説明

インクセットおよびこれを用いた液滴吐出装置

【課題】顔料インクおよび染料インクが混合された場合であっても、顔料インクに含まれる顔料の分散性が良好なインクセットの提供。
【解決手段】水、顔料および顔料の対イオンとして第1金属イオンを含有する第1インクと、水、一般式(1)で表される染料および染料の対イオンとして第2金属イオンを含有する第2インクとを有し、第1金属イオンの極限当量伝導率[S・cm/eq]は、第2金属イオンの極限当量伝導率よりも大きい。


(式(1)中、Qはハロゲン原子、Aはスルホ基、カルボキシ基またはヒドロキシ基、xは2以上4以下の整数、yは1以上3以下の整数を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクセットおよびこれを用いた液滴吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、色材として顔料または染料を含有するインクが知られている。色材として顔料を含有する顔料インクは、滲みが少なく、耐水性や耐光性が良好であるという点から、特に、文字等の記録に好ましく用いられる。また、色材として染料を含有する染料インクは、光沢性および発色性が良好であり、色彩が鮮明であるという点から、特に、画像等の記録に好ましく用いられる。
【0003】
上記のような特性を備えた顔料インクおよび染料インクを併用すると、被記録媒体に記録される文字および画像の両方の記録品質が優れたものとなる。このような理由から、近年、顔料インクおよび染料インクの両方を備えたインクセットが広く用いられている。
【0004】
ところで、顔料インクおよび染料インクを備えたインクセットをインクジェット記録装置に適用した場合に、インクを吐出するためのノズル孔を備えたノズル面において、顔料インクおよび染料インクが混合される場合がある。このような場合、顔料インク中の顔料の分散性が染料インクによって破壊され、顔料が凝集する場合がある。特に、ノズル面をクリーニングするために設けられたワイプ部材によってノズル面をクリーニングした際に、顔料の凝集物によってノズル孔が塞がれて、インクの吐出安定性を低下させてしまう場合があった。また、ノズル面に付着した顔料の凝集物が記録媒体上に落下してしまうという不具合が発生することがあった。
【0005】
このような顔料の凝集を低減させるために、特許文献1には、染料インクにラクタム構造を有するポリマーを添加することが記載されている。また、特許文献2には、顔料インクおよび染料インクに含まれるカウンターイオン(対イオン)の量を規定することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−84136号公報
【特許文献2】特開2006−2094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の従来技術では、顔料インク及び染料インクが混合された際に、顔料の分散破壊を十分に抑制することができず、顔料の凝集が起こる場合があった。特に、耐候性(例えば、耐光性および耐ガス性)等の特性を向上させるために改良された特定の染料を含有する染料インクを用いた場合に、当該染料インクと顔料インクとが混合されると、顔料の分散性が著しく低下する場合があった。
【0008】
本発明のいくつかの態様にかかる目的の1つは、顔料インクおよび染料インクが混合された場合であっても、顔料インクに含まれる顔料の分散性が良好なインクセットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は前述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様または適用例として実現することができる。
【0010】
[適用例1]
本発明に係るインクセットの一態様は、
水、顔料および前記顔料の対イオンとして第1金属イオンを含有する第1インクと、
水、下記一般式(1)で表される染料および前記染料の対イオンとして第2金属イオンを含有する第2インクと、
を有し、
下記(条件1)または(条件2)に記載の前記第1金属イオンの極限当量伝導率[S・cm/eq]は、下記(条件3)または(条件4)に記載の前記第2金属イオンの極限当量伝導率[S・cm/eq]よりも大きい。
(条件1)前記第1金属イオンが単独の金属イオンからなる場合は、前記第1金属イオンの極限当量伝導率は、前記単独の金属イオンの極限当量伝導率とする
(条件2)前記第1金属イオンが2種以上の金属イオンからなる場合は、前記第1金属イオンの極限当量伝導率は、前記2種以上の金属イオンの平均の極限当量伝導率とする
(条件3)前記第2金属イオンが単独の金属イオンからなる場合は、前記第2金属イオンの極限当量伝導率は、前記単独の金属イオンの極限当量伝導率とする
(条件4)前記第2金属イオンが2種以上の金属イオンからなる場合は、前記第2金属イオンの極限当量伝導率は、前記2種以上の金属イオンの平均の極限当量伝導率とする
【0011】
【化1】

(式(1)中、Qはハロゲン原子を表し、Aはスルホ基、カルボキシ基またはヒドロキシ基を表し、xは2以上4以下の整数を表し、yは1以上3以下の整数を表す。)
【0012】
適用例1のインクセットによれば、第1インクおよび第2インクが混合された場合であっても、第1インクに含まれる顔料の分散性が良好である。
【0013】
[適用例2]
適用例1において、
前記第1金属イオンは、ナトリウムイオンおよびリチウムイオンの少なくとも一方であることができる。
【0014】
[適用例3]
適用例1または適用例2において、
前記第2金属イオンは、カリウムイオンおよびナトリウムイオンの少なくとも一方であることができる。
【0015】
[適用例4]
適用例1ないし適用例3のいずれか1例において、
前記染料は、下記式(2)で表される化合物またはその塩であることができる。
【0016】
【化2】

【0017】
[適用例5]
本発明に係る液滴吐出装置の一態様は、
適用例1ないし適用例4のいずれか1例に記載の第1インクおよび第2インクを備えるインクセットと、
前記第1インクおよび前記第2インクを吐出するためのノズル孔を備えたノズル面と、
前記ノズル面を払拭するためのワイプ部材と、
を有する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態におけるプリンターの構成を示す斜視図。
【図2】本発明の実施形態におけるインクジェットヘッドに設けられたノズルの配列を示す概略図。
【図3】本発明の実施形態におけるインクジェットヘッドの内部構成を示す部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明の好適な実施の形態について説明する。以下に説明する実施の形態は、本発明の一例を説明するものである。また、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形例も含む。
【0020】
なお、本発明において、スルホ基、カルボキシ基等の酸性官能基は、特に断りがない限り、遊離酸の形態で表す。
【0021】
本発明において、「Cv−Cwアルキル(基)」(vおよびwは、それぞれ整数である。)とは、v〜w個の炭素原子を含むアルキル基を意味する。例えば、C1−C4アルキルは、1〜4個の炭素原子を含むアルキル基のことをいう。アルキル基は、特に断りがない限り、直鎖または分岐鎖のいずれの構造であってもよい。
【0022】
また、「Cv−Cwアルコキシ(基)」(vおよびwは、それぞれ整数である。)は、v〜w個の炭素原子を含むアルコキシ基を意味する。例えば、C1−C4アルコキシは、1〜4個の炭素原子を含むアルコキシ基のことをいう。アルコキシ基は、特に断りがない限り、直鎖または分岐鎖のいずれの構造であってもよい。
【0023】
1.インクセット
本発明の一実施形態に係るインクセットは、水、顔料および前記顔料の対イオンとして第1金属イオンを含有する第1インクと、水、下記一般式(1)で表される染料および前記染料の対イオンとして第2金属イオンを含有する第2インクと、を有し、下記(条件1)または(条件2)に記載の前記第1金属イオンの極限当量伝導率[S・cm/eq]は、下記(条件3)または(条件4)に記載の前記第2金属イオンの極限当量伝導率[S・cm/eq]よりも大きいことを特徴とする。
(条件1)前記第1金属イオンが単独の金属イオンからなる場合は、前記第1金属イオンの極限当量伝導率は、前記単独の金属イオンの極限当量伝導率とする
(条件2)前記第1金属イオンが2種以上の金属イオンからなる場合は、前記第1金属イオンの極限当量伝導率は、前記2種以上の金属イオンの平均の極限当量伝導率とする
(条件3)前記第2金属イオンが単独の金属イオンからなる場合は、前記第2金属イオンの極限当量伝導率は、前記単独の金属イオンの極限当量伝導率とする
(条件4)前記第2金属イオンが2種以上の金属イオンからなる場合は、前記第2金属イオンの極限当量伝導率は、前記2種以上の金属イオンの平均の極限当量伝導率とする
第1金属イオンの極限当量伝導率が、第2金属イオンの極限当量伝導率よりも大きいと、第1インクと第2インクとが混合された際に、第1インクに含有されている顔料の分散性が低下しにくくなる。これにより、本実施形態に係るインクセットを後述する液滴吐出装置に用いた際にも、ノズルの詰まり等による吐出不良の発生を低減することができる。一方、第1金属イオンの極限当量伝導率が、第2金属イオンの極限当量伝導率以下であると、第1インクおよび第2インクが混合された際に、第1インクに含まれる顔料の分散性が低下して、顔料の凝集等が発生する場合がある。
【0024】
金属イオンの極限当量伝導率(Limiting equivalent conductivity;S・cm/eq)とは、無限希釈状態における固有値であり、イオン独立移動の法則で定義される値として知られている。即ち、イオン独立移動の法則において、無限希釈状態における電解質の極限モル伝導率は、陽イオン及び陰イオンの極限モル伝導率の和として表される。無限希釈状態とは、電解質(イオン)が存在しないことを意味するのではなく、溶液中での陽イオン−陰イオン間距離が無限大であり、陽イオンと陰イオンとが相互に影響を及ぼさないことを意味している。なお、金属イオンの当量伝導率(S・cm/eq)とは、当該金属イオンの極限モル伝導率(S・cm/mol)を当該金属イオンの価数で割ったものをいう。
【0025】
金属イオンの極限当量伝導率は、既知のものが多く、具体的には、25℃における極限当量伝導率(S・cm/eq)は、カリウムイオン(K)で73.5、ナトリウムイオン(Na)で50.1、リチウムイオン(Li)で38.7、である(電気化学協会「電気化学便覧 第4版」)。また、金属イオンの極限当量伝導率は、実験的に求めることも可能であり、当量伝導率の濃度変化を測定し、適当な方法を用いて濃度ゼロへの外挿を行うことによって決定することができる。
【0026】
また、第1金属イオンが、2種以上の金属イオンからなる場合には、第1金属イオンの極限当量伝導率を平均の極限当量伝導率とする。平均の極限当量伝導率とは、顔料の対イオンとしてインクに含まれる金属イオンの極限当量伝導率の平均値を示すものである。例えば、m個のXイオンと、n個のYイオンと、の平均の極限当量伝導率は、[(Xイオンの極限当量伝導率)×m+(Yイオンの極限当量伝導率)×n]/(m+n)、により求められる。なお、第2金属イオンが2種以上の金属イオンからなる場合にも、第1金属イオンと同様にして、平均の極限当量伝導率を求めることができる。
【0027】
極限当量伝導率の関係が顔料の凝集に影響する理由については、詳細は明らかになっていないが、以下のメカニズムによるものと考えられる。
【0028】
例えば、第1金属イオンの極限当量伝導率に比べて、第2金属イオンの極限当量伝導率が大きいと、第1インクおよび第2インクが混合された際に、顔料粒子の周囲の導電率が高くなる。つまり、顔料粒子は、極限当量伝導率の高い金属イオンと出会いやすくなる。その結果、顔料周囲の電気二重層が収縮することにより、顔料粒子の粒子間距離が縮まり、顔料の凝集が発生すると考えられる。
【0029】
一方、第1金属イオンの極限当量伝導率に比べて、第2金属イオンの極限当量伝導率が小さいと、顔料粒子の周囲の導電率は上昇しにくい。このような理由から、顔料の凝集が発生しにくくなると考えられる。
【0030】
第1インクは、顔料と第1金属イオンの金属塩を含む。これにより、顔料の分散性が改善し、顔料の凝集が発生しにくくなる。
【0031】
第2インクは、一般式(1)で示される染料と第2金属イオンの金属塩を含む。これにより、染料の溶解性が改善する。
【0032】
1.1.第1インク
本実施形態に係るインクセットは、第1インクを有する。以下、第1インクに含まれる成分について、詳細に説明する。
【0033】
1.1.1.顔料
第1インクは、顔料を含有する。顔料としては、公知の顔料を用いることができるが、自己分散型の顔料であることが好ましい。自己分散型の顔料とは、分散剤なしに水性媒体中に分散することが可能な顔料である。ここで、「分散剤なしに水性媒体中に分散」とは、顔料を分散させるための分散剤を用いなくても、その表面の親水基により、水性媒体中に安定に存在している状態をいう。自己分散型の顔料を用いると、顔料を分散させるための分散剤の使用量を低減できるので、分散剤に起因するインクの発泡を低減でき、吐出安定性の良好なインクが調製しやすい。
【0034】
自己分散型の顔料は、その顔料表面に親水基を有することができる。顔料表面の親水基は、−OM、−COOM、−CO−、−SOM、−SOM、−SONH、−RSOM、−POHM、−PO、−SONHCOR、−NH、および−NR(式中のMは、水素原子、アルカリ金属(例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム)、アンモニウム、置換基を有していてもよいフェニル基、または有機アンモニウムを表し、Rは、炭素原子数1〜12のアルキル基または置換基を有していてもよいナフチル基を表す)からなる群から選択される一以上の親水基であることが好ましい。
【0035】
本実施形態に係る第1インクは、顔料と第1金属イオンの金属塩を含み、第1インクに含まれる顔料は実質的に第1金属イオンの金属塩からなることが好ましい。上述したように、第1インクに含まれる顔料が金属塩構造を有していると、顔料の分散性が改善し、顔料の凝集が発生しにくくなる。
【0036】
顔料の対イオンとして第1インクに含まれる第1金属イオンとしては、カリウムイオンおよびナトリウムイオンの少なくとも一方であることが好ましい。これにより、第1インク中における顔料の分散性を向上させることができる。
【0037】
顔料は、例えば、物理的処理または化学的処理を施すことで、前記親水基を顔料の表面に結合(グラフト)させることにより製造される。前記物理的処理としては、例えば真空プラズマ処理等が例示できる。また前記化学的処理としては、例えば水中で酸化剤により酸化する湿式酸化法や、p−アミノ安息香酸を顔料表面に結合させることによりフェニル基を介してカルボキシル基を結合させる方法等が例示できる。
【0038】
第1インクをブラック色のインク(以下、「顔料ブラックインク」ともいう。)として用いる場合には、顔料は、次亜ハロゲン酸および/または次亜ハロゲン酸塩による酸化処理、オゾンによる酸化処理、または過硫酸および/または過硫酸塩による酸化処理により表面処理されたものであることが、高発色という点で好ましい。
【0039】
第1インクをブラック色以外のカラーのインク(以下、「顔料カラーインク」ともいう。)として用いる場合には、顔料は、その表面にフェニル基を介して上記親水基を有するものであることが、高発色という点で好ましい。顔料表面にフェニル基を介して親水基を結合させる表面処理手段としては、種々の公知の表面処理手段を適用することができ、スルファニル酸、p−アミノ安息香酸、4−アミノサリチル酸等を顔料表面に結合させることによりフェニル基を介して親水基を結合させる方法等が例示できる。
【0040】
顔料ブラックインクに用いられる顔料は、例えば、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたカーボンブラックを使用することができる。カーボンブラックの好ましい具体例としては、No.2300、900、MCF88、No.20B、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、MA100、No2200B(以上三菱化学(株)製)、カラーブラックFW1、FW2、FW2V、FW18、FW200、S150、S160、S170、Printex 30、U、V、140U、スペシャルブラック6、5、4A、4、250(以上エボニックデグサ社製)、コンダクテックスSC、ラーベン1255、5750、5250、5000、3500、1255、700(以上コロンビアカーボン社製)、リガール400R、330R、660R、モグルL、モナーク700、800、880、900、1000、1100、1300、1400、エルフテックス12(キャボット社製)等が挙げられる。これらのカーボンブラックは一種または二種以上の混合物として用いても良い。
【0041】
また、顔料カラーインクに用いられる顔料としては、カラーインデックスに記載されているピグメントレッド、ピグメントバイオレット、ピグメントブルー等の顔料の他、フタロシアニン系、アゾ系、アントラキノン系、アゾメチン系、縮合環系等の顔料が例示できる。また、橙色228号、405号、青色1号、404号等の有機顔料や酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化鉄、群青、紺青、酸化クローム等の無機顔料が挙げられ、具体的には、例えば、C.I.ピグメントレッド1,3,5,8,9,16,17,19,22,38,57:1,90,112,122,123,127、146,184、C.I.ピグメントバイオレッド1,3,5:1,16,19,23,38、C.I.ピグメントブルー1,2,15,15:1,15:2,15:3,15:4,16が挙げられる。
【0042】
また、顔料として市販品を利用することも可能であり、例えば、マイクロジェットCW1(オリヱント化学工業株式会社製)、CAB−O−JET250C、CAB−O−JET260M(以上キャボット社製)等が挙げられる。
【0043】
顔料の含有量は、第1インク組成物の全質量に対して、好ましくは1質量%以上20質量%以下であり、より好ましくは1質量%以上10質量%以下である。
【0044】
また、顔料は、インクの保存安定性やノズルの目詰まり防止等の観点から、その平均粒径が50〜250nmの範囲であることが好ましい。
【0045】
1.1.2.水
本実施形態に係るインク組成物は、水を含有する。水は、上述した顔料を分散もしくは溶解させる主溶媒として機能する。
【0046】
水は、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水または超純水のようなイオン性不純物を極力除去したものであることが好ましい。また、紫外線照射または過酸化水素添加等により滅菌した水を用いると、顔料分散液およびこれを用いたインクを長期保存する場合にカビやバクテリアの発生を防止することができるので好適である。
【0047】
本実施形態に係る第1インクに含有される水は、第1インクの全質量に対して、50質量%以上であることが好ましい。
【0048】
1.1.3.その他の成分
本実施形態に係る第1インクは、界面活性剤を含有することができる。界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。界面活性剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
【0049】
これらの中でも、ノニオン系界面活性剤は、インクの被記録媒体に対する浸透性および定着性を向上できるとともに、インクジェット記録方法によって被記録媒体上に付着させたインクの液滴の形状を真円に近いものとすることができるので、好ましく用いることができる。
【0050】
また、ノニオン系界面活性剤の中でも、アセチレングリコール系界面活性剤は、表面張力および界面張力を適正に保つ能力に優れており、かつ起泡性がほとんどないという特性を有する点から、より好ましく用いることができる。アセチレングリコール系界面活性剤としては、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、または3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3オール、2,4−ジメチル−5−ヘキシン−3−オールなどが挙げられる。また、アセチレングリコール系界面活性剤は市販品も利用することができ、例えば、サーフィノール104、104E、104H、104A、104BC、104DPM、104PA、104PG−50、104S、420、440、465、485、SE、SE−F、504、61、DF37、CT111、CT121、CT131、CT136、TG、GA(以上全て商品名、Air Products and Chemicals. Inc.社製)、オルフィンB、Y、P、A、STG、SPC、E1004、E1010、PD−001、PD−002W、PD−003、PD−004、EXP.4001、EXP.4036、EXP.4051、AF−103、AF−104、AK−02、SK−14、AE−3(以上全て商品名、日信化学工業株式会社製)、アセチレノールE00、E00P、E40、E100(以上全て商品名、川研ファインケミカル株式会社製)等が挙げられる。
【0051】
界面活性剤を含有する場合には、その含有量は、第1インクの全質量に対して、0.1質量%以上5質量%以下であることが好ましい。
【0052】
本実施形態に係る第1インクは、浸透促進剤を含有することができる。浸透促進剤は、被記録媒体に対するインクの濡れ性をさらに向上させて均一に塗らす作用を備える。これにより、形成された画像のインクの濃淡ムラや滲みをさらに低減させることができ、画像の発色濃度を一層向上させることができる。浸透促進剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
【0053】
浸透促進剤としては、例えば、グリコールエーテル類が挙げられる。グリコールエーテル類は、浸透促進剤としての効果に特に優れる。グリコールエーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。これらの中でも、本実施形態に係る第1インクに含まれる成分との相溶性に優れている点から、トリエチレングリコールモノブチルエーテルを好ましく用いることができる。
【0054】
浸透促進剤を含有する場合には、その含有量は、第1インクの全質量に対して、1質量%以上15質量%以下であることが好ましい。
【0055】
本実施形態に係る第1インクは、保湿剤を含有することができる。保湿剤としては、例えば、1,2−アルカンジオール類、多価アルコール類、ピロリドン誘導体、尿素類等が挙げられる。保湿剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
【0056】
1,2−アルカンジオール類は、被記録媒体に対するインクの濡れ性を高めて均一に濡らす作用に優れているため、被記録媒体上に優れた画像を形成することができる。1,2−アルカンジオール類としては、例えば、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール等が挙げられる。1,2−アルカンジオール類を含有する場合には、その含有量は、第1インクの全質量に対して、1質量%以上20質量%以下であることが好ましい。
【0057】
多価アルコール類は、第1インクをインクジェット記録装置に用いた場合に、ヘッドのノズル面でのインクの乾燥固化を抑制して目詰まりや吐出不良等を低減できるという観点から好ましく用いることができる。多価アルコール類としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン等が挙げられる。多価アルコール類を含有する場合には、その含有量は、第1インクの全質量に対して、1質量%以上30質量%以下であることが好ましい。
【0058】
ピロリドン誘導体は、ヘッドのノズル面でのインクの乾燥固化を抑制して目詰まりや吐出不良等を低減できるという観点から好ましく用いることができる。ピロリドン誘導体としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、N−ブチル−2−ピロリドン、5−メチル−2−ピロリドン等が挙げられる。ピロリドン誘導体を含有する場合には、その含有量は、第1インクの全質量に対して、1質量%以上10質量%以下であることが好ましい。
【0059】
尿素類は、第1インクをインクジェット記録装置に用いた場合に、ヘッドのノズル面でのインクの乾燥固化を抑制して目詰まりや吐出不良等を低減できるという観点から好ましく用いることができる。尿素類としては、例えば、尿素、チオ尿素、エチレン尿素、1,3−ジメチルイミダゾリジノン類等が挙げられる。尿素類を含有する場合には、その含有量は、第1インクの全質量に対して、1質量%以上20質量%以下であることが好ましい。
【0060】
本実施形態に係る第1インクは、pH調整剤を含有することができる。pH調整剤は、第1インクのpH値の調整を容易にすることができる。pH調製剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
【0061】
pH調整剤としては、無機酸(例えば、硫酸、塩酸、硝酸等)、無機塩基(例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等)、有機塩基(トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、トリ−iso−プロパノールアミン)、有機酸(例えば、アジピン酸、クエン酸、コハク酸等)等が挙げられる。
【0062】
pH調整剤としては、上記の中でも、有機酸および有機塩基の少なくとも一方を用いることが好ましい。特に、有機酸と有機塩基とを組み合わせて使用する場合には、無機酸と無機塩基、無機酸と有機塩基、有機酸と無機塩基の組み合わせよりもpH緩衝能力が高い。そのため、有機酸と有機塩基とを組み合わせて使用した場合には、pH値の変動を抑制する効果が一層向上して、所望のpHに設定しやすいという効果を奏する。
【0063】
本実施形態に係る第1インクは、さらに、防腐剤・防かび剤、防錆剤、キレート化剤等を含有することができる。本実施形態に係る第1インクは、これらの化合物を含有していると、その特性がさらに向上する場合がある。
【0064】
防腐剤・防かび剤としては、例えば、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、1,2−ジベンジソチアゾリン−3−オン等が挙げられる。市販品では、プロキセルXL2、プロキセルGXL(以上商品名、アビシア社製)や、デニサイドCSA、NS−500W(以上商品名、ナガセケムテックス株式会社製)等が挙げられる。
【0065】
防錆剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0066】
キレート化剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸およびそれらの塩類(エチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム塩等)等が挙げられる。
【0067】
1.2.第2インク
本実施形態に係るインクセットは、第2インクを有する。第2インクでは、前述した第1インクに含まれる成分のうち顔料以外の成分を同様に用いることができるので、同様に用いられる成分については、その説明を省略する。
【0068】
1.2.1.染料
(a)染料
本実施形態に係る第2インクは、下記一般式(1)で表される染料(以下、「第1染料」ともいう。)および前記染料の対イオンとして第2金属イオンを含有する。第1染料は、第2インク中において、黄色の色相を付与する色材として機能する。
【0069】
第1染料は、光の照射を受けたり、大気中のガス(特に、オゾン)に晒されたりしても、分解しにくい性質を備えている。そのため、第2インクを用いて形成された画像は、耐光性、耐ガス性(特に、耐オゾン性)に優れ、光や大気の影響による変色や退色を起こしにくい。また、第1染料は、インク中で分解しにくい性質を備える。そのため、第2インクは、保存安定性に優れたものとなる。
【0070】
また、第1染料は、水への溶解性に優れている。そのため、第1染料を用いた第2インクは、インクジェット記録装置等に用いた際に、インクジェット記録装置の吐出安定性を良好にすることができる。また、第1染料は、発色性に優れている。そのため、第1染料を用いた第2インクは、発色濃度の高い画像を記録することができる。
【0071】
第1染料の含有量は、第2インクの全質量に対して、好ましくは1質量%以上15質量%以下であり、より好ましくは1質量%以上10質量%以下である。第1染料の含有量が上記範囲内にあると、水への溶解性が良好であり、記録される画像の発色濃度を向上させたり、耐光性および耐ガス性を向上させたりすることができる。
【0072】
【化1】

【0073】
式(1)中、Qは、ハロゲン原子を表す。ハロゲン原子の具体例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。これらの中でも、フッ素原子または塩素原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。
【0074】
式(1)中、Aは、スルホ基、カルボキシ基またはヒドロキシ基を表し、これらの中でも、スルホ基であることが好ましい。
【0075】
式(1)中、xは、2以上4以下の整数を表し、3であることが好ましい。
【0076】
式(1)中、yは、1以上3以下の整数を表し、2であることが好ましい。
【0077】
前記のQ、A、xおよびyのうち、好ましいもの同士を組み合せた化合物はより好ましく、より好ましいもの同士を組み合せた化合物は特に好ましい。
【0078】
金属としてはアルカリ金属やアルカリ土類金属が挙げられる。アルカリ金属の例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。アルカリ土類金属としては、例えばカルシウム、マグネシウム等が挙げられる。
【0079】
有機塩基としては、下記一般式(3)で示される4級アンモニウムイオンが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0080】
本実施形態に係る第2インクは、一般式(1)で表される染料と第2金属イオンの金属塩を含み、第2インクに含まれる染料は実質的に第2金属イオンの金属塩からなることが好ましい。これにより、染料の溶解性が改善するためである。
【0081】
第1染料の対イオンとして第2インクに含まれる第2金属イオンとしては、ナトリウムイオンおよびリチウムイオンの少なくとも一方であることが好ましい。これにより、第2インク中における第1染料の溶解性を向上させることができる。
【0082】
また、本実施形態に係る第1染料の遊離酸およびそれらの各種の塩は、混合物であってもよい。例えば、第1染料のナトリウム塩と第1染料のアンモニウム塩との混合物、第1染料の遊離酸と第1染料のナトリウム塩との混合物、第1染料のリチウム塩、第1染料のナトリウム塩および第1染料のアンモニウム塩の混合物等、いずれの組み合わせを用いてもよい。塩の種類によっては溶解性等の物性が異なる場合も有り、必要に応じて適宜塩の種類を選択したり、複数の塩などを含む場合にその比率を変化させたりすることにより、目的に合った物性を有する混合物を得ることができる。
【0083】
【化3】

【0084】
上記一般式(3)においてZ、Z、Z、Zは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ヒドロキシアルキル基およびヒドロキシアルコキシアルキル基よりなる群から選択される基を表す。
【0085】
一般式(3)におけるZ、Z、Z、Zのアルキル基の具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチルなどが挙げられる。また、ヒドロキシアルキル基の具体例としては、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、3−ヒドロキシプロピル、2−ヒドロキシプロピル、4−ヒドロキシブチル、3−ヒドロキシブチル、2−ヒドロキシブチル等のヒドロキシC1−C4アルキル基が挙げられる。また、ヒドロキシアルコキシアルキル基の例としては、ヒドロキシエトキシメチル、2−ヒドロキシエトキシエチル、3−ヒドロキシエトキシプロピル、2−ヒドロキシエトキシプロピル、4−ヒドロキシエトキシブチル、3−ヒドロキシエトキシブチル、2−ヒドロキシエトキシブチル等ヒドロキシC1−C4アルコキシC1−C4アルキル基が挙げられる。これらの中でも、水素原子、メチル、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、3−ヒドロキシプロピル、2−ヒドロキシプロピル、4−ヒドロキシブチル、3−ヒドロキシブチル、2−ヒドロキシブチル、ヒドロキシエトキシメチル、2−ヒドロキシエトキシエチル、3−ヒドロキシエトキシプロピル、2−ヒドロキシエトキシプロピル、4−ヒドロキシエトキシブチル、3−ヒドロキシエトキシブチル、2−ヒドロキシエトキシブチル等を好ましく用いることができる。
【0086】
式(3)で表される4級アンモニウムイオンについて、Z、Z、ZおよびZの好ましい組み合わせの具体例を表1に示す。
【0087】
【表1】

【0088】
第1染料の具体例を下記表2および表3に示すが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。なお、表2および表3中、Q、A、xおよびyは、一般式(1)におけるQ、A、xおよびyに対応する。
【0089】
【表2】

【0090】
【表3】

【0091】
これらの化合物の中でも、第1染料は、下記式(2)で表される化合物またはその塩であることが特に好ましい。
【0092】
【化2】

【0093】
(b)染料の合成方法
以下、第1染料の製造方法を説明する。
【0094】
前記式(1)で表される本発明の染料は、例えば、次のようにして製造することができる。下記式(4)から下記式(9)におけるQ、A、xおよびyは、それぞれ式(1)におけるQ、A、xおよびyと同じ意味を表す。
【0095】
まず、特開2004−75719号公報に記載の方法に準じで、市販品の2−アミノ−4−ハロゲノフェノールを原料として得られる下記式(4)の化合物を、重亜硫酸ナトリウムおよびホルマリンを用いて、下記式(5)で表されるメチル−ω−スルホン酸誘導体に変換する。次いで、常法により、下記式(6)で表される5−アミノ−2−クロロ安息香酸をジアゾ化し、これと先に得られた式(5)のメチル−ω−スルホン酸誘導体と、を、反応温度0〜15℃、pH2〜4でカップリング反応を行い、引き続き、反応温度80〜95℃、pH10.5〜11.5で加水分解反応を行うことにより、下記式(7)の化合物が得られる。
【0096】
【化4】

【0097】
【化5】

【0098】
【化6】

【0099】
【化7】

【0100】
次いで、式(7)の化合物2当量と、ハロゲン化シアヌル(例えば、塩化シアヌル)1当量とを、反応温度15〜45℃、pH5〜8で縮合することにより、下記式(8)の化合物が得られる。
【0101】
【化8】

【0102】
さらに、得られた前記式(8)の化合物におけるトリアジン環上の塩素原子を、反応温度75〜90℃、pH7〜9の条件下、下記式(9)で表されるアミンで置換することにより、式(1)で表される染料を得ることができる。
【0103】
【化9】

【0104】
式(9)で表されるアミンとしては、例えば、アミノメチルスルホン酸、タウリン、ホモタウリン等が挙げられる。
【0105】
また、式(1)で表される染料の塩または遊離酸は、例えば、以下の方法により得ることができる。例えば、式(1)で表される染料の合成反応の最終工程終了後の反応液、あるいは、式(1)で表される染料の塩を含む水溶液等に、例えば、アセトンや炭素数1〜4のアルコール等の水溶性有機溶剤を加える方法;塩化ナトリウムを加えて塩析する方法;等によって析出した固体を濾過分離して、式(1)で表される染料のナトリウム塩等をウェットケーキとして得ることができる。
【0106】
また、得られたナトリウム塩のウェットケーキを水に溶解後、塩酸等の酸を加えてそのpHを適宜調整し、析出した固体を濾過分離することにより、式(1)で表される染料の遊離酸、あるいは、式(1)で表される染料の一部がナトリウム塩である遊離酸とナトリウム塩の混合物を得ることもできる。
【0107】
また、得られたナトリウム塩のウェットケーキまたはその乾燥固体を水に溶解後、塩化アンモニウム等のアンモニウム塩を添加し、塩酸等の酸を加えてそのpHを調整し(例えば、pH1〜3)、析出した固体を濾過分離することにより、式(1)で表される染料のアンモニウム塩を得ることができる。添加する塩化アンモニウムの量および/またはpHを適宜調整することにより、式(1)で表される染料のアンモニウム塩と式(1)で表される染料のナトリウム塩との混合物;または、式(1)で表される染料の遊離酸とアンモニウム塩との混合物;等を得ることもできる。
【0108】
また、式(1)で表される染料の合成反応の終了後の反応液に、鉱酸(例えば塩酸、硫酸等)を加えて直接遊離酸の固体を得ることもできる。この場合には、式(1)で表される染料の遊離酸のウェットケーキを水に加えて撹絆し、例えば、水酸化カリウム;水酸化リチウム;アンモニア水;または上記式(3)の有機4級アンモニウムの水酸化物;等を添加して造塩することにより、各々添加した化合物に応じたカリウム塩;リチウム塩;アンモニウム塩;又は4級アンモニウム塩;等を得ることもできる。遊離酸のモル数に対して、加える水酸化物等のモル数を制限することにより、例えば、リチウム塩とナトリウム塩との混塩;さらにはリチウム塩、ナトリウム塩およびアンモニウム塩の混塩;等も調製することが可能である。
【0109】
前記式(1)で表される染料は、その合成反応における最終工程の終了後、塩酸等の鉱酸の添加により固体の遊離酸として単離することができ、得られた遊離酸の固体を水または酸性水(例えば、塩酸水等)で洗浄することにより、不純物として含有する無機塩(塩化ナトリウムや硫酸ナトリウム等の無機不純物)を除去することができる。式(1)で表される染料の遊離酸は、上述した通り、得られたウェットケーキやその乾燥固体を、水中で所望の無機または有機塩基と処理することにより、対応する化合物の塩の溶液を得ることができる。無機塩基としては、例えば水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩;および、水酸化アンモニウム(アンモニア水);等が挙げられる。有機塩基の例としては、例えば上記式(3)で表される4級アンモニウムに対応する有機アミン、例えばジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0110】
1.3.各インクの物性
本実施形態に係るインクセットをインクジェット記録装置に用いる場合において、各インク(第1インクおよび第2インク)の20℃における粘度は、それぞれ、2mPa・s以上10mPa・s以下であることが好ましく、3mPa・s以上6mPa・s以下であることがより好ましい。各インクは、20℃における粘度が上記範囲内にあると、ノズルから適量吐出され、飛行曲がりを起こすことや飛散することを一層低減できるので、インクジェット記録装置に好適に使用することができる。各インクの粘度は、振動式粘度計VM−100AL(山一電機株式会社製)を用いて、インクの温度を20℃に保持することで測定できる。
【0111】
2.液滴吐出装置
本発明の一実施形態に係る液滴吐出装置は、上述した第1インクおよび第2インクを備えるインクセットと、第1インクおよび第2インクを吐出するためのノズル孔を備えたノズル面と、ノズル面を払拭するためのワイプ部材と、を有する。
【0112】
以下、本発明の一実施形態に係る液滴吐出装置について、図1〜図3を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。本実施形態では、本発明に係る液滴吐出装置として、インクジェットプリンター(以下、単に「プリンター」という。)を例示する。
【0113】
図1は、本実施形態におけるプリンター1の構成を示す斜視図である。なお、このプリンター1は、シリアルプリンターを表している。
【0114】
図1に示すように、プリンター1は、インクジェットヘッド2を搭載すると共にインクカートリッジ3を着脱可能に装着するキャリッジ4と、インクジェットヘッド2の下方に配設され被記録媒体6が搬送されるプラテン5と、キャリッジ4を被記録媒体6の媒体幅方向に移動させるキャリッジ移動機構7と、被記録媒体6を媒体送り方向に搬送する媒体送り機構8と、を有するものである。加えて、プリンター1は、当該プリンター1全体の動作を制御する制御装置CONTを有している。なお、上記媒体幅方向とは、主走査方向(ヘッド走査方向)である。上記媒体送り方向とは、副走査方向(主走査方向に直交する方向)である。
【0115】
インクカートリッジ3は、本実施形態のようにキャリッジ4に装着するものに限らず、これに替えて例えば、プリンター1の筐体側に装着しインク供給チューブを介してインクジェットヘッド2に供給するタイプのものであってもよい。インクカートリッジ3には、それぞれ、第1インク、第2インク、第3インク、第4インクが収容されている。プリンター1のインクセットは、第1インク、第2インク、第3インクおよび第4インクからなる。第3インクおよび第4インクは、第1インクおよび第2インクの少なくとも一方と同様の組成のインクであってもよいし、第1インクおよび第2インクと異なる組成のインクであってもよい。
【0116】
キャリッジ4は、主走査方向に架設された支持部材であるガイドロッド9に支持された状態で取り付けられたものである。また、キャリッジ4は、キャリッジ移動機構7によりガイドロッド9に沿って主走査方向に移動するものである。
【0117】
リニアエンコーダ10は、キャリッジ4の主走査方向上における位置を信号で検出するものである。この検出された信号は、位置情報として制御装置CONTに送信されるようになっている。制御装置CONTは、このリニアエンコーダ10からの位置情報に基づいてインクジェットヘッド2の走査位置を認識し、インクジェットヘッド2による記録動作(吐出動作)などを制御するようになっている。また、制御装置CONTは、キャリッジ4の移動速度を可変制御可能な構成となっている。
【0118】
図2は、本実施形態におけるインクジェットヘッド2に設けられたノズル孔17の配列を示す概略図である。
【0119】
図2に示すように、インクジェットヘッド2は、インクを吐出する複数のノズル孔17が設けられたノズル面21Aを有する。インクの吐出面でもあるノズル面21Aには、複数のノズル孔17ごとにノズル列16が形成されている。各ノズル列16においては、例えば異なる組成のインクを吐出可能になっている。本実施形態ではインクの組成に対応して4列、即ちノズル列16(第1インク)、ノズル列16(第2インク)、ノズル列16(第3インク)、およびノズル列16(第4インク)が設けられている。各ノズル列16は、例えば180個のノズル孔17によって構成されている。
【0120】
図3は、本実施形態におけるインクジェットヘッド2の内部構成を示す部分断面図である。
【0121】
図3に示すように、インクジェットヘッド2は、ヘッド本体18と、ヘッド本体18に接続された流路形成ユニット22と、を備えている。流路形成ユニット22は、振動板19と、流路基板20と、ノズル基板21と、を備えると共に、共通インク室29と、インク供給口30と、圧力室31と、を形成する。さらに、流路形成ユニット22は、ダイヤフラム部として機能する島部32と、共通インク室29内の圧力変動を吸収するコンプライアンス部33と、を備える。ヘッド本体18には、固定部材26と共に駆動ユニット24を収容する収容空間23と、インクを流路形成ユニット22に案内する内部流路28と、が形成される。
【0122】
上記構成、即ちピエゾ式のインクジェットヘッド2によれば、ケーブル27を介して駆動ユニット24に駆動信号が入力されると、圧電素子25が伸縮する。これにより、振動板19が圧力室31に接近する方向及び離れる方向に変形(移動)する。このため、圧力室31の容積が変化し、インクを収容した圧力室31の圧力が変動する。この圧力の変動によって、ノズル孔17から、インクが吐出される。
【0123】
図1に戻り、インクジェットヘッド2の移動範囲のうちプラテン5の外側の領域には、インクジェットヘッド2の走査起点となるホームポジションが設定されている。このホームポジションには、メンテナンスユニット11が設けられている。メンテナンスユニット11は、印字動作以外でインクジェットヘッド2をキャップ部材12でキャッピングしてインクの蒸発を抑制する保湿動作と、インクジェットヘッド2の各ノズル孔17からインクをキャップ部材12に予備吐出させることで増粘インクによるノズル孔17の目詰まり防止やノズル孔17のメニスカスを調整してインクジェットヘッド2から正常にインクを吐出させるフラッシング動作と、キャップ部材12でインクジェットヘッド2をキャッピングした後に不図示の吸引ポンプを駆動させて各ノズル孔17から粘性が高くなったインクや付着したゴミ等を強制吸引してメニスカスを調整し、インクジェットヘッド2から正常にインクを吐出させる吸引動作(ヘッドクリーニング)と、インクジェットヘッド2のノズル面21A(図2参照)をワイプ部材13で払拭(ワイピング)することでノズル孔17近傍に付着したインクや増粘したインク等を除去したり、ノズル孔17のメニスカスを破壊してメニスカスを再調整させるパージ処理を行うワイピング動作と、を実行する構成となっている。
【0124】
第1インクおよび第2インクは、上述した組成からなる。そのため、第1インクおよび第2インクがワイピングによってノズル面21Aで混合されても、顔料の凝集が生じにくくなるので、顔料の凝集物によるノズル孔17の詰まり等を低減できる。その結果、プリンター1は、吐出安定性に良好なものとなる。
【0125】
3.実施例
以下、本発明を実施例および比較例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0126】
3.1.染料の合成
(製造例1)
後述の工程1〜工程3により、染料A〜染料Eの合成を行った。以下、「部」及び「%」とあるのは、特別の記載のない限り質量基準である。また、下記の工程に示される化合物の各構造式において、スルホ基等の酸性官能基は、遊離酸の形で記載した。なお、染料A〜染料Cの室温における水に対する溶解度は、いずれも100g/リットル以上であった。
【0127】
(工程1)アゾ化合物の調製
5−アミノ−2−クロロベンゼンスルホン酸20.8部を水酸化ナトリウムでpH6に調整しながら水200部に溶解し、次いで亜硝酸ナトリウム7.2部を加えた。この溶液を、0〜10℃で、5%塩酸20部中に30分間かけて滴下した後、10℃以下で1時間攪拌してジアゾ化反応を行い、ジアゾ反応液を調製した。
【0128】
一方、2−(スルホプロポキシ)−5−クロロアニリン26.6部を、水酸化ナトリウムでpH7に調整しながら水130部に溶解し、10.4部の重亜硫酸ナトリウムおよび8.6部の35%ホルマリンを用いて、常法によりメチル−ω−スルホン酸誘導体とした。得られたメチル−ω−スルホン酸誘導体を、先に調製したジアゾ反応液中に加え、0〜15℃、pH2〜4で24時間攪拌した。反応液を水酸化ナトリウムでpH11とした後、pHを維持しながら80〜95℃で5時間攪拌し、さらに100部の塩化ナトリウムを加えて塩析し、析出固体を濾過分離することにより下記式(10)で表されるアゾ化合物100部をウェットケーキとして得た。
【0129】
【化10】

【0130】
(工程2)染料Bの調製
250部の氷水中にレオコール RTMTD90(商品名、ライオン社製、界面活性剤)0.10部を加えて激しく攪拌し、その中に塩化シアヌル3.6部を添加して0〜5℃で30分間攪拌し、懸濁液を得た。続いて、式(10)で表される化合物のウェットケーキ100部を水200部に溶解し、この溶液に上記懸濁液を30分間かけて滴下した。滴下終了後pH6〜8、25〜45℃で6時間攪拌した。得られた液に、タウリン37.5部を加え、pH7〜9、75〜90℃で4時間攪拌した。得られた反応液を20〜25℃まで冷却後、この反応液にアセトン800部を加え、20〜25℃で1時間攪拌した。析出固体を濾過分離することによりウェットケーキ50.0部を得た。このウェットケーキを80℃の熱風乾燥機で乾燥することにより、下記式(2)で表される化合物のナトリウム塩(染料B)13.5部を得た。
【0131】
【化2】

【0132】
(工程3)染料A、染料C、染料Dおよび染料Eの調製
上記のようにして得られた式(2)の染料のナトリウム塩を常法により処理し、染料A(式(2)の染料のリチウム塩)、染料C(式(2)の染料のカリウム塩)、染料D(式(2)の染料のリチウム塩とナトリウム塩の混合塩)、染料E(式(2)の染料のリチウム塩とカリウム塩の混合塩)を得た。
【0133】
3.2.インクの調製
3.2.1.顔料インクの調製
(1)顔料分散液の調製
顔料としてブラック顔料20質量部、およびイオン交換水80質量部を加えて、混合攪拌した後、サンドミル(安川製作所株式会社製)を用いて、ジルコニアビーズ(直径1.5mm)と共に6時間分散処理を行った。その後、ジルコニアビーズをセパレータで分離することにより、顔料分散液を得た。
【0134】
(2)顔料インクの調製
次に、表4に示す配合量で各成分を混合攪拌し、孔径10μmのメンブレンフィルターで加圧濾過を行って、顔料インクAおよび顔料インクBを得た。なお、表4に記載されている単位は、質量%である。
【0135】
また、各顔料インクの粘度を振動式粘度計VM−100AL(山一電機株式会社製)を用いて、インクの温度を20℃に保持することで測定した。各顔料インクの粘度を表4に併せて記載する。
【0136】
3.2.2.染料インクの調製
表4に示す配合量で各成分を混合攪拌し、孔径1.0μmのメンブレンフィルターにて加圧濾過を行って、染料インクA、染料インクB、染料インクC、染料インクDおよび染料インクEを得た。
【0137】
また、各染料インクの粘度を振動式粘度計VM−100AL(山一電機株式会社製)を用いて、インクの温度を20℃に保持することで測定した。各染料インクの粘度を表4に併せて記載する。
【0138】
【表4】

【0139】
表4中の各成分は、以下の通りである。ブラック顔料Aは、エボニックデグザ株式会社製、商品名Printex 30を常法により処理し、カリウム塩としたものを用いた。また、ブラック顔料Bは、エボニックデグザ株式会社製、商品名Printex 30を常法により処理し、ナトリウム塩としたものを用いた。
(顔料)
・ブラック顔料A(カリウム塩)
・ブラック顔料B(ナトリウム塩)
(染料)
・染料A(上記式(2)で表される化合物のリチウム塩)
・染料B(上記式(2)で表される化合物のナトリウム塩)
・染料C(上記式(2)で表される化合物のカリウム塩)
・染料D(上記式(2)で表される化合物のリチウム塩とナトリウム塩の混合塩;Li:Na=8:2)
・染料E(上記式(2)で表される化合物のリチウム塩とカリウム塩の混合塩;Li:K=5:5)
(浸透促進剤)
・トリエチレングリコールモノブチルエーテル
(保湿剤)
・1,2−ヘキサンジオール
・グリセリン
・トリエチレングリコール
・トリメチロールプロパン
・2−ピロリドン
(界面活性剤)
・アセチレングリコール系界面活性剤A(商品名「オルフィン E1010」、日信化学工業株式会社製)
・アセチレングリコール系界面活性剤B(商品名「サーフィノール 104」、Air Products and Chemicals. Inc.社製)
(pH調整剤)
・トリエタノールアミン
・水酸化カリウム
(水)
・イオン交換水
【0140】
3.3.評価試験
3.3.1.導電率の測定
各顔料インクおよび各染料インクの20℃における導電率を、導電率計DS−52(商品名、株式会社堀場製作所)によって測定した。測定結果を表4に併せて示す。
【0141】
3.3.2.吐出安定性の評価
インクジェットプリンターPX−B500(商品名、セイコーエプソン株式会社製)のノズル列に、各顔料インクおよび各染料インクを充填した。そして、これらのインクのうち、顔料インク1種および染料インク1種を選択して、(a)選択した顔料インクおよび染料インクを用いたチェック印字、(b)ノズル面の吸引動作(ヘッドクリーニング)およびノズル面のワイピング、(c)選択した顔料インクおよび染料インクを用いたチェック印字、(d)インクジェットプリンターの24時間放置、という(a)〜(d)の各操作をこの順に10サイクル行った。
【0142】
その後、選択した顔料インクおよび染料インクをノズルから吐出させて、チェック印字を行い、ノズル抜けおよびインクの飛行曲がりの有無を確認することにより、吐出安定性の評価を行った。評価結果を表5に示す。また、評価基準の分類については、以下のとおりである。
「○」:ノズル抜けおよびインクの飛行曲がりがない
「×」:ノズル抜けまたはインクの飛行曲がりが発生
【0143】
3.4.評価結果
以上の評価試験の結果を表5に示す。
【0144】
【表5】

【0145】
表5の実施例1〜4のインクセットは、いずれも顔料インクに含まれる金属イオン(第1金属イオン)の極限当量伝導率が染料インクに含まれる金属イオン(第2金属イオン)の極限当量伝導率よりも大きい。そのため、吐出安定性試験により、ノズル抜けや飛行曲がりがないことが示された。これにより、顔料インクおよび染料インクが混合されても、顔料の凝集が生じにくいことが示された。
【0146】
一方、表5の比較例1〜4のインクセットは、いずれも顔料インクに含まれる金属イオン(第1金属イオン)の極限当量伝導率が染料インクに含まれる金属イオン(第2金属イオン)の極限当量伝導率以下である。そのため、吐出安定性試験において、ノズル抜けや飛行曲がりが発生した。これにより、顔料インクおよび染料インクの混合により、顔料の凝集が生じていることが示された。なお、顔料の凝集は、ノズル面のワイピング時に多く発生したほか、染料インクの吐出時における染料インクの飛沫が顔料インクを吐出するノズル孔に付着することによっても発生した。
【0147】
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0148】
1…プリンター、2…インクジェットヘッド、3…インクカートリッジ、4…キャリッジ、5…プラテン、6…被記録媒体、7…キャリッジ移動機構、8…媒体送り機構、9…ガイドロッド、10…リニアエンコーダ、11…メンテナンスユニット、12…キャップ部材、13…ワイプ部材、16…ノズル列、17…ノズル孔、18…ヘッド本体、19…振動板、20…流路基板、21…ノズル基板、21A…ノズル面、22…流路形成ユニット、23…収容空間、24…駆動ユニット、25…圧電素子、26…固定部材、27…ケーブル、28…内部流路、29…共通インク室、30…インク供給口、31…圧力室、32…島部、33…コンプライアンス部、CONT…制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水、顔料および前記顔料の対イオンとして第1金属イオンを含有する第1インクと、
水、下記一般式(1)で表される染料および前記染料の対イオンとして第2金属イオンを含有する第2インクと、
を有し、
下記(条件1)または(条件2)に記載の前記第1金属イオンの極限当量伝導率[S・cm/eq]は、下記(条件3)または(条件4)に記載の前記第2金属イオンの極限当量伝導率[S・cm/eq]よりも大きい、インクセット。
(条件1)前記第1金属イオンが単独の金属イオンからなる場合は、前記第1金属イオンの極限当量伝導率は、前記単独の金属イオンの極限当量伝導率とする
(条件2)前記第1金属イオンが2種以上の金属イオンからなる場合は、前記第1金属イオンの極限当量伝導率は、前記2種以上の金属イオンの平均の極限当量伝導率とする
(条件3)前記第2金属イオンが単独の金属イオンからなる場合は、前記第2金属イオンの極限当量伝導率は、前記単独の金属イオンの極限当量伝導率とする
(条件4)前記第2金属イオンが2種以上の金属イオンからなる場合は、前記第2金属イオンの極限当量伝導率は、前記2種以上の金属イオンの平均の極限当量伝導率とする
【化1】

(式(1)中、Qはハロゲン原子を表し、Aはスルホ基、カルボキシ基またはヒドロキシ基を表し、xは2以上4以下の整数を表し、yは1以上3以下の整数を表す。)
【請求項2】
請求項1において、
前記第1金属イオンは、ナトリウムイオンおよびリチウムイオンの少なくとも一方である、インクセット。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記第2金属イオンは、カリウムイオンおよびナトリウムイオンの少なくとも一方である、インクセット。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、
前記染料は、下記式(2)で表される化合物またはその塩である、インクセット。
【化2】

【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の第1インクおよび第2インクを備えるインクセットと、
前記第1インクおよび前記第2インクを吐出するためのノズル孔を備えたノズル面と、
前記ノズル面を払拭するためのワイプ部材と、
を有する、液滴吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−10825(P2013−10825A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−142974(P2011−142974)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】