説明

インクジェット記録装置

【課題】吐出されたインクのノズル内への引き戻しを防止するとともに、記録ヘッドの回復に要する時間も大幅に短縮可能なインクジェット記録装置を提供する。
【解決手段】記録ヘッド13の回復動作を行う場合は、流入側弁27を閉じた状態でシリンジポンプ21を加圧することにより、シリンダー21a内のインク22が第2供給路25を通って記録ヘッド13に供給される。供給されたインク22はインク吐出ノズル15からインク吐出面13aに強制的に吐出(パージ)される。このパージ動作により、インク吐出ノズル15内の増粘インク、異物や気泡が排出される。次に、流出側弁29を閉じ、流入側弁27を開放した状態で、ワイパー30によるインク吐出面13aに吐出されたインク22の拭き取り(ワイピング)と、シリンジポンプ21へのインク22の再充填とを同時に行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファクシミリ、複写機、プリンター等の記録装置において、用紙等の記録媒体にインクを吐出することによって記録を行うインクジェット記録装置に関するものであり、特にインクを吐出する記録ヘッドの回復に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ファクシミリ、複写機、プリンター等の記録装置は、紙、布、OHP用シート等の記録媒体に画像を記録するように構成されているが、記録を行う方式により、インクジェット式、ワイヤードット式、サーマル式等に分類することができる。また、これらの記録方式はさらに、記録ヘッドが記録媒体上を走査しながら記録を行うシリアル型と、装置本体に固定された記録ヘッドにより記録を行うラインヘッド型に分類することができる。
【0003】
例えばラインヘッド型のインクジェット記録装置では、装置本体内に備えられた搬送ベルト等の搬送手段によって用紙等の記録媒体を高速で搬送しながら、記録媒体の幅以上の記録領域を有するラインヘッドの各インク吐出ノズルによりインクを吐出することによって記録媒体に画像を形成する。これにより、記録ヘッドが記録媒体の幅方向に往復動作するシリアル型インクジェット記録装置に比べて高速印字が可能となる。
【0004】
このようなインクジェット記録装置では、一般的に、記録ヘッドのインク吐出用ノズル内の目詰まりを防止するため、当該ノズル内の増粘インク、異物や気泡等を吐き出させて記録ヘッドの回復(メンテナンス)動作を行う必要がある。記録ヘッドの回復方法としては、インクタンクと往復式ポンプ、インク吐出用ノズルをパイプでつなぎ、往復式ポンプを用いてインク吐出用ノズル内のインクをインク供給側から加圧して強制的に排出する(パージ)とともに、インク吐出面に排出されたインクをワイパーで拭き取る(ワイピング)方法が用いられている。
【0005】
具体的には、往復式ポンプの流入側(インクタンク側)の弁を閉じ(第1工程)、ポンプにより流出側(ノズル側)のインクに圧力をかけてノズル内の増粘インクや異物を吐出させる(第2工程)。次に、流入側と流出側の弁を開いて通常状態に戻し(第3工程)、ノズル面をワイパーで拭き取るワイピング動作を行う(第4工程)。その後、流出側の弁を閉じ(第5工程)、ポンプを引き戻し、ポンプ内にインクを再充填する(第6工程)。最後に、流出側の弁を開いて通常状態に戻す(第7工程)。
【0006】
しかし、上記の手順では、ポンプでの加圧後、流入側と流出側の弁が共に開いた状態でワイピング動作を行うため、記録ヘッド内にインクタンクとノズル面との水頭差による負圧が掛かり、ノズルの外に吐出された増粘インクや異物が毛細管現象によってノズル内に引き戻されてしまうという不具合があった。
【0007】
ノズルの外に吐出された増粘インクや異物のノズル内への引き込みを防止する方法として、例えば特許文献1には、記録ヘッドのクリーニング動作時に、記録ヘッドのノズルにインクを供給する供給路においてインクを加圧してノズルからインクを溢れ出させる第1ステップと、第1ステップの後に加圧を停止させる第2ステップと、第2ステップの後にノズルのインクに負圧が与えられない状態で記録ヘッドのノズル面のワイピングを行う第3ステップと、第3ステップの後にノズルのインクに負圧を与えてメニスカスを形成させる第4ステップと、を実行するインクジェット記録装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2011−5672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1の方法によれば、ノズルに負圧が与えられない状態でワイピング動作を行うため、ノズル内へのインクの引き戻しは防止される。しかし、特にラインヘッド型の記録ヘッドの場合、シリアル型の記録ヘッドに比べて吐出するインク量が多いためインクの充填に時間を要することになり、ノズル面のワイピング領域が広いためワイピングにも時間を要することになる。そのため、第1〜第7までの工程を順次行う必要があるため、記録ヘッドの回復に時間を要するという問題点があった。この点、特許文献1の方法では、記録ヘッドの回復に時間を要するという点では従来と同様であり、記録ヘッドの回復動作を迅速に且つ効果的に行う方法の開発が課題となっていた。
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑み、吐出されたインクのノズル内への引き戻しを防止するとともに、記録ヘッドの回復に要する時間も大幅に短縮可能なインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本発明は、記録媒体上に吐出するインクを貯留するインクタンクと、記録媒体上にインクを吐出する吐出ノズルが開口する記録ヘッドと、該記録ヘッドと前記インクタンクとの間に設けられる往復式ポンプと、該往復式ポンプと前記インクタンクとを連結する第1供給路と、前記往復式ポンプと前記記録ヘッドとを連結する第2供給路と、前記第1供給路を開放または閉鎖する流入側弁と、前記第2供給路を開放または閉鎖する流出側弁と、前記記録ヘッドのインク吐出面を拭き取るワイパーと、を備えたインクジェット記録装置において、前記第1供給路内の前記往復式ポンプから前記インクタンクへのインクの移動を規制し、前記第2供給路内の前記往復式ポンプから前記記録ヘッドへのインクの移動を許容した状態で前記往復式ポンプを用いて加圧することにより前記吐出ノズルからインクを吐出するインク吐出工程と、前記第1供給路内の前記インクタンクから前記往復式ポンプへのインクの移動を許容し、前記第2供給路内の前記記録ヘッドから前記往復式ポンプへのインクの移動を規制した状態で前記インクタンクから前記往復式ポンプにインクを再充填するとともに、前記ワイパーを用いて前記記録ヘッドのインク吐出面を拭き取るワイピング・再充填工程と、を含む前記記録ヘッドの回復動作を実行可能であることを特徴としている。
【0012】
また本発明は、上記構成のインクジェット記録装置において、前記ワイピング・再充填工程は、前記往復式ポンプへのインクの再充填動作と前記インク吐出面の拭き取り動作のうち、継続時間の長い方の動作の開始から完了までの間に継続時間の短い方の動作を開始し、且つ完了することを特徴としている。
【0013】
また本発明は、上記構成のインクジェット記録装置において、前記インク吐出面の拭き取り動作の継続時間が前記往復式ポンプへのインクの再充填動作の継続時間よりも長い場合は、前記往復式ポンプへのインクの再充填動作の継続時間を前記インク吐出面の拭き取り動作の継続時間に合わせて延長することを特徴としている。
【0014】
また本発明は、上記構成のインクジェット記録装置において、前記流入側弁または前記流出側弁の少なくとも一方は、前記インクタンクから前記記録ヘッドに向かう方向への前記インクの通過を許容するとともに、前記記録ヘッドから前記インクタンクに向かう方向への前記インクの通過を規制する逆止弁であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明の第1の構成によれば、記録ヘッドの回復動作のシーケンス中で最も時間を要するインク吐出面のワイピングと往復式ポンプの再充填とを並行して行うため、記録ヘッドの回復に要する時間を短縮することができる。また、往復式ポンプを加圧してインクを吐出させた後、流出側弁を閉じた状態でワイピングを行うため、吐出ノズルのノズル面とインクタンクとの水頭差による負圧が記録ヘッド内に掛からず、吐出ノズルから吐出された増粘インクや異物が吐出ノズル内に引き戻されるおそれもなくなる。
【0016】
また、本発明の第2の構成によれば、上記第1の構成のインクジェット記録装置において、ワイピング・再充填工程は、往復式ポンプへのインクの再充填動作と、インク吐出面の拭き取り動作のうち継続時間の長い方の動作の開始から完了までの間に継続時間の短い方の動作を開始し、且つ完了することにより、ワイピング・再充填工程の実行時間がインクの再充填動作とインク吐出面の拭き取り動作のうち継続時間の長い方と等しくなる。従って、記録ヘッドの回復に要する時間を極力短縮することができる。
【0017】
また、本発明の第3の構成によれば、上記第2の構成のインクジェット記録装置において、インク吐出面の拭き取り動作の継続時間の方が長い場合には往復式ポンプの再充填の継続時間をインク面の拭き取り動作の継続時間に合わせて延長することで、記録ヘッドの回復に要するトータルの時間を長くすることなく、インク内の気泡の発生を抑制することができる。
【0018】
また、本発明の第4の構成によれば、上記第1乃至第3のいずれかの構成のインクジェット記録装置において、流入側弁または流出側弁の少なくとも一方を、インクタンクから記録ヘッドに向かう方向へのインクの通過を許容するとともに、記録ヘッドからインクタンクに向かう方向へのインクの通過を規制する逆止弁とすることにより、記録ヘッドの回復動作中における流入側弁及び流出側弁の開閉制御が不要となるため、記録ヘッドの回復動作手順を簡素化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明のインクジェット記録装置100の概略構造を模式的に示す側面図
【図2】図1に示すインクジェット記録装置100の搬送ベルトを上方からみた平面図
【図3】本発明の第1実施形態に係るインクジェット記録装置100のインクタンク20から記録ヘッド13までのインク流路を示す模式図
【図4】記録ヘッド13の回復動作中のインク吐出工程を模式的に示す図
【図5】記録ヘッド13の回復動作中のワイピング・再充填工程を模式的に示す図
【図6】記録ヘッド13の回復動作中のワイピング・再充填工程が終了した状態を模式的に示す図
【図7】記録ヘッド13の回復動作のシーケンスを示すフローチャート
【図8】本発明の第2実施形態に係るインクジェット記録装置100のインクタンク20から記録ヘッド13までのインク流路を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。図1は本発明のインクジェット記録装置の概略構成を示す側面図であり、図2は、図1に示すインクジェット記録装置の搬送ベルトを上方からみた平面図である。
【0021】
図1に示すように、インクジェット記録装置100の左側部には用紙Pを収容する給紙トレイ2が設けられており、この給紙トレイ2の一端部には、給紙トレイ2に収容された用紙Pを、最上位の用紙Pから順に一枚ずつ後述する搬送ベルト5へと搬送給紙するための給紙ローラー3と、給紙ローラー3に圧接され従動回転する従動ローラー4とが設けられている。
【0022】
用紙搬送方向(矢印X方向)に対し給紙ローラー3及び従動ローラー4の下流側(図1の右側)には、搬送ベルト5が回転自在に配設されている。搬送ベルト5は、用紙搬送方向下流側に配置されたベルト駆動ローラー6と、上流側に配置され搬送ベルト5を介してベルト駆動ローラー6に従動回転するベルトローラー7とに掛け渡されており、ベルト駆動ローラー6が時計回り方向に回転駆動されることにより、用紙Pが矢印Xの方向に搬送される。
【0023】
ここで、用紙搬送方向Xの下流側にベルト駆動ローラー6を配置したことにより、搬送ベルト5の用紙送り側(図1の上側面)はベルト駆動ローラー6に引っ張られるようになるため、搬送ベルト5の用紙送り側のテンションを高めることができ、安定した用紙Pの搬送が可能となる。なお、搬送ベルト5には誘電体樹脂製のシートが用いられ、主として継ぎ目を有しない(シームレス)ベルトが用いられる。
【0024】
また、用紙搬送方向に対し搬送ベルト5の下流側には、図1の時計回り方向に駆動され、画像が記録された用紙Pを装置本体外へと排出する排出ローラー8と、排出ローラー8の上部に圧接され従動回転する従動ローラー9とが設けられており、排出ローラー8及び従動ローラー9の下流側には、装置本体外へと排出された用紙Pが積載される排出トレイ10が設けられている。
【0025】
そして、搬送ベルト5の上方には、搬送ベルト5の上面に対して所定の間隔が形成されるような高さに支持され、搬送ベルト5上を搬送される用紙Pへと画像の記録を行うラインヘッド11C、11M、11Y及び11Kが配設されている。これらのラインヘッド11C〜11Kには、それぞれインクタンク20(図3参照)に貯留されている4色(シアン、マゼンタ、イエロー及びブラック)のインクがシリンジポンプ21(図3参照)によって供給され、各ラインヘッド11C〜11Kからそれぞれのインクを吐出することにより、用紙P上にカラー画像が形成される。
【0026】
これらのラインヘッド11C〜11Kは、図2に示すように、用紙搬送方向と直交する方向に複数(ここでは3個)の記録ヘッド13が千鳥状に配列されて、搬送される用紙Pの幅以上の記録領域を有しており、搬送ベルト5上を搬送される用紙Pに対して、一括して1行分の画像を記録することができるようになっている。また、各記録ヘッド13はそれぞれに設けられたインク吐出ノズル15の一部が搬送方向に重複するように配置されている。
【0027】
なお、ラインヘッド11C〜11Kのインクの吐出方式としては、例えば、図示しないピエゾ素子を用いてインクを押し出すピエゾ方式や、発熱体によって気泡を発生させ、圧力をかけてインクを吐出するサーマルインクジェット方式など、各種方式を適用することができる。
【0028】
ラインヘッド11C〜11Kの各記録ヘッド13は、外部コンピューター等から受信した画像データの情報に対応して、搬送ベルト5表面に載置された用紙Pに向かって記録ヘッド13からインクを吐出する。これにより、搬送ベルト5上の用紙Pにはシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色のインクが重ね合わされたカラー画像が形成される。カラー画像が形成された用紙Pは、排出ローラー8及び従動ローラー9を介して、インクジェット記録装置100の右側面外側に設けられた排出トレイ10に排出される。
【0029】
また、記録ヘッド13の乾燥や目詰まりによるインクの吐出不良を防止するために、長期間停止後の印字開始時は全ての記録ヘッド13から、また印字動作の合間にはインク吐出量が規定値以下の記録ヘッド13のインク吐出ノズル15から、ノズル内の粘度が高くなったインクを吐出(パージ)して、次の印字動作に備える。
【0030】
続いて、印字時におけるインクタンク20から記録ヘッド13へのインクの供給、及びパージ時における記録ヘッド13からのインクの吐出について説明する。図3は、本発明の第1実施形態に係るインクジェット記録装置100のインクタンク20から記録ヘッド13までのインク流路を模式的に示す図である。なお、各色のインクタンク20と記録ヘッド13との間に、それぞれ図3に示すインク流路が設けられているが、ここでは任意の1色におけるインク流路について説明する。
【0031】
図3に示すように、インクタンク20と記録ヘッド13との間には、シリンジポンプ21が配置されている。インクタンク20とシリンジポンプ21とはチューブ部材から成る第1供給路23によって接続され、シリンジポンプ21と記録ヘッド13内のインク吐出ノズル15とはチューブ部材から成る第2供給路25によって連結されている。また、記録ヘッド13のインク吐出面13aに沿って移動可能なワイパー30が設けられている。
【0032】
第1供給路23には流入側弁27が設けられており、第2供給路25には流出側弁29が設けられている。流入側弁27を開閉することにより第1供給路23内のインクの移動が許容または規制され、流出側弁29を開閉することにより第2供給路25内のインクの移動が許容または規制される。なお、図3〜図6において、流入側弁27、流出側弁29の開放状態を白、閉鎖状態を黒で示している。
【0033】
シリンジポンプ21は、シリンダー21aとピストン21bとを備えている。シリンダー21aは、第1供給路23及び第2供給路25と接続されており、第1供給路23を通じてインクタンク20内のインク22がシリンダー21aに流入するようになっている。また、シリンダー21aから第2供給路25を通じてインクが排出され、排出されたインクは記録ヘッド13に供給されるようになっている。
【0034】
ピストン21bは、駆動装置(図示せず)によって上下に移動可能となっている。ピストン21bの外周には、Oリング等のパッキン(不図示)が装着されており、シリンダー21aからのインクの漏れを防ぐと共に、ピストン21bがシリンダー21aの内周面に沿って滑らかに摺動できるようになっている。
【0035】
ワイパー30は、インク吐出面13aに所定の圧力で圧接された状態でインク吐出面13aの一端側(図3の右端)の拭き取り開始位置から他端側(図3の左端)まで移動することでインク吐出面13aに吐出されたインクを拭き取る。その後、ワイパー30は一旦インク吐出面13aから離間した状態で逆方向(図3の左から右方向)に移動し、再び拭き取り開始位置に戻る。
【0036】
通常時(印字時)は、図3に示すように、流入側弁27及び流出側弁29は共に開放状態であり、ピストン21bを予め設定された位置で停止させておくことにより、シリンダー21a内には略一定量のインクが充填されている。そして、シリンダー21aと記録ヘッド13との間の表面張力(メニスカス)によって、インクがシリンダー21aから記録ヘッド13へと供給される。
【0037】
次に、シリンジポンプ21による記録ヘッド13の回復動作について説明する。図4〜図6は、記録ヘッド13の回復動作中の各工程を模式的に示す図であり、図7は、記録ヘッド13の回復動作のシーケンスを示すフローチャートである。図3〜図6を参照しながら、図7のステップに沿って記録ヘッド13の回復動作手順を説明する。
【0038】
記録ヘッド13の回復動作を行う場合は、まず、記録ヘッド13により印字が行われていない状態において、流入側弁27を閉じ(ステップS1)、第1供給路23内のインクの移動を遮断する。次に、ピストン21bを下方に移動させてシリンジポンプ21を加圧する(ステップS2)。
【0039】
このとき、シリンダー21a内で正圧が発生するが、流入側弁27は閉鎖されており、流出側弁29のみが開放されているため、図4に示すように、シリンダー21a内のインク22が第2供給路25を通って記録ヘッド13に供給される。供給されたインク22はインク吐出ノズル15からインク吐出面13aに強制的に吐出(パージ)される(インク吐出工程)。このパージ動作により、インク吐出ノズル15内の増粘インク、異物や気泡が排出され、記録ヘッド13を回復することができる。
【0040】
次に、流出側弁29を閉じ、流入側弁27を開放する(ステップS3)。この状態で、図5に示すように、ワイパー30によるインク吐出面13aに吐出されたインク22の拭き取り(ワイピング)と、ピストン21bを上方に移動させることによるシリンジポンプ21へのインク22の再充填とを同時に行う(ステップS4)。ワイパー30によって拭き取られた増粘インク等は、廃棄用タンク(図示せず)に回収される。
【0041】
そして、図6に示すように、インク吐出面13aのワイピングとシリンジポンプ21の再充填(ワイピング・再充填工程)が終了すると、流出側弁29を開放し(ステップS5)、ワイパー30を拭き取り開始位置に戻す。これにより、記録ヘッド13の回復動作が完了し、図3に示す印字可能状態に戻る。
【0042】
上記の手順で記録ヘッド13の回復動作を行うことにより、回復動作のシーケンス中で最も時間を要するインク吐出面13aのワイピングとシリンジポンプ21の再充填とを並行して行うことができる。従って、インク吐出量が多くインクの充填に時間を要し、ワイピング領域が広くワイピング動作にも時間を要するラインヘッド型の記録ヘッド13の回復に要する時間を短縮することができる。
【0043】
また、シリンジポンプ21を加圧してインク22を吐出させた後、流出側弁29を閉じた状態でワイピングを行うため、インク吐出ノズル15のノズル面とインクタンク20との水頭差による負圧が記録ヘッド13内に掛からない。そのため、インク吐出ノズル15から吐出された増粘インクや異物がインク吐出ノズル15内に引き戻されるおそれもなくなる。
【0044】
なお、ステップS4で、インク吐出面13aのワイピングに要する時間と、シリンジポンプ21の再充填に要する時間とは同一ではない。そこで、この2つの動作のうち、継続時間の長い方の動作の開始から完了までの間に継続時間の短い方の動作を実行するようにする。
【0045】
例えば、シリンジポンプ21の再充填に要する時間の方が長い場合、インク吐出面13aのワイピングとシリンジポンプ21の再充填とを同時に開始し、シリンジポンプ21の再充填が完了する前にインク吐出面13aのワイピング動作を完了する。または、シリンジポンプ21の再充填を開始した後でインク吐出面13aのワイピングを開始し、シリンジポンプ21の再充填が完了する前に、或いはシリンジポンプ21の再充填の完了と同時にインク吐出面13aのワイピング動作を完了する。このようにすれば、ワイピング・再充填工程の実行時間がワイピング動作または再充填動作のうち継続時間の長い方と等しくなり、ワイピング・再充填工程に要する時間を極力短縮することができる。
【0046】
ところで、シリンジポンプ21の再充填を迅速に行うためにピストン21bの上昇速度を速くすると、インク内に気泡が発生し易くなるという問題点がある。そこで、インク吐出面13aのワイピングに要する時間の方が長い場合は、インク吐出面13aのワイピングとシリンジポンプ21の再充填とを同時に開始し、ピストン21bの上昇速度を遅くしてインク吐出面13aのワイピング動作の完了と同時にシリンジポンプ21の再充填を完了することが好ましい。このように、ワイピングに要する時間の方が長い場合にはシリンジポンプ21の再充填をワイピングに合わせてゆっくりと時間をかけて行うことで、記録ヘッド13の回復に要するトータルの時間を長くすることなく、インク内の気泡の発生を抑制することができる。
【0047】
図8は、本発明の第2実施形態に係るインクジェット記録装置100のインクタンク20から記録ヘッド13までのインクの流路を模式的に示す図である。本実施形態では、第1供給路23に配置される流入側弁27は、インクタンク20側からシリンジポンプ21側へのインクの移動を許容し、シリンジポンプ21側からインクタンク20側へのインクの移動を規制する逆止弁である。同様に、第2供給路25に配置される流出側弁29は、シリンジポンプ21側から記録ヘッド13側へのインクの移動を許容し、記録ヘッド13側からシリンジポンプ21側へのインクの移動を規制する逆止弁である。
【0048】
この構成によれば、記録ヘッド13の回復動作中における流入側弁27及び流出側弁29の開閉制御(図7のステップS1、S3、S5)が不要となるため、第1実施形態に比べて記録ヘッド13の回復動作手順を簡素化することができる。なお、ここでは流入側弁27及び流出側弁29の両方を逆止弁としたが、流入側弁27及び流出側弁29のいずれか一方を逆止弁としても良い。
【0049】
その他、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、上記各実施形態では、シリンジポンプ21を用いて印字時に記録ヘッド13にインクを供給する構成としたが、印字時のインクの供給方法は、インクタンク20から記録ヘッド13にインクを供給可能であれば特に限定されるものではない。例えば、シリンジポンプ21を経由せずにインクタンク20と記録ヘッド13とを連結する第3供給路を設け、第3供給路を用いてインクタンク20から記録ヘッド13にインクを供給することもできる。
【0050】
また、記録ヘッド13のインク吐出ノズル15の個数やノズル間隔等はインクジェット記録装置100の仕様に応じて適宜設定することができる。また、記録ヘッド13の数量も特に限定されるものではなく、例えば各ラインヘッド11C〜11Kにつき記録ヘッド13を1つ配置することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、記録ヘッドからインクを吐出することによって記録を行うインクジェット記録装置に利用可能である。本発明の利用により、記録ヘッドの回復に要する時間を短縮できるため、ユーザーの待ち時間が短く使用性に優れたインクジェット記録装置となる。また、インク吐出ノズルから吐出された増粘インクや異物の再吸入によるインク吐出ノズルの目詰まりや印字不良も防止可能なインクジェット記録装置となる。
【符号の説明】
【0052】
13 記録ヘッド
15 インク吐出ノズル
20 インクタンク
21 シリンジポンプ(往復式ポンプ)
21a シリンダー
21b ピストン
22 インク
23 第1供給路
25 第2供給路
27 流入側弁
29 流出側弁
30 ワイパー
100 インクジェット記録装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体上に吐出するインクを貯留するインクタンクと、
記録媒体上にインクを吐出する吐出ノズルが開口する記録ヘッドと、
該記録ヘッドと前記インクタンクとの間に設けられる往復式ポンプと、
該往復式ポンプと前記インクタンクとを連結する第1供給路と、
前記往復式ポンプと前記記録ヘッドとを連結する第2供給路と、
前記第1供給路を開放または閉鎖する流入側弁と、
前記第2供給路を開放または閉鎖する流出側弁と、
前記記録ヘッドのインク吐出面を拭き取るワイパーと、
を備えたインクジェット記録装置において、
前記第1供給路内の前記往復式ポンプから前記インクタンクへのインクの移動を規制し、前記第2供給路内の前記往復式ポンプから前記記録ヘッドへのインクの移動を許容した状態で前記往復式ポンプを用いて加圧することにより前記吐出ノズルからインクを吐出するインク吐出工程と、
前記第1供給路内の前記インクタンクから前記往復式ポンプへのインクの移動を許容し、前記第2供給路内の前記記録ヘッドから前記往復式ポンプへのインクの移動を規制した状態で前記インクタンクから前記往復式ポンプにインクを再充填するとともに、前記ワイパーを用いて前記記録ヘッドのインク吐出面を拭き取るワイピング・再充填工程と、
を含む前記記録ヘッドの回復動作を実行可能であることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記ワイピング・再充填工程は、前記往復式ポンプへのインクの再充填動作と前記インク吐出面の拭き取り動作のうち、継続時間の長い方の動作の開始から完了までの間に継続時間の短い方の動作を開始し、且つ完了することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記インク吐出面の拭き取り動作の継続時間が前記往復式ポンプへのインクの再充填動作の継続時間よりも長い場合は、前記往復式ポンプへのインクの再充填動作の継続時間を前記インク吐出面の拭き取り動作の継続時間に合わせて延長することを特徴とする請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記流入側弁または前記流出側弁の少なくとも一方は、前記インクタンクから前記記録ヘッドに向かう方向への前記インクの通過を許容するとともに、前記記録ヘッドから前記インクタンクに向かう方向への前記インクの通過を規制する逆止弁であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−35237(P2013−35237A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−174743(P2011−174743)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】