説明

インクジェット記録装置

【課題】記録に必要な最小限に近いデータ量を保ちつつ、非記録部分での吐出不良の発生を容易に妨げる。
【解決手段】記録媒体の搬送位置を検出する搬送位置検出手段LEを備え、前記搬送位置で記録ヘッドHDに実施させる動作種別が示されたヘッド動作位置データに基づいて、前記搬送位置ごとに圧力付与手段AC1〜ACnの駆動を制御し、前記動作種別が記録動作であるとき、前記搬送位置のうちノズルからインク滴を吐出させる記録位置ごとに、インク滴を吐出させるノズルを指定する印字データに基づいて、圧力付与手段AC1〜ACnを前記記録動作に適した駆動に制御し、前記動作種別が前記記録動作以外であるとき、すべての圧力付与手段AC1〜ACnを一律に、当該動作種別に応じた態様で制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体にインク滴を吐出して記録を行うインクジェット記録装置に関し、特に、記録ヘッドの目詰り予防に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ノズルからインク滴を吐出して記録媒体に記録を行うインクジェット記録装置における記録速度の高速化の要望から、多数のノズルが記録媒体の幅以上の長さに亘って配列された記録幅を有するライン型の記録ヘッド(以下、ラインヘッドという)を備えたインクジェット記録装置(以下、ライン型インクジェット記録装置という)が実用化されている。
【0003】
ライン型インクジェット記録装置では、記録媒体がラインヘッドのノズルが形成された面であるノズル面に対向して連続的又は間欠的に搬送され、記録情報に基づいて、ノズルごとに備える圧力発生素子を選択的に駆動してノズルからインク滴を吐出し、記録ヘッドの移動をともなわずに記録を完了する。
一般的に、ライン型インクジェット記録装置では、1つのノズルから1回だけ吐出されるインク滴が形成する記録の最小単位である画素に展開された記録情報が、外部機器から1回の記録ごとに、一括して送られてくる。つまり、1回の記録が複数の記録媒体に亘る場合でも、複数の記録媒体におけるすべての画素分の記録情報が一括して送られてくる。
【0004】
このときの記録情報には、1つの記録媒体内での余白部分や行間部分、記録媒体同士間の隙間などの非記録部分に対しても、圧力発生素子を駆動させない旨を画素ごとに指示する不吐出データが含まれている。つまり、記録情報は、記録に寄与しない不吐出データを含んでおり、膨大なデータ量となるという未解決の課題がある。
この未解決の課題を解決する一例として、従来、記録ヘッドを主走査方向に往復移動させ、ノズル面に対向して間欠的に搬送される記録媒体に記録を行うシリアル型インクジェット記録装置において、記録ヘッドの移動にともなってパルスを発生するエンコーダを備え、非記録部分の記録情報を非記録部分の移動量に対応したパルス数である空白データとすることにより、記録情報のデータ量を削減できる構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平4−201585号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載された従来例では、空白データで記録ヘッドを駆動させることができず、非記録部分では記録ヘッドを待機させておかなければならない。
ここで、記録ヘッドは、非駆動状態で大気中に放置されると、ノズルからインクの溶媒が蒸発してノズル内のインクの粘度が上昇し、インク滴が正常に吐出されない吐出不良を招くことがある。シリアル型インクジェット記録装置であれば、非記録部分で記録ヘッドにキャップをしてインク粘度の上昇を妨げることが考えられる。
【0006】
しかし、シリアル型インクジェット記録装置に比較して記録ヘッドの大きさがはるかに大きいライン型インクジェット記録装置では、精密部品の集合体である記録ヘッドを、衝撃を与えることなく移動させるには機構や処理が複雑となり、非記録部分で記録ヘッドを短時間且つ頻繁に移動させてキャップをすることが困難である。
つまり、上記特許文献1に記載された従来例をライン型インクジェット記録装置に適用した場合、非記録部分において、インク粘度の上昇を招き、吐出不良を生じやすいという未解決の課題がある。
【0007】
そこで、ライン型インクジェット記録装置では、非記録部分で圧力発生素子をインク滴が吐出されない程度に微小駆動してインクを撹拌し、溶媒が蒸発して上昇したインクの粘度を緩和させて吐出不良を妨げることが考えられる。しかし、この場合、前述した空白データに代えて、圧力発生素子を微小駆動させる旨を画素ごとに指示する微小駆動データを採用しなければならず、記録情報のデータ量削減を図ることが困難であるという未解決の課題がある。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、記録に必要な最小限に近いデータ量を保ちつつ、非記録部分での吐出不良の発生を妨げることが容易なインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、記録媒体搬を搬送する記録媒体送手段と、該記録媒体搬送手段によって搬送される前記記録媒体の搬送方向とは交差する方向に複数のノズルが所定間隔で配列されているとともに、インクに圧力を付与する圧力付与手段を前記ノズルごとに備えた記録ヘッドとを備え、前記記録媒体搬送手段によって搬送される記録媒体の記録面に、外部機器から受け取った記録情報に基づいて、前記圧力付与手段を駆動して前記ノズルからインク滴を吐出し、記録動作を行うように構成されたインクジェット記録装置であって、前記記録情報は、前記記録媒体の前記搬送方向における搬送位置及び当該搬送位置で前記記録ヘッドに実施させる動作種別が示されたヘッド動作位置データと、前記搬送位置のうち前記複数のノズルから前記インク滴を吐出して前記記録ヘッドが前記記録を行う記録位置ごとに、前記複数のノズルの中から前記インク滴を吐出させる前記ノズルを指定する印字データと、を含んで構成され、前記記録媒体の前記搬送位置を検出する搬送位置検出手段と、該搬送位置検出手段が検出した前記搬送位置の搬送位置情報及び前記記録情報に基づいて、前記圧力付与手段の駆動を制御する駆動制御部と、を備え、前記駆動制御部は、前記動作種別が前記記録動作であるときに、前記圧力付与手段を前記印字データに基づいて、前記記録に適した駆動に制御し、前記動作種別が前記記録動作以外であるときに、すべての前記圧力付与手段を一律に、当該動作種別に応じた態様で前記記録ヘッドを制御することを特徴とする。
【0010】
この第1の発明では、記録ヘッドは、搬送位置検出手段が検出した記録媒体の搬送位置で、ヘッド動作位置データに示される動作種別に応じて、駆動制御部によって複数の圧力付与手段の駆動が制御される。
そして、複数の圧力付与手段は、ヘッド動作位置データに示される動作種別が記録動作であるとき、複数のノズルの中からインク滴を吐出させるノズルを記録位置ごとに指定する印字データに基づいて、インク滴の吐出に適した駆動に制御される。また、ヘッド動作位置データに示される動作種別が記録動作以外であるとき、印字データによらずにすべての圧力付与手段が一律に制御される。
【0011】
つまり、記録ヘッドは、ヘッド動作位置データに基づいて、複数の圧力付与手段の駆動が駆動制御部によって時系列的に制御される。そして、搬送位置が記録位置に到達すると、印字データに基づいて、指定されたノズルからインク滴を吐出させて記録が行われる。
この印字データは、記録位置ごとにインク滴を吐出させるノズルを指定するものであるため、すべてのノズルからインク滴を吐出させないことを指示する非記録情報を含んでいない。
【0012】
従って、非記録部分で記録以外の動作を実施させても、印字データのデータ量には何らの影響も及ばず、記録画像の情報である印字データを従来例と同様の必要最小限のデータ量で構成することができる。そして、この非記録部分で圧力付与手段を微小駆動させれば、吐出不良の発生を効率的且つ効果的に妨げることが可能となる。
第2の発明は、第1の発明において、前記駆動制御部は、前記ヘッド動作位置データの前記動作種別に基づいて、前記圧力付与手段を駆動する駆動信号を生成する駆動信号生成部と、前記記録位置ごとの前記印字データを格納する記録駆動情報格納部と、すべての前記圧力付与手段の駆動を指示する全駆動情報が格納された全駆動情報格納部と、前記動作種別が前記記録動作であるときに、前記記録位置ごとの前記印字データを選択し、前記動作種別が前記記録動作以外であるときに、前記全駆動情報を選択する情報選択部と、該情報選択部によって選択された前記記録位置ごとの前記印字データ及び前記全駆動情報のいずれか一方の情報が供給され、当該一方の情報に基づいて、前記駆動信号を前記圧力付与手段に供給する駆動信号供給部と、を備えていることを特徴とする。
【0013】
この第2の発明では、記録ヘッドは、ヘッド動作位置データにおける動作種別が記録動作であるとき、駆動信号生成部によって記録に適するように生成された駆動信号が、情報選択部によって選択された記録位置ごとの印字データに基づいて圧力付与手段に供給され、この印字データで指定されたノズルからインク滴を吐出させて記録を行う。
また、記録ヘッドは、ヘッド動作位置データにおける動作種別が記録動作以外であるとき、駆動信号生成部によってその動作種別に適するように生成された駆動信号が、情報選択部によって選択された全駆動情報に基づいてすべての圧力付与手段に供給され、すべての圧力付与手段が一律に制御される。
【0014】
つまり、駆動制御部が、すべての圧力付与手段の駆動を指示する全駆動情報が格納された全駆動情報格納部と、動作種別が記録動作以外であるときに、記録駆動情報格納部に格納されている印字データ及び全駆動情報から全駆動情報を選択する情報選択部とを備えているため、記録画像の情報である印字データのデータ量を増加させることなく、非記録部分で記録動作以外の動作を実施させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の実施形態を、ブラック色の記録を行うライン型インクジェット記録装置を例に、図面に基づいて説明する。
本発明の実施形態におけるインクジェット記録装置1は、平面図である図1(a)及び正面図である図1(b)に示すように、ゲートローラGRと、用紙搬送部CVと、記録ヘッドHDと、を備えている。なお、この図1において、X方向は、記録用紙Pの搬送方向を示し、Y方向は、X方向と直交する方向を示している。
【0016】
また、インクジェット記録装置1は、ブロック図である図2に示すように、給紙部KSと、搬送部駆動モーターMoと、インデックスセンサISと、リニアエンコーダLEと、排紙部EJと、外部機器から送られる記録情報を格納する記録情報格納部BFと、駆動波形記憶部WMと、をさらに備えている。
ここで、上記の各構成の詳細を説明する。
【0017】
記録ヘッドHDは、底面図である図3に示すように、インク滴が吐出されるノズルNZをY方向に、距離KRに亘って所定間隔で、n(nは、2以上の整数)個配列形成した構成を有している。ノズルNZの配列距離KRは、記録ヘッドHDにおける記録可能領域であり、図1(a)に示す記録用紙PのY方向における幅よりも長く設定されている。
なお、この図3において、構成をわかりやすく示すため、ノズルNZの大きさを誇張して図示している。また、これらn個のノズルNZのそれぞれに、NZ1〜NZnの異なる符合を付して、本明細書においては説明の便宜上、符号NZ及びNZ1〜NZnを適宜使い分けることとする。
【0018】
記録ヘッドHDは、図2に示すように、ピエゾ素子などの圧電素子で構成され、インクに圧力を付与する圧電アクチュエータAC1〜ACnを、ノズルNZ1〜NZnごとに備えている。この圧電アクチュエータAC1〜ACnについても、ノズルNZと同様に、符号AC及びAC1〜ACnを適宜使い分けることとする。
これら圧電アクチュエータAC1〜ACnは、CPUからの駆動指令に基づいて、駆動選択部SAによって選択された圧電アクチュエータACに、ヘッド制御部HDDから出力される駆動信号が印加されて個別に駆動される。
【0019】
そして、記録ヘッドHDは、図1(a)に示すように、用紙搬送部CV上で、ノズルNZが形成されている面であるノズル面を記録用紙Pに向けて、ノズルNZ1とノズルNZnとを結ぶ線が記録用紙PのY方向における幅を跨ぐように配設されている。また、記録ヘッドHDは、図1(b)に示すように、ノズル面と記録用紙Pの記録面PPとの間が所定間隔に保たれるように配設されている。
【0020】
用紙搬送部CVは、図4(a)に示すように、搬送部駆動モーターMoから動力が伝達される駆動ローラDSと、この駆動ローラDSに平行且つ駆動ローラDSのX方向上流側に配設される従動ローラFSと、駆動ローラDS及び従動ローラFSにかけ渡される搬送ベルトVと、を備えている。
ここで、駆動ローラDS及び従動ローラFSは、図示しないが、軸受によって筐体に回転可能に保持されている。
【0021】
また、従動ローラFSは、図示しないが、駆動ローラDSとの間にかけ渡される搬送ベルトVに緩みが発生しないように張力を付与するため、X方向上流方向に力が付与されている。
搬送部駆動モーターMoは、図2に示すように、CPUから搬送部駆動指令を受けたモーター制御部MDによって駆動が制御され、用紙搬送部CVを駆動する。そして、用紙搬送部CVは、搬送ベルトVが搬送部駆動モーターMoの動力によって、図1(b)で見て反時計方向に回転され、搬送ベルトV上に載置された記録用紙Pを搬送方向であるX方向に搬送する。
【0022】
また、用紙搬送部CVは、図4(a)及び(b)に示すように、搬送ベルトVの回転の原点基準となるインデックス信号を出力するインデックスセンサISと、記録用紙Pの搬送位置を制御するための搬送位置信号を出力するリニアエンコーダLEとを備えている。
インデックスセンサISは、例えば、フォトインタラプタ等の発光素子及び受光素子を備えた光学式センサで構成され、図2に示すセンサ制御部SDによって制御される。そして、インデックスセンサISは、搬送ベルトVの一側縁に凸形状に設けられているインデックス部IDが発光素子及び受光素子間の光軸を遮ると、出力電圧を変化させる。インデックス信号は、この出力電圧の変化を利用するものであり、記録用紙Pを用紙搬送部CVへ供給するタイミングを計るきっかけとなる。
【0023】
リニアエンコーダLEは、光学式センサを備え、光学式センサの光軸が遮られて受光素子の受光量に所定量の変化が生じると、出力電圧をパルス状に変化させる。このリニアエンコーダLEは、図2に示すエンコーダ制御部EDによって制御され、リニアスケールLSに所定間隔で刻まれた目盛りを検出することによって、パルス状に変化する出力電圧を搬送位置信号として出力する。
【0024】
リニアスケールLSは、図4(a)に示すように、搬送ベルトVのインデックス部IDが設けられている側縁とは逆側の側縁に、搬送ベルトVの外周の全周に亘って設けられている。つまり、搬送ベルトVを1回転させると、リニアエンコーダLEから出力される出力電圧は、搬送ベルトVの外周の全周に亘って所定間隔で刻まれた目盛りの数量と同じ回数だけ、パルス状の立ち上がり(ON状態)及び立ち下り(OFF状態)が発生する。
【0025】
本実施形態では、リニアエンコーダLEから出力される出力電圧のON状態を搬送位置信号として利用し、前述のインデックス信号が出力されてから、搬送位置信号をカウントすることによって、搬送ベルトV上に載置されて搬送される記録用紙Pの搬送位置が把握される。
給紙部KSは、図2に示すように、CPUから給紙指令を受けた給紙制御部KSDによって動作が制御され、記録用紙Pが格納されている図示しない用紙カセット、用紙トレイ等から記録用紙Pを1枚ずつ後述するゲートローラGRに供給する。
【0026】
ゲートローラGRは、図1(a)及び(b)に示すように、用紙搬送部CVのX方向上流側に配設され、互いに外周を接し合って回転する一対のローラを備えて構成されている。このゲートローラGRは、給紙部KSによって記録用紙Pが一対のローラ間に突き当てられるように供給されると、この記録用紙PのX方向に対する傾き及びY方向の位置ずれを矯正するスキュー補正を行う。そして、このゲートローラGRは、図2に示すように、CPUから用紙供給指令を受けたゲートローラ制御部GRDによって駆動が制御され、スキュー補正を行った記録用紙Pを用紙搬送部CVに供給する。
【0027】
図2に示す排紙部EJは、用紙搬送部CVのX方向下流側に配設され、CPUから排紙指令を受けた排紙制御部EJDによって駆動が制御され、搬送ベルトVによって搬送されてきた記録用紙Pをインクジェット記録装置1外へ排出する。
記録情報を格納する記録情報格納部BFは、例えば、不揮発性半導体メモリの一種であるEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)で構成され、図2に示すように、ヘッド動作位置データ記憶部CMと、印字データ記憶部DMとを有している。
【0028】
ここで、外部機器から送られる記録情報は、記録用紙Pの搬送位置ごとに記録ヘッドHDに実施させる動作の種類が示されたヘッド動作位置データと、n個のノズルNZ1〜NZnのうちでインク滴を吐出させるノズルNZを、記録を実施するラインごとに指定する印字データとで構成される。
ヘッド動作位置データは、記録ヘッドHDに要求する種々の動作を、それぞれどの搬送位置で実施させるかを示すものであり、下記表1に示すように、動作の種類を示す動作種類データ及びその動作を実施する搬送位置を示す搬送位置データとして、アドレスごとにヘッド動作位置データ記憶部CMに格納される。
【0029】
【表1】

【0030】
上記表1に示すヘッド動作位置データは、インクジェット記録装置1での記録が記録用紙Pの2枚に亘る場合の一例であり、動作の種類として、記録、微小駆動並びに停止及び動作終了の4種類が盛り込まれた例である。
ここで、微小駆動とは、ノズルNZ内のインクを撹拌し、ノズルNZから溶媒が蒸発して上昇したインクの粘度を緩和させるために、圧電アクチュエータACを駆動することをいう。
【0031】
インクジェット記録装置1では、圧電アクチュエータACに印加される駆動電圧波形として、図5に示すように、ノズルNZからインク滴を吐出させるように駆動するための吐出駆動波形JSと、ノズルNZからインク滴を吐出させない程度に駆動するための微小駆動波形MSとがある。上述の微小駆動では、微小駆動波形MSに基づいて、圧電アクチュエータACに駆動電圧が印加される。
【0032】
なお、インクジェット記録装置1は、外部機器から記録情報が入力されると、図5に示す0V(グランドレベル)から中間電位への立ち上げが行われ、上記表1の動作種類データにおける動作終了に基づいて、中間電位から0V(グランドレベル)への立ち下げが行われるように構成されている。
上記の表1に示すヘッド動作位置データは、搬送位置0から499までの区間で圧電アクチュエータAC1〜ACnを停止させ、搬送位置500から998までの区間で圧電アクチュエータAC1〜ACnを微小駆動させ、搬送位置999で圧電アクチュエータAC1〜ACnを停止させ、搬送位置1000から6668までの区間で記録ヘッドHDに記録を実施させ、搬送位置6669から7169までの区間で圧電アクチュエータAC1〜ACnを停止させ、搬送位置7170から7668までの区間で圧電アクチュエータAC1〜ACnを微小駆動させ、搬送位置7669で圧電アクチュエータAC1〜ACnを停止させ、搬送位置7670から13339までの区間で記録ヘッドHDに記録を実施させ、搬送位置13340で圧電アクチュエータAC1〜ACnを停止させ、搬送位置13341で記録ヘッドHDの動作を終了させることを示している。
【0033】
上記搬送位置1000から6668までの区間が1枚目の記録用紙Pに対する記録に該当し、搬送位置7670から13339までの区間が2枚目の記録用紙Pに対する記録に該当している。
また、印字データは、下記表2に示すように、インク滴を吐出させるノズルNZの番号を、記録を実施するラインごとに論理値“1”で示して指示する記録画像情報であり、印字データ記憶部DMに格納される。
【0034】
【表2】

【0035】
ここで、記録を実施するライン(以下、記録ラインと呼ぶ)とは、1枚の記録用紙Pに設定される記録領域内におけるX方向の位置であり、n個のノズルNZ1〜NZnからインク滴を吐出させて記録ヘッドHDが記録を行う記録位置をいう。
上記表2に示す印字データでは、論理値が“1”である場合に、インク滴を吐出させることを示し、論理値が“0”である場合に、インク滴を吐出させないことを示している。例えば、記録ラインの1ライン目では、表2に示すように、ノズルNZ3、NZ5、・・・及びNZn−1からインク滴を吐出させ、他のノズルNZからはインク滴を吐出させないことが指示されている。
【0036】
上述の記録ラインは、例えば、記録解像度が720dpiの場合、X方向で1インチ当り720本だけ存在し、これら記録ライン同士の間隔が約0.035mmとなる。
つまり、前述したリニアエンコーダLE及びリニアスケールLSは、記録用紙Pが約0.035mm搬送されるたびに、前述した搬送位置信号が出力されるように設定される。
本実施形態では、リニアスケールLSに刻まれているスケール同士の間隔が約0.035mmに設定されている。
【0037】
なお、リニアエンコーダLEから出力される出力電圧のON状態及びOFF状態の両方を搬送位置信号として利用する場合、リニアスケールLSに刻まれているスケール同士の間隔を約0.0175mmに設定すればよい。
また、互いに位相をずらした2つの光学式センサを備えるリニアエンコーダLEを用いて出力電圧のON状態及びOFF状態の両方を搬送位置信号として利用する場合、リニアスケールLSに刻まれているスケール同士の間隔を約0.00875mmに設定すればよい。
【0038】
なお、上記表2に示す印字データでは、記録ラインの1ライン目〜5669ライン目までが記録用紙Pの1枚目の記録に該当し、記録ラインの5670ライン目〜11340ライン目までが記録用紙Pの2枚目の記録に該当している。
また、この表2において、記録ラインの1ライン目が上記表1のヘッド動作位置データにおける搬送位置1000に該当し、2ライン目が搬送位置1001に該当し、3ライン目が搬送位置1002に該当し、・・・5669ライン目が搬送位置6668に該当し、5670ライン目が搬送位置7670に該当し、・・・11340ライン目が搬送位置13339に該当している。
【0039】
また、本実施形態では、1枚の記録用紙Pに対して、X方向に約200mmの長さを有する記録領域が設定されている。すなわち、表2に示す印字データの1ライン目と5669ライン目との間隔が記録用紙P上で約200mmとなり、記録領域内で非記録部分が存在しない場合の例を示している。
なお、記録領域内で余白、行間等の非記録部分が存在する場合には、その非記録部分に相当する分だけ印字データにおける記録ライン数が減少していく。例えば、表1のヘッド動作位置データで搬送位置1010から搬送位置1019まで、記録ライン数で10ライン分に相当する行間余白を設ける場合、印字データは、表2の印字データに示す11340記録ライン数のデータ量から10ライン分を減じた11330記録ライン数のデータ量になる。
【0040】
この場合、1枚目の記録に相当する印字データは、1ライン目〜5659ライン目までの5659ライン数となり、2枚目の記録に相当する印字データは、5660ライン目〜11330ライン目までの5669ライン数となる。
つまり、印字データには、すべてのノズルNZ1〜NZnからインク滴を吐出させない記録ラインすなわち、すべての論理値が“0”となる記録ラインが含まれていない。
【0041】
なお、本実施形態では、印字データの論理値が“1”である場合に、インク滴を吐出させることを示し、論理値が“0”である場合に、インク滴を吐出させないことを示しているが、これら論理値“1”及び“0”は逆であっても構わない。
図2に示す駆動波形記憶部WMは、不揮発性半導体メモリで構成され、記録ヘッドHDの動作の種類に応じた圧電アクチュエータAC1〜ACnの駆動電圧波形データが格納されている。
【0042】
ヘッド制御部HDDは、図6に示すように、駆動波形記憶部WMに格納されている駆動電圧波形データWDに基づいて、駆動信号COMを生成して駆動選択部SAに出力する駆動信号生成部DGと、クロック信号SCKを出力するクロック信号発生部KGとを有している。
また、駆動選択部SAは、図6に示すように、シフトレジスタSR1と、レジスタSR2と、接続切換えスイッチSWと、ラッチ回路LTと、レベルシフタLSと、選択スイッチSTとを有している。
【0043】
シフトレジスタSR1は、表2に示す印字データを1つの記録ライン単位で区切って構成される記録駆動情報SIが、シリアルデータとしてヘッド制御部HDDから供給され、この記録駆動情報SIをクロック信号SCKによって順次シフトさせて格納する。
レジスタSR2は、圧電アクチュエータACの駆動を指示する論理値“1”がノズル番号1〜nごとに予め格納されており、これらのデータを、すべての圧電アクチュエータAC1〜ACnの駆動を指示する全駆動情報として保持する。
【0044】
接続切換えスイッチSWは、シフトレジスタSR1と後述するラッチ回路LTとの接続、及びレジスタSR2とラッチ回路LTとの接続を切換える。この接続切換えスイッチSWによる接続の切換えは、ヘッド制御部HDDからの接続切換え信号CNに基づいて行われる。
本実施形態では、接続切換えスイッチSWは、接続切換え信号CNがHiレベルのとき、シフトレジスタSR1とラッチ回路LTとを接続し、接続切換え信号CNがLoレベルのとき、レジスタSR2とラッチ回路LTとを接続するように構成されている。
【0045】
ラッチ回路LTは、シフトレジスタSR1及びレジスタSR2のうち接続切換えスイッチSWによって接続されている方に格納されているデータを、ヘッド制御部HDDからのラッチ信号LATに基づいて、パラレルデータとしてラッチする。つまり、ラッチ回路LTは、接続切換えスイッチSWによってシフトレジスタSR1が接続されている場合には、シフトレジスタSR1に格納されている記録駆動情報SIをラッチし、接続切換えスイッチSWによってレジスタSR2が接続されている場合には、レジスタSR2に格納されている全駆動情報をラッチする。
【0046】
レベルシフタLSは、ラッチ回路LTからのラッチ出力を後述する選択スイッチSTで必要とする電圧に変換する。
選択スイッチSTは、一方の電極がグランドに接続された圧電アクチュエータACの他方の電極に、駆動信号COMを供給するか否かを選択する。この選択スイッチSTは、図示しないが、PチャンネルFET(Field Effect Transistor)とNチャンネルFETとを組み合わせたトランスミッションゲートによるアナログスイッチで構成されている。
【0047】
このアナログスイッチは、レベルシフタLSによって変換された電圧がゲート電圧として入力されると、駆動信号生成部DGから出力される駆動信号COMを各圧電アクチュエータACに供給するように動作する。
上記の構成を有するインクジェット記録装置1では、CPUが、図2に示すように、ヘッド動作位置データ記憶部CMに格納されているヘッド動作位置データを読み込み、動作種類データが記録を指示するものであるときに、印字データ記憶部DMに格納されている印字データを、1記録ライン単位で駆動記録情報SIとして読み込む。
【0048】
次いで、CPUは、記録に応じた駆動電圧波形データを駆動波形記憶部WMから読み込む。
そして、CPUは、図6に示すように、読み込んだ記録駆動情報SI及び駆動電圧波形データWDをアクチュエータ駆動指令OCとともに、ヘッド制御部HDDに送る。
アクチュエータ駆動指令OCを受けたヘッド制御部HDDは、記録駆動情報SIを、クロック信号SCKとともにシフトレジスタSR1に出力する。このとき、接続切換え信号CNをHiレベルにして接続切換えスイッチSWに、シフトレジスタSR1とラッチ回路LTとを接続させる。
【0049】
ヘッド制御部HDDは、シフトレジスタSR1への記録駆動情報SIの格納が終了した後、ラッチ信号LATを出力してラッチ回路LTに記録駆動情報SIをラッチさせる。
ラッチされた記録駆動情報SIは、レベルシフタLSによってゲート電圧に変換されてから、選択スイッチSTの図示しないアナログスイッチに供給される。
そして、駆動信号生成部DGから、図5に示す吐出駆動波形JSに従って選択スイッチSTに供給される駆動信号COMが、ゲート電圧が印加されているアナログスイッチを経て圧電アクチュエータACに供給され、インク滴の吐出が行われる。
【0050】
このようにして、1つの記録ラインにおける記録が実施される。
また、ヘッド動作位置データの動作種類データが微小駆動を指示するものであるときには、まず、CPUが微小駆動に応じた駆動電圧波形データを駆動波形記憶部WMから読み込む。
次いで、CPUは、図6に示すように、読み込んだ駆動電圧波形データWDをアクチュエータ駆動指令OCとともに、ヘッド制御部HDDに送る。
【0051】
アクチュエータ駆動指令OCを受けたヘッド制御部HDDは、接続切換え信号CNをLoレベルにして接続切換えスイッチSWに、レジスタSR2とラッチ回路LTとを接続させる。
次いで、ヘッド制御部HDDは、ラッチ信号LATを出力してラッチ回路LTに全駆動情報をラッチさせる。
【0052】
ラッチされた全駆動情報は、レベルシフタLSによってゲート電圧に変換されてから、選択スイッチSTの図示しないアナログスイッチに供給される。
そして、駆動信号生成部DGから、図5に示す微小駆動波形MSに従って選択スイッチSTに供給される駆動信号COMが、ゲート電圧が印加されているアナログスイッチを経てすべての圧電アクチュエータAC1〜ACnに供給され、インクの撹拌が行われる。
【0053】
また、ヘッド動作位置データの動作種類データが停止を指示するものであるときには、CPUは、印字データ及び駆動電圧波形データを読み込まず、ヘッド停止指令をヘッド制御部HDDに送り、すべての圧電アクチュエータAC1〜ACnの駆動を停止させる。
なお、本実施形態では、接続切換え信号CNがHiレベルのとき、シフトレジスタSR1とラッチ回路LTとが接続され、接続切換え信号CNがLoレベルのとき、レジスタSR2とラッチ回路LTとが接続されるように構成したが、これらHiレベル及びLoレベルは逆であっても構わない。
【0054】
次に、インクジェット記録装置1における記録処理及び動作の流れについて以下に説明する。
インクジェット記録装置1は、外部機器からヘッド動作位置データ及び印字データを受けると、CPUが図7に示す記録処理を開始する。
この記録処理では、まず、ステップS1において、変数h、h2、Ph,Ph2、Dh、Dh2、Ct、L及びS(n)の値をクリアしてステップS2に移行する。
【0055】
ここで、変数h、h2は、ヘッド動作位置データ記憶部CMに格納されるヘッド動作位置データのアドレスを指定する変数である。
また、変数Ph、Ph2は、アドレスh及びh2における搬送位置データが代入される変数であり、変数Dh、Dh2は、アドレスh及びh2における動作種類データが代入される変数である。
【0056】
また、変数Ctは、搬送位置信号が入力された回数をカウントする変数であり、変数Lは、記録ラインのライン数をカウントする変数である。
また、行列変数S(n)は、表2に示す印字データにおけるn個のノズルNZ1〜NZnの論理値“0”又は“1”が、記録ラインごとに代入される変数である。
ステップS2において、モーター制御部MDへ搬送部駆動指令を出力し、搬送ベルトVを図1(b)で見て反時計方向に回転させるように、搬送部駆動モーターMoを制御させてステップS3に移行する。
【0057】
このステップS3において、給紙制御部KSDに給紙指令を出力し、給紙部KSに記録用紙PをゲートローラGRへ供給させ、ステップS4に移行する。
このステップS4において、インデックス信号が入力されたか否かを判定し、入力された(YES)と判定されると、ステップS5に移行し、入力されていない(NO)と判定されると、インデックス信号が入力されるまで待機する。
【0058】
ステップS5において、ゲートローラ制御部GRDに用紙供給指令を出力し、ゲートローラGRに、記録用紙Pのスキュー補正を実施させてからこの記録用紙Pを搬送ベルトV上に供給させ、ステップS6に移行する。
ここで、記録用紙Pが搬送ベルトV上に載置された位置からずれないように、記録用紙P又は搬送ベルトVを帯電させたり、搬送ベルトVの記録用紙Pが載置される面に開口を形成し、サクションファンを用いて空気を吸引させたりして、記録用紙Pを搬送ベルトVに吸着させるようにすることが望ましい。
【0059】
ステップS6において、変数hに“1”を加算して変数h2とし、ステップS7に移行する。
このステップS7において、ヘッド動作位置データ記憶部CMに格納されているヘッド動作位置データのアドレスhにおける搬送位置データ及び動作種類データを読み込んで、それぞれを変数Ph及びDhに代入し、ステップS8に移行する。
【0060】
このステップS8において、ヘッド動作位置データ記憶部CMに格納されているヘッド動作位置データのアドレスh2における搬送位置データ及び動作種類データを読み込んで、それぞれを変数Ph2及びDh2に代入し、ステップS9に移行する。
このステップS9において、搬送位置信号が入力されたか否かを判定し、入力された(YES)と判定されると、ステップS10に移行し、入力されていない(NO)と判定されると、搬送位置信号が入力されるまで待機する。
【0061】
ステップS10において、変数Ctに“1”を加算して新たな変数Ctとして搬送位置信号が入力された回数をカウントし、ステップS11に移行する。
このステップS11において、変数Ctに代入されている値が、アドレスhにおける搬送位置データPh以上、且つアドレスh2における搬送位置データPh2未満であるか否かを判定し、YESと判定されると、ステップS12に移行し、NOと判定されると、ステップS17に移行する。
【0062】
ここで、ステップS11の判定を行うのは、入力された搬送位置信号をカウントすることによって把握される記録用紙Pの現在搬送位置が、搬送位置データPh以上Ph2未満の搬送区間にあるか否かを判定するためである。
そして、現在搬送位置が上記搬送区間にある場合には、ステップS12〜S16の処理で、動作種類データDhに示される動作の内容を実施させる。
【0063】
また、現在搬送位置が搬送区間から外れている場合には、ステップS17以降の処理を経て、次の新たな搬送区間での動作の実施処理に移行する。
ステップS12において、変数Dhに代入されている動作種類データが“0”であるか否かを判定し、“0”である(YES)と判定されると、ステップS13に移行し、“0”でない(NO)と判定されると、ステップS14に移行する。ここで、動作種類データが“0”であるというのは、表1に示すように、記録の実施を指示するものである。
【0064】
ステップS13において、後述する吐出駆動処理を実施してステップS9に移行する。
ステップS14において、変数Dhに代入されている動作種類データが“1”であるか否かを判定し、“1”である(YES)と判定されると、ステップS15に移行し、“1”でない(NO)と判定されると、ステップS16に移行する。ここで、動作種類データが“1”であるというのは、表1に示すように、微小駆動を指示するものである。
【0065】
ステップS15において、後述する微小駆動処理を実施してステップS9に移行する。
ステップS16において、ヘッド制御部HDDにヘッド停止指令を出力し、すべての圧電アクチュエータAC1〜ACnの駆動を停止(駆動電圧を中間電位に保持)させてステップS9に移行する。
また、ステップS11でNOと判定されて移行してきたステップS17において、1枚の記録用紙Pに対する記録が終了したか否かを判定し、終了した(YES)と判定されると、ステップS18に移行し、終了していない(NO)と判定されると、ステップS19に移行する。
【0066】
ステップS18において、排紙制御部EJDに排紙指令を出力し、記録が終了した記録用紙Pをインクジェット記録装置1外へ排出させてステップS19に移行する。
このステップS19において、変数Dh2に代入されている動作種類データが“3”であるか否かを判定し、“3”である(YES)と判定されると、処理を終了し、“3”でない(NO)と判定されると、ステップS20に移行する。
【0067】
ここで、動作種類データが“3”であるというのは、記録動作の終了を指示するものである。従って、変数Dh2に代入されている動作種類データが“3”である場合には、搬送位置データPh及びPh2で区切られる搬送区間が、この記録処理における最後の搬送区間であることを意味し、次の新たな搬送区間が存在しないことを示している。
つまり、上記のステップS19において、変数Dh2に代入されている動作種類データが“3”である(YES)と判定された場合には、ここで記録処理を終了する。
【0068】
ステップS20において、次の記録用紙Pの供給タイミングであるか否かを判定し、供給タイミングである(YES)と判定されると、ステップS21に移行し、供給タイミングでない(NO)と判定されると、ステップS23に移行する。
ステップS21において、給紙制御部KSDに給紙指令を出力し、給紙部KSに新たな記録用紙PをゲートローラGRへ供給させ、ステップS22に移行する。
【0069】
このステップS22において、ゲートローラ制御部GRDに用紙供給指令を出力し、ゲートローラGRに、記録用紙Pのスキュー補正を実施させてからこの記録用紙Pを搬送ベルトV上に供給させ、ステップS23に移行する。
このステップS23において、変数Dh2に代入されている動作種類データが“0”であるか否かを判定し、“0”である(YES)と判定されると、ステップS24に移行して吐出駆動処理を実施してからステップS28に移行し、“0”でない(NO)と判定されると、ステップS25に移行する。
【0070】
ステップS25において、変数Dh2に代入されている動作種類データが“1”であるか否かを判定し、“1”である(YES)と判定されると、ステップS26に移行して微小駆動処理を実施してからステップS28に移行し、“1”でない(NO)と判定されると、ステップS27に移行してヘッド制御部HDDにヘッド停止指令を出力し、すべての圧電アクチュエータAC1〜ACnの駆動を停止(駆動電圧を中間電位に保持)させてからステップS28に移行する。
【0071】
このステップS28において、変数hに“1”を加算して新たな変数hとしてから、ステップS6に移行する。
ステップS13及びS24の吐出駆動処理では、図8に示すように、ステップS41において、接続切換え信号CNをHiレベルに設定してステップS42に移行する。
ここで、接続切換えスイッチSWは、前述したように、Hiレベルの接続切換え信号CNが入力されると、シフトレジスタSR1とラッチ回路LTとを接続する。
【0072】
ステップS42において、変数Lに“1”を加算して新たな変数Lとして記録ラインのライン数をカウントし、ステップS43に移行する。
このステップS43において、印字データ記憶部DMに格納されているLライン目の印字データを読み込んで、ノズル番号1〜nに対応した論理値“0”又は“1”を変数S1〜Snに代入し、ステップS44に移行する。
【0073】
このステップS44において、図5に示す吐出駆動波形JSに適した駆動電圧波形データWDを、駆動波形記憶部WMから読み込んでステップS45に移行する。
このステップS45において、ヘッド制御部HDDにアクチュエータ駆動指令OCを、変数S1〜Snに代入された記録駆動情報SI並びに接続切換え信号CN及び駆動電圧波形データWDとともに出力し、記録ヘッドHDにLライン目の記録を実施させてステップS46に移行する。
【0074】
このステップS46において、変数S1〜Snに代入されている値をクリアして記録処理に戻る(リターン)。
ステップS15及びS26の微小駆動処理では、図9に示すように、ステップS61において、接続切換え信号CNをLoレベルに設定してステップS62に移行する。
ここで、接続切換えスイッチSWは、前述したように、Loレベルの接続切換え信号CNが入力されると、レジスタSR2とラッチ回路LTとを接続する。
【0075】
ステップS62において、図5に示す微小駆動波形MSに適した駆動電圧波形データWDを、駆動波形記憶部WMから読み込んでステップS63に移行する。
このステップS63において、ヘッド制御部HDDにアクチュエータ駆動指令OCを、接続切換え信号CN及び駆動電圧波形データWDとともに出力し、記録ヘッドHDにインクの撹拌を実施させて記録処理に戻る(リターン)。
【0076】
インクジェット記録装置1では、表1に示すヘッド動作位置データが外部機器から入力されると、上述した記録処理において、搬送位置信号が入力された回数をカウントする変数Ctの値に応じて、下記表3に示すように、実施される処理が分かれる。
【0077】
【表3】

【0078】
すなわち、変数Ctの値が1〜499及び6670〜7169のとき、ステップS11、S12、S14及びS16の処理が実施され、圧電アクチュエータAC1〜ACnは、すべて駆動されない。
また、変数Ctの値が500及び7170のとき、ステップS11、S17、S19、S20、S23、S25及びS26の処理が実施され、圧電アクチュエータAC1〜ACnは、すべて微小駆動される。
【0079】
また、変数Ctの値が501〜998及び7171〜7668のとき、ステップS11、S12、S14及びS15の処理が実施され、圧電アクチュエータAC1〜ACnは、すべて微小駆動される。
また、変数Ctの値が999、6669、7669及び13340のとき、ステップS11、S17、S19、S20、S23、S25及びS27の処理が実施され、圧電アクチュエータAC1〜ACnは、すべて駆動されない。
【0080】
また、変数Ctの値が1000及び7670のとき、ステップS11、S17、S19、S20、S23及びS24の処理が実施され、それぞれ、表2に示す印字データのうち1ライン目及び5670ライン目の印字データに基づいて、圧電アクチュエータAC1〜ACnが吐出駆動される。
また、変数Ctの値が1001〜6668及び7671〜13339のとき、ステップS11、S12及びS13の処理が実施され、表2に示す記録ラインごとの印字データに基づいて、圧電アクチュエータAC1〜ACnが吐出駆動される。
【0081】
また、変数Ctの値が13341のとき、ステップS11、S17及びS19の処理が実施されてから記録処理が終了される。
なお、本実施形態において、圧電アクチュエータAC1〜ACnが圧力付与手段に対応し、リニアエンコーダLEが搬送位置検出手段に対応し、搬送位置信号が搬送位置情報に対応し、ヘッド制御部HDD及び駆動選択部SA並びに図7におけるステップS12〜S16、S23〜S27の処理が駆動制御部に対応し、シフトレジスタSR1が記録駆動情報格納部に対応し、レジスタSR2が全駆動情報格納部に対応し、接続切換えスイッチSWが情報選択部に対応し、選択スイッチSTが駆動信号供給部に対応している。
【0082】
本実施形態では、記録画像情報である印字データは、記録ラインごとにインク滴を吐出させるノズルNZ1〜NZnを指定し、すべてのノズルNZ1〜NZnからインク滴を吐出させない非記録情報が含まれていない。
従って、記録画像情報を必要最小限のデータ量で構成することが可能となる。
上記の構成を有する印字データで記録を実施させるために、CPUは、ヘッド動作位置データに基づいて、搬送位置信号が入力されるたびに、ヘッド制御部HDDに圧電アクチュエータAC1〜ACnの駆動を制御させている。
【0083】
また、駆動選択部SAは、すべての圧電アクチュエータAC1〜ACnの駆動を指示する全駆動情報が格納されたレジスタSR2と、動作の種類が記録以外の動作を指示するものであるときにレジスタSR2をラッチ回路LTに接続する接続切換えスイッチSWとを有している。
従って、印字データのデータ量を増加させることなく、非記録部分で記録以外の動作を実施させることが可能となるとともに、すべての圧電アクチュエータAC1〜ACnを一律に駆動させることが可能となる。つまり、ヘッド動作位置データに微小駆動を盛り込めば、記録情報のデータ量の増加を低く抑えつつ、非記録部分でのインク粘度の上昇による吐出不良の発生を妨げることができる。
【0084】
また、レジスタSR2には全駆動情報が予め格納されているため、全駆動情報を都度格納する場合に比較して、記録以外の動作の際に、すべての圧電アクチュエータAC1〜ACnの駆動を開始するまでの時間を短縮することができる。
なお、本実施形態では、ブラック色の記録を行うライン型インクジェット記録装置を例に説明したが、これに限定されず、マゼンタ色、シアン色及びイエロー色の記録を行う記録ヘッドHDを加えた4種類、さらに、ライトシアン色及びライトマゼンタ色を加えた6種類等、任意の種類の記録ヘッドHDを備える構成とすることができ、これに応じてヘッド動作位置データ記憶部CM並びに印字データ記憶部DM及びヘッド制御部HDDの構成を変更すればよい。
【0085】
また、本実施形態における動作の種類は、記録、微小駆動並びに停止及び動作終了の4種類に限られず、これにフラッシング動作を含めた5種類等、任意の種類の動作を盛り込むことができるとともに、これら任意の種類から適宜組合せを決定したり、変えたりしてもよい。
ここで、フラッシング動作とは、ノズルNZ1〜NZnから記録とは無関係にインク滴を吐出してノズルNZ1〜NZn内の目詰りを予防したり、解消したりするための動作をいう。
【0086】
この場合、記録ヘッドHDから吐出されたインク滴を吸収するインク吸収手段を、搬送ベルトVの内側で記録ヘッドHDに対向させて配設し、搬送ベルトVにインク滴を通過させるための開口部を形成しておけば、連続して搬送される複数の記録用紙P間で、記録ヘッドHDを移動させることなくフラッシング動作の実施が可能であり、非記録部分で吐出不良を効率的且つ効果的に解消することが可能となる。
【0087】
また、本実施形態では、印字データを、ノズルNZ1〜NZnごとに1ビットで構成し、インク滴を吐出させるか否かを論理値“1”又は“0”で示すようにしたが、これに限定されず、ノズルNZ1〜NZnごとに2ビット以上で構成するようにしてもよい。
また、本実施形態では、外部機器から記録情報が入力されると、図5に示す0V(グランドレベル)から中間電位への立ち上げが行われ、上記表1の動作種類データにおける動作終了に基づいて、中間電位から0V(グランドレベル)への立ち下げが行われるように構成した場合について説明したが、これに限定されず、中間電位の立ち上げ及び立ち下げを、ヘッド動作位置データに盛り込んでもよい。
【0088】
この場合、記録の途中であっても、非記録部分で中間電位の立ち下げを実施することが可能となり、消費電力の削減が図られる。
また、本実施形態では、記録ヘッドHDが駆動選択部SAを備える構成としたが、これに限定されず、ヘッド制御部HDDが駆動選択部SAを備える構成としても、記録ヘッドHD及びヘッド制御部HDDのそれぞれから独立して駆動選択部SAを設ける構成としてもよい。
【0089】
また、本実施形態では、圧電素子で構成される圧電アクチュエータAC1〜ACnでインクに圧力を付与する記録ヘッドHDを例に説明したが、これに限定されず、加熱素子でインクを加熱し、インクに圧力を付与する記録ヘッドにも適用することができる。
また、本実施形態では、記録ヘッドHDを、ノズルNZの配列方向をY方向に向けて配設するようにしたが、これに限定されず、X方向と交差する任意の方向に向けて配設するようにしてもよい。この場合、記録用紙Pの搬送方向から見たノズルピッチを短く設定することができ、Y方向における記録解像度を高めることが可能となる。
【0090】
また、記録媒体は記録用紙Pに限らず、インク滴が付着してドットを形成できるものであれば、任意の記録媒体を適用することができる。
また、本実施形態では、記録用紙Pが搬送ベルトV上に載置されて搬送されるベルト搬送を採用したが、これに限定されず、互いに外周を接し合って回転する一対のローラ間に挟持されて搬送されるローラ搬送、外周を記録ヘッドHDのノズル面に対向させて回転するドラムの外周面に固定されて搬送されるドラム搬送等、任意の搬送形態を採用することができる。
【0091】
また、本実施形態では、インデックス部IDを平面視で搬送ベルトVの一側縁から突出した凸形状に形成した例を示したが、これに限定されず、凹形状に形成してもよい。この構成によれば、搬送ベルトVの側縁から凸状に伸びる出っ張りをなくすことができ、用紙搬送部CVを小型化することが可能となる。
また、本実施形態では、インデックスセンサISを発光素子及び受光素子を備える光学式センサで構成するようにしたが、これに限定されず、磁気センサや静電容量センサ等を採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の実施形態におけるインクジェット記録装置の主要構成を示す外観図。
【図2】本発明の実施形態におけるインクジェット記録装置の主要部の制御のつながりを示すブロック図。
【図3】本発明の実施形態におけるインクジェット記録装置の記録ヘッドの構成を説明する図。
【図4】本発明の実施形態におけるインクジェット記録装置の用紙搬送部の構成を説明する図。
【図5】本発明の実施形態におけるインクジェット記録装置の圧電アクチュエータの駆動電圧波形を説明する図。
【図6】本発明の実施形態におけるインクジェット記録装置の駆動選択部の構成を説明するブロック図。
【図7】本発明の実施形態におけるインクジェット記録装置の記録処理の流れを説明する図。
【図8】本発明の実施形態におけるインクジェット記録装置の吐出駆動処理の流れを説明する図。
【図9】本発明の実施形態におけるインクジェット記録装置の微小駆動処理の流れを説明する図。
【符号の説明】
【0093】
1…インクジェット記録装置、HD…記録ヘッド、NZ1〜NZn…ノズル、AC1〜ACn…圧電アクチュエータ、LE…リニアエンコーダ、HDD…ヘッド制御部、DG…駆動信号生成部、SA…駆動選択部、SR1…シフトレジスタ、SR2…レジスタ、SW…接続切換えスイッチ、ST…選択スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体搬を搬送する記録媒体送手段と、該記録媒体搬送手段によって搬送される前記記録媒体の搬送方向とは交差する方向に複数のノズルが所定間隔で配列されているとともに、インクに圧力を付与する圧力付与手段を前記ノズルごとに備えた記録ヘッドとを備え、前記記録媒体搬送手段によって搬送される記録媒体の記録面に、外部機器から受け取った記録情報に基づいて、前記圧力付与手段を駆動して前記ノズルからインク滴を吐出し、記録動作を行うように構成されたインクジェット記録装置であって、
前記記録情報は、前記記録媒体の前記搬送方向における搬送位置及び当該搬送位置で前記記録ヘッドに実施させる動作種別が示されたヘッド動作位置データと、前記搬送位置のうち前記複数のノズルから前記インク滴を吐出して前記記録ヘッドが前記記録を行う記録位置ごとに、前記複数のノズルの中から前記インク滴を吐出させる前記ノズルを指定する印字データと、を含んで構成され、
前記記録媒体の前記搬送位置を検出する搬送位置検出手段と、
該搬送位置検出手段が検出した前記搬送位置の搬送位置情報及び前記記録情報に基づいて、前記圧力付与手段の駆動を制御する駆動制御部と、を備え、
前記駆動制御部は、前記動作種別が前記記録動作であるときに、前記圧力付与手段を前記印字データに基づいて、前記記録に適した駆動に制御し、前記動作種別が前記記録動作以外であるときに、すべての前記圧力付与手段を一律に、当該動作種別に応じた態様で前記記録ヘッドを制御することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記駆動制御部は、前記ヘッド動作位置データの前記動作種別に基づいて、前記圧力付与手段を駆動する駆動信号を生成する駆動信号生成部と、前記記録位置ごとの前記印字データを格納する記録駆動情報格納部と、すべての前記圧力付与手段の駆動を指示する全駆動情報が格納された全駆動情報格納部と、前記動作種別が前記記録動作であるときに、前記記録位置ごとの前記印字データを選択し、前記動作種別が前記記録動作以外であるときに、前記全駆動情報を選択する情報選択部と、該情報選択部によって選択された前記記録位置ごとの前記印字データ及び前記全駆動情報のいずれか一方の情報が供給され、当該一方の情報に基づいて、前記駆動信号を前記圧力付与手段に供給する駆動信号供給部と、を備えていることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−192581(P2006−192581A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−3424(P2005−3424)
【出願日】平成17年1月11日(2005.1.11)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】