説明

インクジェット記録装置及び記録方法

【課題】特別な構成を加えずに、記録ヘッドに形成された吐出口ごとの吐出されたインクよる記録画像の濃度の偏りを抑えることのできるインクジェット記録装置及び記録方法を提供する。
【解決手段】インクジェット記録装置の有する複数の吐出口には、一部に、同一領域にインクを打ち込む回数が記録領域におけるその他の画素よりも多い多数打ち込み画素を形成するようにインクを吐出する多数打ち込み吐出口が設定されている。そして、多数打ち込み画素は、記録ヘッドの端部の吐出口を用いて記録される記録領域には、記録ヘッドの端部の吐出口を用いずに記録される記録領域よりも多く記録されるように、記録の制御が行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録データに応じて記録媒体上に文字や画像を記録するインクジェット記録装置及び記録方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置は、比較的微小なインク滴を吐出し、また比較的高周波で吐出することが可能なため、高速記録、高画質記録に対応することができる。このような点において、インクジェット記録装置は、他の記録方式の記録装置に比べ優れている。また、インクジェット記録装置の中でも、ヒータ(電気熱変換体)によりインク内で発生した気泡を利用して、インクを吐出するサーマルインクジェット記録方式の記録装置は、高密度に吐出口(ノズル)を形成することが可能である。従って、サーマルインクジェット記録方式の記録装置は、高精細な画質の記録を行うことができる。
【0003】
インクジェット記録装置には、記録ヘッドの主走査と、それと並行して行われる記録媒体の副走査とを繰り返すことで記録画像を形成するシリアルスキャン形式のインクジェット記録装置がある。このシリアルスキャン形式のインクジェット記録装置は、小型化が比較的容易であり、また、そのために製造コストが低いこともあり、一般に広く普及している。
【0004】
サーマルインクジェット記録方法によって記録が行われる場合に、高周波数での記録などの記録デューティが高い記録が行われると、吐出口位置ごとの放熱量の違い等により、吐出口の配列された方向に関して記録ヘッド内部の温度が一定でなくなることがある。サーマルインクジェット記録方法(以下、単にインクジェット記録方法と呼ぶ)によってインクの吐出が行われる際には、インク中に気泡を発生させて気泡の発泡圧によってインクを吐出する。その際、発生する気泡の成長度合いは、気泡の近傍に存在するインクの温度に影響される。インクの温度が高いとインク中から気体となって気泡となる分子が多く、気泡は比較的大きく成長する。インク吐出時の気泡が大きくなるので、インク吐出量が大きくなる。従って、吐出口の配列された配列方向に関して温度が一定でなくなると、それに伴い吐出口の配列された方向でインクの吐出量が変動し、これによって記録画像の濃度が一定でなくなることがある。
【0005】
これに関し、これまでに、吐出口列内の吐出量変動の抑制を試みるための種々の提案が開示されている。吐出量変動の原因となる温度分布の発生を抑制する方法としては、インク吐出に使用しないヒータに対して、吐出口からインクの吐出されない程度のエネルギーを加えて加熱することによって、吐出口列内の温度分布の不均一性を低減する方法が知られている。特許文献1では、さらに吐出口列内の吐出量変動を抑制するために、吐出口列の両端部の温度を検知し、その検知結果から吐出口列内の温度分布を推定し、推定した温度分布に応じて、吐出口毎にヒータに印加するパルス幅を変更している。この方法によれば、温度が異なる吐出口毎に目標の吐出量を満足させる駆動パルスを設定できるため、吐出口列内の吐出量変動を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−168626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の方法では、吐出口列の両端部の温度を検知することが前提であるので、温度を検知するための新規の構成が必要となる。また、記録ヘッドに形成された全ての吐出口を同一のパルス幅でヒータ駆動することがインクジェット記録装置の一般的な構成であるのに対し、検知温度に応じて吐出口に対応するヒータ毎に異なるパルス幅を設定できるような新たな構成が必要となる。上記のような点を鑑みると、特許文献1による方法によって記録を行うためには装置が複雑となり、装置の製造コストの上昇につながるものであった。
【0008】
そこで、本発明は上記の事情に鑑み、特別な構成を加えずに、記録ヘッドに形成された吐出口ごとの、吐出されたインクによる記録画像の濃度の偏りを抑えることのできるインクジェット記録装置及び記録方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のインクジェット記録方法は、インクを吐出する複数の吐出口が配列された記録ヘッドを、記録媒体上の第1領域、及び、前記第1領域と同じ大きさの第2領域のそれぞれに対して複数回走査させることにより、前記第1及び第2領域に画像を記録するインクジェット記録方法であって、前記記録ヘッドの複数回の走査のうち少なくとも1回の走査において、前記記録ヘッドの前記吐出口の列の端部の吐出口を含む吐出口群を用いて画像が記録される領域である前記第1領域に記録すべき画像に対応する画像データと、複数のマスクパターンを含む第1のマスクパターン群とに基づいて、前記第1領域に対する前記記録ヘッドの複数回の走査でそれぞれ記録するための記録データを生成する第1生成工程と、前記記録ヘッドの複数回の走査のうち全ての走査において、前記記録ヘッドの前記吐出口の列の端部の吐出口を含まない吐出口群を用いて画像が記録される領域である前記第2領域に記録すべき画像に対応する画像データと、複数のマスクパターンを含む第2のマスクパターン群とに基づいて、前記第2領域に対する前記記録ヘッドの複数回の走査でそれぞれ記録するための記録データを生成する第2生成工程と、前記第1生成工程において生成された記録データに基づいて、複数回の走査で前記第1領域に対して記録を行う第1記録工程と、前記第2生成工程において生成された記録データに基づいて、複数回の走査で前記第2領域に対して記録を行う第2記録工程とを備え、前記第1生成工程で生成された記録データに対応する記録画像に含まれる複数の画素のうち前記第1のマスクパターン群を用いた処理において少なくとも2つのマスクパターンのそれぞれにより同一位置への記録を許容された前記画素の数は、前記第2生成工程で生成された記録データに含まれる複数の前記画素のうち前記第2のマスクパターン群を用いた処理において少なくとも2つのマスクパターンのそれぞれにより同一位置への記録を許容された画素の数よりも多いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、吐出制御によって記録ヘッドの吐出口ごとの温度上昇の違いによる濃度の偏りを抑えることができるので、構成を付加せず簡易に記録画像の濃度の品質を高く維持することのできるインクジェット記録装置及び記録方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】(a)は本発明の第一実施形態に係るインクジェット記録装置について模式的に示した斜視図であり、(b)は(a)のY−Z平面に沿う断面図である。
【図2】(a)は図1(a)のインクジェット記録装置に用いられる記録ヘッドにおける吐出口の形成された面について示した平面図であり、(b)はその記録ヘッドの吐出口について拡大して示した平面図である。
【図3】図1(a)のインクジェット記録装置における制御系のブロック図である。
【図4】図1(a)のインクジェット記録装置によって記録が行われる際の、記録ヘッドと記録媒体上の記録画像との間の位置関係を説明するための説明図である。
【図5】図4の記録画像を記録する際に用いられるマスクについて示した図である。
【図6】(a)は、記録ヘッドの温度変化と吐出口位置の関係を示す図であり、(b)は、記録ヘッドの吐出口から吐出されたインク滴のドット径と吐出口位置との関係を示す図である。
【図7】(a)は、比較例として、2度打ち画素が設定されていないマスクを用いて記録された画像と、その画像の明度分布について示した図であり、(b)は、第1実施形態の2度打ち画素が設定されたマスクパターンを用いて記録された画像と、その画像の明度分布を示す図である。
【図8】マスクパターンの記録許容率を示すグラフであり、(a)は図4の吐出口1〜128に対応し、(b)は吐出口129〜256に対応し、(c)は、(a)のマスクパターンと(b)のマスクパターンとを、画像データと対応させて得られるグラフである。
【図9】第一実施形態の別の実施形態による記録方法によって記録が行われる際の、縦軸にマスクパターン記録許容率を取り、横軸に吐出口位置を取ったグラフであり、(a)は図4の1〜128の吐出口のグラフであり、(b)は129〜256の吐出口のグラフである。
【図10】第一実施形態のさらに別の実施形態による記録方法によって記録が行われる際の、縦軸にマスクパターン記録許容率を取り、横軸に吐出口位置を取ったグラフであり、(a)は図4の1〜128の吐出口のグラフであり、(b)は129〜256の吐出口のグラフである。
【図11】本発明の第二実施形態による記録方法によって記録が行われる際の、入力画像における入力信号値と、600dpi四方の領域あたりの、1plインク滴、2plインク滴、5plインク滴のドット数との関係を示したグラフである。
【図12】本発明の第二実施形態による記録方法によって記録が行われる際の、入力画像における入力信号値153が入力された際のドット配置を示し、(a)は2plのドット配置、(b)は5plのドット配置、(c)は2plと5plを合わせたドット配置である。
【図13】本発明の第二実施形態において、2pl及び5plのインク滴を吐出する吐出口から2度打ちされる画素の割合がそれぞれ1%である場合のドット配置を示す図である。
【図14】5plのインク滴を吐出する吐出口から2度打ちされる画素の割合が0%である場合のドット配置を示す図である。
【図15】第二実施形態において、5plのインク滴を吐出する吐出口において2%の2度打ちを行い、異なる色のインク同士で比較する場合のドット配置について示した図である。
【図16】本発明の第三実施形態において、記録ヘッドと記録媒体上の記録画像との間の位置関係を説明する説明図である。
【図17】第三実施形態おいて用いられるマスクパターンを説明する図である。
【図18】(a)は、第三実施形態の2度打ちの行われないマスクを用いて記録が行われたときの、記録に用いられるマスクについて、縦軸にマスクパターン記録許容率を取り、横軸に吐出口位置を取ったグラフであり、(b)は、第三実施形態による記録方法によって記録が行われた際の、縦軸に吐出口から吐出されたインク滴のドット径を取り、横軸にその吐出口の吐出口位置を取ったグラフである。
【図19】(a)は、第三実施形態の2度打ちの行われないマスクを用いて記録が行われたときの、記録によって得られた記録形成画像と、その画像に対応して示された明度の分布について示した図であり、(b)は、2度打ちの行わられるマスクを用いて記録が行われたときの、記録によって得られた記録形成画像と、その画像に対応して示された明度の分布について示した図である。
【図20】第三実施形態による記録方法によって記録が行われる際の、縦軸にマスクパターン記録許容率を取り、横軸に吐出口位置を取ったグラフであり、(a)は図16の1〜128の吐出口のグラフであり、(b)は129〜256の吐出口のグラフであり、(c)は記録領域が記録されるときのマスクが重ねられた結果のグラフである。
【図21】本発明の第四実施形態による記録方法によって記録が行われる際の、記録ヘッドと記録媒体上の記録画像との間の位置関係を説明するための説明図である。
【図22】第四実施形態による記録方法によって記録が行われる際に用いられるマスクについて示した図である。
【図23】第四実施形態による記録方法によって記録が行われる際の、縦軸にマスクパターン記録許容率を取り、横軸に吐出口位置を取ったグラフであり、(a)は吐出口列Aからのインク吐出のグラフであり、(b)は吐出口列Hからのインク吐出のグラフであり、(c)は記録領域が記録されるときのマスクが重ねられた結果のグラフである。
【図24】本発明の第五実施形態に係るインクジェット記録装置によって記録が行われる際の、記録ヘッドと記録媒体上の記録画像との間の位置関係を説明するための説明図である。
【図25】図24の記録画像における2回の走査によって記録される領域を記録する際に用いられるマスクについて示した図である。
【図26】図24の記録画像における3回の走査によって記録される領域を記録する際に用いられるマスクについて示した図である。
【図27】(a)は、本発明の第五実施形態に係るインクジェット記録装置によって記録が行われる際の、縦軸にマスクパターンの記録許容率を取り、横軸に吐出口位置を取ったグラフであり、(b)は、そのインクジェット記録装置によって高デューティの記録が行われた際の、縦軸に記録ヘッドにおける温度変化を取り、横軸に吐出口位置を取ったグラフである。
【図28】縦軸にマスクパターン記録許容率を取り、横軸に吐出口位置を取ったグラフであり、(a)は図24の1〜16の吐出口のグラフであり、(b)は241〜256の吐出口のグラフであり、(c)は記録領域が記録されるときのマスクが重ねられた結果のグラフである。
【図29】(a)は、本発明の第五実施形態による記録方法によって記録が行われた際の、記録領域の平面図と、それに対応して示された、縦軸に明度を取り、横軸に記録媒体上の位置を取ったグラフであり、(b)は、比較例による記録方法によって記録が行われた際の、記録領域の平面図と、それに対応して示された、縦軸に明度を取り、横軸に記録媒体上の位置を取ったグラフである。
【図30】本発明の第六実施形態による記録方法によって記録が行われる際に、3回の走査によって記録が行われる記録領域への記録の際に用いられるマスクについてそれぞれ示した図である。
【図31】本発明の第六実施形態による記録方法で、2度打ちの行われない場合に、横軸に吐出口位置を取り、縦軸にマスクパターン記録許容率を示したグラフである。
【図32】本発明の第六実施形態による記録方法によって記録が行われる際に、縦軸にマスクパターン記録許容率を取り、横軸に吐出口位置を取ったグラフである。
【図33】(a)は、本発明の第六実施形態による記録方法によって記録が行われた際の、記録画像の平面図と、それに対応して示された、縦軸に明度を取り、横軸に記録媒体上の位置を取ったグラフであり、(b)は、本発明の第六実施形態において2度打ちの行われない記録が行われた際の、記録画像の平面図と、それに対応して示された、縦軸に明度を取り、横軸に記録媒体上の位置を取ったグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施例について詳細に説明する。
【0013】
図1(a)、(b)は、本発明の第一実施形態に係るインクジェット記録装置の概略構成を示す斜視図である。図1(a)は記録装置の斜視図を示し、図1(b)は図1(a)において記録ヘッドを通るY−Z平面に沿う断面図である。図1(a)、(b)において、参照符号101はインクカートリッジである。本構成では、インクジェット記録装置は、4つのインクカートリッジを搭載している。それぞれのインクカートリッジは、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)のインクを収容している。参照符号102は記録ヘッドであり、上述したインクを吐出して対向する記録媒体Pに着弾させる。参照符号103は搬送ローラ、104は補助ローラであり、これらローラが協働し記録媒体Pを抑えながら図中の矢印の方向に回転し、記録媒体Pを+Y方向に随時搬送する。また、参照符号105は給紙ローラであり記録媒体Pの給紙を行なうとともに、搬送ローラ103、補助ローラ104と同様、記録紙Pを押さえる役割も果たす。参照符号106はインクカートリッジ101を支持し、記録が行われる際にこれらを移動させるキャリッジである。キャリッジ106は記録を行っていないとき、あるいは記録ヘッドの回復動作などを行なうときには図の点線で示した位置のホームポジションhに待機する。参照符号107はプラテンであり、記録位置において記録媒体Pを安定的に支える役割を果たしている。参照符号108はキャリッジ106をX方向に走査させるキャリッジベルトであり、参照符号109はキャリッジ106を支えるキャリッジシャフトである。インクジェット記録装置は、±X方向である走査方向へのキャリッジの走査と、X方向と交差するY方向への記録媒体の搬送と、を交互に繰り返すことによって記録媒体に画像を形成する。
【0014】
図2(a)、(b)は、記録ヘッド102の構成を示す図である。図2(a)は、Z方向に記録ヘッドを見たときの下面図であり、図2(b)は、吐出口周りの拡大図である。図2(a)において、A列及びH列からはブラックインク、B列及びG列からはシアンインク、C列及びF列からはマゼンタインク、D列及びE列からはイエローインクが吐出される。このように、走査方向に対して対称にインクを配置することにより、+X方向と−X方向のいずれの方向に走査した場合でも、記録媒体にインクが着弾する順番がそろう。これにより、色むらの発生を抑制することができる。図2(b)に、A列及びH列の拡大図を示す。A列とB列、C列、D列、またH列とE列、F列、G列は同じ吐出口列の配置構成である。A列は5plのインク量を吐出する5pl吐出口201、2plのインク量を吐出する2pl吐出口202、1plのインク量を吐出する1pl吐出口203を備える。そして、5pl吐出口201の中心と2pl吐出口202の中心とは、Y方向に2400dpi(dot per inch)ずれて配置される。同様に、5pl吐出口201の中心と1pl吐出口203の中心とは、Y方向に2400dpiずれて配置される。これらの吐出口は、配列方向であるY方向に対して600dpiのピッチで配置されている。各吐出口の直下(+Z方向)にはヒータが設置されている(不図示)。このヒータが加熱された場合に、直上のインクが発泡することにより吐出口からインクが吐出する。図2(b)には、配列方向であるY方向に吐出口が4個ずつ図示されているが、実際には256個の吐出口が形成されている。H列は、A列を鏡面反転した吐出口構成であり、各吐出口吐出量、吐出口ピッチ、列内方向の吐出口数はA列と同じである。尚、後に詳しく説明するが、各走査で用いるマスクパターンは各色1列の吐出口列を用いる場合を仮定して説明する。本図の記録ヘッドを用いて記録する場合、実際にはA列及びH列の2列を用いてインクを吐出するが、この場合は各走査のマスクパターンを、さらに2つに分配したマスクパターンを用いて各吐出口列の記録データを生成する。
【0015】
図3は、本実施形態のインクジェット記録装置における制御系のブロック構成図である。CPU1000は、ホスト装置2000からの入力に応じて各種の動作の制御処理やデータ処理等を実行する。それらの処理手順等のプログラムは、ROM1010に格納されている。また、RAM1020は、それらの処理を実行するためのワークエリアなどとして用いられる。記録ヘッド102からのインクの吐出は、CPU1000が電気熱変換体などの駆動データ(画像データ)及び駆動制御信号(ヒートパルス信号)をヘッドドライバ1030に供給することにより行われる。CPU1000は、モータドライバ1050を介して、キャリッジを主走査方向に駆動するためのキャリッジモータ1040を制御する。またmCPU1000は、モータドライバ1070を介して、記録媒体を搬送するための搬送モータ1060を制御する。本実施形態では、ROM1010、RAM1020、CPU1000が、記録の制御を行う記録制御手段として機能する。
【0016】
次に本実施形態の記録方法について説明する。図4は、画像形成時の記録媒体と記録ヘッドとの相対的な位置関係を説明するための図である。図4に示されるように、本実施形態では、所定の記録領域(単位領域)に対し、記録ヘッドを複数回走査させることにより記録が行われている。ここでは吐出口列A列について説明するが、その他の吐出口列B〜H列もA列と同じ関係である。
【0017】
まず、最初の走査では、+X方向に記録ヘッドを走査させて記録を行う。このとき、吐出口1〜128を使用する。この走査後、記録媒体Pを600dpiの解像度で128ドット分、+Y方向に搬送する。実際には、記録ヘッドの1回の走査毎に記録媒体Pを+Y方向に搬送するが、本実施形態では、記録媒体に対して記録ヘッドが−Y方向に移動する図を用いて説明する。次に、2回目の走査で、吐出口1〜256を使用し、記録ヘッドを−X方向に走査させて記録を行う。この走査後に、記録媒体Pを600dpiで128ドット分、+Y方向に搬送する。3回目の走査では、吐出口1〜256を使用し、記録ヘッドを+X方向に走査させて記録を行う。この走査後、記録媒体Pを600dpiで128ドット分、+Y方向に搬送する。4回目の走査では、吐出口129〜256を使用し、記録ヘッドを−X方向に走査させて記録を行う。この走査後、記録媒体Pを排紙して記録が終了する。領域A、B、Cは、記録媒体を1回搬送する量に対応した領域であり、本明細書では「バンド」と呼ぶ。本実施形態において、1回の搬送は吐出口128個分であるため、1バンドのX方向の幅は128ノズル分である。そして、後述するマスク処理を用い、それぞれのバンドに対して記録ヘッドを2回ずつ走査させることにより、画像の記録が完成する。
【0018】
図5(a)及び図5(b)は、本実施形態で用いるマスクパターン群と吐出口列との対応を示す図である。このマスクパターン群に含まれるマスクパターンは、記録を許容する画素(記録許容画素)と、記録を許容しない画素(非記録許容画素)とから構成されている。これらのマスクパターンと、記録データ(画像データ)とに基づき、各走査におけるインクの吐出を制御する記録データ(第1の記録データ及び第2の記録データ)を生成する。具体的には、画像データと各マスクパターンとでそれぞれ論理積をとることで、マスクパターンの記録許容画素に対応する画素に対してインクの吐出を許容するような記録データを生成する(第1生成工程及び第2生成工程)。そして、記録データが生成されると、その記録データに基づいて記録が行われる(第1記録工程及び第2記録工程)。画像データとマスクパターンの記録許容画素の一致した位置で、インクの吐出が行われる。本実施形態では、1バンド(128ノズル幅)分の画像データとマスクパターンとを用いて説明する。図5(a)は、2パス記録を行う場合に使用される256個の吐出口を備える吐出口列と、2つのマスクパターンを示している。ここでは説明のために、14個の吐出口のみ示しているが、実際には256個の吐出口を備える吐出口列が形成されている。マスクパターン91は、吐出口1〜128を使用して1走査目を記録する際に用いられる。マスクパターン92は、吐出口129〜256を使用して2走査目を記録する際に用いられる。図5(a)のマスクパターン91、92では、グレーで示した部分が記録許容画素に相当し、空白となっている部分が記録を許容しない画素に相当する。図5(b)は、マスクパターン91及び92の論理和をとることにより得られる画像に対応するパターンである。従って、これらのマスクパターンを用いて、吐出口列502と吐出口列502の2回の走査により、ベタ画像を記録した際に得られる記録画像である。ここでベタ画像とは、全ての画素に対して1回ずつインクが吐出された、記録率100%の画像を示す。また、記録率は、マスクパターンのそれぞれにおいて、記録を許容する画素数の、全体の画素数に対する割合のことを言うものとする。
【0019】
また、図5(a)及び図5(b)において、マスクパターン及び記録画像には、グレーの画素と黒の画素が存在する。例えば、マスクパターン91において、グレーの画素はマスクパターン91における記録許容画素であるが、マスクパターン92で同じ位置(画素)に対応する画素は記録許容画素ではないことを示している。マスクパターン92においても同様に、グレーの画素はマスクパターン92における記録許容画素であり、マスクパターン91で同じ位置に対応する画素は記録許容画素ではないことを示している。黒の画素は、2つのマスクパターン91、92の両方で記録許容画素である画素を示している。従って、図5(b)において、グレーの画素に対しては、2回の走査を伴う記録動作のうち1回の記録動作でインクが吐出される。これに対して黒の画素は、2回の記録動作の両方でインクが吐出される。つまり、黒の画素に対してはインク滴が2回重ねて打ちこまれることになる。
【0020】
つまり、マスクパターン91及び92のグレーの画素と、両方のマスクに存在する黒の画素とを合わせると全ての画素が埋まる。一般に、記録許容画素の割合の合計が100%のマスクパターンを用いることで、複数回の走査で全ての画素に対して1回ずつインクが吐出され、記録率100%のベタ画像を記録することができる。これに対し本実施形態の図5(a)に示すマスクパターン群は、全ての画素がグレーまたは黒の画素のいずれかであり、且つ、黒の画素に対しては2回インクが吐出される。このため、100%より高い記録率の画像を記録することができる。
【0021】
一方、本実施形態の図5(a)のマスクパターンの特徴は、黒の画素がマスクパターンの中央部よりも端部に多く存在することである。それぞれのマスクパターンのサイズはY方向が128(吐出口数分)、X方向が1024である。画像データがX方向に1024以上存在する場合は、上述のマスクを繰り返して使用すればよい。
【0022】
このようなマスクパターン群を用いることで、吐出口列内の温度差により記録画像に生じる濃度ムラを抑制することができる。高デューティによる記録が連続して行われた場合、記録ヘッド内において吐出口の配列方向に沿って吐出口ごとに温度差が生じ、記録ヘッドの温度が吐出口の配列方向に沿って一定でなくなることがある。図6(a)は、記録率100%のベタ画像の記録によって生じる吐出口列内の温度変化を示す。図6(a)に示されるように、吐出口列の中央部付近の昇温が5度であるのに対し、吐出口列両端部付近の昇温が1度であり、中央部付近よりも端部付近での温度変化が小さいことが認識される。これは、吐出口列の端部では、吐出口列の外側に熱が拡散可能なために、吐出口列の中央部に比べて放熱性が良好であることによる。このように、記録ヘッドの温度分布が吐出口の配列方向に沿って一定ではなくなることに伴い、インク吐出特性も一定ではなくなる。ヘッド温度の上昇に伴ってインクの温度が上昇するため、吐出口の径が同一であってもインクの吐出量が増加するのである。図6(b)は、1plの吐出口から吐出したインク滴が記録媒体上に着弾した際のドット径の分布を縦軸に取り、吐出口の配列方向に沿った吐出口の位置を横軸に取ったグラフを示す。グラフ中の白丸はヘッド昇温が起こらない程度の低デューティ(記録率1%程度)の画像データを記録した場合である。一方、黒丸は、高デューティの画像データを記録した場合である。実線は、黒丸のデータに対してフィッティングを行ったものである。低デューティの画像が記録される場合、記録ヘッドの部分的な昇温がほとんどみられず、吐出口の配列方向に関してドット径は一様である。それに対して、黒丸に示されるような高デューティの画像が記録される場合、記録ヘッドの中央部付近で部分的な昇温が生じ、これによって吐出口列の端部と中央部との間で吐出口から吐出されるインクの吐出量が異なる。これにより、記録ヘッドから吐出されるインク滴のドット径が、吐出口の位置によって異なる。特に、吐出口列の両端部では1度の昇温影響であるために低デューティ時とそれほど変わらないドット径であるが、吐出口列中央部では5度の昇温影響を受けるためにインク吐出量が増大し、その結果ドット径も大きくなる。
【0023】
このため、高デューティ記録が行われた場合、吐出口の配列方向において吐出口列中央部の吐出口から吐出されるインク吐出量は、端部付近の吐出口から吐出されるインク吐出量よりも大きくなる。すなわち、吐出口の配列方向に関して一定でないドット径の分布が生じる。このような記録ヘッドを用いてベタ画像が記録されると、記録画像の濃度にも影響が生じる。具体的には、吐出口列の中央部付近の吐出口により記録された領域はドット径が大きいため、それぞれのドットの間の間隔が少なく、詰めて配置される。一方、吐出口列の端部に位置する吐出口により記録された領域は、吐出口列の中央部に位置する吐出口から吐出されたインク滴によるドットよりもドット径が小さいため、ドット同士の間隔が比較的大きい。つまり、吐出口列の中央部付近の吐出口により記録された領域は、記録画像の濃度が高く、ブラックインクの場合には相対的に記録画像の明度が低い。一方端部の吐出口により記録された領域は、記録画像の濃度が比較的低く、ブラックインクの場合には相対的に明度が高い。このように、吐出口列内で吐出量の分布が一定ではなくなることで、記録画像に濃度ムラが生じてしまう。
【0024】
これに対し本実施形態では、相対的に吐出量が小さい吐出口を用いて記録される領域に対し、同色のインク滴を2滴以上重ねて打ちこむ画素を設定する。本実施形態では、最も吐出口の径が小さく、最も吐出量の小さい1plの吐出量の吐出口から吐出されるインク滴で記録する画素に対して2度打ちを行う。
【0025】
図7(a)に、温度差により吐出量の分布が一様でない記録ヘッドを用いて、2度打ちを行わずに、1pl吐出口列で2パス記録が行われたときに形成される画像と、そのときの対応する明度分布を示す。図8において、1回の搬送に対応する領域(バンド)である画像領域D、E、Fの境界部で、相対的に明度が高くなることが分かる。これは、それぞれの走査で記録される領域の境界部が、ドット径の小さい吐出口列の端部付近の吐出口を用いて記録され、インクドットの被覆率が下がることで下地の白が現れる度合いが増えたためである。
【0026】
これに対し本実施形態は、吐出口列の端部の吐出口を用いて画像が記録される領域において、インク滴を重ねて打ちこむ画素を設定する。すなわち、記録ヘッドの端部に含まれる吐出口を用いた記録動作が少なくとも1回以上行われる記録媒体上の領域(第1領域)には、インク滴を重ねて打ち込む画素を設定する。図8(a)は、記録ヘッドの吐出口1〜128に対して用いるマスクパターンの記録許容画素の割合である記録許容率を縦軸に、吐出口の配列方向を横軸に示す。いずれも2パス記録に用いるマスクパターンであり、点線は2度打ちを行わないマスクパターン、実線は2度打ちを行うマスクパターン91である。マスクパターンの記録許容率は、インク吐出を行う吐出口の数に対応する。従って、横軸に配列方向に沿った吐出口の位置を取り、縦軸に吐出口からのインク打ち込みの行われる回数を取ったグラフで、インク打ち込みの行われる回数の分布の傾きが変化する部分を有するように記録が制御される。2度打ちを行わないマスクパターン(第2のマスクパターン群)を用いる場合、吐出口1から吐出口128までインクを吐出する吐出口の割合は50%で一定である。これに対し、2度打ちを行うマスクパターン91(第1のマスクパターン群)を用いる場合、吐出口列端部の吐出口1でインクを吐出する吐出口の割合は54%で最大となり、そこから吐出口の配列方向中央部に向かうにつれて小さくなっている。また、吐出口21から吐出口128まではインクを吐出する吐出口の割合が50%で一定である。
【0027】
同様に、図8(b)に、記録ヘッドの吐出口129〜256に対して用いるマスクパターンの配列方向に沿った記録許容率を示す。点線は2度打ちを行わないマスクパターンであり、実線は2度打ちを行うマスクパターン92である。図8(b)の吐出口129〜256に対して用いるマスクパターンは、図8(a)の吐出口1〜128に対して用いるマスクパターンを鏡面反転したものである。
【0028】
図8(c)は、図8(a)に示す吐出口1〜128に対して用いる2つのマスクパターンの記録許容率と、図8(b)に示す吐出口129〜256に対して用いる2つのマスクパターンの記録許容率を合わせたものである。図8(a)及び図8(b)と同様に、実線は2度打ちを行うマスクパターンの記録許容率の合計を、点線は2度打ちを行わないマスクパターンの記録許容率の合計を示している。2度打ちを行わないマスクパターンの記録許容率の合計は、吐出口の配列方向に沿って全体的に一定で100%である。一方、マスクパターン91及び92の記録許容率の合計は、2回の記録動作の両方で吐出口列の中央部の吐出口のみを用い、端部の吐出口を用いずに記録する領域(第2領域)では100%である。すなわち、2回の記録動作の両方で吐出口列の中央部の吐出口のみが用いられて記録が行われる領域では、記録を許容する画素は、二つのマスクパターン91、92の間で互いに排他の位置に存在する。そして、2回の記録動作の一方で端部の吐出口を用いて記録する領域では104%である。
【0029】
すなわち、マスクパターン91及び92を使用して記録される領域においては、マスクパターンの配列方向の中央部付近のみが使用される領域では、全ての画素に対してインク滴が1回吐出され、100%補完された画像が記録される。これに対し、マスクパターンの配列方向端部の吐出口が使用される領域では、全ての画素に対してインク滴が少なくとも1回吐出された上に、インク滴が2回重ねて打ち込まれる画素が4%の割合で存在する。
【0030】
以上のように本実施形態では、マスクパターン91及び92は、吐出口の配列方向に沿って吐出口列端部の吐出口を用いて記録する領域では2度打ちされる画素が存在するように設定される。また、マスクパターン91及び92は、吐出口列の端部を用いずに記録する領域では2度打ちされる画素が存在しないように設定される。このように、吐出口列端部の吐出口を用いて記録する領域に対して2度打ちされる画素が存在するように各パスの記録データが生成される。これにより、記録ヘッドの吐出口列内の温度上昇の違いにより、吐出口から吐出されるインク滴のドット径が吐出口の位置によって配列方向に沿って一定でなくなったとしても、記録画像の画質の低下が抑えられる。
【0031】
マスクパターン91及び92を用いて記録された画像と、その明度分布を図7(b)に示す。図7(a)の、2度打ちされる画素が存在しないマスクパターンを用いて記録された画像では、走査ごとの画像領域D、E、Fの境界部で明度が高くなっていた。これに対し、図7(b)では、画像領域G、H、Iの境界部での明度変化を抑えることができている。これは、インク吐出量が少なくなり、ドット径が小さくなったことでその部分の濃度が比較的低下しそれによって明度が上昇した部分に対し、2度打ち画素を追加することで記録画像の濃度及び明度を補正できているからである。
【0032】
上述のように2度打ちされた画素が含まれる画像を発明者が実際に確認したところ、それぞれの走査における記録領域同士の境界部での明度の差はほとんど目立たなかった。さらに、2度打ち画素が含まれることによって粒状感が目立ち、これによる記録画像の品質の低下も感じられなかった。粒状感が目立たない理由については、2つ挙げられる。1つ目の理由は、2度打ちされた画素が含まれる画像の濃度と、2度打ちされた画素が含まれない画像の濃度とは、大きな差がないということである。これは2度打ちされた画素の数やインク色にも依存するものだが、例えばブラックインクによって記録された画像において考える。インク滴を打ち込まない画像は、記録媒体のそのままの色、つまり白地であり、光学濃度を示すOD値は0.0程度である。インク滴を1滴ずつ打ちこんだ画像の光学濃度を示すOD値は1.0であり、インク滴を2滴ずつ打ちこんだ画像の光学濃度を示すOD値は1.5である。白地と1滴ずつ打ち込んだ画像とのOD値の差(1.0)に比べて、1滴ずつ打ち込んだ画像と2滴ずつ打ち込んだ画像とのOD値の差(0.5)は比較的小さい。局所的に比較的大きな濃度差がある場合に粒状感が目立ちやすいが、インク滴を1滴ずつ打ち込んだ画像と2滴ずつ打ち込んだ画像とのOD値の差は比較的小さいため、粒状感が目立ち難いと言える。他のインクにおいても、OD値こそ違えども、白地と1滴ずつ打ち込んだ画像、1滴ずつ打ち込んだ画像と2滴打ち込んだ画像との差に関して、後者の方が小さくなるのは同じである。2つ目の理由としては、本実施形態で2度打ちを行うインク滴が1plの吐出口からであり、そのドット径が20μm程度と十分に小さいことがある。ドット径が小さくなるに従って、1ドットの粒自体は視認し難くなる。逆にドット径が大きくなると視認しやすくなる。記録媒体を30cm程度の距離で目視した場合、40μm程度のドット径(5pl吐出口からのインク吐出を想定)であっても視認することは困難である。これら2つの理由により、粒状感が目立ってしまうことを抑えることができる。また、記録画像で粒状感が目立つことが抑えられると共に、画像の濃度ムラを低減することができる。結果として、本実施形態で用いたマスクパターン91、92により、記録ヘッドにおける吐出口列内の昇温の差に起因したドット径の分布が生じる場合でも、各バンドの境界部に生じる濃度ムラを抑制することができる。
【0033】
また、本実施形態のような制御を行うことにより、インク吐出量のばらつきにより記録画像に濃度ムラが生じたとしても、新たな構成を付加せずに、低コストで記録画像における品質の低下を抑えることができる。
【0034】
尚、本発明は、吐出口列の端部を用いずに記録される領域については、2度打ちされる画素が存在しない形態に限られない。図5(b)において、各走査128個の吐出口によって記録され2パス記録が行われる領域93を、それぞれ32個の吐出口で記録される領域504〜507の4つの領域に分ける。領域504及び領域507は、少なくとも1回の記録動作で吐出口列の端部の吐出口を用いて記録される領域である。そして、領域505及び領域506は、全ての記録動作で吐出口列の端部の吐出口を用いずに記録される領域である。図5(b)では、領域505及び506には2度打ちされる画素が含まれていないが、2度打ちされる画素が含まれる形態であってもよい。このとき、領域505及び領域506に含まれる2度打ちされる画素の数は、領域504及び領域507に含まれる2度打ちされる画素の数よりも少ない必要がある。前述したように、領域504及び領域507は、吐出量の小さいインク滴で記録される可能性が高い領域であるため、領域505及び領域506よりも2度打ちされる画素を多くする必要があるからである。尚、本明細書において、2度打ちされる画素は、必ずしもインク滴が2滴打ち込まれる形態に限るものではなく、3滴以上打ちこまれるものであってもよいことは言うまでもない。
【0035】
また、記録ヘッドの昇温が小さく吐出口列内に温度分布が見られないような低デューティの記録データを記録する場合には、吐出口列内のドット径の分布がほとんど生じない。そのような低デューティ画像においては、2度打ちされた画素目立ってしまう点が懸念される。しかし、本実施形態では、記録データに対してデータを付加するのではなく、少なくとも2つ以上のマスクパターンで対応する同じ位置が記録許容画素となるように設定しているだけである。従って、低デューティ画像を記録する場合は、複数のマスクパターンで記録が許容される画素と画像データ中の画素とが合致する箇所も少ないため、記録画像への影響は少ない。
【0036】
また、図5(a)に示すマスクパターンでは、記録ヘッドの吐出口列の両端部に相当する位置に2度打ちされる黒の画素を配置している。前述したように、吐出口列における配列方向端部の吐出口を用いて記録される領域に対してインク滴数を増加させることで、昇温分布に起因した記録画像に生じる濃度ムラを抑制させている。本発明は、記録画像において吐出口の配列方向端部の吐出口を使用して記録される領域に対して2度打ち画素が存在させることで、濃度ムラを抑制すればよい。すなわち、マスクパターンを使用時の対応関係で重ね合わせたときの記録許容率の合計が、図8(c)のグラフのような形状であればよい。従って、マスクパターンにおいて、2度打ちするための黒の画素を配置する方法は、上記のマスクパターンに限定されない。つまり、マスクパターンの記録許容率を上げる領域が、記録ヘッドの吐出口列の端部の吐出口に対応する領域に限られない。ここで、図9(a)及び図9(b)、図10(a)及び図10(b)を用いて、吐出口の配列方向に沿ったマスクパターンの記録許容率の分布が、図8(c)のグラフのような形状であるマスクパターンの他の例について説明する。
【0037】
本実施形態では、2回の走査によって記録画像の記録が行われる2パス記録が行われる。そのため、2回の走査のうち少なくとも一方の走査で、端部の吐出口が用いられることにより濃度が相対的に低くなってしまう領域に対し、インクの吐出を許容する記録許容画素の割合を上げる。これによって、結果的にその領域での2度打ちされる画素が多く形成されるように、インクが吐出されれば良い。図9(a)及び図9(b)は、1パス目のマスクパターンの吐出口列中央部と、2パス目のマスクパターンの吐出口列中央部とに2度打ちされる画素を配置する例である。
【0038】
図9(a)及び図9(b)に示されるマスクが用いられた場合には、記録ヘッドから吐出されるインクによって形成される画素のうち、吐出口の配列方向中央部の吐出口からのインクによって2度打ちされて記録される画素の割合が増える。これにより、吐出口の配列方向端部に位置する吐出口から吐出する際に吐出されたインク滴が吐出口列の中央部の方へずれる端ヨレの発生する懸念がある場合に、吐出口の配列方向端部よりも中央部の吐出口からのインク吐出を増やすことができる。従って、端ヨレによって記録画像の品質が低下することを抑えることができ、高品質な記録に有利である。このように、記録ヘッドの吐出口の配列方向の中央部に近い位置にある吐出口を用いて2度打ちされる画素の数が、中央部から遠い位置にある吐出口を用いて2度打ちされる画素の数よりも多くなるようにマスクパターンを設定しても良い。
【0039】
また、2度打ちを行う記録方法として、さらに他の形態について図10(a)及び図10(b)を用いて説明する。図10(a)及び図10(b)は、2度打ちされる画素を1パス目及び2パス目で均等にする。図10(a)、図10(b)に示されるように、吐出口の配列方向端部を用いて記録される領域に対して2度打ちを行うために、マスクパターンの記録許容率を上昇させる領域を2回の走査で均等に分配されている。従って、1パス目と2パス目でドット径に差がある場合でも、両方のパスで等しい確率で画像が形成されるので、隣り合うバンドの境界部において濃度ムラが生じにくい。このように、2度打ちされる画素を形成する吐出口が、記録ヘッドの吐出口の配列方向の端部の吐出口と、記録ヘッドの吐出口の配列方向の中央部の吐出口とでほぼ同数になるように記録の制御が行われても良い。
【0040】
インク滴が2度打ちこまれる画素は、記録ヘッドの主走査方向に関し、ランダムに配置されるよりも、できるだけ分散されるように配置することが望ましい。これは、2度打ちされた画素がランダムに配置された結果、その画素が部分的に集中してしまう可能性があるからである。仮に2度打ちされた画素が集中すると、その箇所の粒状感が低下してしまう。
【0041】
また、マスクパターンにおいて、インク滴を2度打ちこむ画素は、1plの吐出口列と2plの吐出口列、ブラックインク列とシアンインク列など、異なる吐出口列の間では、同じ位置に配置しないことが望ましい。また、吐出量の異なるインクを吐出する吐出口列のそれぞれで、同一位置へインク滴の2滴以上打ちこんだ画素は、それぞれ異なる位置に形成されることが望ましい。同じ画素に対して、吐出量の異なる複数の吐出口からそれぞれ2滴以上のインク滴が打ち込まれると、その箇所の濃度が高くなり、視認され易くなる。複数の吐出口列を用いて記録を行う場合、互いに2度打ちされる画素の位置が異なるマスクパターンを設定したり、もしくは吐出口列同士でマスクパターンを対応させる位置をずらしたりする。このようにして、同じ箇所に2度打ちされる確率を下げる工夫をすることが望ましい。すなわち、吐出口列ごとに、記録領域の吐出口列配列方向に沿った位置を変えるように、記録の制御が行われることが好ましい。また、吐出口は、インクの吐出量ごとに2度打ちを行う画素を形成し、吐出量の異なるインク滴同士の間で、2度打ちを行う画素の発生確率が異なるように、記録の制御が行われても良い。また、吐出量の異なるインクを吐出する吐出口列のそれぞれで2度打ちを行う画素を形成し、吐出量の異なる吐出口列から吐出されるインク滴同士の間で、2度打ちを行う画素の発生確率が異なるように、記録の制御が行われても良い。
【0042】
また、記録ヘッドが色の異なるインクを吐出する複数の吐出口列を有しているときには、記録装置は、色の異なるインクを吐出する吐出口列のそれぞれで同一位置へのインクの打ち込み数を多くした画素を異なる位置に形成する。このように、色の異なる吐出口列から吐出されるインク滴同士の間で、同一位置へのインクの打ち込み数を多くした画素の位置が異なるように、記録の制御が行われることが好ましい。また、色の異なるインクを吐出する吐出口列のそれぞれで2度打ちによる画素を形成し、吐出口列ごとに、マスクの吐出口列配列方向に沿った位置を異ならせるように、記録の制御が行われても良い。さらに、色の異なるインクを吐出する吐出口列のそれぞれで2度打ちを行う画素を形成し、吐出口列ごとに、2度打ちを行う画素の発生確率を異ならせるように、記録の制御が行われることが好ましい。また、記録装置が色の異なるインクを吐出する吐出口列のそれぞれで同一位置へのインクの打ち込み数を多くした画素を形成する場合には、吐出口列ごとに、記録領域の吐出口列配列方向に沿った位置を変えるように、記録の制御が行われることが好ましい。このように、同一位置へのインクの打ち込み数を多くした画素が記録領域内で分散するように、記録の制御が行われる。
【0043】
また本明細書では、同一領域にインクを打ち込む回数をその他の画素よりも多くすることを2度打ちと言う表現を用いているが、これはドットを2回重ねることに限定するものではない。本明細書での2度打ちは、その他の領域に通常に配置される部分よりもインクの打ち込み回数を多くする画素のことを意味している。
【0044】
また、例えば、5パス記録など記録パス数が多い記録が行われる場合、3パス記録等の低パス記録に比べて1回の走査あたりの記録デューティは低くなる。そのときに走査速度を上げたり、単位面積当りに配置するドット数を増やしたりすることによって記録ヘッドの駆動周波数を上げることになると、記録パス数が多い場合でも高デューティ記録に該当することになる。その場合、5パス記録において、大部分の領域で単位面積当りのドット数が2ドット配置するものであるとすると、本実施形態と同様に、その中で3ドット重ねや4ドット重ねの記録を局所的に行い、これを2度打ちとすることがあっても良い。
【0045】
尚、本実施形態において、記録ヘッドの吐出口列の端部の吐出口は、端部の20ノズルを用いたが、吐出口が形成されている基板の材料やインクを供給するための流路などにより、温度差による吐出量ばらつきが生じるノズルの数が異なる。また、本実施形態の記録ヘッドにおける吐出口1や吐出口256のように、最も端の吐出口が基板上で形成されている位置によっても、端部ノズルの数が異なる。従って、端部ノズルとする数は温度差の分布に応じて決定してもよい。また、記録ヘッドの全吐出口のうちの3〜5%の吐出口を、端部の吐出口として決定してもよい。
【0046】
尚、本実施形態において、2度打ちされる画素とは、インク滴を2滴以上重ねて打ち込む画素について述べたが、インク滴が重なるものに限られない。例えば、記録媒体上の解像度が記録ヘッドの解像度よりも大きい場合、すなわち1画素に複数のインク滴が打ち込まれる場合には、2度打ちされる画素において、インク滴同士が重なっていなくてもよい。本実施形態では、2度打ちされる画素が含まれる領域の記録デューティが100%よりも高ければよく、インクの材料によって紙面上のドット径が異なることからも、必ずしもインク滴同士が重なっていなくてもよい。
【0047】
また、本実施形態では、同一位置(領域)にインクを打ち込む回数をその他の画素よりも多くすることを2度打ちとしたが、同一位置とは、複数のインク滴同士が重なるような位置関係に限定されない。すなわち、同一の画素の内部に複数のインク滴が打ち込まれることで記録が行われることを、同一位置への記録としても良い。例えば、同一の単位画素の内部に複数のインク滴が打ち込まれた場合、これらのインク滴同士が画素の内部で重なっていなくても、これらのインク滴が同一の画素の内部に打ち込まれていれば、同一の位置に複数のインク滴が打ち込まれていることとしても良い。
【0048】
(第二実施形態)
次に、第二実施形態について説明する。なお、上記第一実施形態と同様に構成される部分については図中同一符号を付して説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0049】
第一実施形態では、インク吐出量やインク色に関して2度打ちされる画素が含まれる割合については言及していない。その理由としては、第一実施形態のように2度打ちされる画素が含まれる割合が2%程度であれば、記録画像を30cm程度の距離で目視しても40μm程度のドット径(5pl吐出口からのインク吐出を想定)は視認し難いからである。しかしながら、記録画像を近い距離で目視した場合には、ドット径が大きいものほど粒状感を感じる。インク色についても同様で、2度打ちされる画素が含まれる割合が同じであっても、濃度の高いインクによって2度打ちされる画素は濃度の低いインクによって2度打ちされる画素に比べて粒状感が目立ってしまう。
【0050】
図11は、600dpi単位の解像度で入力された画像データに対する600dpi四方領域当たりのインクの使用量を示す。このときのインクの使用量は、1plのインク滴、2plのインク滴、5plのインク滴の間の吐出するドット数の比で示す。図11の点線が1pl、実線が2pl、一点鎖線が5plを示す。図11に示されるように、入力画像データの信号値が51以上の領域では複数のドット径のドットによって構成されていることがわかる。ここで、入力画像信号値153の箇所に注目する。入力画像信号値153のデータに対しては、2plが1ドット、5plが1ドット配置される。本実施形態では、このように、記録装置が、入力画像信号値に応じて吐出されるそれぞれの吐出量のインク滴のドット数を変化させるように、記録の制御が行われている。より具体的には、記録装置は、複数の吐出口列から吐出される複数の吐出量のインク滴が吐出される際に、これらによるドット数の比を入力画像信号値に応じて変化させるように、記録の制御が行われている。
【0051】
図12(a)〜12(c)は、600dpiで10×10画素の領域に信号値153が入力された場合のドット配置を示している。本図は、全ての画素に対して2回以上インク滴が打ち込まれない場合であり、吐出口列の端部の吐出口を用いずに記録が行われる領域に記録される画像のドット配置である。図12(a)は2plのドット配置、図12(b)は5plのドット配置、図12(c)は2plと5plを合わせたドット配置の図である。図2(b)で示したように、5plドットと2plドットとは吐出口列方向に2400dpiずれており、吐出口の配列方向と交差する方向に1200dpiずれている。
【0052】
図13(a)〜13(c)は、図12と同様に信号値153が入力された場合に、吐出口列端部の吐出口を含む吐出口群を使用して記録される領域に記録される画像のドット配置を示している。2plの吐出口による記録も5plの吐出口による記録もいずれも高デューティ記録であるため、吐出口列端部の吐出口を使用して記録される領域に対して2度打ちされる画素が含まれるように記録データが生成される。記録画像における濃度ムラを抑制するため、2pl吐出口が1%、5pl吐出口も1%の割合で2度打ちされる画素が含まれる記録データである。図中の黒丸のドットが2度打ち箇所である。図13(a)は2plのドット配置、図13(b)は5plのドット配置、図13(c)は2plと5plを合わせたドット配置の図である。尚、実際には、図13に示されるドットは端部の吐出口から吐出されたドットを含むため、図12に示すドットよりもドット径が小さいが、ここでは便宜上同一の大きさで説明する。図13(a)〜13(c)に示すように、記録画像に2度打ちされる画素が含まれ、これによって明度のばらつきによる画像の濃度ムラが抑制される。
【0053】
さらに、先述のように図13(c)の記録画像は2度打ちされた画素を含むため、明度変化は抑えられているが、5plの2度打ち箇所が存在するため粒状感が目立ってしまう可能性がある。そこで、5plのインク滴での2度打ち画素の数よりも、2plのインク滴での2度打ち画素の数を多くすることにより、粒状性が目立つことを抑制することができる。
【0054】
図14(a)〜14(c)は、吐出口列端部を使用して記録される領域において、2度打ちされる画素が含まれる割合を、2pl吐出口が3%、5pl吐出口は0%としたドット配置を示す。図14(a)〜14(c)に示される黒丸のドットが2度打ちの行われる箇所である。図14(a)は2plのインク滴のドット配置、図14(b)は5plのインク滴のドット配置、図14(c)は2plと5plを合わせたドット配置の図である。図13(c)と図14(c)を比較すると、マクロに見たときの明度はあまり変わらないが、図13(c)に示す記録画像において5plのインク滴で2度打ちされた画素が目立ってしまう。図14(c)に示す記録画像では、5plのインク滴で2度打ちされた箇所がなく、2plのインク滴で2度打ちがされているので、粒状感が目立たない。このように、同一位置へのインクの打ち込み数を多くした画素の数が、吐出量の大きい吐出口列から吐出されるインクによって形成されるものであるほど少なくなるように、記録の制御が行うことが好ましい。
【0055】
次に、2度打ちされる画素が含まれる割合を、5plのインク滴が1%、2plのインク滴が1%だったものを、5plのインク滴が0%、2plのインク滴が3%とすることについて考察する。ここでは、簡単にするために1plのインク滴については考慮しない。図11に示すように、画像データが示す信号値が102より高い場合に5plのインク滴が用いられる。そして、信号値が102から153の画像においては、入力画像信号値が増加すると共に2plのインク滴と5plのインク滴のドット数が増えている。従って、この区間については5plのインク滴により2度打ちされる箇所を、2plのインク滴にそのまま置き換えても問題ない。次に、信号値が153から204の画像においては、5plのインク滴の増え方が2plのインク滴を上回る。この場合、2plインク滴において2度打ちされる画素が含まれる割合を上げるほうが良いと考えられるが、この区間は600dpiに対して、2pl、5pl共に十分に多く配置しているため記録媒体の白地が見えなくなる。この状態まで至ると端部の吐出量が小さくなり、それによってインク滴のドット径が小さくなることが記録画像に与える影響自体が小さくなる。したがって、2plのインク滴により2度打ちされる箇所の割合を上げなくてもよい。同様の理由により、信号値204から255の区間においても、2度打ちされる箇所の割合を上げる必要性がない。最後に信号値51から102の区間において、この区間は5plが存在しないため、2plの2度打ち箇所が増えた影響が現れるが、前述の実施形態で述べたように、記録データが低デューティの場合には、2度打ちされた箇所が目立ちにくい。以上の理由により、5plのインク滴で2度打ちされる箇所を2plのインク滴で置き換えても、記録画像の画質の低下は発生しない。
【0056】
上述のように、吐出量が小さい吐出口を用いて2度打ちされる画素が含まれる割合を、吐出量が大きい吐出口を用いて2度打ちされる画素が含まれる割合よりも高く設定することで、粒状感と濃度ムラとの両方を抑制することが可能となる。厳密には、2度打ちを行う吐出口を吐出口列間で置き換えるだけでは画質の低下が発生する可能性も拭いきれない。従って、より最適な実施形態としては、同吐出量吐出口列を使用する場合であっても入力画像信号値区間に応じて2度打ちされる画素が含まれる割合が異なるマスクパターンを設定すればよい。具体的には、入力画像信号値区間に応じてインク滴の吐出量を変化させ、インク滴の吐出量に応じて同一位置へのインクの打ち込み数を多くした画素の位置が変わるように、記録が制御されていることが好ましい。また、入力画像信号値区間に応じて複数の吐出量のインク滴によるドット数の比を変化させ、構成比に応じて同一位置へインク滴が打ち込まれる数を多くした画素の位置が変わるように、記録が制御されても良い。このように、入力画像信号値に応じて2度打ちされる画素が含まれる割合が変わるように、記録が制御されることが好ましい。
【0057】
インク色が異なる吐出口列の場合も、吐出量が異なる吐出口列の場合と同様である。例えば、グレー画像を示す画像データが入力された場合、ブラックインクだけでグレーを作成するのではなく、ブラックインクにシアン、マゼンタ、イエローの各色のインクを配合する。このとき、明度の高い色材のインクを2度打ちすると、粒状性が上がりやすい。ここで、図15(a)及び図15(b)には、吐出口列端部を使用して記録される領域において、10×10画素領域に5pl吐出口で2%の2度打ちが発生する場合の異なる色のインク同士で比較したドット配置を示す。図中の濃いドットが2度打ち箇所である。図15(a)は明度の高いイエローのドット配置、図15(b)は明度の低いブラックのドット配置の図である。本来ならば図12(a)〜12(c)よりもドット径を小さくして描画する必要があるが、ここでは便宜上同一の大きさで記載し、図のように2度打ちがある状態で明度変化を抑制しているものとする。図15(a)、15(b)に示されるように、2度打ちされる画素が含まれる割合が同じであり、かつ、ドット径が同じであっても、明度の低いブラックインクの方が粒状感として視認されやすい。
【0058】
従って、上述のように、色材の明度が高いインクを吐出する吐出口を用いて2度打ちされる画素が含まれる割合を、色材の明度が低いインクを吐出する吐出口を用いて2度打ちされる画素が含まれる割合よりも高く設定する。これにより、粒状感を抑えつつ、明度を補償することが可能となる。このように、明度の低いインクを同一位置へ打ち込む数を多くした画素の数がなるべく少なくなるように、記録を制御することが好ましい。すなわち、異なる色のインクを吐出する吐出口列のそれぞれを用いて2度打ちされる画素を形成し、明度の低いインクによって2度打ちされる画素が含まれる割合が小さくなるように、記録制御が制御されることが好ましい。
【0059】
(第三実施形態)
次に、第三実施形態について説明する。なお、前述の実施形態と同様に構成される部分については図中同一符号を付して説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0060】
第一実施形態では、記録媒体上の各バンドに対して2回の走査によって記録を行い、それぞれの走査で全体的にほぼ50%の記録許容率のマスクパターンを用いた。そして、記録ヘッドの吐出口の配列方向に沿った吐出口位置の違いによって温度上昇が一定でなくなり、記録される画像において比較的濃度が低くなった領域に対してインク滴の2度打ちを行った。
【0061】
第三実施形態では、記録ヘッドにおける吐出口の配列方向に沿って、記録デューティが吐出口の配列方向に沿って一定でないマスクパターンを用いる場合について説明する。具体的には、記録ヘッドの吐出口列における配列方向の端部に対応する領域の記録許容率が低く、中央部に対応する領域の記録許容率が高いマスクパターンを用いる場合である。このようなマスクパターンを用いると、記録媒体の搬送誤差によって記録画像に生じる濃度変化や、記録ヘッドの端部から吐出されるインク滴の着弾誤差による画像劣化を抑制することができる。例えば、特開2002−096455号公報に、吐出口の配列方向端部の吐出口からの記録デューティが中央部の吐出口からの記録デューティよりも低いマスクパターンが開示されている。
【0062】
このようなマスクパターンを用いる場合、前述した記録ヘッドの吐出口列内の昇温の分布の差がさらに大きく生じる可能性がある。昇温しやすい吐出口列の中央部の吐出口からの記録デューティが高く、昇温しにくい吐出口列の端部の吐出口からの記録デューティが低いため、吐出口列内の温度差が、第一実施形態で用いたマスクパターンを使用する場合よりもさらに大きくなる可能性がある。
【0063】
本実施形態では、第一実施形態と同様に、記録媒体の搬送と、記録媒体上の各バンドに対して記録ヘッドの2回の走査とにより画像が記録される。図16は、本実施形態における記録媒体と記録ヘッドとの位置関係と、記録デューティについて示す図である。図16に示されるように、記録デューティは、図4に示される第一実施形態におけるインク吐出の記録デューティよりも配列方向に沿った差が大きくなるように設定されている。
【0064】
図17を用い、本実施形態の記録で用いられるマスクパターンについて説明する。本実施形態で用いるマスクパターンは、2回の走査によって記録される領域を、それぞれの走査で記録されるマスクパターンがお互いに補完する関係となるように設定されている。図17(a)は吐出口1〜128を使用して1パス目を記録するときのマスクパターン261、図17(b)は吐出口129〜256を使用して2パス目を記録するときのマスクパターン262である。図17(c)はマスクパターン261、262を重ねた結果である。図17(a)、図17(b)のマスクパターン261、262においても、黒の画素が2つのマスクパターンで2度打ちされる画素を示している。
【0065】
図18(a)は、本実施形態で用いるマスクパターンにおいて、記録ヘッドの吐出口の配列方向に沿った記録許容率を示すグラフである。吐出口列における配列方向に沿った両端部(吐出口1及び吐出口256)での記録許容率は10%である。そして、端部から中央部に向かって行くにつれて記録許容率が上がっていき、吐出口列の中央部(吐出口128及び吐出口129)で90%となる。
【0066】
このように、吐出口列の端部の記録許容率が低いマスクパターンを用い、図16に示すように2回の走査で記録動作を行うと、吐出口列の中央部の記録デューティが高くなる。その結果、吐出口列の中央部と両端部の温度差が、第一実施形態のマスクパターンを用いた場合よりも大きくなり、インク滴の吐出量の差も大きくなる。
【0067】
図18(b)は、記録率100%の画像データを、記録ヘッドに形成された吐出口の全体を用いて記録した場合に1pl吐出口から吐出したインクが紙面に着弾した際のドット径の分布について示す。第一実施形態と比較すると、吐出口の配列方向の端部の吐出口周辺における温度上昇が小さく、中央部の吐出口周辺における温度上昇が大きい。従って、吐出口列の端部に形成された吐出口から吐出されたインク滴のドット径と、吐出口列の中央部から吐出されたインク滴のドット径トの差がさらに大きくなる。
【0068】
また、吐出口から吐出されたインクが記録媒体に着弾した際のドット径について、第一実施形態のマスクパターンを用いた場合の図6(b)の実線と比較する。図6(b)では、端部以外の領域におけるインク滴のドット径はほぼ一定である。これに対し、本実施形態のマスクパターンを用いた場合、吐出されたインクが記録媒体に着弾した際のドット径は端部以外の領域でも比較的大きな勾配をもつ。これは、端部の吐出口では放熱量が大きいのに加え、吐出口の配列方向に沿って記録デューティが大きく異なることに起因する。ここでは1plのインク滴のドット径について述べたが、2plや5plのインク滴においても、同様の特徴をもつドット径分布が生じる。
【0069】
図19(a)は、このようなマスクパターンを用い、かつ、2度打ちを行わずに記録された画像とその記録画像に対応した明度分布を示す。各走査で記録されたバンド(画像領域D、E、F)において、それぞれ中央部付近の明度が高くなっている。第一実施形態で記録された画像では、バンドごとの境界部付近の明度が高くなるのに対し、本実施形態で記録された画像は、バンドの中央部の明度が高くなる。
【0070】
図18(a)のマスクパターンを用いて記録された画像は、各バンドの境界部付近は、端部付近の吐出口で形成される領域を含んでいる。このとき、吐出口列端部の吐出口1(または吐出口256)から吐出されるインク滴のドット径は最も小さいが、この吐出口に対応するマスクパターンの記録許容率は10%である。一方中央部の吐出口129(または吐出口128)から吐出されるインク滴のドット径は最も大きく、この吐出口に対応するマスクパターンの記録許容率は90%である。従って、各バンドの境界部付近の明度が低く、中央部付近の明度が高い画像が記録される。
【0071】
これに対し、本実施形態で用いるマスクパターンは、記録媒体の1回の搬送される幅に対応した記録領域であるバンド領域に対し、中央部付近に比較的多くの2度打ち画素が形成されるように記録許容画素が配置されている。図17(c)は、記録率100%の画像データを記録した場合の記録結果であり、グレーの画素は2回の記録動作のうちいずれか1回で記録され、黒の画素は2回の記録動作の両方で記録される。このマスクパターンは、2度打ちされる画素を示す黒の画素が、各マスクの吐出口配列方向の端部よりも中央部付近に多く存在する。
【0072】
図20を用いてさらに詳細に説明する。図20(a)は、マスクパターン261の吐出口列における配列方向に沿った記録許容率を示す。実線がマスクパターン261であり、2度打ちが行われるマスクである。点線は比較例であり、2度打ちが行われないマスクパターンである。いずれのマスクパターンも、吐出口1から吐出口128にかけて記録許容率が10%から90%へと増加する。図20(b)も同様に、実線が2度打ちが行われるマスクパターン262で、点線が比較例である2度打ちが行われないマスクパターンの記録許容率を示している。図20(b)のそれぞれのマスクパターンは図20(a)のマスクパターンを鏡面反転したものである。
【0073】
2度打ちが行われる場合のマスクパターン261は、記録許容率が10%から90%へと増加しながら、吐出口64、吐出口65あたりで二次関数的にさらに大きく増加する。これにより、2度打ちを行うマスクパターンの中央部付近で、2度打ちを行わないマスクパターンよりも記録許容率が大きくなる。この記録許容率の差は吐出口64、吐出口65のときが1%と最大で、吐出口列の端部に向かって小さくなり、吐出口1、吐出口16では0%となる。マスクパターン262についても同様である。
【0074】
図20(c)は、それぞれの2パスマスクを合わせたときの記録許容率を示す。2度打ちの行われないマスクパターンを重ねた場合の記録許容率は、100%で吐出口配列方向に沿って一定である。これ対して、本実施形態の2度打ちの行われるマスクパターン261、262を重ねた場合の記録許容率は102%である。結果として、マスクパターン261、262を使用して記録される画像において、吐出口列の端部の吐出口が使用される領域では、2つのマスクパターンが補完し合い、記録率100%の画像が記録される。そして、吐出口列の中央部の吐出口が使用される領域では、2回の走査で記録される画素によってお互いが補完し合ってインク滴が少なくとも1滴打ちこまれる画素が100%となるのに加え、2%の割合で2度打ちされる画素が存在する。
【0075】
図19(b)は、このような2度打ちの行われるマスクパターン261、262を使用して記録された記録画像と、記録画像に対応した明度分布を示す。吐出口の配列方向に沿って、記録画像の明度がほぼ一定となっている。また、各走査で記録されるバンド(画像領域G、H、I)において、吐出口の配列方向における中央部付近の明度差が抑えられている。
【0076】
以上のように、本実施形態のマスクパターン261、262は、吐出口の配列方向に沿って記録許容率が一定でなく記録ヘッドの中央部から端部に向かってグラデーションになっていることで従来の搬送誤差や着弾誤差による画像劣化を抑制可能である。さらに、各バンドの中央部付近に対して2度打ちされる画素が含まれる割合が、各バンドの両端部に対して2度打ちされる画素が含まれる割合よりも高いことにより、記録ヘッドの吐出口列内の温度差に起因する濃度低下を抑制することができる。
【0077】
また、どのようにマスクを設定するかについての最適形は、マスクタイプと記録ヘッドの昇温特性の関係性に因るところが大きい。従って、マスクは、マスクタイプもしくは1走査当たりの記録デューティが異なる記録モード毎、及び記録ヘッド毎に最適なものを選択されることが望ましい。このように、インクジェット記録装置が記録デューティの異なる複数の記録モードを有している場合、記録デューティの異なる記録モードのそれぞれで同一位置へのインクの打ち込み数を多くした画素を形成する。そして、記録モードごとに、同一位置へのインクの打ち込み数を多くした画素の位置が異なるように、記録の制御が行われても良い。また上述の実施形態では、記録ヘッドが、吐出口の配列方向に沿った中央部に対称な昇温分布となる場合について説明した。そして、対称な温度分布に対応するように、2度打ちを行う箇所が対称となるように設定された場合について説明した。しかしながら、インク流路構造などによるデバイス要因や、マスクパターンの吐出口列配列方向への分布などの制御要因によって、昇温分布が配列方向に対称性を持たないことがわかっている場合には、2度打ちを行う箇所を対称形としなくても良い。
【0078】
(第四実施形態)
次に、第四実施形態について説明する。なお、上記第一実施形態ないし第三実施形態と同様に構成される部分については図中同一符号を付して説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0079】
上述の実施形態では、2パス記録によって記録を行う方法について説明した。図2(a)に示す記録ヘッドは同色のインクを吐出する複数の吐出口列を備える構成である。上述の実施形態では、各色1列の吐出口列を用いる形態に仮定して説明した。本実施形態では、記録ヘッドが同色のインクを吐出する複数のノズル列(第1の吐出口列及び第2の吐出口列)をノズルの配列方向と交差する方向に沿って備え、同色のインクを吐出する複数のノズル列が記録に用いられる。そのため、本実施形態では、記録ヘッドを、記録媒体上の単位領域に対して1回走査させることにより単位領域に画像を記録する。本実施形態では、単位領域に対し、1回の往復走査によって記録が行われる。詳しくは、1パス記録によって記録が行われ、走査ごとに記録領域が重複しない記録方法について説明する。
【0080】
図21は、本実施形態における記録媒体と記録ヘッドとの位置関係を示した説明図である。1回目の走査で、記録ヘッドが、吐出口1〜256を使用し、+X方向に走査して記録を行う。その走査後、記録媒体Pが、600dpi単位で256ドット分+Y方向に搬送される。2回目の走査で、記録ヘッドが、吐出口1〜256を使用し、−X方向に走査しながら記録を行う。その走査後、記録媒体Pを排紙して記録を終了する。このように、記録画像の領域A、Bは、1回の走査による記録で完成される。
【0081】
図22(a)〜22(c)に、本実施形態で使用するマスクについて示す。図22(a)は図2に示す記録ヘッドの吐出口列A列に対して用いるマスクパターン311であり、図22(b)はH列に対して用いるマスクパターン312である。マスクパターンのサイズはY方向が256(吐出口数分)、X方向が1024である。図22(c)は、マスク311、312を用いて記録率100%の画像を記録した場合に、それぞれの吐出口列による記録画像を重ねた結果の記録画像である。
【0082】
本実施形態による記録においても、記録ヘッドにおける吐出口の位置によって温度上昇値が変わる。従って、高デューティ記録が行われた場合、吐出口の位置によって吐出口から吐出されるインクの吐出量が変わり、これに伴ってインク滴のドット径が変わる。従って、吐出口の配列方向に沿って、記録画像の濃度及び明度が変わる。そのため、本実施形態においても、吐出口からのインクの吐出量が比較的少なく、ドット径の小さい部分に対して2度打ちするようにそれぞれのマスクパターンが設定される。
【0083】
図23(a)〜23(c)に、それぞれのマスクにおけるマスクパターンの記録許容率を示す。図23(a)は、A列の吐出口列において、2度打ちを行わないマスク(第3のマスクパターン)及び2度打ちを行うマスクパターン311(第1のマスクパターン)の吐出口の配列方向における記録許容率である。点線が比較例として2度打ちを行わないマスクパターン、実線が2度打ちを行うマスクパターン311である。2度打ちを行わないマスクが吐出口1から吐出口256までマスクパターンの記録許容率は50%で一定であるのに対し、2度打ちを行うマスクパターン311の記録許容率は一定ではない。2度打ちを行うマスクパターン311における記録許容率は、吐出口の配列方向の端部の吐出口1で54%と最大になり、そこから吐出口中央部に向かうにつれて小さくなっている。途中からは、吐出口256までの記録許容率は50%で一定となる。つまり、吐出口の配列方向の端部の吐出口で2度打ちが最も発生するようにマスクパターンが設定されている。
【0084】
図23(b)は、H列の吐出口列において、2度打ちを行わないマスクパターン(第4のマスクパターン)及び2度打ちを行うマスクパターン311(第2のマスクパターン)の吐出口の配列方向における記録許容率である。図23Bに示されるそれぞれのマスクパターンは、図23(a)に示される2度打ちを行わないマスクパターン及び2度打ちを行うマスクパターン311を鏡面反転したものと同じであるので、その説明は省略する。
【0085】
図23(c)は、2度打ちを行うマスクパターン同士、あるいは2度打ちを行わないマスクパターン同士を重ね合わせたときの吐出口の配列方向に沿った記録許容率を示す。2度打ちを行わないマスクパターンを重ね合わせたものが、吐出口の配列方向に沿って全体的に100%で一定となる。これに対して、2度打ちを行うマスクパターン311、312を合わせたものは、吐出口の配列方向の端部を使用して記録する領域では、記録許容率が104%となる。
【0086】
結果として2度打ちを行うマスクパターン311、312を使用して記録される領域においては、吐出口列の端部が使用される領域では、1度の走査で記録される画素が、お互いのマスクパターン同士で補完し合う。これによって、その領域での記録許容率は略100%となる。ところが、中央部の吐出口が使用される領域では、1度の走査で記録される画素によってお互いのマスクパターンが補完し合って1度打ちの画素の記録許容率が略100%となるのに加え、4%の割合で2度打ちされる画素が含まれることになる。
【0087】
このように、吐出口列の端部に位置する吐出口によって記録される領域に対しては、2度打ちされる画素が含まれるように記録データを生成することによって濃度低下を抑制する。記録画像の濃度低下が生じやすい領域に対して、異なる吐出口列におけるそれぞれの吐出口を用いてインクの吐出を行うことで2度打ち画素を形成し、これによって記録画像の濃度低下を抑制することとしても良い。これにより、記録ヘッドが同一領域に対して複数の走査を行う必要がなくなるので、記録ヘッドの走査の回数を少なくすることができ、記録のスループットを向上させることができる。
【0088】
(第五実施形態)
次に、第五実施形態について説明する。なお、上記第一実施形態ないし第四実施形態と同様に構成される部分については図中同一符号を付して説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0089】
上記第一実施形態ないし第四実施形態では、所定の記録領域に対して1パスもしくは2パス記録により記録を行ったが、記録媒体上では全体に亘って走査回数は一定である。これに対し、本実施形態では、図24に示すように、一部の領域で記録される際の走査の数が他の領域よりも多く設定される。本実施形態では、複数回の走査のうち、いずれかの走査で吐出口の配列方向の端部に位置する吐出口を用いて記録が行われる領域に対しては、3回の走査によって3パス記録が行われる。そして、それ以外の領域では2回の走査によって2パス記録が行われる。また、記録ヘッドにおける吐出口列の端部の吐出口に対して、吐出口の形成された位置が端部に近づくにつれて記録許容率が減少するようなマスクパターンを用いる。従って、搬送量に誤差が生じたとしても、記録画像における濃度の偏りを走査毎に記録される領域の境界の周囲に分散させ、濃度ムラを抑制することができる。また、記録ヘッドの端部の吐出口からのインク滴が気流により着弾位置がずれてしまうことによる画像劣化を抑制することができる。
【0090】
さらに、前述の記録ヘッドの吐出口列内に生じる昇温が一定でないことにより生じる濃度ムラに対しても、2度打ちされる画素が存在するように記録データを生成することで抑制可能である。これについては後に詳しく説明する。
【0091】
本実施形態における記録動作について説明する。まず、最初の走査で記録ヘッドの256の吐出口のうち吐出口1〜120を用い、+X方向に記録ヘッドを走査させながら記録する。走査後、記録媒体Pを600dpi単位で120ドット分、+Y方向に搬送する。実際には記録ヘッドが一回の走査を終えた後に記録媒体Pが+Y方向に搬送されるが、図24では説明のために、記録ヘッドが−Y方向に移動するように示す。これによって、記録ヘッドと記録媒体との間の相対的な位置関係を示している。
【0092】
次に、2回目の走査では吐出口1〜240を使用し、記録ヘッドを−X方向に走査させながら記録する。この走査後に、記録媒体Pを600dpi単位で120ドット分、+Y方向に搬送する。3回目の走査では吐出口1〜256を使用し、記録ヘッドを+X方向に走査させながら記録する。この走査後、記録媒体Pを600dpi単位で120ドット分、+Y方向に搬送する。4回目の走査では吐出口17〜256を使用し、記録ヘッドを−X方向に走査させながら記録する。この走査後、記録媒体Pを600dpi単位で120ドット分、+Y方向に搬送する。5回目の走査では吐出口137〜256を使用し、記録ヘッドを+X方向に走査させながら記録する。この走査後、記録媒体Pが排紙され、記録を終了する。上述の動作で形成される画像において、領域A、C、E、Gは、それぞれの領域で2回の走査によって記録され、領域B、D、Fは3回の走査によって記録される。このように記録媒体の搬送と複数回の走査とにより画像の記録が完成する。
【0093】
領域A、C、E、Gに着目すると、これらの領域では、記録ヘッドを2回走査させて画像を記録する。この2回の走査では、いずれも記録ヘッドの配列方向両端部の吐出口が用いられず、中央部の吐出口(非端部吐出口)のみを用いて記録される。一方、領域B、D、Fに着目すると、これらの領域では、記録ヘッドを3回走査させて画像を記録する。本実施形態では、3回の走査のうち2回の走査で記録ヘッドの端部の吐出口を用いて画像が記録され、1回の走査では記録ヘッドの端部の吐出口を用いずに、中央部の吐出口のみを用いて画像を記録する。尚、領域B、D、Fに対して記録ヘッドを走査させる走査回数は、領域A、C、E、Gに対して記録ヘッドを走査させる走査回数よりも多い。本実施形態では、1回多くなるように制御されている。
【0094】
図24において、記録ヘッドの両端部に形成された吐出口に対して、インクの吐出する吐出口の数が端部に近づくにつれて徐々に減少するようにマスクパターンの記録許容率が設定されている。これにより、記録ヘッドにおける吐出口列の端部に近づくにつれてインクの吐出量が徐々に減少する。このように、領域B、D、Fに対し、吐出口列の端部に含まれる吐出口群から一回の走査で吐出されるインク滴の数は、吐出口の配列方向に沿って、吐出口列の端部に近いほど少なくなる。
【0095】
記録媒体に記録すべき画像データを100%のベタ画像とすると、領域B、D、Fには、端部の吐出口群は、図24の1回目の走査での記録と3回目の走査での記録とを合わせて50%が記録される。これら50%分の記録と、2回目の走査で記録ヘッドの中央部に形成された吐出口による50%分の記録とを合わせて、この領域における100%分の記録を行う。図24に示されるように、1回目の走査での記録と3回目の走査での記録とでは、それぞれインク吐出を行う吐出口の数の増減する方向が逆方向に変化する吐出口によって補完し合う。このように、本実施形態では、領域B、D、Fの記録で、1回目の走査と3回目の走査のときに、記録ヘッドにおいてインクを吐出する吐出口の数が記録ヘッドの端部に近づくにつれて徐々に減少するようなマスクパターンが用いられる。そして、1回目の走査と3回目の走査の間で、吐出口列の両端部の吐出口から吐出されたインク滴の画素によってそれぞれインクの吐出を補完し合うことで記録が行われる。従って、搬送量に誤差が生じたことで記録画像の濃度が変化したとしても、誤差による記録画像の変化が1回目の走査で記録される領域と3回目の走査で記録される領域とで重複した部分の内部で分散される。従って、局所的に急激な濃度の上昇が抑えられ、記録画像の濃度の変化が目立たないように記録を行うことができる。
【0096】
図25(a)〜25(c)、図26(a)〜26(d)には上述の動作で使用するマスクを示す。前述の実施形態と同様に、マスクパターンの記録許容画素(グレーの画素及び黒の画素)と記録データとが合致する場合にインク吐出する。複数のマスクパターンにおいて、グレーの画素は1つのマスクパターンで、黒の画素には2つ以上のマスクパターンでインクの吐出が許容される画素の位置を示す。
【0097】
図25(a)及び図25(b)は、図24の領域A、C、E、Gのように、記録ヘッドの2回走査によって記録が行われる2パス記録に用いられるマスクパターンである。2回の走査で行われているインク滴の吐出が、それぞれ補完し合うことにより、図25(c)に示されるような100%のベタ画像が記録される。
【0098】
図25(a)は、吐出口17〜120を使用して1走査目を記録するときのマスクパターン41であり、図25(b)は、吐出口137〜240を使用して2走査目を記録するときのマスクパターン42である。これらのマスクは、2回の走査で各領域に対して記録画像を形成するためのマスクである。本実施形態で用いられるこれらマスクパターンのサイズは、Y方向が104(吐出口数分)、X方向が1024である。画像データが1024以上存在する場合は、1024毎にマスクを繰り返して使用する。図25Cは、マスクパターン41、42を重ねて論理和をとった画像43が示されている。これら図25(a)、25(b)に示す2つのマスクを用いて2回の走査による記録で領域A、C、E、Gの画像を完成させる。
【0099】
図26は、図24の領域B、D、Fのように3回の走査によって記録される領域に対して用いられるマスクについて示されている。図26(a)は、吐出口1〜16を使用して1走査目を記録するときのマスクパターン111である。図26Bは、吐出口121〜136を使用して2走査目を記録する場合のマスクパターン112である。図26(c)は、吐出口241〜256を使用して3走査目を記録する場合のマスクパターン113である。図26(d)は、3パスマスク111、112、113を重ねて論理和をとった結果を示す画像114である。画像を形成する際の、記録媒体搬送と使用する吐出口の関係は図24と同じである。
【0100】
本実施形態で用いられる3パスマスクのサイズは、Y方向に16(吐出口数分)ドット分、X方向に1024ドット分の長さを有している。画像データがX方向に1024以上存在する場合は、1024毎にマスクを繰り返して使用する。これら図26(a)〜26(c)に示す3つのマスクを重ね合わせると、全ての画素に対する記録が許容される関係であり、3回の走査による記録で図24の領域B、D、Fの画像を完成させる。ここで、図26(a)、26(c)に示されるマスクでは、記録ヘッドにおける端部付近に形成されている吐出口が使用されて記録が行われている。図26(a)、26(c)に示されるマスクでは、記録ヘッドの端部に近い位置であるほど、マスクパターンの記録許容率が低くなるようにマスクが設定されている。
【0101】
ここで、マスクパターン41、42、111、112、113の全てのマスクを使用して記録する図24の3回目の走査の状態に注目する。図27(a)は、この状態における吐出口列の各吐出口に対応するマスクパターンの記録許容率を示す。吐出口列両端部(吐出口1及び吐出口256)に対応するマスクパターンの記録許容率は3%であり、そこから互いに吐出口列中央部に向かって記録許容率が増加する。そして、吐出口列の両端部から16個目の吐出口(吐出口16及び吐出口241)でインクの吐出を許容する記録許容率が47%となる。残りの中央部の吐出口(吐出口17〜吐出口240)に対応する記録許容率は50%で一定である。このように、3パス記録が行われる領域に対して用いられるマスクパターンは、吐出口列における端部の吐出口に対応するマスクパターンの記録許容率が低い。従って、Y方向への記録媒体の搬送誤差が生じたときに現れる濃度の変化や、記録ヘッドの端部の吐出口から吐出されたインク滴の着弾誤差を、吐出口列の端部付近によって記録される領域同士が重複した部分に分散させ、濃度変化を抑制できる。
【0102】
さらに、図26のマスクパターン群を用いることにより、高デューティによる記録が連続して行われた場合に生じる記録ヘッドの吐出口の配列方向の温度差に起因する濃度ムラをも抑制することができる。図27(b)は、全ての画素にデータが存在する100%の記録データに対して、図24の3番目のマスクを使用して記録したときの記録開始直後に生じる吐出口列内の温度変化を示す。吐出口列中央部の温度が5度昇温するのに対し、吐出口列両端部の温度が1度昇温しており、中央部よりも端部の方が、温度変化が小さい。その理由としては、前述したように、マスクパターンの記録許容率の分布により吐出口列端部は吐出口列中央部に比べて一回の走査あたりの記録デューティがあまり高くならず、熱の発生そのものが少ないことがある。また、吐出口列端部は熱が拡散しやすいために、吐出口列端部では中央部に比べて放熱特性が高いことがある。そして、図6(b)に示したように、温度分布と吐出量には関係があり、温度が高いほど吐出量が大きくなり、画像内の濃度ムラにつながる。
【0103】
このため、本実施形態では、図26(a)〜26(c)のマスクパターン111〜113に示されるように、マスクパターン111と113、つまり1パス目と3パス目の走査における記録動作で2度打ちの画素が形成される。図26(a)〜26(c)では、3パス記録に用いるマスクパターン111〜113において、黒の画素によって2回以上インクの吐出を許容する画素が示されている。そして、図26(d)に示されるマスクパターン111〜113が重ねられたマスクパターン114では、グレーの画素で3回の走査のうちのいずれか1回でインクの吐出が許容されるのに対して、黒の画素で3回の走査のうち2回の走査でインクの吐出が許容される。そして、この黒の画素は、図26(a)及び図26(c)のマスクのY方向において、マスクの端部よりも中央部で多く存在するように設定されている。このように、吐出口列中央部の吐出口を用いて2パスで記録される領域A、C、E,Gに対して用いるマスクパターンの記録許容画素の割合(記録許容率)は100%であり、全ての画素がいずれか1つのマスクパターンにより記録が許容される。一方、吐出口列端部の吐出口を用いて3パスで記録される領域B、D、Fに対して用いるマスクパターンの記録許容率の合計は、100%よりも大きく、2つ以上のマスクパターンで記録を許容される画素が存在する。すなわち、吐出口列端部の吐出口を用いて記録される領域B、D、Fに用いるマスクパターンは、吐出口列中央部の吐出口を用いて記録される領域A、C、E,Gに用いるマスクパターンよりも、同一画素に対して2回以上インクを打ち込む画素の数が多い。
【0104】
本実施形態で用いるマスクパターンについて、図28に示す。図28(a)−28(c)は、縦軸にインク吐出の行われる吐出口としてマスクパターンの記録許容率を取り、横軸に吐出口の位置を取る。図28(a)は、3回の走査のうち2度打ちを行わない記録に用いられる3パスマスク(点線)及び3回の走査のうち二回の走査で同位置に記録を行う2度打ちが行われる際の3パスマスク111(実線)の吐出口列内方向におけるマスクパターンの記録許容率を示す。2度打ちが行われないマスクでは、吐出口1から吐出口16にかけてマスクパターンの記録許容率が3%から47%へと線形に増加する。
【0105】
2度打ちの行われるマスク111では、吐出口1から吐出口16にかけてマスクパターンの記録許容率が3%から47%へと増加する傾向は同じである。しかしながら、マスク111における吐出口8、吐出口9あたりのマスク中央付近において、2度打ちの分だけマスクパターンの記録許容率がマスクよりも多くなる。2度打ちの行われないマスクと2度打ちの行われるマスク111とのベタ打ちの記録の前後におけるマスクパターンの記録許容率の差は吐出口8、吐出口9のときが1%と最大となる。そこから記録ヘッドの端部に向かうにつれてマスクパターンにおけるインク吐出を行う吐出口の記録許容率が小さくなり、吐出口1、吐出口16では差は0%となる。つまり、吐出口1や吐出口16を使用する記録ヘッドの端部では2度打ちされる画素がなく、吐出口8、吐出口9を使用する記録ヘッドの中央付近では2度打ちされる画素が最も多くなるような配置となっている。
【0106】
図28(b)は2度打ちの行われない場合の3パスマスク(点線)と2度打ちの行われる場合の3パスマスク113(実線)の吐出口の配列方向へのマスクパターンの記録許容率を示す図である。2度打ちしない記録の際に用いられるマスク及び2度打ちが行われる記録の際に用いられるマスク111は、それぞれ図28(a)に示されるものに対して鏡面反転したものと同じであるので、その説明については省略する。図28(c)は、2パスで行われる記録の際に用いられるマスク及び3パスで行われる記録の際に用いられるマスクを重ね合わせたときの吐出口列内方向におけるマスクパターンの記録許容率を示す。
【0107】
図28(c)の点線に示されるように、2度打ちが行われない2パスマスク及び3パスマスクを重ね合わせたものについては、マスクパターンの記録許容率が100%で吐出口配列方向に一定となっている。
【0108】
これに対し図28(c)の実線に示されるように、2度打ちが行われる2パスマスク及び2度打ちが行われる3パスマスク111〜113を重ね合わせたものについては、マスク中央部を使用して記録する領域でマスクパターンの記録許容率が102%となっている。結果として3パスマスク111〜113を使用して記録される領域中の全ての画素に対してインクの吐出が許容されるようなマスクパターンとなっている。そして、記録ヘッドの端部の吐出口に対しては100%の記録許容率である。また、記録ヘッドの中央部の吐出口に対しては、102%(=3パスマスク111の51%+3パスマスク113の51%)の記録許容率であり、2度打ちされる画素が存在ことになる。
【0109】
上述の3パスマスク111〜113を使用して、吐出口列内方向にドット径分布に差が発生する状態で、図24に示す記録方法により形成される画像とその画像の明度分布を図29(a)に示す。3パスで形成される画像領域I、K、Mにおける明度変化が少なく抑えられている。
【0110】
上述のように2度打ちされる画素が存在するようなマスクパターン群を用いることによって、記録画像が補正された場合に発明者が実際に記録された画像を確認したところ、2パス記録領域と3パス記録領域との明度差が抑制された。また、2度打ちされたことによる粒状感も抑制されている。
【0111】
結果として、本実施例で紹介する3パスマスク111〜113を用いることで、ヘッド昇温によって吐出口の配列方向にドット径の分布が生じるような場合であっても、3パス記録領域の明度が上がることで生じる濃度ムラを抑制することができる。
【0112】
第五実施形態では、1pl吐出口からのインク吐出時のドット径を用いて説明しているが、2pl吐出口も5pl吐出口も程度差こそあれ、同様の一定でないドット径分布が発生することになる。
【0113】
ここで、図29(b)に、比較例として、1pl吐出口列により2度打ちされる画素が存在しない記録画像を示す。3パスで形成される画像領域P、R、Tで明度が高くなることが分かる。これは、温度上昇が少なく周囲に比べて温度が低いためにドット径の比較的小さい吐出口列端部に形成された吐出口により記録された領域において、インク領域占有率が相対的に下がり、下地の白が現れる度合いが増えたためである。また、画像領域P、R、Tにおいて、吐出口1や吐出口256を用いて記録される領域よりも吐出口8、吐出口248を用いて記録される領域の方が、明度が高くなることがわかる。これは、マスクパターンの記録許容率の分布によるものである。吐出口1(または吐出口256)から吐出されるインクは相対的にドット径が小さいが、そこでの記録許容率は3%である。残りの97%の吐出されるインク滴のうち、50%は中央部の吐出口121(または吐出口136)、47%はドット径が比較的中央部のものと近い吐出口241(または吐出口16)により記録される。つまり、記録される画像において、ドット径のほとんどが相対的に大きく、明度はそれほど高くならない。一方、相対的にドット径の小さいインクが吐出される吐出口8、吐出口248を25%の記録許容率で用いる方が、記録媒体上での被覆率に対する影響度が高いため、より明度が高くなり、画像領域P、R、Tにおいて真中あたりの領域が白っぽくなる。
【0114】
なお、第五実施形態による記録が行われた場合に、記録ヘッドの昇温が小さく吐出口列内に温度分布が見られないような低デューティ記録データの場合には、吐出口列内のドット径分布がほとんど生じないと考えられる。これも、前述の実施形態と同様の理由であり、複数のマスクパターンにより記録が許容され、2回以上インク滴が打ち込まれる画素の数が、100%のベタ画像を記録する場合に比べて低デューティ画像を記録する場合の方が少ないからである。
【0115】
以上より、本発明によれば、吐出口列端部を含む吐出口群を使用して記録する領域のパス数多くする記録において、温度分布が一定でなくなるような高デューティの記録を行った際に、濃度の偏りを抑えるためにインクの2度打ちを行う。従って、記録ヘッドの温度が吐出口の配列方向に沿って一定でなくなったとしても、濃度の偏りが抑えられるので、明度変化を抑制することが可能となり、記録画像の品質の低下を抑えることができる。
【0116】
本実施形態では2度打ちを発生させるマスクに第1パスと第3パスのマスクを選択している。しかしながら、本発明は特にこれに限定するものではなく、第1パスと第2パスや、第2パスと第3パス、また第1パス、第2パス、第3パスの全てで2度打ちを発生させる3パスマスクの組み合わせであっても良い。完成する画像において、所定の領域に2度打ちを発生させれば良い。また、本実施形態でパス1とパス3のマスクを選択した理由としては、わずかではあるが吐出口列端部付近のデューティが上がることにより吐出口列内の昇温分布の程度を軽減したかったことがある。また、本実施形態が±X方向の走査を交互に繰り返す双方向記録であることから、同じ方向で記録されるパスを選択したかったこと(往復のレジずれの発生を抑制したかったこと)がある。このように、同一位置へのインクの打ち込み数を多くした画素は、領域B、D、Fが端部付近吐出口群から吐出されるインク滴によって記録される走査の際に記録されるように、記録の制御が行われる。また、同一位置へのインクの打ち込み数を多くした画素を形成するために同一領域にインクを複数回打ち込む際には、同一方向への走査でインクを打ち込むように、記録の制御が行われている。
【0117】
マスクパターンにおいて、2度打ちされる画素の配置は、記録ヘッドの主走査方向に関し、ランダムに配置されるよりは図26(d)に示されるようにできるだけ分散性が良くなるように配置することが望ましい。これは、ランダムに配置した結果として2度打ち箇所がある箇所に部分的に集中してしまうと、その箇所が粒として視認されてしまい、結果粒状感が低下するためである。
【0118】
(第六実施形態)
次に、第六実施形態について説明する。なお、上記第一実施形態及び第五実施形態と同様に構成される部分については図中同一符号を付して説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0119】
第五実施形態では、吐出口列端部領域に勾配をつけたマスクを使用する場合について説明した。このようなマスクの特徴として、記録媒体の搬送誤差があるときに発生する局所的なスジを回避することができるというメリットがある。一方でデメリットとして、搬送誤差の許容範囲が、搬送が短い場合と長い場合との間で等しくならないという点がある。一般に搬送が許容範囲よりも短くなった場合には黒スジが、搬送が許容範囲よりも長くなった場合には白スジが発生する。端部を含む吐出口列からの記録領域を重複させて記録する場合に、吐出口列端部領域に勾配をつけたマスクを使用すると、局所的な黒・白スジは現れないが重複する領域全体で黒っぽくなったり、白っぽくなったりする。加えて、マスクで形成される領域は、搬送誤差によって搬送距離が短くなっても長くなっても面積占有率の変化から、正確に搬送されるときと比べて白くなることが知られている。上記2つの要素により、搬送誤差によって搬送距離が所定の搬送長さよりも短くなると記録画像の重複部が黒くなるのとマスクずれによって被覆率が変化することにより白っぽくなることで記録画像の変化が相殺される。これに対し、誤差によって搬送距離が所定の搬送長さよりも長くなった場合には、吐出口列重複部が白くなるのとマスクずれによって面積占有率の変化し画像が白くなることとが相乗されることになる。その結果、搬送が所定の搬送長さよりも長くなる側の搬送誤差許容量は、所定の搬送長さよりも短くなる側に比べて白くなる。従来ではこのようなデメリットの影響を受けないよう、重複する吐出口列領域を十分に長く取ることで対応していた。しかし、重複する吐出口列領域を長くすることは、重複吐出口分だけパス数の増えた領域が長くなることを意味しているため、シリアル型プリンタにおいてはスループットの低下につながるものであった。
【0120】
スループットに重点を置き、局所的なスジの発生をある程度許容できるのであれば、重複部は勾配を持たせないマスクを使用する方が適している。スジは重複部の境界に発生するし、マスクずれによる面積占有率の変化についての課題は残るが、重複部の中では搬送誤差によって黒っぽくなったり、白っぽくなったりする現象が発生することを抑えることができる。本実施形態では、重複部でインク吐出を行う吐出口の数が勾配を持たない例について説明する。
【0121】
本実施形態で説明するインクジェット記録装置の基本構成は、第五実施形態で述べたものと同一である。第六実施形態で用いられるマスクパターンは、3パス記録による重複部の記録領域で、記録ヘッドからのインク吐出を行う吐出口の分布に、吐出口の位置による勾配が無い点で、第五実施形態のものとは異なる。本実施形態の記録方法によって記録を行う際に用いられるマスクについて、図30(a)〜30(c)に示す。3パス記録によって記録画像を形成する部分は、図30(a)−30(c)に示す3つのマスクによってインク吐出が制御されて記録が行われる。図30(a)は、吐出口1〜16を使用して1走査目を記録するときの3パスマスク261である。図30(b)は、吐出口121〜136を使用して2走査目を記録する場合の3パスマスク262である。図30(c)は、吐出口241〜256を使用して3走査目を記録する場合の3パスマスク263である。図30(d)は3パスマスク261、262、263を重ねた結果としてのベタ画像264である。図30(a)〜30(d)に示されるマスクは補完関係にあり、3回の走査で図24の領域B、D、Fのそれぞれの画像を完成させる。ここで、後述するような2度打ちを行わない場合に2パスマスク及び3パスマスク261、3パスマスク262、3パスマスク263の全てのマスクを使用して記録する場合のマスクパターンにおけるインク吐出を行う吐出口の記録許容率を図31に示す。吐出口列両端部(吐出口1及び吐出口256)から吐出口列中央部に向かって16吐出口(吐出口17及び吐出口240)のマスクパターンでのインク吐出を行う吐出口の記録許容率は25%であり、残りの吐出口(吐出口17〜吐出口240)は50%を維持する。
【0122】
図30(a)〜30(d)に示されるように、本実施形態ではさらにマスクの一部に2度打ちする画素を設けている。本実施形態の3パスマスク261及び3パスマスク263には、一部黒升の箇所が追加されている。マスクパターンにおいて、グレー升で示される画素は3回の記録走査の中1回だけ出現するのに対し、黒升で示される画素は3パスマスク261と3パスマスク263の2回に出現する。つまり、図30(d)に示されるグレー升の画素は3回の記録で補完され、それに加えて黒升の画素に対して2度打ちされる。そして、この黒升の画素は図30(a)及び図30(c)のマスクにおいて、吐出口中央部付近よりも端部付近で多く出現する。
【0123】
これを、図32(a)〜32(c)を用いて詳細に説明する。図32(a)は、吐出口1〜16における3パスマスク261の吐出口の配列方向に沿ったマスクパターンの記録許容率を示す。点線が2度打ちの行われない3パスマスク、実線が2度打ちの行われる3パスマスク261である。2度打ちの行われない場合の3パスマスクは吐出口1から吐出口16にかけてマスクパターンの記録許容率が25%と一定になっている。それに対し、2度打ちの行われる場合の3パスマスク261は吐出口1及び吐出口16のマスクパターンの記録許容率が26%で、そこから吐出口列中央部まで徐々に減っていき、吐出口8、吐出口9あたりでは、マスクパターンの記録許容率が25.7%となる。2度打ちの行われない3パスマスクと2度打ちの行われる3パスマスク261とのマスクパターンの記録許容率の差は吐出口1、吐出口16のときが1%と最大で、マスク中央に向かうにつれて小さくなり、吐出口8、吐出口9では差は0.7%で最小となる。つまり、吐出口8や吐出口9よりも、吐出口1、吐出口16を使用するマスク端部付近では2度打ちが多く発生するようにマスクが設定されている。図32(b)は、吐出口241〜256における2度打ちの行われない3パスマスク(点線)と2度打ちの行われる3パスマスク263(実線)の吐出口の配列方向におけるマスクパターンの記録許容率を示す図である。各々が3パスマスク221、3パスマスク261を鏡面反転したものと同じであるので、説明は省略する。図32(c)は、3回の走査で記録画像が記録されるときのそれぞれの3パスマスクを合わせたときの吐出口の配列方向におけるマスクパターンの記録許容率を示す。2度打ちの行われない場合の3パスマスクを合わせたもの(点線)におけるマスクパターンの記録許容率が100%で一定になる。これに対して、2度打ちの行われる3パスマスク261〜263を合わせたもの(実線)におけるマスクパターンの記録許容率はマスク真中部を使用して記録する領域では101.4%、マスク端部を使用して記録する領域では102%となる。結果として、2度打ちの行われる3パスマスク261〜263を使用して記録される領域においては、3パスで100%補完されてまず100%の画素が記録される。それに加えて、3パス領域におけるマスクの央付近が使用される領域では1.4%(=3パスマスク261の0.7%+3パスマスク263の0.7%)の記録許容率で2度打ちされる。また、3パス領域におけるマスク端部が使用される領域では、2%(=3パスマスク261の1%+3パスマスク263の1%)、の記録許容率で2度打ちされることになる。
【0124】
上述の3パスマスク261〜263を使用して、2度打ちが行われたときに形成される画像とそのときの明度分布を、図33(a)に示す。図33(a)に示されるように、3パスで形成される画像領域I、K、Mにおいて、比較的明度変化が抑えられている。これは、ドット径が小さくなったことに対して、2度打ち箇所を追加することで明度を補償できていることを示している。
【0125】
結果として、本実施形態で紹介する3パスマスク261〜263を用いることで、ヘッド昇温によって吐出口列内方向にドット径の分布が生じるような場合であっても、3パス記録領域で発生する白みがかる現象を抑制することができるようになる。
【0126】
このように、本実施形態では、3パスで記録される領域への記録で、端部付近吐出口群から一回の走査で吐出されるインク滴の数は、吐出口の配列方向に沿って一定である。そして、同一位置へのインクの打ち込み数を多くした画素は、3パスで記録される記録領域における配列方向に沿った端部に近い位置の方が、配列方向に沿ったその領域における中央に近い位置よりも多くなるように、記録の制御が行われる。
【0127】
重複部に2度打ち箇所を発生させることに関して、第五実施形態では重複部の中でも真中において2度打ちの発生確率が高いのに対し、第六実施形態では重複部の中でも端部において2度打ちの発生確率が高い。重複部の中でどの区域に2度打ちの発生確率を多く設定すれば良いかについては、端部のマスク勾配が急峻なときは真中が比較的に良く、緩やかなときは端部が比較的に良いと言える。例えば、端部のマスクデューティに勾配があったとしても、その勾配が非常に緩やかなときは第六実施形態による記録方法が採用された方が好ましい。
【0128】
しかしながら、二度打ちを行う箇所については、マスクタイプと記録ヘッドの昇温特性の関係性に因るところが大きいので、マスクもしくは記録ヘッド駆動周波数が異なる記録モード毎、及び記録ヘッド毎に最適なものを選択することが最も望ましい。このように、インクジェット記録装置が記録デューティの異なる複数の記録モードを有している場合、記録デューティの異なる記録モードのそれぞれで同一位置へのインクの打ち込み数を多くした画素を形成する。そして、記録モードごとに、同一位置へのインクの打ち込み数を多くした画素の位置が異なるように、記録の制御が行われても良い。
【0129】
一方、上述のように吐出口の配列方向にドット径分布が発生するような状態で、2度打ちの行われない記録方法によって1pl吐出口列で行なったときに形成される画像とそのときの明度分布を、図33(b)に示す。図33(b)に示されるように、3パスで形成される画像領域P、R、Tで明度が高くなることが分かる。これは、それらの領域では、吐出口の温度上昇が小さく、ドット径の小さい吐出口列端部を使用して記録しているため、インク領域占有率が減って下地の白が現れる度合いが増えたためである。また、画像領域P、R、Tの中でも吐出口8や吐出口248を使用する領域よりも吐出口1、吐出口256あたりを使用する端部あたりの領域の方が、明度が高くなることがわかる。画像領域P、R、Tの中央部では吐出口8(または吐出口9)、吐出口128(または吐出口129)、吐出口248(または吐出口249)が使用される。また、画像領域P、R、Tの端部では吐出口1(または吐出口16)、吐出口121(または吐出口136)、吐出口241(または吐出口256)が使用される。これは、重複部分の内部では25%と記録デューティは変わらないのに、吐出口列端部付近の吐出口は吐出口の温度上昇が小さいのでドット径が小さく、濃度が小さいためであると考えられる。第一実施形態でも説明したように、吐出口列内に昇温分布が発生する原因として、吐出口の配列方向の放熱特性の差が存在する。放熱は3次元方向に拡散するため、吐出口列内の昇温分布は1次以上の関数に従うのである。この結果、画像領域P、R、Tにおいては吐出口1(または吐出口16)、吐出口241(または吐出口256)あたりを使用する重複領域端部あたりが白っぽくなる結果となる。
【0130】
なお、本明細書において、「記録」とは、文字、図形等有意の情報を形成する場合のみならず、有意無意を問わずに用いられる。また、人間が視覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かを問わず、広く記録媒体上に画像、模様、パターン等を形成する、または記録媒体の加工を行う場合も表すものとする。
【0131】
また、「記録装置」とは、プリンタ、プリンタ複合機、複写機、ファクシミリ装置などのプリント機能を有する装置、ならびにインクジェット技術を用いて物品の製造を行なう製造装置を含む。
【0132】
また、「記録媒体」とは、一般的な記録装置で用いられる紙のみならず、広く、布、プラスチック・フィルム、金属板、ガラス、セラミックス、木材、皮革等、インクを受容可能なものを表すものとする。
【0133】
さらに、「インク」(「液体」と言う場合もある)とは、上記「記録」の定義と同様広く解釈されるべきものである。記録媒体上に付与されることによって、画像、模様、パターン等の形成または記録媒体の加工、或いはインクの処理(例えば記録媒体に付与されるインク中の色剤の凝固または不溶化)に供され得る液体を表すものとする。
【符号の説明】
【0134】
102 記録ヘッド
1000 CPU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出する複数の吐出口が配列された記録ヘッドを、記録媒体上の第1領域、及び、前記第1領域と同じ大きさの第2領域のそれぞれに対して複数回走査させることにより、前記第1領域及び第2領域に画像を記録するインクジェット記録方法であって、
前記記録ヘッドの複数回の走査のうち少なくとも1回の走査において、前記記録ヘッドの前記吐出口の列の端部の吐出口を含む吐出口群を用いて画像が記録される領域である前記第1領域に記録すべき画像に対応する画像データと、複数のマスクパターンを含む第1のマスクパターン群とに基づいて、前記第1領域に対する前記記録ヘッドの複数回の走査でそれぞれ記録するための記録データを生成する第1生成工程と、
前記記録ヘッドの複数回の走査のうち全ての走査において、前記記録ヘッドの前記吐出口の列の端部の吐出口を含まない吐出口群を用いて画像が記録される領域である前記第2領域に記録すべき画像に対応する画像データと、複数のマスクパターンを含む第2のマスクパターン群とに基づいて、前記第2領域に対する前記記録ヘッドの複数回の走査でそれぞれ記録するための記録データを生成する第2生成工程と、
前記第1生成工程において生成された記録データに基づいて、複数回の走査で前記第1領域に対して記録を行う第1記録工程と、
前記第2生成工程において生成された記録データに基づいて、複数回の走査で前記第2領域に対して記録を行う第2記録工程とを備え、
前記第1生成工程で生成された記録データに対応する記録画像に含まれる複数の画素のうち前記第1のマスクパターン群を用いた処理において少なくとも2つのマスクパターンのそれぞれにより同一位置への記録を許容された前記画素の数は、前記第2生成工程で生成された記録データに含まれる複数の前記画素のうち前記第2のマスクパターン群を用いた処理において少なくとも2つのマスクパターンのそれぞれにより同一位置への記録を許容された画素の数よりも多いことを特徴とするインクジェット記録方法。
【請求項2】
前記第1のマスクパターン群に含まれる複数のマスクパターンそれぞれの記録を許容する画素の割合の合計は100%より大きく、且つ、前記第2のマスクパターン群に含まれる複数のマスクパターンそれぞれの記録を許容する画素の割合の合計は100%であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録方法。
【請求項3】
前記第2のマスクパターン群に含まれる複数のマスクパターンの間では、記録を許容する画素が互いに排他の位置に存在することを特徴とする請求項2に記載のインクジェット記録方法。
【請求項4】
インクを吐出する複数の吐出口が配列された記録ヘッドを、記録媒体上の単位領域に対して前記吐出口の配列方向と交差する走査方向に2回走査させることにより、前記単位領域に画像を記録するインクジェット記録方法であって、
前記単位領域に記録すべき画像データに基づいて、各走査で記録するための第1の記録データ及び第2の記録データを生成する生成工程と、
前記生成工程において生成された前記第1の記録データ及び前記第2の記録データに基づいて、前記記録ヘッドの2回の走査で前記単位領域に対して記録を行う記録工程とを備え、
前記第1の記録データと前記第2の記録データとの論理積をとることにより得られる前記第1の記録データと前記第2の記録データとで同一位置に記録を行う画素についてのデータにおいて、前記走査方向における端部に含まれる画素は、前記走査方向における中央部に含まれる画素よりも多いことを特徴とするインクジェット記録方法。
【請求項5】
インクを吐出する複数の吐出口が配列された記録ヘッドを記録媒体に対して複数回走査させることにより、前記記録媒体に対して画像を記録するインクジェット記録方法であって、
画像を記録するための複数回の走査を伴う複数の記録動作のうち、前記記録ヘッドの端部に含まれる吐出口を用いた走査を伴う記録動作が少なくとも1回以上行われる記録媒体上の領域である第1領域において吐出されたインク滴の着弾位置が重なるように吐出する位置の数は、前記記録ヘッドの端部に含まれる吐出口が用いられずに全ての記録動作が行われる記録媒体上の領域である第2領域において吐出されたインク滴の着弾位置が重なるように吐出する位置の数よりも多いことを特徴とするインクジェット記録方法。
【請求項6】
前記第1領域に対して画像の記録を完成させるための前記記録ヘッドの走査回数は、前記第2領域に対して画像の記録を完成させるための前記記録ヘッドの走査回数よりも多いことを特徴とする請求項5に記載のインクジェット記録方法。
【請求項7】
インクを吐出する複数の吐出口が配列された記録ヘッドを記録媒体に対して複数回走査させることにより、前記記録媒体に対して画像を記録するインクジェット記録方法であって、
画像を記録するための複数回の走査を伴う複数の記録動作のうち、前記記録ヘッドの端部に含まれる吐出口を用いた走査を伴う記録動作が少なくとも1回以上行われる記録媒体上の領域である第1領域において、吐出されたインク滴の着弾位置が重なるように吐出する画素の、前記第1領域の全体の画素に対する割合は、前記記録ヘッドの端部に含まれる吐出口が用いられずに全ての記録動作が行われる記録媒体上の領域である第2領域において吐出されたインク滴の着弾位置が重なるように吐出する画素の、前記第2領域の全体の画素に対する割合よりも多いことを特徴とするインクジェット記録方法。
【請求項8】
インクを吐出する複数の吐出口が配列された記録ヘッドを、記録媒体上の単位領域に対して前記吐出口の配列方向と交差する走査方向に2回走査させることにより、前記単位領域に画像を記録するインクジェット記録方法であって、
前記単位領域に記録すべき画像データと、前記2回の走査に対応した第1のマスクパターン及び第2のマスクパターンとに基づいて、各走査で記録するための第1の記録データ及び第2の記録データを生成する生成工程と、
前記生成工程において生成された前記第1の記録データ及び前記第2の記録データに基づいて、前記記録ヘッドの2回の走査で前記単位領域に対して記録を行う記録工程とを備え、
前記第1のマスクパターン及び第2のマスクパターンの両方において、前記走査方向において前記記録ヘッドの中央部に対応する領域へ行われる記録許容画素のデューティが、前記記録ヘッドの端部に対応する領域へ行われる記録許容画素のデューティよりも高くなるように、前記第1のマスクパターン及び第2のマスクパターンの記録許容画素が設定され、
前記第1の記録データと前記第2の記録データとの論理積をとることにより得られる前記第1の記録データと前記第2の記録データとで同一位置に記録を行う画素において、前記走査方向における中央部に含まれる画素は、前記走査方向における端部に含まれる画素よりも多いことを特徴とするインクジェット記録方法。
【請求項9】
インクを吐出する複数の吐出口が配列された記録ヘッドを、記録媒体上の単位領域に対して1回走査させることにより前記単位領域に画像を記録するインクジェット記録方法であって、
前記記録ヘッドは、第1の吐出口列と、前記第1の吐出口列と同色のインクを吐出する第2の吐出口列とが前記記録ヘッドの走査方向に沿って配置され、
前記第1の吐出口列及び第2の吐出口列の端部の吐出口を含む吐出口群を用いて画像が記録される記録媒体上の領域である第1領域において吐出されたインク滴の着弾位置が重なるように吐出する位置の数は、前記第1の吐出口列及び第2の吐出口列の端部の吐出口を含む吐出口群を用いずに画像が記録される領域である記録媒体上の第2領域において吐出されたインク滴の着弾位置が重なるように吐出する位置の数よりも多いことを特徴とするインクジェット記録方法。
【請求項10】
インクを吐出する複数の吐出口が配列された記録ヘッドを、記録媒体上の単位領域に対して1回走査させることにより前記単位領域に画像を記録するインクジェット記録方法であって、
前記記録ヘッドは、第1の吐出口列と、前記第1の吐出口列と同色のインクを吐出する第2の吐出口列とが前記記録ヘッドの走査方向に沿って配置され、
前記第1の吐出口列を用いて前記単位領域に画像を記録するための記録データと、前記第2の吐出口列を用いて前記単位領域に画像を記録するための記録データを生成する生成工程であって、前記単位領域は、前記第1の吐出口列及び第2の吐出口列の端部の吐出口を含む吐出口群を用いて画像が記録される領域である第1領域と、前記第1の吐出口列及び第2の吐出口列の端部の吐出口を含む吐出口群を用いずに画像が記録される領域である第2領域と、から成り、前記第1領域に記録すべき画像に対応する画像データと第1のマスクパターン及び第2のマスクパターンとに基づいて前記第1領域に記録するための記録データを生成し、前記第2領域に記録すべき画像に対応する画像データと第3のマスクパターン及び第4のマスクパターンとに基づいて前記第2領域に記録するための記録データを生成する生成工程と、
前記生成工程において生成された記録データに基づいて、前記単位領域に対して画像を記録する記録工程とを備え、
前記第1領域に対して記録するための記録データに対応する記録画像に含まれる複数の画素のうち、前記第1のマスクパターン及び第2のマスクパターンの両方により同一位置への記録を許容された前記画素の数は、前記第2領域に対して記録するための記録データに対応する記録画像に含まれる複数の前記画素のうち、前記第3のマスクパターン及び第4のマスクパターンの両方により同一位置への記録を許容された画素の数よりも多いことを特徴とするインクジェット記録方法。
【請求項11】
インクを吐出する複数の吐出口が配列された記録ヘッドを、記録媒体上の第1領域、及び、前記第1領域と同じ大きさの第2領域のそれぞれに対して複数回走査させることにより、前記第1領域及び第2領域に画像を記録するインクジェット記録装置であって、
前記記録ヘッドの複数回の走査のうち少なくとも1回の走査において前記記録ヘッドの前記吐出口の列の端部の吐出口を含む吐出口群を用いて画像が記録される領域である前記第1領域に記録すべき画像に対応する画像データと、複数のマスクパターンを含む第1のマスクパターン群と、に基づいて、前記第1領域に対する前記記録ヘッドの複数回の走査でそれぞれ記録するための記録データを生成する第1生成手段と、
前記記録ヘッドの複数回の走査のうち全ての走査において前記記録ヘッドの前記吐出口の列の端部の吐出口を含まない吐出口群を用いて画像が記録される領域である前記第2領域に記録すべき画像に対応する画像データと、複数のマスクパターンを含む第2のマスクパターン群と、に基づいて、前記第2領域に対する前記記録ヘッドの複数回の走査でそれぞれ記録するための記録データと、を生成する第2生成手段と、
前記第1生成手段により生成された記録データに基づいて、複数回の走査で前記第1領域に対して記録を行う第1記録手段と、
前記第2生成手段により生成された記録データに基づいて、複数回の走査で前記第2領域に対して記録を行う第2記録手段と、
前記第1生成手段により生成された記録データに対応する記録画像に含まれる複数の画素のうち前記第1のマスクパターン群を用いた処理において少なくとも2つのマスクパターンのそれぞれにより同一位置への記録を許容された前記画素の数は、前記第2生成手段により生成された記録データに対応する記録画像に含まれる複数の前記画素のうち前記第2のマスクパターン群を用いた処理において少なくとも2つのマスクパターンのそれぞれにより同一位置への記録を許容された画素の数よりも多いことを特徴とするインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図4】
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【図7】
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【図23】
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【図29】
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【公開番号】特開2012−45927(P2012−45927A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−156835(P2011−156835)
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】