説明

インクジェット記録装置およびインク組成物

【課題】高耐候性および高発色性を両立しつつ、耐擦性および乾燥性に優れた画像を記録でき、かつ、吐出安定性に優れたインクジェット記録装置を提供する。
【解決手段】インクジェット記録装置1は、C.I.ピグメントイエロー213またはC.I.ピグメントイエロー155と、水と、を含有し、1気圧下相当での沸点が280℃以上のアルキルポリオール類を実質的に含有しないインク組成物と、前記インク組成物の液滴を吐出するノズル孔を備えたヘッド2と、前記ノズル孔から吐出した液滴を被記録媒体Pに付着させる前または付着させる時に、前記被記録媒体を加熱する加熱機構6と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置およびインク組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被記録媒体上に画像や文字等を記録するために、微小なインク滴を吐出させるノズルを備えたインクジェット記録装置が知られている。このようなインクジェット記録装置に用いられるインク組成物としては、各種の染料及び/又は顔料等の色材を高沸点有機溶剤や水に溶解ないし分散させたものが広く利用されている。かかる高沸点有機溶剤は、低揮発性及び保水能力に優れていることから、インクジェット記録用ヘッドのノズルの乾燥防止に寄与している。
【0003】
高沸点有機溶媒を含有するインク組成物によって被記録媒体上に記録された画像は、乾燥しにくい場合があった。そのため、インクジェット記録装置に被記録媒体を加熱する機構を設け、被記録媒体上に記録された画像の乾燥性を向上させることが行われている。
【0004】
ところで、インクジェット記録装置に用いられるインク組成物のうち、イエローの色材を含有するインク組成物は、耐候性に劣る場合が多い。そのため、それを使用した製品は、屋外で使用された場合に退色しやすい傾向にある。このような観点から、高耐候性および高発色性を両立できるイエロー顔料の開発が進められている。例えば、特許文献1には、イエロー有機顔料を有機溶媒中に分散させた油性インク組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−1478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、高沸点有機溶媒を含有するインク組成物によって被記録媒体に記録された画像は、被記録媒体を加熱する機構を用いても十分に乾燥されず、耐擦性に優れない場合があった。被記録媒体としてインク非吸収性またはインク低吸収性のものを用いると、記録される画像の耐擦性の低下が顕著に生じる傾向にあった。
【0007】
上記不具合を解消するために、例えば、高沸点有機溶媒に代えて沸点の低い溶媒を含有させたインク組成物を使用すると、被記録媒体に付着したインク組成物は、上記の被記録媒体を加熱する機構によって十分乾燥される。しかし、インク組成物中に高沸点溶媒を含有させないと、インクジェット記録装置のノズルは、被記録媒体を加熱する機構によって乾燥して、詰まり等を生じる場合があった。
【0008】
このように、被記録媒体に記録された画像の乾燥性(速乾性)の向上と、インクジェット記録装置の吐出安定性の確保とは、トレードオフの関係にある。
【0009】
ところで、上述したように高耐候性および高発色性を両立できるイエロー顔料の開発が進められている。しかしながら、インク組成物中に含まれる成分の種類によっては、インク組成物中に含まれるイエロー顔料が凝集して、インク組成物が著しく増粘したり、記録される画像の発色性が低下したりする場合があった。
【0010】
本発明に係る幾つかの態様は、前記課題の少なくとも一部を解決することで、高耐候性および高発色性を両立しつつ、速乾性および耐擦性に優れた画像を記録でき、かつ、吐出安定性に優れたインクジェット記録装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は前述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様または適用例として実現することができる。
【0012】
[適用例1]
本発明に係るインクジェット記録装置の一態様は、
C.I.ピグメントイエロー213またはC.I.ピグメントイエロー155と、水と、を含有し、1気圧下相当での沸点が280℃以上のアルキルポリオール類を実質的に含有しないインク組成物と、
前記インク組成物の液滴を吐出するノズル孔を備えたヘッドと、
前記ノズル孔から吐出した液滴を被記録媒体に付着させる前または付着させる時に、前記被記録媒体を加熱する加熱機構と、
を有する。
【0013】
適用例1の液滴吐出装置は、高耐候性および高発色性を両立しつつ、速乾性および耐擦性に優れた画像を記録でき、かつ、インクの吐出安定性に優れる。
【0014】
[適用例2]
適用例1において、
前記被記録媒体は、インク非吸収性またはインク低吸収性の被記録媒体であることができる。
【0015】
[適用例3]
適用例1または適用例2において、
さらに、前記インク組成物は、1気圧下相当での沸点が180℃以上250℃以下の水溶性有機溶剤を含有し、
前記インク組成物中の前記水溶性有機溶剤の含有量が15質量%以上30質量%以下であることができる。
【0016】
[適用例4]
適用例1ないし適用例3のいずれか1例において、
前記インク組成物の質量が20質量%減少した際の当該インク組成物の20℃における粘度[Va(mPa・s)]と、質量減少前の前記インク組成物の20℃における粘度[Vb(mPa・s)]と、の比(Va/Vb)は、1.45以下であることができる。
【0017】
[適用例5]
適用例1ないし適用例4のいずれか1例において、
前記ノズル孔の直径は、15μm以上25μm以下であることができる。
【0018】
[適用例6]
適用例1ないし適用例5のいずれか1例において、
前記ヘッドは、ピエゾ方式のヘッドであり、
前記ノズル孔は、前記インク組成物を3pl以下の液滴量で吐出可能であることができる。
【0019】
[適用例7]
適用例1ないし適用例6のいずれか1例において、
前記加熱機構は、前記ヘッドに対向する位置に設けられることができる。
【0020】
[適用例8]
本発明に係るインク組成物の一態様は、
インク組成物の液滴を吐出するノズル孔を備えたヘッドと、
前記ノズル孔から吐出した液滴を被記録媒体に付着させる前または付着させる時に、前記被記録媒体を加熱する加熱機構と、
を有する、インクジェット記録装置に用いるインク組成物であって、
水と、
C.I.ピグメントイエロー213またはC.I.ピグメントイエロー155と、
を含有し、
1気圧下相当での沸点が280℃以上のアルキルポリオール類を実質的に含有しない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係るプリンターの構成を模式的に示す斜視図。
【図2】本発明の実施形態に係るプリンターのヘッドに設けられたノズルの配列を模式的に示す概略図。
【図3】本発明の実施形態に係るヘッドの内部構成を模式的に示す部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に本発明の好適な実施の形態について説明する。以下に説明する実施の形態は、本発明の一例を説明するものである。また、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形例も含む。
【0023】
1.インク組成物
本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置は、インク組成物の液滴を吐出する。以下、本実施形態に係るインクジェット記録装置に用いられるインク組成物について説明する。
【0024】
本実施形態に係るインクジェット記録装置に用いられるインク組成物(以下、単に「インク組成物」ともいう。)は、イエロー顔料、および水を含有し、1気圧下相当での沸点が280℃以上のアルキルポリオール類を実質的に含有しない。
【0025】
本実施形態に係るインク組成物は、1気圧下相当での沸点が280℃以上のアルキルポリオール類を実質的に含まない。1気圧下相当での沸点が280℃以上のアルキルポリオール類を含むことで、インク組成物の乾燥性が大幅に低下してしまう。その結果、種々の被記録媒体、特にインク非吸収性又は低吸収性の被記録媒体において、画像の定着性や耐擦性も低下する場合があるからである。1気圧下相当での沸点が280℃以上のアルキルポリオール類としては、たとえば1気圧下相当での沸点が290℃のグリセリンが挙げられる。なお、アルキルポリオールには、後述するアセチレングリコール系界面活性剤は含まれない。
【0026】
また、1気圧下相当での沸点が280℃以上の有機溶剤を1.5質量%以上含まないことが好ましく、当該有機溶剤を1.0質量%以上含まないことがより好ましく、当該有機溶剤を0.5質量%以上含まないことが特に好ましい。1気圧下相当での沸点が280℃以上の有機溶剤としては、たとえば1気圧下相当での沸点が335℃のトリエタノールアミンが挙げられる。
【0027】
なお、本発明において、「Aを実質的に含まない」とは、インク組成物を製造する際にAを意図的に添加しないという程度の意味、または、Aを添加する意義を十分に達成する量を超えて添加しない程度の意味である。「実質的に含まない」の具体例としては、たとえば1.0質量%以上含まない、好ましくは0.5質量%以上含まない、より好ましくは0.1質量%以上含まない、さらに好ましくは0.05質量%以上含まない、特に好ましくは0.01質量%以上含まない、一層好ましくは0.001質量%以上含まないことである。以下、本実施形態に用いられる各成分について詳細に説明する。
【0028】
1.1.イエロー顔料
本実施形態に係るインク組成物は、イエロー顔料として、C.I.ピグメントイエロー213またはC.I.ピグメントイエロー155を含有する。なお、インク組成物には、C.I.ピグメントイエロー213およびC.I.ピグメントイエロー155の両方が含有されてもよい。
【0029】
C.I.ピグメントイエロー213およびC.I.ピグメントイエロー155は、いずれも高耐候性および高発色性を有する。特に、これらのイエロー顔料は、いずれも、水を主成分とする溶媒への分散性に優れる。そのため、C.I.ピグメントイエロー213またはC.I.ピグメントイエロー155を、水を主成分とする溶媒に分散させたインク組成物とすることで、これらのイエロー顔料の分散性が良好となり、発色性が格段に向上する。これにより、高耐候性および高発色性を両立した記録物が得られる。イエロー顔料のうち最も汎用的に用いられているものとしてC.I.ピグメントイエロー74が挙げられるが、C.I.ピグメントイエロー74は、耐候性に優れず、主に屋外での使用が想定されている印刷本紙、プラスチックメディア等の低吸収、非吸収メディアには適用困難である。また、後述する実施例でも示すように、本発明における加熱機構、ヘッド、インクに含まれる水溶性有機溶剤等が組み合わさった記録装置には、良好なベンズイミダゾロン顔料として有名なC.I.ピグメントイエロー180よりも、同種類の骨格を有するベンズミダゾロン顔料のC.I.ピグメントイエロー155の方が良好である。なお、後述する実施例でも示すように、C.I.ピグメントイエロー155と同様の性能を、C.I.ピグメントイエロー213も発揮する。
【0030】
なお、後述する実施例でも示すように、上記のイエロー顔料(C.I.ピグメントイエロー213およびC.I.ピグメントイエロー155)を有機溶媒中に分散させた非水系インク組成物とした場合、良好な発色性は得られない。この理由の一つとしては、有機溶媒中ではC.I.ピグメントイエロー213およびC.I.ピグメントイエロー155の分散性があまり良好でないことが考えられる。
【0031】
本実施形態に係るインク組成物は、インク組成物に含まれる水等の溶媒の一部が蒸発した場合であっても、粘度変化が少なく保存安定性に優れる。そのため、本実施形態に係るインク組成物をインクジェット記録装置に適用した際に、当該インクジェット記録装置が加熱機構により特にノズルの乾燥を生じやすいタイプのものであっても、ノズル詰まり等の発生を少なくでき、インクの吐出安定性が優れたものとなる。
【0032】
また、本実施形態に係るインク組成物は、インク組成物に含まれる水等の溶媒の一部が蒸発した場合であっても、蒸発した溶媒をインク組成物中に再度添加すれば、C.I.ピグメントイエロー213およびC.I.ピグメントイエロー155が溶媒中で容易に再分散するので、インク組成物を再利用することができる。
【0033】
このように、本実施形態に係るインク組成物が保存安定性および再分散性に優れている理由としては、インク組成物中の溶媒が蒸発した場合であっても、C.I.ピグメントイエロー213およびC.I.ピグメントイエロー155の分散性が良好であり、顔料粒子同士の凝集が生じにくいためと考えられる。
【0034】
本実施形態に係るインク組成物中のイエロー顔料の含有量は、好ましくは3.5質量%以上8質量%以下、より好ましくは3.5質量%以上6質量%以下、特に好ましくは3.5質量%以上5.5質量%以下である。イエロー顔料の合計含有量が前記範囲にあると、高耐候性および高発色性を両立した画像が特に得られやすい。
【0035】
C.I.ピグメントイエロー213は、日化辞番号J1,817,318B、独立行政法人「科学技術振興機構」日化辞Web.には、下記構造式(1)と記載されている。
【0036】
【化1】

【0037】
C.I.ピグメントイエロー155は、日化辞番号J62.474H、独立行政法人「
科学技術振興機構」日化辞Web.には、下記構造式(2)と記載されている。
【0038】
【化2】

【0039】
C.I.ピグメントイエロー155の個数平均粒子径d50は、高発色性を有する記録物が得られやすいという観点から、40nm以上350nm以下であることが好ましい。なお、本願発明における「個数平均粒子径d50」とは、レーザー回折散乱法を測定原理とする粒度分布測定装置により個数基準の粒度分布測定を行なった場合に、粒子の累積存在確率が50%となったときの粒子径のことをいう。レーザー回折式粒度分布測定装置としては、たとえばナノトラック(Microtrac製、形式「UPA−150」)が挙げられる。
【0040】
本実施形態に係るイエロー顔料をインク組成物に適用するためには、イエロー顔料が水中で安定的に分散保持できるようにする必要がある。その方法としては、水溶性樹脂および/または水分散性樹脂等の樹脂分散剤にて分散させる方法(以下、この方法により処理された顔料を「樹脂分散顔料」と記載する)、水溶性界面活性剤および/または水分散性界面活性剤の界面活性剤にて分散させる方法(以下、この方法により処理された顔料を「界面活性剤分散顔料」と記載する)、顔料粒子表面に親水性官能基を化学的・物理的に導入し、前記の樹脂あるいは界面活性剤等の分散剤なしで水中に分散および/または溶解可能とする方法(以下、この方法により処理された顔料を「表面処理顔料」と記載する)等が挙げられる。本実施の形態に係るインク組成物は、前記の樹脂分散顔料、界面活性剤分散顔料、表面処理顔料のいずれも用いることができ、必要に応じて複数種混合した形で用いることもできる。
【0041】
樹脂分散顔料に用いられる樹脂分散剤としては、ポリビニルアルコール類、ポリアクリル酸、アクリル酸−アクリルニトリル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−α―メチルスチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−α―メチルスチレン−アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、酢酸ビニル−マレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニル−クロトン酸共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体等およびこれらの塩が挙げられる。これらの中でも、疎水性官能基を持つモノマーと親水性官能基を持つモノマーとの共重合体、疎水性官能基と親水性官能基とを併せ持つモノマーからなる重合体が好ましい。共重合体の形態としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体のいずれの形態でも用いることができる。
【0042】
前記の塩としては、アンモニア、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ジプロピルアミン、ブチルアミン、イソブチルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、アミノメチルプロパノール、モルホリン等の塩基性化合物との塩が挙げられる。これら塩基性化合物の添加量は、前記樹脂分散剤の中和当量以上であれば特に制限はない。
【0043】
前記樹脂分散剤の分子量は、重量平均分子量として1,000〜100,000の範囲であることが好ましく、3,000〜10,000の範囲であることがより好ましい。分子量が前記範囲であることにより、イエロー顔料が水中で安定的に分散し、またインク組成物に適用した際の粘度制御等がしやすい。
【0044】
また、酸価としては50〜300の範囲であることが好ましく、70〜150の範囲であることがより好ましい。酸価がこの範囲であることにより、イエロー顔料の水中での分散性が安定的に確保でき、またこれを用いたインク組成物にて記録された記録物の耐水性が良好となる。
【0045】
以上述べた樹脂分散剤としては市販品を用いることもできる。詳しくは、ジョンクリル67(重量平均分子量:12,500、酸価:213)、ジョンクリル678(重量平均分子量:8,500、酸価:215)、ジョンクリル586(重量平均分子量:4,600、酸価:108)、ジョンクリル611(重量平均分子量:8,100、酸価:53)、ジョンクリル680(重量平均分子量:4,900、酸価:215)、ジョンクリル682(重量平均分子量:1,700、酸価:238)、ジョンクリル683(重量平均分子量:8,000、酸価:160)、ジョンクリル690(重量平均分子量:16,500、酸価:240)(以上商品名、BASFジャパン株式会社製)等が挙げられる。
【0046】
また、界面活性剤分散顔料に用いられる界面活性剤としては、アルカンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アシルメチルタウリン酸塩、ジアルキルスルホ琥珀酸塩、アルキル硫酸エステル塩、硫酸化オレフィン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩、モノグリセライトリン酸エステル塩等のアニオン性界面活性剤、アルキルピリジウム塩、アルキルアミノ酸塩、アルキルジメチルベタイン等の両性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミド、グリセリンアルキルエステル、ソルビタンアルキルエステル等のノニオン性界面活性剤が挙げられる。
【0047】
前記樹脂分散剤または前記界面活性剤の顔料に対する添加量は、イエロー顔料100質量部に対して好ましくは1質量部〜100質量部であり、より好ましくは5質量部〜50質量部である。この範囲であることにより、イエロー顔料の水中への分散安定性が確保できる。
【0048】
また、表面処理顔料としては、親水性官能基として、−OM、−COOM、−CO−、−SOM、−SONH、−RSOM、−POHM、−PO、−SONHCOR、−NH、−NR(但し、式中のMは、水素原子、アルカリ金属、アンモニウムまたは有機アンモニウムを表し、Rは、炭素数1〜12のアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基または置換基を有していてもよいナフチル基を示す)等が挙げられる。これらの官能基は、イエロー顔料表面に直接および/または多価の基を介してグラフトされることによって、物理的および/または化学的に導入される。多価の基としては、炭素数が1〜12のアルキレン基、置換基を有していてもよいフェニレン基又は置換基を有していてもよいナフチレン基等が挙げられる。
【0049】
また、前記の表面処理顔料としては、硫黄を含む処理剤によりそのイエロー顔料表面に−SOMおよび/または−RSOM(Mは対イオンであって、水素イオン、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、または有機アンモニウムイオンを示す)が化学結合するように表面処理されたもの、すなわち、前記イエロー顔料が活性プロトンを持たず、スルホン酸との反応性を有せず、イエロー顔料が不溶ないしは難溶である溶剤中に、イエロー顔料を分散させ、次いでアミド硫酸、または三酸化硫黄と第三アミンとの錯体によりその粒子表面に−SOMおよび/または−RSOMが化学結合するように表面処理され、水に分散および/または溶解が可能なものとされたものであることが好ましい。
【0050】
一つのイエロー顔料にグラフトされる官能基は単一でも複数種であってもよい。グラフトされる官能基の種類およびその程度は、インク組成物中での分散安定性、色濃度、およびインクジェット記録用ヘッド前面での乾燥性等を考慮しながら適宜決定されてよい。
【0051】
以上に述べた樹脂分散顔料、界面活性剤分散顔料、表面処理顔料を水中に分散させる方法としては、樹脂分散顔料についてはイエロー顔料と水と樹脂分散剤、界面活性剤分散顔料についてはイエロー顔料と水と界面活性剤、表面処理顔料については表面処理顔料と水、また各々に必要に応じて水溶性有機溶剤・中和剤等を加えて、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータミル、ヘンシェルミキサー、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、ジェットミル、オングミル等の従来用いられている分散機にて行なうことができる。
【0052】
1.2.水
本実施形態に係るインク組成物に含まれる水は主溶媒であり、イオン交換水、限外濾
過水、逆浸透水、蒸留水等の純水または超純水を用いることが好ましい。特に紫外線照射または過酸化水素添加等により滅菌した水を用いることが、カビやバクテリアの発生を防止してインク組成物の長期保存を可能にする点で好ましい。
【0053】
なお、本実施形態に係るインク組成物においては、水を50質量%以上含有することが好ましい。水を50質量%以上含有することで、インク組成物中のC.I.ピグメントイエロー213およびC.I.ピグメントイエロー155の分散性がより向上するため、高発色性を有する記録物が得られやすい。
【0054】
1.3.その他の成分
1.3.1.水溶性有機溶剤
本実施形態に係るインク組成物は、水溶性有機溶剤を含有してもよい。水溶性有機溶剤としては、例えば、多価アルコール類、ピロリドン誘導体等が挙げられる。これらの水溶性有機溶媒は、1種単独または2種以上混合して用いることができる。
【0055】
水溶性有機溶剤の中でも、1気圧下相当での沸点が180℃以上250℃以下の水溶性有機溶剤を用いることが好ましく、1気圧下相当での沸点が185℃以上225℃以下の水溶性有機溶剤を用いることがより好ましい。水溶性有機溶剤の沸点が上記範囲内にあると、インクジェット記録装置のノズルの詰まりを低減しつつ、記録された画像の速乾性も確保できる。
【0056】
また、1気圧下相当での沸点が180℃以上250℃以下の水溶性有機溶剤を添加する場合には、その含有量が、インク組成物の全質量に対して、15質量%以上30質量%以下であることが好ましく、20質量%以上30質量%以下であることがより好ましい。1気圧下相当での沸点が180℃以上250℃以下の水溶性有機溶剤の含有量が上記範囲内にあると、上述したインクジェット記録装置のノズルの詰まりを低減しつつ、記録された画像の速乾性も確保できるという効果が一層向上する場合がある。
【0057】
1気圧下相当での沸点が180℃以上250℃以下の多価アルコール類としては、1,2−エタンジオール[197℃]、1,2−プロパンジオール[188℃]、1,3−プロパンジオール[210℃]、1,2−ブタンジオール[194℃]、1,4−ブタンジオール[230℃]、1,2−ペンタンジオール[210℃]、1,5−ペンタンジオール[242℃]、1,2−ヘキサンジオール[224℃]、1,6−ヘキサンジオール[250℃]、1,2−ヘプタンジオール[227℃]、1,2−ペンタンジオール[206℃]、3−メチル−1,3−ブタンジオール[203℃]、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール[226℃]、2−メチル−1,3−プロパンジオール[214℃]、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール[244℃]、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール[230℃]、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール[210℃]、2−メチルペンタン−2,4−ジオール[197℃]、ジエチレングリコール[244℃]、ジプロピレングリコール[232℃]等が挙げられ、その他の1気圧下相当での沸点が180℃以上250℃以下の水溶性有機溶剤としては、γ−ブチロラクトン[204℃]、ジメチルスルホキシド[189℃]、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン[225℃]、ジエチレングリコールジエチルエーテル[185℃]、ジエチレングリコールモノブチルエーテル[230℃]等が挙げられる。括弧内の数値は、1気圧下相当での沸点を表す。これらの中でも、1,2−アルカンジオール類は、被記録媒体(特に後述するインク非吸収性または低吸収性の被記録媒体)に対するインクの濡れ性を高めて均一に濡らす作用に優れているため、被記録媒体上に優れた画像を形成することができる。多価アルコール類を含有する場合には、その含有量が、インク組成物の全質量に対して、1質量%以上25質量%以下であることが好ましい。
【0058】
1気圧下相当での沸点が180℃以上250℃以下のピロリドン誘導体としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン[204℃]、N−エチル−2−ピロリドン[212℃]、N−ビニル−2−ピロリドン[193℃]、2−ピロリドン[245℃]、5−メチル−2−ピロリドン[248℃]等が挙げられる。括弧内の数値は、1気圧下相当での沸点を表す。これらの中でも、インク組成物の保存性確保の点、樹脂定着剤の皮膜形成促進の点、及び臭気が比較的少ない点で、2−ピロリドンが好ましい。ピロリドン誘導体を含有する場合には、その含有量が、第1インクの全質量に対して、0.1質量%以上25質量%以下であることが好ましい。また、本実施形態に係るインクジェット記録装置が塩化ビニルメディアへの印刷を想定しているものであれば、上記ピロリドン誘導体を塩化ビニル溶解助剤として機能させるために、インク組成物の全質量に対して、10質量%以上25質量%以下含有させることが好ましく、13質量%以上25質量%以下含有させることがより好ましい。
【0059】
1.3.2.界面活性剤
本実施の形態に係るインク組成物は、界面活性剤を含有してもよい。インク組成物に界面活性剤を含有させることにより、表面張力および、ノズル等のインクと接触するプリンター部材との界面張力を適正に保つことができる。したがって、これをインクジェット記録装置に用いた場合、吐出安定性を高めることができる。また、被記録媒体上でインクの濃淡ムラや滲みを生じないように均一に濡れ拡げる効果を有する。
【0060】
このような効果を有する界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤であることが好ましい。ノニオン系界面活性剤の中でも、シリコーン系界面活性剤および/またはアセチレングリコール系界面活性剤がより好ましい。
【0061】
シリコーン系界面活性剤としては、ポリシロキサン系化合物等が好ましく用いられ、ポリエーテル変性オルガノシロキサン等が挙げられる。より詳しくは、BYK−306、BYK−307、BYK−333、BYK−341、BYK−345、BYK−346、BYK−348(以上商品名、ビックケミー・ジャパン株式会社製)、KF−351A、KF−352A、KF−353、KF−354L、KF−355A、KF−615A、KF−945、KF−640、KF−642、KF−643、KF−6020、X−22−4515、KF−6011、KF−6012、KF−6015、KF−6017(以上商品名、信越化学株式会社製)等が挙げられる。シリコーン系界面活性剤を含有する場合には、その含有量が、インク組成物の全質量に対して、0.1質量%以上2質量%以下であることが好ましい。
【0062】
アセチレングリコール系界面活性剤として、たとえばサーフィノール104、104E、104H、104A、104BC、104DPM、104PA、104PG−50、104S、420、440、465、485、SE、SE−F、504、61、DF37、CT111、CT121、CT131、CT136、TG、GA、DF110D(以上全て商品名、Air Products and Chemicals. Inc.社製)、オルフィンB、Y、P、A、STG、SPC、E1004、E1010、PD−001、PD−002W、PD−003、PD−004、EXP.4001、EXP.4036、EXP.4051、AF−103、AF−104、AK−02、SK−14、AE−3(以上全て商品名、日信化学工業株式会社製)、アセチレノールE00、E00P、E40、E100(以上全て商品名、川研ファインケミカル株式会社製)等が挙げられる。アセチレングリコール系界面活性剤を含有する場合には、その含有量が、インク組成物の全質量に対して、0.1質量%以上2質量%以下であることが好ましい。
【0063】
1.3.3.樹脂粒子
本実施の形態に係るインク組成物は、樹脂粒子を含有してもよい。インク組成物に樹脂粒子を含有させることにより、被記録媒体上に耐擦性に優れた画像を形成することができる。特に本実施の形態に係るインク組成物には、該樹脂粒子は微粒子状態(すなわち、エマルジョン状態またはサスペンジョン状態)で含有されていることが好ましい。樹脂粒子を微粒子状態で含有することにより、インク組成物の粘度をインクジェット記録方式において適正な範囲に調整しやすく、また保存安定性・吐出安定性を確保しやすい。
【0064】
樹脂粒子としては、たとえば樹脂皮膜を形成し被記録媒体上に定着させる効果を持つポリマー粒子が挙げられる。このような効果を持つポリマー粒子を構成する成分としては、たとえばポリアクリル酸エステルもしくはその共重合体、ポリメタクリル酸エステルもしくはその共重合体、ポリアクリロニトリルもしくはその共重合体、ポリシアノアクリレート、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリイソブチレン、ポリスチレンもしくはそれらの共重合体、石油樹脂、クロマン・インデン樹脂、テルペン樹脂、ポリ酢酸ビニルもしくはその共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルエーテル、ポリ塩化ビニルもしくはその共重合体、ポリ塩化ビニリデン、フッ素樹脂、フッ素ゴム、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルピリジン、ポリビニルイミダゾール、ポリブタジエンもしくはその共重合体、ポリクロロプレン、ポリイソプレン、天然樹脂等が挙げられる。この中で、特に
分子構造中に疎水性部分と親水性部分とを併せ持つものが好ましい。
【0065】
前記のようなポリマー粒子としては、公知の材料・方法で得られるものを用いることもできる。また、市販品を用いることもでき、たとえばマイクロジェルE−1002、マイクロジェルE−5002(以上商品名、日本ペイント株式会社製)、ボンコート4001、ボンコート5454(以上商品名、DIC株式会社製)、SAE1014(商品名、日本ゼオン株式会社製)、サイビノールSK−200(商品名、サイデン化学株式会社製)、ジョンクリル7100、ジョンクリル390、ジョンクリル711、ジョンクリル511、ジョンクリル7001、ジョンクリル632、ジョンクリル741、ジョンクリル450、ジョンクリル840、ジョンクリル74J、ジョンクリルHRC−1645J、ジョンクリル734、ジョンクリル852、ジョンクリル7600、ジョンクリル775、ジョンクリル537J、ジョンクリル1535、ジョンクリルPDX−7630A、ジョンクリル352J、ジョンクリル352D、ジョンクリルPDX−7145、ジョンクリル538J、ジョンクリル7640、ジョンクリル7641、ジョンクリル631、ジョンクリル790、ジョンクリル780、ジョンクリル7610(以上商品名、BASFジャパン株式会社製)等が挙げられる。
【0066】
上記のポリマー粒子は、以下に示す方法で得られ、そのいずれの方法でもよく、必要に応じて複数の方法を組み合わせてもよい。その方法としては、所望のポリマー粒子を構成する成分の単量体中に重合触媒(重合開始剤)と分散剤とを混合して重合(すなわち乳化重合)する方法、親水性部分を持つポリマーを水溶性有機溶剤に溶解させその溶液を水中に混合した後に水溶性有機溶剤を蒸留等で除去することで粒子を得る方法、ポリマーを非水溶性有機溶剤に溶解させその溶液を分散剤と共に水溶液中に混合して粒子を得る方法等が挙げられる。上記の方法は、用いるポリマーの種類・特性に応じて適宜選択することができる。ポリマーを微粒子状態に分散する際に用いることのできる分散剤としては、特に制限はないが、アニオン性界面活性剤(たとえばドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、ラウリルリン酸ナトリウム塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートアンモニウム塩等)、ノニオン性界面活性剤(たとえばポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル)が挙げられ、これらを単独あるいは二種以上を混合して用いることができる。
【0067】
樹脂粒子の平均粒子径は、インク組成物の保存安定性・吐出安定性を確保する点から、好ましくは5nm〜400nmの範囲であり、より好ましくは50nm〜200nmの範囲である。
【0068】
樹脂粒子を含有する場合には、その含有量が、インク組成物の全質量に対して、0.5質量%以上10質量%以下であることが好ましい。樹脂粒子の含有量が前記範囲にあると、被記録媒体上でのインク組成物の固化・定着を促進できる。
【0069】
1.3.4.ワックス粒子
本実施形態に係るインク組成物は、ワックス粒子を含有してもよい。ワックス粒子を添加することにより、画像の耐擦性を向上させることができる。
【0070】
前記ワックス粒子を構成する成分としては、たとえばカルナバワックス、キャンデリワックス、みつろう、ライスワックス、ラノリン等の植物・動物系ワックス;パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、ペトロラタム等の石油系ワックス;モンタンワックス、オゾケライト等の鉱物系ワックス;カーボンワックス、ヘキストワックス、ポリオレフィンワックス、ステアリン酸アミド等の合成ワックス類、α−オレフィン・無水マレイン酸共重合体等の天然・合成ワックスエマルジョンや配合ワックス等を単独あるいは複数種を混合して用いることができる。この中で好ましいワックスの種類としては、ポリオレフィンワックス、特にポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスである。ワックス粒子としては市販品を利用することもでき、たとえばノプコートPEM17(商品名、サンノプコ株式会社製)、ケミパールW4005(商品名、三井化学株式会社製)、AQUACER515、AQUACER593(以上商品名、ビックケミー・ジャパン株式会社製)等が挙げられる。
【0071】
ワックス粒子の平均粒子径は、インク組成物の保存安定性・吐出安定性を確保する点から、好ましくは5nm〜400nmの範囲であり、より好ましくは50nm〜200nmの範囲である。
【0072】
ワックス粒子を含有する場合には、その含有量は、インク組成物の全質量に対して、固形分換算で0.1質量%以上5質量%以下であることが好ましい。ワックス粒子の含有量が前記範囲内にあると、被記録媒体に記録された画像の耐擦性を一層向上できる場合がある。
【0073】
1.3.5.重合開始剤、重合性化合物
本実施形態に係るインク組成物は、必要に応じて、重合開始剤を含有してもよい。例えば、インクには、重合性官能基を有する化合物(重合性化合物)を配合してもよく、その場合、熱を加えたり、放射線を照射したりすることにより、重合することができるが、その重合の速度をより高める必要がある場合には、熱重合開始剤や放射線重合開始剤を添加することができる。
【0074】
なお、重合開始剤は、必ずしも水溶性でなくてもよく、油溶性であってもよいし、難溶性であってもよい。これは、例えば、重合開始剤が油溶性である場合には、重合開始剤は、水系のインクにおいて、油相に存在することになり、また、難溶性であれば、重合開始剤は、例えば、画像形成工程の後、記録媒体上で水分がある程度除去された際に、重合性官能基に接触するようになり、所望の作用を発揮することができる。さらに、重合開始剤は、相間を移動する性質を有してもよく、インクの配合に応じて、かつ、必要に応じて適宜選択されることができる。
【0075】
重合開始剤としては、例えばベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、イソプロピルベンゾインエーテル、イソブチルベンゾインエーテル、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、ベンジル、ジエトキシアセトフェノン、ベンゾフェノン、クロロチオキサントン、2−クロロチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2−メチルチオキサントン、ポリ塩化ポリフェニル、ヘキサクロロベンゼン等が挙げられる。
【0076】
また、重合性化合物としては、特に限定されないが、ポリエステルアクリレート、ポリウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエーテルアクリレート、オリゴアクリレート、アルキドアクリレート、ポリオールアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ヒドロキシピオペリン酸エステルネオペンチンルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリストールトリアクリレート、ジペンタエリストールヘキサアクリレート、アクロイルモルホリン、2−フェノキシエチルアクリレート、フタル酸水素−(2,2,2−トリアクロイルオキシメチル)エチル、ジペンタエリストールポリアクリレート、ジペンタエリストールポリアクリレート、N−ビニルフォルムアミド、トリプロピレングリコールジアクリレート、グリセリンEO付加物トリアクリレート等が挙がられる。
【0077】
1.3.6.その他の成分
本実施の形態に係るインク組成物には、さらにその特性を向上させる観点から、以上に述べた成分の他に、必要に応じて浸透溶剤、保湿剤、防腐・防かび剤、pH調整剤、キレート化剤、紫外線吸収剤、酸素吸収剤等を添加することができる。
【0078】
1.4.インク組成物の物性
インク組成物のpHは、中性ないしアルカリ性であることが好ましく、7.0〜10.0の範囲内であることがより好ましい。pHが酸性であると、インク組成物の保存安定性および分散安定性が損なわれることがある。また、インクジェット記録装置内のインク流路に用いられている金属部品の腐食等の不具合が発生しやすくなる。pHは、前述したpH調整剤を用いて中性ないしアルカリ性に調整することができる。
【0079】
本実施形態に係るインク組成物の20℃における粘度は、1.5mPa・s以上15mPa・s以下であることが好ましい。インク組成物の20℃における粘度が上記範囲内にあると、インクジェット記録装置のノズルからインク組成物の液滴が適量吐出され、液滴の飛行曲がりや飛散を一層低減することができるため、インクジェット記録装置に好適に使用することができる。インク組成物の粘度は、振動式粘度計VM−100AL(商品名、山一電機株式会社製)を用いて、インク組成物の温度を20℃に保持することで測定できる。
【0080】
本実施形態に係るインク組成物は、以下の試験条件に限定されるわけではないが、例えば、当該インク組成物40mlを容量50mlの容器に投入し、容器に投入したインク組成物の大気に接する面積を0.25πcm(πは円周率)として、温度60℃、湿度50%RHの雰囲気下で保存した場合において、保存されたインク組成物の質量が20質量%減少した際の当該インク組成物の粘度[Va(mPa・s)]と、質量減少前のインク組成物の粘度[Vb(mPa・s)]と、の比[(Va/Vb)]が、1.45以下であることが好ましく、1.4以下であることがより好ましい。保存前後のインク組成物の粘度比が上記範囲内にあると、インク組成物中の溶媒の一部が蒸発した場合であっても、インクジェット記録装置のノズルから適量のインク組成物の液滴を吐出できる。なお、保存前後のインク組成物の粘度は、粘度計Physica MCR30(Anton Paar社製)を用いて、インク組成物の温度を20℃に保持することで測定できる。
【0081】
本実施形態に係るインク組成物の表面張力は、25℃において20mN/m〜40mN/mであることが好ましく、25mN/m〜35mN/mであることがより好ましい。この範囲内であれば、インクの吐出安定性を確保することができ、被記録媒体に対する適正な濡れ性を確保することができる。
【0082】
1.5.インク組成物の製造方法
本実施形態に係るインク組成物は、前述した材料を任意な順序で混合し、必要に応じて濾過等をして不純物を除去することにより得られる。ここで、イエロー顔料は、あらかじめ水性媒体中に均一に分散させた状態に調製した上で混合した方が、取り扱いの簡便さ等から好ましい。
【0083】
各材料の混合方法としては、メカニカルスターラー、マグネチックスターラー等の撹拌装置を備えた容器に順次材料を添加して撹拌混合する方法が好適に用いられる。濾過方法としては、遠心濾過、フィルター濾過等を必要に応じて行なうことができる。
【0084】
2.インクジェット記録装置
2.1.装置構成
本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置は、上述したインク組成物の液滴を吐出するノズル孔を備えたヘッドと、ノズル孔から吐出した液滴を被記録媒体に付着させる前または付着させる時に被記録媒体を加熱する加熱機構と、を有することを特徴とする。
【0085】
以下、本実施形態に係るインクジェット記録装置について、図1〜図3を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。本実施形態では、インクジェット記録装置としてインクジェットプリンター(以下、単に「プリンター」という。)を例示する。
【0086】
図1は、本実施形態におけるプリンター1の構成を示す斜視図である。図1に示すプリンター1は、シリアルプリンターである。シリアルプリンターとは、所定の方向に移動するキャリッジにヘッドが搭載されており、キャリッジの移動に伴ってヘッドが移動することにより被記録媒体上に液滴を吐出するもののことをいう。
【0087】
なお、図1では、シリアルプリンターを例示したが、これに限定されず、本発明に係るインクジェット記録装置は、例えばラインプリンターであってもよい。ラインプリンターとは、ヘッドが被記録媒体の幅よりも広く形成され、ヘッドが移動せずに被記録媒体上に液滴を吐出するもののことをいう。
【0088】
図1に示すように、プリンター1は、ヘッド2を搭載すると共にインクカートリッジ3を着脱可能に装着するキャリッジ4と、ヘッド2の下方に配設され被記録媒体Pが搬送されるプラテン5と、被記録媒体を加熱するための加熱機構6と、キャリッジ4を被記録媒体Pの媒体幅方向に移動させるキャリッジ移動機構7と、被記録媒体Pを媒体送り方向に搬送する媒体送り機構8と、を有するものである。また、プリンター1は、当該プリンター1全体の動作を制御する制御装置CONTを有している。なお、上記媒体幅方向とは、主走査方向(ヘッド走査方向)である。上記媒体送り方向とは、副走査方向(主走査方向に直交する方向)である。
【0089】
本実施形態に係るインクカートリッジ3は、独立した4つのカートリッジからなる。4つのカートリッジのいずれか1つに、上述したインク組成物が充填される。上述したインク組成物を充填したカートリッジ以外のカートリッジには、所望のインク組成物(例えば、シアンインク組成物、マゼンタインク組成物、ブラックインク組成物等)が充填される。なお、図1の例では、カートリッジの数が4つであるが、これに限定されず、所望の数のカートリッジを搭載することができる。
【0090】
インクカートリッジ3は、本実施形態のようにキャリッジ4に装着するものに限らず、これに替えて例えば、プリンター1の筐体側に装着しインク供給チューブを介してヘッド2に供給するタイプのものであってもよい。
【0091】
キャリッジ4は、主走査方向に架設された支持部材であるガイドロッド9に支持された状態で取り付けられたものである。また、キャリッジ4は、キャリッジ移動機構7によりガイドロッド9に沿って主走査方向に移動するものである。なお、図1の例では、キャリッジ4が主走査方向に移動するものを示したが、これに限定されず、主走査方向の移動に加えて、副走査方向に移動するものであってもよい。
【0092】
加熱機構6は、被記録媒体Pを加熱できる位置に設けられていれば、その設置位置は特に限定されるものではない。図1の例では、加熱機構6は、プラテン5上であって、ヘッド2と対向する位置に設置されている。より具体的には、加熱機構6は、後述するノズル面21Aと対向する位置に設置されている。このように、加熱機構6がヘッド2と対向する位置に設置されていると、被記録媒体Pにおける液滴の付着位置を確実に加熱できるので、被記録媒体Pに付着した液滴を効率的に乾燥および皮膜化できる。
【0093】
加熱機構6には、例えば、被記録媒体Pを熱源に接触させて加熱するプリントヒーター機構や、赤外線やマイクロウェーブ(2,450MHz程度に極大波長をもつ電磁波)などを照射する機構や、温風を吹き付けたりするドライヤー機構などを用いることができる。
【0094】
加熱機構6による被記録媒体Pの加熱は、ノズル孔17から吐出された液滴が被記録媒体Pに付着する前または付着する時に行われる。このようにすれば、被記録媒体Pに付着した液滴を迅速に乾燥できる。その反面、被記録媒体への記録中にヘッドのノズル近傍のインク組成物の乾燥が促進されてしまう。なお、加熱の諸条件の制御(例えば、加熱実施のタイミング、加熱温度、加熱時間等)は、制御装置CONTによって行われる。
【0095】
加熱機構6による被記録媒体Pの加熱は、被記録媒体Pが40℃以上60℃以下の温度範囲を保持するように行われることが好ましい。なお、本願発明において被記録媒体を加熱する温度は、インク組成物と接触する被記録媒体表面の温度を意味する。
【0096】
プリンター1は、加熱機構6の他に、さらに、図示しない第2の加熱機構を有していてもよい。第2の加熱機構は、加熱機構6よりも被記録媒体Pの搬送方向の下流側に設置される。第2の加熱機構は、加熱機構6によって被記録媒体Pを加熱した後、つまり、ノズル孔17から吐出された液滴が被記録媒体Pに付着した後に、当該被記録媒体Pの加熱を行うものである。これにより、被記録媒体Pに付着したインク組成物の液滴の皮膜化をより一層促進できる。第2の加熱機構には、加熱機構6で説明したいずれかの機構(例えば、ドライヤー機構等)を用いることができる。
【0097】
第2の加熱機構による被記録媒体Pの加熱は、被記録媒体Pが50℃以上90℃以下の温度範囲を保持するように行われることが好ましい。この時の加熱温度が高温であるほど、速乾性、耐擦性の向上に有利である。ただし、被記録媒体Pの温度が90℃を超える場合、被記録媒体Pの種類によっては変形が生じたり、被記録媒体Pの加熱冷却の際に記録画像の収縮等の不具合が起こる場合がある。また、加熱に使用されるヒーターの消費電力の増大や、加熱機構によってプリンターからの排熱が増大する等の問題があり、これらを踏まえて、被記録媒体の温度の上限は90℃であることが好ましい。
【0098】
リニアエンコーダ10は、キャリッジ4の主走査方向上における位置を信号で検出するものである。この検出された信号は、位置情報として制御装置CONTに送信されるようになっている。制御装置CONTは、このリニアエンコーダ10からの位置情報に基づいてヘッド2の走査位置を認識し、ヘッド2による記録動作(吐出動作)などを制御するようになっている。また、制御装置CONTは、キャリッジ4の移動速度を可変制御可能な構成となっている。
【0099】
図2は、本実施形態に係るヘッド2におけるノズル面21Aを示す概略図である。
【0100】
図2に示すように、ヘッド2は、ノズル面21Aを備える。インクの吐出面でもあるノズル面21Aには、複数のノズル列16が配列されている。複数のノズル列16は、ノズル列毎に、インクを吐出するための複数のノズル孔17からなる。
【0101】
ノズル孔17の直径は、15μm以上25μm以下であることが好ましい。ノズル孔が大きすぎる場合には、ノズル近傍でのインク組成物の乾燥が進むことがあり好ましくない。一方でノズル孔が小さすぎる場合には、微小な液滴のコントロールが困難になる。本発明のインク組成物は、ノズル孔17の直径が上記範囲内にあると、ノズル孔17から適正な量を吐出されやすくなる。
【0102】
プリンター1は、ノズル孔17から3pl以下、より好ましくは1.6pl以下の液滴でインク組成物を吐出可能な装置であることが好ましい。
【0103】
図3は、本実施形態におけるヘッド2の内部構成を示す部分断面図である。
【0104】
図3に示すように、ヘッド2は、ヘッド本体18と、ヘッド本体18に接続された流路形成ユニット22と、を備えている。流路形成ユニット22は、振動板19と、流路基板20と、ノズル基板21と、を備えると共に、共通インク室29と、インク供給口30と、圧力室31と、を形成する。さらに、流路形成ユニット22は、ダイヤフラム部として機能する島部32と、共通インク室29内の圧力変動を吸収するコンプライアンス部33と、を備える。ヘッド本体18には、固定部材26と共に駆動ユニット24を収容する収容空間23と、インクを流路形成ユニット22に案内する内部流路28と、が形成される。
【0105】
上記構成、即ちピエゾ方式のヘッド2によれば、ケーブル27を介して駆動ユニット24に駆動信号が入力されると、圧電素子25が伸縮する。これにより、振動板19が圧力室31に接近する方向及び離れる方向に変形(移動)する。このため、圧力室31の容積が変化し、インクを収容した圧力室31の圧力が変動する。この圧力の変動によって、ノズル孔17からインクが吐出される。
【0106】
図1に戻り、ヘッド2の移動範囲のうちプラテン5の外側の領域には、ヘッド2の走査起点となるホームポジションが設定されている。このホームポジションには、キャップ部材12およびワイピング部材13を含むメンテナンスユニット11が設けられている。
【0107】
メンテナンスユニット11は、記録動作以外でヘッド2をキャップ部材12でキャッピングしてインクの蒸発を抑制する保湿動作と、ヘッド2の各ノズル孔17からインクをキャップ部材12に予備吐出させることで増粘インクによるノズル孔17の目詰まり防止やノズル孔17のメニスカスを調整してヘッド2から正常にインクを吐出させるフラッシング動作と、キャップ部材12でヘッド2をキャッピングした後に不図示の吸引ポンプを駆動させて各ノズル孔17から粘性が高くなったインクや付着したゴミ等を強制吸引してメニスカスを調整し、ヘッド2から正常にインクを吐出させる吸引動作(ヘッドクリーニング)と、ヘッド2のノズル面21A(図2参照)をワイプ部材13で払拭(ワイピング)することでノズル孔17近傍に付着したインクや増粘したインク等を除去したり、ノズル孔17のメニスカスを破壊してメニスカスを再調整させるパージ処理を行うワイピング動作と、を実行する構成となっている。
【0108】
本実施形態に係るインクジェット記録装置では、インク非吸収性またはインク低吸収性の被記録媒体を好適に用いることができる。プリンター1は、加熱機構6を有し、かつ、被記録媒体P上で乾燥しやすい上述したインク組成物を用いるので、インク非吸収性およびインク低吸収性の被記録媒体に対しても、速乾性および耐擦性に優れた画像を記録することができる。
【0109】
インク非吸収性の被記録媒体としては、例えば、インクジェット印刷用に表面処理をしていない(すなわち、インク吸収層を形成していない)プラスチックフィルム、紙等の基材上にプラスチックがコーティングされているものやプラスチックフィルムが接着されているもの等が挙げられる。ここでいうプラスチックとしては、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。インク低吸収性の被記録媒体としては、アート紙、コート紙、マット紙等の印刷本紙が挙げられる。上記の被記録媒体以外にも、金属、ガラスなどのインク非吸収性または低吸収性の被記録媒体を用いてもよい。
【0110】
ここで、本明細書において「インク非吸収性またはインク低吸収性の被記録媒体」とは、「ブリストー(Bristow)法において接触開始から30msec1/2までの水吸収量が10mL/m2以下である記録媒体」を示す。このブリストー法は、短時間での液体吸収量の測定方法として最も普及している方法であり、日本紙パルプ技術協会(JAPAN TAPPI)でも採用されている。試験方法の詳細は「JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法2000年版」の規格No.51「紙及び板紙−液体吸収性試験方法−ブリストー法」に述べられている。
【0111】
本実施形態に係るインクジェット記録装置は、加熱機構を有し、かつ、上述したインク組成物を用いるので、吐出安定性に優れ、かつ、高耐候性および高発色性を両立しつつ、耐擦性および乾燥性に優れた画像を記録できる。
【0112】
2.2.画像記録方法
本発明の一実施形態に係る画像記録方法は、上述したインクジェット記録装置を用いて、被記録媒体を加熱する加熱工程と、上述したインク組成物の液滴を吐出して被記録媒体に付着させる工程と、を有する。なお、本発明において「画像」とは、ドット群から形成される印字パターンを示し、テキスト印字、ベタ印字も含める。以下、プリンター1を用いた画像記録方法について、具体的に説明する。
【0113】
まず、加熱機構6によって被記録媒体Pを40℃以上60℃以下の温度範囲に加熱する。そして、プリンター1のノズル孔17からインク組成物を液滴として吐出して、当該液滴を加熱された被記録媒体Pに付着させる。これにより、被記録媒体Pに付着したインク組成物に含有される揮発成分の少なくとも一部が速やかに蒸発飛散して、インク組成物からなる皮膜が形成される。このようにして、被記録媒体Pに所望の画像を形成することができる。なお、加熱機構6による被記録媒体Pの加熱は、ノズル孔17から吐出した液滴を被記録媒体Pに付着させる前または付着させる時に行われればよい。
【0114】
なお、上記工程によっても被記録媒体Pに形成された画像を短時間で十分に乾燥でき、画像の皮膜化を促進して耐擦性に優れた画像を得られるが、第2の加熱機構(図示せず)を加熱機構6と併せて用いると、画像の速乾性および耐擦性の向上という効果がより一層高まる場合がある。
【0115】
第2加熱機構(図示せず)による被記録媒体の加熱は、以下のように行われる。具体的には、プリンター1に備えられた第2の加熱機構(図示せず)によって、画像の形成された上記被記録媒体を50℃以上90℃以下の温度範囲に加熱して、被記録媒体に付着したインク組成物をさらに乾燥させる。これにより、被記録媒体P上の画像をより一層乾燥できるとともに、画像の皮膜化もより一層進行するので、耐擦性に優れた画像が得られる。
【0116】
記録媒体の加熱時間は、インク組成物中に存在する揮発成分が蒸発飛散し、インクの皮膜を形成することができれば特に制限はなく、用いる溶媒や、印刷速度等を加味して適宜設定することができる。
【0117】
3.実施例
以下、本発明を実施例および比較例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0118】
3.1.インク組成物の調製
3.1.1.顔料分散液の調製
まず、撹拌装置、還流管、温度センサー、滴下ロートを備えた2000mlのセパラブルフラスコ内を充分に窒素置換した後、ジエチレングリコールモノメチルエーテル200.0質量部をセパラブルフラスコに入れて攪拌しながら80℃に昇温した。次いで、滴下ロートにジエチレングリコールモノメチルエーテル200.0質量部、シクロヘキシルアクリレート(以下、「CHA」と呼ぶ)483.0質量部、メタクリル酸(以下、「MAA」と呼ぶ)66.6質量部、アクリル酸(以下、「AA」と呼ぶ)50.4質量部及びt−ブチルパーオキシ(2−エチルヘキサノエート)(以下、「BPEH」と呼ぶ)4.8質量部を入れ、80℃で4時間かけてセパラブルフラスコ中に滴下した。滴下終了後、80℃で1時間保持した後、BPEH0.8質量部を加え、さらに80℃で1時間反応を行った。熟成を終了させた後、減圧蒸留によりジエチレングリコールモノメチルエーテルを除去した。その後、メチルエチルケトン(以下、「MEK」と呼ぶ)600.0質量部を加え、樹脂固形分50%のインクジェットインク用ポリマー組成物溶液を得た。このようにして得られたインクジェットインク用ポリマー組成物溶液の一部を取り、105℃の強熱乾燥機で1時間乾燥した後、得られたインクジェットインク用ポリマー組成物の固形物の酸価は130mgKOH/gであり、重量平均分子量は34,000であった。次に、インクジェットインク用ポリマー組成物溶液120.0質量部に対して30%水酸化ナトリウム水溶液6.0質量部を加えて、高速ディスパーで5分間攪拌し、さらに顔料濃度25質量%のC.I.ピグメントイエロー213を含む分散液を、480.0質量部を加
えて、高速ディスパーで1時間攪拌し、顔料分散液を得た。
【0119】
なお、C.I.ピグメントイエロー155、139、185、180、74についても上記と同様にして顔料分散液を得た。
【0120】
3.1.2.インク組成物の調製
上記「3.1.1.顔料分散液の調製」で調製された顔料分散液を用いて、下記表1および表2に示す材料組成にてイエロー色の材料組成の異なるインク組成物を調製した。各インク組成物は、表中に示す材料を容器中に入れ、マグネチックスターラーにて2時間混合撹拌した後、孔径5μmのメンブランフィルターにて濾過してゴミや粗大粒子等の不純物を除去することにより調製した。なお、表1および表2中の数値は、全て質量%を示す。また、表2に示した比較例5および比較例6のインク組成物は、特開2010−1478号公報に記載されているインク組成例に準じて作製した。
【0121】
【表1】

【0122】
【表2】

【0123】
なお、表1および表2において商品名で記載した各材料は、以下の通りである。
・EPG1456(三井化学株式会社製、バインダー樹脂)
・AQUACER−539(ビックケミー・ジャパン株式会社製、パラフィン系ワックス剤)
・BYK−348(ビックケミー・ジャパン株式会社製、シリコーン系界面活性剤)
・パラロイドB60(ローム&ハース社製、アクリル系バインダー樹脂)
【0124】
3.2.評価試験および評価結果
3.2.1.インクの粘度変化率
(1)評価試験
調製した実施例1〜4、比較例1〜2のインク組成物40mlを、サンプル瓶(アズワン株式会社製、口径10mmΦ、容量50ml)に投入し、サンプル瓶のキャップを開放した状態で、温度60℃、湿度50%RHとした恒温恒湿槽内に保存した。なお、サンプル瓶中のインク組成物が大気に接する面積は、0.25πcmであった。
【0125】
そして、上記サンプル瓶中のインク組成物の重量が、5質量%、10質量%、15質量%、20質量%減少した際の粘度[Va(mPa・s)]を測定し、保存前のインク組成物の粘度[Vb(mPa・s)]からの粘度変化率[(Va/Vb)×100(%)]を求めた。なお、保存前後のインク組成物の粘度は、粘度計Physica MCR30(Anton Paar社製)を用いて、インク組成物の温度を20℃に保持することで測定した。
【0126】
粘度変化率を表3に示す。
【0127】
【表3】

【0128】
(2)評価結果
表3に示すように、実施例1〜実施例4のインク組成物は、溶媒の蒸発による粘度変化率が少ないことが示された。このことは、溶媒の蒸発による顔料粒子の凝集が少ないためと推測される。
【0129】
一方、比較例1〜2のインク組成物は、溶媒の蒸発が進行するにつれて、著しく増粘した。このように、比較例2のインク組成物が増粘した理由は、顔料の分散性が破壊され、顔料粒子同士の凝集が発生したものと推測される。
【0130】
3.2.2.ノズルの目詰まり性の評価
(1)評価試験
調製した実施例1〜4、比較例1〜2のインク組成物をそれぞれ、インクジェットプリンター(セイコーエプソン株式会社製、商品名「PX−G5000」)のインクカートリッジに充填し、ヘッド内のインク流路をインク組成物で満たした。そして、上記プリンターからインクカートリッジを取り外して、ヘッドをキャップ部材でキャッピングせずに、当該プリンターを温度40℃,湿度25%RHとした恒温恒湿槽内で48時間保存した。
【0131】
その後、恒温恒湿槽からプリンターを取り出して、被記録媒体(富士ゼロックス株式会社製、商品名「P」)に対してノズルパターンの印刷と、ヘッドのクリーニング動作と、をこの順に全ノズルからインクの吐出を確認できるまで繰り返し行った。なお、ノズルパターンの印刷は、ノズル孔から吐出されるインクの液滴重量(1滴当たり)を、1.6pl、7.3pl、22.5plと変化させて行った。
【0132】
評価結果を表4に示す。なお、評価基準は以下の通りである。
A:クリーニング動作3回以内で、全ノズルからインクの吐出が確認できた
B:クリーニング動作4回以上6回以下で、全ノズルからインクの吐出が確認できた
C:クリーニング動作7回以上11回以下で、全ノズルからインクの吐出が確認できた
D:クリーニング動作12回以上で、全ノズルからインクの吐出が確認できた
【0133】
【表4】

【0134】
(2)評価結果
表4に示すように、実施例1〜4のインク組成物は、ノズル孔から吐出される液滴重量が少ない場合(液滴重量:1.6pl)であっても、ノズル孔の詰まりを短期間で回復できることが示された。このようにノズル詰まりを短期間で回復できる理由としては、実施例1および実施例2のインク組成物が溶媒の蒸発によるインクの増粘等を生じにくいためだと考えられる。そのため、インクジェット記録装置のノズル孔が加熱機構によって加熱されても、これらのインク組成物を用いることによって、インクの吐出安定性が良好となる。
【0135】
一方、比較例1および比較例2のインク組成物は、特にノズル孔から吐出される液滴重量が少ない場合(液滴重量:1.6pl)に、ノズル孔の詰まりを回復するのに長期間かかることが示された。このことより、比較例1および比較例2のインク組成物は、溶媒の蒸発によるインクの増粘等が発生しやすく、吐出安定性に優れないことが示された。
【0136】
3.2.3.インクの信頼性(乾燥固化性)
(1)評価試験
調製した実施例1〜4、比較例1〜比較例3、比較例7、比較例8のインク組成物0.2mlを、容量9mlのサンプル瓶(アズワン株式会社製、口径10mmΦ)に投入し、サンプル瓶のキャップを開放した状態で、所定温度、湿度50%RHの雰囲気下で1時間保存した。なお、保存時の温度を40℃、50℃、60℃として、各温度条件でインクの保存を行った。
【0137】
その後、各インクから減少した量と同量の溶媒を加えた後、10分間攪拌して、インク中の成分が再分散可能であるかの評価を行った。なお、実施例1〜4、比較例1〜3のインク組成物にはイオン交換水を減少した溶媒として加えた。また、比較例7〜8のインク組成物には、γ−ブチロラクトン、ジエチレングリコールジエチルエーテルおよびテトラエチレングリコールジメチルエーテルを減少した溶媒として表2の組成比となるように加えた。
【0138】
評価結果を表5に示す。また、評価基準は以下の通りである。
A:インク組成物中に含まれる成分が完全に再分散する
B:インク組成物中に固形物が認められる
C:インク組成物が固化する
【0139】
【表5】

【0140】
(2)評価結果
表5に示すように、実施例1〜4、比較例2、比較例3、比較例7、比較例8のインク組成物は、インクの溶媒の一部が蒸発しても、再度溶媒を添加することによって含有成分の再分散が可能であり、良好な性質を有していた。
【0141】
一方、比較例1のインク組成物は、保存温度を高くすると、再度溶媒を添加しても含有成分の再分散が困難であり、実用上の使用に適さないものであった。
【0142】
3.2.4.画像の耐擦性
(1)評価サンプルの作成
インクジェットプリンター(セイコーエプソン株式会社、「PX−G5000」)の一部を改造して、紙案内部に温度が可変できるヒーターを取り付けて、画像の記録時に被記録媒体(ラミーコーポレーション株式会社製、商品名「コールドラミネートフィルム PG−50L」、ポリエステルフィルム)を加熱調整できるようにした。そして、調製した実施例1〜4、比較例1〜比較例3、比較例5〜8のインク組成物毎に上記プリンターの専用カートリッジに充填した。
【0143】
そして、上記プリンターの紙案内部に取り付けられたヒーターを用いて、被記録媒体の表面温度を所定温度まで加熱させた。次いで、この温度を保持させた状態で、上記プリンターのノズルからインク組成物の液滴を吐出させて、被記録媒体上に液滴を付着させる操作を行い、被記録媒体上にベタパターン画像が形成された評価サンプルを得た。
【0144】
なお、画像の記録条件は、解像度:縦720dpi×横720dpi、Duty100%とした。また、記録時の被記録媒体の温度を50℃、60℃として、各温度条件にて画像の記録を行った。
【0145】
ここで、「duty値」とは、下式で算出される値である。
duty(%)=実吐出ドット数/(縦解像度×横解像度)×100
(式中、「実吐出ドット数」は単位面積当たりの実吐出ドット数であり、「縦解像度」および「横解像度」はそれぞれ単位面積当たりの解像度である。)
【0146】
(2)評価試験
上記のようにして得られた評価用サンプルを室温(25℃)に戻した直後に、学振型摩擦堅牢試験機(テスター産業株式会社製、商品名「AB−301」)を用いて、荷重500g,摩擦回数50回の条件で、摩擦用白綿布(カナキン3号)を取り付けた摩擦子と記録された画像とを擦り合わせ、画像の表面状態を目視にて観察した。
【0147】
評価結果を表6に示す。なお、評価基準は以下の通りである。
A:画像の表面に傷がなく、画像の剥がれも認められない
B:画像の表面に傷は認められるが、画像の剥がれは認められない
C:画像の表面に傷が認められ、画像の剥がれが認められる
【0148】
【表6】

【0149】
(3)評価結果
表6に示すように、比較例7および比較例8のインク組成物を用いて得られた画像は、実施例1、実施例2、比較例1〜比較例3のインク組成物を用いて得られた画像よりも耐擦性に優れない傾向にあった。この理由としては、比較例7および比較例8のインク組成物に含まれる溶媒が蒸発しにくく、画像の皮膜化が不十分であったためだと考えられる。また、水溶性有機溶剤の量を増やすことによって、耐擦性の低下が見られることが実施例3および実施例4から分かり、グリセリン等の非常に高沸点溶剤を添加すると耐擦性が大きく低下することが比較例5および比較例6から分かった。
【0150】
3.2.5.画像の発色性
(1)評価サンプルの作成
記録時の被記録媒体の温度を60℃のみで行った以外は、上記「3.2.4.画像の耐擦性 (1)評価サンプルの作成」と同様にして、実施例1〜2、比較例1〜4、比較例7〜8のインク組成物を用いて、パッチパターン(Duty100%)の記録された評価サンプルを作成した。
【0151】
(2)評価試験
得られた評価サンプルのパッチパターンを分光光度計(グレタグ社製、「グレタグマクベスSPM50」)によって測定し、CIEで規定されている色差表示法のL表色系の座標を求めた。その際の条件は、光源D50、光源フィルターなしで、視野角は2°とし、白色標準は絶対白とした。得られた値から、パッチの彩度C[C=((a+(b1/2]を下記基準に基づき判定した。
【0152】
評価結果を表7に示す。なお、評価基準は以下の通りである。
A:102以上
B:100以上102未満
C:98以上100未満
D:98未満
【0153】
【表7】

【0154】
(3)評価結果
表7に示すように、実施例1、実施例2、比較例2〜比較例4のインク組成物を用いて記録された画像は、発色性に優れていた。一方、比較例1、比較例7、比較例8のインク組成物を用いて記録された画像は、発色性が不十分であった。
【0155】
なお、比較例7および比較例8のインク組成物は、実施例1および実施例2と同様の顔料(C.I.ピグメントイエロー213、C.I.ピグメントイエロー155)を用いているが、特に発色性に優れていなかった。このことより、C.I.ピグメントイエロー213およびC.I.ピグメントイエロー155は、溶媒として有機溶媒を主成分としたインクに用いられるよりも、溶媒として水を主成分としたインクに好ましく用いられることが示された。
【0156】
3.2.6.画像の耐候性
(1)評価サンプルの作成
初期OD値が0.5、1.0、最大値となるようにDutyを調整し、記録時の被記録媒体の温度を60℃のみで行った以外は、上記「3.2.4.画像の耐擦性 (1)評価サンプルの作成」と同様にして、実施例1〜2、比較例1〜4、比較例7〜8のインク組成物を用いて、画像の記録された評価サンプルを得た。
【0157】
(2)評価試験
得られた評価サンプルをキセノンウェザーメーター(スガ試験機株式会社製)のチャンバー内に投入し、下記表8に示す試験条件で「光照射40分間」→「光照射+水降雨20分間」→「光照射60分間」→「水降雨60分間」のサイクル試験を行った。このサイクル試験を2週間連続して行い、2週間後にその評価サンプルを取り出した。
【0158】
そして、取り出した評価サンプルを一般環境下で1時間放置した。放置後、グレタグ濃度計(グレタグマクベス社製)を用いて各評価サンプルのOD値を測定し、OD値の残存率(%)を求め、初期OD値が0.5、1.0、最大値の三種の画像のうち残存率が最も低いものを評価の対象とした。
【0159】
評価結果を表9に示す。なお、評価基準は以下の通りである。
A:OD値残存率が85%以上
B:OD値残存率が70%以上85%未満
C:OD値残存率が55%以上70%未満
D:OD値残存率が55%未満
【0160】
【表8】

【0161】
【表9】

【0162】
(3)評価結果
実施例1、実施例2、比較例7、比較例8のインク組成物は、顔料としてC.I.ピグメントイエロー213またはC.I.ピグメントイエロー155を含有する。そのため、表9に示すように、これらのインク組成物を用いて形成された画像は、耐候性に優れていた。
【0163】
一方、比較例1〜比較例4のインク組成物は、顔料としてC.I.ピグメントイエロー213およびC.I.ピグメントイエロー155のいずれも含有していない。そのため、表9に示すように、これらのインク組成物を用いて形成された画像は、耐候性が不十分であることが示された。
【0164】
3.2.7.評価結果のまとめ
以上の評価結果から、実施例1〜4のインク組成物は、保存安定性に優れ、高耐候性および高発色性を両立する画像を形成できることが示された。また、実施例1〜4のインク組成物を加熱機構を備えたインクジェット記録装置に適用すると、吐出安定性を十分に維持しつつ、速乾性および耐擦性に優れた画像を記録できることが示された。
【0165】
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0166】
1…プリンター、2…ヘッド、3…インクカートリッジ、4…キャリッジ、5…プラテン、6…加熱機構、7…キャリッジ移動機構、8…媒体送り機構、9…ガイドロッド、10…リニアエンコーダ、11…メンテナンスユニット、12…キャップ部材、13…ワイプ部材、16…ノズル列、17…ノズル孔、18…ヘッド本体、19…振動板、20…流路基板、21…ノズル基板、21A…ノズル面、22…流路形成ユニット、23…収容空間、24…駆動ユニット、25…圧電素子、26…固定部材、27…ケーブル、28…内部流路、29…共通インク室、30…インク供給口、31…圧力室、32…島部、33…コンプライアンス部、CONT…制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
C.I.ピグメントイエロー213またはC.I.ピグメントイエロー155と、水と、を含有し、1気圧下相当での沸点が280℃以上のアルキルポリオール類を実質的に含有しないインク組成物と、
前記インク組成物の液滴を吐出するノズル孔を備えたヘッドと、
前記ノズル孔から吐出した液滴を被記録媒体に付着させる前または付着させる時に、前記被記録媒体を加熱する加熱機構と、
を有する、インクジェット記録装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記被記録媒体は、インク非吸収性またはインク低吸収性の被記録媒体である、インクジェット記録装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
さらに、前記インク組成物は、1気圧下相当での沸点が180℃以上250℃以下の水溶性有機溶剤を含有し、
前記インク組成物中の前記水溶性有機溶剤の含有量が15質量%以上30質量%以下である、インクジェット記録装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、
前記インク組成物の質量が20質量%減少した際の当該インク組成物の20℃における粘度[Va(mPa・s)]と、質量減少前の前記インク組成物の20℃における粘度[Vb(mPa・s)]と、の比(Va/Vb)は、1.45以下である、インクジェット記録装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項において、
前記ノズル孔の直径は、15μm以上25μm以下である、インクジェット記録装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項において、
前記ヘッドは、ピエゾ方式のヘッドであり、
前記ノズル孔は、前記インク組成物を3pl以下の液滴量で吐出可能である、インクジェット記録装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか1項において、
前記加熱機構は、前記ヘッドに対向する位置に設けられる、インクジェット記録装置。
【請求項8】
インク組成物の液滴を吐出するノズル孔を備えたヘッドと、
前記ノズル孔から吐出した液滴を被記録媒体に付着させる前または付着させる時に、前記被記録媒体を加熱する加熱機構と、
を有する、インクジェット記録装置に用いるインク組成物であって、
水と、
C.I.ピグメントイエロー213またはC.I.ピグメントイエロー155と、
を含有し、
1気圧下相当での沸点が280℃以上のアルキルポリオール類を実質的に含有しない、インク組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−240300(P2012−240300A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−112346(P2011−112346)
【出願日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】