インクジェット記録装置および画像処理方法
【課題】つなぎヘッドの特有のブロンズむらを低減することが可能なインクジェット記録装置およびブロンズむらを低減するための画像処理方法を提供する。
【解決手段】白点から、第1のインクの色相におけるプライマリ点に至るまでの階調領域において、第1のインクと同じ色相であって、第1のインクよりも色材濃度が低く、且つ第1のインクの凝集を抑制する作用を有する第2のインクを記録する。この時、第1のインクを吐出する第1のつなぎヘッドの重複領域における2つのチップの記録位置ずれに伴う発色のずれが最大になる階調において、第2のインクの記録デューティを前記第1のインクの記録デューティよりも大きくする。これにより、つなぎ部と非つなぎ部の間のブロンズむらを全階調領域で目立たなくすることが可能となる。
【解決手段】白点から、第1のインクの色相におけるプライマリ点に至るまでの階調領域において、第1のインクと同じ色相であって、第1のインクよりも色材濃度が低く、且つ第1のインクの凝集を抑制する作用を有する第2のインクを記録する。この時、第1のインクを吐出する第1のつなぎヘッドの重複領域における2つのチップの記録位置ずれに伴う発色のずれが最大になる階調において、第2のインクの記録デューティを前記第1のインクの記録デューティよりも大きくする。これにより、つなぎ部と非つなぎ部の間のブロンズむらを全階調領域で目立たなくすることが可能となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置及び当該記録装置のための画像処理方法に関する。特に、複数のチップを配列して構成されるつなぎヘッドを用いた場合の、画像上に生じるブロンズのむらを低減するための画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置ではインクを記録媒体に付着して画像を記録するが、出力された画像においては、ブロンズという画像弊害が確認されることがある。ブロンズとは、記録媒体の表面でインクが凝集することが原因で発生すると考えられており、画像における光沢性や発色性のずれとして確認される。よってブロンズは、インクの成分と記録媒体との相互関係に影響を受け、同じ記録媒体であってもブロンズが現れやすいインクもあれば、現れ難いインクもある。
【0003】
特許文献1には、ブラック画像のブロンズを抑えるために、ブラックインクと、シアン、マゼンタおよびイエローのカラーインクを混在させたコンポジットブラックによって、黒画像を記録する方法が開示されている。凝集し易い即ちブロンズの現れやすいブラックインクとともに、凝集し難い即ちブロンズの現れ難いカラーインクを記録媒体の同じ位置に付与することにより、ブラックインクの凝集を抑え、黒画像のブロンズを抑制する効果が説明されている。
【0004】
また、特許文献2には、ブロンズが発生しやすいインクの群で記録を行った後に、ブロンズが発生しにくいイエローインクをオーバーコートして、画像全体のブロンズを抑える方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−138555号公報
【特許文献2】特開2004−181688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年では高速な画像出力のため、例えば図6(a)や(b)に示すような長尺な記録ヘッドが有用されている。複数の吐出口811を配列させて成るチップ601を、更に複数繋ぎ合わせて構成された図6(a)および(b)のようなつなぎヘッドでは、記録媒体或いはつなぎヘッドを相対的に移動させながら、個々の吐出口から所定の周波数でインクを吐出する。このような方法で記録された画像においては、つなぎヘッドのつなぎ部分で記録された領域と非つなぎ部分で記録された領域とが混在するが、これら領域では記録構成が異なっている。具体的には、非つなぎ部分で記録される領域は1つのチップでインクが付与されるが、つなぎ部分で記録される領域では2つのチップによってインクが付与される。よって、つなぎ部分で記録される領域は非つなぎ部分で記録される領域に比べ、チップ間の配置誤差の影響を受け易く、インクの付与に係る時間も長い。そして、このようなつなぎ部分と非つなぎ部分における記録構成の違いは、画像上においてブロンズの違いとなって現われ、ブロンズむらという新たな画像弊害を招致する。
【0007】
上記特許文献1や特許文献2はいずれも、ブロンズを低減する方法を開示している。しかしながら、これら特許文献はいずれも、ブロンズを起こし易いインクで記録する領域にブロンズを起こし難いインクを付与するものであり、同じインクであっても記録構成の違いによってブロンズの程度が異なることに着目してはいない。よって、上述したような、単色でも起こりうるつなぎヘッド特有のブロンズむらを、特許文献1或いは特許文献2の方法を用いて解決することは出来なかった。
【0008】
本発明は、上記問題点を解決するために成されたものである。よってその目的とするところは、つなぎヘッドの特有のブロンズむらを低減することが可能なインクジェット記録装置およびブロンズむらを低減するための画像処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そのために本発明は、同じ種類のインクを吐出する複数の吐出口が所定方向に配列するチップの複数を、前記所定方向とは交差する方向に重複する重複領域を設けながら前記所定方向に配置することにより構成されるつなぎヘッドの複数を用いて、記録媒体に画像を記録するインクジェット記録装置であって、前記複数のつなぎヘッドは、凝集しやすい色材を有する第1のインクを吐出するためのつなぎヘッドと、前記第1のインクと同じ色相であって、前記第1のインクよりも色材濃度が低く、且つ前記第1のインクの凝集を抑制する作用を有する第2のインクを吐出するためのつなぎヘッドを含み、白点から前記第1のインクの色相におけるプライマリ点に至るまでの階調領域において、前記第1のつなぎヘッドの前記重複領域における2つのチップの記録位置ずれに伴う発色のずれが最大になる階調において、前記第2のインクの記録デューティを前記第1のインクの記録デューティよりも大きくするように、前記第1のつなぎヘッドおよび前記第2のつなぎヘッドの記録を制御する制御手段を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、中濃度部におけるつなぎ部と非つなぎ部の間の色相ずれを低減することが出来、つなぎヘッドの特有のブロンズむらを目立たなくすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に適用可能なインクジェット記録装置の概略構成図である。
【図2】インクジェット記録装置と外部機器の接続関係を示すブロック図である。
【図3】制御装置における制御の構成を説明するためのブロック図である。
【図4】CPUが実行する画像処理の工程を説明するためのブロック図である。
【図5】色分解処理を概念的に説明するための図である。
【図6】(a)および(b)は本発明で使用可能なつなぎヘッドの概略図である。
【図7】(a)〜(c)は、2つのチップにおけるつなぎ部と非つなぎ部の記録方法の違いを説明するための図である。
【図8】(a)〜(c)は、記録ヘッドから吐出されたインク滴が、正常な状態で記録媒体に着弾する様子を説明するための模式的断面図である。
【図9】(a)〜(c)は、ブロンズが発生しない定着とブロンズが発生する定着の違いを説明する図である。
【図10】ブロンズの程度を判断するための測色方法例を示す図である。
【図11】(a)〜(c)は、2つのインク滴を隣接して記録した場合と重複して記録した場合とで、ブロンズの違いを説明する図である。
【図12】(a)〜(d)は重複率に応じたブロンズの程度を説明する図である。
【図13】(a)および(b)は、位置関係に製造誤差が生じている2つのチップによって記録した複数ドットの配置状態を示す図である。
【図14】(a)〜(d)は、記録デューティに対するブロンズの現れ方を記録位置ずれの有無で比較する図である。
【図15】白点からシアンのプライマリ点までの、シアンインクとライトシアンインクの記録デューティの一般的な関係を示す図である。
【図16】記録位置ずれが無い場合とある場合での測色した結果を示す図である。
【図17】凝集しやすいインクの領域に凝集しにくいインクを記録した際の定着状態を説明するための図である。
【図18】実施例1におけるシアンインクとライトシアンインクの記録デューティの関係を示す図である。
【図19】実施例2におけるシアンインクとライトシアンインクの記録デューティの関係を示す図である。
【図20】L*a*b*空間において、記録装置が表現可能な色領域を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を、図面を用いて詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明に適用可能なインクジェット記録装置800の概略構成図である。インクタンク610は、シアン(C)、ライトシアン(Lc)、マゼンタ(M)、ライトマゼンタ(Lm)、イエロー(Y)およびブラック(K)の6色分のインクを夫々収容し、記録ヘッド600にこれを供給する。記録ヘッド600は、夫々のインクに対応する記録データに従って、記録媒体630に向けて所定の周波数で各色のインクを吐出する。記録ヘッド600がインクを吐出する最中、記録媒体630が矢印の方向に上記所定の周波数に対応する速度で搬送されることにより、記録媒体630に記録データに従った画像が記録される。記録ヘッド600が記録するための記録データは、外部に接続されたホスト装置から受信した画像データを制御装置620が処理することによって、生成される。
【0014】
図2は、本実施形態のインクジェット記録装置800と、外部機器との接続関係を説明するためのブロック図である。本実施形態のインクジェット記録装置800は、ホスト装置810および光学測定器820に接続されており、これらホスト装置810と光学測定器820も互いに接続している。インクジェット記録装置800は、ホスト装置810から受信した画像データに対し後述する画像処理を施した後、処理後の画像データに基づいて記録媒体にインクを吐出する。光学測定器820は、インクジェット記録装置800が記録した画像を光学的に測定することが出来、測定結果をホスト装置810に送信する。
【0015】
図3は、インクジェット記録装置800に設けられた制御装置620の制御の構成を説明するためのブロック図である。入力インタフェイス621は、記録装置の外部に接続されたホスト装置や、後述する光学測定器、また記録装置に設けられユーザが指示入力可能な操作ユニットからの入力情報を受信する。CPU622は、ROM624に格納された各種プログラムに従い、記録装置全体の制御を行う。例えば、CPU624は、入力インタフェイス621を介してホスト装置から受信した画像データを、ROM624に記憶されているプログラムに従って、記録ヘッド600が記録可能な記録データを生成する。生成した記録データを出力インタフェイス623を介して記録ヘッド600に出力する。ROM624には、上記プログラムのほか、画像処理で使用する色分解テーブル等の各種パラメータも記憶されており、ROM624は書き替え可能な不揮発性ROMとすることも出来る。また、RAM620は、上述した画像処理のほかCPU622が各種処理を実行する際にワークエリアとして利用される。
【0016】
図4は、CPU622が実行する画像処理の工程を説明するためのブロック図である。ホスト装置から入力インタフェイスを介して受信する画像データはRGBの多値(たとえば256値)データである。このRGB多値データは、まず解像度変換部21に入力され、記録装置が記録可能な解像度に変換される。その後、色分解変換部において、RGBの多値データは記録装置で使用するインク色に対応したCLcMLmYKの多値データに変換される。この色分解処理においては、RGBの多値データをCLcMLmYKの多値データに変換するような3次元のルックアップテーブル(色分解テーブル)が参照される。
【0017】
図5は、上記色分解処理を概念的に説明するための図である。色分解処理に入力されるレッド(R)、グリーン(G)およびブルー(B)を3次元の軸として表される空間は、記録装置で使用するシアン(C)、ライトシアン(Lc)、マゼンタ(M)、ライトマゼンタ(Lm)、イエロー(Y)によっても表現できる。また、図中破線で示したブラックからホワイトに向かう無彩色については、ブラックインク(K)によって表現できる。従って、例えば256値のRGBの組み合わせで表される点は、同じように256値のCLcMLmYKの組み合わせによって表すことが出来る。本実施形態では、個々のRGBの組み合わせがCLcMLmYKに1対1で対応付けられるようなルックアップテーブル(LUT)が予め用意されている。そして色分解処理では、このような色分解テーブル20を参照することによって、入力されたRGBの多値データをCLcMLmYKの多値データに変換して出力する。
【0018】
色分解変換部22において変換されたCLcMLmYKの多値データは、その後ハーフトーン処理部23に入力され、色ごとに、記録(1)あるいは非記録(0)を定める2値データに変換される。
【0019】
記録(1)あるいは非記録(0)が定められた各色の2値データは、マスク処理部24に入力される。マスク処理部24では、それぞれの記録データを、実際に記録を行う記録素子(吐出口)に振り分ける。注目する記録データを記録可能な記録素子(吐出口)が複数存在する場合は、これら複数のうち何れかの1つに記録データを振り分ける。具体的な振り分け方法は後述する。
【0020】
図4では、主に解像度変換部21、色分解変換部22およびハーフトーン処理部23からなる画像処理構成を説明したが、このほかにも様々な目的を有する画像処理部を設けることもできる。例えば、入力データRGBで表現可能な色空間と記録装置のインクCLcMLmYKで表現可能な色空間が、図5のように一致しておらず大きさや形状が異なる場合、これらを2つの色空間の整合性を採るための信号値変換を行っても良い。また、CLcMLmYKの多値信号に対し記録媒体に表現される濃度が線形になるようなγ補正を行うことも出来る。更に、これら作用を有する処理を、上記色分解変換部やハーフトーン処理部に併せ持つように構成することも出来る。
【0021】
次に、本実施形態で使用可能なインクの成分について説明する。本実施形態では、一例として、相対的にブロンズの生じやすいシアンインクと、当該シアンインクよりも色材濃度が低く相対的にブロンズの生じ難いライトシアンインクを用いるものとする。このような関係を満たすための各色インクの組み合わせ例を以下に挙げる。
【0022】
(シアン色材)
C.I.ダイレクトブルー86、199、307等のフタロシアニン染料等が用いられる。しかし、本発明の適用可能な条件としては、ライトシアン色材よりも相対的にブロンズしやすければよく、これらに限定されるものではない。
【0023】
(イエロー色材)
以下に示す染料を使用することが出来る。
【0024】
C.I.ダイレクトイエロー:8、11、12、27、28、33、39、44、50、58、85、86、87、88、89、98、100、110、132、173。
【0025】
C.I.アシッドイエロー:1、3、7、11、17、23、25、29、36、38、40、42、44、76、98、99。
【0026】
C.I.ピグメントイエロー:1、2、3、12、13、14、15、16、17、73、74、75、83、93、95、97、98、114、128、138、180。
【0027】
(マゼンタ色材)
以下に示す染料を使用することが出来る。
【0028】
C.I.ダイレクトレッド:2、4、9、11、20、23、24、31、39、46、62、75、79、80、83、89、95、197、201、218、220、224、225、226、227、228、229、230。
【0029】
C.I.アシッドレッド:6、8、9、13、14、18、26、27、32、
35、42、51、52、80、83、87、89、92、106、114、115、133、134、145、158、198、249、265、289。
【0030】
C.I.フードレッド:87、92、94。
【0031】
C.I.ダイレクトバイオレット107。
【0032】
C.I.ピグメントレッド:2、5、7、12、48:2、48:4、57:1、112、122、123、168、184、202。
【0033】
(ブラック色材)
以下に示す染料を使用することが出来る。
【0034】
C.I.ダイレクトブラック:17、19、22、31、32、51、62、71、74、112、113、154、168、195。
【0035】
C.I.アシッドブラック:2、48、51、52、110、115、156。
【0036】
C.I.フードブラック1、2。カーボンブラック。
【0037】
また、上記各色染料を溶かすための溶剤や添加剤は、以下のものを使用することが出来る。まず、水性媒体として、水、及び、水溶性有機溶剤が用いられる。ここで、好ましい水溶性有機溶剤としては、以下の材料が挙げられる。エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、第二ブタノール、第三ブタノール等のC1〜C4アルカノール、N,N−ジメチルホルムアミド又はN,N−ジメチルアセトアミド等のカルボン酸アミド、アセトン。メチルエチルケトン、2−メチル−2−ヒドロキシペンタン−4−オン等のケトン、又は、ケトアルコール、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール。テトラエチレングリコール、1,2−又は1,3−プロピレングリコール、1,2−又は1,4−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール。ジチオグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、アセチレングリコール誘導体、トリメチロールプロパン等のような多価アルコール類、エチレングリコールモノメチル(あるいはエチル)エーテル。ジエチレングリコールモノメチル(あるいはエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノエチル(又はブチル)エーテル等の多価アルコールのアルキルエーテル類、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン。1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチルモルホリンなどの複素環類、ジメチルスルホキシド等の含硫黄化合物、尿素、及び、尿素誘導体などが好適な例として挙げられる。
【0038】
また、本実施形態のインク組成物には、これ以外に、界面活性剤、pH調整剤、キレート剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、紫外線吸収剤、粘度調整剤、消泡剤、及び、水溶性ポリマーなど、種々の添加剤を含有させても良い。
【0039】
図6(a)および(b)は、本実施形態で使用可能な記録ヘッド600を吐出口側から観察した場合の状態を説明するための概略図である。いずれの図においても、y方向に対し、上流側からライトシアン、シアン、ライトマゼンタ、マゼンタ、イエロー、ブラックの順に各色の記録ヘッドが配列し、移動する記録媒体にはこの順番でインクが付与される。個々の記録ヘッドは、所定方向(x方向)に配列する複数のチップによって構成されており、個々のチップは、所定幅のつなぎ領域dを設けるように、x方向と交差するy方向に互い違いにずれながら、配置している。
【0040】
図6(a)では、x方向において、各色の記録ヘッドが同じ位置に配置している。これに対し、同図(b)では、各色の記録ヘッドがx方向にずれて配置している。すなわち、図6(a)の構成の記録ヘッドでは、各色のつなぎ領域が記録媒体の同じ位置に現れるのに対し、同図(b)の構成の記録ヘッドでは、各色のつなぎ領域が記録媒体の異なる位置に現れる。本実施形態で採用する記録ヘッドは、図6(a)および(b)のいずれの構成であってもよい。
【0041】
図7(a)〜(c)は、2つのチップ(チップAおよびチップB)によって構成されるつなぎ部と非つなぎ部の記録方法の違いを説明するための図である。図7(a)を参照するに、チップAおよびチップBは、ここでは簡単のため夫々24個の吐出口を有しており、個々の吐出口はx方向に対し同じ間隔(1画素領域幅)で配列している。チップAとチップBは、x方向に吐出口4つ分の距離だけ重複領域を設ける状態で図のように並んで配列している。重複領域を設けることにより、記録ヘッド製造時においてチップAとチップBとの間に多少の配置誤差が生じたとしても、これらの間にドットが記録されない領域を(白すじ)発生させないようにすることが出来る。
【0042】
図7(a)のようなつなぎヘッドからインクを吐出しつつ記録媒体をy方向へ搬送すると、非つなぎ部Aに対応するy方向に連続する1画素領域幅は、チップAに含まれる1つの吐出口でしか記録出来ない。また、非つなぎ部Bに対応するy方向に連続する1画素領域幅も、チップBに含まれる1つの吐出口によってしか記録出来ない。これに対し、つなぎ部に対応するy方向に連続する1画素領域幅は、チップAとチップBの夫々に含まれる2つの吐出口によって記録を行うことができる。
【0043】
図7(b)は、個々の吐出口の位置と、個々の吐出口が含まれるチップの記録許容率の関係を示す図である。横軸は、チップAからチップBに向けて配列する個々の吐出口の位置を示し、縦軸は各チップの記録許容率を示している。ここで、記録許容率とは、再度図4を参照するに、ハーフトーン処理部23が定めた記録(1)データに対し、マスク処理部24が個々の吐出口(記録素子)に記録データを振り分けた結果、各チップが実際に記録することを許容される割合を示す。
【0044】
例えば、非つなぎ部に対応する1画素領域幅のそれぞれは、1つのチップでしか記録出来ないので、片方のチップの記録許容率が100%、もう片方のチップの記録許容率が0%になっている。一方、つなぎ部に対応する1画素領域幅は、チップAとチップBの2つの吐出口によって交代に記録を行うことが出来るので、ここではどちらのチップにおいても記録許容率が50%になっている。
【0045】
これに対し、図7(c)は、つなぎ部における1画素領域幅の位置によってチップAとチップBの記録許容率を異ならせる例を示している。この例に拠れば、チップAのつなぎ部では、チップBにより近い位置の吐出口ほど記録許容率が低くなるようになっている。また、チップBのつなぎ部では、チップAにより近い位置の吐出口ほど記録許容率が低くなるようになっている。そして、同じ1画素領域においては、チップAとチップBの記録許容率の和が100%になっている。このように、マスク処理部24は、様々な記録許容率でチップAとチップBに記録データを振り分けることが出来る。どのような記録許容率にするにせよ、つなぎ部および非つなぎ部の両方で、1画素領域に対するチップAとチップBの記録許容率の和を100%とすることにより、つなぎ部と非つなぎ部で過不足のないドットの記録を行うことが出来る。
【0046】
但し、つなぎ部と非つなぎ部では、記録構成に多少の違いが現れる。本発明者らは、鋭意検討の結果、つなぎ部と非つなぎ部における記録構成の違いがブロンズの程度を異ならせることのメカニズムを解明した。以下、このようなメカニズムについて順を追って説明する。
【0047】
図8(a)〜(c)は、記録ヘッドから吐出されたインク滴が、正常な状態で記録媒体に着弾する様子を説明するための模式的断面図である。記録ヘッドの1つの吐出口から吐出されたインク滴411は、図8(a)のように記録媒体414に向けて進行する。記録媒体の表面に到着したインク滴は、同図(b)のように、徐々に内部のインク受容層412へと浸透し、同図(c)のように全てのインク滴が吸収されれば、インクの浸透過程は完了する。
【0048】
このとき、インク中の色材と溶剤は、浸透において多少異なる振る舞いをする。インク液中の色材(染料或いは顔料)の殆どは、記録媒体414の表層にあるインク受容層412を構成する粒子に吸着してここに留まり、発色に寄与する。色材の一部はインク受容層412よりも下層に位置する基材413にまで到達するが、このような色材は発色には然程影響しない。一方、インク液中の溶剤は、色材の定着領域を通り越して、インク受容層412よりも下層に広がったり、表層であっても色材の更に周辺に拡散したりするが、その後蒸発する。その結果、表層に位置する色材の発色濃度は溶剤の蒸発に伴ってインク液状態の時よりも更に向上する。このように、インクジェット記録では、インク滴411の着弾、紙面表層での色材の吸着、および溶剤の拡散と蒸発によって定着が完了する。
【0049】
図9(a)〜(c)は、同じインクでありながら、ブロンズが発生しないような定着とブロンズが発生するような定着の違いを説明するための図である。図9(a)は、図8(a)〜(c)で説明したような正常な着弾が行われた結果のシアンのインク滴の定着状態を示す紙面断面図と上面図である。図では、定着したシアンの色材の殆どが記録媒体のインク受容層412に吸着しているが、一部はインク受容層412よりも下層に位置する基材413にまで到達している。この記録面に白色光401を図のように斜めに照射すると、インク受容層412に位置するシアン色材が赤領域の光を吸収するので、反射光402はシアン色となる。
【0050】
一方、図9(b)は、シアンのインク滴が同図(a)の場合よりも多量に着弾された場合の定着状態を示す紙面断面図と上面図である。多量のインク滴が一度に着弾すると、比較的多量のシアンの色材が、インク受容層412に留まらず基材413まで到達する。基材413は、インク受容層ほど多くの色材を吸着することは出来ないので、インク受容層412で多くの色材が滞留し、溶剤の蒸発に伴って当該領域における色材密度が増加し、凝集する。このような色材の凝集は、インク受容層412における浸透速度が十分に迅速であれば起こり難い。しかし、図9(b)のようにインク受容層412の受容能力を超える量のインクが短時間に着弾されると、インク受容層での浸透速度よりも色材が凝集する速度の方が勝り、凝集が促進されてしまうのである。この記録面に白色光401を図のように照射すると、インク受容層412に位置するシアン色材が赤領域の光を十分に吸収しない。その結果、反射光425はシアンから外れた色相を有する赤紫の光となり、目視ではブロンズとして確認される。すなわち、ブロンズとは、記録媒体における色材の凝集速度が、吸収速度を上回っている場合に発生する現象と考えられる。
【0051】
図10は、本実施形態で採用可能なブロンズの程度を判断するための光学測定器820における測色方法例を示す図である。測定対象の記録物404に対し、光源400から白色光401を45°の入射角で照射し、記録物404からの反射光403をセンサ402で受光する。本例において、センサ402は、記録物404に対して垂直(0°)な方向に配置している。記録物404表面に記録されたインクが白色光401の所定の波長を吸収することにより、センサ402が検出する光の色が変化する。なお、図10では45/0型の測定方法の例を示したが、0/45型の測定方法としてもよいし、ブロンズの検出感度に応じて照射および検出の角度を調整したり、複数の照射および検出の結果からブロンズの程度を取得したりすることも出来る。
【0052】
ブロンズは当業者にとっては周知の現象ではあるが、その検出方法は特に規定されてはいない。よって、目視での認識に追従するような検出結果が得られれば、図10に示した測色以外の方法を採用することも出来る。例えば、記録物表面の光沢度や写像性を測定し、ここからブロンズの程度を取得してもよい。
【0053】
図9(c)は、同図(a)および(b)のように記録された画像を図10で示した方法で測色した結果を示す図である。図において、直線はa*b*平面におけるシアンの色相域を示し、座標426は図9(a)のようなシアンインク滴の着弾が正常に行われた際の測色結果、座標427は同図(b)のような着弾が行われた際の測色結果を夫々示している。正常な着弾が行われブロンズが確認されない画像の座標426は、シアンの色相(実線)上に乗っている。これに対し、凝集が起こりブロンズが確認される画像の座標427は、シアンの色相から赤方向に外れた位置にある。ここでは両者の色差を428で示している。
【0054】
以上では、インク滴が小さい場合とインク滴が大きい場合を例に、ブロンズの程度に差が現れることを説明したが、2つのドットが隣り合って記録される場合と重なって記録される場合でも、ブロンズの現れ方は異なってくる。
【0055】
図11(a)〜(c)は、2つのシアンインク滴を記録媒体の隣接する位置に記録した場合と、同じ位置に重複して記録した場合とで、ブロンズに違いが現れる様子を説明する図である。図11(a)は、2つのシアンインク滴を隣接した位置に記録した場合の定着状態を示す紙面断面図と上面図である。この場合、2つのインク滴夫々が、図9(a)と同じように定着される。よって、この記録面に白色光401を照射しても、図9(a)と同様、インク受容層412に位置するシアン色材が赤領域の光を吸収して、シアン色の反射光402が得られる。
【0056】
一方、図11(b)は、2つのシアンインク滴を同じ位置に重ねて記録した場合の定着状態を示す紙面断面図と上面図である。2つのインク滴を同じ位置に記録した場合、これら2つのインク滴を付与するタイミングが殆ど同時ならば、多量のインク滴を一度に着弾した図9(b)の場合と似た様な結果が得られる。すなわち、インク受容層412で多くの色材が凝集してブロンズが確認されるようになる。この記録面に白色光401を照射すると、反射光425はシアンから外れた色相を有する赤紫の光となる。
【0057】
図11(c)は、同図(a)および(b)のように記録された画像を測色した結果を示す図である。図9(c)の場合と同様、2つのドットが重複せずに記録されブロンズが確認されない画像の座標426は、シアンの色相(実線)上に乗っている。これに対し、2つのドットが重複して記録され、凝集が起こりブロンズが確認される画像の座標421は、シアンの色相から赤方向に外れた位置にある。このように、同じ数のドットを記録した場合であってもその記録位置、すなわちドット重複率(=単位面積中におけるドット重なり領域の合計面積の割合)によってブロンズの程度は変化する。
【0058】
図12(a)〜(d)は4つのシアンドットを記録する場合において、重複率によってブロンズの程度すなわち色相ずれの程度が異なる様子を説明するための図である。図12(a)は4つのドットが全く重複しないで記録された場合の上面図、同図(b)は4つのドットがある程度重複しながら記録された場合の上面図、同図(c)は4つのドットが比較的多く重複しながら記録された場合の上面図である。また、図12(d)は、同図(a)〜(c)のように記録された画像を測色した結果を示す図である。図12(a)のように、4つのドットが重複せずに記録された画像の座標451は、シアンの色相(直線)上に乗っている。これに対し、図12(b)や(c)のように、4つのドットが重複しながら記録された画像の座標452および453は、シアンの色相から赤方向に外れた位置にあり、重複領域が大きいほどそのずれ量も大きい。
【0059】
以上のことを踏まえ、本発明者らは、つなぎヘッドにおいては、つなぎ部と非つなぎ部で上述したようなドット重複率に違いが現れることが、ブロンズむらを招致する原因になっていることを見出した。
【0060】
既に図7を用いて説明したように、非つなぎ部に対応する領域では1つのチップでしか記録を行わないが、つなぎ部に対応する領域では2つのチップによって記録を行う。よって、これら2つのチップの位置関係において製造時に配置誤差が生じると、これら2つのチップによって記録されるドット間の配列関係が崩れ、ドット重複率に影響を与える。
【0061】
図13(a)および(b)は、図7に示したチップAとチップBの位置関係に製造誤差が生じている場合、これら2つのチップによって記録した複数ドットの記録媒体での配置状態を示す図である。ここでは、チップAに対し、チップBが傾いて配置されている場合を示し、図13(a)はチップAの非つなぎ部によって記録されたドット群、同図(b)はチップAとチップBのつなぎ部によって記録されたドット群を夫々示している。図13(a)では、同じチップAによって記録された9個のドットが、記録装置の解像度に見合った一定の間隔で配置し、互いに重複することなく記録されているのが判る。一方、図13(b)では、チップAで記録された5個のドット群と、チップBで記録された4個のドット群との間で位置ずれが生じ、ドットが重複している箇所が所々発生しているのが判る。
【0062】
既に図11や図12を用いて説明したように、画像におけるブロンズの程度はドット重複率が多いほど目立つ傾向にある。よって本例の場合、つなぎ部で記録された図13(b)の方が非つなぎ部で記録された同図(a)よりもブロンズが目立ちやすいことになる。
【0063】
ところで、ブロンズに影響するドット重複率は、上記チップ間の位置ずれのみでなく、記録データの値すなわち高濃度領域であるか低濃度領域であるかによっても変化する。言い換えると、互いにずれて配置された2つのチップのつなぎ部で記録する画像であっても、その記録データ(記録密度)によってブロンズの現れ方は変化する。
【0064】
図14(a)〜(d)は、シアンインクの記録デューティ(記録密度)を様々に変化させた場合の、ブロンズの現れ方を、記録位置ずれがない状態で記録した場合と位置ずれがある状態で記録した場合とで、比較するための図である。
【0065】
図14(a)は、記録デューティが12.5%(記録率2/16)の場合のドット記録状態を、記録位置ずれが無い場合とある場合で比較した図である。記録率2/16程度では、少数のドットが疎らに記録される状態であるので、チップ間の配置誤差によってドットの位置関係が多少変化しても、ドットの重複領域に影響を及ぼすことは殆ど無い。すなわち、極低い記録デューティ(ハイライト部)においては、ブロンズむらは発生し難い。
【0066】
図14(b)は、記録デューティが25%(記録率4/16)の場合のドット記録状態を、記録位置ずれが無い場合とある場合で比較した図である。記録率4/16程度では、チップ間の配置誤差によってドットの位置関係が変化すると、ドットの重複領域は図のように僅かに増加する。すなわち、同図(a)で示したハイライト部に比べると、チップ間の配置誤差に起因するブロンズむらは目立ち易くなる。
【0067】
図14(c)は、記録デューティが50%(記録率8/16)の場合のドット記録状態を、記録位置ずれが無い場合とある場合で比較した図である。記録率8/16程度では、チップ間の配置誤差によってドットの位置関係が変化すると、ドットの重複領域は図のように大きく増加する。すなわち、チップ間の配置誤差に起因するブロンズむらは、同図(b)の場合より更に目立ちやすくなる。
【0068】
図14(d)は、記録デューティが100%(記録率16/16)の場合のドット記録状態を、記録位置ずれが無い場合とある場合で比較した図である。記録率16/16程度になると、多数のドットが高密度に記録される状態であるので、チップ間の配置誤差が発生していなくても、ドットの重複領域は元々大きく、ある程度のブロンズが生じている。そして、チップ間の配置誤差によってドットの位置関係が変化しても、ドットの重複領域の面積は大きく変化せず、ブロンズの程度も変化しない。すなわち、同図(b)や(c)の場合に比べると、チップ間の配置誤差に起因するブロンズむらはむしろ目立たない。このように、ブロンズの程度はドットの記録デューティに依存して変化する。
【0069】
ところで、本実施形態のようにシアンインクとライトシアンインクを併用してシアンの色相を表現する系において、上記記録デューティは、色分解変換部22に入力されるRGBによって変化する。
【0070】
図15は、白点(R,G,B)=(255,255,255)からシアンのプライマリ点(R,G,B)=(0,255,255)に至るまでの、シアンの多値データとシアンインクとライトシアンインクの記録デューティの一般的な関係を示す図である。横軸は、色分解処理22で生成されるシアンの多値データ(0−255)を示し、縦軸はそれぞれの多値データに対応して実際に記録媒体に記録される各インクドットの記録デューティ(記録密度)をパーセントで示している。通常は、図15のように、シアンの多値データが低い領域では粒状感を抑えるためにライトシアンインクを積極的に使用し、中間値近傍から徐々にシアンインクの記録デューティを増して行く。また、このようなシアンインクの増加に伴いライトシアンインクの記録デューティは徐々に低下させ、シアンのプライマリ値ではシアンインクが100%、ライトシアンインクが0%になるようにする。
【0071】
図16は、図15の横軸に沿ってシアンの多値データを上昇させていった場合に記録された画像を測色した結果を、記録位置ずれが無い場合とある場合で比較するための図である。図では、記録位置ずれが無い状態の記録ディーティの増加に伴う軌跡を実線で、記録位置ずれが有る状態の軌跡を点線で、夫々示している。これら2本の軌跡を多値データの低い領域から順に比較すると、まずライトシアンインクしか使用しないがハイライト部では、両者は殆ど一致している。信号値が上昇するにつれて、これら2つの軌跡は互いに離れていく。これは、シアンインクの記録が開始されてから後、記録位置ずれに伴うシアンドットの重複率が徐々に大きくなり、ブロンズが目立ちやすくなるからである。443は、両者の軌跡が最も離れる多値データの座標を示し、以後このような座標をブロンズ最大色と称する。
【0072】
更に多値データが上がった高濃度部では、記録位置ずれが無い場合であってもシアンインクの記録デューティが高まることによってブロンズが発生し、最高の記録ディーティ(100%)では、その座標444がシアンの色相から大きく外れている。しかし、記録位置ずれが生じた場合であっても、ブロンズの程度は同等であり、記録位置ずれの有無にかかわらず、座標は殆ど一致している。
【0073】
本発明者らは鋭意検討の結果、つなぎヘッドを用いるインクジェット記録装置では、高濃度部におけるブロンズそのものよりも、むしろ中濃度部におけるつなぎ部と非つなぎ部のブロンズむらの方が、画像上大きな弊害になると判断した。この様な状況においては、主に高濃度部におけるブロンズそのものを抑制するために、ブロンズを起こし易いインクで記録する領域にブロンズを起こし難いインクを付与する特許文献1や特許文献2の構成では、上記課題を解決することは出来ない。本発明者らは、発色を損なわずにブロンズむらを抑制するためには、ブロンズ最大色近傍において、ブロンズを起こし易いインクと同じ色相で且つブロンズを抑制するインクを、ブロンズを起こしやすいインクよりも多く付与することが効果的であると考えた。
【0074】
以下、ブロンズが発生しやすいシアンインクの記録位置にブロンズが発生しにくいライトインクを追加付与することによって、色材の凝集(ブロンズ)を抑える効果について、まず簡単に説明する。
【0075】
図17は、凝集しやすいシアンインク(第1のインク)を記録する領域に凝集しにくいライトシアンインク(第2のインク)を記録した際の定着状態を説明するための図である。一般に、インク受容層を設けた記録媒体では、先行して記録されるインクの色材が受容層の表面に吸着し易く、後続して記録されるインクはその吸着領域を通過しながらも、ここに吸着することが出来ないと、更に下層に回りこむ傾向がある。
【0076】
図17では、ライトシアン→シアン→シアンの順に記録媒体の同じ位置にインク滴を着弾した様子を示す断面図である。この場合、記録媒体ではライトシアン層477→シアン層478→シアン層479の順に図のような層が形成される。先行して形成されたライトシアン層477の後に記録されるシアンインクは、ライトシアン層477の更に外側まで、垂直水平方向に比較的長い距離を移動しなければならず、ここに含まれるシアン色材の凝集も抑制される。もし凝集(ブロンズ)424が発生したとしても記録媒体の深層に存在することになるので、発色には寄与しない。従って、2つのシアンインク滴を同じ位置に記録した図11(b)の場合に比べ、ブロンズの影響が低減された発色を得ることが出来る。そしてこのような、ブロンズ抑制効果は、ライトシアンインクの割合が大きいほど効果がある。
【0077】
本発明では、画像全体の色相を損なうことなくブロンズむらを抑制するために、ブロンズ最大色近傍の記録ディーティにおいて、ブロンズの原因となる色材の凝集を抑制するインクを多めに付与する。すなわち、再度図16を参照するに、ブロンズ最大色443近傍において、凝集し難いライトシアンインクをシアンインクよりも多く付与する。 以下、上述した効果を利用しながらブロンズを低減するための本実施形態の記録装置で実用可能な画像処理方法をいくつかの実施例を例に具体的に説明する。
【実施例1】
【0078】
図18は、実施例1における、白点からシアンのプライマリ点に至るまでの、シアンの多値データとシアンインクとライトシアンインクの記録デューティの関係を図15と同様に示す図である。本実施例では、シアンの多値データの96以上の範囲で、図15の場合ほどライトシアンインクの記録デューティを下げず、シアンインクの記録デューティを上げていない。その結果、シアンのプライマリ値ではシアンインクの記録デューティが100%になっておらず、ライトシアンインクも0%になっていない。
【0079】
特に、ブロンズ最大色であるシアンの多値データが192の場合の記録デューティを2つの図で比較すると、図15ではシアンインクの方がライトシアンインクよりも高いのに対し、図18ではライトシアンインクの方がシアンインクよりも高い。このように本実施例では、ブロンズ最大色において、シアンインクの凝集を抑えるためのライトシアンインクの方が、シアンインクよりも記録デューティが高くなるようにしている。
【0080】
本実施例では、以上説明したような制御を、図4で示した色分解変換部22で執り行う。すなわち、本実施形態の色分解テーブル20は、ブロンズ最大色近傍のRGB信号に対し、通常ではC>Lcに変換されるようなRGB信号であっても、これをC<Lcに変換されるようなデータが記憶されている。そして、色分解変換部22が、このようなテーブルを用いて変換したデータをハーフトーン処理部23へ送ることにより、記録媒体におけるシアン画像ではブロンズむらの低減された画像が得られる。
【実施例2】
【0081】
実施例1では、ブロンズ最大色に特に注目し、この領域近傍でライトシアンインクをシアンインクよりも多く付与する構成とした。これに対し本実施例では、ブロンズ最大色を含みながらも、ブロンズむらが起こりうる全階調領域で、ライトシアンインクの記録デューティをシアンインクよりも大きくする。
【0082】
既に、図16で説明したように、ブロンズに伴う色相ずれは、ライトシアンのみをも用いるハイライト部では発生せず、シアンインクが使用される領域では程度の差はあるが多かれ少なかれ発生している。本実施形態の記録装置では、図16を参照するに、ブロンズに伴う色相ずれは、シアンインクの記録が開始される多値信号値96程度から現れ始めている。よって、実施例2では、多値信号値96以上の全階調領域でシアンインクよりもライトシアンインクの記録デューティが高くなるような制御を行う。
【0083】
図19は、実施例2における、白点からシアンのプライマリ点に至るまでの、シアンの多値データとシアンインクとライトシアンインクの記録デューティの関係を示す図である。本実施例では、多値データ0から255の全域においてライトシアンインクの記録デューティが単調増加している。多値データの96からシアンインクの記録が開始され単調増加しているが、シアンインクの記録デューティはライトシアンより大きくなることは無い。このような構成により、本実施例ではブロンズムむらが少しでも懸念される全領域において、シアンインク凝集を抑制し、ブロンズムラの発生を回避している。
【0084】
本実施例でも、以上説明したような制御を、実施例1と同様に図4で示した色分解変換部22で執り行うことが出来る。色分解変換部22が、図19のような信号値を実現するテーブルを用いて変換したデータをハーフトーン処理部23へ送ることにより、記録媒体上のシアン画像ではライトシアンインクがシアンインクよりも常に多く記録される。その結果、ブロンズむらの低減されたシアン画像が得られる。
【0085】
なお、上述した実施例1および2では、通常はシアンインクおよびライトシアンインクのみを使用する領域すなわちホワイトからシアンにかけての階調領域に注目して説明したが、凝集を起こしやすいシアンインクを使用するのは勿論この領域だけではない。以下にシアンインクを使用する他の色領域を含めた、ブロンズむら低減方法を説明する。
【0086】
図20は、L*a*b*空間において、本実施形態の記録装置が表現可能な色領域(色立体)を示す図である。本実施形態の記録装置は、シアン、ライトシアン、マゼンタ、ライトマゼンタ、イエローおよびブラックのインク付与量をそれぞれ調整することにより、図に示す立体内の色を表現可能とする。図において、ホワイトからシアンに向かう直線は、図18や図19の横軸に相当し、点Qはシアン色材の凝集によってブロンズが最も起こりやすい座標(ブロンズ最大色)を示している。また、ドット重複によってシアン色材が凝集しブロンズが懸念される領域を、ブロンズの程度と共に点Qを中心としたグラデーションで示している。図からも判るように、ブロンズが懸念される領域は、ホワイトからシアンに向かう直線上以外に、グリーン寄りの領域やブルー寄りの領域にも及んでいる。
【0087】
ホワイト、シアン、グリーンの3点で形成される面については、色分解処理において、シアンからグリーンに向かうに従い、イエローの多値データが大きくなるような変換が行われる。即ち、シアンからグリーンに向かうに従って、ブロンズ低減処理とは無関係にイエローインクの付与量が多くなる。同様に、ホワイト、シアン、ブルーの3点で形成される面については、色分解処理において、シアンからブルーに向かうに従って、マゼンタの多値データが大きくなるような変換が行われる。即ち、シアンからブルーに向かうに従って、ブロンズ低減処理とは無関係にマゼンタインクの付与量が多くなる。よって、このような領域ではあえてライトシアンインクを付与しなくても、予めある程度のブロンズ抑制効果は得られている。よって、このような領域については、ブロンズ抑制効果が十分に得られるに不足した分だけ、ブロンズを低減するためのライトシアンインクを付与すればよい。このような付与量が実現されるような色分解テーブル20を予め用意しておくことにより、ブロンズ最大色Qを中心とした色領域において、色相を極端にずらすことなく、ブロンズむらの低減された一様な画像を出力することが可能となる。
【0088】
(その他の実施形態)
以上の実施例では、図16を参照しながら多値データが192程度でブロンズ最大色となる例で説明してきたが、無論本発明はこのような状態に限定されるものではない。ブロンズ最大色とは、図14でも説明したように、記録位置ずれによってシアンドットの重複率の変化が最大となる記録デューティであるので、その値は記録媒体の種類や記録ヘッドの吐出量、インクの成分等によって変化する。どの程度の記録デューティでドット重複率の変化が最大になるにせよ、その領域を含む範囲で凝集を抑制するためのインクが上記実施例のように追加して記録されれば、上述して様な本発明の効果を得ることは出来る。但し、本発明者らが具体的に検討した結果においては、シアンの多値信号値が(192/255)近傍でシアンドット重複率の変化が最も大きくなる場合が多かったので、上記実施例では(192/255)近傍でブロンズ最大色となる例で説明した。
【0089】
また、以上では、主にシアン色材の凝集傾向が強く、シアン画像でブロンズが目立ちやすい場合を例に説明してきたが、無論本発明はこのようなインクに限定されるものではない。インクの種類や組み合わせは上述した組成に限定されるものではなく、様々な組成のものを採用することが出来る。例えば、色材としては染料だけでなく顔料を採用することも出来る。また、色材の凝集を弱めるために、予めインク中にカウンターイオン(Li+や、K+)や、カチオン性の添加剤を加えておくことも出来る。
【0090】
更に、以上では、最も凝集傾向が強いインクをシアンインクとして説明してきたが、無論本発明はこのような状態に限定されるものでは無い。最も凝集傾向が強いインクはマゼンタであっても良く、この場合は以上で説明したシアンインクとライトシアンインクの関係をマゼンタインクとライトマゼンタインクの関係に置き換えればよい。また、シアンインクおよびマゼンタインクの両方でブロンズが生じやすい系において、ライトシアンインクとライトマゼンタインクの両方を用いて上述したような方法を採用することも出来る。更に、以上では、図1で示したような6色インクを搭載する記録装置を例に説明して来たが、例えば、ブラックインクの凝集を抑えるために利用可能なグレーインクを搭載する形態であっても良い。
【0091】
更にまた、以上では、図1に示したフルライン型のインクジェット記録装置を例に説明してきたが、本発明はこのような構成のインクジェット記録装置に限定されるものではない。図6(a)および(b)に示したようなつなぎヘッドは、記録走査と記録媒体の搬送動作とを交互に行いながら画像を完成させる構成のインクジェット記録装置にも搭載することが出来、この場合であっても上記実施例と同様な効果を得ることが出来る。
【符号の説明】
【0092】
20 色分解テーブル
21 解像度変換部
22 色分解変換部
23 ハーフトーン処理部
24 マスク処理部
601 チップ
602 つなぎヘッド
610 記録ヘッド
810 インクジェット記録装置
811 吐出口
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置及び当該記録装置のための画像処理方法に関する。特に、複数のチップを配列して構成されるつなぎヘッドを用いた場合の、画像上に生じるブロンズのむらを低減するための画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置ではインクを記録媒体に付着して画像を記録するが、出力された画像においては、ブロンズという画像弊害が確認されることがある。ブロンズとは、記録媒体の表面でインクが凝集することが原因で発生すると考えられており、画像における光沢性や発色性のずれとして確認される。よってブロンズは、インクの成分と記録媒体との相互関係に影響を受け、同じ記録媒体であってもブロンズが現れやすいインクもあれば、現れ難いインクもある。
【0003】
特許文献1には、ブラック画像のブロンズを抑えるために、ブラックインクと、シアン、マゼンタおよびイエローのカラーインクを混在させたコンポジットブラックによって、黒画像を記録する方法が開示されている。凝集し易い即ちブロンズの現れやすいブラックインクとともに、凝集し難い即ちブロンズの現れ難いカラーインクを記録媒体の同じ位置に付与することにより、ブラックインクの凝集を抑え、黒画像のブロンズを抑制する効果が説明されている。
【0004】
また、特許文献2には、ブロンズが発生しやすいインクの群で記録を行った後に、ブロンズが発生しにくいイエローインクをオーバーコートして、画像全体のブロンズを抑える方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−138555号公報
【特許文献2】特開2004−181688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年では高速な画像出力のため、例えば図6(a)や(b)に示すような長尺な記録ヘッドが有用されている。複数の吐出口811を配列させて成るチップ601を、更に複数繋ぎ合わせて構成された図6(a)および(b)のようなつなぎヘッドでは、記録媒体或いはつなぎヘッドを相対的に移動させながら、個々の吐出口から所定の周波数でインクを吐出する。このような方法で記録された画像においては、つなぎヘッドのつなぎ部分で記録された領域と非つなぎ部分で記録された領域とが混在するが、これら領域では記録構成が異なっている。具体的には、非つなぎ部分で記録される領域は1つのチップでインクが付与されるが、つなぎ部分で記録される領域では2つのチップによってインクが付与される。よって、つなぎ部分で記録される領域は非つなぎ部分で記録される領域に比べ、チップ間の配置誤差の影響を受け易く、インクの付与に係る時間も長い。そして、このようなつなぎ部分と非つなぎ部分における記録構成の違いは、画像上においてブロンズの違いとなって現われ、ブロンズむらという新たな画像弊害を招致する。
【0007】
上記特許文献1や特許文献2はいずれも、ブロンズを低減する方法を開示している。しかしながら、これら特許文献はいずれも、ブロンズを起こし易いインクで記録する領域にブロンズを起こし難いインクを付与するものであり、同じインクであっても記録構成の違いによってブロンズの程度が異なることに着目してはいない。よって、上述したような、単色でも起こりうるつなぎヘッド特有のブロンズむらを、特許文献1或いは特許文献2の方法を用いて解決することは出来なかった。
【0008】
本発明は、上記問題点を解決するために成されたものである。よってその目的とするところは、つなぎヘッドの特有のブロンズむらを低減することが可能なインクジェット記録装置およびブロンズむらを低減するための画像処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そのために本発明は、同じ種類のインクを吐出する複数の吐出口が所定方向に配列するチップの複数を、前記所定方向とは交差する方向に重複する重複領域を設けながら前記所定方向に配置することにより構成されるつなぎヘッドの複数を用いて、記録媒体に画像を記録するインクジェット記録装置であって、前記複数のつなぎヘッドは、凝集しやすい色材を有する第1のインクを吐出するためのつなぎヘッドと、前記第1のインクと同じ色相であって、前記第1のインクよりも色材濃度が低く、且つ前記第1のインクの凝集を抑制する作用を有する第2のインクを吐出するためのつなぎヘッドを含み、白点から前記第1のインクの色相におけるプライマリ点に至るまでの階調領域において、前記第1のつなぎヘッドの前記重複領域における2つのチップの記録位置ずれに伴う発色のずれが最大になる階調において、前記第2のインクの記録デューティを前記第1のインクの記録デューティよりも大きくするように、前記第1のつなぎヘッドおよび前記第2のつなぎヘッドの記録を制御する制御手段を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、中濃度部におけるつなぎ部と非つなぎ部の間の色相ずれを低減することが出来、つなぎヘッドの特有のブロンズむらを目立たなくすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に適用可能なインクジェット記録装置の概略構成図である。
【図2】インクジェット記録装置と外部機器の接続関係を示すブロック図である。
【図3】制御装置における制御の構成を説明するためのブロック図である。
【図4】CPUが実行する画像処理の工程を説明するためのブロック図である。
【図5】色分解処理を概念的に説明するための図である。
【図6】(a)および(b)は本発明で使用可能なつなぎヘッドの概略図である。
【図7】(a)〜(c)は、2つのチップにおけるつなぎ部と非つなぎ部の記録方法の違いを説明するための図である。
【図8】(a)〜(c)は、記録ヘッドから吐出されたインク滴が、正常な状態で記録媒体に着弾する様子を説明するための模式的断面図である。
【図9】(a)〜(c)は、ブロンズが発生しない定着とブロンズが発生する定着の違いを説明する図である。
【図10】ブロンズの程度を判断するための測色方法例を示す図である。
【図11】(a)〜(c)は、2つのインク滴を隣接して記録した場合と重複して記録した場合とで、ブロンズの違いを説明する図である。
【図12】(a)〜(d)は重複率に応じたブロンズの程度を説明する図である。
【図13】(a)および(b)は、位置関係に製造誤差が生じている2つのチップによって記録した複数ドットの配置状態を示す図である。
【図14】(a)〜(d)は、記録デューティに対するブロンズの現れ方を記録位置ずれの有無で比較する図である。
【図15】白点からシアンのプライマリ点までの、シアンインクとライトシアンインクの記録デューティの一般的な関係を示す図である。
【図16】記録位置ずれが無い場合とある場合での測色した結果を示す図である。
【図17】凝集しやすいインクの領域に凝集しにくいインクを記録した際の定着状態を説明するための図である。
【図18】実施例1におけるシアンインクとライトシアンインクの記録デューティの関係を示す図である。
【図19】実施例2におけるシアンインクとライトシアンインクの記録デューティの関係を示す図である。
【図20】L*a*b*空間において、記録装置が表現可能な色領域を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を、図面を用いて詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明に適用可能なインクジェット記録装置800の概略構成図である。インクタンク610は、シアン(C)、ライトシアン(Lc)、マゼンタ(M)、ライトマゼンタ(Lm)、イエロー(Y)およびブラック(K)の6色分のインクを夫々収容し、記録ヘッド600にこれを供給する。記録ヘッド600は、夫々のインクに対応する記録データに従って、記録媒体630に向けて所定の周波数で各色のインクを吐出する。記録ヘッド600がインクを吐出する最中、記録媒体630が矢印の方向に上記所定の周波数に対応する速度で搬送されることにより、記録媒体630に記録データに従った画像が記録される。記録ヘッド600が記録するための記録データは、外部に接続されたホスト装置から受信した画像データを制御装置620が処理することによって、生成される。
【0014】
図2は、本実施形態のインクジェット記録装置800と、外部機器との接続関係を説明するためのブロック図である。本実施形態のインクジェット記録装置800は、ホスト装置810および光学測定器820に接続されており、これらホスト装置810と光学測定器820も互いに接続している。インクジェット記録装置800は、ホスト装置810から受信した画像データに対し後述する画像処理を施した後、処理後の画像データに基づいて記録媒体にインクを吐出する。光学測定器820は、インクジェット記録装置800が記録した画像を光学的に測定することが出来、測定結果をホスト装置810に送信する。
【0015】
図3は、インクジェット記録装置800に設けられた制御装置620の制御の構成を説明するためのブロック図である。入力インタフェイス621は、記録装置の外部に接続されたホスト装置や、後述する光学測定器、また記録装置に設けられユーザが指示入力可能な操作ユニットからの入力情報を受信する。CPU622は、ROM624に格納された各種プログラムに従い、記録装置全体の制御を行う。例えば、CPU624は、入力インタフェイス621を介してホスト装置から受信した画像データを、ROM624に記憶されているプログラムに従って、記録ヘッド600が記録可能な記録データを生成する。生成した記録データを出力インタフェイス623を介して記録ヘッド600に出力する。ROM624には、上記プログラムのほか、画像処理で使用する色分解テーブル等の各種パラメータも記憶されており、ROM624は書き替え可能な不揮発性ROMとすることも出来る。また、RAM620は、上述した画像処理のほかCPU622が各種処理を実行する際にワークエリアとして利用される。
【0016】
図4は、CPU622が実行する画像処理の工程を説明するためのブロック図である。ホスト装置から入力インタフェイスを介して受信する画像データはRGBの多値(たとえば256値)データである。このRGB多値データは、まず解像度変換部21に入力され、記録装置が記録可能な解像度に変換される。その後、色分解変換部において、RGBの多値データは記録装置で使用するインク色に対応したCLcMLmYKの多値データに変換される。この色分解処理においては、RGBの多値データをCLcMLmYKの多値データに変換するような3次元のルックアップテーブル(色分解テーブル)が参照される。
【0017】
図5は、上記色分解処理を概念的に説明するための図である。色分解処理に入力されるレッド(R)、グリーン(G)およびブルー(B)を3次元の軸として表される空間は、記録装置で使用するシアン(C)、ライトシアン(Lc)、マゼンタ(M)、ライトマゼンタ(Lm)、イエロー(Y)によっても表現できる。また、図中破線で示したブラックからホワイトに向かう無彩色については、ブラックインク(K)によって表現できる。従って、例えば256値のRGBの組み合わせで表される点は、同じように256値のCLcMLmYKの組み合わせによって表すことが出来る。本実施形態では、個々のRGBの組み合わせがCLcMLmYKに1対1で対応付けられるようなルックアップテーブル(LUT)が予め用意されている。そして色分解処理では、このような色分解テーブル20を参照することによって、入力されたRGBの多値データをCLcMLmYKの多値データに変換して出力する。
【0018】
色分解変換部22において変換されたCLcMLmYKの多値データは、その後ハーフトーン処理部23に入力され、色ごとに、記録(1)あるいは非記録(0)を定める2値データに変換される。
【0019】
記録(1)あるいは非記録(0)が定められた各色の2値データは、マスク処理部24に入力される。マスク処理部24では、それぞれの記録データを、実際に記録を行う記録素子(吐出口)に振り分ける。注目する記録データを記録可能な記録素子(吐出口)が複数存在する場合は、これら複数のうち何れかの1つに記録データを振り分ける。具体的な振り分け方法は後述する。
【0020】
図4では、主に解像度変換部21、色分解変換部22およびハーフトーン処理部23からなる画像処理構成を説明したが、このほかにも様々な目的を有する画像処理部を設けることもできる。例えば、入力データRGBで表現可能な色空間と記録装置のインクCLcMLmYKで表現可能な色空間が、図5のように一致しておらず大きさや形状が異なる場合、これらを2つの色空間の整合性を採るための信号値変換を行っても良い。また、CLcMLmYKの多値信号に対し記録媒体に表現される濃度が線形になるようなγ補正を行うことも出来る。更に、これら作用を有する処理を、上記色分解変換部やハーフトーン処理部に併せ持つように構成することも出来る。
【0021】
次に、本実施形態で使用可能なインクの成分について説明する。本実施形態では、一例として、相対的にブロンズの生じやすいシアンインクと、当該シアンインクよりも色材濃度が低く相対的にブロンズの生じ難いライトシアンインクを用いるものとする。このような関係を満たすための各色インクの組み合わせ例を以下に挙げる。
【0022】
(シアン色材)
C.I.ダイレクトブルー86、199、307等のフタロシアニン染料等が用いられる。しかし、本発明の適用可能な条件としては、ライトシアン色材よりも相対的にブロンズしやすければよく、これらに限定されるものではない。
【0023】
(イエロー色材)
以下に示す染料を使用することが出来る。
【0024】
C.I.ダイレクトイエロー:8、11、12、27、28、33、39、44、50、58、85、86、87、88、89、98、100、110、132、173。
【0025】
C.I.アシッドイエロー:1、3、7、11、17、23、25、29、36、38、40、42、44、76、98、99。
【0026】
C.I.ピグメントイエロー:1、2、3、12、13、14、15、16、17、73、74、75、83、93、95、97、98、114、128、138、180。
【0027】
(マゼンタ色材)
以下に示す染料を使用することが出来る。
【0028】
C.I.ダイレクトレッド:2、4、9、11、20、23、24、31、39、46、62、75、79、80、83、89、95、197、201、218、220、224、225、226、227、228、229、230。
【0029】
C.I.アシッドレッド:6、8、9、13、14、18、26、27、32、
35、42、51、52、80、83、87、89、92、106、114、115、133、134、145、158、198、249、265、289。
【0030】
C.I.フードレッド:87、92、94。
【0031】
C.I.ダイレクトバイオレット107。
【0032】
C.I.ピグメントレッド:2、5、7、12、48:2、48:4、57:1、112、122、123、168、184、202。
【0033】
(ブラック色材)
以下に示す染料を使用することが出来る。
【0034】
C.I.ダイレクトブラック:17、19、22、31、32、51、62、71、74、112、113、154、168、195。
【0035】
C.I.アシッドブラック:2、48、51、52、110、115、156。
【0036】
C.I.フードブラック1、2。カーボンブラック。
【0037】
また、上記各色染料を溶かすための溶剤や添加剤は、以下のものを使用することが出来る。まず、水性媒体として、水、及び、水溶性有機溶剤が用いられる。ここで、好ましい水溶性有機溶剤としては、以下の材料が挙げられる。エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、第二ブタノール、第三ブタノール等のC1〜C4アルカノール、N,N−ジメチルホルムアミド又はN,N−ジメチルアセトアミド等のカルボン酸アミド、アセトン。メチルエチルケトン、2−メチル−2−ヒドロキシペンタン−4−オン等のケトン、又は、ケトアルコール、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール。テトラエチレングリコール、1,2−又は1,3−プロピレングリコール、1,2−又は1,4−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール。ジチオグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、アセチレングリコール誘導体、トリメチロールプロパン等のような多価アルコール類、エチレングリコールモノメチル(あるいはエチル)エーテル。ジエチレングリコールモノメチル(あるいはエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノエチル(又はブチル)エーテル等の多価アルコールのアルキルエーテル類、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン。1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチルモルホリンなどの複素環類、ジメチルスルホキシド等の含硫黄化合物、尿素、及び、尿素誘導体などが好適な例として挙げられる。
【0038】
また、本実施形態のインク組成物には、これ以外に、界面活性剤、pH調整剤、キレート剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、紫外線吸収剤、粘度調整剤、消泡剤、及び、水溶性ポリマーなど、種々の添加剤を含有させても良い。
【0039】
図6(a)および(b)は、本実施形態で使用可能な記録ヘッド600を吐出口側から観察した場合の状態を説明するための概略図である。いずれの図においても、y方向に対し、上流側からライトシアン、シアン、ライトマゼンタ、マゼンタ、イエロー、ブラックの順に各色の記録ヘッドが配列し、移動する記録媒体にはこの順番でインクが付与される。個々の記録ヘッドは、所定方向(x方向)に配列する複数のチップによって構成されており、個々のチップは、所定幅のつなぎ領域dを設けるように、x方向と交差するy方向に互い違いにずれながら、配置している。
【0040】
図6(a)では、x方向において、各色の記録ヘッドが同じ位置に配置している。これに対し、同図(b)では、各色の記録ヘッドがx方向にずれて配置している。すなわち、図6(a)の構成の記録ヘッドでは、各色のつなぎ領域が記録媒体の同じ位置に現れるのに対し、同図(b)の構成の記録ヘッドでは、各色のつなぎ領域が記録媒体の異なる位置に現れる。本実施形態で採用する記録ヘッドは、図6(a)および(b)のいずれの構成であってもよい。
【0041】
図7(a)〜(c)は、2つのチップ(チップAおよびチップB)によって構成されるつなぎ部と非つなぎ部の記録方法の違いを説明するための図である。図7(a)を参照するに、チップAおよびチップBは、ここでは簡単のため夫々24個の吐出口を有しており、個々の吐出口はx方向に対し同じ間隔(1画素領域幅)で配列している。チップAとチップBは、x方向に吐出口4つ分の距離だけ重複領域を設ける状態で図のように並んで配列している。重複領域を設けることにより、記録ヘッド製造時においてチップAとチップBとの間に多少の配置誤差が生じたとしても、これらの間にドットが記録されない領域を(白すじ)発生させないようにすることが出来る。
【0042】
図7(a)のようなつなぎヘッドからインクを吐出しつつ記録媒体をy方向へ搬送すると、非つなぎ部Aに対応するy方向に連続する1画素領域幅は、チップAに含まれる1つの吐出口でしか記録出来ない。また、非つなぎ部Bに対応するy方向に連続する1画素領域幅も、チップBに含まれる1つの吐出口によってしか記録出来ない。これに対し、つなぎ部に対応するy方向に連続する1画素領域幅は、チップAとチップBの夫々に含まれる2つの吐出口によって記録を行うことができる。
【0043】
図7(b)は、個々の吐出口の位置と、個々の吐出口が含まれるチップの記録許容率の関係を示す図である。横軸は、チップAからチップBに向けて配列する個々の吐出口の位置を示し、縦軸は各チップの記録許容率を示している。ここで、記録許容率とは、再度図4を参照するに、ハーフトーン処理部23が定めた記録(1)データに対し、マスク処理部24が個々の吐出口(記録素子)に記録データを振り分けた結果、各チップが実際に記録することを許容される割合を示す。
【0044】
例えば、非つなぎ部に対応する1画素領域幅のそれぞれは、1つのチップでしか記録出来ないので、片方のチップの記録許容率が100%、もう片方のチップの記録許容率が0%になっている。一方、つなぎ部に対応する1画素領域幅は、チップAとチップBの2つの吐出口によって交代に記録を行うことが出来るので、ここではどちらのチップにおいても記録許容率が50%になっている。
【0045】
これに対し、図7(c)は、つなぎ部における1画素領域幅の位置によってチップAとチップBの記録許容率を異ならせる例を示している。この例に拠れば、チップAのつなぎ部では、チップBにより近い位置の吐出口ほど記録許容率が低くなるようになっている。また、チップBのつなぎ部では、チップAにより近い位置の吐出口ほど記録許容率が低くなるようになっている。そして、同じ1画素領域においては、チップAとチップBの記録許容率の和が100%になっている。このように、マスク処理部24は、様々な記録許容率でチップAとチップBに記録データを振り分けることが出来る。どのような記録許容率にするにせよ、つなぎ部および非つなぎ部の両方で、1画素領域に対するチップAとチップBの記録許容率の和を100%とすることにより、つなぎ部と非つなぎ部で過不足のないドットの記録を行うことが出来る。
【0046】
但し、つなぎ部と非つなぎ部では、記録構成に多少の違いが現れる。本発明者らは、鋭意検討の結果、つなぎ部と非つなぎ部における記録構成の違いがブロンズの程度を異ならせることのメカニズムを解明した。以下、このようなメカニズムについて順を追って説明する。
【0047】
図8(a)〜(c)は、記録ヘッドから吐出されたインク滴が、正常な状態で記録媒体に着弾する様子を説明するための模式的断面図である。記録ヘッドの1つの吐出口から吐出されたインク滴411は、図8(a)のように記録媒体414に向けて進行する。記録媒体の表面に到着したインク滴は、同図(b)のように、徐々に内部のインク受容層412へと浸透し、同図(c)のように全てのインク滴が吸収されれば、インクの浸透過程は完了する。
【0048】
このとき、インク中の色材と溶剤は、浸透において多少異なる振る舞いをする。インク液中の色材(染料或いは顔料)の殆どは、記録媒体414の表層にあるインク受容層412を構成する粒子に吸着してここに留まり、発色に寄与する。色材の一部はインク受容層412よりも下層に位置する基材413にまで到達するが、このような色材は発色には然程影響しない。一方、インク液中の溶剤は、色材の定着領域を通り越して、インク受容層412よりも下層に広がったり、表層であっても色材の更に周辺に拡散したりするが、その後蒸発する。その結果、表層に位置する色材の発色濃度は溶剤の蒸発に伴ってインク液状態の時よりも更に向上する。このように、インクジェット記録では、インク滴411の着弾、紙面表層での色材の吸着、および溶剤の拡散と蒸発によって定着が完了する。
【0049】
図9(a)〜(c)は、同じインクでありながら、ブロンズが発生しないような定着とブロンズが発生するような定着の違いを説明するための図である。図9(a)は、図8(a)〜(c)で説明したような正常な着弾が行われた結果のシアンのインク滴の定着状態を示す紙面断面図と上面図である。図では、定着したシアンの色材の殆どが記録媒体のインク受容層412に吸着しているが、一部はインク受容層412よりも下層に位置する基材413にまで到達している。この記録面に白色光401を図のように斜めに照射すると、インク受容層412に位置するシアン色材が赤領域の光を吸収するので、反射光402はシアン色となる。
【0050】
一方、図9(b)は、シアンのインク滴が同図(a)の場合よりも多量に着弾された場合の定着状態を示す紙面断面図と上面図である。多量のインク滴が一度に着弾すると、比較的多量のシアンの色材が、インク受容層412に留まらず基材413まで到達する。基材413は、インク受容層ほど多くの色材を吸着することは出来ないので、インク受容層412で多くの色材が滞留し、溶剤の蒸発に伴って当該領域における色材密度が増加し、凝集する。このような色材の凝集は、インク受容層412における浸透速度が十分に迅速であれば起こり難い。しかし、図9(b)のようにインク受容層412の受容能力を超える量のインクが短時間に着弾されると、インク受容層での浸透速度よりも色材が凝集する速度の方が勝り、凝集が促進されてしまうのである。この記録面に白色光401を図のように照射すると、インク受容層412に位置するシアン色材が赤領域の光を十分に吸収しない。その結果、反射光425はシアンから外れた色相を有する赤紫の光となり、目視ではブロンズとして確認される。すなわち、ブロンズとは、記録媒体における色材の凝集速度が、吸収速度を上回っている場合に発生する現象と考えられる。
【0051】
図10は、本実施形態で採用可能なブロンズの程度を判断するための光学測定器820における測色方法例を示す図である。測定対象の記録物404に対し、光源400から白色光401を45°の入射角で照射し、記録物404からの反射光403をセンサ402で受光する。本例において、センサ402は、記録物404に対して垂直(0°)な方向に配置している。記録物404表面に記録されたインクが白色光401の所定の波長を吸収することにより、センサ402が検出する光の色が変化する。なお、図10では45/0型の測定方法の例を示したが、0/45型の測定方法としてもよいし、ブロンズの検出感度に応じて照射および検出の角度を調整したり、複数の照射および検出の結果からブロンズの程度を取得したりすることも出来る。
【0052】
ブロンズは当業者にとっては周知の現象ではあるが、その検出方法は特に規定されてはいない。よって、目視での認識に追従するような検出結果が得られれば、図10に示した測色以外の方法を採用することも出来る。例えば、記録物表面の光沢度や写像性を測定し、ここからブロンズの程度を取得してもよい。
【0053】
図9(c)は、同図(a)および(b)のように記録された画像を図10で示した方法で測色した結果を示す図である。図において、直線はa*b*平面におけるシアンの色相域を示し、座標426は図9(a)のようなシアンインク滴の着弾が正常に行われた際の測色結果、座標427は同図(b)のような着弾が行われた際の測色結果を夫々示している。正常な着弾が行われブロンズが確認されない画像の座標426は、シアンの色相(実線)上に乗っている。これに対し、凝集が起こりブロンズが確認される画像の座標427は、シアンの色相から赤方向に外れた位置にある。ここでは両者の色差を428で示している。
【0054】
以上では、インク滴が小さい場合とインク滴が大きい場合を例に、ブロンズの程度に差が現れることを説明したが、2つのドットが隣り合って記録される場合と重なって記録される場合でも、ブロンズの現れ方は異なってくる。
【0055】
図11(a)〜(c)は、2つのシアンインク滴を記録媒体の隣接する位置に記録した場合と、同じ位置に重複して記録した場合とで、ブロンズに違いが現れる様子を説明する図である。図11(a)は、2つのシアンインク滴を隣接した位置に記録した場合の定着状態を示す紙面断面図と上面図である。この場合、2つのインク滴夫々が、図9(a)と同じように定着される。よって、この記録面に白色光401を照射しても、図9(a)と同様、インク受容層412に位置するシアン色材が赤領域の光を吸収して、シアン色の反射光402が得られる。
【0056】
一方、図11(b)は、2つのシアンインク滴を同じ位置に重ねて記録した場合の定着状態を示す紙面断面図と上面図である。2つのインク滴を同じ位置に記録した場合、これら2つのインク滴を付与するタイミングが殆ど同時ならば、多量のインク滴を一度に着弾した図9(b)の場合と似た様な結果が得られる。すなわち、インク受容層412で多くの色材が凝集してブロンズが確認されるようになる。この記録面に白色光401を照射すると、反射光425はシアンから外れた色相を有する赤紫の光となる。
【0057】
図11(c)は、同図(a)および(b)のように記録された画像を測色した結果を示す図である。図9(c)の場合と同様、2つのドットが重複せずに記録されブロンズが確認されない画像の座標426は、シアンの色相(実線)上に乗っている。これに対し、2つのドットが重複して記録され、凝集が起こりブロンズが確認される画像の座標421は、シアンの色相から赤方向に外れた位置にある。このように、同じ数のドットを記録した場合であってもその記録位置、すなわちドット重複率(=単位面積中におけるドット重なり領域の合計面積の割合)によってブロンズの程度は変化する。
【0058】
図12(a)〜(d)は4つのシアンドットを記録する場合において、重複率によってブロンズの程度すなわち色相ずれの程度が異なる様子を説明するための図である。図12(a)は4つのドットが全く重複しないで記録された場合の上面図、同図(b)は4つのドットがある程度重複しながら記録された場合の上面図、同図(c)は4つのドットが比較的多く重複しながら記録された場合の上面図である。また、図12(d)は、同図(a)〜(c)のように記録された画像を測色した結果を示す図である。図12(a)のように、4つのドットが重複せずに記録された画像の座標451は、シアンの色相(直線)上に乗っている。これに対し、図12(b)や(c)のように、4つのドットが重複しながら記録された画像の座標452および453は、シアンの色相から赤方向に外れた位置にあり、重複領域が大きいほどそのずれ量も大きい。
【0059】
以上のことを踏まえ、本発明者らは、つなぎヘッドにおいては、つなぎ部と非つなぎ部で上述したようなドット重複率に違いが現れることが、ブロンズむらを招致する原因になっていることを見出した。
【0060】
既に図7を用いて説明したように、非つなぎ部に対応する領域では1つのチップでしか記録を行わないが、つなぎ部に対応する領域では2つのチップによって記録を行う。よって、これら2つのチップの位置関係において製造時に配置誤差が生じると、これら2つのチップによって記録されるドット間の配列関係が崩れ、ドット重複率に影響を与える。
【0061】
図13(a)および(b)は、図7に示したチップAとチップBの位置関係に製造誤差が生じている場合、これら2つのチップによって記録した複数ドットの記録媒体での配置状態を示す図である。ここでは、チップAに対し、チップBが傾いて配置されている場合を示し、図13(a)はチップAの非つなぎ部によって記録されたドット群、同図(b)はチップAとチップBのつなぎ部によって記録されたドット群を夫々示している。図13(a)では、同じチップAによって記録された9個のドットが、記録装置の解像度に見合った一定の間隔で配置し、互いに重複することなく記録されているのが判る。一方、図13(b)では、チップAで記録された5個のドット群と、チップBで記録された4個のドット群との間で位置ずれが生じ、ドットが重複している箇所が所々発生しているのが判る。
【0062】
既に図11や図12を用いて説明したように、画像におけるブロンズの程度はドット重複率が多いほど目立つ傾向にある。よって本例の場合、つなぎ部で記録された図13(b)の方が非つなぎ部で記録された同図(a)よりもブロンズが目立ちやすいことになる。
【0063】
ところで、ブロンズに影響するドット重複率は、上記チップ間の位置ずれのみでなく、記録データの値すなわち高濃度領域であるか低濃度領域であるかによっても変化する。言い換えると、互いにずれて配置された2つのチップのつなぎ部で記録する画像であっても、その記録データ(記録密度)によってブロンズの現れ方は変化する。
【0064】
図14(a)〜(d)は、シアンインクの記録デューティ(記録密度)を様々に変化させた場合の、ブロンズの現れ方を、記録位置ずれがない状態で記録した場合と位置ずれがある状態で記録した場合とで、比較するための図である。
【0065】
図14(a)は、記録デューティが12.5%(記録率2/16)の場合のドット記録状態を、記録位置ずれが無い場合とある場合で比較した図である。記録率2/16程度では、少数のドットが疎らに記録される状態であるので、チップ間の配置誤差によってドットの位置関係が多少変化しても、ドットの重複領域に影響を及ぼすことは殆ど無い。すなわち、極低い記録デューティ(ハイライト部)においては、ブロンズむらは発生し難い。
【0066】
図14(b)は、記録デューティが25%(記録率4/16)の場合のドット記録状態を、記録位置ずれが無い場合とある場合で比較した図である。記録率4/16程度では、チップ間の配置誤差によってドットの位置関係が変化すると、ドットの重複領域は図のように僅かに増加する。すなわち、同図(a)で示したハイライト部に比べると、チップ間の配置誤差に起因するブロンズむらは目立ち易くなる。
【0067】
図14(c)は、記録デューティが50%(記録率8/16)の場合のドット記録状態を、記録位置ずれが無い場合とある場合で比較した図である。記録率8/16程度では、チップ間の配置誤差によってドットの位置関係が変化すると、ドットの重複領域は図のように大きく増加する。すなわち、チップ間の配置誤差に起因するブロンズむらは、同図(b)の場合より更に目立ちやすくなる。
【0068】
図14(d)は、記録デューティが100%(記録率16/16)の場合のドット記録状態を、記録位置ずれが無い場合とある場合で比較した図である。記録率16/16程度になると、多数のドットが高密度に記録される状態であるので、チップ間の配置誤差が発生していなくても、ドットの重複領域は元々大きく、ある程度のブロンズが生じている。そして、チップ間の配置誤差によってドットの位置関係が変化しても、ドットの重複領域の面積は大きく変化せず、ブロンズの程度も変化しない。すなわち、同図(b)や(c)の場合に比べると、チップ間の配置誤差に起因するブロンズむらはむしろ目立たない。このように、ブロンズの程度はドットの記録デューティに依存して変化する。
【0069】
ところで、本実施形態のようにシアンインクとライトシアンインクを併用してシアンの色相を表現する系において、上記記録デューティは、色分解変換部22に入力されるRGBによって変化する。
【0070】
図15は、白点(R,G,B)=(255,255,255)からシアンのプライマリ点(R,G,B)=(0,255,255)に至るまでの、シアンの多値データとシアンインクとライトシアンインクの記録デューティの一般的な関係を示す図である。横軸は、色分解処理22で生成されるシアンの多値データ(0−255)を示し、縦軸はそれぞれの多値データに対応して実際に記録媒体に記録される各インクドットの記録デューティ(記録密度)をパーセントで示している。通常は、図15のように、シアンの多値データが低い領域では粒状感を抑えるためにライトシアンインクを積極的に使用し、中間値近傍から徐々にシアンインクの記録デューティを増して行く。また、このようなシアンインクの増加に伴いライトシアンインクの記録デューティは徐々に低下させ、シアンのプライマリ値ではシアンインクが100%、ライトシアンインクが0%になるようにする。
【0071】
図16は、図15の横軸に沿ってシアンの多値データを上昇させていった場合に記録された画像を測色した結果を、記録位置ずれが無い場合とある場合で比較するための図である。図では、記録位置ずれが無い状態の記録ディーティの増加に伴う軌跡を実線で、記録位置ずれが有る状態の軌跡を点線で、夫々示している。これら2本の軌跡を多値データの低い領域から順に比較すると、まずライトシアンインクしか使用しないがハイライト部では、両者は殆ど一致している。信号値が上昇するにつれて、これら2つの軌跡は互いに離れていく。これは、シアンインクの記録が開始されてから後、記録位置ずれに伴うシアンドットの重複率が徐々に大きくなり、ブロンズが目立ちやすくなるからである。443は、両者の軌跡が最も離れる多値データの座標を示し、以後このような座標をブロンズ最大色と称する。
【0072】
更に多値データが上がった高濃度部では、記録位置ずれが無い場合であってもシアンインクの記録デューティが高まることによってブロンズが発生し、最高の記録ディーティ(100%)では、その座標444がシアンの色相から大きく外れている。しかし、記録位置ずれが生じた場合であっても、ブロンズの程度は同等であり、記録位置ずれの有無にかかわらず、座標は殆ど一致している。
【0073】
本発明者らは鋭意検討の結果、つなぎヘッドを用いるインクジェット記録装置では、高濃度部におけるブロンズそのものよりも、むしろ中濃度部におけるつなぎ部と非つなぎ部のブロンズむらの方が、画像上大きな弊害になると判断した。この様な状況においては、主に高濃度部におけるブロンズそのものを抑制するために、ブロンズを起こし易いインクで記録する領域にブロンズを起こし難いインクを付与する特許文献1や特許文献2の構成では、上記課題を解決することは出来ない。本発明者らは、発色を損なわずにブロンズむらを抑制するためには、ブロンズ最大色近傍において、ブロンズを起こし易いインクと同じ色相で且つブロンズを抑制するインクを、ブロンズを起こしやすいインクよりも多く付与することが効果的であると考えた。
【0074】
以下、ブロンズが発生しやすいシアンインクの記録位置にブロンズが発生しにくいライトインクを追加付与することによって、色材の凝集(ブロンズ)を抑える効果について、まず簡単に説明する。
【0075】
図17は、凝集しやすいシアンインク(第1のインク)を記録する領域に凝集しにくいライトシアンインク(第2のインク)を記録した際の定着状態を説明するための図である。一般に、インク受容層を設けた記録媒体では、先行して記録されるインクの色材が受容層の表面に吸着し易く、後続して記録されるインクはその吸着領域を通過しながらも、ここに吸着することが出来ないと、更に下層に回りこむ傾向がある。
【0076】
図17では、ライトシアン→シアン→シアンの順に記録媒体の同じ位置にインク滴を着弾した様子を示す断面図である。この場合、記録媒体ではライトシアン層477→シアン層478→シアン層479の順に図のような層が形成される。先行して形成されたライトシアン層477の後に記録されるシアンインクは、ライトシアン層477の更に外側まで、垂直水平方向に比較的長い距離を移動しなければならず、ここに含まれるシアン色材の凝集も抑制される。もし凝集(ブロンズ)424が発生したとしても記録媒体の深層に存在することになるので、発色には寄与しない。従って、2つのシアンインク滴を同じ位置に記録した図11(b)の場合に比べ、ブロンズの影響が低減された発色を得ることが出来る。そしてこのような、ブロンズ抑制効果は、ライトシアンインクの割合が大きいほど効果がある。
【0077】
本発明では、画像全体の色相を損なうことなくブロンズむらを抑制するために、ブロンズ最大色近傍の記録ディーティにおいて、ブロンズの原因となる色材の凝集を抑制するインクを多めに付与する。すなわち、再度図16を参照するに、ブロンズ最大色443近傍において、凝集し難いライトシアンインクをシアンインクよりも多く付与する。 以下、上述した効果を利用しながらブロンズを低減するための本実施形態の記録装置で実用可能な画像処理方法をいくつかの実施例を例に具体的に説明する。
【実施例1】
【0078】
図18は、実施例1における、白点からシアンのプライマリ点に至るまでの、シアンの多値データとシアンインクとライトシアンインクの記録デューティの関係を図15と同様に示す図である。本実施例では、シアンの多値データの96以上の範囲で、図15の場合ほどライトシアンインクの記録デューティを下げず、シアンインクの記録デューティを上げていない。その結果、シアンのプライマリ値ではシアンインクの記録デューティが100%になっておらず、ライトシアンインクも0%になっていない。
【0079】
特に、ブロンズ最大色であるシアンの多値データが192の場合の記録デューティを2つの図で比較すると、図15ではシアンインクの方がライトシアンインクよりも高いのに対し、図18ではライトシアンインクの方がシアンインクよりも高い。このように本実施例では、ブロンズ最大色において、シアンインクの凝集を抑えるためのライトシアンインクの方が、シアンインクよりも記録デューティが高くなるようにしている。
【0080】
本実施例では、以上説明したような制御を、図4で示した色分解変換部22で執り行う。すなわち、本実施形態の色分解テーブル20は、ブロンズ最大色近傍のRGB信号に対し、通常ではC>Lcに変換されるようなRGB信号であっても、これをC<Lcに変換されるようなデータが記憶されている。そして、色分解変換部22が、このようなテーブルを用いて変換したデータをハーフトーン処理部23へ送ることにより、記録媒体におけるシアン画像ではブロンズむらの低減された画像が得られる。
【実施例2】
【0081】
実施例1では、ブロンズ最大色に特に注目し、この領域近傍でライトシアンインクをシアンインクよりも多く付与する構成とした。これに対し本実施例では、ブロンズ最大色を含みながらも、ブロンズむらが起こりうる全階調領域で、ライトシアンインクの記録デューティをシアンインクよりも大きくする。
【0082】
既に、図16で説明したように、ブロンズに伴う色相ずれは、ライトシアンのみをも用いるハイライト部では発生せず、シアンインクが使用される領域では程度の差はあるが多かれ少なかれ発生している。本実施形態の記録装置では、図16を参照するに、ブロンズに伴う色相ずれは、シアンインクの記録が開始される多値信号値96程度から現れ始めている。よって、実施例2では、多値信号値96以上の全階調領域でシアンインクよりもライトシアンインクの記録デューティが高くなるような制御を行う。
【0083】
図19は、実施例2における、白点からシアンのプライマリ点に至るまでの、シアンの多値データとシアンインクとライトシアンインクの記録デューティの関係を示す図である。本実施例では、多値データ0から255の全域においてライトシアンインクの記録デューティが単調増加している。多値データの96からシアンインクの記録が開始され単調増加しているが、シアンインクの記録デューティはライトシアンより大きくなることは無い。このような構成により、本実施例ではブロンズムむらが少しでも懸念される全領域において、シアンインク凝集を抑制し、ブロンズムラの発生を回避している。
【0084】
本実施例でも、以上説明したような制御を、実施例1と同様に図4で示した色分解変換部22で執り行うことが出来る。色分解変換部22が、図19のような信号値を実現するテーブルを用いて変換したデータをハーフトーン処理部23へ送ることにより、記録媒体上のシアン画像ではライトシアンインクがシアンインクよりも常に多く記録される。その結果、ブロンズむらの低減されたシアン画像が得られる。
【0085】
なお、上述した実施例1および2では、通常はシアンインクおよびライトシアンインクのみを使用する領域すなわちホワイトからシアンにかけての階調領域に注目して説明したが、凝集を起こしやすいシアンインクを使用するのは勿論この領域だけではない。以下にシアンインクを使用する他の色領域を含めた、ブロンズむら低減方法を説明する。
【0086】
図20は、L*a*b*空間において、本実施形態の記録装置が表現可能な色領域(色立体)を示す図である。本実施形態の記録装置は、シアン、ライトシアン、マゼンタ、ライトマゼンタ、イエローおよびブラックのインク付与量をそれぞれ調整することにより、図に示す立体内の色を表現可能とする。図において、ホワイトからシアンに向かう直線は、図18や図19の横軸に相当し、点Qはシアン色材の凝集によってブロンズが最も起こりやすい座標(ブロンズ最大色)を示している。また、ドット重複によってシアン色材が凝集しブロンズが懸念される領域を、ブロンズの程度と共に点Qを中心としたグラデーションで示している。図からも判るように、ブロンズが懸念される領域は、ホワイトからシアンに向かう直線上以外に、グリーン寄りの領域やブルー寄りの領域にも及んでいる。
【0087】
ホワイト、シアン、グリーンの3点で形成される面については、色分解処理において、シアンからグリーンに向かうに従い、イエローの多値データが大きくなるような変換が行われる。即ち、シアンからグリーンに向かうに従って、ブロンズ低減処理とは無関係にイエローインクの付与量が多くなる。同様に、ホワイト、シアン、ブルーの3点で形成される面については、色分解処理において、シアンからブルーに向かうに従って、マゼンタの多値データが大きくなるような変換が行われる。即ち、シアンからブルーに向かうに従って、ブロンズ低減処理とは無関係にマゼンタインクの付与量が多くなる。よって、このような領域ではあえてライトシアンインクを付与しなくても、予めある程度のブロンズ抑制効果は得られている。よって、このような領域については、ブロンズ抑制効果が十分に得られるに不足した分だけ、ブロンズを低減するためのライトシアンインクを付与すればよい。このような付与量が実現されるような色分解テーブル20を予め用意しておくことにより、ブロンズ最大色Qを中心とした色領域において、色相を極端にずらすことなく、ブロンズむらの低減された一様な画像を出力することが可能となる。
【0088】
(その他の実施形態)
以上の実施例では、図16を参照しながら多値データが192程度でブロンズ最大色となる例で説明してきたが、無論本発明はこのような状態に限定されるものではない。ブロンズ最大色とは、図14でも説明したように、記録位置ずれによってシアンドットの重複率の変化が最大となる記録デューティであるので、その値は記録媒体の種類や記録ヘッドの吐出量、インクの成分等によって変化する。どの程度の記録デューティでドット重複率の変化が最大になるにせよ、その領域を含む範囲で凝集を抑制するためのインクが上記実施例のように追加して記録されれば、上述して様な本発明の効果を得ることは出来る。但し、本発明者らが具体的に検討した結果においては、シアンの多値信号値が(192/255)近傍でシアンドット重複率の変化が最も大きくなる場合が多かったので、上記実施例では(192/255)近傍でブロンズ最大色となる例で説明した。
【0089】
また、以上では、主にシアン色材の凝集傾向が強く、シアン画像でブロンズが目立ちやすい場合を例に説明してきたが、無論本発明はこのようなインクに限定されるものではない。インクの種類や組み合わせは上述した組成に限定されるものではなく、様々な組成のものを採用することが出来る。例えば、色材としては染料だけでなく顔料を採用することも出来る。また、色材の凝集を弱めるために、予めインク中にカウンターイオン(Li+や、K+)や、カチオン性の添加剤を加えておくことも出来る。
【0090】
更に、以上では、最も凝集傾向が強いインクをシアンインクとして説明してきたが、無論本発明はこのような状態に限定されるものでは無い。最も凝集傾向が強いインクはマゼンタであっても良く、この場合は以上で説明したシアンインクとライトシアンインクの関係をマゼンタインクとライトマゼンタインクの関係に置き換えればよい。また、シアンインクおよびマゼンタインクの両方でブロンズが生じやすい系において、ライトシアンインクとライトマゼンタインクの両方を用いて上述したような方法を採用することも出来る。更に、以上では、図1で示したような6色インクを搭載する記録装置を例に説明して来たが、例えば、ブラックインクの凝集を抑えるために利用可能なグレーインクを搭載する形態であっても良い。
【0091】
更にまた、以上では、図1に示したフルライン型のインクジェット記録装置を例に説明してきたが、本発明はこのような構成のインクジェット記録装置に限定されるものではない。図6(a)および(b)に示したようなつなぎヘッドは、記録走査と記録媒体の搬送動作とを交互に行いながら画像を完成させる構成のインクジェット記録装置にも搭載することが出来、この場合であっても上記実施例と同様な効果を得ることが出来る。
【符号の説明】
【0092】
20 色分解テーブル
21 解像度変換部
22 色分解変換部
23 ハーフトーン処理部
24 マスク処理部
601 チップ
602 つなぎヘッド
610 記録ヘッド
810 インクジェット記録装置
811 吐出口
【特許請求の範囲】
【請求項1】
同じ種類のインクを吐出する複数の吐出口が所定方向に配列するチップの複数を、前記所定方向とは交差する方向に重複する重複領域を設けながら前記所定方向に配置することにより構成されるつなぎヘッドの複数を用いて、記録媒体に画像を記録するインクジェット記録装置であって、
前記複数のつなぎヘッドは、凝集しやすい色材を有する第1のインクを吐出するためのつなぎヘッドと、前記第1のインクと同じ色相であって、前記第1のインクよりも色材濃度が低く、且つ前記第1のインクの凝集を抑制する作用を有する第2のインクを吐出するためのつなぎヘッドを含み、
白点から前記第1のインクの色相におけるプライマリ点に至るまでの階調領域において、前記第1のつなぎヘッドの前記重複領域における2つのチップの記録位置ずれに伴う発色のずれが最大になる階調において、前記第2のインクの記録デューティを前記第1のインクの記録デューティよりも大きくするように、前記第1のつなぎヘッドおよび前記第2のつなぎヘッドの記録を制御する制御手段を有することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記第1のインクはシアンインクであり前記第2のインクはライトシアンインクであることを特徴とする請求項1および2のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記第1のインクはマゼンタインクであり前記第2のインクはライトマゼンタインクであることを特徴とする請求項1および2のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記第1のインクはブラックインクであり前記第2のインクはグレーインクであることを特徴とする請求項1および2のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記制御手段は、白点から前記第1のインクの色相におけるプライマリ点に至るまでの全階調領域において、前記第2のインクの記録デューティを前記第1のインクの記録デューティよりも大きくするように、前記第1のつなぎヘッドおよび前記第2のつなぎヘッドの記録を制御することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
同じ種類のインクを吐出する複数の吐出口が所定方向に配列するチップの複数を、前記所定方向とは交差する方向に重複する重複領域を設けながら前記所定方向に配置することにより構成されるつなぎヘッドの複数を用いて、記録媒体に画像を記録するインクジェット記録装置のための画像処理方法であって、
前記複数のつなぎヘッドは、凝集しやすい色材を有する第1のインクを吐出するためのつなぎヘッドと、前記第1のインクと同じ色相であって、前記第1のインクよりも色材濃度が低く、且つ前記第1のインクの凝集を抑制する作用を有する第2のインクを吐出するためのつなぎヘッドを含み、
白点から前記第1のインクの色相におけるプライマリ点に至るまでの階調領域において、前記第1のつなぎヘッドの前記重複領域における2つのチップの記録位置ずれに伴う発色のずれが最大になる階調において、前記第2のインクの記録デューティを前記第1のインクの記録デューティよりも大きくするように、前記第1のつなぎヘッドおよび前記第2のつなぎヘッドのための記録データを生成する工程を有することを特徴とする画像処理方法。
【請求項1】
同じ種類のインクを吐出する複数の吐出口が所定方向に配列するチップの複数を、前記所定方向とは交差する方向に重複する重複領域を設けながら前記所定方向に配置することにより構成されるつなぎヘッドの複数を用いて、記録媒体に画像を記録するインクジェット記録装置であって、
前記複数のつなぎヘッドは、凝集しやすい色材を有する第1のインクを吐出するためのつなぎヘッドと、前記第1のインクと同じ色相であって、前記第1のインクよりも色材濃度が低く、且つ前記第1のインクの凝集を抑制する作用を有する第2のインクを吐出するためのつなぎヘッドを含み、
白点から前記第1のインクの色相におけるプライマリ点に至るまでの階調領域において、前記第1のつなぎヘッドの前記重複領域における2つのチップの記録位置ずれに伴う発色のずれが最大になる階調において、前記第2のインクの記録デューティを前記第1のインクの記録デューティよりも大きくするように、前記第1のつなぎヘッドおよび前記第2のつなぎヘッドの記録を制御する制御手段を有することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記第1のインクはシアンインクであり前記第2のインクはライトシアンインクであることを特徴とする請求項1および2のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記第1のインクはマゼンタインクであり前記第2のインクはライトマゼンタインクであることを特徴とする請求項1および2のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記第1のインクはブラックインクであり前記第2のインクはグレーインクであることを特徴とする請求項1および2のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記制御手段は、白点から前記第1のインクの色相におけるプライマリ点に至るまでの全階調領域において、前記第2のインクの記録デューティを前記第1のインクの記録デューティよりも大きくするように、前記第1のつなぎヘッドおよび前記第2のつなぎヘッドの記録を制御することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
同じ種類のインクを吐出する複数の吐出口が所定方向に配列するチップの複数を、前記所定方向とは交差する方向に重複する重複領域を設けながら前記所定方向に配置することにより構成されるつなぎヘッドの複数を用いて、記録媒体に画像を記録するインクジェット記録装置のための画像処理方法であって、
前記複数のつなぎヘッドは、凝集しやすい色材を有する第1のインクを吐出するためのつなぎヘッドと、前記第1のインクと同じ色相であって、前記第1のインクよりも色材濃度が低く、且つ前記第1のインクの凝集を抑制する作用を有する第2のインクを吐出するためのつなぎヘッドを含み、
白点から前記第1のインクの色相におけるプライマリ点に至るまでの階調領域において、前記第1のつなぎヘッドの前記重複領域における2つのチップの記録位置ずれに伴う発色のずれが最大になる階調において、前記第2のインクの記録デューティを前記第1のインクの記録デューティよりも大きくするように、前記第1のつなぎヘッドおよび前記第2のつなぎヘッドのための記録データを生成する工程を有することを特徴とする画像処理方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2012−6270(P2012−6270A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−144314(P2010−144314)
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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