説明

インクジェット記録装置およびインクジェット記録方法

【課題】記録ヘッドの温度変化や記録装置本体を構成する部品等のばらつきに伴う吐出特性の変動を抑制し、画像劣化の少ない記録を行なうことができるインクジェット記録装置および記録方法を提供する。
【解決手段】インク滴を吐出するノズルを備えた記録ヘッドを備えたインクジェット記録装置であって、前記記録ヘッドの温度を検出する温度検出手段と、前記記録ヘッドの温度を調節する温度調節手段と、インク滴の吐出特性を測定する測定手段と、インク滴を吐出させるために記録ヘッドに印加する駆動信号の駆動条件に基づき駆動信号を駆動させる駆動手段と、2以上の前記記録ヘッドのヘッド温度において前記測定手段により測定された吐出特性に基づき、前記記録ヘッドの駆動条件を算出する駆動条件算出手段と、前記駆動条件算出手段により算出された駆動条件に基づき記録を行う記録制御手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置およびインクジェット記録方法に関し、特に記録画像の品質劣化を防止するインクジェット記録装置およびインクジェット記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置は、記録ヘッドに形成された多数のノズルから微小なインク滴を記録媒体に向けて吐出し、記録ヘッドを記録媒体の幅方向(主走査方向)に移動させることにより、記録媒体の所定の記録面に記録を行う。このようなインクジェット記録装置では、主走査方向に移動される記録ヘッドのノズルからそれぞれ吐出されるインク滴の着弾位置にずれが生じると、記録画像に乱れが生じて画像品質を低下させる。このため、ノズルから吐出されるインク滴の吐出速度を一定に保つ必要がある。
【0003】
一般に、環境温度や記録ヘッドのヘッド温度が変動することでインクの粘度が変動すると、インク滴の吐出速度が異なる。例えば、記録中に記録ヘッドのヘッド温度が上昇してインク粘度が低下すると、インク滴の吐出速度は速くなる。このためインクの吐出量が変動し、記録の始めと終わりで画像の濃度が変わったり、着弾位置の変動から画像がボケたり、ざらついたりすることにより、画像品質の劣化を生じさせることがある。
【0004】
また、記録装置本体を構成する部品や基盤などの個々のばらつきや温度特性、記録ヘッドのノズルやインク流路の寸法の交差やヒータのシート抵抗のばらつきなど、装置毎にインク滴の吐出速度がばらつくさまざまな要因を有している。この記録装置毎の特性により、画像品質の劣化を生じさせることもある。
【0005】
さらに、記録装置の使用状況に基づいてインクの吐出特性が変化することにより、インク滴の吐出速度が変化して、画像品質の劣化を生じさせることもある。
【0006】
このようなインク滴の吐出速度を一定に保つ技術として速度帰還や温度帰還によって吐出速度を一定に保つように制御する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。この技術では、インク滴の吐出速度と記録ヘッドのヘッド温度の検出結果から、最適なインク滴をノズルから吐出させるための駆動条件を選択することで、記録ヘッドのヘッド温度の変動による吐出速度の変化を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−142806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一般に、記録ヘッドのヘッド温度に応じて、駆動パルスを変調させることで、記録ヘッドの昇温による吐出速度の上昇を抑制する技術が知られている。しかしながらこの技術は、予め温度変動分と駆動条件との相関を求めたテーブルに基づいて制御されている。つまり、最も典型的なモデルでの条件が反映されているため、実際の各記録装置本体の電源や基盤、記録ヘッドのヒータ抵抗のばらつきなどは考慮されてはいない。また、検出されるヘッド温度の値と記録中のノズル近傍の温度は必ずしも一致しておらず、吐出速度が変動することもある。
【0009】
上述した特許文献1に開示されたような速度帰還や温度帰還によって吐出速度を一定に保つように制御する技術であっても、予め吐出速度と駆動条件、温度変動分と駆動条件との相関を求めたテーブルに基づき駆動条件を決定している。つまり、最も典型的なモデルでの条件が反映されているため、実際の記録本体毎の電源や基盤、記録ヘッドのヒータ抵抗のばらつきなど考慮されてはいない。また、インクの種類や記録装置の使われ方の違いで、予め用意した相関テーブルの温度変動分と駆動条件とが実際のものとずれることもある。
【0010】
本発明は以上の点を鑑みてなされたものであり、記録ヘッドの温度変化や記録装置本体を構成する部品等のばらつきに伴う吐出特性の変動を抑制し、画像劣化の少ない記録を行なうことができるインクジェット記録装置および記録方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための本発明は、インク滴を吐出するノズルを備えた記録ヘッドを備えたインクジェット記録装置であって、前記記録ヘッドの温度を検出する温度検出手段と、前記記録ヘッドの温度を調節する温度調節手段と、インク滴の吐出特性を測定する測定手段と、インク滴を吐出させるために記録ヘッドに印加する駆動信号の駆動条件に基づき駆動信号を駆動させる駆動手段と、2以上の前記記録ヘッドのヘッド温度において前記測定手段により測定された吐出特性に基づき、前記記録ヘッドの駆動条件を算出する駆動条件算出手段と、前記駆動条件算出手段により算出された駆動条件に基づき記録を行う記録制御手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
以上の構成によれば、少なくとも2つのヘッド温度におけるインク滴の吐出特性の測定結果からヘッド温度に対する駆動条件を算出することができる。これにより、記録装置毎に記録ヘッドのヘッド温度に対する最適な駆動条件を持つことができ、温度変動や装置差によらず、画像劣化の少ない記録を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施形態のインクジェット記録装置の構成を示す概略斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施形態の速度検出装置を示す概略図である。
【図3】本発明の第1の実施形態の記録ヘッドの構成を示す要部斜視図である。
【図4】本発明の第1の実施形態の装置構成の各部の記録制御を実行するための制御構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の第1の実施形態のヘッド温度と駆動条件の相関テーブルを算出する工程を示すフローチャートである。
【図6】本発明の第1の実施形態のヘッド温度と駆動条件の相関テーブルを示す図である。
【図7】本発明の第1の実施形態の記録方法の工程を示すフローチャートである。
【図8】本発明の第2の実施形態のヘッド温度と駆動条件の相関テーブルを算出する工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に図面を参照して本発明における実施形態を詳細に説明する。
【0015】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態のインクジェット記録装置の構成を示す概略斜視図である。インクカートリッジ202は、キャリッジ106に着脱可能に装着されている。インクカートリッジ202は、4色のカラーインク(ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー)がそれぞれ入れられたインクタンクと、記録ヘッド201から構成されている。紙送りローラ103は、補助ローラ104とともに記録媒体107を抑えながら図中の矢印方向に回転し、記録用紙等の記録媒体107の給紙を行うとともに、記録媒体107を抑える役割も果たしている。4つのインクカートリッジを支持するキャリッジ106は、搭載するインクカートリッジ202および記録ヘッド201を記録とともに移動させる。このキャリッジ106は、記録装置が記録を行っていないとき、あるいは記録ヘッドの回復動作を行うときには図の破線で示したホームポジション位置に待機するように制御される。記録ヘッド201には、不図示の記録ヘッドの温度を検出するための温度検出手段が設けられている。
【0016】
記録開始前、ホームポジションに位置するキャリッジ106は、記録開始命令を受け取ると、図中のx方向に移動しながら記録ヘッド201に設けられた記録素子を駆動して記録媒体上に記録ヘッドの記録幅に対応した領域の記録を行う。キャリッジの走査方向に沿って、紙面端部まで記録が終了すると、キャリッジは元のホームポジションに戻り、再びx方向への記録を行う。前回の記録走査が終了してから、続く記録走査が始まる前に紙送りローラ103が図に示した矢印方向へ回転して必要な幅だけy方向への紙送りが行われる。このように記録のための主走査と紙送りとを繰り返すことにより記録媒体上への記録が完成する。記録ヘッドからインクを吐出する記録動作は、記録制御手段(不図示)からの制御に基づいて行われる。
【0017】
なお、本実施形態の記録装置は、一方向への主走査時のみ記録を行うものであるが、本発明の記録装置は、記録速度を高めるため、x方向への主走査の記録が終わりキャリッジをホームポジション側へ戻す際の復路においても記録を行う構成であってもよい。
【0018】
さらに、本実施形態の記録装置は、インクタンクと記録ヘッドとが分離可能にキャリッジ106に保持しているものであるが、本発明はこのようなものに限定されるものではない。すなわち、記録用のインクを収容するインクタンク202と記録ヘッド201とが一体になったインクジェットカートリッジや、一つの記録ヘッドから複数色のインクを吐出可能な複数色一体型記録ヘッドを用いるものであってもよい。
【0019】
また、本実施形態の記録装置には、回復動作を行う位置には、吐出口面をキャップするキャッピング手段や、キャッピング手段によるキャップ状態で記録ヘッド内の増粘インクや気泡を除去する等のヘッド回復動作を行う回復ユニット(不図示)が設けられている。また、キャッピング手段の側方には、クリーニングブレード等が設けられ記録ヘッド201に向けて突出可能に支持され、記録ヘッドの前面との当接が可能となっている。これにより、回復動作後に、クリーニングブレードを記録ヘッドの移動経路中に突出させ、記録ヘッドの移動にともなって吐出口面の不要なインク滴や汚れ等の払拭が行われる。
【0020】
図2は、記録ヘッドから吐出されるインク滴の速度を検出する速度検出装置を示す概略図である。本実施形態では、インク滴の吐出特性を測定する測定手段として、速度検出装置が使用される。この速度検出装置は、本実施形態の記録装置のキャリッジ106の下部に設けられているものである。速度検出装置は、LEDやレーザー等からなる発光素子203およびフォトダイオードなどからなる受光素子204を有している。
【0021】
本実施形態の吐出速度検出装置は、発光素子203は記録ヘッド201の各ノズルから吐出されるインク滴313の通過を検出するための検出光Lを出射する。そして、受光素子204は、発光素子203から出射された検出光Lを受光する。検出光Lは記録ヘッド201の主走査方向と直行し各記録ヘッド201のノズル配列方向と平行であって、インク滴313の吐出方向に沿う高さ位置が記録ヘッド201のノズル面の位置よりも低い位置となるように出射される。このような構成により、記録ヘッド201のいずれかのノズル列が検出光L上に位置したときに、そのノズルから吐出されるインク滴313の通行経路は検出光Lと交叉する。以上により、インク滴313は吐出速度検出装置によりインク滴313の吐出速度が検出される。
【0022】
図3は、本実施形態の記録ヘッドの構成を示す要部斜視図である。記録ヘッド201は、それぞれが所定のピッチで複数の吐出口300が形成されている。また、共通液室301と各吐出口300とを連結する各液路302の壁面に沿ってインク吐出用のエネルギーを発生するための記録素子303が配設されている。記録素子303とその回路はシリコン上に半導体製造技術を利用して作られている。また、温度センサ(不図示)、サブヒータ(不図示)も同一シリコン上に半導体製造プロセスと同様のプロセスで一括形成されている。これらの電気配線が作られたシリコンプレート308は、放熱用のアルミベースプレート307に接着している。また、シリコンプレート上の回路接続部311とプリント板309とは超極細ワイヤー310により接続され記録装置本体からの信号は信号回路312を通して受け取られる。液路302および共通液室301は射出成形により作られたプラスチックカバー306で形成されている。共通液室301は、インクカートリッジ202のインクタンクとジョイントパイプ304とインクフィルター305を介して連結しており、共通液室301にはインクタンクからインクが供給される構成となっている。インクタンクから共通液室301に供給されて一時的に貯えられたインクは、毛管現象により液路302に侵入し、吐出口300でメニスカスを形成して液路302を満たした状態を保つ。このとき、電極(不図示)を介して記録素子303が通電されて発熱すると、記録素子303上のインクが急激に加熱されて液路302内に気泡が発生し、この気泡の膨張により吐出口300からインク滴313が吐出される。
【0023】
図4は、本実施形態の装置構成の各部の記録制御を実行するための制御構成を示すブロック図である。インターフェ−ス400は記録信号等を入力し、プログラムROM402は、MPU401が実行する制御プログラムを格納する。また、ダイナミック型のRAM(DRAM)403は、記録信号やヘッドに供給される記録データ等の各種データを保存することができ、記録ドット数や、インク記録ヘッドの交換回数等も記憶できる。ゲートアレイ404は、記録ヘッドに対する記録データの供給制御を行い、インターフェース400、MPU401、DRAM403間のデータの転送制御も行う。キャリアモータ(CRモータ)405は、記録ヘッドを搬送するためのモータであり、搬送モータ(LFモータ)406は、記録用紙搬送のためのモータである。モータドライバ407および408は、夫々搬送モータ405およびキャリアモータ406を駆動するモータドライバである。また、ヘッドドライバ409は、記録ヘッド410を駆動する。
【0024】
次に、本実施形態のインク滴吐出量制御について説明する。本実施形態では、異なる2の温度におけるそれぞれのインクの吐出速度と、目標吐出速度に最も近くなる駆動条件から、吐出速度が一定となるようなヘッド温度と駆動条件の相関テーブルを算出する。これにより、記録ヘッドの吐出口から吐出されるインク滴吐出量を制御して、画像品質の劣化を低減するものである。
【0025】
図5は、本実施形態のヘッド温度と駆動条件の相関テーブルを算出する工程を示すフローチャートである。
【0026】
インク滴吐出量制御が開始すると(S100)、温度調節手段により、記録ヘッドのヘッド温度を40℃に温度調整する(S101)。そして、測定手段により、インク滴の吐出特性を測定する(S102)。すなわち、吐出口からインク滴を吐出させるために記録ヘッドに印加する駆動信号の駆動条件を変えて駆動手段により記録ヘッドに駆動信号を印加して、吐出速度の測定を行なう。本実施形態では、10種類の駆動条件(駆動条件No.1からNo.10)に基づき、吐出速度の測定を行なう。吐出速度の測定結果を、記録装置のメモリ上に記憶させる。
【0027】
ここで、本実施形態の駆動条件は、例えば、記録ヘッドに印加する駆動信号の電圧を変更すること、記録ヘッドに印加する駆動信号のパルス幅を変更すること、または記録ヘッドに印加する駆動信号の立ち上がりの傾きを変更すること等がある。しかしながら、本発明はこのような駆動条件に限定されるものではなく、インク滴の吐出速度を変化させることができる条件であれば特に問わない。
【0028】
次に、温度調節手段により、記録ヘッドのヘッド温度を60℃に温度調節する(S103)。そして、吐出口からインク滴を吐出させるための駆動条件(駆動条件No.1からNo.10)を変えながら、吐出速度の測定を行う(S104)。そして、吐出速度の測定結果を、記録装置のメモリ上に記憶させる。
【0029】
次に、ステップS102およびS104で測定された記録ヘッドのヘッド温度40℃とヘッド温度60℃のそれぞれの吐出速度の結果が、予め定めていた理想的な吐出速度に最も近くなるような吐出条件を、各温度の吐出条件として決定する(S105)。
【0030】
そして、ヘッド温度40℃とヘッド温度60℃の駆動条件を基に、駆動条件算出手段により記録ヘッドのヘッド温度と駆動条件の相関テーブルを算出(S106)する。これにより算出された相関テーブルを、記録中に記録ヘッドのヘッド温度を取得しながら駆動条件を反映させる。
【0031】
なお、本実施形態では40℃と60℃での2つの温度による吐出速度を測定したが、本発明はこのような測定に限定されるものではない。すなわち、3つ以上のヘッド温度のそれぞれについての吐出速度を、駆動条件を異ならせて測定してもよく、また、測定されるヘッド温度も40℃や60℃に限定されるものではない。
【0032】
図6は、本実施形態におけるヘッド温度と駆動条件の相関テーブルを示す図である。ヘッド温度40℃とヘッド温度60℃の駆動条件の駆動条件をもとにしたヘッド温度と駆動条件の相関テーブルは、2点間の駆動条件を線形補間することで算出している。なお、3以上の温度のヘッド温度で駆動条件を決定した場合は、近似式を用いた補間を実施しても良い。また記録ヘッドのヘッド温度と駆動条件の相関テーブルは、ヘッド温度と駆動条件の相関関係式として算出してもよい。
【0033】
次に、本実施形態の記録方法について説明する。
【0034】
図7は、本実施形態の記録方法の工程を示すフローチャートである。まず、30msでの割り込み処理(S10)として、ヘッド温度を取得する(S11)。そして、駆動条件を更新する(S12)。本実施形態では、30msでの時間間隔での割り込み処理としたが、本発明ではシステムに応じて最適な時間間隔としても良い。
【0035】
一方、記録時には、割り込み処理で更新された駆動条件にもとづいて、スキャン内での駆動条件を随時切り換えて記録制御手段により記録を行なう(S21)。記録終了が終了したと判断すると(S22)、記録工程は終了する。
【0036】
以上のように、本発明では、異なる2以上のヘッド温度での吐出速度が目標吐出速度と一定若しくは近似する駆動条件から、ヘッド温度に対する駆動条件の相関テーブルを本体ごとに算出する。すなわち、2以上のヘッド温度における測定された吐出特性から、線形補間または近似式補間により駆動条件が算出される。これにより、記録ヘッドのヘッド温度変化による吐出速度変動に基づく濃度変動や、画像品質の劣化を低減させることができる。
【0037】
なお、本実施形態では、インク滴の吐出特性を測定する測定手段として、インク滴の吐出速度を測定することによりヘッド温度と駆動条件との関係を求めているが、本発明の吐出特性は、インク滴の吐出速度に限定されるものではない。すなわち、記録ヘッドのヘッド温度変化に基づく吐出変動による画像品質の劣化を抑制することができる特性であればよい。例えば、インク滴の吐出量やインク滴の粒径を測定することにより、吐出変動を求めて、ヘッド温度と駆動条件との関係を算出するものであってもよい。
【0038】
(第2の実施形態)
上述した実施形態では、異なる2以上のヘッド温度のそれぞれにおいて、駆動条件を異ならせた複数の吐出速度を計測することによりヘッド温度に対する駆動条件の相関テーブルを算出したが、本発明はこのようなものに限定されるものではない。基準温度における基準駆動条件と、比較温度における比較駆動条件の吐出速度が一定となる駆動条件から、ヘッド温度に対する駆動条件の相関テーブルを算出するものであってもよい。すなわち、上述した実施形態より、簡易にヘッド温度変化による吐出速度変動が原因の濃度変動や、画像品質の劣化を低減させる方法であってもよい。これにより、本発明の効果を得つつ、記録ヘッドの吐出口から吐出されるインク滴吐出量を制御して、画像品質の劣化を低減することができる。
【0039】
図8は、本実施形態のヘッド温度と駆動条件の相関テーブルを算出する工程を示すフローチャートである。
【0040】
インク滴吐出量制御が開始すると(S200)、温度調節手段により、記録ヘッドのヘッド温度を本実施形態の基準温度である40℃に温度調整する(S201)。そして、吐出口からインク滴を吐出させるための駆動条件を、基準となる基準駆動条件にして吐出速度の測定を行なう(S202)。本実施形態では、基準駆動条件No.3を基準となる駆動条件としている。そして、吐出速度の測定結果を、記録装置のメモリ上に記憶させる。
【0041】
次に、温度調節手段により、記録ヘッドのヘッド温度を60℃に温度調節する(S203)。そして、測定手段により、インク滴の吐出特性を測定する(S204)。すなわち、吐出口からインク滴を吐出させるために記録ヘッドに印加する駆動信号の駆動条件を変えて駆動手段により記録ヘッドに駆動信号を印加して、吐出速度の測定を行なう。ここでは、吐出口からインク滴を吐出させるための駆動条件(駆動条件No.1からNo.10)を変えながら、吐出速度の測定をする。そして、吐出速度の測定結果を、記録装置のメモリ上に記憶させる。
【0042】
次に、ステップS202およびS204で測定された記録ヘッドのヘッド温度40℃とヘッド温度60℃のそれぞれの吐出速度の結果が、予め定めていた理想的な吐出速度に最も近くなるような吐出条件を、各温度の吐出条件として決定する(S205)。
【0043】
そして、ヘッド温度40℃とヘッド温度60℃の駆動条件を基に、駆動条件算出手段により記録ヘッドのヘッド温度と駆動条件の相関テーブルを算出(S206)する。これにより算出された相関テーブルを、記録中に記録ヘッドのヘッド温度を取得しながら駆動条件を反映させる。
【0044】
なお、本実施形態では40℃と60℃での2つの温度による吐出速度を測定したが、本発明はこのような測定に限定されるものではない。すなわち、3つ以上のヘッド温度のそれぞれについての吐出速度を、駆動条件を異ならせて測定してもよく、また、測定されるヘッド温度も40℃や60℃に限定されるものではない。また、ヘッド温度40℃とヘッド温度60℃の駆動条件の駆動条件をもとにしたヘッド温度と駆動条件の相関テーブルは、2点間の駆動条件を線形補間することで算出している。なお、3以上の温度のヘッド温度で駆動条件を決定した場合は、近似式を用いた補間を実施しても良い。また記録ヘッドのヘッド温度と駆動条件の相関テーブルは、ヘッド温度と駆動条件の相関関係式として算出してもよい。
【0045】
以上のように、本実施形態では、基準温度における基準駆動条件と、比較温度における比較駆動条件の吐出速度が一定となる駆動条件から、ヘッド温度に対する駆動条件の相関テーブルを本体ごとに算出する。これにより、記録ヘッドのヘッド温度変化による吐出速度変動に基づく濃度変動や、画像品質の劣化を低減させることができる。
【符号の説明】
【0046】
106 キャリッジ
201 記録ヘッド
202 インクカートリッジ
203 発光素子
204 受光素子
300 吐出口
303 記録素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク滴を吐出するノズルを備えた記録ヘッドを備えたインクジェット記録装置であって、
前記記録ヘッドの温度を検出する温度検出手段と、
前記記録ヘッドの温度を調節する温度調節手段と、
インク滴の吐出特性を測定する測定手段と、
インク滴を吐出させるために記録ヘッドに印加する駆動信号の駆動条件に基づき駆動信号を駆動させる駆動手段と、
2以上の前記記録ヘッドのヘッド温度において前記測定手段により測定された吐出特性に基づき、前記記録ヘッドの駆動条件を算出する駆動条件算出手段と、
前記駆動条件算出手段により算出された駆動条件に基づき記録を行う記録制御手段と、
を備えることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記インク滴の吐出特性は、インク滴の吐出速度、インク滴の吐出量、インク滴の粒径のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記駆動条件算出手段は、前記2以上の前記ヘッド温度における前記測定された吐出特性から、線形補間または近似式補間により前記駆動条件を算出することを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
インク滴を吐出するノズルを備えた記録ヘッドにより記録を行なうインクジェット記録方法であって、前記記録ヘッドの温度を検出する温度検出工程と、前記記録ヘッドの温度を調節する温度調節工程と、インク滴の吐出特性を測定する測定工程と、インク滴を吐出させるために記録ヘッドに印加する駆動信号の駆動条件に基づき駆動信号を駆動させる駆動工程と、2以上の前記記録ヘッドのヘッド温度において前記測定工程により測定された吐出特性に基づき、前記記録ヘッドの駆動条件を算出する駆動条件算出工程と、前記駆動条件算出工程により算出された駆動条件に基づき記録を行う記録工程と、を備えることを特徴とするインクジェット記録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−280080(P2010−280080A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−133309(P2009−133309)
【出願日】平成21年6月2日(2009.6.2)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】