説明

インクセット及び画像形成方法

【課題】カックリング及び膜強度に優れた画像を形成できるインクセット及び画像形成方法を提供する。
【解決手段】顔料、及び活性エネルギー線により重合する水溶性の重合性化合物を含むインク組成物と、前記インク組成物中の成分を凝集させる凝集剤、及び液全質量に対して25質量%以上の、水(25℃)100gへの溶解度が30%以下である有機溶剤を含む処理液と、を含むインクセット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクセット及びこれを用いた画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カラー画像を記録する画像記録方法としては、近年、様々な方法が提案されているが、いずれにおいても画像の品質、風合い、記録後のカールなど、記録物の品位に対する要望は高い。
【0003】
例えば、インクジェット技術は、オフィスプリンタ、ホームプリンタ等の分野に適用されてきたが、近年では、商業印刷分野での応用がなされつつある。この商業印刷分野では、完全にインク溶剤の原紙への浸透をシャットアウトする、写真のような表面を有するものではなく、汎用の印刷紙のような印刷の風合いが要求されている。ここで、記録媒体における溶媒吸収層が20〜30μmと厚くなると、記録媒体の表面光沢、質感、こわさ(コシ)等が制限されてしまう。そのため、商業印刷分野でのインクジェット技術の適用は、記録媒体に対する表面光沢、質感、こわさ(コシ)等の制限が許容されるポスター、帳票印刷等に留まっている。
【0004】
また、インクジェット記録専用の記録媒体は、溶媒吸収層、耐水層を有することによりコスト高となっており、この点も、商業印刷分野へのインクジェット技術適用の制限の一因となっている。
【0005】
一方、インク材料の含有成分の1つである着色剤には顔料が広く用いられており、顔料は水等の媒質中に分散されて用いられる。顔料を分散させて用いる場合、分散させたときの分散粒径や分散後の安定性、サイズ均一性等や、吐出ヘッドからの吐出性などが重要であり、これらを向上させる技術の検討が種々行なわれている。
【0006】
更に、顔料を含有するインクでは、一般に記録媒体に浸透せず表面に留まることから、定着性(例えば、擦過耐性)、耐水性、そして耐汚れ性などにおいて、充分な性能が得られない場合がある。
【0007】
そこで、顔料を含有するインクに良好な耐水性と耐汚れ性を与えるために、自己分散性ポリマーの粒子を含有するインクジェットインク組成物が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
また、顔料を含有するインクに良好な擦過耐性・耐水性を与える一つの方法として、顔料インクと合わせて、記録媒体上に極性ポリマーを含有する溶液を記録媒体に付与する方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。さらに、多価金属塩もしくはポリアミルアミンなどのインク組成物と反応する反応液と、顔料及び熱可塑性である樹脂エマルジョンを含むインクとを用いて画像形成し、熱可塑性樹脂の軟化温度以上で定着する方法が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【0009】
上記に関連して、重合性のモノマーを顔料と併用したインクを用い、紫外線で硬化させる技術(UVインクジェット)が広く知られており、一般に使用されている。このようなUVインクジェットは、良好な擦過耐性を示すが、一般に溶剤系のインクであるため、環境上好ましくなく、また、硬化前のインクが接触するとインク同士が合一(着弾干渉)するため、高速記録に適さない。
【0010】
また、環境上好ましい水性顔料インクにおいても、重合性のモノマーを含有させて硬化させることにより耐擦過性を向上させる検討がなされており、例えば、記録媒体に、インク組成物と接触して凝集物を生成する反応剤と光重合開始剤を含んだ反応液と、アクリレートモノマーや樹脂エマルジョンを含むインク組成物とを付着させて印字を行なうインクジェット記録方法が開示されている(例えば、特許文献4参照)。また、特定のカチオン性オリゴマーと光重合開始剤を色材及び水とともに含むインクジェット記録に用いる1液型のインクが開示されている(例えば、特許文献5参照)。
【0011】
また、着弾干渉がより抑えられ、より高画質な画像を得ることができるとして、反応剤を含んだ反応液とインク組成物とを含む2液反応による画像固定することが開示されている(例えば、特許文献6参照)。
また、高画質な画像の形成と、硬化後の膜物性の向上を実現するとして、重合性化合物の含有量を30〜70質量%含み、粘度を1〜30mPa・s(35℃以上)とするインク組成物が開示されている(例えば、特許文献7参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許第3069543号公報
【特許文献2】特許第3217486号公報
【特許文献3】特許第3206797号公報
【特許文献4】特許第3642152号公報
【特許文献5】特許第3576862号公報
【特許文献6】特開平10−287035号公報
【特許文献7】特開2004−189930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、特許文献1〜5に記載の方法は、ある程度の定着性、耐水性等を向上させることが予想されるが、カックリング及び強度向上については期待できない。
また、特許文献6及び特許文献7のいずれにおいても、インク組成物が主要溶媒として水を使用しているため、打滴部分がカックリングしていまい好ましくない。また、UV効果を特徴とするこのシステムはカックリング形状に合せて画像が硬化してしまうため、画像形成後経時でカックリングが緩和されていく中で、画像部に歪みが蓄積して、この結果、画像強度が低下してしまう。
【0014】
本発明は、上記に鑑みなされたものであり、カックリング及び膜強度に優れた画像を形成できるインクセット及び画像形成方法を提供することを目的とし、該目的を達成することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
<1>顔料、及び活性エネルギー線により重合する水溶性の重合性化合物を含むインク組成物と、前記インク組成物中の成分を凝集させる凝集剤、及び液全質量に対して25質量%以上の、水(25℃)100gへの溶解度が30%以下である有機溶剤を含む処理液と、
を含むインクセット。
<2>前記有機溶剤は、脂肪油及び脂肪から選択される少なくとも1つである<1>に記載のインクセット。
<3>前記脂肪油は、不乾性油である<2>に記載のインクセット。
<4>前記不乾性油は、菜種油、オリーブオイル、落花生油、及び椿油から選択される少なくとも1つである<3>に記載のインクセット。
<5>前記顔料は、その表面の少なくとも一部がポリマー分散剤で被覆された水分散性顔料である<1>〜<4>のいずれか1項に記載のインクセット。
<6>前記ポリマー分散剤がカルボキシル基を有する<5>に記載のインクセット。
<7>前記凝集剤が有機酸である<1>〜<6>のいずれか1項に記載のインクセット。
<8>前記インク組成物及び前記処理液の少なくとも一方が、更に、前記重合性化合物の重合を開始する重合開始剤を含む<1>〜<7>のいずれか1項に記載のインクセット。
<9>前記インク組成物が、更にポリマー粒子を含有する<1>〜<8>のいずれか1項に記載のインクセット。
<10>顔料、及び活性エネルギー線により重合する水溶性の重合性化合物を含むインク組成物を記録媒体にインクジェット法で付与するインク付与工程と、
前記インク組成物中の成分を凝集させる凝集剤、及び液全質量に対して25質量%以上の、水(25℃)100gへの溶解度が30%以下である有機溶剤を含む処理液を記録媒体に付与する処理液付与工程と、
を有する画像形成方法。
<11>前記記録媒体が、原紙と無機顔料を含むコート層とを有する塗工紙である<10>に記載の画像形成方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、カックリング及び膜強度に優れた画像を形成できるインクセット及び画像形成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の画像形成方法の実施に用いるインクジェット記録装置の構成例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明のインクセット及びこれを用いた画像形成方法について詳細に説明する。
<インクセット>
本発明のインクセットは、顔料、及び活性エネルギー線により重合する重合性化合物を含むインク組成物と、前記インク組成物中の成分を凝集させる凝集剤、液全質量に対して25質量%以上の、水(25℃)100gへの溶解度が30%以下である有機溶剤を含む処理液と、を設けて構成されたものである。
【0019】
本発明においては、特に、インク画像を形成するインク組成物に顔料と、活性エネルギー線により重合する重合性化合物とを含有し、かつ、凝集液が液全質量に対して25質量%以上の、水(25℃)100gへの溶解度が30%以下である有機溶剤を含むことにより、カックリングを効果的に抑制することができる。これは処理液が付与された記録媒体上に油膜が形成されることによりカックリングの抑制効果を奏するものと推測している。また、処理液と接触した際にインク組成物中の成分(特に、顔料)の凝集反応で画像が固定化されると共に、顔料の隙間に重合性化合物が均一に取り込まれた状態で重合硬化されるので、画像の強度が高められる。特に、重合性化合物が記録媒体に浸透しやすく、一方で顔料が表面に残存しやすい塗工紙に画像形成する場合により効果的である。
【0020】
−インク組成物−
本発明におけるインク組成物は、顔料、及び活性エネルギー線により重合する重合性化合物を含んでなり、ポリマー粒子を含有することが好ましく、必要に応じて、更に分散剤や界面活性剤、その他の成分を用いて構成することができる。
【0021】
(顔料)
本発明におけるインク組成物は、色材成分として顔料の少なくとも1種を含有する。顔料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、有機顔料、無機顔料のいずれであってもよい。顔料は、水に殆ど不溶であるか又は難溶である顔料であることが、インク着色性の点で好ましい。
【0022】
有機顔料としては、例えば、アゾ顔料、多環式顔料、染料キレート、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、などが挙げられる。これらの中でも、アゾ顔料、多環式顔料などがより好ましい。また、無機顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエロー、カーボンブラック、などが挙げられる。これらの中でも、カーボンブラックが特に好ましい。
顔料は、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
本発明における顔料の体積平均粒子径は、特に限定されないが、カックリング抑制と吐出性の観点から、10〜200nmであることが好ましく、10〜150nmであることがより好ましい。また、顔料の粒径分布に関しては、特に制限はなく、広い粒径分布を持つもの又は単分散の粒径分布を持つもののいずれでもよい。また、単分散の粒径分布を持つ顔料を2種以上混合して使用してもよい。
【0024】
ここで、顔料の体積平均粒子径は、インク化した状態での体積平均粒子径を示すが、インク化する前段階のいわゆる濃縮インク分散物についても同様である。
なお、分散状態での顔料の体積平均粒子径及び粒径分布は、Micorotrac粒度分布測定装置(Version 10.1.2−211BH(商品名)、日機装(株)製)を用いて、動的光散乱法により求められるものである。
【0025】
本発明において顔料の体積平均粒子径は、通常用いられる方法で調整することができる。例えば、後述する分散剤を用いて顔料分散液を調製する際の分散時間等を適宜選択することで、顔料の体積平均粒子径を所望の範囲に調整することができる。
【0026】
顔料の含有量としては、インク組成物の全質量に対して、1〜25質量%が好ましく、2〜20質量%がより好ましく、5〜20質量%が更に好ましく、5〜15質量%が特に好ましい。
【0027】
〜分散剤〜
本発明のインク組成物は、分散剤の少なくとも1種を含有することができる。前記顔料の分散剤としては、ポリマー分散剤、又は低分子の界面活性剤型分散剤のいずれでもよい。また、ポリマー分散剤は、水溶性の分散剤、又は非水溶性の分散剤のいずれでもよい。
【0028】
前記低分子の界面活性剤型分散剤は、インクを低粘度に保ちつつ、顔料を水溶媒に安定に分散させることができる。低分子の界面活性剤型分散剤は、分子量2,000以下の低分子分散剤である。また、低分子の界面活性剤型分散剤の分子量は、100〜2,000が好ましく、200〜2,000がより好ましい。
【0029】
前記低分子の界面活性剤型分散剤は、親水性基と疎水性基とを含む構造を有している。また、親水性基と疎水性基とは、それぞれ独立に1分子に1以上含まれていればよく、また、複数種類の親水性基、疎水性基を有していてもよい。また、親水性基と疎水性基とを連結するための連結基も適宜有することができる。
【0030】
前記親水性基は、アニオン性、カチオン性、ノニオン性、あるいはこれらを組み合わせたベタイン型等である。前記アニオン性基は、マイナスの電荷を有するものであればいずれでもよいが、リン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、硫酸基、スルホン酸基、スルフィン酸基又はカルボン酸基であることが好ましく、リン酸基、カルボン酸基であることがより好ましく、カルボン酸基であることがさらに好ましい。前記カチオン性基は、プラスの荷電を有するものであればいずれでもよいが、有機のカチオン性置換基であることが好ましく、窒素又はリンのカチオン性基であることがより好ましい。また、ピリジニウムカチオン又はアンモニウムカチオンであることがさらに好ましい。また、前記ノニオン性基は、ポリエチレンオキシドやポリグリセリン、糖ユニットの一部等が挙げられる。
【0031】
前記親水性基は、アニオン性基であることが好ましい。アニオン性基は、リン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、硫酸基、スルホン酸基、スルフィン酸基、又はカルボン酸基であることが好ましく、リン酸基、カルボン酸基であることがより好ましく、カルボン酸基であることがさらに好ましい。
【0032】
また、低分子の界面活性剤型分散剤がアニオン性の親水性基を有する場合、酸性の処理液と接触させて凝集反応を促進させる観点から、pKaが3以上であることが好ましい。低分子の界面活性剤型分散剤のpKaは、テトラヒドロフラン−水(3:2=V/V)溶液に低分子の界面活性剤型分散剤1mmol/Lを溶解した液を酸あるいはアルカリ水溶液で滴定し、滴定曲線より実験的に求めた値のことである。低分子の界面活性剤型分散剤のpKaが3以上であると、理論上pH3程度の液と接したときにアニオン性基の50%以上が非解離状態になる。したがって、低分子の界面活性剤型分散剤の水溶性が著しく低下し、凝集反応が起こる。すなわち、凝集反応性が向上する。かかる観点からも、低分子の界面活性剤型分散剤は、アニオン性基としてカルボン酸基を有する場合が好ましい。
【0033】
前記疎水性基は、炭化水素系、フッ化炭素系、シリコーン系等の構造を有しており、特に炭化水素系であることが好ましい。また、疎水性基は、直鎖状構造又は分岐状構造のいずれであってもよい。また、疎水性基は、1本鎖状構造又はこれ以上の鎖状構造でもよく、2本鎖状以上の構造である場合は、複数種類の疎水性基を有していてもよい。
また、疎水性基は、炭素数2〜24の炭化水素基が好ましく、炭素数4〜24の炭化水素基がより好ましく、炭素数6〜20の炭化水素基がさらに好ましい。
【0034】
前記ポリマー分散剤のうち、水溶性分散剤としては、親水性高分子化合物が挙げられる。例えば、天然の親水性高分子化合物では、アラビアガム、トラガンガム、グーアガム、カラヤガム、ローカストビーンガム、アラビノガラクトン、ペクチン、クインスシードデンプン等の植物性高分子、アルギン酸、カラギーナン、寒天等の海藻系高分子、ゼラチン、カゼイン、アルブミン、コラーゲン等の動物系高分子、キサンテンガム、デキストラン等の微生物系高分子等が挙げられる。
【0035】
また、天然物を原料に修飾した親水性高分子化合物では、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の繊維素系高分子、デンプングリコール酸ナトリウム、デンプンリン酸エステルナトリウム等のデンプン系高分子、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル等の海藻系高分子等が挙げられる。
【0036】
更に、合成系の親水性高分子化合物としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル等のビニル系高分子、非架橋ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸又はそのアルカリ金属塩、水溶性スチレンアクリル樹脂等のアクリル系樹脂、水溶性スチレンマレイン酸樹脂、水溶性ビニルナフタレンアクリル樹脂、水溶性ビニルナフタレンマレイン酸樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、β−ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のアルカリ金属塩、四級アンモニウムやアミノ基等のカチオン性官能基の塩を側鎖に有する高分子化合物、セラック等の天然高分子化合物等が挙げられる。
【0037】
これらの中でも、アクリル酸、メタクリル酸、スチレンアクリル酸のホモポリマーや、他の親水基を有するモノマーとの共重合体などのように、カルボキシル基が導入された水溶性分散剤が親水性高分子化合物として好ましい。
【0038】
ポリマー分散剤のうち、非水溶性分散剤としては、疎水性部と親水性部の両方を有するポリマーを用いることができる。例えば、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート−(メタ)アクリル酸共重合体、酢酸ビニル−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体等が挙げられる。
【0039】
ポリマー分散剤の重量平均分子量は、3,000〜100,000が好ましく、より好ましくは5,000〜50,000であり、更に好ましくは5,000〜40,000であり、特に好ましくは10,000〜40,000である。
【0040】
ポリマー分散剤の酸価としては、処理液が接触したときの凝集性が良好である観点から、130mgKOH/g以下が好ましい。更には、該酸価は、25〜120mgKOH/gがより好ましく、25〜100mgKOH/gが更に好ましい。ポリマー分散剤の酸価は、130mgKOH/g以下、更には100mgKOH/g以下になると、相対的に顔料が疎水的になり、画像の耐水性が良好になる。ポリマー分散剤の酸価は25mgKOH/g以上であると、自己分散性の安定性が良好になる。
【0041】
ポリマー分散剤は、自己分散性と処理液が接触したときの凝集速度の観点から、カルボキシル基を有するポリマーを含むことが好ましく、カルボキシル基を有し、酸価が25〜100mgKOH/gのポリマーを含むことがより好ましい。
【0042】
顔料(p)と分散剤(s)との混合質量比(p:s)としては、1:0.06〜1:3の範囲が好ましく、1:0.125〜1:2の範囲がより好ましく、更に好ましくは1:0.125〜1:1.5である。
【0043】
本発明において、色材として顔料を有するが、本発明の効果を損なわない範囲で染料を用いることができる。
本発明において色材として染料を用いる場合には、染料を水不溶性の担体に保持したものを水不溶性着色粒子として用いることができる。染料としては公知の染料を特に制限なく用いることができ、例えば、特開2001−115066号公報、特開2001−335714号公報、特開2002−249677号公報等に記載の染料を本発明においても好適に用いることができる。また、担体としては、水に不溶または水に難溶であれば特に制限なく、無機材料、有機材料及びこれらの複合材料を用いることができる。具体的には、特開2001−181549号公報、特開2007−169418号公報等に記載の担体を本発明においても好適に用いることができる。
染料を保持した担体(水不溶性着色粒子)は、分散剤を用いて水系分散物として用いることができる。分散剤としては上述した分散剤を好適に用いることができる。
【0044】
本発明においては、画像の耐光性や品質などの観点から、顔料と共に分散剤と含むことが好ましく、有機顔料とポリマー分散剤とを含むことがより好ましく、有機顔料とカルボキシル基を含むポリマー分散剤とを含むことが特に好ましい。また、顔料は、凝集性の観点から、その表面の少なくとも一部がポリマー分散剤で被覆された水分散性顔料であることが好ましく、前記顔料はカルボキシル基を有するポリマー分散剤に被覆され、水不溶性であることがより好ましい。
【0045】
分散状態での顔料の平均粒子径としては、10〜200nmが好ましく、10〜150nmがより好ましく、10〜100nmがさらに好ましい。平均粒子径は、200nm以下であると色再現性が良好になり、インクジェット法で打滴する際の打滴特性が良好になり、10nm以上であると耐光性が良好になる。また、色材の粒径分布に関しては、特に制限はなく、広い粒径分布又は単分散性の粒径分布のいずれであってもよい。また、単分散性の粒径分布を持つ色材を2種以上混合して使用してもよい。
ここで、分散状態での顔料の平均粒子径は、インク化した状態での平均粒子径を示すが、インク化する前段階のいわゆる濃縮インク分散物についても同様である。
【0046】
なお、分散状態での顔料の平均粒子径及び、ポリマー粒子の平均粒子径及び粒径分布は、ナノトラック粒度分布測定装置UPA−EX150(日機装(株)製)を用いて、動的光散乱法により体積平均粒径を測定することにより求められるものである。
【0047】
顔料は、1種単独で用い、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
顔料のインク組成物中における含有量としては、画像濃度の観点から、インク組成物に対して、1〜25質量%であることが好ましく、2〜20質量%がより好ましく、5〜20質量%がさらに好ましく、5〜15質量%が特に好ましい。
【0048】
(ポリマー粒子)
本発明のインク組成物、少なくとも1種のポリマー粒子を含有することが好ましい。このポリマー粒子は、後述の処理液又はこれを乾燥させた領域と接触した際に分散不安定化して凝集しインクを増粘させることによりインク組成物を固定化する機能を有し、インク組成物の記録媒体への定着性及び画像の耐擦過性(画像強度)をより向上させることができる。
本発明に用いられることができるポリマー粒子あるいはポリマーラテックスとしては、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリル−スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン系樹脂、架橋アクリル樹脂、架橋スチレン系樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン系樹脂、パラフィン系樹脂、フッ素系樹脂等を用いることができる。アクリル系樹脂、アクリル−スチレン系樹脂、スチレン系樹脂、架橋アクリル樹脂、架橋スチレン系樹脂を好ましい例として挙げることができる。
【0049】
ポリマー粒子の重量平均分子量は1万以上、20万以下が好ましく、より好ましくは10万以上、20万以下である。
ポリマー粒子の平均粒径は、10nm〜1μmの範囲が好ましく、10〜200nmの範囲がより好ましく、20〜100nmの範囲が更に好ましく、20〜50nmの範囲が特に好ましい。
ポリマー粒子のガラス転移温度Tgは30℃以上であることが好ましく、40℃以上がより好ましく、50℃以上がさらに好ましい。
【0050】
ポリマー粒子の添加量はインクに対して、0.5〜20質量%が好ましく、3〜20質量%がより好ましく、5〜15質量%がさらに好ましい。
また、ポリマー粒子の粒径分布に関しては、特に制限は無く、広い粒径分布を持つもの、又は単分散の粒径分布を持つもの、いずれでもよい。また、単分散の粒径分布を持つポリマー粒子を、2種以上混合して使用してもよい。
【0051】
(重合性化合物)
本発明におけるインク組成物は、重合性基を有する水溶性の重合性化合物(以下、重合性モノマーともいう。)の少なくとも一種を含有し、活性エネルギー線が照射されることにより重合する。この重合性化合物は、前記顔料と共に併用し、処理液と接触して凝集するときには粒子間に取り込まれて、その後の重合硬化により画像を強化する。更に、重合性化合物は前記顔料及びポリマー粒子と共に併用することが画像強化の点でより好ましい。
【0052】
水溶性とは、水に一定濃度以上溶解できることをいい、水性のインク中に(望ましくは均一に)溶解し得るものであればよい。また、後述する水溶性有機溶剤を添加することにより溶解度が上がってインク中に(望ましくは均一に)溶解するものであってもよい。具体的には、水に対する溶解度が10質量%以上であり、15質量以上であることが好ましい。
【0053】
重合性化合物としては、凝集剤と顔料との反応(更には凝集剤と顔料、ポリマー粒子との反応)を妨げない点で、ノニオン性の重合性化合物又はカチオン性の重合性化合物が好ましく、水に対する溶解度が10質量%以上(更には15質量%以上)の重合性化合物が好ましい。
【0054】
ノニオン性の重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリルモノマー類などの重合性化合物を挙げることができる。
【0055】
前記(メタ)アクリルモノマー類としては、例えば、多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル、多価アルコールのグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸エステル、ポリエチレングリコールの(メタ)アクリル酸エステル、多価アルコールのエチレンオキシド付加化合物の(メタ)アクリル酸エステル、多塩基酸無水物と水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとの反応物などの紫外線硬化型モノマー、オリゴマーが挙げられる。
前記多価アルコールは、エチレンオキシドの付加により内部にエチレンオキシド鎖で鎖延長されたものでもよい。
【0056】
以下、ノニオン性の重合性化合物の具体例(ノニオン性化合物1〜4)を示す。但し、本発明においては、これらに限定されるものではない。
【0057】
【化1】

【0058】
また、多水酸基化合物から誘導される1分子中に2以上のアクリロイル基を有するアクリル酸エステルも用いることができる。前記多水酸基化合物としては、例えば、グリコール類の縮合物、オリゴエーテル、オリゴエステル類等が挙げられる。
【0059】
更に、ノニオン性の重合性化合物としては、単糖類、2糖類などの2以上の水酸基を有するポリオールのアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステル;トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリスヒドロキシアミノメタン、トリスヒドロキシアミノエタン等との(メタ)アクリル酸エステルも好適である。更に、ノニオン性の重合性化合物としてはアクリルアミド類も好適に使用できる。これらは、アクリル酸クロライドと多価アミン類との反応により得ることができる。ノニオン性化合物a〜kを示す。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。また、単糖類、2糖類などの2以上の水酸基を有するポリオールのアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステル;トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリスヒドロキシアミノメタン、トリスヒドロキシアミノエタン等との(メタ)アクリル酸エステルも好適である。
以下に、これらの具体例(ノニオン性化合物a〜k)を示す。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0060】
【化2】

【0061】
【化3】

【0062】
【化4】

【0063】
【化5】



【0064】
前記カチオン性の重合性化合物は、カチオン基と不飽和二重結合等の重合性基とを有する化合物であり、例えば、エポキシモノマー類、オキタセンモノマー類などを好適に用いることができる。カチオン性の重合性化合物を含有すると、カチオン基を有することでインク組成物のカチオン性が強くなり、アニオン性インクを用いたときの混色がより効果的に防止される。
前記カチオン性の重合性化合物としては、例えば、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリレート、N,N−ジメチルアミノアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノメタアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルメタアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルメタアクリルアミド、及びこれらの4級化化合物などが挙げられる。
エポキシモノマー類としては、例えば、多価アルコールのグリシジルエーテル、グリシジルエステル、脂肪族環状のエポキシドなどが挙げられる。
さらに、カチオン性の重合性化合物の例として、下記構造を有するものを挙げることができる。
【0065】
【化6】



【0066】
前記構造において、Rは、ポリオールの残基を表す。また、Xは、水素原子又はメチル基を表し、AはCl、HSO又はCHCOOを表す。このポリオールを導入するための化合物としては、例えば、グリセリン、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、トリメチロールメタン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、ビスフェノールA、脂環型ビスフェノールA及びこれらの縮合物等を挙げることができる。
以下、カチオン基を有する重合性化合物の具体例(カチオン性化合物1〜11)を列挙する。
【0067】
【化7】




【0068】
【化8】



【0069】
【化9】



【0070】
【化10】

【0071】
本発明における重合性化合物としては、擦過耐性を高め得る観点から、多官能のモノマーが好ましく、2官能〜6官能のモノマーが好ましく、溶解性と耐擦過性の両立の観点から、2官能〜4官能のモノマーが好ましい。
【0072】
重合性化合物は、1種単独又は2種以上を組み合わせて含有することができる。
重合性化合物のインク組成物中における含有量としては、顔料に対して、20〜800質量%が好ましく、25〜600質量%がより好ましい。重合性化合物の含有量は、20質量%以上であると画像強度がより向上して画像の耐擦過性に優れ、800質量%以下であるとパイルハイトの点で有利である。
また、インク組成物中にポリマー粒子(好ましくは、自己分散性ポリマー粒子)を有する場合の重合性化合物のインク組成物中における含有量としては、顔料の固形分に対して、30〜300質量%が好ましく、50〜200質量%がより好ましい。重合性化合物の含有量は、30質量%以上であると画像強度がより向上して画像の耐擦過性に優れ、300質量%以下であるとパイルハイトの点で有利である。
【0073】
(重合開始剤)
本発明において、インク組成物及び後述の処理液の少なくとも一方が活性エネルギー線により前記重合性化合物の重合を開始する重合開始剤を含有することが好ましい。重合開始剤は、1種単独で又は2種以上を混合して、あるいは増感剤と併用して使用することができる。
【0074】
重合開始剤は、活性エネルギー線により重合反応を開始し得る化合物を適宜選択して含有することができ、例えば、放射線もしくは光、又は電子線により活性種(ラジカル、酸、塩基など)を発生する開始剤(例えば、光重合開始剤等)を用いることができる。
【0075】
光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、p,p’−ジクロロベンゾフェン、p,p’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn−プロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインn−ブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、テトラメチルチウラムモノサルファイド、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾインパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、メチルベンゾイルフォーメートが挙げられる。更に、例えばトリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート等の、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ハロニウム塩、芳香族スルホニウム塩、メタロセン化合物等が挙げられる。
【0076】
重合開始剤を含有する場合、インク組成物中における重合開始剤の含有量としては、重合性化合物に対して、1〜40質量%が好ましく、5〜30質量%がより好ましい。重合開始剤の含有量は、1質量%以上であると画像の耐擦過性がより向上し、高速記録に有利であり、40質量%以下であると吐出安定性の点で有利である。
【0077】
前記増感剤としては、アミン系(脂肪族アミン、芳香族基を含むアミン、ピペリジンなど)、尿素(アリル系、o−トリルチオ尿素など)、イオウ化合物(ナトリウムジエチルジチオホスフェート、芳香族スルフィン酸の可溶性塩など)、ニトリル系化合物(N,N,ジ置換p−アミノベンゾニトリルなど)、リン化合物(トリn−ブチルホスフィン、ネトリウムジエチルジチオホスフィードなど)、窒素化合物(ミヒラーケトン、N−ニトリソヒドロキシルアミン誘導体、オキサゾリジン化合物、テトラヒドロ1,3オキサジン化合物、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドとジアミンの縮合物など)、塩素化合物(四塩化炭素、ヘキサクロロエタンなど)、エポキシ樹脂とアミンの反応生成物の高分子化アミン、トリエタノールアミントリアクリレート、等が挙げられる。
増感剤は、本発明の効果を損なわない範囲で含有することができる。
【0078】
(水溶性有機溶媒)
本発明におけるインク組成物は、水溶性有機溶媒の少なくとも1種を含有してもよい。水溶性有機溶媒は、乾燥防止、湿潤あるいは浸透促進の効果を得ることができる。乾燥防止には、噴射ノズルのインク吐出口においてインクが付着乾燥して凝集体ができ、目詰まりするのを防止する乾燥防止剤として用いられ、乾燥防止や湿潤には、水より蒸気圧の低い水溶性有機溶媒が好ましい。また、浸透促進には、紙へのインク浸透性を高める浸透促進剤として用いることができる。
【0079】
乾燥防止剤としては、水より蒸気圧の低い水溶性有機溶媒であることが好ましい。このような水溶性有機溶媒の具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、チオジグリコール、ジチオジグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、アセチレングリコール誘導体、グリセリン、トリメチロールプロパン等に代表される多価アルコール類、エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノエチル(又はブチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−エチルモルホリン等の複素環類、スルホラン、ジメチルスルホキシド、3−スルホレン等の含硫黄化合物、ジアセトンアルコール、ジエタノールアミン等の多官能化合物、尿素誘導体が挙げられる。
このうち、乾燥防止剤としては、グリセリン、ジエチレングリコール等の多価アルコールが好ましい。
乾燥防止剤は、1種単独で用いても2種以上併用してもよい。乾燥防止剤の含有量は、インク組成物中に10〜50質量%の範囲とするのが好ましい。
【0080】
浸透促進剤としては、インク組成物を記録媒体(印刷用紙など)により良く浸透させる目的で好適である。このような水溶性有機溶媒の具体例としては、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエーテル、1,2−ヘキサンジオール等のアルコール類やラウリル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウムやノニオン性界面活性剤等を好適に用いることができる。
浸透促進剤は、1種単独で用いても2種以上併用してもよい。浸透促進剤の含有量は、インク組成物中に5〜30質量%の範囲であるのが好ましい。また、浸透促進剤は、画像の滲み、紙抜け(プリントスルー)を起こさない量の範囲内で使用することが好ましい。
【0081】
水溶性有機溶媒は、上記以外にも粘度の調整のために用いられる。粘度の調整に用いることができる水溶性有機溶媒の具体例としては、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール)、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール)、グリコール誘導体(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングルコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル)、アミン(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ポリエチレンイミン、テトラメチルプロピレンジアミン)、及びその他の極性溶媒(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、アセトニトリル、アセトン)が含まれる。この場合も、水溶性有機溶媒は1種単独で用いるほか、2種以上を併用してもよい。
【0082】
(水)
インク組成物は、水を含有するものであるが、水の量には特に制限はない。中でも、水の好ましい含有量は、10〜99質量%であり、より好ましくは30〜80質量%であり、更に好ましくは50〜70質量%である。
【0083】
(その他の添加剤)
本発明におけるインク組成物は、上記成分以外にその他の添加剤を用いて構成することができる。その他の添加剤としては、例えば、重合禁止剤、乾燥防止剤(湿潤剤)、褪色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、表面張力調整剤、消泡剤、粘度調整剤、分散剤、分散安定剤、防錆剤、キレート剤等の公知の添加剤が挙げられる。これらの各種添加剤は、インク組成物の場合はインクに直接添加し、顔料を分散物として用いる場合は顔料分散物の調製後に分散物に添加するのが一般的であるが、調製時に添加してもよい。
【0084】
−処理液−
処理液は、既述のインク組成物中の成分を凝集させる凝集剤、液全質量に対して25質量%以上の、水(25℃)100gへの溶解度が30%以下である有機溶剤を少なくとも含み、必要に応じて、さらに他の成分を用いて構成することができる。インク組成物と共に処理液を用いることで、インクジェット記録を高速化でき、高速記録しても濃度、解像度の高い描画性(例えば細線や微細部分の再現性)に優れた画像が得られる。
【0085】
凝集剤としては、インク組成物のpHを変化させることができる化合物であることが好ましい。インク組成物のpHを低下させ得る化合物としては、有機酸が好ましい。
有機酸としては、例えば、ポリアクリル酸、酢酸、グリコール酸、マロン酸、リンゴ酸、マレイン酸、アスコルビン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、ピロリドンカルボン酸、ピロンカルボン酸、ピロールカルボン酸、フランカルボン酸、ピリジンカルボン酸、クマリン酸、チオフェンカルボン酸、ニコチン酸、若しくはこれらの化合物の誘導体、又はこれらの塩等が好適に挙げられる。
有機酸は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記有機酸に加えて、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の酸性物質を添加してもよい。その他の酸性物質としては、例えば、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸、スルホン酸、オルトリン酸、又はこれらの塩等が好適に挙げられる。
【0086】
本発明における処理液が有機酸を含む場合、処理液のpH(25℃)は、6以下が好ましく、より好ましくは4以下である。中でも、pH(25℃)は1〜4の範囲が好ましく、特に好ましくは、pHは1〜3である。このとき、前記インク組成物のpH(25℃)は、7.5以上(より好ましくは8.0以上)であることが好ましい。
中でも、画像濃度、解像度、及びインクジェット記録の高速化の観点から、インク組成物のpH(25℃)が8.0以上であって、処理液のpH(25℃)が0.5〜4である場合が好ましい。
【0087】
中でも、本発明における凝集剤としては、凝集性を高め、インク全体を固定化させる点で、有機酸が好ましいが、2価以上の有機酸が好ましく、2価以上3価以下の有機酸が特に好ましい。前記2価以上の有機酸としては、その第1pKaが3.5以下の有機酸が好ましく、より好ましくは3.0以下の有機酸である。具体的には、例えば、シュウ酸、マロン酸、クエン酸などが好適に挙げられる。
【0088】
凝集剤は、1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
インク組成物を凝集させる凝集剤の処理液中における含有量としては、凝集性向上の観点から、1〜50質量%が好ましく、より好ましくは3〜45質量%であり、更に好ましくは5〜40質量%の範囲である。
【0089】
(水への溶解度30%以下の有機溶剤)
本発明における処理液は、液全質量に対して25質量%以上の、水(25℃)100gへの溶解度が30%以下である有機溶剤(以下、「有機貧溶剤」ともいう。)を含有する。有機貧溶剤を処理液中に25質量%以上含有することにより、画像形成後の画像におけるカックリングを効果的に抑制し、かつ、膜強度の低下も同時に改良することができる。
処理液中の有機貧溶剤の含有量が25質量%未満であると画像全体に大きな凹凸(カックリング)が発生してしまう。
ここで、「有機貧溶剤」とは、水(25℃)100gへの溶解度が30%以下である有機溶剤をいう。有機貧溶剤としては、更に、カックリング抑制の観点から、水(25℃)100gへの溶解度が20%以下であることが好ましく、更に、10%以下であることがより好ましい。
【0090】
このような有機貧溶剤の具体例としては、菜種油(好ましくは、キャノーラ油)、オリーブオイル、落花生油、サラダ油、白絞油、コーン油、大豆油、ごま油、こめ油、糠油、椿油、サフラワー油 (ベニバナ油)、パーム核油、ヤシ油、綿実油、ひまわり油、荏油、ピーナッツオイル、アーモンドオイル、アボカドオイル、ヘーゼルナッツオイル、ウォルナッツオイル、グレープシードオイル、マスタードオイル、レタス油、魚油、鯨油、鮫油、肝油等に代表される脂肪油(常温で液体)、カカオバター、パーム油、ラード(豚脂)、ヘット(牛脂)、鶏油、兎脂、羊脂、馬脂、シュマルツ、ショートニング、乳脂、バター、マーガリン、ギー、硬化油等に代表される脂肪(常温で固体)が挙げられる。ここで、常温とは5−35℃をいう。
これらの中でも、画像のカックリング発生の抑制の向上、塗布性、及び液安定性の点から、菜種油(好ましくは、キャノーラ油)、オリーブオイル、落花生油、コーン油、ごま油、に代表される半乾性油、及び不乾性油が好ましく、菜種油(好ましくは、キャノーラ油)、オリーブオイルなどの不乾性油がより好ましい。
【0091】
有機貧溶剤は、1種単独で用いても2種以上併用してもよい。
有機貧溶剤の含有量は、処理液中に25質量%以上含有するが、カックリング発生のより効果的な抑制の観点から、30〜60質量%が好ましく、40〜55質量%がより好ましい。
【0092】
(水に混合する水性溶剤)
本発明における処理液は、水(25℃)100gへの溶解度が50%以上の、水に混合する水性溶剤(以下、「水に混合する水性溶剤」ともいう。)の少なくとも1種を含有することができる。水に混合する水性溶剤を処理液中に含有することにより、凝集剤によるインク成分の凝集反応を効果的に起こすことができる。
処理液中の水に混合する水性溶剤の含有量は、30質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましい。処理液中の水に混合する水性溶剤の含有量が30質量%未満であると凝集反応が抑制され、画像が着弾干渉してにじみを発生してしまう場合がある。即ち、30質量%以上であると凝集反応が抑制され、画像が着弾干渉してにじみを発生する場合がない。
ここで、「水に混合する水性溶剤」とは水(25℃)100gへの溶解度が50%以上である水性溶剤をいう。水に混合する水性溶剤の水(25℃)100gへの溶解度は、凝集剤を効果的に画像に供給する点から、より好ましくは70%以上であり、更に好ましくは水と任意に混合するものである。
【0093】
前記水に混合する水性溶剤としては、前記インク組成物中に記載の水溶性有機溶媒のうち、水に混合する溶剤を挙げることができる。
例えば、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール)、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール)、グリコール誘導体(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングルコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル)、アミン(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ポリエチレンイミン、テトラメチルプロピレンジアミン)、及びその他の極性溶媒(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、アセトニトリル、アセトン)が挙げられる。
これらの中でも、グリコール誘導体が好ましく、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングルコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテルが好ましい。
【0094】
処理液は、本発明の効果を損なわない範囲内で、更にその他の成分として他の添加剤を含有することができる。他の添加剤としては、例えば、乾燥防止剤(湿潤剤)、褪色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、表面張力調整剤、消泡剤、粘度調整剤、分散剤、分散安定剤、防錆剤、キレート剤等の公知の添加剤が挙げられる。
【0095】
上記のうち、本発明のインクセットとしては、カルボキシル基を有し酸価が130mgKOH/g以下のポリマー分散剤で被覆された水分散性顔料、酸価が120mgKOH/g以下、ガラス転移温度(Tg)が100℃以上、かつ体積平均粒子径が50nm以下の自己分散性ポリマーの粒子、及び重合性化合物としてノニオン性もしくはカチオン性の3官能〜5官能の水溶性モノマーを含有するインク組成物と、有機酸を含む処理液との組み合わせ態様が好ましく、更には、カルボキシル基を有し酸価が30〜110mgKOH/gのポリマー分散剤で被覆された水分散性顔料、酸価25〜100mgKOH/g、ガラス転移温度(Tg)が100℃以上、かつ体積平均粒子径が2〜60nm(更には2〜30nm)の自己分散性ポリマーの粒子、及び重合性化合物としてノニオン性の3官能〜4官能の水溶性アクリレートモノマーもしくはアクリルアミドモノマーを含有するインク組成物と、2価以上の有機酸を含む処理液との組み合わせ態様がより好ましく、更にはこれらに加えて、自己分散性ポリマーの粒子が、(メタ)アクリレートモノマーに由来する構成単位を含むアクリル系樹脂粒子である場合が特に好ましい。
【0096】
<画像形成方法>
本発明の画像形成方法は、既述の本発明のインクセットを用いたものであり、顔料、及び活性エネルギー線により重合する水溶性の重合性化合物を含むインク組成物を記録媒体にインクジェット法で付与するインク付与工程と、前記インク組成物中の成分を凝集させる凝集剤、及び液全質量に対して25質量%以上の、水(25℃)100gへの溶解度が30%以下である有機溶剤を含む処理液を記録媒体に付与する処理液付与工程と、を設けて構成されたものである。本発明の画像形成方法は、必要に応じて、更に他の工程を設けて構成することができる。
【0097】
本発明においては、インク画像を形成するためのインク組成物に顔料と共に重合硬化可能な水溶性の重合性化合物とを含有することで、処理液と接触した際に顔料の凝集反応で画像が固定化される。顔料の粒子間には重合性化合物が取り込まれた状態で重合硬化されるので、最終画像の強度を高めることができる。
【0098】
本発明においては、インク組成物中に更にポリマー粒子を含有することが好ましい。これは、インク画像を形成するためのインク組成物に顔料と共にポリマー粒子と重合硬化可能な水溶性の重合性化合物を含有することで、処理液と接触した際に顔料及び/又はポリマー粒子の凝集反応で画像が固定化されると共に、顔料の粒子間にはポリマー粒子が存在し、固定化された画像中の顔料及びポリマー粒子の粒子間に重合性化合物が取り込まれた状態で重合硬化されるので、最終画像の強度を高めることができる。
この場合、まず処理液を用いてインク組成物中の成分を高速凝集させ、インク間の混合(滲みや色間混色など)を防いで高速記録できる高速記録適性の向上効果をもたらすことができる。
また、高速記録したときの色相及び画像描画性(画像中の細線や微細部分等の再現性)も向上し、凝集状態を形成している顔料粒子とポリマー粒子の隙間に重合性化合物が適度に入り込んで存在する状態で重合硬化するので、画像強度の向上が顕著になり、高速記録適性と画像の耐擦過性の向上との両立が可能となる。
特に、顔料が記録媒体の表面に残存しやすい塗工紙に画像記録する場合により効果的である。
【0099】
以下、本発明の画像形成方法を構成する各工程を説明する。
−インク付与工程−
インク付与工程は、顔料、及び活性エネルギー線により重合する水溶性の重合性化合物を含むインク組成物を記録媒体にインクジェット法で付与する。本工程では、記録媒体上に選択的にインク組成物を付与でき、所望の可視画像を形成できる。なお、インク組成物は顔料、及び水溶性の重合性化合物を少なくとも含有してなり、各成分の詳細及び好ましい態様などインク組成物の詳細については、既述した通りである。
【0100】
インクジェット法を利用した画像の記録は、具体的には、エネルギーを供与することにより、所望の被記録媒体、すなわち普通紙、樹脂コート紙、例えば特開平8−169172号公報、同8−27693号公報、同2−276670号公報、同7−276789号公報、同9−323475号公報、特開昭62−238783号公報、特開平10−153989号公報、同10−217473号公報、同10−235995号公報、同10−337947号公報、同10−217597号公報、同10−337947号公報等に記載のインクジェット専用紙、フィルム、電子写真共用紙、布帛、ガラス、金属、陶磁器等にインク組成物を吐出することにより行なえる。なお、本発明に好ましいインクジェット記録方法として、特開2003−306623号公報の段落番号0093〜0105に記載の方法が適用できる。
【0101】
インクジェット法は、特に制限はなく、公知の方式、例えば、静電誘引力を利用してインクを吐出させる電荷制御方式、ピエゾ素子の振動圧力を利用するドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)、電気信号を音響ビームに変えインクに照射して放射圧を利用してインクを吐出させる音響インクジェット方式、及びインクを加熱して気泡を形成し、生じた圧力を利用するサーマルインクジェット(バブルジェット(登録商標))方式等のいずれであってもよい。インクジェット法としては、特に、特開昭54−59936号公報に記載の方法で、熱エネルギーの作用を受けたインクが急激な体積変化を生じ、この状態変化による作用力によって、インクをノズルから吐出させるインクジェット法を有効に利用することができる。
尚、前記インクジェット法には、フォトインクと称する濃度の低いインクを小さい体積で多数射出する方式、実質的に同じ色相で濃度の異なる複数のインクを用いて画質を改良する方式や無色透明のインクを用いる方式が含まれる。
【0102】
また、インクジェット法で用いるインクジェットヘッドは、オンデマンド方式でもコンティニュアス方式でも構わない。また、吐出方式としては、電気−機械変換方式(例えば、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型、シェアードウォール型等)、電気−熱変換方式(例えば、サーマルインクジェット型、バブルジェット(登録商標)型等)、静電吸引方式(例えば、電界制御型、スリットジェット型等)及び放電方式(例えば、スパークジェット型等)などを具体的な例として挙げることができるが、いずれの吐出方式を用いても構わない。
尚、前記インクジェット法により記録を行う際に使用するインクノズル等については特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができる。
【0103】
インクジェット記録方法の具体例を以下に示す。
インクジェット記録方法として、(1)静電吸引方式とよばれる方法がある。静電吸引方式は、ノズルとノズルの前方に配置された加速電極との間に強電界を印加し、ノズルから液滴状のインクを連続的に噴射させ、そのインク滴が偏向電極間を通過する間に印刷情報信号を偏向電極に与えることによって、インク滴を記録媒体上に向けて飛ばしてインクを記録媒体上に定着させて画像を記録する方法、又はインク滴を偏向させずに、印刷情報信号に従ってインク滴をノズルから記録媒体上にむけて噴射させることにより画像を記録媒体上に定着させて記録する方法である。また、(2)小型ポンプによってインク液に圧力を加えるとともに、インクジェットノズルを水晶振動子等によって機械的に振動させることによって、強制的にノズルからインク滴を噴射させる方法がある。ノズルから噴射されたインク滴は、噴射されると同時に帯電され、このインク滴が偏向電極間を通過する間に印刷情報信号を偏向電極に与えてインク滴を記録媒体に向かって飛ばすことにより、記録媒体上に画像を記録する方法である。次に、(3)インク液に圧電素子によって圧力と印刷情報信号を同時に加え、ノズルからインク滴を記録媒体に向けて噴射させ、記録媒体上に画像を記録する方法(ピエゾ)、(4)印刷信号情報にしたがって微小電極を用いてインク液を加熱して発泡させ、この泡を膨張させることによってインク液をノズルから記録媒体に向けて噴射し、記録媒体上に画像を記録する方法(バブルジェット(登録商標))がある。
【0104】
インクジェットヘッドとしては、短尺のシリアルヘッドを用い、ヘッドを記録媒体の幅方向に走査させながら記録を行なうシャトル方式と、記録媒体の1辺の全域に対応して記録素子が配列されているラインヘッドを用いたライン方式とがある。ライン方式では、記録素子の配列方向と直交する方向に記録媒体を走査させることで記録媒体の全面に画像記録を行なうことができ、短尺ヘッドを走査するキャリッジ等の搬送系が不要となる。また、キャリッジの移動と記録媒体との複雑な走査制御が不要になり、記録媒体だけが移動するので、シャトル方式に比べて記録速度の高速化が実現できる。本発明の画像形成方法は、これらのいずれにも適用可能であるが、一般にダミージェットを行なわないライン方式に適用した場合に、吐出精度及び画像の耐擦過性の向上効果が大きい。
【0105】
インクジェットヘッドから吐出されるインクの液滴量としては、高精細な画像を得る観点で、1〜10pl(ピコリットル)が好ましく、1.5〜6plがより好ましい。また、画像のムラ、連続諧調のつながりを改良する観点で、異なる液適量を組み合わせて吐出することも有効であり、このような場合でも本発明は好適に使用できる。
【0106】
−処理液付与工程−
処理液付与工程は、インク組成物中の成分を凝集させる凝集剤、及び液全質量に対して25質量%以上の、水(25℃)100gへの溶解度が30%以下である有機溶剤を含む処理液を記録媒体に付与し、処理液をインク組成物と接触させて画像化する。この場合、インク組成物中の顔料及びポリマー粒子をはじめとする分散粒子が凝集し、記録媒体上に画像が固定化される。なお、処理液は凝集剤を少なくとも含有してなり、各成分の詳細及び好ましい態様については、既述した通りである。
【0107】
処理液の付与は、塗布法、インクジェット法、浸漬法などの公知の方法を適用して行なうことができる。塗布法としては、バーコーター、エクストルージョンダイコーター、エアードクターコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、リバースロールコーター、バーコーター等を用いた公知の塗布方法によって行なうことができる。インクジェット法の詳細については、既述の通りである。
【0108】
処理液付与工程は、インク組成物を用いたインク付与工程の前又は後のいずれに設けてもよい。本発明においては、処理液付与工程で処理液を付与した後にインク付与工程を設けた態様が好ましい。具体的には、記録媒体上に、インク組成物を付与する前に、予めインク組成物中の顔料及び/又は自己分散性ポリマーの粒子を凝集させるための処理液を付与しておき、記録媒体上に付与された処理液に接触するようにインク組成物を付与して画像化する態様が好ましい。これにより、インクジェット記録を高速化でき、高速記録しても濃度、解像度の高い画像が得られる。
【0109】
処理液の付与量としては、インク組成物を凝集可能であれば特に制限はないが、好ましくは、凝集剤の付与量が0.1g/m以上となる量とすることができる。中でも、凝集剤の付与量が0.2〜0.7g/mとなる量が好ましい。凝集剤は、付与量が0.1g/m以上であるとインク組成物の種々の使用形態に応じ良好な高速凝集性が保てる。また、凝集剤の付与量が0.7g/m以下であることは、付与した記録媒体の表面性に悪影響(光沢の変化等)を与えない点で好ましい。
【0110】
また、本発明においては、処理液付与工程後にインク付与工程を設け、処理液を記録媒体上に付与した後、インク組成物が付与されるまでの間に、記録媒体上の処理液を加熱乾燥する加熱乾燥工程を更に設けることが好ましい。インク付与工程前に予め処理液を加熱乾燥させることにより、滲み防止などのインク着色性が良好になり、色濃度及び色相の良好な可視画像を記録できる。
【0111】
加熱乾燥は、ヒータ等の公知の加熱手段やドライヤ等の送風を利用した送風手段、あるいはこれらを組み合わせた手段により行なえる。加熱方法としては、例えば、記録媒体の処理液の付与面と反対側からヒータ等で熱を与える方法や、記録媒体の処理液の付与面に温風又は熱風をあてる方法、赤外線ヒータを用いた加熱法などが挙げられ、これらの複数を組み合わせて加熱してもよい。
【0112】
−記録媒体−
本発明の画像形成方法は、記録媒体に上に画像を記録するものである。
記録媒体には、特に制限はないが、一般のオフセット印刷などに用いられる、いわゆる上質紙、コート紙、アート紙などのセルロースを主体とする一般印刷用紙を用いることができる。セルロースを主体とする一般印刷用紙は、水性インクを用いた一般のインクジェット法による画像記録においては比較的インクの吸収、乾燥が遅く、打滴後に色材移動が起こりやすく、画像品質が低下しやすいが、本発明の画像形成方法によると、色材移動を抑制して色濃度、色相に優れた高品位の画像の記録が可能である。
【0113】
記録媒体としては、一般に市販されているものを使用することができ、例えば、王子製紙(株)製の「OKプリンス上質」、日本製紙(株)製の「しおらい」、及び日本製紙(株)製の「ニューNPI上質」等の上質紙(A)、王子製紙(株)製の「OKエバーライトコート」及び日本製紙(株)製の「オーロラS」等の微塗工紙、王子製紙(株)製の「OKコートL」及び日本製紙(株)製の「オーロラL」等の軽量コート紙(A3)、王子製紙(株)製の「OKトップコート+」及び日本製紙(株)製の「オーロラコート」等のコート紙(A2、B2)、王子製紙(株)製の「OK金藤+」及び三菱製紙(株)製の「特菱アート」等のアート紙(A1)等が挙げられる。また、インクジェット記録用の各種写真専用紙を用いることも可能である。
【0114】
記録媒体の中でも、一般のオフセット印刷などに用いられるいわゆる塗工紙が好ましい。塗工紙は、セルロースを主体とした一般に表面処理されていない上質紙や中性紙等の表面にコート材を塗布してコート層を設けたものである。塗工紙は、通常の水性インクジェットによる画像形成においては、画像の光沢や擦過耐性など、品質上の問題を生じやすいが、本発明の画像形成方法では、光沢ムラが抑制されて光沢性、耐擦性の良好な画像を得ることができる。特に、原紙と無機顔料を含むコート層とを有する塗工紙を用いるのが好ましく、原紙とカオリン及び/又は重炭酸カルシウムを含むコート層とを有する塗工紙を用いるのがより好ましい。具体的には、アート紙、コート紙、軽量コート紙、又は微塗工紙がより好ましい。
【0115】
〜インクジェット記録装置〜
次に、本発明の画像形成方法を実施するのに好適なインクジェット記録装置の一例を図1を参照して具体的に説明する。図1は、インクジェット記録装置全体の構成例を示す概略構成図である。
【0116】
図1に示すように、インクジェット記録装置は、記録媒体の搬送方向(図中の矢印方向)に向かって順次、処理液を吐出する処理液吐出用ヘッド12Sを備えた処理液付与部12と、付与された処理液を乾燥させる加熱手段(不図示)を備えた処理液乾燥ゾーン13と、各種インク組成物を吐出するインク吐出部14と、吐出されたインク組成物を乾燥させるインク乾燥ゾーン15とが配設されている。また、記録媒体の搬送方向におけるインク乾燥ゾーン15の下流側には、紫外線照射ランプ16Sを備えた紫外線照射部16が配設されている。
【0117】
このインクジェット記録装置に供給された記録媒体は、記録媒体が装填されたケースから記録媒体を給紙する給紙部から、搬送ローラによって、処理液付与部12、処理液乾燥ゾーン13、インク吐出部14、インク乾燥ゾーン15、紫外線照射部16と順に送られて集積部に集積される。搬送は、搬送ローラによる方法のほか、ドラム状部材を用いたドラム搬送方式やベルト搬送方式、ステージを用いたステージ搬送方式などを採用してもよい。
【0118】
複数配置された搬送ローラのうち、少なくとも1つのローラはモータ(不図示)の動力が伝達された駆動ローラとすることができる。モータで回転する駆動ローラを定速回転することにより、記録媒体は所定の方向に所定の搬送量で搬送されるようになっている。
【0119】
処理液付与部12には、処理液を貯留する貯留タンクに繋がる処理液吐出用ヘッド12Sが設けられている。処理液吐出用ヘッド12Sは、記録媒体の記録面と対向配置された吐出ノズルから処理液を吐出し、記録媒体の上に処理液を液滴付与できるようになっている。なお、処理液付与部12は、ノズル状のヘッドから吐出する方式に限らず、塗布ローラを用いた塗布方式を採用することもできる。この塗布方式は、下流側に配置されたインク吐出部14で記録媒体上にインク滴が着弾する画像領域を含むほぼ全面に処理液を容易に付与することができる。記録媒体上の処理液の厚みを一定にするために、例えば、エアナイフを用いたり、あるいは尖鋭な角を有する部材を、処理液の規定量に対応するギャップを記録媒体との間に設けて設置する等の方法を設けてもよい。
【0120】
処理液付与部12の記録媒体搬送方向の下流側には、処理液乾燥ゾーン13が配置されている。処理液乾燥ゾーン13は、ヒータ等の公知の加熱手段やドライヤ等の送風を利用した送風手段、あるいはこれらを組み合わせた手段を用いて構成することができる。加熱手段は、記録媒体の遮断層形成面と反対側(例えば、記録媒体を自動搬送する場合は記録媒体を載せて搬送する搬送機構の下方)にヒータ等の発熱体を設置する方法や、記録媒体の遮断層形成面に温風又は熱風をあてる方法、赤外線ヒータを用いた加熱法などが挙げられ、これらの複数を組み合わせて加熱してもよい。
【0121】
また、記録媒体の種類(材質、厚み等)や環境温度等によって、記録媒体の表面温度は変化するため、記録媒体の表面温度を計測する計測部と該計測部で計測された記録媒体の表面温度の値を加熱制御部にフィードバックする制御機構を設けて温度制御しながら遮断層を形成することが好ましい。記録媒体の表面温度を計測する計測部としては、接触又は非接触の温度計が好ましい。
また、溶媒除去ローラー等を用いて溶媒除去を行なってもよい。他の態様として、エアナイフで余剰な溶媒を記録媒体から取り除く方式も用いられる。
【0122】
インク吐出部14は、処理液乾燥ゾーン13の記録媒体搬送方向下流側に配置されている。インク吐出部14には、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)の各色インクを貯留するインク貯留部の各々と繋がる記録用ヘッド(インク吐出用ヘッド)30K、30C、30M、30Yが配置されている。不図示の各インク貯留部には、各色相に対応する顔料と樹脂粒子と水溶性有機溶剤と水とを含有するインク組成物が貯留されており、画像の記録に際して必要に応じて各インク吐出用ヘッド30K、30C、30M、30Yに供給されるようになっている。また、インク吐出用ヘッド30K、30C、30M、及び30Yの搬送方向下流側には、図1に示すように、必要に応じて特色インクを吐出可能なように、特色インク吐出用の記録ヘッド30A、30Bを更に配設することもできる。
【0123】
インク吐出用ヘッド30K、30C、30M、30Yは、記録媒体の記録面と対向配置された吐出ノズルから、それぞれ画像に対応するインクを吐出する。これにより、記録媒体の記録面上に各色インクが付与され、カラー画像が記録される。
【0124】
処理液吐出用ヘッド12S、並びにインク吐出用ヘッド30K、30C、30M、30Y、30A、及び30Bはいずれも、記録媒体上に記録される画像の最大記録幅(最大記録幅)にわたって多数の吐出口(ノズル)が配列されたフルラインヘッドとなっている。記録媒体の幅方向(記録媒体搬送面において搬送方向と直交する方向)に短尺のシャトルヘッドを往復走査しながら記録を行なうシリアル型のものに比べて、記録媒体に高速に画像記録を行なうことができる。本発明においては、シリアル型での記録、又は比較的高速記録が可能な方式、例えば1回の走査で1ラインを形成するシングルパスで主走査方向に吐出して記録できる方式での記録のいずれを採用してもよいが、本発明の画像記録方法によればシングルパスによる方式でも再現性の高い高品位の画像が得られる。
【0125】
ここでは、処理液吐出用ヘッド12S、並びにインク吐出用ヘッド30K、30C、30M、30Y、30A、及び30Bは、全て同一構造になっている。
【0126】
処理液の付与量とインク組成物の付与量とは、必要に応じて調節することが好ましい。例えば、記録媒体に応じて、処理液とインク組成物とが混合してできる凝集物の粘弾性等の物性を調節する等のために、処理液の付与量を変えてもよい。
【0127】
インク乾燥ゾーン15は、インク吐出部14の記録媒体搬送方向下流側に配置されている。インク乾燥ゾーン15は、処理液乾燥ゾーン13と同様に構成することができる。
【0128】
紫外線照射部16は、インク乾燥ゾーン15の記録媒体搬送方向のさらに下流側に配置されており、紫外線照射部16に設けられた紫外線照射ランプ16Sにより紫外線を照射し、画像乾燥後の画像中のモノマー成分を重合硬化させるようになっている。紫外線照射ランプ16Sは、記録媒体の記録面と対向配置されたランプにより記録面の全体を照射し、画像全体の硬化が行なえるようになっている。なお、紫外線照射部16は、紫外線照射ランプ16Sに限らず、ハロゲンランプ、高圧水銀灯、レーザー、LED、電子線照射装置などを採用することもできる。
紫外線照射部16は、インク乾燥ゾーン15の前後のいずれに設置されていてもよく、インク乾燥ゾーン15の前後両方に設置してもよい。
【0129】
また、インクジェット記録装置には、給紙部から集積部までの搬送路に、記録媒体に加熱処理を施す加熱手段を配置することもできる。例えば、処理液乾燥ゾーン13の上流側や、インク吐出部14とインク乾燥ゾーン15との間、などの所望の位置に加熱手段を配置することで、記録媒体を所望の温度に昇温させることにより、乾燥、定着を効果的に行なうようにすることが可能である。
【実施例】
【0130】
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、特に断りの無い限り、「部」及び「%」は質量基準である。
【0131】
[インク組成物の調製]
《シアンインクC−1の調製》
−ポリマー分散剤1溶液の調製−
反応容器に、スチレン6部、ステアリルメタクリレート11部、スチレンマクロマーAS−6(東亜合成(株)製)4部、ブレンマーPP−500(日本油脂(株)製)5部、メタクリル酸5部、2−メルカプトエタノール0.05部、及びメチルエチルケトン24部を加え、混合溶液を調液した。
【0132】
一方、滴下ロートに、スチレン14部、ステアリルメタクリレート24部、スチレンマクロマーAS−6(東亜合成(株)製)9部、ブレンマーPP−500(日本油脂(株)製)9部、メタクリル酸10部、2−メルカプトエタノール0.13部、メチルエチルケトン56部、及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1.2部を加え、混合溶液を調液した。
【0133】
そして、窒素雰囲気下、反応容器内の混合溶液を攪拌しながら75℃まで昇温し、滴下ロート中の混合溶液を1時間かけて徐々に滴下した。滴下終了から2時間経過後これに、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1.2部をメチルエチルケトン12部に溶解した溶液を3時間かけて滴下し、更に75℃で2時間、80℃で2時間熟成させ、ポリマー分散剤1溶液を得た。
【0134】
得られたポリマー分散剤1溶液の一部について、溶媒を除去することによって単離し、得られた固形分をテトラヒドロフランにて0.1質量%に希釈し、高速GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)HLC−8220GPCにて、TSKgeL SuperHZM−H、TSKgeL SuperHZ4000、TSKgeL SuperHZ2000(東ソー(株)製)を3本直列につなぎ、重量平均分子量を測定した。その結果、重量平均分子量は、ポリスチレン換算で25,000であった。また、酸価は99mgKOH/gであった。
【0135】
−シアン分散液C1の調製−
次に、上記のポリマー分散剤溶液を固形分換算で5.0g、シアン顔料Pigment Blue 15:3(大日精化工業(株)製)10.0g、メチルエチルケトン40.0g、1mol/L(リットル;以下同様)の水酸化ナトリウム8.0g 及びイオン交換水82.0gを、0.1mmジルコニアビーズ300gと共にベッセルに供給し、レディーミル分散機(アイメックス社製)で1000rpmで6時間分散した。得られた分散液をエバポレーターでメチルエチルケトンが充分に留去できるまで減圧濃縮し、さらに顔料濃度が10%になるまで濃縮して、水分散性顔料が分散したシアン分散液C1を調製した。
得られたシアン分散液C1の体積平均粒子径(二次粒子)を、Micorotrac粒度分布測定装置(Version 10.1.2−211BH(商品名)、日機装(株)製)で動的光散乱法により測定したところ、78nmであった。
【0136】
−自己分散性ポリマー粒子1の合成−
攪拌機、温度計、還流冷却管、及び窒素ガス導入管を備えた2リットル三口フラスコに、メチルエチルケトン360.0gを仕込んで、75℃まで昇温した。その後、フラスコ内温度を75℃に保ちながら、フェノキシエチルアクリレート180.0g、メチルメタクリレート162.0g、アクリル酸18.0g、メチルエチルケトン72g、及び「V−601」(和光純薬工業(株)製)1.44gからなる混合溶液を、2時間で滴下が完了するように等速で滴下した。滴下完了後、これに「V−601」0.72g及びメチルエチルケトン36.0gからなる溶液を加え、75℃で2時間攪拌後、さらに「V−601」0.72g及びイソプロパノール36.0gからなる溶液を加え、75℃で2時間攪拌した。その後、85℃に昇温して、さらに2時間攪拌を続け、フェノキシエチルアクリレート/メチルメタクリレート/アクリル酸(=50/45/5[質量比])共重合体の樹脂溶液を得た。
得られた共重合体の上記同様に測定した重量平均分子量(Mw)は、64,000(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算で算出)であり、酸価は38.9mgKOH/gであった。
【0137】
次に、得られた樹脂溶液668.3gを秤量し、これにイソプロパノール388.3g及び1mol/L NaOH水溶液145.7mlを加え、反応容器内温度を80℃に昇温した。次に、蒸留水720.1gを20ml/minの速度で滴下し、水分散化した後、大気圧下にて反応容器内温度80℃で2時間、85℃で2時間、90℃で2時間保った後、反応容器内を減圧にし、イソプロパノール、メチルエチルケトン、蒸留水を合計で913.7g留去し、固形分濃度28.0質量%の自己分散性ポリマー粒子1の水分散物を得た。
【0138】
上記のようにシアン分散液C1を調製した後、これに上記の自己分散性ポリマー粒子1の水分散物、有機溶剤、界面活性剤、及びイオン交換水を用いて、下記組成になるように各成分を混合した後、5μmフィルタを通して粗大粒子を除去し、シアンインクC1とした。
【0139】
<シアンインクC1の組成>
・シアン顔料(Pigment Blue 15:3、大日精化(株)製)
・・・ 3%
・ポリマー分散剤1 ・・・ 1.35%
・自己分散性ポリマー微粒子1の水分散物 ・・・ 2%
・下記重合性化合物1 ・・・ 15%
・1,2−ヘキサンジオール ・・・ 3%
・オルフィンE1010(日信化学工業(株)製) ・・・ 1%
・イルガキュア2959(チバジャパン社製) ・・・ 3%
・イオン交換水 ・・・ 残量
【0140】
【化11】

【0141】
《シアンインクC2の調製》
シアンインクC1の調製において、シアンインクC1の組成からイルガキュア2959を除いたこと以外は、上記と同様にしてシアンインクC2をそれぞれ調製した。
【0142】
[処理液の調製]
(処理液1の調製)
下記組成の成分を混合して、処理液1を調製した。
【0143】
<処理液1の組成>
・キャノーラ油 ・・・26質量%
・ジエチレングリコールモノブチルエーテル ・・・64質量%
・4−メチルフタル酸 ・・・10質量%
【0144】
(処理液2の調製)
下記組成の成分を混合して、処理液2を調製した。
【0145】
<処理液2の組成>
・キャノーラ油 ・・・26質量%
・テトラエチレングリコールモノメチルエーテル ・・・64質量%
・4−メチルフタル酸 ・・・10質量%
【0146】
(処理液3の調製)
下記組成の成分を混合して、処理液3を調製した。
【0147】
<処理液3の組成>
・キャノーラ油 ・・・45質量%
・ジエチレングリコールモノブチルエーテル ・・・45質量%
・4−メチルフタル酸 ・・・10質量%
【0148】
(処理液4の調製)
下記組成の成分を混合して、処理液4を調製した。
【0149】
<処理液4の組成>
・オリーブオイル ・・・26質量%
・ジエチレングリコールモノブチルエーテル ・・・64質量%
・4−メチルフタル酸 ・・・10質量%
【0150】
(処理液5の調製)
下記組成の成分を混合して、処理液5を調製した。
【0151】
<処理液5の組成>
・落花生油 ・・・26質量%
・ジエチレングリコールモノブチルエーテル ・・・64質量%
・4−メチルフタル酸 ・・・10質量%
【0152】
(処理液6の調製)
下記組成の成分を混合して、処理液6を調製した。
【0153】
<処理液6の組成>
・キャノーラ油 ・・・20質量%
・ジエチレングリコールモノブチルエーテル ・・・80質量%
・4−メチルフタル酸 ・・・10質量%
【0154】
(処理液7の調製)
下記組成の成分を混合して、処理液7を調製した。
【0155】
<処理液7の組成>
・クエン酸 ・・・25質量%
・ジエチレングリコールモノブチルエーテル ・・・20質量%
・イオン交換水 ・・・55質量%
【0156】
(処理液8の調製)
下記組成の成分を混合して、処理液8を調製した。
【0157】
<処理液8の組成>
・キャノーラ油 ・・・26質量%
・ジエチレングリコールモノブチルエーテル ・・・61質量%
・4−メチルフタル酸 ・・・10質量%
・イルガキュア2959 ・・・3質量%
(チバジャパン社製:光重合開始剤)
・イオン交換水・・・残量
【0158】
[画像記録及び評価]
上記で得られたシアンインクC1と表1に記載の処理液1〜7を組み合せて用い、下記のようにして画像を記録し、記録された画像に対して、下記の方法でカックリングを評価した。評価結果は下記表1に示す。
【0159】
《画像記録》
まず、図1に示すように、記録媒体の搬送方向(図中の矢印方向)に向かって順次、水性処理液を吐出する処理液吐出用ヘッド12Sを備えた処理液付与部12と、付与された水性処理液を乾燥させる処理液乾燥ゾーン13と、各種水性インクを吐出するインク吐出部14と、吐出された水性インクを乾燥させるインク乾燥ゾーン15と、紫外線(UV)を照射可能なUV照射ランプ16Sを備えたUV照射部16とが配設されたインクジェット装置を準備した。
処理液乾燥ゾーン13は、図示しないが、記録媒体の記録面側には乾燥風を送って乾燥を行なう送風器を備え、記録媒体の非記録面側には赤外線ヒータを備えており、処理液付与部で処理液の付与を開始した後900msecが経過するまでに、温度・風量を調節して水性処理液中の水の70質量%以上を蒸発(乾燥)できるように構成されている。また、インク吐出部14は、搬送方向(矢印方向)にブラックインク吐出用ヘッド30K、シアンインク吐出用ヘッド30C、マゼンタインク吐出用ヘッド30M、及びイエローインク吐出用ヘッド30Yが順次配置されており、各ヘッドは1200dpi/10inch幅フルラインヘッド(駆動周波数:25kHz、記録媒体の搬送速度530mm/sec)であり、各色をシングルパスで主走査方向に吐出して記録できるようになっている。
【0160】
図1に示すように構成されたインクジェット装置の処理液吐出用ヘッド12S、シアンインク吐出用ヘッド30Cにそれぞれ繋がる貯留タンク(不図示)に、上記で得た処理液1〜7、インク組成物C1を装填して、記録媒体にベタ画像及び1200dpiのライン画像を記録した。水性処理液の記録媒体への付与量は、5ml/mとした。記録媒体には、王子製紙(株)製の「OKトップコート」(坪量104.7g/m)、富士ゼロックス(株)製の「Xerox 4024」を用いた。
画像の記録に際し、水性処理液及びシアンインクは、解像度1200dpi×600dpi、インク滴量3.5pl、インクの最大付与量10ml/mにて吐出した。このとき、ベタ画像は、記録媒体をA5サイズにカットしたサンプルの全面にインクにてを吐出してベタ画像とした。
画像の記録はまず、記録媒体上に処理液吐出用ヘッド12Sから処理液をシングルパスで吐出した後(吐出量5ml/m)、処理液の乾燥は処理液乾燥ゾーン13で行ない、処理液乾燥ゾーンを水性処理液の吐出開始から900msec迄に通過するようにした。処理液乾燥ゾーン13では、着滴した水性処理液を着滴面の裏側(背面)から赤外線ヒータで膜面温度が40〜45℃となるように加熱しながら、送風器により記録面に120℃の温風をあて、風量を変えて所定の乾燥量になるように調整した。続いて、シアンインク吐出用ヘッド30Cにより、シアンインクをシングルパスで吐出して画像を記録した後、インク乾燥ゾーン15で前記同様にインク着滴面の裏側(背面)から赤外線ヒータで加熱しながら、送風器により120℃、5m/secの温風を記録面に15秒間あてて乾燥させた。画像乾燥後、UV照射部16において、UV光(アイグラフィックス(株)製 メタルハライドランプ 最大照射波長 365nm)を積算照射量3J/cmになるように照射して画像を硬化した。
【0161】
《評価》
−カックリング評価−
上記のようにしてOKトップコート上に、最高吐出量のベタ画像を出力し、50%RHの環境下に1時間放置した後に、画像のカックリングを目視で観察し、下記基準に従って評価した。評価結果は下記表1に示す。
<評価基準>
1:画像に凹凸は殆ど発生しない。
2:画像の周辺部にわずかに凹凸がみられる。
3:画像全体に凹凸が発生している。
4:画像全体に大きく凹凸が発生している。
【0162】
−膜強度(耐擦過性)評価−
上記のようにしてOKトップコート上に、インク組成物C1と処理液1〜7を組み合わせて最高吐出量のベタ画像(サンプル)を出力し、25℃、50%RH環境下で1時間放置した後、印画面を、印画していないOKトップコートと重ねあわせ、500gの加重を載せた状態で、印画面を10往復(一回の移動量5cm)擦り、画像面の破壊挙動を評価した。この評価方法に於いて、3以下が商品として許容できるレベルであり、点数が低い方がより好ましいことを示す。
【0163】
<評価基準>
1:画像面に変化が認められない。
2:画像面に破壊箇所は認められないが、表面光沢性が一部変化している。
3:非画像部に画像の一部が転写しているが、画像面に画像が欠落した箇所はない
4:一部の画像が欠落し、画像がない部分が現れている。
5:全面的に画像が欠落し、大面積で画像のない部分が現れている。
【0164】
【表1】



【0165】
表1から明らかな通り、本発明ではカックリングが抑制され画像品位が格段に向上することが判った。また、得られた画像は着弾緩衝することなく均一なベタ画像で得られており、画像強度も充分であった。
【0166】
また記録媒体として、富士ゼロックス(株)製の「Xerox 4024」でも同様の実験をおこなった結果、得られた画像は着弾緩衝することなく均一なベタ画像で得られており、画像強度も充分であった。
さらに、インク組成物C1の代わりにインク組成物C2を用い、処理液1の代わりに処理液8を用いた場合にも、インク組成物C1と処理液1との組み合せと同様に、カックリングが抑制され画像品位が格段に向上し、また、得られた画像は着弾緩衝することなく均一なベタ画像で得られており、画像強度も充分であった。
【符号の説明】
【0167】
12・・・処理液付与部 12S・・・処理液吐出用ヘッド
13・・・処理液乾燥ゾーン 14・・・インク吐出部
15・・・インク乾燥ゾーン 16・・・紫外線照射部
16S・・・紫外線照射ランプ
30K,30C,30M,30Y・・・インク吐出用ヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料、及び活性エネルギー線により重合する水溶性の重合性化合物を含むインク組成物と、
前記インク組成物中の成分を凝集させる凝集剤、及び液全質量に対して25質量%以上の、水(25℃)100gへの溶解度が30%以下である有機溶剤を含む処理液と、
を含むインクセット。
【請求項2】
前記有機溶剤は、脂肪油及び脂肪から選択される少なくとも1つである請求項1に記載のインクセット。
【請求項3】
前記脂肪油は、不乾性油である請求項2に記載のインクセット。
【請求項4】
前記不乾性油は、菜種油、オリーブオイル、落花生油、及び椿油から選択される少なくとも1つである請求項3に記載のインクセット。
【請求項5】
前記顔料は、その表面の少なくとも一部がポリマー分散剤で被覆された水分散性顔料である請求項1〜4のいずれか1項に記載のインクセット。
【請求項6】
前記ポリマー分散剤がカルボキシル基を有する請求項5に記載のインクセット。
【請求項7】
前記凝集剤が有機酸である請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載のインクセット。
【請求項8】
前記インク組成物及び前記処理液の少なくとも一方が、更に、前記重合性化合物の重合を開始する重合開始剤を含む請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載のインクセット。
【請求項9】
前記インク組成物が、更にポリマー粒子を含有する請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載のインクセット。
【請求項10】
顔料、及び活性エネルギー線により重合する水溶性の重合性化合物を含むインク組成物を記録媒体にインクジェット法で付与するインク付与工程と、
前記インク組成物中の成分を凝集させる凝集剤、及び液全質量に対して25質量%以上の、水(25℃)100gへの溶解度が30%以下である有機溶剤を含む処理液を記録媒体に付与する処理液付与工程と、
を有する画像形成方法。
【請求項11】
前記記録媒体が、原紙と無機顔料を含むコート層とを有する塗工紙である請求項10に記載の画像形成方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−178885(P2011−178885A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−44170(P2010−44170)
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】