説明

インクジェット記録装置及びその制御方法

【課題】着脱可能な廃インクタンクがプリンタ装置から取り外されていても、プリンタ本体の動作を停止することなく吸引処理、予備吐出を続行することができるインクジェット記録装置及びその制御方法を提供することを目的とする。
【解決手段】着脱可能な廃インクタンクを備えるプリンタ装置において、メインタンクとは別に一時的に廃インクを貯蔵することが可能なサブタンクを設ける。そして、吸引処理によって収集した廃インクを、まずサブタンクに貯蔵し、メインタンクが装着されていることを確認できると、サブタンクからメインタンクに廃インクを放出する。また、廃インクを放出する際にサブタンクに貯蔵された廃インク量を計量し、計量結果の値を累積加算して記録する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタ装置の印字ヘッドの廃インク処理方法に係り、印字ヘッドから排出された廃インクを貯蔵する着脱可能な廃インクタンクをもつインクジェットプリンタの廃インク処理に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット方式を用いたプリンタ装置では、印字ヘッドから、印刷用紙面に、インクを吐出する印刷処理を行うことによって、画像形成する。この場合、印刷処理を連続すると、印字ヘッドのコンディションが徐々に低下し、正常に画像形成することができない可能性がある。
【0003】
このような問題を未然に防止するために、クリーニングと呼ばれる処理が一般的に用いられている。このクリーニングは、印字ヘッドの吐出口からポンプが吸引し、インクを強制的に排出する処理である(以下、「吸引処理」と呼ぶ)。また、画像形成を目的とせずに一定量のインクを連続して吐出することによって、印字ヘッドの状態を良好に保つ処理もある(以下、「予備吐出」という)。
【0004】
これらの処理によって、印字ヘッドのコンディションを良好に保つことが可能になるが、その処理の際に排出される廃インクを収集し、貯留しておくための廃インクタンクが必要である。通常、インクジェット方式のプリンタ装置には、着脱可能な廃インクタンクが備わっている。廃インクタンクを着脱可能な構成とすることによって、廃インクタンクが、廃インクで満杯になった場合、交換可能な構成とすることができる。
【0005】
従来の一般的なインクジェットプリンタでは、廃インクタンクの着脱状態を検知するためのセンサを設けている。そして、廃インクタンクが抜かれていることが検知された場合、吸引処理や予備吐出を停止することによって、廃インクがプリンタ装置内部で漏洩することを防ぐ発明が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0006】
このプリンタ装置において、プリンタの動作中に廃インクタンクが抜き取られたことを検知した場合、本体動作を停止し、ユーザが廃インクタンクを装着するまでは、プリンタが動作を再開することはできない。
【0007】
また、廃インクタンクが満杯になったことを検知するためには、廃インク内部に貯蔵されている廃インク量を検知する必要がある。従来の一般的なインクジェットプリンタでは、印字ヘッドから吐出したインク量に基づいて発生する廃インク量を計算で求める方式が知られている(たとえば、特許文献2参照)。
【0008】
このような構成のプリンタ装置において、実際に発生した廃インクを計量するのではなく、計算によって廃インク量を求めるので、実際の廃インク量と計算値とが乖離する可能性がある。
【特許文献1】特開2005−254791号公報(図22)
【特許文献2】特開2003−127433号公報(段落0024〜0026)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記従来例では、廃インクタンクがプリンタ装置に装着されていなければ、プリンタ装置の吸引処理や予備吐出が行えず、プリンタ装置全体の動作が停止する可能性がある。
【0010】
また、廃インクの発生量を計算によって求める従来例方法では、廃インクが廃インクタンクから漏洩することがあるという問題があり、さらに、廃インクタンクの容量いっぱいまで廃インクを貯蔵することができない可能性があるという問題がある。
【0011】
本発明は、着脱可能な廃インクタンクがプリンタ装置から取り外されていても、プリンタ本体の動作を停止することなく吸引処理、予備吐出を続行することができるインクジェット記録装置及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明においては、着脱可能な廃インクタンクを備えるプリンタ装置において、メインタンクとは別に一時的に廃インクを貯蔵することが可能なサブタンクを設ける。そして、吸引処理によって収集した廃インクを、まずサブタンクに貯蔵し、メインタンクが装着されていることを確認できると、サブタンクからメインタンクに廃インクを放出する。
【0013】
また、廃インクを放出する際にサブタンクに貯蔵された廃インク量を計量し、計量結果の値を累積加算して記録する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、一時的に廃インクを貯蔵するサブタンクを設けるので、着脱可能な廃インクタンクがプリンタ装置から取り外されていても、プリンタ本体の動作を停止することなく吸引処理、予備吐出を続行することができるという効果を奏する。
【0015】
本発明によれば、一時的に廃インクを貯蔵するサブタンクを設けるので、着脱可能な廃インクタンクがプリンタ装置から取り外されていても、プリンタ内部に廃インクが漏洩することを防止することができるという効果を奏する。
【0016】
本発明によれば、サブタンク内に貯留した廃インク量を計量し、サブタンク内の廃インクをメインタンクに放出する際に計量した廃インク量の値を累積加算するので、メインタンク内に蓄積されている廃インク量を正確に計量することができるという効果を奏する。
【0017】
本発明によれば、廃インクが漏洩することなく、メインタンクの容量いっぱいまで廃インクを蓄積することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
発明を実施するための最良の形態は、次の実施例である。
【実施例1】
【0019】
図1は、本発明の実施例1であるプリンタ装置PR1の構成を示す模式図である。
【0020】
プリンタ装置PR1は、インクを吐出する記録ヘッドを用い、上記記録ヘッドから記録媒体にインクを吐出して記録するインクジェット記録装置であり、着脱可能である廃インクタンクを装着可能なプリンタ装置である。
【0021】
プリンタ装置PR1は、ガイドレール3と、ブラックカートリッジ4と、シアンカートリッジ5と、マゼンタカートリッジ6と、イエローカートリッジ7と、印字ヘッド8と、キャリッジ9と、ワイパーブレード10とを有する。また、プリンタ装置PR1は、ブラック用キャップ11と、シアン用キャップ12と、マゼンタ用キャップ13と、イエロー用キャップ14と、吸引ポンプ15とを有する。
【0022】
プリンタ装置PR1は、その内部に廃インクタンクその他の装置を有する。
【0023】
印字ヘッド8は、矢印X方向に往復移動しながら、印刷用紙1上にインクを吐出し、印刷用紙1は、矢印方向Yの所定のピッチで搬送される。印刷データの内容に従って印字ヘッド8を所定量移動させつつインクを吐出させ、印刷用紙1を所定量搬送する処理を繰り返すことによって、印刷用紙1上に画像形成する。
【0024】
印字ヘッド8は、キャリッジ9に着脱自在に搭載されている。キャリッジ9は、ガイドレール3に摺動自在に支持され、不図示のモータ等の駆動手段によって、ガイドレール3に沿って往復移動される。
【0025】
印刷用紙1は、印字ヘッド8のインク吐出面(吐出口の形成面)との間で、一定の対向間隔を維持したまま、搬送ローラ2によって、矢印Y方向へ搬送される。
【0026】
印字ヘッド8は、異なるインクを吐出するために、複数のノズル列(吐出口列)が形成されている。実施例1では、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローのインクを吐出可能なノズル列が形成されている。印字ヘッド8から吐出された各インクを供給するために、ブラックカートリッジ4、シアンカートリッジ5、マゼンタカートリッジ6、イエローカートリッジ7が、互いに独立して着脱可能に装着されている。
【0027】
なお、実施例1では、4色インクを使用したカートリッジ式のインク供給方式のプリンタであるが、インク色が6色、8色等である場合や、インクの供給方式がチューブ方式や、ピットイン方式である場合でも、実施例1と同様の効果を奏する。
【0028】
キャリッジ9が摺動可能な範囲内であって、印刷用紙1が占める領域以外の非記録領域には、印字ヘッド8のインク吐出面をカバーすることができるキャップが設けられている。キャップは、印字ヘッド8から吐出されるインクの種類毎に設けられ、実施例1において、ブラック用キャップ11、シアン用キャップ12、マゼンタ用キャップ13、イエロー用キャップ14が互いに独立して設けられている。
【0029】
各キャップは、吸引ポンプ15に接続され、キャップが印字ヘッドを覆った状態で、吸引ポンプ15がキャップ内部を負圧にし、これによって、印字ヘッド内部に蓄積されている印刷処理に寄与しない廃インクを吸引排出することができる。
【0030】
ワイパーブレード10は、印字ヘッド8のインク吐出面(吐出口の形成面)に付着した不要なインクを除去する。上記のようなキャップ、ワイパーブレード10を用い、印字ヘッド8を吸引回復することによって、印刷画像の出力結果を良好に保つ。
【0031】
図2は、実施例1における吸引回復装置20の構成を示す模式図である。
【0032】
吸引回復装置20は、イエローカートリッジ7と、イエロー用キャップ14と、吸引ポンプ15と、インクタンク21と、インク吐出口22と、サブタンク23と、廃インク計量センサ24と、バルブ装置25と、廃インクタンク26とを有する。また、吸引回復装置20は、廃インクタンク取り付け部27と、廃インクタンク検知センサ28とを有する。
【0033】
インクタンク21は、イエローカートリッジ7内部に設けられ、内部にはイエローインクが貯蔵されている。インクタンク21内に貯蔵されているインクが、インク吐出口22からイエロー用キャップ14に向けて吐出される。
【0034】
イエロー用キャップ14は、印字ヘッド8の吐出面を覆うことができ、吐出面に密着した状態で、吸引ポンプ15によって、キャップ内部を負圧にし、これによって、インク吐出口22に堆積している不要な廃インクを吸い出すことができる。
【0035】
吸引ポンプ15で吸い出された廃インクは、サブタンク23に集められる。サブタンク23内には、廃インク計量センサ24が設けられ、サブタンク23内に貯蔵された廃インクの量を計量する。バルブ装置25は、任意に開閉可能なバルブ装置であり、バルブ装置25を開閉することによって、サブタンク23内の廃インクを任意に貯留させるか、廃インクタンク26へ放出するかを選択することができる。
【0036】
廃インクタンク26は、サブタンク23から放出された廃インクを貯蔵する。なお、廃インクタンク26は、メインタンクとも呼ばれる。
【0037】
サブタンク23から廃インクを放出する際に、サブタンク23内に貯留されている廃インク量を、廃インク計量センサ24が計量し、この値を、累積加算することによって、廃インクタンク26に蓄積される廃インク量を正確にカウントすることができる。
【0038】
印字ヘッドから吐出されるインク量をもとに、廃インク量を計算で求める方式(ドットカウント方式)では、計算値と実際の廃インク量とに乖離が生じる場合がある。しかし、実施例1による方式では、サブタンク23の容量は、廃インクタンク26の容量に比べて遙かに小さい容量であるので、貯留される廃インク量を正確に計量することができる。この計量結果を、累積加算した値を、廃インクタンク26の廃インク量とすることによって、廃インクタンク26に蓄積されている廃インク量を正確に検知することができる。
【0039】
廃インクタンク26は、プリンタ装置PR1に着脱可能であり、廃インクタンク取り付け部27に着脱可能な状態で取り付けられる。廃インクタンク検知センサ28は、廃インクタンク26が廃インクタンク取り付け部27に取り付けられているかどうかを検知するセンサである。
【0040】
上記構成によって、廃インクタンク26が、プリンタ装置PR1に装着されているかどうかを、廃インクタンク検知センサ28が検知することができる。これによって、廃インクタンク26が装着されていなければ、バルブ装置25を解放しないように制御することによって、廃インクはサブタンク23内に貯留される。よって、廃インクタンク26が除去された状態でも、プリンタ装置PR1内部に廃インクが漏洩することなく、プリンタ本体の動作を停止させずに動作を継続させることができる。
【0041】
図3は、実施例1において、プリンタ装置PR1の構成を示すブロック図である。
【0042】
プリンタ装置PR1は、操作パネル30と、操作パネル制御部31と、不揮発性メモリ32と、CPU33と、インタフェース34と、バス36と、モータドライバ37と、印字ヘッド8と、RAM39と、ROM40とを有する。また、プリンタ装置PR1は、サブタンク内の廃インク計量センサ24と、廃インクタンク検知センサ28と、吸引ポンプ制御部43と、廃インクバルブ制御部44とを有する。
【0043】
操作パネル30上に、操作用のキー及び、表示パネルが配されている。
【0044】
操作パネル制御部31は、操作パネル30上のキーの状態を監視し、押下されたキーに応じて、適切な制御コマンドを、CPU33を含むプリンタ装置PR1の制御回路に発行し、また、操作パネル30に表示する文字列を作成し、操作パネル30を制御する。また、操作パネル30上に配されたキーを介して、ユーザがキー入力することができ、この操作用のキーを用いて、エラー発生状態からの回復処理の開始等、プリンタ装置PR1に対する動作の指定を入力する。
【0045】
インタフェース34は、プリンタ装置PR1とホストコンピュータ35とを接続し、ホストコンピュータ35からデータを受信し、ステータスを送信する機能を持ち、ホストコンピュータ35とのデータ送受信用通信ポートとして動作する。制御回路のバス36は、CPU33とその他の装置を接続する。
【0046】
不揮発性メモリ32は、各種情報を保存記録している記録装置であり、電力の供給が断たれても、記録した情報を保持し続けることができる。実施例1において、廃インクタンク26の廃インク蓄積量を記憶する手段として使用される。
【0047】
モータドライバ37は、プリンタ装置PR1の印字動作を行うためのキャリッジモータ(印字ヘッドを動作させる)、紙送りモータ(印刷用紙を動かし、給紙、排紙を行う)、回復モータ(印字ヘッドの回復動作を行う)等のモータ類を制御する制御回路である。
【0048】
印字ヘッド8は、印刷用紙上に画像を印刷する機能を持つ。交換式ヘッドの場合、ヘッド毎に固有のヘッドIDを持ち、このヘッドIDを比較することによって、ヘッドが交換されたかどうかを判断することができる。また、ヘッド毎に、ヘッドランク(ヘッド内部部材の発熱量)、温度センサ補正値(ヘッド内部の温度を示すセンサのバラツキの補正値)等の個体差があり、これらはプリンタ装置PR1の初期化動作の際にチェックされる。
【0049】
RAM39は、電力が供給されている間のみ、情報を保持する記録装置であり、電力の供給が断たれると保持している情報は消滅する。ROM40は、読み出しのみ可能な記憶装置であり、プリンタ装置PR1の制御プログラムを記憶し、この制御プログラムをCPU33で参照し、制御動作を実行する。
【0050】
次に、回路の動作状況について説明する。
【0051】
CPU33は、ROM40から制御プログラムを読み出し、プログラムに従って各制御装置の制御を実行する。インタフェース34は、ホストコンピュータ35から印字データを受信し、RAM39に書き込み、書き込まれたデータに基づいて、CPU33が、モータドライバ37、印字ヘッド8を制御し、用紙上に印字データを印刷する。
【0052】
サブタンク23内に設けられている廃インク計量センサ24が、サブタンク23内に貯蔵されている廃インクを計量することができる。インクタンクが装着されているかどうかを、廃インクタンク検知センサ28が判定する。
【0053】
吸引ポンプ制御部43は、吸引ポンプ15を制御し、廃インクの吸引処理を実行する。廃インクバルブ制御部44は、バルブ装置25の開閉を制御することによって、サブタンク23内の廃インクを、貯留させるか、廃インクタンク26へ放出するかを任意に選択する。
【0054】
吸引ポンプ制御部43が、吸引ポンプ15を制御し、廃インクの吸引処理を実行すると、インク吐出口22から吸い出した廃インクが、サブタンク23に集められる。吸引処理を実行する際に、サブタンク23内の廃インク計量センサ24が、サブタンク23内に貯蔵されている廃インクを計量する。計量した結果、廃インクが貯留リミット値に達していれば、廃インクバルブ制御部44がバルブ装置25を解放することによって、サブタンク23内の廃インクを、廃インクタンク26へ放出する。
【0055】
サブタンク23内の廃インクを廃インクタンク26へ放出する際に、サブタンク23内の廃インク計量センサ24が計量したサブタンク23内の廃インクを累積加算すれば、廃インクタンク26に蓄積されていた廃インク量の合計を求めることができる。サブタンク23内に実際に貯蔵された廃インクの量に基づいて、廃インクタンク26に蓄積されたトータルの廃インク量を求めるので、正確に廃インク量を検知することができ、廃インクが廃インクタンク26から漏洩することを防ぐことができる。
【0056】
廃インクバルブ制御部44がバルブ装置25を解放する際に、プリンタ装置PR1に廃インクタンク26が装着されているかどうかを、廃インクタンク検知センサ28が判定する。プリンタ装置PR1に廃インクタンク26が装着されていることを、廃インクタンク検知センサ28が判定すると、廃インクバルブ制御部44がバルブ装置25を解放し、サブタンク23内の廃インクを廃インクタンク26へ放出する。廃インクタンク26がプリンタ装置PR1から取り外されていることを、廃インクタンク検知センサ28が判定すると、廃インクバルブ制御部44は、バルブ装置25を解放せずに、廃インクはサブタンク23内に貯留されたままである。
【0057】
廃インク計量センサ24が、サブタンク23内に貯蔵されている廃インクを計量し、廃インクの量が貯留リミット値を超えていれば(満杯であれば)、操作パネル制御部31が、操作パネル30上の表示部に、廃インクが満杯である旨を警告表示する。これによって、廃インクが満杯であることを、ユーザに通知することができる。
【0058】
したがって、廃インクタンク26がプリンタ装置PR1に装着されていない状態でも、印字ヘッドの吸引回復処理を続行することができ、かつプリンタ装置PR1内に廃インクが漏洩し、汚損されることを回避することもできる。
【0059】
吸引ポンプ15、吸引ポンプ制御部43は、記録ヘッドのクリーニング処理を行うクリーニング手段の例である。
【0060】
廃インクタンク26は、クリーニング手段が排出した廃インクを貯蔵し、着脱可能な廃インク貯蔵手段の例である。サブタンク23は、クリーニング手段と廃インク貯蔵手段との間に位置する廃インク一時貯蔵手段の例である。
【0061】
次に、上記実施例において、印字ヘッド8の吸引回復処理について説明する。
【0062】
図4は、プリンタ装置PR1において、印字ヘッド8の吸引回復処理を示すフローチャートである。
【0063】
まず、S1で、廃インク計量センサ24が、サブタンク23内の廃インクを計量する。S2で、サブタンク23内の廃インク量がリミット値に達しているかどうかを判定する。廃インク量がリミット値に達していれば、S9へ進み、パネルに廃インクが満杯であることを示す警告を表示し、吸引回復処理を終了する。
【0064】
廃インク量がリミット値に達していなければ、S3で、廃インクタンク検知センサ28の状態をチェックし、S4で、センサの検知結果に基づいて、廃インクタンク26がプリンタ装置PR1に取り付けられているかどうかを判定する。
【0065】
廃インクタンク26が取り付けられていれば、S5へ進み、取り外されていれば、S8へ進む。このように処理することによって、廃インクタンク26がプリンタ装置PR1に装着されていなければ、S5以下の処理がスキップされ、サブタンク23内の廃インクを放出しないようにする。したがって、プリンタ装置PR1内部に廃インクが漏洩することを回避することができる。
【0066】
S5で、累積加算されている着脱可能な廃インクタンク26に蓄積されている廃インクの量が、リミット値を超えているかどうかを判定する。廃インク量がリミットを超えていなければ、S6へ進み、超えていれば、S8へ進む。このようにすることによって、廃インクタンク26内の廃インクが満杯状態であれば、S6以下の処理がスキップされ、サブタンク23内の廃インクを放出しないようにする。したがって、プリンタ装置PR1内部に廃インクが漏洩することを回避することができる。
【0067】
S6で、廃インクバルブを解放し、サブタンク23内の廃インクを着脱可能な廃インクタンク26へ解放する。
【0068】
S7で、累積加算されている着脱可能な廃インクタンク26内の廃インク量の値に、S6で解放したサブタンク23内に貯留されている廃インク量を加算する。この加算処理によって、着脱可能な廃インクタンク26内の廃インク量を更新することができる。S8で、吸引ポンプを作動させ、印字ヘッド8の吸引回復処理を実行する。
【0069】
上記処理によって、印字ヘッド8の吸引回復処理の作業が終了する。
【0070】
実施例1によれば、プリンタ装置PR1内部に廃インクを漏洩させることがなく、廃インクタンク26が装着されていない場合には、プリンタ装置PR1に吸引回復動作を続行させることができる。
【0071】
なお、バルブ装置25は、廃インク一時貯蔵手段と廃インク貯蔵手段との間に設けられ、廃インクの流入を防ぐ廃インク停留手段の例である。廃インクバルブ制御部44は、廃インク一時貯蔵手段に貯蔵した廃インクを、廃インク貯蔵手段に任意に放出、停止させる手段の例である。
【0072】
廃インク計量センサ24は、廃インク一時貯蔵手段に貯蔵されている廃インク量を検知する廃インク量検知手段の例である。廃インクバルブ制御部44は、廃インク量検知手段による検知結果に基づいて、廃インク停留手段を制御することによって、廃インク一時貯蔵手段に貯蔵した廃インクを、廃インク貯蔵手段に、適切なタイミングで放出、停止させる廃インク停留制御手段の例である。廃インクタンク検知センサ28は、着脱可能な廃インク貯蔵手段が印刷装置本体に装着されているか否かを検知する廃インク貯蔵手段検知手段の例である。
【0073】
また、この廃インク停留制御手段は、上記廃インク貯蔵手段検知手段による検知結果に基づいて、上記廃インク貯蔵手段が印刷装置本体に装着されていない場合、上記廃インク一時貯蔵手段に貯蔵した廃インクを停留させる。そして、上記廃インク貯蔵手段に放出させないように、上記廃インク停留手段を制御する手段である。
【0074】
廃インク計量センサ24は、廃インク一時貯蔵手段に設けた廃インク量検知手段による検知結果に基づいて、廃インク一時貯蔵手段から廃インク貯蔵手段に流入した廃インクを計量する廃インク計量手段の例である。
【0075】
操作パネル30は、廃インク一時貯蔵手段に貯蔵した廃インクが満杯であることを、廃インク計量手段が検知し、かつ廃インク貯蔵手段が印刷装置本体に装着されていないことを、廃インク貯蔵手段検知手段が検知した場合、次の警告を行う警告手段の例である。つまり、クリーニング処理を停止し、廃インクが満杯であることをユーザに警告する。
【0076】
また、上記実施例を方法の発明として把握することができる。つまり、上記実施例は、インクを吐出する記録ヘッドを用い、上記記録ヘッドから記録媒体にインクを吐出して記録するインクジェット記録装置の制御方法である。また、上記実施例は、記録ヘッドのクリーニング処理をクリーニング手段が行う工程と、上記クリーニング手段が排出した廃インクを、着脱可能な廃インク貯蔵手段が貯蔵する工程とを有する。そして、上記実施例は、上記クリーニング手段と上記廃インク貯蔵手段との間に廃インク一時貯蔵手段が位置している。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の実施例1であるプリンタ装置PR1の構成を示す模式図である。
【図2】実施例1における吸引回復装置20の構成を示す模式図である。
【図3】実施例1において、プリンタ装置PR1の構成を示すブロック図である。
【図4】プリンタ装置PR1において、印字ヘッド8の吸引回復処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0078】
PR1…プリンタ装置、
1…印刷用紙、
2…搬送ローラ、
3…ガイドレール、
4…ブラックカートリッジ、
5…シアンカートリッジ、
6…マゼンタカートリッジ、
7…イエローカートリッジ、
8…印字ヘッド、
9…キャリッジ、
10…ワイパーブレード、
11…ブラック用キャップ、
12…シアン用キャップ、
13…マゼンタ用キャップ、
14…イエロー用キャップ、
15…吸引ポンプ、
20…吸引回復装置
21…インクタンク、
22…インク吐出口、
23…サブタンク、
24…廃インク計量センサ、
25…バルブ装置、
26…廃インクタンク、
27…廃インクタンク取り付け部、
28…廃インクタンク検知センサ、
30…操作パネル、
31…操作パネル制御部、
32…不揮発性メモリ、
33…CPU、
34…インタフェース、
35…ホストコンピュータ、
36…バス、
37…モータドライバ、
39…RAM、
40…ROM、
43…吸引ポンプ制御部、
44…廃インクバルブ制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出する記録ヘッドを用い、上記記録ヘッドから記録媒体にインクを吐出して記録するインクジェット記録装置において、
記録ヘッドのクリーニング処理を行うクリーニング手段と;
上記クリーニング手段が排出した廃インクを貯蔵し、着脱可能な廃インク貯蔵手段と;
上記クリーニング手段と上記廃インク貯蔵手段との間に位置する廃インク一時貯蔵手段と;
を有することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
請求項1において、
上記廃インク一時貯蔵手段と上記廃インク貯蔵手段との間に設けられ、廃インクの流入を防ぐ廃インク停留手段と;
上記廃インク一時貯蔵手段に貯蔵した廃インクを、上記廃インク貯蔵手段に任意に放出、停止させる手段と;
を有することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項3】
請求項1において、
上記廃インク一時貯蔵手段に貯蔵されている廃インク量を検知する廃インク量検知手段と;
上記廃インク一時貯蔵手段と上記廃インク貯蔵手段との間に設けられ、廃インクの流入を防ぐ廃インク停留手段と;
上記廃インク量検知手段による検知結果に基づいて、上記廃インク停留手段を制御することによって、上記廃インク一時貯蔵手段に貯蔵した廃インクを、上記廃インク貯蔵手段に、適切なタイミングで放出、停止させる廃インク停留制御手段と;
を有することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項4】
請求項3において、
上記着脱可能な廃インク貯蔵手段が印刷装置本体に装着されているか否かを検知する廃インク貯蔵手段検知手段と;
上記廃インク一時貯蔵手段と上記廃インク貯蔵手段との間に設けられ、廃インクの流入を防ぐ廃インク停留手段と;
を有し、上記廃インク停留制御手段は、上記廃インク貯蔵手段検知手段による検知結果に基づいて、上記廃インク貯蔵手段が印刷装置本体に装着されていない場合、上記廃インク一時貯蔵手段に貯蔵した廃インクを停留させ、上記廃インク貯蔵手段に放出させないように、上記廃インク停留手段を制御する手段であることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項5】
請求項3において、
上記廃インク一時貯蔵手段に設けた上記廃インク量検知手段による検知結果に基づいて、上記廃インク一時貯蔵手段から上記廃インク貯蔵手段に流入した廃インクを計量する廃インク計量手段を有することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項6】
請求項5において、
上記着脱可能な廃インク貯蔵手段が印刷装置本体に装着されているか否かを検知する廃インク貯蔵手段検知手段を有し、
上記廃インク一時貯蔵手段に貯蔵した廃インクが満杯であることを、上記廃インク計量手段が検知し、かつ上記廃インク貯蔵手段が印刷装置本体に装着されていないことを、上記廃インク貯蔵手段検知手段が検知した場合、クリーニング処理を停止し、廃インクが満杯であることをユーザに警告する警告手段を有することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項7】
インクを吐出する記録ヘッドを用い、上記記録ヘッドから記録媒体にインクを吐出して記録するインクジェット記録装置の制御方法において、
記録ヘッドのクリーニング処理をクリーニング手段が行う工程と;
上記クリーニング手段が排出した廃インクを、着脱可能な廃インク貯蔵手段が貯蔵する工程と;
を有し、上記クリーニング手段と上記廃インク貯蔵手段との間に廃インク一時貯蔵手段が位置していることを特徴とするインクジェット記録装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−61756(P2009−61756A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−233834(P2007−233834)
【出願日】平成19年9月10日(2007.9.10)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】