説明

インクジェット記録装置

【課題】予備吐出されたインクの記録媒体への付着を抑制することが可能なインクジェット記録装置を提供すること。
【解決手段】記録媒体にインクを吐出する記録ヘッドと、前記記録ヘッドの下面と対向した状態で記録ヘッドから予備吐出されたインクを受けるインク受け部と、前記予備吐出時に、前記インク受け部と前記記録媒体の間に配設され、前記インク受け部の上面からの高さが、前記上面から前記記録ヘッドの下面までの高さよりも高いインク遮蔽部と、を備えたことを特徴とするインクジェット記録装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、普通紙を代表とする様々な記録媒体に対して印刷可能な記録装置として、インクジェット記録装置が知られている。インクジェット記録装置は、記録ヘッドの記録媒体に対向する面に設けられたノズルからインクを吐出して、記録媒体上に着弾、浸透若しくは定着させることで記録媒体上に画像を形成するものであり、工程の単純さ、印刷時における静粛性及び印字、印画品質の点で非常に優れた特徴がある。
【0003】
ところで、このようなインクジェット記録装置においては、記録ヘッドのノズル内のインクの乾燥、固着を防止するため、記録領域近傍の非記録領域に設けられたインク受け部材に予備吐出を行なう。
【0004】
このためインク滴がインク受け部材から跳ね返り、あるいは着弾せずに浮遊したインクが、記録領域のプラテンに支持された記録媒体に付着し、記録品位を著しく低下させるといった問題があった。
【0005】
そこで、従来のインクジェット記録装置では、記録ヘッドのノズルと、このノズルからの予備吐出を直接受けるインク受け部材の面との距離に対し、記録媒体が支持されるプラテン側における記録ヘッドとインク受け部材との距離を小さくした構成のものが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−320752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、インク受け部材は記録ヘッドよりも低い位置にあるため、インク吐出方向において記録ヘッドとインク受け部材との間には隙間が存在し、記録ヘッドとインク受け部材との間を完全に遮蔽するものではない。このためインク滴がインク受け部材から跳ね返り、あるいは着弾せずに浮遊したインクが、この隙間から記録領域に移動して記録媒体に付着し、記録品位を著しく低下させるといった問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、予備吐出されたインクの記録媒体への付着を抑制することが可能なインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
1.
記録媒体にインクを吐出する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドの下面と対向した状態で記録ヘッドから予備吐出されたインクを受けるインク受け部と、
前記予備吐出時に、前記インク受け部と前記記録媒体の間に配設され、前記インク受け部の上面からの高さが、前記上面から前記記録ヘッドの下面までの高さよりも高いインク遮蔽部と、
を備えたことを特徴とするインクジェット記録装置。
2.
前記インク遮蔽部は前記インク受け部と一体的に形成されていることを特徴とする1に記載のインクジェット記録装置。
3.
前記インク遮蔽部はインク吸収体で構成されていることを特徴とする1又は2に記載のインクジェット記録装置。
4.
前記インク受け部はインク吸収体で構成されていることを特徴とする1〜3の何れか1項に記載のインクジェット記録装置。
5.
前記配設されたインク遮蔽部の高さ方向と直交でかつ前記記録ヘッドと対向する面に平行な方向において、前記インク遮蔽部の長さが、前記記録ヘッドのノズル列の長さよりも長いことを特徴とする1〜4のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
6.
前記インク受け部の上面が、前記記録媒体から離れるほど前記記録ヘッドの下面との距離が大きくなるように傾斜した傾斜面を有することを特徴とする1〜5のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
7.
前記予備吐出中に、前記インク遮蔽部を前記記録ヘッドの下面よりも高い位置に配設しつつ、前記インク遮蔽部と前記インク受け部とを一体的に下降させるように制御することを特徴とする1〜6の何れか1項に記載のインクジェット記録装置。
8.
前記記録ヘッドの同一ノズルから複数のインク滴を予備吐出させる際に、前記ノズルと前記インク受け部の上面の距離が一定となるように制御することを特徴とする1〜7の何れか1項に記載のインクジェット記録装置。
9.
前記インク遮蔽部は、前記配設された遮蔽位置と、前記記録ヘッドの下面よりも低い退避位置とを移動可能であることを特徴とする1〜8の何れか1項に記載のインクジェット記録装置。
10.
前記予備吐出後に、前記インク遮蔽部を前記退避位置まで移動させるように制御することを特徴とする9に記載のインクジェット記録装置。
11.
前記インク遮蔽部を前記退避位置に移動させた後、前記記録ヘッドから前記記録媒体にインクを吐出して画像を形成するように制御することを特徴とする9または10に記載のインクジェット記録装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、予備吐出されたインクの記録媒体への付着を抑制することが可能なインクジェット記録装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1実施形態のインクジェット記録装置の概略構成を表す正面図である。
【図2】第1実施形態のインクジェット記録装置のドラム周りの概略構成を表す側面図と正面図であり、(a)は記録開始前の待機状態、(b)は記録ヘッドからインク受け部材に予備吐出している状態、(c)は記録媒体への記録が開始された状態を示している。
【図3】予備吐出時の記録ヘッドとインク受け部材の位置関係を示す模式図である。
【図4】第1実施形態のインクジェット記録装置における制御系のブロック図である。
【図5】第1実施形態のインクジェット記録装置の予備吐出動作のフローチャートである。
【図6】第2実施形態のインクジェット記録装置の概略構成を表す正面図である。
【図7】第2実施形態のインクジェット記録装置のドラム周りの概略構成を表す側面図と正面図であり、(a)は記録開始前の状態、(b)は記録ヘッドからインク受け部材に予備吐出している状態、(c)は記録媒体への記録が開始された状態を示している。
【図8】第2実施形態のインクジェット記録装置のドラムの開口部から視た側面図である。
【図9】第2実施形態のインクジェット記録装置の駆動部を説明するための模式図である。
【図10】第2実施形態のインクジェット記録装置における制御系のブロック図である。
【図11】第2実施形態のインクジェット記録装置の予備吐出動作のフローチャートである。
【図12】第2実施形態のインクジェット記録装置の予備吐出時の記録ヘッドとインク受け部材の位置関係を示す模式図である。
【図13】インク受け部材の他の例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について、図1〜図5を参照しながら説明する。
【0013】
図1に示すように本実施形態におけるインクジェット記録装置100では、記録媒体収納部10に収納された記録媒体Pが給紙搬送部7により記録媒体搬送方向(図1のB方向)に搬送されてドラム回転体1に搬入されるようになっている。
【0014】
ドラム回転体1は、円筒状に形成され、ドラム回転体軸2に挿着・固定されており、ドラム回転体軸2は、装置本体の枠体(図示せず)に取り付けられた軸受(図示せず)を介して支持されている。
【0015】
ドラム回転体1は、ドラム回転体軸2に挿着されたタイミングプーリ、タイミングベルト等を介して不図示の動力源から供給された動力でドラム回転体軸2を中心に副走査方向(図1のA方向)に回転可能に構成されている。以下、ドラム回転体1の軸方向を主走査方向(図2のC方向)として説明する。
【0016】
また、ドラム回転体1は、その外周面にチャッキング機構が取り付けられていて外周面に記録媒体Pを保持可能に構成されている。
【0017】
また、ドラム回転体1の外周面と対向する位置には、主走査方向(図2のC方向)に延在する一対のガイドレール3が設けられており、ガイドレール3には、インクを吐出する記録ヘッド4が主走査方向に往復自在となるように支持されている。
【0018】
なお、ここでは記録ヘッド4をヘッド4つ具備した場合について説明するが、1つあるいは4つ以外の複数備える構成としてもよい。
【0019】
記録ヘッド4の各ヘッドは、インクジェット記録装置100で使用される各色毎のインクをそれぞれドラム回転体1上の記録媒体Pに向けて吐出するものであり、各ヘッドの内部には、インクを吐出する複数のノズル(図示せず)が副走査方向に沿って列状に設けられており、記録ヘッド4の記録媒体Pと対向する面は、これらノズルが形成されたノズル面4N(図1参照)となっている。
【0020】
また、ここでは、インクの吐出方向が鉛直方向である場合について説明するが、インクの吐出方向は斜め方向や横方向でもよい。
【0021】
更に、図示はしないが、これらの記録ヘッド4には、例えば、それぞれのヘッドに対応したインク吐出動作をノズルから行わせるための圧電素子等の吐出エネルギー発生手段及びその駆動回路等が一体的に組み込まれている。
【0022】
ドラム回転体1が回転した状態で、給紙搬送部7により記録媒体収納部10から記録媒体Pが搬入されると、記録媒体Pは、ドラム回転体1の外周面上に巻き付けられた状態で保持され、この状態でドラム回転体1とともに副走査方向(図1のA方向)に所定回数回転しながら、記録ヘッド4が記録媒体Pに画像を記録可能な記録領域上を主走査方向Cに沿って往復移動して所望の画像を得た後、保持が解除されて排紙搬送部8により記録媒体搬送方向(図1のB方向)に搬送されて排紙トレイ9に排出される。
【0023】
ここで、図2においてドラム回転体1の周面上であって、主走査方向における右側の位置(図1中奥側の位置)は、記録ヘッド4が移動・休止可能な「ホームポジション」となっている。ホームポジションは記録ヘッド4が記録媒体Pに画像を記録不可な非記録領域に属しており、記録媒体Pの搬送経路上から外れた領域となっている。ホームポジションには記録ヘッド4のノズルから予備吐出されたインクを受けるインク受け部材5が突出するように取り付けられている。
【0024】
なお、ホームポジションは、主走査方向における左側の位置あるいは左右両方の位置に設けても良い。
【0025】
以下の説明では、インクの吐出方向において、インク受け部材5の記録ヘッド4に対面する面を基準として、インク受け部材5から遠くなる側を上、インク受け部材5に近くなる側を下として説明している。したがって、本発明において、高さとは、インク受け部材の記録ヘッドに対面する面を基準とした高さである。ただし、インクの吐出方向が鉛直方向であるものに限定する趣旨ではなく、インクの吐出方向が斜め方向や横方向であるものも含む趣旨である。
【0026】
インク受け部材5が取り付けられている部分のドラム回転体1の直径を、記録領域のドラム回転体1の直径よりも小さく設定しても良い。インク受け部材5の取り付けスペースの確保が容易になる。
【0027】
メンテナンス動作としての予備吐出動作は、予備吐出動作のタイミングが到来すると、印刷信号とは無関係に圧電素子等の吐出エネルギー発生手段を駆動してノズルからインクを吐出する予備吐出動作により、ノズルの吐出特性を回復するものである。
【0028】
なお、ドラム回転体1内に収納可能に構成されたインク受け部材5とし、インク受け部材5に駆動源を設けて、予備吐出時にドラム回転体1から突出させて使用するという構成にしてもよい。
【0029】
なお、「記録領域」というのは、本発明に係るインクジェット記録装置が記録ヘッド4から記録媒体Pに向かってインクを吐出して記録媒体に画像を記録可能な領域を意味しており、「非記録領域」というのは、本発明に係るインクジェット記録装置が記録ヘッド4から記録媒体Pに向かってインクを吐出できず記録媒体Pに画像を記録不可な領域である。
【0030】
図3(b)に示すように、インク受け部材5は、記録ヘッド4と対向した状態で記録ヘッド4から予備吐出されたインクを受けるインク受け部5Bと、予備吐出時に、インク受け部5Bと記録媒体Pの間に配設され、インク受け部5Bのインク受け面(上面)からの高さが、インク受け面(上面)から記録ヘッド4のノズル面4N(下面)までの高さよりも高いインク遮蔽部5Aとが一体に形成された構造体であり、インク吸収体で構成されている。一体構成(一体成形)にすることで、コストを抑えることができる。
【0031】
インク受け部材5は、ガイドレール3に沿って記録ヘッド4がホームポジションに移動した状態で、インク受け部5Bが記録ヘッド4のノズル面4Nから離間してかつ対向するとともに、インク遮蔽部5Aが記録媒体Pとインク受け部5Bとの間となることができるように、主走査方向の位置調整がなされて取り付けられている。
【0032】
インク受け部5Bは、予備吐出動作で吐出されたインクを受け止めるものであり、本実施形態においては、記録ヘッド4のノズル面より少し大きめの四角皿状に形成されている。
【0033】
インク受け部5Bの材質は、特に限定されないが、インク吸収体が好ましく、インク吸収体で吸収して確実に保持できるので、インク受け部材5の回転等の移動時にインクが飛散することを防止できる。
【0034】
また、インク受け部材5にインク吸引手段を接続し、適宜、インク受け部材5に吸収されたインクを廃インク容器に移送するようにしてもよい。インクの飛散をより一層確実に防止できる。
【0035】
インク遮蔽部5Aは、インク吐出方向において記録ヘッド4とインク受け部5Bの間を遮蔽して記録媒体Pに拡散するインクを遮蔽する遮蔽位置(図2(b)、図3(b))と、記録ヘッド4の移動経路を開放するように記録ヘッド4のノズル面(下面)よりも低い位置に退避した退避位置(例えば図2(a)、(c))とをドラム周方向に沿って移動可能となっている。
【0036】
インク遮蔽部5Aの材質は、インクを遮蔽可能なものであれば限定されないが、インク吸収体が好ましく、浮遊インクをインク吸収体で吸収して確実に捕捉できる。
【0037】
次にインク遮蔽部5Aの大きさについて説明する。インク吐出方向の高さについては、遮蔽位置にあるときに、記録ヘッド4とインク受け部5Bの間を遮蔽できる高さで延在していることが必要であり、インク受け部5Bのインク受け面(上面)からの高さが、インク受け面(上面)から記録ヘッド4のノズル面4N(下面)までの高さよりも高くなるように設定される。
【0038】
本実施形態では、記録ヘッド4とインク受け部5Bはそれぞれ平坦な領域が存在する。この平坦な領域において記録ヘッド4とインク受け部5Bとが対向するようになっており、図3(b)に示すように、インク受け部5Bのインク受け面から記録ヘッド4のノズル面までの高さをL1、インク遮蔽部5Aのインク受け面からの高さをL2(インク受け面からインク遮蔽部5Aの上面までの高さ)としたとき、L1<L2に設定されている。
【0039】
また、平坦ではない領域において記録ヘッド4とインク受け部5Bとが対向する場合は、予備吐出時において、インク受け部5Bの記録媒体側の端部の上面から記録ヘッド4の記録媒体側の端部の下面までの高さをL1、インク遮蔽部5Aのインク受け部5Bの記録媒体側の端部からの高さをL2としたとき、L1<L2に設定すればよい。このように設定することによりインク受け部5Bと記録ヘッド4の間の空間の記録媒体側の面を遮蔽できる。
【0040】
また、インク受け部5Bのインク受け面(上面)が、記録媒体Pから離れるほど記録ヘッド4のノズル面(下面)との距離が大きくなるように傾斜した傾斜面を有する構造としてもよい。インク滴の跳ね返りの方向が、傾斜面により、記録媒体Pとは逆の方向に規制されるため、記録媒体Pへのインク滴の付着をより一層低減できる。
【0041】
また、予備吐出時に、記録ヘッド4を挟んで両側にインク遮蔽部5Aが配設されるようにしてもよい。記録媒体以外の装置を構成する部材へインクが付着するのを防止できる。
【0042】
インク遮蔽部5Aの高さ方向と直交でかつ記録ヘッド4と対向する面に平行な方向における長さL5は、図2(b)の右側の図に示すように、記録ヘッド4のノズル列の長さL4よりも長くなるように設定することが好ましい。高さ方向に直交するノズル列方向においても記録ヘッド4とインク受け部5Bの間を遮蔽して記録媒体Pに拡散するインクを遮蔽することができる。
【0043】
このように、本実施形態では、記録ヘッド4が記録媒体Pに画像を記録可能な記録領域と記録ヘッド4が記録媒体Pに画像を記録不可な非記録領域とに移動自在であり、非記録領域の所定位置には、予備吐出時に、非記録領域に移動した記録ヘッド4と対向した状態で記録ヘッド4から予備吐出されたインクを受けるインク受け部5Bと、インク受け部5Bと記録媒体Pの間に配設されインク受け部5Bのインク受け面に対する記録ヘッド4のノズル面の高さよりも高いインク遮蔽部5Aが配設される。
【0044】
図3(a)に示すように、インク遮蔽部がノズル面よりも低い、即ち、L1>L2に設定されている比較例では、記録ヘッド4とインク受け部5Bの間に隙間が生じる。このためインク滴がインク受け部5Bから跳ね返り、あるいは着弾せずに浮遊したインクが、この隙間から記録領域に移動して記録媒体Pに付着し、記録品位を著しく低下させるといった問題があった。
【0045】
本実施形態のインクジェット記録装置100によれば、予備吐出時には、インク遮蔽部5Aは、記録ヘッド4がインク受け部5Bと対向する位置に移動してきた際に、図3(b)に示すように、インク遮蔽部5Aは、予備吐出される記録ヘッド4のノズル面よりも高い位置にあり、予備吐出によるインク受け部5Bからの跳ね返りのインク滴や着弾せずに浮遊しているインク滴がインク遮蔽部5Aにより捕捉され、記録媒体Pへインク滴が付着することを抑制できるので、記録品位の低下を防止できる。
【0046】
また、画像記録時等の予備吐出しない時には、記録ヘッド4の移動経路を開放するように記録ヘッド4のノズル面よりも低い位置に退避した退避位置にドラム周方向に沿って移動可能となっており、記録動作に影響を与えることがないものとすることができる。
【0047】
また、ドラム回転体1の回転動作を利用してインク受け部材5の移動を行うことで、新たにインク受け部材移動用に駆動源を設ける必要がなく、装置を小型化でき、またコストを抑えることができる。
【0048】
図4はインクジェット記録装置100における制御系のブロック図であり、ここでは代表的なものだけ示す。
【0049】
制御部6は、汎用のCPU(Central Processing Unit),ROM(Read Only Memory),RAM(Random Access Memory)等を有し、インクジェット記録装置100全体の動作を制御するものであり、ROMに記録された処理プログラムをRAMに展開してCPUにより当該処理プログラムを実行するようになっている。
【0050】
制御部6は上記処理プログラムに従い記録ヘッド4、ドラム回転体1等の各部の動作を制御する。
【0051】
入力部12では、例えば画像記録動作開始指令、予備吐出動作指令等を入力しうるように構成されている。
【0052】
記憶部13では、例えば予備吐出動作やドラム回転動作に関するパラメーター等が記憶されている。
【0053】
次にインクジェット記録装置100の動作について説明する。
【0054】
図5はインク受け部材5への予備吐出動作のフローチャート図である。図5における各ステップは、制御部6におけるCPUが、所定のプログラムに基づいてROMやRAMと協働して実行される。
【0055】
インクジェット記録装置100に画像記録動作を行う旨の信号が入力される前では、記録ヘッド4は、記録領域の外側の非記録領域(ホームポジション)で待機している(ステップS1)。このとき、ドラム回転体1は所定の回転位置に停止した状態にある。
【0056】
その後、入力部12等からインクジェット記録装置100に画像記録動作を行う旨の信号が入力されると、給紙搬送部7により記録媒体収納部10から記録媒体Pが搬送され、図2(a)に示すように記録媒体Pの先端部S2は回転しているドラム回転体1の副走査方向Aでインク受け部材5の取り付け位置の手前に対応するドラム表面の先頭部S1と同期がとられ、搬送された記録媒体Pは先端部S2からドラム回転体1に吸着・支持される。支持された記録媒体Pはドラム回転体1と共に副走査方向Aに回転し、この状態でドラム回転体1が1回転すると記録媒体P全体が巻き付けられる。
【0057】
さらに、図2(b)に示すようにインク受け部材5のインク受け部5Bが記録ヘッド4のノズル面4Nと対向するようにドラム回転体1を回転させる(ステップS2)。
【0058】
このとき、記録ヘッド4の予備吐出を開始する(ステップS3)。インク受け部材5はドラム回転体1の回転に伴い、回転しながら記録ヘッド4から予備吐出されたインクを受ける。
【0059】
図2(b)、図3(b)に示すように予備吐出の開始から終了までの間は、インク受け部材5のインク遮蔽部5Aはインク受け部5と記録媒体Pの間に配設され、記録ヘッド4のノズル面4Nよりも高い位置にあるので、記録媒体Pへインクが付着することを防止する。
【0060】
次に、予備吐出を終了後(ステップS4)、図2(c)に示すように、インク受け部材5はドラム回転体1の回転に伴い、周方向に沿って移動しながら記録ヘッド4のノズル面4Nに対向した位置から外れた退避位置に移動する(ステップS5)。このとき、インク遮蔽部5Aは、記録ヘッド4の移動経路を開放するように記録ヘッド4のノズル面よりも低い位置に退避している。
【0061】
次に、記録ヘッド4を記録領域に移動させた後、記録媒体Pの先端が記録ヘッド4のノズル面4Nと対向するようにドラム回転体1を回転させ、画像記録を開始する(ステップS6)。記録ヘッド4が記録媒体Pに画像を記録可能な記録領域上を主走査方向Cに沿って往復移動しながら、ドラム回転体1を回転させ画像記録する。記録ヘッドのインク吐出と同期がとられ、各記録ヘッドに対応して画像が記録される。画像記録終了後、記録された記録媒体をドラムから脱着して排出して一連の処理が終了する。次の記録媒体に画像記録を行う際は、一連の処理が繰り返し行われ、画像記録開始直前には予備吐出が行われる。
【0062】
画像記録開始の直前に予備吐出を行ってノズル内の増粘インク等を排出できるので、より確実に出力画像に影響を与えることもないものとすることができ、好ましい態様である。
【0063】
予備吐出動作のタイミングは、例えば、画像記録中に所定の時間間隔で行うようにしたり、入力部からの指示により行うようにしても良い。予備吐出動作のタイミングが到来すると、画像記録中であれば、記録ヘッド4をガイドレール3に沿ってホームポジションに移動させた後、ドラム回転体1を回転させると、インク受け部材5はドラム回転体1の回転に伴って回転され、記録ヘッド4のノズル面に対向した際に、ノズルからインク受け部材5に向けてインクを予備吐出するように制御すればよい。
【0064】
また、ドラム回転体1の回転を停止した状態で予備吐出動作を行うようにしても良い。1回の予備吐出動作で多数のインク滴を吐出できる。
【0065】
(第2実施形態)
次に本発明に係る第2実施形態について図6〜図12を参照して説明する。なお、第1実施形態と同様の箇所は同一の符号を付して説明を省略する。
【0066】
図6に示すように、本実施形態のインクジェット記録装置200は、ドラム回転体1の周面上部には記録ヘッド40が備えられており、図7に示すように、各ヘッドは、それぞれ記録媒体の幅方向(C方向)の略全領域をカバーするフルラインヘッド印字方式の記録ヘッドで、ガイドレール3で所定の位置に支持されている。
【0067】
第1実施形態のように主走査方向に移動可能な記録ヘッドを用いるシリアル印字方式においては、主走査方向の非記録領域に予備吐出用のインク受け部材を設けることが可能である。それに対して、記録媒体の全幅に亘ってインクを吐出するライン型印字ヘッドを用いたフルラインヘッド印字方式においては、固定的に配設された記録ヘッドから、搬送されている記録媒体に向けてインクを吐出するため、主走査方向の非記録領域に予備吐出用のインク受け部材を設けることが困難である。
【0068】
そこで、図7に示すように、インクジェット記録装置200のドラム回転体1の周方向に非記録領域を設け、当該非記録領域に、ドラム回転体1に収納可能に構成されたインク受け部材50及びインク受け部材50をドラム回転体1の開口部31を介して径方向(D方向)に往復移動させる駆動部16を設けている。
【0069】
ドラム回転体1の開口部31にシャッターを設け、インク受け部材50を往復移動させる時以外はシャッターを閉じるようにしてもよい。ドラム回転時に遠心力でインク受け部材50に吸収されたインクが飛散するのをより一層確実に防止できる。
【0070】
インク受け部材50は、記録ヘッド40と対向した状態で記録ヘッド40から予備吐出されたインクを受けるインク受け部50Bと、予備吐出時に、インク受け部50Bと記録媒体Pの間に配設され、インク受け部50Bのインク受け面(上面)からの高さが、インク受け面(上面)から記録ヘッド40のノズル面40N(下面)までの高さよりも高いインク遮蔽部50Aとが一体に形成された構造体であり、インク吸収体で構成されている。
【0071】
インク受け部材50は図7に示すように長手方向(ドラム回転体軸方向)で記録ヘッド40のノズル列の長さL4を十分カバーできる長さL5(L4<L5)を有していることが好ましい。
【0072】
即ち、第1実施形態と同様に、インク遮蔽部50Aの高さ方向と直交でかつ記録ヘッド40と対向する面に平行な方向における長さL5は、記録ヘッド40のノズル列の長さL4よりも長くなるように設定される。
【0073】
インク受け部材50及び駆動部16は不図示の支持台を介してドラム回転体1の回転軸であるドラム回転体軸2に取り付けられ、ドラム回転体1と共に回転する。
【0074】
また、インク受け部材50及び駆動部16を、ドラム回転体軸2以外の、例えば、ドラム回転体1の側面部1A、1Bの内側に取り付けてもよい。
【0075】
記録領域に隣接した回転方向上流側のドラム回転体1の周面には開口部31が設けられ、インク受け部材50は、回転しながら開口部31を通って図7(b)に示すドラム回転体1から突出した遮蔽位置と図7(c)に示すドラム回転体1へ収納された退避位置を、ドラムの径方向(図7のD方向)に往復移動する。
【0076】
インク遮蔽部50Aは、遮蔽位置では、記録ヘッド40とインク受け部50Bの間を遮蔽して記録媒体Pに拡散するインクを遮蔽し、退避位置では、記録ヘッド40と干渉しないように記録ヘッド40のノズル面よりも低い位置に退避している。
【0077】
なお、退避位置は、インク遮蔽部50Aが記録ヘッド40と干渉しないように記録ヘッド40のノズル面よりも低い位置に退避していればよく、インク受け部材50をドラム回転体1へ収納せずともよい。
【0078】
また、第1実施形態と同様に、予備吐出時に、記録ヘッド40を挟んで両側にインク遮蔽部50Aが配設されるようにしてもよい。
【0079】
図7(b)に示すように、記録媒体Pがドラム回転体1に保持されて、画像記録を開始する直前にドラム回転体1の開口部31が記録ヘッド40に対向した所定の位置に移動し、インク受け部材50は駆動部16によって、ドラム回転体1から突出した遮蔽位置に移動し、記録ヘッド40はインク受け部材50に向けて予備吐出を開始する。
【0080】
予備吐出時は、インク受け部材50が回転しながら、徐々に下降し、図7(c)に示すように、予備吐出が終了し、画像記録が開始するときはドラム回転体1へ収納された退避位置に移動している。
【0081】
具体的には、本実施形態におけるインク受け部材50は、図12に示すように、記録ヘッド40に対向する面が記録媒体Pから離れるほど記録ヘッド40との距離が大きくなるように傾斜した傾斜面になっていて、断面形状が三角形の部分を有しており、予備吐出時には少なくともその上端部が記録ヘッド40のノズル面40Nよりも上方に突出することができるように位置と向きが調整されて取り付けられている。予備吐出開始時では、図12(a)に示すようにインク受け部材50の傾斜面の下端が最初に予備吐出する記録ヘッド40−1のノズル面40Nに対向するように配設し、順次に記録ヘッド40−2、記録ヘッド40−3から予備吐出し、予備吐出終了時では、図12(b)に示すようにインク受け部材50の傾斜面の下端が最後に予備吐出する記録ヘッド40−4のノズル面40Nに対向するように配設し、このとき傾斜面の上端部はノズル面よりも上方に突出している。即ち、予備吐出の開始から終了までの間、インク遮蔽部50Aを記録ヘッド40のノズル面よりも高い位置に配設させつつ、インク受け部材50を下降させるように制御する。
【0082】
これは、インク受け部材50の三角形の部分の高さをd、幅をb、記録ヘッド40の幅をa、予備吐出終了時における記録ヘッド40のノズル面40Nとインク受け部材50の三角形の部分の底辺の距離をcとしたとき、a<bかつc<dを満たすように設定することでかかる構成は可能となる。インク受け部材50が図12(a)の位置から、図12(b)の位置に下降しながら回転移動する過程で、図中の左端のヘッド40−1から右端のヘッド40−4に順次に予備吐出が行われる。
【0083】
このように、平坦ではない領域において記録ヘッド40とインク受け部50Bとが対向する場合は、予備吐出時において、インク受け部50Bの記録媒体側の端部(インク受け部50Bの傾斜面の端部)の上面から記録ヘッド40の記録媒体側の端部の下面までの高さをL1、インク遮蔽部50Aのインク受け部50Bの記録媒体側の端部からの高さをL2としたとき、L1<L2に設定すればよい。このように設定することによりインク受け部50Bと記録ヘッド40の間の空間の記録媒体側の面を遮蔽できる。
【0084】
予備吐出している間の移動過程で、インク受け部材50は、記録ヘッド40と干渉することなく記録ヘッド40のノズル面40Nと所定のギャップを保ちつつ、かつ、少なくとも先端部が記録ヘッド40のノズル面40Nよりも上方に突出するように設定される。
【0085】
したがって、本実施形態のインクジェット記録装置200によれば、予備吐出時には、インク遮蔽部50Aは、インク受け部材50が記録ヘッド40と対向する位置に回転移動してきた際に、図7(b)及び図12に示すように、予備吐出される際にインク受け部5Bと記録媒体Pとの間に記録ヘッド40のノズル面40Nよりも高いインク遮蔽部50Aが配設されて、予備吐出によるインク受け部50Bからの跳ね返りのインク滴や着弾せずに浮遊しているインク滴がインク遮蔽部50Aにより捕捉され、記録媒体Pへインク滴が付着することを抑制できるので、記録品位の低下を防止できる。
【0086】
また、画像記録時等の予備吐出しない時には、インク受け部材50がドラム回転体1内に収納された退避位置に移動しており、ドラム周りのスペースを確保できるので、画像記録動作に影響を与えることもないものとすることができる。
【0087】
また、インク受け部材50の記録ヘッド40に対向する面が傾斜面にすることにより、回転しつつ記録ヘッド40に対向する際にインク受け部材50が記録ヘッド40に干渉することを防止することが容易になる。
【0088】
また、このとき、記録ヘッド40の同一ノズルから複数のインク滴を予備吐出させる際に、ノズルとインク受け部50Bの距離はほぼ一定とすることができるため、インクの跳ね返りをより効果的に防止できる。例えば、図12(a)でヘッド40−1のノズルから予備吐出するときのノズルとインク受け部材50の距離と、図12(b)でヘッド40−1の同一ノズルから予備吐出するときのノズルとインク受け部材50の距離が等しい状態でそれぞれ予備吐出される。
【0089】
また、複数の記録ヘッドから予備吐出をインク吸収体で構成されたインク受け部材50へ行なうとき、インク吸収体の同一点に多くのインク滴が打ち込まれるため、インク吸収体の吸収能力が打ち込まれるインク適量を超えた場合には、インク吸収体上にインク池が発生し、そこに更にインクが打ち込まれたとき、インク滴の跳ね返りが激しくなる場合がある。傾斜面を有することにより、一度にノズル当たり多くのインクを吐出する予備吐出に対しても、インクはインク受け部の表面に溜まることなく傾斜面に沿って流れ、筐体内に収納できる。留まったインクにインクが着弾することによりはねかえりを防止できる。
【0090】
予備吐出の開始から終了までの間は、インク遮蔽部50Aの先端は記録ヘッド40のノズル面40Nよりも高い位置にあり、インク受け部5Bと記録媒体Pの間に配設されて、記録媒体Pへインク滴が付着することを防止する。
【0091】
また、予備吐出後に記録ヘッド40の下側の空間をインク受け部材50が通過するので、予備吐出後に空気中を浮遊しているインクを確実に捕捉でき、その後の画像記録において、記録媒体Pにインクが付着するのを防止できる。
【0092】
図9はインク受け部材50の駆動部16を説明するための模式図である。なお、図8に示すように駆動部16は、インク受け部材50に対してドラム回転体1の軸方向の両端部にそれぞれ設けられている。
【0093】
図9に示すようにインク受け部材50は、直方体状の筐体(桶)14内に、筐体14の下面に形成された開口(図示せず)を介して駆動部16に接続された状態で収納されている。なお筐体14は、インク受け部材50がドラム回転体1から突出した状態でもドラム回転体1内に収納され突出しないようになっている。
【0094】
インク受け部材50の往復移動は、図示しないモータ、アクチュエータ等の駆動源により行われ、歯車やカム等を用いた伝達機構により駆動源の駆動力がインク受け部材50に伝達される。本実施形態において、駆動源と伝達機構が駆動部16として機能する。
【0095】
図9(a)に示す例では、インク受け部材50には、一体的に移動可能な軸17が接続されている。軸17には、歯車を介して回転可能な回転部材18が接続されており、さらに、回転部材18を回転駆動させる回転モータ(図示せず)が接続されている。つまり、回転モータは、画像記録時など予備吐出しない時は回転部材18を反時計方向に回転させることで軸17及びインク受け部材50を下方向に同時に移動させ、インク受け部材50をドラム回転体1に収納させ、予備吐出時は回転部材18を時計方向に回転させることで軸17及びインク受け部材50を上方向に同時に移動させ、ドラム回転体1の周面上に設けられた開口部31からインク受け部材50を突出させ、突出されたインク受け部材50は筐体14にガイドされつつ、記録ヘッド40に対向させることが可能になっている。なお、駆動部16は、回転モータ、軸17,回転部材18により構成されている。
【0096】
また、図9(b)に示す例では、インク受け部材50には、一体的に移動可能な軸17が接続されている。軸17には、回転可能な回転部材19が当接されており、さらに、回転部材19を回転駆動させる回転モータ(図示せず)が接続されている。回転部材19は、図9(b)に示すように断面形状が楕円形のカムであり、画像記録時など予備吐出しない時は、インク受け部材50をドラム回転体1に収納させ、予備吐出時はドラム回転体1の周面上に設けられた開口部31からインク受け部材50を突出させ、突出されたインク受け部材50は筐体14にガイドされつつ、記録ヘッド40に対向させることが可能となるように形状と位置とが調整されて取り付けられている。具体的には、予備吐出時では、図9(b)に示すように回転部材19の長径が軸17に対して平行となった状態で軸17に接するように配置し、予備吐出しない時は、予備吐出時の状態の回転部材19を90度回転させるように回転部材19の回転量を調整し、回転部材19の長径が軸17に対して垂直となった状態に配置することでかかる構成は可能となる。なお、駆動部16は、回転モータ、軸17,回転部材19により構成されている。
【0097】
また、図9(d)に示す例では、伸縮機構によりインク受け部材50を上下移動させる。インク受け部材50は、一体的に移動可能な軸17が接続されていて、軸17には、ソレノイド20のプランジャ20Bの一端が取り外し可能な状態で固定されている。なお、ソレノイド20は、本体20Aと、本体20Aが励磁されると吸引されるプランジャ20Bで構成される。画像記録時など予備吐出しない時は、ソレノイドに通電し、ソレノイドをオンすることにより、プランジャ20B、軸17及びインク受け部材50がソレノイド本体20Aに吸引される方向に移動し、インク受け部材50をドラム回転体1に収納させる。予備吐出時はソレノイドをオフにすると、プランジャ20B、軸17及びインク受け部材50がソレノイド本体20Aに吸引される方向とは逆方向に移動し、ドラム回転体1の周面上に設けられた開口部31からインク受け部材50を突出させ、突出されたインク受け部材50は筐体14にガイドされつつ、記録ヘッド40に対向させることが可能となるようにストロークと位置とが調整されて取り付けられている。なお、駆動部16は、ソレノイド20、軸17により構成されている。
【0098】
伸縮機構には、電磁式ソレノイド以外に、各種のアクチュエータを用いることも可能である。
【0099】
以上の例では、軸17とインク受け部材50が一体となって上下方向に移動するように構成されているが、図9(c)に示す例では、インク受け部材50は、駆動力伝達部材21に接続され、両端が筐体14で支持されている支持軸21Aを支点として一体的に回転する。駆動力伝達部材21の支点21Aと逆側には、上下方向に移動可能な軸17が当接されており、さらに、軸17を駆動させる駆動手段(図示せず)が接続されている。つまり、駆動手段は、画像記録時など予備吐出しない時は軸17を下方向に移動させ、インク受け部材50及び駆動力伝達部材21を反時計方向に回転させることでインク受け部材50をドラム回転体1に収納させ、予備吐出時は軸17を上方向に移動させ、インク受け部材50及び駆動力伝達部材21を時計方向に回転させることでドラム回転体1の周面上に設けられた開口部31からインク受け部材50を突出させ、突出されたインク受け部材50は筐体14にガイドされつつ、記録ヘッド40に対向させることが可能になっている。なお、駆動部16は、駆動手段、軸17,駆動力伝達部材21により構成されている。軸17の上下移動の駆動手段は、例えば、図9(a)、(b)、(d)の構成を採用すればいい。
【0100】
図10はインクジェット記録装置200における制御系のブロック図であり、ここでは代表的なものだけ示す。
【0101】
制御部6が、インク受け部材50の動作を制御する以外は、第1実施形態と同様である。
【0102】
次にインクジェット記録装置200の動作について説明する。
【0103】
図11はインク受け部材50への予備吐出動作のフローチャート図である。図11における各ステップは、制御部6におけるCPUが、所定のプログラムに基づいてROMやRAMと協働して実行される。
【0104】
インクジェット記録装置200に画像記録動作を行う旨の信号が入力される前では、インク受け部材50はドラム回転体1内に収納されている。このとき、ドラム回転体1の回転は停止している。
【0105】
その後、入力部12等からインクジェット記録装置200に画像記録動作を行う旨の信号が入力されると、給紙搬送部7により記録媒体収納部10から記録媒体Pが搬入され、図7(a)に示すように記録媒体Pの先端部S2はドラム回転体1の回転方向Aでインク受け部50の取り付け位置の手前に対応するドラム表面の先頭部S1と同期がとられ、搬送された記録媒体Pは先端部S2からドラム回転体1に吸着・支持される。支持された記録媒体Pはドラム回転体1と共に時計方向Aに回転し、この状態でインク受け部材50が記録ヘッド40のノズル面と対向するようにドラム回転体1を回転させる(図7(b))。
【0106】
このとき、駆動部16を制御して、インク受け部材50を開口部31から突出させ、記録ヘッド40のノズル面40Nよりも高い遮蔽位置まで上昇させる(ステップS11)。
【0107】
次に、駆動部16を制御して、インク受け部材50の下降を開始した後(ステップS12)。記録ヘッド40の予備吐出を開始する(ステップS13)。インク受け部材50はドラム回転体1の回転に伴い、回転しながら下降しつつ、記録ヘッド40から予備吐出されたインクを受ける。
【0108】
次に、予備吐出を終了後(ステップS14)、駆動部16を制御して、インク受け部材50がドラム回転体1内に収納される退避位置まで下降させてインク受け部材50の下降を終了する(ステップS15)。
【0109】
次に、図7(c)に示すように搬送された記録媒体Pの先端が記録ヘッド40のノズル面と対向するようにドラム回転体1を回転させ、画像記録を開始する(ステップS16)。記録ヘッド40は静止した状態で、ドラム回転体1を回転させ画像記録する。記録ヘッド40のインク吐出と同期がとられ、各ヘッドに対応して画像が記録される。画像記録終了後、記録された記録媒体Pをドラムから脱着して排出して一連の処理が終了する。次の記録媒体に画像記録を行う際は、一連の処理が繰り返し行われ、画像記録開始前には予備吐出が行われる。
【0110】
画像記録開始の直前に予備吐出を行ってノズル内の増粘インク等を排出できるので、より確実に出力画像に影響を与えることもないものとすることができる。
【0111】
なお、本発明は当該実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0112】
図13は、インク受け部材の他の例を示す模式図である。図13(a)は、インク受け部材の記録ヘッドに対向する側の面をインク吸収体で構成した例である。インクを吸収しない金属や樹脂等の部材にインク吸収体が接合されている。図13(b)は、予備吐出時に、記録ヘッドの記録媒体側にノズル面より下方に突出した凸部4T(40T)が設けられていて、インク遮蔽部5A(50A)を凸部4T(40T)の下面よりも高い位置に配設する例である。
【0113】
このように、平坦ではない領域において記録ヘッド4とインク受け部5Bとが対向する場合は、予備吐出時において、インク受け部5Bの記録媒体側の端部の上面から記録ヘッド4の記録媒体側の端部の下面(凸部4T(40T)の下面)までの高さをL1、インク遮蔽部5Aのインク受け部5Bの記録媒体側の端部からの高さをL2としたとき、L1<L2に設定すればよい。このように設定することによりインク受け部5Bと記録ヘッド4の間の空間の記録媒体側の面を遮蔽できる。
【0114】
図13(c)は、インク遮蔽部5A(50A)とインク受け部5B(50B)を一体化せず、分割して構成した例であり、インク遮蔽部のみを遮蔽位置と退避位置に移動させることが可能である。
【0115】
また、インク遮蔽部をスポンジ状のインク吸収体等の可撓性材料で形成し、記録ヘッドとの干渉が大きな問題にならないような場合には、インク遮蔽部を常時、遮蔽位置に配設するようにしてもよい。
【0116】
また、上記実施形態では、本発明をドラム走査型のインクジェット記録装置に適用した例を示したが、本発明は平面走査型のインクジェット記録装置にも適用可能である。シリアル印字方式の記録ヘッドの場合は、記録媒体の搬送方向(副走査方向)または搬送される記録媒体の表面に直交する方向に沿ってインク遮蔽部を往復移動させ、遮蔽位置と退避位置を移動させればよい。フルライン印字方式の記録ヘッドの場合は、記録媒体の搬送方向(副走査方向)に直交する2方向の何れか一方に沿ってインク遮蔽部を往復移動させ、遮蔽位置と退避位置を移動させればよい。
【符号の説明】
【0117】
100、200 インクジェット記録装置
1 ドラム回転体
2 ドラム回転体軸
3 ガイドレール
4、40 記録ヘッド
5,50 インク受け部材
5A、50A インク遮蔽部
5B、50B インク受け部
P 記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体にインクを吐出する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドの下面と対向した状態で記録ヘッドから予備吐出されたインクを受けるインク受け部と、
前記予備吐出時に、前記インク受け部と前記記録媒体の間に配設され、前記インク受け部の上面からの高さが、前記上面から前記記録ヘッドの下面までの高さよりも高いインク遮蔽部と、
を備えたことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記インク遮蔽部は前記インク受け部と一体的に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記インク遮蔽部はインク吸収体で構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記インク受け部はインク吸収体で構成されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記配設されたインク遮蔽部の高さ方向と直交でかつ前記記録ヘッドと対向する面に平行な方向において、前記インク遮蔽部の長さが、前記記録ヘッドのノズル列の長さよりも長いことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記インク受け部の上面が、前記記録媒体から離れるほど前記記録ヘッドの下面との距離が大きくなるように傾斜した傾斜面を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記予備吐出中に、前記インク遮蔽部を前記記録ヘッドの下面よりも高い位置に配設しつつ、前記インク遮蔽部と前記インク受け部とを一体的に下降させるように制御することを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記記録ヘッドの同一ノズルから複数のインク滴を予備吐出させる際に、前記ノズルと前記インク受け部の上面の距離が一定となるように制御することを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項9】
前記インク遮蔽部は、前記配設された遮蔽位置と、前記記録ヘッドの下面よりも低い退避位置とを移動可能であることを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項10】
前記予備吐出後に、前記インク遮蔽部を前記退避位置まで移動させるように制御することを特徴とする請求項9に記載のインクジェット記録装置。
【請求項11】
前記インク遮蔽部を前記退避位置に移動させた後、前記記録ヘッドから前記記録媒体にインクを吐出して画像を形成するように制御することを特徴とする請求項9または10に記載のインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−230343(P2011−230343A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−101838(P2010−101838)
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】