社製)の一部を改造して、印刷時に印刷メディアを加熱調節できるプリンタを製造し、そのプリンタを用いて、メディアを50℃に加熱し、前記実施例及び比較例のインク組成物を用いて印刷試験を行った。
印刷メディアとしては、被記録面がプラスチックフィルムで非吸収性の記録メディア、及びコールドラミネートフィルムPG−50L(材質PET、ラミーコーポレーション社製)を用いた。
【0064】
(画質)
印刷パターンをベタパターンとし、印刷時加熱工程(加熱温度50℃,30℃)で印刷し、印刷直後に印刷物を60℃乾燥機にて1分間乾燥し、不均一むら、乾燥むらが発生しているかを調べた。
○:むらがない
△:ややむらあり
×:むらが多い
【0065】
(乾燥状態)
上記の印刷パターンで印刷(加熱温度50℃)し、印刷直後に印刷物を60℃乾燥機にて1分間乾燥させた。その後、室温で1時間後、24時間後について、印刷部分のべたつきを調べた。
○:印刷部分にべたつきがない
×:印刷部分にべたつきがある
【0066】
表3に、評価結果を示す。
【表3】

【0067】
表3に示すように、実施例1〜4では、凝集むらが発生せず、画質が優れていた。特に、実施例1、2においてはドットのサイズを大きくすることができるため、印刷スピードを速くすることができる。一方、比較例では凝集むらが発生した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非吸収性または低吸収性のメディアに対して、水性インクを付着させて画像を形成するインクジェット記録方法であって、
前記メディアを加熱しながら画像を形成し、
前記水性インクは、沸点210℃〜280℃の第一の溶剤及び沸点150℃〜280℃の第二の溶剤と、水不溶性の着色剤と、水溶性樹脂と、熱可塑性樹脂粒子と、シリコン系界面活性剤と、水と、を含有し、前記第一の溶剤を水溶液とした時の表面張力が、前記第二の溶剤を水溶液とした時の表面張力より低い、インクジェット記録方法。
【請求項2】
前記第二の溶剤の沸点が150℃〜210℃未満であり、かつ、前記メディアに付着させるインク滴量が3ng〜30ngである、請求項1記載のインクジェット記録方法。
【請求項3】
前記第二の溶剤の沸点が210℃〜280℃であり、かつ、前記メディアに付着させるインク滴量が3ng〜15ngである、請求項1記載のインクジェット記録方法。
【請求項4】
前記水性インクにおける前記シリコン系界面活性剤の含有量は、0.1質量%〜1.5質量%である、請求項1〜3の何れかに記載のインクジェット記録方法。
【請求項5】
前記メディアの加熱温度は、40℃〜80℃である、請求項1〜4の何れかに記載のインクジェット記録方法。
【請求項6】
沸点210℃〜280℃の第一の溶剤及び沸点150〜280℃の第二の溶剤と、水不溶性の着色剤と、水溶性樹脂と、熱可塑性樹脂粒子と、シリコン系界面活性剤と、水と、を含有する水性インクであって、前記第一の溶剤を水溶液とした時の表面張力が、前記第二の溶剤を水溶液とした時の表面張力より低い水性インク、を備えたインクカートリッジ。
【請求項7】
請求項1〜5の何れかに記載のインクジェット記録方法に用いられる記録装置。
【請求項8】
請求項6記載のインクカートリッジを備えた記録装置。

【公開番号】特開2010−94809(P2010−94809A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−264741(P2008−264741)
【出願日】平成20年10月14日(2008.10.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】