インクジェット記録装置およびインクジェット記録装置の制御方法
【課題】インク供給経路を介してメインタンクからサブタンクへとインクを供給するインクジェット記録装置において、濃度むらの少ない高品質な画像を形成することを可能とする。
【解決手段】推定手段によって推定されたインク濃度が所定の閾値以上であるとき、サブタンク内の圧力を変化させ、サブタンク内の気泡の体積を変化させる。これによりインク供給経路内のインクを移動させ、供給路内のインクの濃度変化をなだらかにする。これにより、廃棄するインクを増やしたり、別の画像弊害を起こしたりすることなく形成される画像の濃度むらを視認し辛くすることができる。
【解決手段】推定手段によって推定されたインク濃度が所定の閾値以上であるとき、サブタンク内の圧力を変化させ、サブタンク内の気泡の体積を変化させる。これによりインク供給経路内のインクを移動させ、供給路内のインクの濃度変化をなだらかにする。これにより、廃棄するインクを増やしたり、別の画像弊害を起こしたりすることなく形成される画像の濃度むらを視認し辛くすることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク供給経路を介してインタンクからサブタンクへと供給されたインクを記録ヘッドに供給し、記録ヘッドからインクを吐出して記録を行うインクジェット記録装置およびインクジェット記録装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置(以下、単に記録装置とも称す)では、各種の要因によりインク濃度が変化することにより、画像に濃度むらなどの弊害が発生することが知られており、この課題に対して多くの技術が開発されている。例えば、顔料インクを用いた記録装置において、インク色材の沈降によってインクに濃度分布が起こる場合の課題を解決するための技術が特許文献1に開示されている。すなわち、インクの沈降によりインク濃度分布が起こった場合に色材の沈降状態を取得し、その情報に基づいてノズル開口部分のインクを吸引・廃棄するクリーニングを実施する技術が開示されている。しかしながら、特許文献1に開示の技術では、本来、記録に使用すべきインクを吸引・廃棄することとなるため、インクの消費量が増大しランニングコストの増大を招くという課題がある。
【0003】
これに対し、特許文献2には、顔料インクの濃度情報を取得し、その情報から記録される画像の濃度変化を推定し、画像濃度の推定値の増大に伴って画像の記録データを間引き、ドット数を低減させて記録画像の濃度の均一化を図る技術が開示されている。
【0004】
上記のような顔料の沈降以外にインク濃度が変化する要因としては、インクに含まれている溶剤の蒸発が挙げられる。特許文献3には、このような溶剤の蒸発に伴うインク濃度の増大によって印刷濃度が増大するのを解消する技術が開示されている。ここでは、溶剤の蒸発に伴うインク濃度の変化を推定し、インク濃度が増大すると推定された場合には、画像信号を補正し、記録すべき画像のドット数を制御することによって濃度補正を行なっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−234196号公報
【特許文献2】特開2006−240030号公報
【特許文献3】特開2004−202872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
現在、記録装置のインク供給系としては、記録ヘッドに直結したインクタンクを用いる系と、記録ヘッドから離れた位置に配置されたメインタンクからチューブを介して記録ヘッドに直結されたサブタンクへとインクを供給する系の2系統が知られている。このうち、後者のインク供給系は、プロ/ビジネス用途のインクジェット記録装置に適するものとされている。すなわち、プロ/ビジネス用途の記録装置では、大量のインクを消費するため、容量の大きなメインタンクにインクを収納しておき、メインタンクからインクチューブを介してサブタンクへとインクを供給する方式が採用されている。これによれば、インクタンクの交換頻度およびランニングコストを低減することが可能となる。
【0007】
しかしながら、チューブ供給系を用いた記録装置は、記録ヘッドにインクタンクを直結している方式に比し、供給径路自体が長く大型化しがちである。このため、供給径路からインクの溶剤が余計に蒸発し易い。さらには、上記特許文献1のように濃度が変化したインクを廃棄する場合、供給径路が長い分、多くのインクを廃棄する必要があり、ランニングコストを低減させるというチューブ供給方式を採用する本来の目的に反する結果となる。
【0008】
また、特許文献2および3に開示の技術のように、インク濃度の増大に伴い画像処理によってドット数を少なくする方法では、記録媒体上の、単位領域あたりの色材量を揃えることは可能である。しかし、この場合には、インク濃度の増大に伴ってドット数が減少するため、装置の各機構部分における精度むらの影響を受け易くなり、画像品質の低下を生じさせる可能性がある。例えば、キャリッジの移動速度や記録媒体の搬送誤差などが生じた場合、吐出されるインク滴の着弾位置にずれが生じるが、ドットの密度が高い画像であれば、ドットの着弾位置のずれは画像品質上さほど大きな問題とはならない。しかし、形成されるドットが少ない場合には、インク滴の着弾位置のずれが画像弊害として認識され易い。また、特許文献2および3に開示の技術では、インク濃度や溶剤の蒸発量を推定するための回路やメモリが必要であり、しかも色毎に画像データに修正を加えることが必要となるため、制御系に高いスペックが要求され装置コストの上昇を招くという課題もある。
【0009】
本発明は、インク供給経路を介してメインタンクからサブタンクへとインクを供給するインクジェット記録装置において、インクの廃棄量を抑えつつ濃度むらの少ない画像形成を可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明は以下の構成を有する。
すなわち、本発明の第1の形態は、色材を含んだインクの吐出を可能とする記録ヘッドに対してインクの供給を可能とし、かつ内部に気泡が存在サブタンクと、該サブタンクにインク供給経路を介して連結されたメインタンクと、を備え、前記インク供給経路を介して前記メインタンクからサブタンクへのインクの供給を可能とするインクジェット記録装置であって、前記サブタンクから前記記録ヘッドへのインクの供給、遮断を切換える切換手段と、前記インク供給経路に存在するインク濃度を推定する推定手段と、前記メインタンク内の圧力を変化させる圧力変化手段と、を備え、前記推定手段によって推定されたインク濃度が所定の閾値を越えるとき、前記切換手段は前記サブタンクと前記記録ヘッドとの連通を遮断し、かつ前記圧力変化手段は前記メインタンク内の圧力を変化させることにより前記気泡の体積を変化させることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の第2の形態は、色材を含んだインクの吐出を可能とする記録ヘッドに対してインクの供給を可能とし、かつ内部に気泡が存在サブタンクと、該サブタンクにインク供給経路を介して連結されたメインタンクと、を備え、前記インク供給経路を介して前記メインタンクからサブタンクへのインクの供給を可能とするインクジェット記録装置の制御方法であって、前記インク供給経路に存在するインク濃度を推定する推定工程と、前記推定工程において推定されたインク濃度が所定の閾値以上であるとき、前記サブタンクと前記記録ヘッドとの連通を遮断する遮断工程と、前記遮断工程の後に、メインタンク内の圧力を変化させることにより前記気泡の体積を変化させる圧力変化工程と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、インク供給経路を介してメインタンクからサブタンクへとインクを供給するインクジェット記録装置において、インクの廃棄量を抑えつつ濃度むらの少ない画像を形成することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態における記録装置の全体構成を模式的に示す平面図である。
【図2】本実施形態における記録装置のインク供給系の構成を模式的に示す図である。
【図3】本実施形態における記録装置の制御系の概略構成を示すブロック図である。
【図4】本実施形態における濃度変化推定テーブルを示す図である。
【図5】インク供給経路内に濃度変化が生じていない状態を示す図であり、(a)はインク供給経路内のインク濃度を、(b)は記録ヘッド及び記録画像の濃度をそれぞれ示す。
【図6】インク供給経路内に濃度変化が生じている状態を示す図で、(a)はインク供給経路内のインク濃度を、(b)は記録ヘッド及び記録画像の濃度をそれぞれ示す。
【図7】第1の実施形態における制御動作を示すフローチャートである。
【図8】(a)は第1の実施形態に用いる濃度均一化テーブル1を、(b)は同実施形態における加圧動作と揺動動作のタイミングを示すタイミングチャートである。
【図9】本実施形態のサブタンクにおける気泡の状態を示す図で、(a)は加圧動作前の状態を、(b)は加圧動作後の状態をそれぞれ示す。
【図10】本実施形態におけるインク濃度の変化を示す図で、(a)はインク供給経路内の濃度分布を、(b)は記録ヘッド及び記録画像の各走査における濃度をそれぞれ示す。
【図11】第2の実施形態における制御動作を示すフローチャートである。
【図12】第2の実施形態における濃度均一化テーブル2を示す図である。
【図13】第2の実施形態におけるインク供給経路内の濃度分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0015】
(第1の実施形態)
図1は本発明を実施するためのインクジェット記録装置の全体構成を模式的に示す平面図である。図1において、給紙部10に積載された記録媒体1は、ピックアップローラ2により、装置本体100の内部へと搬送される。また、キャリッジ5はガイドシャフトに沿ってX方向(主走査方向)へと往復移動可能に保持されており、後述のキャリッジモータの駆動力によって往動および復動を行う。キャリッジ5には、インクを吐出可能な複数のノズルを配列した記録ヘッド21(図2参照)が設けられると共に、記録ヘッド21に供給するインクを収納するサブタンク6がサブタンクホルダ9を介して保持されている。サブタンク6と記録ヘッド21とは、図2に示す供給弁22を介して連結されており、サブタンク6から記録ヘッド21までは密閉された状態である。また、サブタンク6は、可撓性を有するインクの供給チューブ(インク供給経路)を介してメインタンク7に連結されている。メインタンク7は、サブタンクに比べて大容量のタンクとなっており、装置本体100のメインタンク保持部4内に交換可能に保持されている。
【0016】
本実施形態におけるインクジェット記録装置は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(Bk)の4色のインクを用いてカラー画像の形成を可能としている。このため、メインタンク7としては、各インク色に対応したメインタンク7a,7b,7c,7dが別個にメインタンク保持部4に持されている。同様に、記録ヘッド21およびこれに連結されているサブタンク6(6a,6b,6c,6d)も各インク色に対応して設けられている。
【0017】
本実施形態におけるインクジェット記録装置は、キャリッジと共に記録ヘッドを移動させつつインクを吐出させる主記録走査と、主走査の停止時に記録媒体を所定量だけ搬送する副走査とを繰り返して記録媒体に記録を行う所謂シリアル型の記録装置となっている。
【0018】
図2は、本実施形態におけるインクジェット記録装置のインク供給系200の構成を模式的に示す図である。インク供給系200は、前述のメインタンク7、サブタンク6、及び供給チューブ8と、サブタンク6と記録ヘッド21との間に挿入された供給制御弁22と、供給チューブ8からメインタンク7との間に挿入された流路弁24と、ポンプ23とからなる。供給制御弁22はその開、閉によってメインタンク7からインク供給経路8へのインクの供給、遮断を切換える。また流路弁24はその開、閉によってサブタンク6から記録ヘッド21へのインクの供給、遮断を切換える。これらの弁22,24の開閉は、後述の制御系によって制御される。
【0019】
ポンプ23は、メインタンク7内のインクに対して加圧と減圧を行うことが可能である。ポンプ23によってメインタンク7内のインクを加圧すると、メインタンク7内のインクは開状態の流路弁24を通過して供給チューブ8側へと送り出され、サブタンク6へと供給される。この際、供給チューブ8内に存在する気泡はインクと共にサブタンク6へ移動するものもある。サブタンク6内に供給されたインクは、開状態となっている供給制御弁22を経て記録ヘッド21に供給され、記録ヘッド21に配列されているノズル内に満たされる。ここで、ノズル内に設けられた吐出エネルギー発生素子(電気熱変換素子または電気機械変換素子など)を駆動することにより、インクが微小な液滴となりノズルから吐出され、その液滴により記録媒体に画像を形成する。なお、メインタンク内のインクが無くなった場合には、流路弁24を閉じ、インクの充填された新たなメインタンク7と交換する。交換時に流路弁24を閉じることにより、供給チューブ8内のインクが外部に漏れるのを防ぐことができる。なお、ポンプ36は、メインタンク7内の圧力を変更する圧力変化手段として機能し、流路弁24は切換手段として機能する。
【0020】
図3は、本実施形態におけるインクジェット記録装置の各部を制御する制御系の概略構成を示すブロック図である。
【0021】
図において、39はインクジェット記録装置における各部の動作を制御する制御手段としての主制御部である。この主制御部39は、CPU33、ROM34、およびRAM35などを有する。CPU33は、ROM34に格納されたプログラムに従って、演算、判断、推定および制御などの処理を行うものであり、後述の処理によりインク濃度を推定する推定手段としても機能する。RAM35は、CPU33における処理を実行する際に使用するワークエリアや種々のデータを一時的に格納するエリアなどを有する。主制御部39には、データや指令などを入力する入力操作部31からの信号およびインクジェット記録装置の各部の状態を検出する検出部32からの信号が入力される。これらの信号を受けて主制御部39は、給紙ローラを駆動する給紙モータ26、搬送モータ25、ポンプ36、キャリッジモータ37、記録ヘッド38、供給制御弁22、流路弁24の駆動を、駆動回路26a,25a,36a,37a,38a,22a,24aを介して制御する。
【0022】
本実施形態では、装置本体100の不使用時間、本実施形態では、最後に回復シーケンスを実施してからの時間を、検出部32からの情報に基づいて、主制御部39に内臓された不図示のタイマにより計測する。そして計測した不使用時間に基づき、CPU33はインクの蒸発や、色材の沈降によるインクの濃度変化を推定する。すなわち、CUP33は、ROM34に格納されている図4の濃度変化推定テーブルを参照し、計測した不使用時間に対応する各色インクの濃度変化推定値△Eを求める。
【0023】
一般に、供給チューブを用いてメインタンクからサブタンクへとインクを供給するインクジェット記録装置では、供給チューブ内のインクの蒸発や色材の沈降などが発生し易い。従って、この濃度分布の生じたインクをそのまま記録ヘッドへと供給した場合には、吐出されるインクにも濃度変化が生じ、記録画像に濃度むらが発生する。不使用時間が短い場合にはこのような問題は生じないが、経過時間が長い場合には、供給チューブ内のインクに濃度分布が生じる。従来のインクジェット記録装置では、この濃度分布の生じたインクをそのまま記録ヘッドから吐出させており、これが記録画像の品質低下を招く要因となっていた。このような経過時間に伴うインク濃度の状態を図5および図6に示す。
【0024】
図5(a)は、不使用時間が短い場合におけるインク供給系200の各部のインクの濃度とインク消費量との関係を示している。横軸のインク消費量はそれぞれ、記録ヘッド部、サブタンク部、供給チューブ部、メインタンク部の体積に相当する量を目安として記載している。不使用時間が短い場合には、インク供給経路内のインク濃度は殆ど差が生じない。よって、図5(a)に示したように記録ヘッドから吐出されるインクには濃度差が生じない。このため、図5(b)に示すように各走査で記録された画像Im1にも濃度むらは発生しない。
【0025】
これに対し不使用時間が長い場合には、図6(a)に示すように、インク供給系200内の各部位毎にインクの濃度差が生じる。このように濃度分布が生じたインクをそのまま記録ヘッド内に供給した場合、図6(b)に示すように各走査における記録ヘッド21内のインク濃度にも差が生じる。従って、各走査で記録された画像にも濃度差が生じ、これが画像Im2に濃度むらを発生させることとなる。
【0026】
そこで本実施形態では、上記のような濃度むらを低減すべく、以下のような制御動作を行う。図7は本実施形態で実行される制御動作の手順を示すフローチャートである。
【0027】
図7において、記録命令が入力操作部31から入力されると(S1)、主制御部39内のCPU33は、記録動作を開始するに先立ち、S2〜S10の制御動作を実行する。まず、駆動回路24aを制御して流路弁24を開き、メインタンク7と供給チューブ8とを連通状態とする(S2)。次に、タイマによって計測された前回のインク吐出動作が終了してから記録命令が入力されるまでの時間である不使用時間に基づき、各インクの濃度変化推定値△Eを決定する(S3)。この濃度変化推定値△Eの決定は、前述のように図4の濃度変化推定テーブルを参照することによって行う。次に、濃度変化推定値△Eが閾値Thを超えるか否かを判断する(S4)。ここで濃度変化推定値△Eが閾値Thを超えないと判断された場合にはS12へ移行して記録動作を開始させる。また、濃度変化推定値△Eが閾値Thを超える場合には、駆動回路24aを制御して供給制御弁22を閉状態とする(S5)。その後、ROM34内に格納されている図8(a)の濃度均一化テーブル1を参照して、前述のインク濃度変化推定値△Eからポンプ36の駆動時間T1[sec]およびキャリッジ揺動時間T2[sec]を決定する(S6)。
【0028】
次に、決定した加圧ポンプ駆動時間T1およびキャリッジ揺動時間T2に基づき、濃度均一化動作を実行する。本実施形態では、濃度均一化動作として、ポンプ36によるインクタンク7への加圧動作、および連続的にキャリッジを往動および復動させる揺動動作を実行する。すなわち、駆動回路36aを制御してポンプ36を駆動させ、メインタンク7内の加圧を開始させる(S7)。この後、所定のタイミングで駆動回路37aを制御してキャリッジモータ37を正転および逆転させ、キャリッジ37の主走査方向(X方向)に沿った揺動動作を開始させる(S8)。そして、先に決定したキャリッジ5の揺動時間T2が経過した時点で、駆動回路37aを制御してキャリッジモータ37の駆動を停止させる(S9)。ポンプ23の加圧開始から所定の時間T2が経過すると、駆動回路36aを制御し、ポンプ36の駆動を停止させる(S10)。その後、駆動回路22aを制御して供給制御弁22を開き、記録動作を開始させる(S12)。記録動作が終了すると、駆動回路24aを制御して流路弁24を閉状態とする(S14)。
【0029】
上記のように、本実施形態では、最後に行われたインク吐出動作からの経過時間によりインク濃度変化推定値△Eを求め、このインク濃度変化推定値△Eに基づいて濃度均一化動作を実行する。この際、図8(a)の濃度均一化テーブルに示すように、インク濃度変化推定値△Eが大きくなるほど、図8(b)のタイミングチャートに示すポンプ駆動時間T1およびキャリッジ揺動時間T2を長くしている。これは、前回のインク吐出動作からの経過時間の長さに応じてインク濃度変化量も増大するためである。経過時間の長さに応じて濃度均一化動作の時間を制御することで、過不足のない適切な濃度均一化動作を実現することができる。
【0030】
ここで、上述の濃度均一化動作の実行によって生じるインクの挙動、並びにそれによって得られる効果を説明する。
【0031】
記録装置を使用し、インクの流れが発生すると、サブタンク6内には、供給チューブ8内に混入している気泡が、サブタンク6内に送られて蓄積される。供給チューブ8内のインクに混入している気泡は、供給チューブ8内に保持されているインクが蒸発して形成された気泡や、ガスの透過により混入した、気泡などからなる。そして、サブタンク6には図9(a)に示すように常に気泡が存在する状態となる。
【0032】
ここで、供給制御弁22が閉じ、かつ流路弁24が開いた状態でポンプ36よるメインタンク7内のインクに対する加圧動作が行われると、サブタンク6内に存在している泡Buが図9(b)に示すように圧縮され、加圧動作前の体積Vaから体積Vbへと縮小する。このときの気泡の体積変化Vc(=Va−Vb)によって、その体積変化Vc分のインクが供給チューブ8内でサブタンク6側に移動し、サブタンク6側のインクと混ざり合う。このため、加圧動作前には図6(a)に示すように供給系200の部位体積毎に生じていた急峻な濃度変化は、それらの部位のつなぎ目でなだらかな濃度変化になる。しかも、本実施形態では、加圧動作によって気泡を縮小化させている過程でキャリッジ5の揺動動作を行うため、サブタンク6内で気泡が微動し、これがインク濃度の均一化を促進する。従って、インク供給系200内のインクの濃度は、図10(a)に示すようによりなだらかなものとなり、インク濃度の均一化はさらに促進される。この状態で記録動作を開始することにより、図6(b)に示した画像Im2と比べ、記録される画像は図10(b)のIm3のような濃度変化がなだらかな画像となり、濃度むらは目立たなくなる。
【0033】
上記のように本実施形態によれば、インク供給系200のインクの濃度変化をなだらかにすることができるため、濃度変化の起こったインクを大量に廃棄する必要がなくなる。よって、インクの消費を抑えることが可能になり、ランニングコストを低減させることができる。また、特許文献2および3に示すように、記録すべき画像の中からドットを間引く必要がなく、精度むらによる画像品質への影響を与える事がない。このため、本実施形態によれば、ランニングコスト、画像品位などについて高い水準が要求されるプロ/ビジネス向けの仕様に適したインクジェット記録装置を提供することができる。
【0034】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態を説明する。この第2の実施形態では、インク供給系200内の濃度変化を、上記第1の実施形態よりもさらになだらかにすることができ、画像の濃度むらをさらに視認されにくくすることが可能になっている。なお、この第2の実施形態においても、図1ないし図3に示す構成を同様に備えるが、各部の制御動作は、図11のフローチャートに示す手順で行われる。
【0035】
記録命令が入力操作部31から入力されると(S21)、主制御部39内のCPU33は、記録動作を開始するに先立ち、以下のS22〜S30の制御動作を実施する。まず、駆動回路24aを制御して流路弁24を開き、メインタンク7と供給チューブ8とを連通状態とする(S22)。次に、タイマによって計測された前回のインク吐出動作が終了してから記録命令が入力されるまでの時間である不使用時間に基づき、各インクの濃度変化推定値△Eを決定する(S23)。この濃度変化推定値△Eの決定は、前述のように図4の濃度変化推定テーブルを参照することによって行う。ここで濃度変化推定値△Eが閾値Thを超えないと判断された場合にはS21へ移行して記録動作を開始する。また、濃度変化推定値△Eが閾値Thを超える場合には、駆動回路24aを制御して供給制御弁22を閉状態とする(S25)。その後、ROM34内に格納されている図12に示す濃度均一化テーブル2を参照して、前述の濃度変化推定値△Eからポンプ36による加圧時間T1[sec]および減圧時間T3[sec]を決定する(S26)。この加圧時間T1および減圧時間T3は、加圧ポンプ23を駆動する時間と等しく、駆動する時間が長くなればなるほど最終的に到達するインクタンク内の圧力の程度も大きくなる。すなわち加圧時間T1が増大するにつれて正圧が増大し、減圧時間が増大するにつれて負圧が増大(正圧が減少)する。
【0036】
次に、決定した加圧時間T1、減圧時間T3および繰り返し回数に基づき、濃度均一化動作を実行する。この第2の実施形態では、濃度均一化動作として、ポンプ36によるインクタンク7への加圧動作と減圧動作とを合わせて行う。すなわち、S27では駆動回路36aを制御し、ポンプ36を加圧時間T1だけ駆動させてメインタンク7に対する加圧動作を行い、その後ポンプ36を減圧時間T3だけ逆駆動させ、メインタンク7に対する減圧動作を行う(S28)。この加圧動作と減圧動作の繰り返し回数が先に決定した繰り返し回数に達したか否かの判断を行い(S29)、決定した繰り返し回数に達した時点で、供給制御弁22を開状態とする(S30)。
【0037】
以上の動作の後、記録動作を開始させる(S31)。記録動作終了後は、駆動回路24aを制御し、流路弁24を閉状態とする(S32,S33)。
【0038】
以上のように、この第2の実施形態では、濃度均一化動作としてポンプ36による加圧動作と減圧動作とを組み合わせて行う。この際、加圧動作時のサブタンク内の気泡の体積変化は、第1の実施形態と同様に図9(a)から図9(b)に示すようになるが、逆に減圧動作時には、サブタンク内の気泡は、平常時(記録動作時)の気泡よりも拡大する。このため、インク供給系200内のインクは上流側(サブタンク側)に移動するだけでなく、下流側(メインタンク側)へも移動することとなり、インク供給系200内におけるインクの流動は、第1の実施形態に比べてよりダイナミックになる。従って、インク供給流路内のインクの濃度変化は、図13に示すように、第1の実施形態よりもさらになだらかな状態となる。加えて、この第2の実施形態では、減圧時に供給チューブ8内のインクがメインタンク7内に流入するため、メインタンク7内のインクの濃度が均一化されるという効果も得られる。従って、図13に示すように、インク濃度の均一化をより大きな体積範囲に亘って行うことができる。このため、画像濃度のむらをより一層視認し辛くすることができる。
【0039】
また、図12に示すテーブルでは、不使用時間に応じて設定される濃度変化推定値△Eが大きくなるほど加圧・減圧動作を繰り返す回数を多く設定している。このため、経過時間の長さに応じて、過不足のない適切な濃度均一化動作を実現することができる。
【0040】
(他の実施形態)
なお、第一、第二の実施形態では、不使用時間に基づいて濃度変化推定値△Eを求め、この変化推定値△Eに基づいてポンプおよびキャリッジ、供給弁の駆動を制御するようにした。しかし、インクの濃度自体を測定し、そのインク濃度の測定値が予め定めたインク濃度(閾値)を超えるか否かに基づいて、あるいは測定値が閾値を越える程度に基づいてこれらの制御を行うようにしても良い。
【0041】
また、第1、第2の実施形態では、濃度が所定の閾値以上であるとき、メインタンク7内の圧力を、サブタンク6と記録ヘッド21との連通が遮断される前のインタンク内の圧力より増加させるか、あるいは増減させるものとした。しかし本発明はこれに限定されるものではなく、インク濃度が閾値以上であるとき、メインタンク内の圧力を減少させて気泡を拡大させ、その後、サブタンクと記録ヘッドとの連通が遮断される前の圧力に戻して気泡の体積を復元させるようにしても良い。
【0042】
さらに、上記第1、第2の実施形態では、主制御部39のCPU33によって開閉が制御される供給制御弁22及び流路弁24を用いた場合を例に採り説明した。しかし、上記供給制御弁22及び流路弁24に代えて他の弁を用いることも可能である。例えば、記録ヘッド21内の負圧が所定の負圧(閾値)より高い負圧となる場合にのみ開となり、それ以外の場合には、閉状態を維持する差圧弁を切換手段として設けても良い。この場合、記録によりインクが所定量消費されるまでは記録ヘッド21内の負圧は閾値を超えないため差圧弁は閉状態に保たれ、記録ヘッド21とサブタンク6との連通は遮断された状態となる。従って、この状態でポンプ23によりインク供給路内のインクを加圧すれば、記録ヘッド21内の圧力に影響を及ぼすことなく、インク供給路内のインクを流動させることができ、インク濃度を均一化させることができる。また、主制御部39からの信号によって開閉する流路弁に代えて、メインタンクの圧力によって開閉するチョーク弁を設けても良い。このように、主制御部による制御を必要としない差圧弁、チョーク弁を用いれば、上記各実施形態における駆動回路22a,24aおよび図7における制御工程S2,S5,S11,14などを削除することが可能になる。このため、上記の第1,第2の実施形態に比べて製造コストを低減、制御処理の簡略化を図ることができる。このように、メインタンク7と供給チューブ8との連通・遮断を切換える弁は、手動による開閉を行うものであっても良い。従って、メインタンクと供給チューブとが連結された後、流路弁24を常に開としておくことも可能である。これによれば、上記第2の実施形態と同様に、ポンプ23による加圧・減圧によりインクを正逆両方向へと流動させることができ、ダイナミックなインク均一化動作が可能になる。
【0043】
さらに、以上の説明では、装置本体100の不使用時間、つまり最後にインクを吐出したときから現在に至るまでの経過時間をタイマにより計測し、その不使用時間に基づいてインクの濃度変化を推定するようにした。しかし、不使用時間と合わせて、記録装置の環境温度情報や、環境湿度情報の少なくとも一方を勘案してインクの濃度変化を推定するようにすることも可能である。これによれば、より正確にインクの濃度変化を推定することが可能になる。
【符号の説明】
【0044】
1 記録媒体
5 キャリッジ
6 サブタンク
7 メインタンク
8 供給チューブ
21 記録ヘッド
22 供給制限弁
23 ポンプ
24 供給弁
32 検出部
33 CPU
35 主制御部
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク供給経路を介してインタンクからサブタンクへと供給されたインクを記録ヘッドに供給し、記録ヘッドからインクを吐出して記録を行うインクジェット記録装置およびインクジェット記録装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置(以下、単に記録装置とも称す)では、各種の要因によりインク濃度が変化することにより、画像に濃度むらなどの弊害が発生することが知られており、この課題に対して多くの技術が開発されている。例えば、顔料インクを用いた記録装置において、インク色材の沈降によってインクに濃度分布が起こる場合の課題を解決するための技術が特許文献1に開示されている。すなわち、インクの沈降によりインク濃度分布が起こった場合に色材の沈降状態を取得し、その情報に基づいてノズル開口部分のインクを吸引・廃棄するクリーニングを実施する技術が開示されている。しかしながら、特許文献1に開示の技術では、本来、記録に使用すべきインクを吸引・廃棄することとなるため、インクの消費量が増大しランニングコストの増大を招くという課題がある。
【0003】
これに対し、特許文献2には、顔料インクの濃度情報を取得し、その情報から記録される画像の濃度変化を推定し、画像濃度の推定値の増大に伴って画像の記録データを間引き、ドット数を低減させて記録画像の濃度の均一化を図る技術が開示されている。
【0004】
上記のような顔料の沈降以外にインク濃度が変化する要因としては、インクに含まれている溶剤の蒸発が挙げられる。特許文献3には、このような溶剤の蒸発に伴うインク濃度の増大によって印刷濃度が増大するのを解消する技術が開示されている。ここでは、溶剤の蒸発に伴うインク濃度の変化を推定し、インク濃度が増大すると推定された場合には、画像信号を補正し、記録すべき画像のドット数を制御することによって濃度補正を行なっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−234196号公報
【特許文献2】特開2006−240030号公報
【特許文献3】特開2004−202872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
現在、記録装置のインク供給系としては、記録ヘッドに直結したインクタンクを用いる系と、記録ヘッドから離れた位置に配置されたメインタンクからチューブを介して記録ヘッドに直結されたサブタンクへとインクを供給する系の2系統が知られている。このうち、後者のインク供給系は、プロ/ビジネス用途のインクジェット記録装置に適するものとされている。すなわち、プロ/ビジネス用途の記録装置では、大量のインクを消費するため、容量の大きなメインタンクにインクを収納しておき、メインタンクからインクチューブを介してサブタンクへとインクを供給する方式が採用されている。これによれば、インクタンクの交換頻度およびランニングコストを低減することが可能となる。
【0007】
しかしながら、チューブ供給系を用いた記録装置は、記録ヘッドにインクタンクを直結している方式に比し、供給径路自体が長く大型化しがちである。このため、供給径路からインクの溶剤が余計に蒸発し易い。さらには、上記特許文献1のように濃度が変化したインクを廃棄する場合、供給径路が長い分、多くのインクを廃棄する必要があり、ランニングコストを低減させるというチューブ供給方式を採用する本来の目的に反する結果となる。
【0008】
また、特許文献2および3に開示の技術のように、インク濃度の増大に伴い画像処理によってドット数を少なくする方法では、記録媒体上の、単位領域あたりの色材量を揃えることは可能である。しかし、この場合には、インク濃度の増大に伴ってドット数が減少するため、装置の各機構部分における精度むらの影響を受け易くなり、画像品質の低下を生じさせる可能性がある。例えば、キャリッジの移動速度や記録媒体の搬送誤差などが生じた場合、吐出されるインク滴の着弾位置にずれが生じるが、ドットの密度が高い画像であれば、ドットの着弾位置のずれは画像品質上さほど大きな問題とはならない。しかし、形成されるドットが少ない場合には、インク滴の着弾位置のずれが画像弊害として認識され易い。また、特許文献2および3に開示の技術では、インク濃度や溶剤の蒸発量を推定するための回路やメモリが必要であり、しかも色毎に画像データに修正を加えることが必要となるため、制御系に高いスペックが要求され装置コストの上昇を招くという課題もある。
【0009】
本発明は、インク供給経路を介してメインタンクからサブタンクへとインクを供給するインクジェット記録装置において、インクの廃棄量を抑えつつ濃度むらの少ない画像形成を可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明は以下の構成を有する。
すなわち、本発明の第1の形態は、色材を含んだインクの吐出を可能とする記録ヘッドに対してインクの供給を可能とし、かつ内部に気泡が存在サブタンクと、該サブタンクにインク供給経路を介して連結されたメインタンクと、を備え、前記インク供給経路を介して前記メインタンクからサブタンクへのインクの供給を可能とするインクジェット記録装置であって、前記サブタンクから前記記録ヘッドへのインクの供給、遮断を切換える切換手段と、前記インク供給経路に存在するインク濃度を推定する推定手段と、前記メインタンク内の圧力を変化させる圧力変化手段と、を備え、前記推定手段によって推定されたインク濃度が所定の閾値を越えるとき、前記切換手段は前記サブタンクと前記記録ヘッドとの連通を遮断し、かつ前記圧力変化手段は前記メインタンク内の圧力を変化させることにより前記気泡の体積を変化させることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の第2の形態は、色材を含んだインクの吐出を可能とする記録ヘッドに対してインクの供給を可能とし、かつ内部に気泡が存在サブタンクと、該サブタンクにインク供給経路を介して連結されたメインタンクと、を備え、前記インク供給経路を介して前記メインタンクからサブタンクへのインクの供給を可能とするインクジェット記録装置の制御方法であって、前記インク供給経路に存在するインク濃度を推定する推定工程と、前記推定工程において推定されたインク濃度が所定の閾値以上であるとき、前記サブタンクと前記記録ヘッドとの連通を遮断する遮断工程と、前記遮断工程の後に、メインタンク内の圧力を変化させることにより前記気泡の体積を変化させる圧力変化工程と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、インク供給経路を介してメインタンクからサブタンクへとインクを供給するインクジェット記録装置において、インクの廃棄量を抑えつつ濃度むらの少ない画像を形成することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態における記録装置の全体構成を模式的に示す平面図である。
【図2】本実施形態における記録装置のインク供給系の構成を模式的に示す図である。
【図3】本実施形態における記録装置の制御系の概略構成を示すブロック図である。
【図4】本実施形態における濃度変化推定テーブルを示す図である。
【図5】インク供給経路内に濃度変化が生じていない状態を示す図であり、(a)はインク供給経路内のインク濃度を、(b)は記録ヘッド及び記録画像の濃度をそれぞれ示す。
【図6】インク供給経路内に濃度変化が生じている状態を示す図で、(a)はインク供給経路内のインク濃度を、(b)は記録ヘッド及び記録画像の濃度をそれぞれ示す。
【図7】第1の実施形態における制御動作を示すフローチャートである。
【図8】(a)は第1の実施形態に用いる濃度均一化テーブル1を、(b)は同実施形態における加圧動作と揺動動作のタイミングを示すタイミングチャートである。
【図9】本実施形態のサブタンクにおける気泡の状態を示す図で、(a)は加圧動作前の状態を、(b)は加圧動作後の状態をそれぞれ示す。
【図10】本実施形態におけるインク濃度の変化を示す図で、(a)はインク供給経路内の濃度分布を、(b)は記録ヘッド及び記録画像の各走査における濃度をそれぞれ示す。
【図11】第2の実施形態における制御動作を示すフローチャートである。
【図12】第2の実施形態における濃度均一化テーブル2を示す図である。
【図13】第2の実施形態におけるインク供給経路内の濃度分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0015】
(第1の実施形態)
図1は本発明を実施するためのインクジェット記録装置の全体構成を模式的に示す平面図である。図1において、給紙部10に積載された記録媒体1は、ピックアップローラ2により、装置本体100の内部へと搬送される。また、キャリッジ5はガイドシャフトに沿ってX方向(主走査方向)へと往復移動可能に保持されており、後述のキャリッジモータの駆動力によって往動および復動を行う。キャリッジ5には、インクを吐出可能な複数のノズルを配列した記録ヘッド21(図2参照)が設けられると共に、記録ヘッド21に供給するインクを収納するサブタンク6がサブタンクホルダ9を介して保持されている。サブタンク6と記録ヘッド21とは、図2に示す供給弁22を介して連結されており、サブタンク6から記録ヘッド21までは密閉された状態である。また、サブタンク6は、可撓性を有するインクの供給チューブ(インク供給経路)を介してメインタンク7に連結されている。メインタンク7は、サブタンクに比べて大容量のタンクとなっており、装置本体100のメインタンク保持部4内に交換可能に保持されている。
【0016】
本実施形態におけるインクジェット記録装置は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(Bk)の4色のインクを用いてカラー画像の形成を可能としている。このため、メインタンク7としては、各インク色に対応したメインタンク7a,7b,7c,7dが別個にメインタンク保持部4に持されている。同様に、記録ヘッド21およびこれに連結されているサブタンク6(6a,6b,6c,6d)も各インク色に対応して設けられている。
【0017】
本実施形態におけるインクジェット記録装置は、キャリッジと共に記録ヘッドを移動させつつインクを吐出させる主記録走査と、主走査の停止時に記録媒体を所定量だけ搬送する副走査とを繰り返して記録媒体に記録を行う所謂シリアル型の記録装置となっている。
【0018】
図2は、本実施形態におけるインクジェット記録装置のインク供給系200の構成を模式的に示す図である。インク供給系200は、前述のメインタンク7、サブタンク6、及び供給チューブ8と、サブタンク6と記録ヘッド21との間に挿入された供給制御弁22と、供給チューブ8からメインタンク7との間に挿入された流路弁24と、ポンプ23とからなる。供給制御弁22はその開、閉によってメインタンク7からインク供給経路8へのインクの供給、遮断を切換える。また流路弁24はその開、閉によってサブタンク6から記録ヘッド21へのインクの供給、遮断を切換える。これらの弁22,24の開閉は、後述の制御系によって制御される。
【0019】
ポンプ23は、メインタンク7内のインクに対して加圧と減圧を行うことが可能である。ポンプ23によってメインタンク7内のインクを加圧すると、メインタンク7内のインクは開状態の流路弁24を通過して供給チューブ8側へと送り出され、サブタンク6へと供給される。この際、供給チューブ8内に存在する気泡はインクと共にサブタンク6へ移動するものもある。サブタンク6内に供給されたインクは、開状態となっている供給制御弁22を経て記録ヘッド21に供給され、記録ヘッド21に配列されているノズル内に満たされる。ここで、ノズル内に設けられた吐出エネルギー発生素子(電気熱変換素子または電気機械変換素子など)を駆動することにより、インクが微小な液滴となりノズルから吐出され、その液滴により記録媒体に画像を形成する。なお、メインタンク内のインクが無くなった場合には、流路弁24を閉じ、インクの充填された新たなメインタンク7と交換する。交換時に流路弁24を閉じることにより、供給チューブ8内のインクが外部に漏れるのを防ぐことができる。なお、ポンプ36は、メインタンク7内の圧力を変更する圧力変化手段として機能し、流路弁24は切換手段として機能する。
【0020】
図3は、本実施形態におけるインクジェット記録装置の各部を制御する制御系の概略構成を示すブロック図である。
【0021】
図において、39はインクジェット記録装置における各部の動作を制御する制御手段としての主制御部である。この主制御部39は、CPU33、ROM34、およびRAM35などを有する。CPU33は、ROM34に格納されたプログラムに従って、演算、判断、推定および制御などの処理を行うものであり、後述の処理によりインク濃度を推定する推定手段としても機能する。RAM35は、CPU33における処理を実行する際に使用するワークエリアや種々のデータを一時的に格納するエリアなどを有する。主制御部39には、データや指令などを入力する入力操作部31からの信号およびインクジェット記録装置の各部の状態を検出する検出部32からの信号が入力される。これらの信号を受けて主制御部39は、給紙ローラを駆動する給紙モータ26、搬送モータ25、ポンプ36、キャリッジモータ37、記録ヘッド38、供給制御弁22、流路弁24の駆動を、駆動回路26a,25a,36a,37a,38a,22a,24aを介して制御する。
【0022】
本実施形態では、装置本体100の不使用時間、本実施形態では、最後に回復シーケンスを実施してからの時間を、検出部32からの情報に基づいて、主制御部39に内臓された不図示のタイマにより計測する。そして計測した不使用時間に基づき、CPU33はインクの蒸発や、色材の沈降によるインクの濃度変化を推定する。すなわち、CUP33は、ROM34に格納されている図4の濃度変化推定テーブルを参照し、計測した不使用時間に対応する各色インクの濃度変化推定値△Eを求める。
【0023】
一般に、供給チューブを用いてメインタンクからサブタンクへとインクを供給するインクジェット記録装置では、供給チューブ内のインクの蒸発や色材の沈降などが発生し易い。従って、この濃度分布の生じたインクをそのまま記録ヘッドへと供給した場合には、吐出されるインクにも濃度変化が生じ、記録画像に濃度むらが発生する。不使用時間が短い場合にはこのような問題は生じないが、経過時間が長い場合には、供給チューブ内のインクに濃度分布が生じる。従来のインクジェット記録装置では、この濃度分布の生じたインクをそのまま記録ヘッドから吐出させており、これが記録画像の品質低下を招く要因となっていた。このような経過時間に伴うインク濃度の状態を図5および図6に示す。
【0024】
図5(a)は、不使用時間が短い場合におけるインク供給系200の各部のインクの濃度とインク消費量との関係を示している。横軸のインク消費量はそれぞれ、記録ヘッド部、サブタンク部、供給チューブ部、メインタンク部の体積に相当する量を目安として記載している。不使用時間が短い場合には、インク供給経路内のインク濃度は殆ど差が生じない。よって、図5(a)に示したように記録ヘッドから吐出されるインクには濃度差が生じない。このため、図5(b)に示すように各走査で記録された画像Im1にも濃度むらは発生しない。
【0025】
これに対し不使用時間が長い場合には、図6(a)に示すように、インク供給系200内の各部位毎にインクの濃度差が生じる。このように濃度分布が生じたインクをそのまま記録ヘッド内に供給した場合、図6(b)に示すように各走査における記録ヘッド21内のインク濃度にも差が生じる。従って、各走査で記録された画像にも濃度差が生じ、これが画像Im2に濃度むらを発生させることとなる。
【0026】
そこで本実施形態では、上記のような濃度むらを低減すべく、以下のような制御動作を行う。図7は本実施形態で実行される制御動作の手順を示すフローチャートである。
【0027】
図7において、記録命令が入力操作部31から入力されると(S1)、主制御部39内のCPU33は、記録動作を開始するに先立ち、S2〜S10の制御動作を実行する。まず、駆動回路24aを制御して流路弁24を開き、メインタンク7と供給チューブ8とを連通状態とする(S2)。次に、タイマによって計測された前回のインク吐出動作が終了してから記録命令が入力されるまでの時間である不使用時間に基づき、各インクの濃度変化推定値△Eを決定する(S3)。この濃度変化推定値△Eの決定は、前述のように図4の濃度変化推定テーブルを参照することによって行う。次に、濃度変化推定値△Eが閾値Thを超えるか否かを判断する(S4)。ここで濃度変化推定値△Eが閾値Thを超えないと判断された場合にはS12へ移行して記録動作を開始させる。また、濃度変化推定値△Eが閾値Thを超える場合には、駆動回路24aを制御して供給制御弁22を閉状態とする(S5)。その後、ROM34内に格納されている図8(a)の濃度均一化テーブル1を参照して、前述のインク濃度変化推定値△Eからポンプ36の駆動時間T1[sec]およびキャリッジ揺動時間T2[sec]を決定する(S6)。
【0028】
次に、決定した加圧ポンプ駆動時間T1およびキャリッジ揺動時間T2に基づき、濃度均一化動作を実行する。本実施形態では、濃度均一化動作として、ポンプ36によるインクタンク7への加圧動作、および連続的にキャリッジを往動および復動させる揺動動作を実行する。すなわち、駆動回路36aを制御してポンプ36を駆動させ、メインタンク7内の加圧を開始させる(S7)。この後、所定のタイミングで駆動回路37aを制御してキャリッジモータ37を正転および逆転させ、キャリッジ37の主走査方向(X方向)に沿った揺動動作を開始させる(S8)。そして、先に決定したキャリッジ5の揺動時間T2が経過した時点で、駆動回路37aを制御してキャリッジモータ37の駆動を停止させる(S9)。ポンプ23の加圧開始から所定の時間T2が経過すると、駆動回路36aを制御し、ポンプ36の駆動を停止させる(S10)。その後、駆動回路22aを制御して供給制御弁22を開き、記録動作を開始させる(S12)。記録動作が終了すると、駆動回路24aを制御して流路弁24を閉状態とする(S14)。
【0029】
上記のように、本実施形態では、最後に行われたインク吐出動作からの経過時間によりインク濃度変化推定値△Eを求め、このインク濃度変化推定値△Eに基づいて濃度均一化動作を実行する。この際、図8(a)の濃度均一化テーブルに示すように、インク濃度変化推定値△Eが大きくなるほど、図8(b)のタイミングチャートに示すポンプ駆動時間T1およびキャリッジ揺動時間T2を長くしている。これは、前回のインク吐出動作からの経過時間の長さに応じてインク濃度変化量も増大するためである。経過時間の長さに応じて濃度均一化動作の時間を制御することで、過不足のない適切な濃度均一化動作を実現することができる。
【0030】
ここで、上述の濃度均一化動作の実行によって生じるインクの挙動、並びにそれによって得られる効果を説明する。
【0031】
記録装置を使用し、インクの流れが発生すると、サブタンク6内には、供給チューブ8内に混入している気泡が、サブタンク6内に送られて蓄積される。供給チューブ8内のインクに混入している気泡は、供給チューブ8内に保持されているインクが蒸発して形成された気泡や、ガスの透過により混入した、気泡などからなる。そして、サブタンク6には図9(a)に示すように常に気泡が存在する状態となる。
【0032】
ここで、供給制御弁22が閉じ、かつ流路弁24が開いた状態でポンプ36よるメインタンク7内のインクに対する加圧動作が行われると、サブタンク6内に存在している泡Buが図9(b)に示すように圧縮され、加圧動作前の体積Vaから体積Vbへと縮小する。このときの気泡の体積変化Vc(=Va−Vb)によって、その体積変化Vc分のインクが供給チューブ8内でサブタンク6側に移動し、サブタンク6側のインクと混ざり合う。このため、加圧動作前には図6(a)に示すように供給系200の部位体積毎に生じていた急峻な濃度変化は、それらの部位のつなぎ目でなだらかな濃度変化になる。しかも、本実施形態では、加圧動作によって気泡を縮小化させている過程でキャリッジ5の揺動動作を行うため、サブタンク6内で気泡が微動し、これがインク濃度の均一化を促進する。従って、インク供給系200内のインクの濃度は、図10(a)に示すようによりなだらかなものとなり、インク濃度の均一化はさらに促進される。この状態で記録動作を開始することにより、図6(b)に示した画像Im2と比べ、記録される画像は図10(b)のIm3のような濃度変化がなだらかな画像となり、濃度むらは目立たなくなる。
【0033】
上記のように本実施形態によれば、インク供給系200のインクの濃度変化をなだらかにすることができるため、濃度変化の起こったインクを大量に廃棄する必要がなくなる。よって、インクの消費を抑えることが可能になり、ランニングコストを低減させることができる。また、特許文献2および3に示すように、記録すべき画像の中からドットを間引く必要がなく、精度むらによる画像品質への影響を与える事がない。このため、本実施形態によれば、ランニングコスト、画像品位などについて高い水準が要求されるプロ/ビジネス向けの仕様に適したインクジェット記録装置を提供することができる。
【0034】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態を説明する。この第2の実施形態では、インク供給系200内の濃度変化を、上記第1の実施形態よりもさらになだらかにすることができ、画像の濃度むらをさらに視認されにくくすることが可能になっている。なお、この第2の実施形態においても、図1ないし図3に示す構成を同様に備えるが、各部の制御動作は、図11のフローチャートに示す手順で行われる。
【0035】
記録命令が入力操作部31から入力されると(S21)、主制御部39内のCPU33は、記録動作を開始するに先立ち、以下のS22〜S30の制御動作を実施する。まず、駆動回路24aを制御して流路弁24を開き、メインタンク7と供給チューブ8とを連通状態とする(S22)。次に、タイマによって計測された前回のインク吐出動作が終了してから記録命令が入力されるまでの時間である不使用時間に基づき、各インクの濃度変化推定値△Eを決定する(S23)。この濃度変化推定値△Eの決定は、前述のように図4の濃度変化推定テーブルを参照することによって行う。ここで濃度変化推定値△Eが閾値Thを超えないと判断された場合にはS21へ移行して記録動作を開始する。また、濃度変化推定値△Eが閾値Thを超える場合には、駆動回路24aを制御して供給制御弁22を閉状態とする(S25)。その後、ROM34内に格納されている図12に示す濃度均一化テーブル2を参照して、前述の濃度変化推定値△Eからポンプ36による加圧時間T1[sec]および減圧時間T3[sec]を決定する(S26)。この加圧時間T1および減圧時間T3は、加圧ポンプ23を駆動する時間と等しく、駆動する時間が長くなればなるほど最終的に到達するインクタンク内の圧力の程度も大きくなる。すなわち加圧時間T1が増大するにつれて正圧が増大し、減圧時間が増大するにつれて負圧が増大(正圧が減少)する。
【0036】
次に、決定した加圧時間T1、減圧時間T3および繰り返し回数に基づき、濃度均一化動作を実行する。この第2の実施形態では、濃度均一化動作として、ポンプ36によるインクタンク7への加圧動作と減圧動作とを合わせて行う。すなわち、S27では駆動回路36aを制御し、ポンプ36を加圧時間T1だけ駆動させてメインタンク7に対する加圧動作を行い、その後ポンプ36を減圧時間T3だけ逆駆動させ、メインタンク7に対する減圧動作を行う(S28)。この加圧動作と減圧動作の繰り返し回数が先に決定した繰り返し回数に達したか否かの判断を行い(S29)、決定した繰り返し回数に達した時点で、供給制御弁22を開状態とする(S30)。
【0037】
以上の動作の後、記録動作を開始させる(S31)。記録動作終了後は、駆動回路24aを制御し、流路弁24を閉状態とする(S32,S33)。
【0038】
以上のように、この第2の実施形態では、濃度均一化動作としてポンプ36による加圧動作と減圧動作とを組み合わせて行う。この際、加圧動作時のサブタンク内の気泡の体積変化は、第1の実施形態と同様に図9(a)から図9(b)に示すようになるが、逆に減圧動作時には、サブタンク内の気泡は、平常時(記録動作時)の気泡よりも拡大する。このため、インク供給系200内のインクは上流側(サブタンク側)に移動するだけでなく、下流側(メインタンク側)へも移動することとなり、インク供給系200内におけるインクの流動は、第1の実施形態に比べてよりダイナミックになる。従って、インク供給流路内のインクの濃度変化は、図13に示すように、第1の実施形態よりもさらになだらかな状態となる。加えて、この第2の実施形態では、減圧時に供給チューブ8内のインクがメインタンク7内に流入するため、メインタンク7内のインクの濃度が均一化されるという効果も得られる。従って、図13に示すように、インク濃度の均一化をより大きな体積範囲に亘って行うことができる。このため、画像濃度のむらをより一層視認し辛くすることができる。
【0039】
また、図12に示すテーブルでは、不使用時間に応じて設定される濃度変化推定値△Eが大きくなるほど加圧・減圧動作を繰り返す回数を多く設定している。このため、経過時間の長さに応じて、過不足のない適切な濃度均一化動作を実現することができる。
【0040】
(他の実施形態)
なお、第一、第二の実施形態では、不使用時間に基づいて濃度変化推定値△Eを求め、この変化推定値△Eに基づいてポンプおよびキャリッジ、供給弁の駆動を制御するようにした。しかし、インクの濃度自体を測定し、そのインク濃度の測定値が予め定めたインク濃度(閾値)を超えるか否かに基づいて、あるいは測定値が閾値を越える程度に基づいてこれらの制御を行うようにしても良い。
【0041】
また、第1、第2の実施形態では、濃度が所定の閾値以上であるとき、メインタンク7内の圧力を、サブタンク6と記録ヘッド21との連通が遮断される前のインタンク内の圧力より増加させるか、あるいは増減させるものとした。しかし本発明はこれに限定されるものではなく、インク濃度が閾値以上であるとき、メインタンク内の圧力を減少させて気泡を拡大させ、その後、サブタンクと記録ヘッドとの連通が遮断される前の圧力に戻して気泡の体積を復元させるようにしても良い。
【0042】
さらに、上記第1、第2の実施形態では、主制御部39のCPU33によって開閉が制御される供給制御弁22及び流路弁24を用いた場合を例に採り説明した。しかし、上記供給制御弁22及び流路弁24に代えて他の弁を用いることも可能である。例えば、記録ヘッド21内の負圧が所定の負圧(閾値)より高い負圧となる場合にのみ開となり、それ以外の場合には、閉状態を維持する差圧弁を切換手段として設けても良い。この場合、記録によりインクが所定量消費されるまでは記録ヘッド21内の負圧は閾値を超えないため差圧弁は閉状態に保たれ、記録ヘッド21とサブタンク6との連通は遮断された状態となる。従って、この状態でポンプ23によりインク供給路内のインクを加圧すれば、記録ヘッド21内の圧力に影響を及ぼすことなく、インク供給路内のインクを流動させることができ、インク濃度を均一化させることができる。また、主制御部39からの信号によって開閉する流路弁に代えて、メインタンクの圧力によって開閉するチョーク弁を設けても良い。このように、主制御部による制御を必要としない差圧弁、チョーク弁を用いれば、上記各実施形態における駆動回路22a,24aおよび図7における制御工程S2,S5,S11,14などを削除することが可能になる。このため、上記の第1,第2の実施形態に比べて製造コストを低減、制御処理の簡略化を図ることができる。このように、メインタンク7と供給チューブ8との連通・遮断を切換える弁は、手動による開閉を行うものであっても良い。従って、メインタンクと供給チューブとが連結された後、流路弁24を常に開としておくことも可能である。これによれば、上記第2の実施形態と同様に、ポンプ23による加圧・減圧によりインクを正逆両方向へと流動させることができ、ダイナミックなインク均一化動作が可能になる。
【0043】
さらに、以上の説明では、装置本体100の不使用時間、つまり最後にインクを吐出したときから現在に至るまでの経過時間をタイマにより計測し、その不使用時間に基づいてインクの濃度変化を推定するようにした。しかし、不使用時間と合わせて、記録装置の環境温度情報や、環境湿度情報の少なくとも一方を勘案してインクの濃度変化を推定するようにすることも可能である。これによれば、より正確にインクの濃度変化を推定することが可能になる。
【符号の説明】
【0044】
1 記録媒体
5 キャリッジ
6 サブタンク
7 メインタンク
8 供給チューブ
21 記録ヘッド
22 供給制限弁
23 ポンプ
24 供給弁
32 検出部
33 CPU
35 主制御部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
色材を含んだインクの吐出を可能とする記録ヘッドに対してインクの供給を可能とし、かつ内部に気泡が存在サブタンクと、該サブタンクにインク供給経路を介して連結されたメインタンクと、を備え、前記インク供給経路を介して前記メインタンクからサブタンクへのインクの供給を可能とするインクジェット記録装置であって、
前記サブタンクから前記記録ヘッドへのインクの供給、遮断を切換える切換手段と、
前記インク供給経路に存在するインク濃度を推定する推定手段と、
前記メインタンク内の圧力を変化させる圧力変化手段と、を備え、
前記推定手段によって推定されたインク濃度が所定の閾値を越えるとき、前記切換手段は前記サブタンクと前記記録ヘッドとの連通を遮断し、かつ前記圧力変化手段は前記メインタンク内の圧力を変化させることにより前記気泡の体積を変化させることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記推定手段によって推定されたインク濃度が所定の閾値を越えるとき、前記切換手段が前記サブタンクと前記記録ヘッドとの連通を遮断し、かつ前記圧力変化手段が前記メインタンク内の圧力を前記サブタンクと前記記録ヘッドとの連通が遮断される前の前記メインタンク内の圧力より増大させることにより、前記気泡の体積を縮小させることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記圧力変化手段は、前記推定手段によって推定されたインク濃度が前記閾値を超えるとき、当該インク濃度と閾値との差が大きいほど前記メインタンク内の圧力を高めることを特徴とする請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記推定手段によって推定されたインク濃度が所定の閾値を超えるとき、前記切換手段が前記サブタンクと前記記録ヘッドとの連通を遮断し、かつ前記圧力変化手段が前記メインタンク内の圧力を、前記サブタンクと前記記録ヘッドとの連通が遮断される前の前記メインタンク内の圧力より減少させることにより前記気泡の体積を拡大させた後、前記サブタンクと前記記録ヘッドとの連通が遮断される前の圧力に戻すことにより前記気泡の体積を復元させることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記推定手段によって推定されたインク濃度が前記閾値を超えるとき、前記圧力変化手段は、当該インク濃度と閾値との差が大きいほど前記メインタンク内の圧力を低くすることを特徴とする請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記推定手段によって推定されたインク濃度が所定の閾値を超えるとき、前記切換手段が前記サブタンクと前記記録ヘッドとの連通を遮断し、かつ前記圧力変化手段が前記メインタンク内の圧力を、前記サブタンクと前記記録ヘッドとの連通が遮断される前の前記メインタンク内の圧力より増減させることにより前記気泡の体積を拡大、縮小させた後、前記サブタンクと前記記録ヘッドとの連通が遮断される前の圧力に戻して前記気泡の体積を復元させることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記圧力変化手段は、前記所定の閾値を超えるインク濃度の値が大きいほど前記メインタンク内の圧力の増減を繰り返す回数を多くすることを特徴とする請求項6に記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記記録ヘッドを主走査方向に沿って往動および復動させるための走査手段を備え、
前記推定手段によって推定されたインク濃度が所定の閾値以上であるとき、前記切換手段が前記サブタンクと前記記録ヘッドとの連通を遮断し、かつ前記圧力変化手段が前記メインタンク内の圧力を変化させることにより前記気泡の体積を変化させると共に、前記走査手段が、前記記録ヘッドの往動および復動を連続的に行うことを特徴とする請求項1ないし7のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項9】
前記推定手段によって推定されたインク濃度が前記閾値を超えるとき、前記走査手段は、当該インク濃度と閾値との差が大きいほど前記記録ヘッドを連続的に往動および復動させる回数を多くすることを特徴とする請求項8に記載のインクジェット記録装置。
【請求項10】
前記推定手段は、前記記録装置が最後に動作してから現在に至るまでの経過時間である不使用時間に基づいて前記インク濃度を推定することを特徴とする請求項1ないし9のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項11】
色材を含んだインクの吐出を可能とする記録ヘッドに対してインクの供給を可能とし、かつ内部に気泡が存在サブタンクと、該サブタンクにインク供給経路を介して連結されたメインタンクと、を備え、前記インク供給経路を介して前記メインタンクからサブタンクへのインクの供給を可能とするインクジェット記録装置の制御方法であって、
前記インク供給経路に存在するインク濃度を推定する推定工程と、
前記推定工程において推定されたインク濃度が所定の閾値以上であるとき、前記サブタンクと前記記録ヘッドとの連通を遮断する遮断工程と、
前記遮断工程の後に、メインタンク内の圧力を変化させることにより前記気泡の体積を変化させる圧力変化工程と、を備えることを特徴とするインクジェット記録装置の制御方法。
【請求項1】
色材を含んだインクの吐出を可能とする記録ヘッドに対してインクの供給を可能とし、かつ内部に気泡が存在サブタンクと、該サブタンクにインク供給経路を介して連結されたメインタンクと、を備え、前記インク供給経路を介して前記メインタンクからサブタンクへのインクの供給を可能とするインクジェット記録装置であって、
前記サブタンクから前記記録ヘッドへのインクの供給、遮断を切換える切換手段と、
前記インク供給経路に存在するインク濃度を推定する推定手段と、
前記メインタンク内の圧力を変化させる圧力変化手段と、を備え、
前記推定手段によって推定されたインク濃度が所定の閾値を越えるとき、前記切換手段は前記サブタンクと前記記録ヘッドとの連通を遮断し、かつ前記圧力変化手段は前記メインタンク内の圧力を変化させることにより前記気泡の体積を変化させることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記推定手段によって推定されたインク濃度が所定の閾値を越えるとき、前記切換手段が前記サブタンクと前記記録ヘッドとの連通を遮断し、かつ前記圧力変化手段が前記メインタンク内の圧力を前記サブタンクと前記記録ヘッドとの連通が遮断される前の前記メインタンク内の圧力より増大させることにより、前記気泡の体積を縮小させることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記圧力変化手段は、前記推定手段によって推定されたインク濃度が前記閾値を超えるとき、当該インク濃度と閾値との差が大きいほど前記メインタンク内の圧力を高めることを特徴とする請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記推定手段によって推定されたインク濃度が所定の閾値を超えるとき、前記切換手段が前記サブタンクと前記記録ヘッドとの連通を遮断し、かつ前記圧力変化手段が前記メインタンク内の圧力を、前記サブタンクと前記記録ヘッドとの連通が遮断される前の前記メインタンク内の圧力より減少させることにより前記気泡の体積を拡大させた後、前記サブタンクと前記記録ヘッドとの連通が遮断される前の圧力に戻すことにより前記気泡の体積を復元させることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記推定手段によって推定されたインク濃度が前記閾値を超えるとき、前記圧力変化手段は、当該インク濃度と閾値との差が大きいほど前記メインタンク内の圧力を低くすることを特徴とする請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記推定手段によって推定されたインク濃度が所定の閾値を超えるとき、前記切換手段が前記サブタンクと前記記録ヘッドとの連通を遮断し、かつ前記圧力変化手段が前記メインタンク内の圧力を、前記サブタンクと前記記録ヘッドとの連通が遮断される前の前記メインタンク内の圧力より増減させることにより前記気泡の体積を拡大、縮小させた後、前記サブタンクと前記記録ヘッドとの連通が遮断される前の圧力に戻して前記気泡の体積を復元させることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記圧力変化手段は、前記所定の閾値を超えるインク濃度の値が大きいほど前記メインタンク内の圧力の増減を繰り返す回数を多くすることを特徴とする請求項6に記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記記録ヘッドを主走査方向に沿って往動および復動させるための走査手段を備え、
前記推定手段によって推定されたインク濃度が所定の閾値以上であるとき、前記切換手段が前記サブタンクと前記記録ヘッドとの連通を遮断し、かつ前記圧力変化手段が前記メインタンク内の圧力を変化させることにより前記気泡の体積を変化させると共に、前記走査手段が、前記記録ヘッドの往動および復動を連続的に行うことを特徴とする請求項1ないし7のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項9】
前記推定手段によって推定されたインク濃度が前記閾値を超えるとき、前記走査手段は、当該インク濃度と閾値との差が大きいほど前記記録ヘッドを連続的に往動および復動させる回数を多くすることを特徴とする請求項8に記載のインクジェット記録装置。
【請求項10】
前記推定手段は、前記記録装置が最後に動作してから現在に至るまでの経過時間である不使用時間に基づいて前記インク濃度を推定することを特徴とする請求項1ないし9のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項11】
色材を含んだインクの吐出を可能とする記録ヘッドに対してインクの供給を可能とし、かつ内部に気泡が存在サブタンクと、該サブタンクにインク供給経路を介して連結されたメインタンクと、を備え、前記インク供給経路を介して前記メインタンクからサブタンクへのインクの供給を可能とするインクジェット記録装置の制御方法であって、
前記インク供給経路に存在するインク濃度を推定する推定工程と、
前記推定工程において推定されたインク濃度が所定の閾値以上であるとき、前記サブタンクと前記記録ヘッドとの連通を遮断する遮断工程と、
前記遮断工程の後に、メインタンク内の圧力を変化させることにより前記気泡の体積を変化させる圧力変化工程と、を備えることを特徴とするインクジェット記録装置の制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−218751(P2011−218751A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−92941(P2010−92941)
【出願日】平成22年4月14日(2010.4.14)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月14日(2010.4.14)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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