説明

インクジェット記録装置

【課題】 インクの種類に応じた最適なパージ条件でパージ動作を行うことによって、最適なインク吐出を維持する。
【解決手段】 インク種別と、インクジェット記録装置10内の温度と、に応じて、パージ動作におけるパージ回数を決定し、決定したパージ回数に応じた回数のインク吐出を行うので、インク種別及びインクジェット記録装置10内の温度に応じた最適なパージ条件でパージ動作を行うことができる。従って、記録ヘッド20のインクの増粘及び増粘の進行による固形化によるインク不吐出及び吐出不良を防ぐことができ、記録ヘッド20の良好なインク吐出を維持することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインクジェット記録装置に係り、特に、圧電素子の駆動によりノズルからインクを吐出して画像を記録するインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ノズルからインクを吐出して画像を記録するインクジェット記録装置において、ノズルからインクの溶媒や分散媒等が蒸発することによるインクの増粘や増粘の進行による固形化によって、インクの吐出不良や不吐出等が発生することが知られている。
【0003】
このようなインクの増粘や固形化によるインクの吐出不良や不吐出に対処するために、インクが吐出しない程度にノズルのメニスカス面を振動させて増粘したインクを攪拌させる技術や、インクジェット記録ヘッドを定期的に画像記録領域外に退避させて増粘したインクを吐出するパージ動作を行う技術が開示されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0004】
特許文献1の技術では、ノズル部のインクの乾燥を防止するためのキャップを設けて定期的にキャップを閉じ、キャップとノズルとの開放時間に応じた量のインクの空吐出をキャップ内に行うことによって、キャップ開放中に溶媒や分散媒等の蒸発によって増粘したインクを吐出している。また、特許文献2の技術では、インクを吐出する吐出口を覆うためのキャップに、記録に無関係なインクを一定量吐出する予備吐出を行っている。このように、画像記録領域外でインクを定期的に一定量またはノズルの開放時間に応じた量吐出し増粘したインクを吐出することによって、インクの増粘や固形化によるインクの吐出不良や不吐出等を抑制している。
【特許文献1】特開平4―339665号公報(図5、3頁)
【特許文献2】特開平8―39830号公報(図5、14頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、組成、物性、特性、溶媒の種類、及び添加剤の有無等により定められるインクの種類によって、インクの増粘傾向は異なる。上記技術では、画像記録領域外で、定期的に一定量またはノズルの開放時間に応じた量のインクを吐出するパージ動作を行うことにより、インクの増粘や固形化による吐出不良や不吐出を抑制しているが、上記従来技術によるパージ動作では、インク種別に関係無く、一定のパージ動作のパージ条件で、パージ動作を行っているので、インク種別によっては、パージ動作において過剰な吐出量のインクが吐出されたり、不充分な量の吐出が行われるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決すべくなされたものであり、インクの種類に応じた最適なパージ条件でパージ動作を行うことによって、最適なインク吐出を維持することができるインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために第1の発明のインクジェット記録装置は、圧電素子の駆動によりノズルからインクを吐出して画像を記録する記録ヘッドと、前記インクのインク種別を判別する判別手段と、インク種別に対応するパージ条件を示す情報を予め記憶した記憶手段と、前記判別手段によって判別されたインク種別と前記記憶手段に記憶された情報とに基づいて、判別されたインク種別に対応するパージ条件で、画像記録領域外においてインクを吐出するパージ動作が行われるように前記記録ヘッドを制御する制御手段と、を備えている。
【0008】
第1の発明のインクジェット記録装置の記憶手段は、インクの組成、物性、特性、及び溶媒等によって定められるインク種別に対応する、画像記録領域外でインクを吐出するパージ動作のパージ条件を示す情報を予め記憶する。パージ条件は、画像記録領域外で吐出するインクのインク吐出量として定めることができる。判別手段によって、記録ヘッドから吐出されるインク種別が判別されると、制御手段は、記憶手段に記憶されたインク種別に対応するパージ条件を示す情報に基づいて、判別されたインク種別に対応するパージ条件で、パージ動作が行われるように記録ヘッドが制御され、記録ヘッドから判別されたインク種別に対応するパージ条件で圧電素子の駆動によりインクが吐出される。
【0009】
このように、吐出するインクのインク種別に応じたパージ条件でパージ動作を行うことができるので、インクの種別に応じた最適なパージ条件でパージ動作を行うことができ、最適なインク吐出を維持することができる。
【0010】
第2の発明のインクジェット記録装置は、圧電素子の駆動によりノズルからインクを吐出して画像を記録する記録ヘッドと、前記装置本体内の温度を検知する検知手段と、前記インクのインク種別を判別する判別手段と、前記装置本体内の温度とインク種別とに対応するパージ条件を示す情報を予め記憶した記憶手段と、前記判別手段によって判別されたインク種別、前記検知手段によって検知された前記装置本体内の温度、及び前記記憶手段に記憶された情報に基づいて、判別されたインク種別及び前記装置本体内の温度に対応するパージ条件で、画像記録領域外において圧電素子の駆動によりインクを吐出するパージ動作が行われるように前記記録ヘッドを制御する制御手段と、を備えている。
【0011】
第2の発明のインクジェット記録装置には、装置本体内の温度を検知する検知手段が設けられている。記憶手段には、装置本体内の温度とインク種別とに対応するパージ条件を示す情報が予め記憶されている。判別手段によってインク種別が判別され、検知手段によって装置本体内の温度が検知されると、制御手段は、記憶手段に記憶された情報に基づいて、判別されたインク種別と検知された装置本体内の温度とに対応するパージ条件でパージ動作が行われるように、記録ヘッドを制御する。このように、インク種別と装置本体内の温度との双方に応じたパージ条件で、パージ動作を行うことができるので、装置本体内の温度に応じてインクの特性が変化する場合にも対応し、適切なパージ動作を行うことができる。
【0012】
前記記憶手段には、装置本体内の温度が高くなるほどインク吐出量が多くなるように、装置本体内の温度とインク種別とに対応するインク吐出量を示す情報を予め記憶することができる。このようにすれば、装置本体内の温度が上昇することによってインクが蒸発してインクの固形化が進んだ場合であっても、適切なパージ動作を行うことができる。
【0013】
前記記憶手段には、固形化しやすいインク種別ほどインク吐出量が多くなるように、インク種別に対応するインク吐出量を対応付けて記憶することができる。このようにすれば、固形化しやすいインク種別ほど、多くのインク吐出量のインクを画像領域外で吐出することができるので、不充分なパージ動作が行われることによる吐出不良を抑制することができる。また、逆に、固形化しにくいインク種別ほど、固形化しやすいインク種別に比べて少ないインク吐出量のインクを画像領域外で吐出することができるので、過度な量のインク吐出のパージ動作によるインクの過剰消費を抑制することができる。
【0014】
顔料インクは、染料インクに比べて固形化しやすいので、記憶手段には、顔料インクのインク吐出量が染料インクに比べて多くなるように、顔料インク及び染料インク各々に対応するインク吐出量を示す情報を記憶し、パージ動作における顔料インクのインク吐出量を染料インクに比べて多くするのが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
第1の発明のインクジェット記録装置によれば、吐出するインクのインク種別に応じたパージ条件で、画像記録領域外で圧電素子の駆動によりインクを吐出するパージ動作を行うことができるので、インクの種別に応じた最適なインク吐出を維持することができる、という効果を有する。また、第2の発明のインクジェット記録装置によれば、吐出するインクのインク種別とインクジェット記録装置内の温度とに応じたパージ条件で、パージ動作を行うことができるので、インク種別及びインクジェット記録装置内の温度の双方に応じた最適なインク吐出を維持することができる、という効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0017】
図1に示すように、本実施の形態のインクジェット記録装置10の筐体12には、ロッド14と、該ロッド14に沿って移動するキャリッジ16が設けられている。キャリッジ16には、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、及びブラック(K)の4色の記録ヘッド20Y、記録ヘッド20M、記録ヘッド20C、及び記録ヘッド20Kから構成される記録ヘッド20が設けられるとともに、4色のインク各々を貯留するインクタンク22Y、インクタンク22M、インクタンク22C、及びインクタンク22Kから構成されるインクタンク22が搭載されている。4色のインクタンク22のインクは、図示を省略したインク供給配管によって、対応する4色の記録ヘッド20各々に供給される。4色の記録ヘッド20各々には、インクを吐出するための図示を省略した複数のノズルが設けられている。
【0018】
図示は省略するが、4色の記録ヘッド20各々には、インクを吐出するための複数のノズル、各ノズルに連通するインク圧力室、及び各インク圧力室各々に接して設けられたピエゾ等の圧電素子を含んで構成されている。圧電素子は、周知のように、電圧を印加することにより形状が変化する性質を有しており、この形状変化すなわち圧電素子の駆動を利用して、対応するインク圧力室内に圧力をかけることにより、対応するノズルからインク滴が吐出される。
【0019】
キャリッジ16がロッド14に沿って画像を記録するための画像記録領域19に移動して該画像記録領域19内で主走査方向Xに移動しながら、記録ヘッド20の図示を省略した複数のノズルからインク滴を吐出することにより、主走査方向Xの記録が行なわれる。
【0020】
インクジェット記録装置10には、印字媒体としての用紙Pを載置するためのプラテン18が設けられている。このプラテン18上を用紙Pがキャリッジ16の移動方向と交差する方向(副走査方向Y)に移動することによって、副走査方向Yの記録が行なわれる。すなわち、キャリッジ16をロッド14に沿って主走査方向Xに走査しながら、キャリッジ16に設けられた記録ヘッド20から各色インクを吐出することにより、主走査方向Xに画像が記録される。そして、主走査方向Xの画像記録と、副走査方向Yの用紙送りを行うことによって、用紙P全面の画像記録領域への画像記録が行われる。
【0021】
本実施の形態では、4色のインク各々を貯留するインクタンク22は、4色のインクタンク22Y、インクタンク22M、インクタンク22C、及びインクタンクKを1組とするカセット23として着脱可能に搭載されている。このカセット23には、該カセット23に含まれる4色のインクタンク22Y、インクタンク22M、インクタンク22C各々のインク種別を示す情報、及び該4色のインクタンク22Y、インクタンク22M、インクタンク22C各々のインク種別により定められるカセット23の種別を示す情報を予め記憶したメモリ29が設けられている。インクの種別を示す情報は、各インクの組成、物性、特性、溶媒または分散媒の種類、及び添加剤の有無等に応じて定められたインク種別を示す情報である。本実施の形態では、インク種別は、インクの原料となる色材タイプを示す情報であるものとして説明する。インク種別としての色材タイプには、例えば、自己分散顔料インク、樹脂分散顔料インク、及び染料インク等がある。キャリッジ16には、インクジェット記録装置10内の温度を検知する温度検知部28が設けられている。
【0022】
また、インクジェット記録装置10には、記録ヘッド20を、定期的に画像記録領域外に退避させて圧電素子の駆動によりインクを吐出するパージ動作によって吐出されたインクを貯留するキャップ24、及びインクジェット記録装置10本体を制御するためのメイン回路26が設けられている。
【0023】
図2に示すように、本実施の形態のインクジェット記録装置10のメイン回路26は、制御部30、タイマー32、記憶部34、駆動電圧発生回路36、及び駆動回路38を含んで構成されている。制御部30は、タイマー32、記憶部34、駆動電圧発生回路36と信号授受可能に接続されるとともに、駆動電圧発生回路36及び駆動回路38を介して記録ヘッド20に接続されている。また、制御部30は、メモリ29及び温度検知部28各々と図示を省略したインターフェースを介して信号授受可能に接続されている。制御部30に図示を省略したインターフェースを介して外部から記録するための画像の画像データが入力されると、駆動電圧発生回路36は、画像データに応じた駆動電圧を発生して駆動回路38へ出力する。駆動回路38は、駆動電圧が入力されると、入力された駆動電圧に基づいた駆動信号を記録ヘッド20に出力する。記録ヘッド20では、駆動信号が入力されると、駆動信号に応じた電圧が各圧電素子に印加されることによって、ノズルからインク滴が吐出される、用紙Pに画像が記録される。タイマー32は、パージ動作が前回実行されてからの経過時間を計測する。
【0024】
インクジェット記録装置10では、インクの粘度が増すことによる増粘や、増粘が進行することによるインクの固形化等による記録ヘッド20からのインクの不吐出や吐出不良を防止するために、所定時間毎に記録ヘッド20を画像記録領域外のキャップ24の設置位置に退避させてキャップ24にインクを吐出することによって、増粘したインクを吐出し、記録ヘッド20内のインクをリフレッシュするパージ動作を行っている。パージ動作においては、詳細を後述する制御部30の処理によって決定された吐出量のインクを吐出するために、詳細を後述する処理によって決定されたインク吐出回数に応じた数のパルスを含む駆動信号を記録ヘット20へ出力する。記録ヘッド20は、パージ動作のための駆動信号が入力されると、キャップ24の設置位置において駆動信号に含まれるパルスの数に応じた回数(以下、パージ回数という)のインク吐出を行う。具体的には、駆動信号に含まれるパルスの下図に応じたパージ回数だけ、圧電素子が変形し、この変形によって、パージ回数に応じた回数、インク圧力室内に圧力がかけられ、対応するノズルからパージ回数に応じた回数インクが吐出される。これによって、パージ動作において、定められた吐出量のインクが吐出される。
【0025】
ここで、記録ヘッド20から吐出されるインクの増粘傾向は、インク種別としての、インクの組成、物性、特性、溶媒または分散媒の種類、及び添加剤の有無等に応じて異なる。また、同一のインク種別であっても、インクの増粘傾向は、インクジェット記録装置10内の温度に応じて変動する。
【0026】
例えば、5分毎にパージ動作を行うインクジェット記録装置10のパージ動作において、記録ヘッド20の吐出率が100%となるように維持するための1ノズル辺りのパージ回数は、図3に示すように、インク種別及び環境温度に応じて異なる。例えば、染料インクは、顔料インクに比べて増粘傾向が低く、固形化しにくい。このため、100%の吐出率を得るためのパージ回数は顔料インクに比べて少なくてよい。顔料インクの内、樹脂分散タイプの顔料インクは、低温環境では、自己分散タイプの顔料インクに比べて造膜しやすく粘度が高いので、100%の吐出率を得るためのパージ回数は自己分散タイプの顔料インクに比べて多い。しかしながら、樹脂分散タイプの顔料インクは、自己分散タイプの顔料インクに比べて造膜しやすいが水溶性樹脂を含むという特性があるので保湿性が高い。このため、高温環境では、樹脂分散タイプの顔料インクは、水溶性樹脂を含まない自己分散タイプの顔料インクに比べて揮発性が低くなり、パージ回数は少なくてよい。
【0027】
このように、インク種別と環境温度とに応じて、インクの固まりやすさ、すなわち増粘傾向は異なる。本実施の形態のインクジェット記録装置10の記憶部34は、カセット23に設けられた各色インクタンク22Y、インクタンク22M、インクタンク22C、及びインクタンク22K各々のインク種別と、環境温度としてのインクジェット記録装置10内の温度とに対応するパージ回数を定めたパージ条件テーブルを、カセット種別毎に予め記憶する。カセット種別は、カセット23に含まれる各色インクのインク種別の組み合わせにより定められる。本実施の形態では、図4に示すように、複数のパージ条件テーブルとして、テーブル40、テーブル42、及びテーブル44の3種類のカセット種別に応じたパージ条件テーブルが記憶されている。テーブル40は、各色毎のインク種別が、ブラックでは樹脂分散顔料であり、シアン、マゼンタ、及びイエローでは染料である組み合わせのカートリッジ23のカートリッジ種別において、インクジェット記録装置10内の温度が15℃、25℃、及び35℃各々であるときの各色のインク種別に対応するパージ回数を予め定めている。テーブル42は、各色毎のインク種別が、ブラックでは自己分散顔料であり、シアン、マゼンタ、及びイエローでは染料である組み合わせのカートリッジ23のカートリッジ種別において、インクジェット記録装置10内の温度が15℃、25℃、及び35℃各々であるときの各色のインク種別に対応するパージ回数を予め定めている。更に、テーブル44は、各色毎のインク種別が、ブラックでは自己分散顔料で樹脂が添加されたタイプであり、シアン、マゼンタ、及びイエローでは、自己分散顔料である組み合わせのカートリッジ23のカートリッジ種別において、インクジェット記録装置10内の温度が15℃、25℃、及び35℃各々であるときの各色のインク種別に対応するパージ回数を予め定めている。
【0028】
テーブル40、テーブル42、及びテーブル44に示すように、各インク種別と、インクジェット記録装置10内の温度とに対応して、インクジェット記録装置10内の温度が高くなるほど多くなるようにパージ回数が定められている。これは、インクジェット記録装置10内の温度が高くなるほど、インクの溶媒や分散媒等が蒸発して粘度が上昇し、固形化しやすくなるためである。また、インク種別が樹脂分散顔料であるときには、染料に比べて吐出回数が多くなるように定められている。更に、自己分散顔料についても、染料に比べて吐出回数が多くなるように定められている。また、自己分散顔料に樹脂が添加されている場合には、樹脂が添加されていない自己分散顔料に比べて、高い吐出回数が定められている。
【0029】
図5には、パージ動作を行うときに、制御部30で実行される処理ルーチンを示した。なお、記録ヘッド20は、電源投入直後の初期状態では、初期位置としてキャップ24の設置位置に位置している。
【0030】
インクジェット記録装置10の図示を省略した電源スイッチによりインクジェット記録装置10に電力が投入されるとステップ100において、メモリ29からカセット種別及びインク種別を示す情報を読み出す。
【0031】
次のステップ102では、上記ステップ100で取得したカセット種別に対応するパージ条件テーブルを、記憶部34から特定する。
【0032】
次のステップ104では、タイマー32によるカウントを開始し、次のステップ106において、所定時間(例えば5分)経過したと判断されると、ステップ108へ進む。
【0033】
次のステップ108では、温度検知部28で検知されたインクジェット記録装置10内の温度を読込み、次のステップ110において、上記ステップ102で特定したパージ条件テーブルから、上記ステップ100で読込んだインク種別と、上記ステップ108で読込んだ温度と、に対応するパージ回数を読込む。インクの吐出量は、固形化しやすいインク種別ほど吐出量が多くなるように定められており、また、インクジェット記録装置10内の温度が高くなるほど、吐出量が多くなるように定められている。また、インク吐出量を調節するために、インク吐出回数であるパージ回数が定められている。
【0034】
例えば、上記ステップ100で取得したブラックのインク種別が樹脂分散顔料であり、シアン、マゼンタ、及びイエローのインク種別が染料であり、且つ、上記ステップ102でテーブル40が特定され、且つインクジェット記録装置10内の温度が25℃である場合、ブラックのパージ回数は450回となり、シアン、マゼンタ、及びイエロー各々のパージ回数は10回となる。このようにステップ110の処理によって、インクジェット記録装置10内の温度及び各色インクのインク種別に応じた、各インク色毎のパージ回数を定めることができる。
【0035】
次のステップ112では、上記ステップ110で読込んだ各色毎のパージ回数に応じて、各色の記録ヘッド20Y、記録ヘッド20M、記録ヘッド20C、及び記録ヘッド20K各々毎に、上記ステップ112で読込んだパージ回数に応じた吐出回数、インクを吐出するパージ動作を行う。詳細には、読込んだパージ回数に応じた回数インクを吐出するための該パージ回数に対応するパルス数からなる駆動信号を、各色記録ヘッド20各々に出力することによって、各色記録ヘッド20Y、記録ヘッド20M、記録ヘッド20C、及び記録ヘッド20K各々から、インク種別及びインクジェット記録装置10内の温度に応じて定められたパージ回数に応じた回数のインク吐出が、画像記録領域外、すなわちキャップ24の設置位置において行われる。
【0036】
次のステップ114では、タイマー32をリセットした後にステップ116へ進み、次のステップ116において、図示を省略した電源スイッチのユーザによる操作によって電源オフ指示がなされたか否かを判別し、否定されるとステップ104へ戻り所定時間毎にパージ動作を繰り返し実行し、肯定されると、本ルーチンを終了する。
【0037】
以上説明したように、本発明のインクジェット記録装置10では、インク種別及びインクジェット記録装置10内の温度に応じて、パージ動作におけるパージ回数を決定して、決定したパージ回数に応じた回数のインク吐出を行うので、インク種別及びインクジェット記録装置10内の温度に応じた最適なパージ条件でパージ動作を行うことができるので、記録ヘッド20のインクの増粘及び増粘の進行による固形化によるインク不吐出及び吐出不良を防ぐことができる。従って、記録ヘッド20の良好なインク吐出を維持することができる。
【0038】
また、インク種別に応じて最適なパージ回数だけインク吐出を行うことができるので、インクの増粘傾向が異なることによって、パージ動作における、過度なパージ回数によるインク吐出によって生じるインクの過剰吐出を防ぐことができる。また、不充分なパージ回数によるインク吐出によって生じる不充分なパージ動作の実行を防ぐことができる。
【0039】
また、インクジェット記録装置10内の温度に応じたパージ回数でパージ動作を行うことができるので、インクジェット記録装置10内の温度の変動によってインクの増粘傾向が変化した場合にも対応し、インクの増粘や固形化による不吐出や吐出不良を防ぐことができる。
【0040】
なお、本実施の形態のインクジェット記録装置10では、所定時間毎にパージ動作を行い、1回のパージ動作におけるパージ回数をインク種別とインクジェット記録装置10内の温度に応じて調整することによって、最適なパージ条件でパージ動作を行う場合を説明したが、パージ回数を一定にし、パージ動作を行う間隔をインク種別とインクジェット記録装置10内の温度に応じて調整してもよい。また、またパージ動作の間隔及びパージ回数の双方を、インク種別及びインクジェット記録装置10内の温度に応じて調整してもよい。
【0041】
また、本実施の形態では、パージ回数を調整することによって、1回のパージ動作によって吐出するインク吐出量を調整する場合を説明したが、直接、インク種別とインクジェット記録装置10内の温度に応じたインク吐出量を調整してもよい。この場合、例えば、駆動信号のパルス幅を調整することによって、パルス幅に応じた時間圧電素子を駆動して圧電素子を継続して変形させることによって、インク種別及びインクジェット記録装置10内の温度に応じた吐出量のインクを吐出すればよい。
【0042】
なお、本実施の形態では、カセット種別を示す情報及びインク種別を示す情報を、カセット23のメモリ29から読み取る場合を説明したが、インクジェット記録装置10に、各種情報を入力するための入力部を設けて、該入力部を介して、ユーザの操作指示によってインク種別を示す情報及びカセット種別を示す情報が入力されるようにしてもよい。
【0043】
また、本実施の形態では、4色のインクタンク22Y、インクタンク22M、インクタンク22C、及びインクタンク22Kを一対としたカセット23が、キャリッジ16に対して着脱可能に設けられるものとして説明したが、4色のインクタンク22Y、インクタンク22M、インクタンク22C、及びインクタンク22Kを別々にキャリッジ16に対して着脱可能に設けるようにしてもよい。この場合、各インクタンク22Y、インクタンク22M、インクタンク22C、及びインクタンク22K各々に、該インクのインク種別を示す情報を記憶するメモリを設ける。そして、インクジェット記録装置10の記憶部34には、上記図4で説明したテーブルに替えて、インク種別とインクジェット記録装置10内の温度に対応するパージ回数を対応付けて予め記憶する。そして、制御部30では、上記ステップ100の処理において、各色毎のインク種別を示す情報を取得した後に、上記ステップ104乃至ステップ108の処理を行った後に、ステップ110において、記憶部34に記憶された情報から、該ステップ100で取得した各色毎のインク種別を示す情報と、取得したインクジェット記録装置10内の温度とに対応するパージ回数で、各色毎にパージ動作のパージ回数を調整すればよい。
【0044】
また、本実施の形態では、説明を簡略化するために、インク種別を示す情報は、インクの原料である色材の種別を示す情報であるものとして説明したが、インク種別を示す情報は、インクの組成、特性、物性等、溶媒や分散媒の種類、及び添加剤の有無等によって定められるインクの増粘特性、すなわち個体化のし易さを表す情報であってもよく、色材の種別を示す情報に限られるものではない。例えば、溶媒の種類を示す情報であってもよい。
【0045】
また、本実施の形態では、図4に示す各色インク種別と、インクジェット記録装置10内の温度とに対応するパージ回数を定めた複数のパージ条件テーブル各々に示されるインクジェット記録装置10本体内の温度として、15℃、25℃、及び35℃の3種類のみが設定されているものとして説明したが、このような形態に限られるものではなく、例えば、記録ヘッド20の温度を更に4種以上、詳細に定めるようにしてもよい。そして更に、詳細な温度設定に応じたパージ回数を定めれば、更にインクジェット記録装置10内の温度に応じた最適なパージ回数を詳細に設定することができる。
【0046】
また、本実施の形態では、インクジェット記録装置10内の温度とインク種別とに応じてパージ回数を定める例について説明したが、インクジェット記録装置10内の温度に替えて、インクジェット記録装置10の湿度に応じたパージ回数を定めても良い。この場合、インクジェット記録装置10内の湿度を測定するための測定装置を筐体12内に設けるとともに、制御部30と信号授受可能に接続し、記憶部34には、各種テーブル40、テーブル42、及びテーブル44の温度に替えて湿度を示す値を設定し、湿度が低くなるほどパージ回数が多くなるように、インク種別毎にパージ回数を定めるようにすればよい。
【0047】
なお、本実施の形態では、インクジェット記録装置10の記録ヘッド20が主走査方向に移動する場合を説明したが、記録ヘッド20が固定された形態にも適用可能である。この場合、例えば、記録ヘッド20の副走査方向Yの幅が用紙Pの幅より長くなるように設け、且つ、図示を省略したノズルが用紙Pの幅方向(副走査方向Y)に配列されるようにする。そして、画像を記録するときには、ノズルのインク吐出口が用紙P(プラテン18)の方向と対向するようにし、パージ動作を行うときに、インクの吐出口が用紙Pと対向しな方向、例えば水平方向等に駆動して、該位置においてパージ動作を行うようにすればよい。また、キャップ24を記録ヘッド20のノズルの吐出口が水平方向となったときの、ノズルの吐出口に対向する位置に設けるようにすればよい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明のインクジェット記録装置を示す概略図である。
【図2】本発明のインクジェット記録装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】インク種別及び環境温度に応じた、吐出率100%を維持するのに必要なパージ回数を示す線図である。
【図4】カセット種別毎の、各色インクのインク種別と装置本体内の温度とに応じたパージ回数を示すパージ条件テーブルの一例である。
【図5】インクジェット記録装置のパージ動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0049】
10 インクジェット記録装置
20 記録ヘッド
28 温度検知部
30 制御部
34 記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電素子の駆動によりノズルからインクを吐出して画像を記録する記録ヘッドと、
前記インクのインク種別を判別する判別手段と、
インク種別に対応するパージ条件を示す情報を予め記憶した記憶手段と、
前記判別手段によって判別されたインク種別と前記記憶手段に記憶された情報とに基づいて、判別されたインク種別に対応するパージ条件で、画像記録領域外においてインクを吐出するパージ動作が行われるように前記記録ヘッドを制御する制御手段と、
を備えたインクジェット記録装置。
【請求項2】
圧電素子の駆動によりノズルからインクを吐出して画像を記録する記録ヘッドと、
装置本体内の温度を検知する検知手段と、
前記インクのインク種別を判別する判別手段と、
装置本体内の温度とインク種別とに対応するパージ条件を示す情報を予め記憶した記憶手段と、
前記判別手段によって判別されたインク種別、前記検知手段によって検知された前記装置本体内の温度、及び前記記憶手段に記憶された情報に基づいて、判別されたインク種別及び前記装置本体内の温度に対応するパージ条件で、画像記録領域外においてインクを吐出するパージ動作が行われるように前記記録ヘッドを制御する制御手段と、
を備えたインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記記憶手段は、装置本体内の温度が高くなるほどインク吐出量が多くなるように、装置本体内の温度とインク種別とに対応するインク吐出量を示す情報を記憶する請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記パージ条件は、吐出するインク吐出量である請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記記憶手段は、固形化しやすいインク種別ほどインク吐出量が多くなるように、インク種別に対応するインク吐出量を示す情報を記憶する請求項4に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記記憶手段は、染料インク及び前記染料インクより固形化しやすい顔料インク各々について、顔料インクのインク吐出量が染料インクに比べて多くなるようにインク吐出量を示す情報を記憶する請求項4または請求項5に記載のインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−69003(P2006−69003A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−254186(P2004−254186)
【出願日】平成16年9月1日(2004.9.1)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】