説明

インク組成物、インクジェット記録方法、及び、印刷物

【課題】非吸収性の被記録媒体を含む多様な被記録媒体に対して印刷が可能であり、色再現性及び生産性に優れたインク組成物、インクジェット記録方法及び印刷物を提供する。
【解決手段】(A)オレンジ、バイオレット、又はグリーン色を呈する有機顔料の少なくとも1種、(B)下記式(I)で表される化合物、及び、(C)重合性化合物を含有することを特徴とするインク組成物。


(式(I)中、XはO、S、又は、NRを表し、nは0又は1を表し、Rは水素原子、アルキル基、又は、アシル基を表し、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、及び、R8はそれぞれ独立に、水素原子、又は、一価の置換基を表し、R1、R2、R3、及び、R4は、それぞれ隣接する2つが互いに連結して環を形成していてもよい。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク組成物、インクジェット記録方法、及び、印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
インク吐出口からインクを液滴で吐出するインクジェット方式は、小型で安価であり、被記録媒体に非接触で画像形成が可能である等の理由から多くのプリンタに用いられている。これらインクジェット方式の中でも、圧電素子の変形を利用しインクを吐出させるピエゾインクジェット方式、及び熱エネルギーによるインクの沸騰現象を利用しインクを液滴吐出する熱インクジェット方式は、高解像度、高速印字性に優れるという特徴を有する。
【0003】
最近では、家庭用またはオフィス用の写真印刷や文書印刷に留まらず、インクジェットプリンタを用いた商業用印刷機器や産業用印刷機器の開発が行なわれるようになってきた。
従来の家庭用またはオフィス用のインクジェットインク及び記録方法に対して、商業用印刷機器や産業用印刷機器を目的としたインクジェットインク及び記録方法には、(1)プラスチックなどの非浸透型の被記録媒体を含むあらゆる被記録媒体に印刷可能なこと、(2)形成した画像の色再現性が広いこと、(3)速乾性があり生産性に優れること、が強く要求されるようになってきた。
【0004】
家庭用またはオフィス用のインクジェットインク及び記録方法は、写真プリントまたは文書印刷を意図して開発されてきたケースが多く、商業用や産業用の印刷物としては色再現性が狭いことが重要な課題として挙げられる。
また、非吸収性の被記録媒体に記録を行う場合には、従来のインク及び方法は、打滴後の液滴の乾燥や被記録媒体への浸透に時間が掛かると、画像に滲みが生じやすく、また、被記録媒体上で隣接するインク液滴間で混合が生じ、鮮鋭な画像形成の妨げとなるなど、実用上問題があった。さらに、非吸収性の被記録媒体に記録した画像のもう一つの問題点としては、剥がれやすく、擦過性に劣るなど、画像の定着性が挙げられる。
【0005】
上記課題を解決する方法として、これまでに様々な技術が提案されてきた。
プラスチックなどの非浸透型の被記録媒体を含むあらゆる被記録媒体に印刷可能なインクジェット記録方法として、ラジカル重合性化合物を含有したインクジェットインクを用いた記録方法(例えば特許文献1)が開示されている。
さらに、ピグメントオレンジやピグメントグリーンなど特色顔料を用いたエネルギー硬化性インクジェットインクが開示されており、これによって色再現性の拡大が期待できる(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
【特許文献1】特表2000−504778号公報
【特許文献2】特表2003−531223号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の方法では、広い色再現性を得ようとして、インク液滴付与量を増やした場合には、硬化膜の割れによる画像の乱れや定着性の悪化が生じる。一方、特許文献2に記載の方法は、硬化感度が低く、生産性に劣る。
【0008】
本発明は上記の課題を解決するものであり、本発明の目的は非吸収性の被記録媒体を含む多様な被記録媒体に対して印刷が可能であり、色再現性及び生産性に優れたインク組成物、インクジェット記録方法及び印刷物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記課題は、以下の<1>、<8>、<10>に記載の手段により解決された。好ましい実施態様である<2>〜<7>及び<9>とともに以下に記載する。
<1> (A)オレンジ、バイオレット、又はグリーン色を呈する有機顔料の少なくとも1種、(B)下記式(I)で表される化合物、及び、(C)重合性化合物を含有することを特徴とするインク組成物、
【0010】
【化1】

(式(I)中、XはO、S、又は、NRを表し、nは0又は1を表し、Rは水素原子、アルキル基、又は、アシル基を表し、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、及び、R8はそれぞれ独立に、水素原子、又は、一価の置換基を表し、R1、R2、R3、及び、R4は、それぞれ隣接する2つが互いに連結して環を形成していてもよい。)
【0011】
<2> 前記重合性化合物がエチレン性不飽和化合物である、上記<1>に記載のインク組成物、
<3> (D)重合開始剤を含有し、該(D)重合開始剤がアシルホスフィンオキサイド化合物及び/又はα−アミノアセトフェノン化合物である、上記<1>又は上記<2>に記載のインク組成物、
<4> 前記有機顔料が以下に示す群から選ばれた少なくとも1種である、上記<1>〜上記<3>いずれか1つに記載のインク組成物、
C.I.ピグメントオレンジ36,38,43,71、
C.I.ピグメントバイオレット23,32,37,39、及び
C.I.ピグメントグリーン7,36,37
<5> 前記有機顔料が以下に示す群から選ばれた少なくとも1種である、上記<1>〜上記<4>いずれか1つに記載のインク組成物、
C.I.ピグメントオレンジ36、
C.I.ピグメントバイオレット23、37及び
C.I.ピグメントグリーン7
<6> 前記有機顔料が式(A)で表されるジオキサジン型化合物である、上記<1>〜上記<5>いずれか1つに記載のインク組成物、
【0012】
【化2】

式(A)中、R1〜R10はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)又は1価の基を表す。
【0013】
<7> 前記ジオキサジン型化合物がC.I.ピグメントバイオレット23又はC.I.ピグメントバイオレット37である、上記<6>に記載のインク組成物、
<8> インクジェット記録用である、上記<1>〜上記<7>いずれか1つに記載のインク組成物、
<9> (a1)被記録媒体上に、上記<1>〜上記<8>いずれか1つに記載のインク組成物を吐出する工程、及び、(b1)吐出されたインク組成物に活性放射線を照射して、該インク組成物を硬化する工程、を含むことを特徴とするインクジェット記録方法、
<10> 前記活性放射線が、発光ピーク波長が350〜420nmの範囲にあり、かつ、被記録媒体表面での最高照度が10〜2,000mW/cm2となる紫外線を発生する発光ダイオードにより照射される紫外線である、上記<9>に記載のインクジェット記録方法、
<11> 上記<9>又は上記<10>に記載のインクジェット記録方法によって記録された印刷物。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、非吸収性の被記録媒体を含む多様な被記録媒体に対して印刷が可能であり、色再現性及び生産性に優れたインク組成物、インクジェット記録方法及び印刷物を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(1)インク組成物
本発明のインク組成物(以下、単に「インク」ともいう。)は、(A)オレンジ、バイオレット、又はグリーン色を呈する有機顔料の少なくとも1種、(B)上記式(I)で表される化合物、及び、(C)重合性化合物を含有することを特徴とする。
本発明のインク組成物は、インクジェット記録用インク組成物として好適に使用できる。
また、本発明のインク組成物は、これら成分に加えて、重合開始剤、界面活性剤、重合禁止剤等を含有することができる。
【0016】
上記式(I)で表される化合物は、硬化性と非硬化性成分である該化合物の硬化膜からの泣き出し防止の両立の観点から、インク組成物への添加濃度として、インク組成物の総重量に対して、0.5重量%以上25.0重量%以下であることが好ましく、1.0重量%以上20.0重量%以下であることがより好ましく、1.0重量%以上15.0重量%以下であることが特に好ましい。
【0017】
重合性化合物は、画像定着性の観点から、インク組成物への添加濃度として、インク組成物の総重量に対して、40重量%以上98重量%以下であることが好ましく、50重量%以上95重量%以下であることがより好ましく、60重量%以上90重量%以下であることが特に好ましい。重合性化合物の添加量が上記範囲内であると、硬化性に優れ、また、粘度が適切であるので好ましい。
【0018】
オレンジ、バイオレット、又はグリーン色を呈する有機顔料の添加量は、本発明の効果の一つである良好な色再現性を得る観点から、インク組成物の総重量に対して、0.5重量%以上30重量%以下であることが好ましく、1.0重量%以上20重量%以下であることがより好ましく、1.5重量%以上10重量%以下であることが特に好ましい。
【0019】
また、重合開始剤の添加濃度としては、重合性化合物の総重量に対して、0.1〜20.0重量%であることが好ましく、より好ましくは0.5〜18.0重量%、さらに好ましくは1.0〜15.0重量%である。重合開始剤の添加量が上記範囲内であると、硬化性に優れ、また、表面ベトツキ低減の観点から適切であるので好ましい。
【0020】
本発明において、インク組成物は、室温で液体であればよいが、インクジェットによる打滴適正の観点から、25℃における粘度は100mPa・s以下又は60℃における粘度が30mPa・s以下であることが好ましく、25℃における粘度は60mPa・s以下又は60℃における粘度が20mPa・s以下であることがより好ましく、25℃における粘度は40mPa・s以下又は60℃における粘度が15mPa・s以下であることが特に好ましい。
同じく、インクジェットによる打滴適正の観点から、インクジェット記録用インクとして使用する場合、25℃における表面張力は18mN/m以上40mN/m以下が好ましく、20mN/m以上35mN/m以下がより好ましく、22mN/m以上32mN/m以下がさらに好ましい。
ここでの「粘度」は、東機産業(株)製のRE80型粘度計を用いて求めた粘度である。RE80型粘度計は、E型に相当する円錐ロータ/平板方式粘度計であり、ロータコードNo.1番のロータを用い、10rpmの回転数にて測定を行う。但し、60mPa・sより高粘度なものについては、必要により回転数を5rpm、2.5rpm、1rpm、0.5rpm等に変化させて測定を行う。
また、ここで、前記表面張力は、一般的に用いられる表面張力計(例えば、協和界面科学(株)製、表面張力計CBVP−Z等)を用いて、ウィルヘルミー法で液温25℃にて測定した値である。
【0021】
本発明のインク組成物は、放射線により硬化可能なインク組成物であり、また、油性のインク組成物である。
本発明でいう「放射線」とは、その照射によりインク組成物中において開始種を発生させうるエネルギーを付与することができる活性放射線であれば、特に制限はなく、広くα線、γ線、X線、紫外線(UV)、可視光線、電子線などを包含するものであるが、なかでも、硬化感度及び装置の入手容易性の観点から紫外線及び電子線が好ましく、特に紫外線が好ましい。したがって、本発明のインク組成物としては、放射線として、紫外線を照射することにより硬化可能なインク組成物が好ましい。
以下に、本発明のインク組成物を構成するそれぞれの成分について説明する。
【0022】
(A)オレンジ、バイオレット、又はグリーン色を呈する有機顔料
本発明のインク組成物は、オレンジ、バイオレット、又はグリーン色を呈する有機顔料(以下、単に有機顔料ともいう。)の少なくとも1種を含有する。また、本発明のインク組成物は、オレンジ、バイオレット又はグリーン色を呈する有機顔料をいずれか1種含有するインク組成物であることが好ましい。ここで、オレンジ色の有機顔料を含有する本発明のインク組成物をオレンジインク組成物、バイオレット色の有機顔料を含有する本発明のインク組成物をバイオレットインク組成物、グリーン色の有機顔料を含有する本発明のインク組成物をグリーンインク組成物ともいう。
また、例えばバイオレット色の有機顔料を含有する場合、バイオレット色の有機顔料を1種単独で使用することもできるし、2種以上を併用することもできる。さらに必要に応じてインク組成物に他の色を呈する着色剤(好ましくは有機顔料)を併用することもできる。
【0023】
本発明のインク組成物は、複数のインク組成物からなるインクセットとして使用することが好ましく、この場合、オレンジインク組成物、バイオレットインク組成物及びグリーンインク組成物よりなる群から選択された少なくとも1つのインク組成物を含むものである。オレンジインク組成物、バイオレットインク組成物、及び、グリーンインク組成物を含むインクセットであることがより好ましい。
また、これらの他に、シアン、マゼンタ、イエロー及びブラックの各色を呈するインク組成物と併用してインクセットとすることが好ましく、必要に応じてホワイト色を呈するインク組成物を併用することが好ましい。
【0024】
本発明のインク組成物が含有する有機顔料は、少なくともバイオレット、オレンジ、グリーンのいずれかの色を呈する有機顔料である。
ここでオレンジ色を呈する有機顔料とは、その分散液を塗布して得られた膜の色相(a*、b*)が「b*<2a*+20かつb*>a*−20 (a*>0、b*>0)」の範囲内である有機顔料と定義する。同じく、バイオレット色を呈する有機顔料とは、その分散液を塗布して得られた膜の色相(a*、b*)が「b*>−2a*−20かつb*<0.5a*+10 (a*>0、b*<0)」の範囲内である有機顔料、グリーン色を呈する有機顔料とは、その分散液を塗布して得られた膜の色相(a*、b*)が「b*<−a*+20かつb*>−0.25a* (a*<0)」の範囲内である有機顔料と定義する。なお、色相(a*、b*)の測定は、グレタグ社製SPM100−IIを用いることができる。
【0025】
ここで色相を評価するために用いる有機顔料分散液の顔料濃度は1wt%以上30wt%以下であることが好ましい。分散液中の有機顔料の粒子径(体積平均粒子径)は、特に限定されることはないが、光学散乱の影響を抑える観点から、1μm以下であることが好ましく、500nm以下であることがより好ましく、200nm以下がさらに好ましい。分散媒としては着色が少ない、もしくは、着色が無いならば、特に限定されることはないが、水、汎用溶剤、市販モノマーなどが好ましい。分散液を作製する工程は、特に限定されることはなく公知の技術を用いることができる。比較的に簡易であることから、ボールミル分散、ビーズミル分散、または、超音波分散などを好ましく用いることができる。さらに、分散液中に、市販の界面活性剤や顔料分散剤を適宜用いることが好ましい。
分散液を塗布する基材としては、白色の基材であることが好ましい。白色の基材ならば特に限定されることはないが、例えば、市販の白色塗工紙、白色合成紙などが好ましく用いることができる。分散液を塗布する手段としては、特に限定されることはないが、例えば、バーコートなどが簡易であり、好ましく用いることができる。
【0026】
広い色再現性を得る観点から、オレンジ色を呈する有機顔料としては、その分散液を塗布して得られた膜の色相(a*、b*)が「b*<2a*かつb*>a* (a*>0、b*>0)」の範囲内であることがさらに好ましい。同じく、広い色再現性を得る観点から、バイオレット色を呈する有機顔料としては、その分散液を塗布して得られた膜の色相(a*、b*)が「b*>−2a*かつb*<0.5a* (a*>0、b*<0)」の範囲内であること、グリーン色を呈する有機顔料としては、その分散液を塗布して得られた膜の色相(a*、b*)が「b*<−a* (a*<0、b*>0)」の範囲内であることがさらに好ましい。
バイオレット、オレンジ、グリーンのいずれかの色を呈する有機顔料は、前述の色相を満たすものであれば特に限定されることはなく、市販品から適宜選択して用いることが可能である。
【0027】
バイオレットの色を呈する有機顔料としては、C.I.ピグメントバイオレット1(ローダミンB)、C.I.ピグメントバイオレット2(ローダミン3B)、C.I.ピグメントバイオレット3(メチルバイオレットレーキ)、C.I.ピグメントバイオレット3:1(メチルバイオレットレーキ)、C.I.ピグメントバイオレット3:3(メチルバイオレットレーキ)、C.I.ピグメントバイオレット5:1(アリザリンマルーン)、C.I.ピグメントバイオレット13(ウルトラマリンピンク)、C.I.ピグメントバイオレット17(ナフトールAS)、C.I.ピグメントバイオレット23(ジオキサジンバイオレット)、C.I.ピグメントバイオレット25(ナフトールAS)、C.I.ピグメントバイオレット29(ペリレンバイオレット)、C.I.ピグメントバイオレット31(ビオランスロンバイオレット)、C.I.ピグメントバイオレット32(ベンズイミダゾロンボルドーHF3R)、C.I.ピグメントバイオレット36(チオインジゴ)、C.I.ピグメントバイオレット37(ジオキサジンバイオレット)、C.I.ピグメントバイオレット42(キナクリドンマルーンB)、C.I.ピグメントバイオレット50(ナフトールAS)等が市販品として入手可能である。
これらの中でも、色再現性、耐光性や有機顔料分散物の安定性の観点から、バイオレット色を呈する有機顔料としてはC.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントバイオレット32、C.I.ピグメントバイオレット37及びC.I.ピグメントバイオレット39が好ましく、特に好ましくは、ピグメントバイオレット23、ピグメントバイオレット37である。
【0028】
オレンジの色を呈する有機顔料としては、C.I.ピグメントオレンジ1(ハンザイエロー3R)、C.I.ピグメントオレンジ2(オルソニトロオレンジ)、C.I.ピグメントオレンジ3(βナフトール)、C.I.ピグメントオレンジ4(ナフトールAS)、C.I.ピグメントオレンジ5(βナフトール)、C.I.ピグメントオレンジ13(ピラゾロンオレンジG)、C.I.ピグメントオレンジ15(ジスアゾオレンジ)、C.I.ピグメントオレンジ16(アニシジンオレンジ)、C.I.ピグメントオレンジ17(ペルシアンオレンジレーキ)、C.I.ピグメントオレンジ19(ナフタレンイエローレーキ)、C.I.ピグメントオレンジ24(ナフトールオレンジY)、C.I.ピグメントオレンジ31(縮合アゾオレンジ)、C.I.ピグメントオレンジ34(ピアゾロンオレンジ)、C.I.ピグメントオレンジ36(ベンズイミダゾロンオレンジHL)、C.I.ピグメントオレンジ38(ナフトールオレンジ)、C.I.ピグメントオレンジ40(ピランスロンオレンジ)、C.I.ピグメントオレンジ43(ペリノンオレンジ)、C.I.ピグメントオレンジ46(エチルレッドレーキC)、C.I.ピグメントオレンジ48(キナクリドンゴールド)、C.I.ピグメントオレンジ49(キナクリドンゴールド)、C.I.ピグメントオレンジ51(ピランスロンオレンジ)、C.I.ピグメントオレンジ60(イミダゾロンオレンジHGL)、C.I.ピグメントオレンジ61(イソインドリノンオレンジ)、C.I.ピグメントオレンジ62(ベンズイミダゾロンオレンジH5G)、C.I.ピグメントオレンジ64(ベンズイミダゾロン)、C.I.ピグメントオレンジ65(アゾメチンオレンジ)、C.I.ピグメントオレンジ66(イソインドリオレンジ)、C.I.ピグメントオレンジ67(ピラゾロキナゾロンオレンジ)、C.I.ピグメントオレンジ68(アゾメチンオレンジ)、C.I.ピグメントオレンジ69(イソインドリノンオレンジ)、C.I.ピグメントオレンジ71(ジケトピロロピロールオレンジ)、C.I.ピグメントオレンジ72(イミダゾロンオレンジH4GL)、C.I.ピグメントオレンジ73(ジケトピロロピロールオレンジ)、C.I.ピグメントオレンジ74(ナフトールオレンジ2RLD)、C.I.ピグメントオレンジ81(ジケトピロロピロールオレンジ)等が市販品として入手可能である。
これらの中でも、色再現性、耐光性や有機顔料分散物の安定性の観点から、オレンジの色を呈する有機顔料としてはC.I.ピグメントオレンジ36、C.I.ピグメントオレンジ38、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントオレンジ71が例示でき、C.I.ピグメントオレンジ36が特に好ましい。
【0029】
グリーンの色を呈する有機顔料としては、C.I.ピグメントグリーン1(ブリリアントグリーンレーキ)、C.I.ピグメントグリーン4(マラカイトグリーンレーキ)、C.I.ピグメントグリーン7(フタロシアニングリーン)、C.I.ピグメントグリーン8(ピグメントグリーンB)、C.I.ピグメントグリーン10(ニッケルアゾイエロー)、C.I.ピグメントグリーン36(臭素化フタロシアニングリーン)等が市販品として入手可能である。
これらの中でも、色再現性、耐光性や有機顔料分散物の安定性の観点から、グリーン色を呈する有機顔料としては、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントグリーン36、C.I.ピグメントグリーン37が好ましく、C.I.ピグメントグリーン7が特に好ましい。
【0030】
また、発色性及び分散性に優れることから、有機顔料は、ジオキサジン型化合物であることが好ましい。ジオキサジン型化合物としては、下記式(A)で表されるジオキサジン化合物が例示できる。
【0031】
【化3】

【0032】
式中、R1〜R10はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)又は1価の基を表す。また、R1〜R10はいずれか2つ以上が結合して環構造を形成していてもよく、該環構造はさらに置換基を有していてもよい。
一価の基としては、例えば、アミノ基、置換アミノ基、置換カルボニル墓、水酸基、置換オキシ基、チオール基、チオエーテル基、シリル基、ニトロ基、シアノ基、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、スルホ基、置換スルホニル基、スルホナト基、置換スルフィニル基、ホスホノ基、置換ホスホノ基、ホスホナト基、置換ホスホナト基等が挙げられ、導入可能な場合にはさらに置換基を有していてもよい。
【0033】
1〜R10におけるアルキル基としては、炭素原子数が1から20までの直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を挙げることができる。これらの中でも、炭素原子数1から12までの直鎖状のアルキル基、炭素原子数3から12までの分岐状のアルキル基、及び炭素原子数5から10までの環状のアルキル基がより好ましい。その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、及び2−ノルボルニル基を挙げられる。
【0034】
1〜R10におけるアルキル基が置換基を有する場合(即ち、置換アルキル基である場合)、置換アルキル基のアルキル部分としては、上述した炭素数1から20までのアルキル基上の水素原子のいずれか1つを除し、2価の有機残基としたものを挙げることができ、好ましい炭素原子数の範囲についても上記アルキル基と同様である。
【0035】
1〜R10が置換アルキル基である場合における好ましい具体例としては、クロロメチル基、ブロモメチル基、2−クロロエチル基、トリフルオロメチル基、メトキシメチル基、メトキシカルボニルメチル基、イソプロポキシメチル基、ブトキシメチル基、s−ブトキシブチル基、メトキシエトキシエチル基、アリルオキシメチル基、フェノキシメチル基、アセチルオキシメチル基、メチルチオメチル基、トリルチオメチル基、ピリジルメチル基、テトラメチルピペリジニルメチル基、N−アセチルテトラメチルピペリジニルメチル基、トリメチルシリルメチル基、メトキシエチル基、エチルアミノエチル基、ジエチルアミノプロピル基、モルホリノプロピル基、ベンゾイルオキシメチル基、N−シクロヘキシルカルバモイルオキシエチル基、N−フェニルカルバモイルオキシエチル基、アセチルアミノエチル基、N−メチルベンゾイルアミノプロピル基、2−オキソエチル基、2−オキソプロピル基、カルボキシプロピル基、メトキシカルボニルエチル基、アリルオキシカルボニルブチル基、クロロフェノキシカルボニルメチル基、
【0036】
カルバモイルメチル基、N−メチルカルバモイルエチル基、N,N−ジプロピルカルバモイルメチル基、N−(メトキシフェニル)カルバモイルエチル基、N−メチル−N−(スルホフェニル)カルバモイルメチル基、スルホブチル基、スルホナトブチル基、スルファモイルブチル基、N−エチルスルファモイルメチル基、N,N−ジプロピルスルファモイルプロピル基、N−トリルスルファモイルプロピル基、N−メチル−N−(ホスホノフェニル)スルファモイルオクチル基、ホスホノブチル基、ホスホナトヘキシル基、ジエチルホスホノブチル基、ジフェニルホスホノプロピル基、メチルホスホノブチル基、メチルホスホナトブチル基、トリルホスホノヘキシル基、トリルホスホナトヘキシル基、ホスホノオキシプロピル基、ホスホナトオキシブチル基、ベンジル基、フェネチル基、α−メチルベンジル基、1−メチル−1−フェニルエチル基、p−メチルベンジル基、シンナミル基、アリル基、1−プロペニルメチル基、2−ブテニル基、2−メチルアリル基、2−メチルプロペニルメチル基、2−プロピニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基等を挙げることができる。
【0037】
1〜R10におけるアルキル基に導入可能な置換基としては、上記置換アルキル基の説明中に記載された置換基の他、以下に例示する非金属原子から構成される1価の置換基も挙げられる。上述した置換基を含む好ましい例としては、ハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルジチオ基、アリールジチオ基、アミノ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、N−アリールアミノ基、N,N−ジアリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカルバモイルオキシ基、N,N−ジアルキルカルバモイルオキシ基、N,N−ジアリールカルバモイルオキシ基、N−アルキル−N−アリールカルバモイルオキシ基、アルキルスルホキシ基、アリールスルホキシ基、アシルチオ基、アシルアミノ基、N−アルキルアシルアミノ基、N−アリールアシルアミノ基、ウレイド基、N'−アルキルウレイド基、N',N'−ジアルキルウレイド基、N'−アリールウレイド基、N',N'−ジアリールウレイド基、N'−アルキル−N'−アリールウレイド基、N−アルキルウレイド基、N−アリールウレイド基、N'−アルキル−N−アルキルウレイド基、N'−アルキル−N−アリールウレイド基、N',N'−ジアルキル−N−アルキルウレイド基、N',N'−ジアルキル−N−アリールウレイド基、N'−アリール−N−アルキルウレイド基、N'−アリール−N−アリールウレイド基、N',N'−ジアリール−N−アルキルウレイド基、N',N'−ジアリール−N−アリールウレイド基、N'−アルキル−N'−アリール−N−アルキルウレイド基、N'−アルキル−N'−アリール−N−アリールウレイド基、
【0038】
アルコキシカルボニルアミノ基、アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N,N−ジアリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホ基(−SO3H)及びその共役塩基基(スルホナト基と称す)、アルコキシスルホニル基、アリーロキシスルホニル基、スルフィナモイル基、N−アルキルスルフィナモイル基、N,N−ジアルキルスルフィイナモイル基、N−アリールスルフィナモイル基、N,N−ジアリールスルフィナモイル基、N−アルキル−N−アリールスルフィナモイル基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N,N−ジアリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基、
【0039】
ホスホノ基(−PO32)及びその共役塩基基(ホスホナト基と称する。)、ジアルキルホスホノ基(−PO3(alkyl)2)「alkyl=アルキル基、以下同」、ジアリールホスホノ基(−PO3(aryl)2)「aryl=アリール基、以下同」、アルキルアリールホスホノ基(−PO3(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスホノ基(−PO3(alkyl))及びその共役塩基基(アルキルホスホナト基と称する。)、モノアリールホスホノ基(−PO3H(aryl))及びその共役塩基基(アリールホスホナト基と称する。)、ホスホノオキシ基(−OPO32)及びその共役塩基基(ホスホナトオキシ基と称す)、ジアルキルホスホノオキシ基(−OPO3H(alkyl)2)、ジアリールホスホノオキシ基(−OPO3(aryl)2)、アルキルアリールホスホノオキシ基(−OPO3(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスホノオキシ基(−OPO3H(alkyl))及びその共役塩基基(アルキルホスホナトオキシ基と称する。)、モノアリールホスホノオキシ基(−OPO3H(aryl))及びその共役塩基基(アリールホスホナトオキシ基と称する。)、シアノ基、ニトロ基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロ環基、シリル基等が挙げられる。
【0040】
1〜R10におけるアルキル基に導入可能な置換基におけるアルキル部分の具体例としては、上述したR1〜R10が置換アルキル基である場合と同様であり、好ましい範囲も同様である。
また、R1〜R10におけるアルキル基に導入可能な置換基におけるアリール部分の具体例としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、クロロメチルフェニル基、ヒドロキシフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、フェノキシフェニル基、アセトキシフェニル基、ベンゾイロキシフェニル基、メチルチオフェニル基、フェニルチオフェニル基、メチルアミノフェニル基、ジメチルアミノフェニル基、アセチルアミノフェニル基、カルボキシフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、エトキシフェニルカルボニル基、フェノキシカルボニルフェニル基、N−フェニルカルバモイルフェニル基、シアノフェニル基、スルホフェニル基、スルホナトフェニル基、ホスホノフェニル基、ホスホナトフェニル基、等を挙げることができる。
【0041】
1〜R10におけるアルケニル基としては、炭素原子数2から20のアルケニル基を挙げることができる。これらの中でも、炭素原子数2から10までのアルケニル基が好ましく、炭素原子数2から8までのアルケニル基がより好ましい。アルケニル基は、さらに置換基を有していてもよい。導入可能な置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、及び置換アリール基を挙げることができ、ハロゲン原子、炭素原子数1から10までの直鎖状、分岐状、環状のアルキル基が好ましい。アルケニル基の具体例としては、例えば、ビニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、シンナミル基、1−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、1−オクテニル基、1−メチル−1−プロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基、2−メチル−1−ブテニル基、2−フェニル−1−エテニル基、2−クロロ−1−エテニル基等が挙げられる。
【0042】
1〜R10におけるアルキニル基としては、炭素原子数2から20のアルキニル基を挙げることができる。これらの中でも、炭素原子数2から10までのアルキニル基が好ましく、炭素原子数2から8までのアルキニル基がより好ましい。その具体例としては、エチニル基、1−プロピニル基、1−ブチニル基、フェニルエチニル基、トリメチルシリルエチニル基等が挙げられる。
【0043】
1〜R10におけるアリール基としては、ベンゼン環、2個から3個のベンゼン環が縮合環を形成したもの、ベンゼン環と5員不飽和環が縮合環を形成したものなどが挙げられる。具体例としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、インデニル基、アセナフテニル基、フルオレニル基を挙げることができ、これらのなかでは、フェニル基、ナフチル基がより好ましい。
【0044】
また、R1〜R10におけるアリール基は、環を形成する炭素原子上に置換基を有していてもよく、そのような置換基としては、非金属原子から構成される1価の置換基が挙げられる。導入される置換基の好ましい例としては、前述したアルキル基、置換アルキル基、及び、置換アルキル基における置換基の説明において、記載したものを挙げることができる。
【0045】
1〜R10におけるヘテロ環基としては、3員環から8員環のヘテロ環基が好ましく、窒素原子、酸素原子、硫黄原子を含む3乃至6員環のヘテロ環基がより好ましく、窒素原子、酸素原子、硫黄原子を含む5乃至6員環のヘテロ環基がさらに好ましい。具体的には、ピロール環基、フラン環基、チオフェン環基、ベンゾピロール環基、ベンゾフラン環基、ベンゾチオフェン環基、ピラゾール環基、イソキサゾール環基、イソチアゾール環基、インダゾール環基、ベンゾイソキサゾール環基、ベンゾイソチアゾール環基、イミダゾール環基、オキサゾール環基、チアゾール環基、ベンズイミダゾール環基、ベンズオキサゾール環基、ベンゾチアゾール環基、ピリジン環基、キノリン環基、イソキノリン環基、ピリダジン環基、ピリミジン環基、ピラジン環基、フタラジン環基、キナゾリン環基、キノキサリン環基、アシリジン環基、フェナントリジン環基、カルバゾール環基、プリン環基、ピラン環基、ピペリジン環基、ピペラジン環基、モルホリン環基、インドール環基、インドリジン環基、クロメン環基、シンノリン環基、アクリジン環基、フェノチアジン環基、テトラゾール環基、トリアジン環基等が挙げられる。
【0046】
また、R1〜R10におけるヘテロ環基は、環を形成する炭素原子上に置換基を有していてもよく、そのような置換基としては、非金属原子から構成される1価の置換基が挙げられる。導入される置換基の好ましい例としては、前述したアルキル基、置換アルキル基、及び、置換アルキル基における置換基の説明において、記載したものを挙げることができる。
【0047】
1〜R10におけるシリル基としては、置換基を有していてもよく、炭素数0から30のシリル基が好ましく、炭素数3から20のシリル基がより好ましく、炭素数3から10のシリル基がさらに好ましい。その具体例としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリリル基、トリプロピルシリル基、トリイソプロピルシリル基、シクロヘキシルジメチルシリル基、ジメチルビニルシリル基等が挙げられる。
【0048】
1〜R10におけるチオール基としては、置換基を有していてもよく、炭素数0から30のチオール基が好ましく、炭素数3から20のチオール基がよりこのましく、炭素数1から10のチオール基がさらに好ましい。その具体例としては、メルカプトメチル基、メルカプトエチル基、4−メルカプトシクロへキシル基、4−メルカプトフェニル基等が挙げられる。
【0049】
1〜R10におけるチオエーテル基としては、置換基を有していてもよく、炭素数0から30のチオエーテル基が好ましく、炭素数3から20のチオエーテル基がよりこのましく、炭素数1から10のチオエーテル基がより好ましい。
その具体例としては、メチルチオ基、エチルチオ基、シクロへキシルチオ基などのアルキルチオ基、フェニルチオ基等のアリールチオ基等が挙げられる。
1〜R10におけるハロゲン原子としては、フッ素原子、臭素原子、塩素原子、ヨウ素原子が挙げられ、これらの中でも、塩素原子及び臭素原子が好ましい。
【0050】
1〜R10における置換オキシ基(R06O−)としては、R06が水素原子を除く一価の非金属原子団からなる基であるものを用いることができる。好ましい置換オキシ基としては、アルコキシ基、アリーロキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカルバモイルオキシ基、N,N−ジアルキルカルバモイルオキシ基、N,N−ジアリールカルバモイルオキシ基、N−アルキル−N−アリールカルバモイルオキシ基、アルキルスルホキシ基、アリールスルホキシ基、ホスホノオキシ基、ホスホナトオキシ基を挙げることができる。これらにおけるアルキル基、ならびにアリール基としては前述のアルキル基、置換アルキル基ならびに、アリール基、置換アリール基として示したものを挙げることができる。また、アシルオキシ基におけるアシル基(R07CO−)としては、R07が、先の例として挙げたアルキル基、置換アルキル基、アリール基ならびに置換アリール基のものを挙げることができる。これらの置換基の中では、アルコキシ基、アリーロキシ基、アシルオキシ基、アリールスルホキシ基がより好ましい。好ましい置換オキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブチルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ドデシルオキシ基、ベンジルオキシ基、アリルオキシ基、フェネチルオキシ基、カルボキシエチルオキシ基、メトキシカルボニルエチルオキシ基、エトキシカルボニルエチルオキシ基、メトキシエトキシ基、フェノキシエトキシ基、メトキシエトキシエトキシ基、エトキシエトキシエトキシ基、モルホリノエトキシ基、モルホリノプロピルオキシ基、アリロキシエトキシエトキシ基、フェノキシ基、トリルオキシ基、キシリルオキシ基、メシチルオキシ基、メシチルオキシ基、クメニルオキシ基、メトキシフェニルオキシ基、エトキシフェニルオキシ基、クロロフェニルオキシ基、ブロモフェニルオキシ基、アセチルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、ナフチルオキシ基、フェニルスルホニルオキシ基、ホスホノオキシ基、ホスホナトオキシ基等が挙げられる。
【0051】
1〜R10におけるアミノ基はアミド基も含む置換アミノ基であってもよい。アミド基も含む置換アミノ基(R08NH−、(R09)(R010)N−)としては、R08、R09、R010が水素原子を除く一価の非金属原子団からなる基のものを使用できる。なお、R09とR010とは結合して環を形成してもよい。置換アミノ基の好ましい例としては、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、N−アリールアミノ基、N,N−ジアリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基、アシルアミノ基、N−アルキルアシルアミノ基、N−アリールアシルアミノ基、ウレイド基、N'−アルキルウレイド基、N',N'−ジアルキルウレイド基、N'−アリールウレイド基、N',N'−ジアリールウレイド基、N'−アルキル−N'−アリールウレイド基、N−アルキルウレイド基、N−アリールウレイド基、N'−アルキル−N−アルキルウレイド基、N'−アルキル−N−アリールウレイド基、N',N'−ジアルキル−N−アルキルウレイド基、N'−アルキル−N'−アリールウレイド基、N',N'−ジアルキル−N−アルキルウレイド基、N',N'−ジアルキル−N'−アリールウレイド基、N'−アリール−N−アルキルウレイド基、N'−アリール−N−アリールウレイド基、N',N'−ジアリール−N−アルキルウレイド基、N',N'−ジアリール−N−アリールウレイド基、N'−アルキル−N'−アリール−N−アルキルウレイド基、N'−アルキル−N'−アリール−N−アリールウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アリーロキシカルボニルアミノ基が挙げられる。これらにおけるアルキル基、アリール基としては前述のアルキル基、置換アルキル基、ならびにアリール基、置換アリール基として示したものを挙げることができ、アシルアミノ基、N−アルキルアシルアミノ基、N−アリールアシルアミノ基おけるアシル基(R07CO−)のR07は前述のとおりである。これらの内、より好ましいものとしては、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、N−アリールアミノ基、アシルアミノ基が挙げられる。好ましい置換アミノ基の具体例としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、モルホリノ基、ピペリジノ基、ピロリジノ基、フェニルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、アセチルアミノ基等が挙げられる。
【0052】
1〜R10における置換スルホニル基(R011−SO2−)としては、R011が一価の非金属原子団からなる基のものを使用できる。より好ましい例としては、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、置換又は未置換のスルファモイル基、を挙げることができる。これらにおけるアルキル基、アリール基としては前述のアルキル基、置換アルキル基、ならびにアリール基、置換アリール基として示したものを挙げることができる。このような、置換スルホニル基の具体例としては、ブチルスルホニル基、フェニルスルホニル基、クロロフェニルスルホニル基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基等が挙げられる。
【0053】
1〜R10におけるスルホナト基(−SO3−)は前述のとおり、スルホ基(−SO3H)の共役塩基陰イオン基を意味し、通常は対陽イオンと共に使用されるのが好ましい。このような対陽イオンとしては、一般に知られるもの、すなわち、種々のオニウム類(アンモニウム類、スルホニウム類、ホスホニウム類、ヨードニウム類、アジニウム類等)、ならびに金属イオン類(Na+、K+、Ca2+、Zn2+等)が挙げられる。
【0054】
1〜R10における置換カルボニル基(R013−CO−)としては、R013が一価の非金属原子団からなる基のものを使用できる。置換カルボニル基の好ましい例としては、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N,N−ジアリールカルバモイル基、N−アルキル−N'−アリールカルバモイル基が挙げられる。これらにおけるアルキル基、アリール基としては前述のアルキル基、置換アルキル基、ならびにアリール基、置換アリール基として示したものを挙げることができる。これらの内、より好ましい置換カルボニル基としては、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基が挙げられ、さらにより好ましいものとしては、ホルミル基、アシル基、アルコキシカルボニル基ならびにアリーロキシカルボニル基が挙げられる。好ましい置換カルボニル基の具体例としては、ホルミル基、アセチル基、ベンゾイル基、カルボキシル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、ジメチルアミノフェニルエテニルカルボニル基、メトキシカルボニルメトキシカルボニル基、N−メチルカルバモイル基、N−フェニルカルバモイル基、N,N−ジエチルカルバモイル基、モルホリノカルボニル基等が挙げられる。
【0055】
1〜R10における置換スルフィニル基(R014−SO−)としては、R014が一価の非金属原子団からなる基のものを使用できる。好ましい例としては、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、スルフィナモイル基、N−アルキルスルフィナモイル基、N,N−ジアルキルスルフィナモイル基、N−アリールスルフィナモイル基、N,N−ジアリールスルフィナモイル基、N−アルキル−N−アリールスルフィナモイル基が挙げられる。これらにおけるアルキル基、アリール基としては前述のアルキル基、置換アルキル基、ならびにアリール基、置換アリール基として示したものを挙げることができる。これらの内、より好ましい例としてはアルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基が挙げられる。このような置換スルフィニル基の具体例としては、ヘキシルスルフィニル基、ベンジルスルフィニル基、トリルスルフィニル基等が挙げられる。
【0056】
1〜R10における置換ホスホノ基とはホスホノ基上の水酸基の一つもしくは二つが他の有機オキソ基によって置換されたものを意味し、好ましい例としては、前述のジアルキルホスホノ基、ジアリールホスホノ基、アルキルアリールホスホノ基、モノアルキルホスホノ基、モノアリールホスホノ基が挙げられる。これらの中ではジアルキルホスホノ基、ならびにジアリールホスホノ基がより好ましい。このような具体例としては、ジエチルホスホノ基、ジブチルホスホノ基、ジフェニルホスホノ基等が挙げられる。
【0057】
1〜R10におけるホスホナト基(−PO32−、−PO3H−)とは、ホスホノ基(−PO32)の、酸第一解離もしくは、酸第二解離に由来する共役塩基陰イオン基を意味する。通常は対陽イオンと共に使用されるのが好ましい。このような対陽イオンとしては、一般に知られるもの、すなわち、種々のオニウム類(アンモニウム類、スルホニウム類、ホスホニウム類、ヨードニウム類、アジニウム類、等)、ならびに金属イオン類(Na+、K+、Ca2+、Zn2+等)が挙げられる。
【0058】
1〜R10における置換ホスホナト基とは前述の置換ホスホノ基の内、水酸基を一つ有機オキソ基に置換したものの共役塩基陰イオン基であり、具体例としては、前述のモノアルキルホスホノ基(−PO3H(alkyl))、モノアリールホスホノ基(−PO3H(aryl))の共役塩基が挙げられる。
【0059】
また、R1〜R10は、それぞれ互いに結合して、それらが結合している炭素原子と共に、ベンゼン環、複素環等の縮合環を形成してもよい。好ましくは、R1〜R10の隣接する2つの基が縮合環を形成することが好ましく、R1〜R4及びR7〜R10の隣接する2つの基が縮合環を形成することがより好ましい。
【0060】
1〜R10の好ましい態様を以下に挙げる。
式中、R1〜R10はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子(塩素原子、臭素原子)又は1価の基を表す。また、R1〜R10はいずれか2つ以上が結合して環構造を形成していてもよく、該環構造はさらに置換基を有していてもよい。
一価の基としては、例えば、アミノ基、置換アミノ基、置換カルボニル墓、水酸基、置換オキシ基、チオール基、チオエーテル基、シリル基、ニトロ基、シアノ基、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、置換スルホニル基、スルホナト基、置換スルフィニル基、置換ホスホノ基、ホスホナト基、置換ホスホナト基等が挙げられ、導入可能な場合にはさらに置換基を有していてもよい。
【0061】
1〜R10におけるアルキル基としては、炭素原子数が1から10までの直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を挙げることができる。これらの中でも、炭素原子数1から6までの直鎖状のアルキル基、炭素原子数3から6までの分岐状のアルキル基、及び炭素原子数5から10までの環状のアルキル基がより好ましい。その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、及び2−ノルボルニル基を挙げられる。
【0062】
1〜R10におけるアルキル基が置換基を有する場合(即ち、置換アルキル基である場合)、置換アルキル基のアルキル部分としては、上述した炭素数1から10までのアルキル基上の水素原子のいずれか1つを除し、2価の有機残基としたものを挙げることができ、好ましい炭素原子数の範囲についても上記アルキル基と同様である。
1〜R10が置換アルキル基である場合における好ましい具体例としては、ブロモメチル基、2−クロロエチル基、トリフルオロメチル基、メトキシメチル基、メトキシカルボニルメチル基、ブトキシメチル基、s−ブトキシブチル基、メトキシエトキシエチル基、アリルオキシメチル基、フェノキシメチル基、メチルチオメチル基、トリルチオメチル基、ピリジルメチル基、トリメチルシリルメチル基、メトキシエチル基、エチルアミノエチル基、ジエチルアミノプロピル基、ベンゾイルオキシメチル基、アセチルアミノエチル基、N−メチルベンゾイルアミノプロピル基、2−オキソエチル基、メトキシカルボニルエチル基、アリルオキシカルボニルブチル基、クロロフェノキシカルボニルメチル基、N−メチルカルバモイルエチル基、N,N−ジプロピルカルバモイルメチル基、スルホナトブチル基、N−エチルスルファモイルメチル基、ジエチルホスホノブチル基、ベンジル基、フェネチル基、α−メチルベンジル基、1−メチル−1−フェニルエチル基、p−メチルベンジル基、アリル基、2−ブテニル基、2−メチルアリル基、2−プロピニル基、3−ブチニル基等を挙げることができる。
【0063】
1〜R10における好ましいアルケニル基としては、炭素原子数2から8までのアルケニル基が挙げられる。アルケニル基は、さらに置換基を有していてもよい。導入可能な置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、及び置換アリール基を挙げることができ、ハロゲン原子、炭素原子数1から6までの直鎖状、分岐状、環状のアルキル基が好ましい。アルケニル基の具体例としては、例えば、ビニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、1−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、1−メチル−1−プロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基、2−メチル−1−ブテニル基、2−フェニル−1−エテニル基等が挙げられる。
【0064】
1〜R10における好ましいアルキニル基としては、炭素原子数2から8のアルキニル基を挙げることができる。その具体例としては、エチニル基、1−プロピニル基、1−ブチニル基等が挙げられる。
【0065】
1〜R10における好ましいアリール基としては、具体例としてはフェニル基、トリル基、クロロフェニル基、メトキシフェニル基、ナフチル基がより好ましい。
【0066】
1〜R10におけるヘテロ環基としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子を含む5乃至6員環のヘテロ環基が好ましい。具体的には、ピロール環基、フラン環基、チオフェン環基、ベンゾピロール環基、ベンゾフラン環基、ベンゾチオフェン環基、イソキサゾール環基、イソチアゾール環基、イミダゾール環基、オキサゾール環基、チアゾール環基、ベンズイミダゾール環基、ベンズオキサゾール環基、ベンゾチアゾール環基、キノリン環基、ピリミジン環基、キナゾリン環基、キノキサリン環基、カルバゾール環基、ピペリジン環基、ピペラジン環基、モルホリン環基、インドール環基、インドリジン環基、テトラゾール環基、トリアジン環基等が挙げられる。ピロール環基、ベンゾピロール環基、カルバゾール環基、インドール環基がより好ましい。
【0067】
1〜R10におけるシリル基としては、置換基を有していてもよく、炭素数3から10のシリル基が好ましい。その具体例としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリリル基、トリプロピルシリル基等が挙げられる。
【0068】
1〜R10におけるチオール基としては、置換基を有していてもよく、炭素数1から10のチオール基が好ましい。その具体例としては、メルカプトメチル基、メルカプトエチル基、4−メルカプトシクロへキシル基、4−メルカプトフェニル基等が挙げられる。
【0069】
1〜R10におけるチオエーテル基としては、置換基を有していてもよく、炭素数1から10のチオエーテル基が好ましい。その具体例としては、メチルチオ基、エチルチオ基、シクロへキシルチオ基などのアルキルチオ基、フェニルチオ基等のアリールチオ基等が挙げられる。
【0070】
1〜R10におけるハロゲン原子としては、塩素原子及び臭素原子が好ましい。
【0071】
1〜R10における好ましい置換オキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブチルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ベンジルオキシ基、アリルオキシ基、フェネチルオキシ基、メトキシエトキシ基、フェノキシエトキシ基、フェノキシ基、トリルオキシ基、キシリルオキシ基、メシチルオキシ基、メトキシフェニルオキシ基、クロロフェニルオキシ基、ブロモフェニルオキシ基等が挙げられる。
【0072】
1〜R10におけるアミノ基はアミド基も含む置換アミノ基であってもよい。好ましい置換アミノ基の具体例としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、モルホリノ基、ピペリジノ基、ピロリジノ基、フェニルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、アセチルアミノ基等が挙げられる。
【0073】
1〜R10における好ましい置換スルホニル基としてはアルキルスルホニル基、アリールスルホニル基を挙げることができる。このような、置換スルホニル基の具体例としては、メチルスルホニル基、ブチルスルホニル基、フェニルスルホニル基、クロロフェニルスルホニル基等が挙げられる。
【0074】
1〜R10における好ましい置換カルボニル基としては、ホルミル基、アシル基、アルコキシカルボニル基ならびにアリーロキシカルボニル基が挙げられる。具体例としては、ホルミル基、アセチル基、ベンゾイル基、カルボキシル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0075】
1〜R10における好ましい置換スルフィニル基としてはアルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基が挙げられる。このような置換スルフィニル基の具体例としては、ヘキシルスルフィニル基、ベンジルスルフィニル基、トリルスルフィニル基等が挙げられる。
【0076】
1〜R10における好ましい置換ホスホノ基としてはジアルキルホスホノ基、ジアリールホスホノ基、アルキルアリールホスホノ基、モノアルキルホスホノ基、モノアリールホスホノ基が挙げられる。これらの中ではジアルキルホスホノ基、ならびにジアリールホスホノ基がより好ましい。このような具体例としては、ジエチルホスホノ基、ジブチルホスホノ基、ジフェニルホスホノ基等が挙げられる。
【0077】
式(A)で表される有機顔料は、バイオレット色を呈する有機顔料であることが好ましい。式(A)で表されるバイオレット色を呈する有機顔料を以下に例示するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0078】
【化4】

【0079】
前記有機顔料の分散には、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、ジェットミル、ホモジナイザー、ペイントシェーカー、ニーダー、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、などの分散装置を好適に使用することができる。
ここで、前記有機顔料の分散を行う際に、分散剤を添加することが好ましい。
また、有機顔料の分散の際に、必要に応じて、分散助剤として、各種顔料に応じたシナージストを添加してもよい。分散助剤のインク組成物における含有量としては、有機顔料100重量部に対し、1〜50重量部以下が好ましい。
【0080】
有機顔料をインク組成物に分散させる際に使用する分散媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、低分子量である重合性化合物を分散媒としてもよいし、溶媒を分散媒としてもよい。ただし、本発明のインク組成物は、放射線硬化型のインク組成物であり、インク組成物を被記録媒体上に適用後硬化させるため、溶媒を含まず、無溶剤であることが好ましい。これは、硬化されたインク画像中に溶剤が残留すると、耐溶剤性が劣化したり、残留する溶剤のVOC(Volatile Organic Compound)の問題が生じるためである。このため、前記分散媒として、重合性化合物を用い、その中でも、最も粘度が低い重合性化合物を選択することが、分散適性やインク組成物のハンドリング性向上の点で好ましい。
すなわち、本発明において、(A)成分(オレンジ、バイオレット、又はグリーン色を呈する有機顔料の少なくとも1種)を、分散剤を用いて重合性化合物に分散し、有機顔料分散物を得ることが好ましい。
【0081】
有機顔料の平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、微細なほど発色性に優れるため、0.01〜0.4μm程度が好ましく、0.02〜0.2μmがより好ましい。また、有機顔料の最大粒径としては、3μm以下が好ましく、1μm以下がより好ましい。有機顔料の粒径は、有機顔料、分散剤、分散媒体の選択、分散条件、ろ過条件の設定などにより調整することができ、有機顔料の粒径を制御することにより、ヘッドノズルの詰まりを抑制し、インク組成物の保存安定性、インク組成物の透明性及び硬化感度を維持することができる。
なお、有機顔料のインク組成物における粒径は、公知の測定方法で測定することができる。具体的には遠心沈降光透過法、X線透過法、レーザー回折・散乱法、動的光散乱法により測定することができる。
【0082】
(B)式(I)で表される化合物
本発明のインク組成物は、増感剤として、(B)式(I)で表される化合物を含有する。
【0083】
【化5】

【0084】
前記式(I)において、Xは、O、S又はNRを表す。Rは、水素原子、アルキル基又はアシル基を表し、アルキル基又はアシル基であることが好ましい。
前記式(I)において、nは、0又は1を表す。
Xとしては、O又はSであることが好ましく、Sであることがより好ましい。
なお、nが0の場合、R7及びR8と結合した炭素原子は存在せず、ヘテロ原子を含むXと、R5及びR6と結合した炭素原子と、が直接結合して、Xを含む5員のヘテロ環を構成することになる。
【0085】
1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8はそれぞれ独立に、水素原子又は一価の置換基を表す。
1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8における一価の置換基としては、ハロゲン原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミド基、アリールアミノ基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルホニル基、アルコキシカルボニル基、ヘテロ環オキシ基、アゾ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、シリルオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニルアミノ基、イミド基、ヘテロ環チオ基、スルフィニル基、ホスホリル基、アシル基、カルボキシル基又はスルホ基などが挙げられる。中でも、アルキル基又はハロゲン原子であることが好ましい。
【0086】
式(I)におけるR1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8が一価の置換基を表す場合のアルキル基としては、炭素数1〜10個のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基のような炭素数1〜4個のものがより好ましい。
同様に、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、ヒドロキシエトキシ基、プロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基のような炭素数1〜4個のものが好ましく挙げられる。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を挙げることができる。
【0087】
1、R2、R3及びR4は、それぞれ隣接する2つが互いに連結(例えば縮合)して環を形成していてもよい。
これらが環を形成する場合の環構造としては、5又は6員環の脂肪族環、芳香族環などが挙げられ、炭素原子以外の元素を含む複素環であってもよく、また、形成された環同士がさらに組み合わさって2核環、例えば、縮合環を形成していてもよい。さらにこれらの環構造は、前記式(I)において、R1乃至R8が一価の置換基を表す場合に例示した置換基をさらに有していてもよい。形成された環構造が複素環である場合のヘテロ原子の例としては、N、O及びSを挙げることができる。
【0088】
n=1の場合、R5又はR6と、R7又はR8は互いに連結して脂肪族環を形成してもよいが、芳香族環を形成することはない。脂肪族環は、3〜6員環であることが好ましく、5又は6員環であることがより好ましい。
【0089】
前記式(I)で表される化合物は、下記式(I−A)で表される化合物であることが好ましい。
【0090】
【化6】

【0091】
前記式(I−A)において、XはO又はSを表し、nは0又は1を表し、R1A、R2A、R3A、R4A、R5A、R6A、R7A及びR8Aはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシル基、カルボキシル基又はスルホ基を表す。R1A、R2A、R3A及びR4Aは、それぞれ隣接する2つが互いに連結(縮合)して環を形成していてもよい。R5A又はR6Aと、R7A又はR8Aは互いに連結して脂肪族環を形成してもよいが、芳香族環を形成することはない。
さらにこれらの環構造は、前記式(I)において、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8が一価の置換基を表す場合に例示した各置換基をさらに有していてもよい。環構造が複素環の場合、ヘテロ原子の例としては、N、O及びSを挙げることができる。
【0092】
また、前記式(I)で表される化合物は、下記式(I−B)で表される化合物であることがより好ましい。
【0093】
【化7】

【0094】
前記式(I−B)において、XはO又はSを表し、R1B、R2B、R3B、R4B、R5B、R6B、R7B及びR8Bはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシル基、カルボキシル基又はスルホ基を表す。また、R1B、R2B、R3B及びR4Bは、それぞれ隣接する2つが互いに連結(縮合)して環を形成していてもよい。R5B又はR6Bと、R7B又はR8Bは互いに連結して脂肪族環を形成してもよいが、芳香族環を形成することはない。
さらにこれらの環構造は、前記式(I)において、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8が一価の置換基を表す場合に例示した各置換基をさらに有していてもよい。環構造が複素環の場合、ヘテロ原子の例としては、N、O及びSを挙げることができる。
【0095】
さらに、前記式(I)で表される化合物は、下記式(I−C)で表される化合物であることがさらに好ましい。
【0096】
【化8】

【0097】
前記式(I−C)において、R1C、R2C、R3C、R4C、R5C、R6C、R7C及びR8Cはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシル基、カルボキシル基又はスルホ基を表す。
1C、R2C、R3C及びR4Cは、それぞれ隣接する2つが互いに縮合して5又は6員環の脂肪族環、芳香族環を形成していてもよく、これらの環は、炭素原子以外の元素を含む複素環であってもよく、また、形成された環同士がさらに組み合わさって2核環、例えば、縮合環を形成していてもよい。R5C又はR6Cと、R7C又はR8Cは互いに連結して脂肪族環を形成してもよいが、芳香族環を形成することはない。
さらにこれらの環構造は、前記式(I)において、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8が一価の置換基を表す場合に例示した各置換基をさらに有していてもよい。環構造が複素環の場合、ヘテロ原子の例としては、N、O及びSを挙げることができる。
【0098】
また、R1C、R2C、R3C、R4C、R5C、R6C、R7C及びR8Cのうちの少なくとも1つはハロゲン原子であることが好ましい。好ましい置換位置としてはR1C、R2C、R3C、R4Cが挙げられ、R2Cが最も好ましい。R1C〜R8Cにおけるハロゲン原子の数としては、1つ又は2つであることが好ましく、1つであることがより好ましい。
【0099】
2Cは、水素以外の置換基であることが好ましく、中でも、光源とのマッチングがよく高感度であるため、アルキル基、ハロゲン原子、アシルオキシ基又はアルコキシカルボニル基が好ましく、アルキル基又はハロゲン原子がより好ましい。
【0100】
7C及びR8Cのいずれかは、水素以外の置換基であることが好ましく、両方とも水素以外の置換基であることがさらに好ましい。好ましい置換基としては、アルキル基、ハロゲン原子、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基が挙げられ、中でもアルキル基、アルコキシカルボニル基が好ましく、アルキル基が最も好ましい。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を挙げることができ、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が好ましい。
【0101】
アルキル基としては、炭素数1〜10個のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基のような炭素数が1〜4個のものがより好ましい。
【0102】
アシルオキシ基としては炭素数2〜10個の脂肪族アシルオキシ基が好ましく、炭素数が2〜5個の脂肪族アシルオキシ基がより好ましい。
アルコキシカルボニル基としては炭素数2〜10個の脂肪族アルコキシカルボニル基が好ましく、炭素数が2〜5個のアルコキシカルボニル基がより好ましい。
【0103】
本発明に好適に用いることのできる式(I)で表される化合物の具体例〔例示化合物(I−1)〜(I−133)〕を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、本発明における化学式の一部において、炭化水素鎖を炭素(C)及び水素(H)の記号を省略した簡略構造式で記載する場合もある。また、下記具体例において、Meはメチル基を表し、Butはt−ブチル基を表し、Priはイソプロピル基を表す。
【0104】
【化9】

【0105】
【化10】

【0106】
【化11】

【0107】
【化12】

【0108】
【化13】

【0109】
【化14】

【0110】
【化15】

【0111】
【化16】

【0112】
【化17】

【0113】
これらの中でも、例示化合物(I−2)、(I−4)、(I−5)、(I−14)及び(I−15)が好ましく、例示化合物(I−14)が特に好ましい。
【0114】
式(I)で表される化合物の合成方法としては、例えば、特開2004−189695号公報、Tetrahedron,第49巻,p939(1993年)、Journal of Organic Chemistry,p893(1945年)、及び、Journal of Organic Chemistry,p4939(1965年)などに記載の公知の方法によって合成することができる。
【0115】
上述の通り、式(I)で表される化合物は、硬化性と非硬化性成分である該化合物の硬化膜からの泣き出し防止の両立の観点から、インク組成物への添加濃度として、インク組成物の総重量に対して、0.5重量%以上25.0重量%以下であることが好ましく、1.0重量%以上20.0重量%以下であることがより好ましく、1.0重量%以上15.0重量%以下であることが特に好ましい。
なお、式(I)で表される化合物は、可視光領域における吸収が殆どないため、増感剤としての効果を発現しうる量を添加してもインク組成物の色相に影響を与える懸念がないという利点をも有するものである。特に、オレンジ、バイオレット、又はグリーン色を呈する有機顔料を使用する場合、増感剤を使用すると、インク組成物の色相が変化しやすいという問題があるが、上記式(I)で表される化合物は、このような色相の変化を生じることなくインク組成物に高い硬化性を(高感度性)を付与することができる。
本発明のインク組成物中における含有量について、後述する(D)重合開始剤との関連において述べれば、重量比で、(D)重合開始剤:(B)式(I)で表される化合物=200:1〜1:200であることが好ましく、50:1〜1:50であることがより好ましく、20:1〜1:5であることがさらに好ましい。
【0116】
〔他の増感剤〕
本発明においては、前記した式(I)で表される化合物に加え、公知の増感剤を本発明の効果を損なわない限りにおいて併用することができるが、本発明のインク組成物は、他の増感剤を含有しないことが好ましい。
本発明のインク組成物が他の増感剤を含有する場合、その含有量は、重量比で、式(I)で表される化合物に対して、式(I)で表される化合物:他の増感剤=1:5〜100:1であることが好ましく、1:1〜100:1であることがより好ましく、2:1〜100:1であることがさらに好ましい。
併用可能な他の増感剤の例としては、ベンゾフェノン、チオキサントン、イソプロピルチオキサントン、アントラキノン、3−アシルクマリン誘導体、ターフェニル、スチリルケトン、3−(アロイルメチレン)チアゾリン、ショウノウキノン、エオシン、ローダミン、エリスロシン、α−(p−ジメチルアミノベンジリデン)ケトンなどが挙げられる。
【0117】
併用可能な他の増感剤のさらなる例は、下記に示す通りである。
(1)チオキサントン
チオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−ドデシルチオキサントン、2,4−ジ−エチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、1−メトキシカルボニルチオキサントン、2−エトキシカルボニルチオキサントン、3−(2−メトキシエトキシカルボニル)チオキサントン、4−ブトキシカルボニルチオキサントン、3−ブトキシカルボニル−7−メチルチオキサントン、1−シアノ−3−クロロチオキサントン、1−エトキシカルボニル−3−クロロチオキサントン、1−エトキシカルボニル−3−エトキシチオキサントン、1−エトキシカルボニル−3−アミノチオキサントン、1−エトキシカルボニル−3−フェニルスルフリルチオキサントン、3,4−ジ[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシカルボニル]チオキサントン、1−エトキシカルボニル−3−(1−メチル−1−モルホリノエチル)チオキサントン、2−メチル−6−ジメトキシメチルチオキサントン、2−メチル−6−(1,1−ジメトキシベンジル)チオキサントン、2−モルホリノメチルチオキサントン、2−メチル−6−モルホリノメチルチオキサントン、n−アリルチオキサントン−3,4−ジカルボキシミド、n−オクチルチオキサントン−3,4−ジカルボキシイミド、N−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)チオキサントン−3,4−ジカルボキシイミド、1−フェノキシチオキサントン、6−エトキシカルボニル−2−メトキシチオキサントン、6−エトキシカルボニル−2−メチルチオキサントン、チオキサントン−2−ポリエチレングリコールエステル、2−ヒドロキシ−3−(3,4−ジメチル−9−オキソ−9H−チオキサントン−2−イルオキシ)−N,N,N−トリメチル−1−プロパンアミニウムクロリド;
【0118】
(2)ベンゾフェノン
ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、4−メトキシベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4,4’−ジメチルベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−(4−メチルチオフェニル)ベンゾフェノン、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、メチル−2−ベンゾイルベンゾアート、4−(2−ヒドロキシエチルチオ)ベンゾフェノン、4−(4−トリルチオ)ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−N,N,N−トリメチルベンゼンメタンアミニウムクロリド、2−ヒドロキシ−3−(4−ベンゾイルフェノキシ)−N,N,N−トリメチル−1−プロパンアミニウムクロリド一水和物、4−(13−アクリロイル−1,4,7,10,13−ペンタオキサトリデシル)ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−N,N−ジメチル−N−[2−(1−オキソ−2−プロペニル)オキシ]エチルベンゼンメタンアミニウムクロリド;
【0119】
(3)3−アシルクマリン
3−ベンゾイルクマリン、3−ベンゾイル−7−メトキシクマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジプロポキシクマリン、3−ベンゾイル−6,8−ジクロロクマリン、3−ベンゾイル−6−クロロクマリン、3,3’−カルボニルビス〔5,7−ジ(プロポキシ)クマリン〕、3,3’−カルボニルビス(7−メトキシクマリン)、3,3’−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)、3−イソブチロイルクマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジメトキシクマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジエトキシクマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジブトキシクマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジ(メトキシエトキシ)クマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジ(アリルオキシ)クマリン、3−ベンゾイル−7−ジメチルアミノクマリン、3−ベンゾイル−7−ジエチルアミノクマリン、3−イソブチロイル−7−ジメチルアミノクマリン、5,7−ジメトキシ−3−(1−ナフトイル)クマリン、5,7−ジメトキシ−3−(1−ナフトイル)クマリン、3−ベンゾイルベンゾ〔f〕クマリン、7−ジエチルアミノ−3−チエノイルクマリン、3−(4−シアノベンゾイル)−5,7−ジメトキシクマリン;
【0120】
(4)3−(アロイルメチレン)チアゾリン
3−メチル−2−ベンゾイルメチレン−β−ナフトチアゾリン、3−メチル−2−ベンゾイルメチレンベンゾチアゾリン、3−エチル−2−プロピオニルメチレン−β−ナフトチアゾリン;
【0121】
(5)アントラセン
9,10−ジメトキシアントラセン、9,10−ジエトキシアントラセン、9,10−ジメトキシ−2−エチルアントラセン、
【0122】
(6)他のカルボニル化合物
アセトフェノン、3−メトキシアセトフェノン、4−フェニルアセトフェノン、ベンジル、2−アセチルナフタレン、2−ナフトアルデヒド、9,10−ナフトラキノン、9−フルオレノン、ジベンゾスベロン、キサントン、2,5−ビス(4−ジエチルアミノベンジリデン)シクロペンタノン、2−(4−ジメチルアミノベンジリデン)インダン−1−オン、3−(4−ジメチルアミノフェニル)−1−インダン−5−イルプロペノン、3−フェニルチオフタルイミド、N−メチル−3,5−ジ(エチルチオ)フタルイミド。
【0123】
(C)重合性化合物
本発明のインク組成物は、(C)重合性化合物を含有する。
本発明に用いることができる重合性化合物は、付加重合性化合物であることが好ましく、ラジカル重合性化合物又はカチオン重合性化合物であることがより好ましく、ラジカル重合性化合物であることがさらに好ましく、エチレン性不飽和化合物であることが特に好ましい。
また、本発明に用いることができる重合性化合物は、1種単独で用いても、2種以上を用いてもよく、また、例えば、ラジカル重合性化合物とカチオン重合性化合物とを併用してもよい。
<ラジカル重合性化合物>
本発明において、ラジカル重合性化合物としては、エチレン性不飽和結合を有する化合物(エチレン性不飽和化合物)を使用することが好ましい。具体的には、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド化合物、ビニル化合物(例えば、脂肪族ビニル化合物、芳香族ビニル化合物、N−ビニル化合物)が例示できる。
なお、本発明において、「(メタ)アクリル酸」との記載は、「アクリル酸」及び「メタクリル酸」のいずれか一方、又は両方を指す省略的な表記であり、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリレート等の表記も同様である。
これらの中でもエチレン性不飽和結合を有する化合物としては、各種(メタ)アクリレートモノマーが好ましく使用でき、アクリレートモノマーがより好ましい。
(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、イソアミル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソアミルスチル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル−ジグリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイキシエチル−2−ヒドロキシエチル−フタル酸、ラクトン変性可とう性(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート等の単官能モノマーが挙げられる。
【0124】
また、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのEO(エチレンオキサイド)付加物ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのPO(プロピレンオキサイド)付加物ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の多官能モノマーが挙げられる。
この他、重合性のオリゴマー類も、モノマー同様に配合可能である。重合性オリゴマーとしては、エポキシアクリレート、脂肪族ウレタンアクリレート、芳香族ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、直鎖アクリルオリゴマー等が挙げられる。
【0125】
本発明において、ラジカル重合性化合物として、環状構造を有するラジカル重合性モノマーを使用することが好ましく、環状構造を有するラジカル重合性モノマーとして、脂肪族環状構造を有する単官能ラジカル重合性モノマー及び/又は芳香族単官能ラジカル重合性モノマーを使用することが好ましい。
脂肪族環状構造を有する単官能ラジカル重合性モノマー及び芳香族単官能ラジカル重合性モノマーは、以下の式(A1)で表される単官能ラジカル重合性モノマーであることが好ましい。なお、脂肪族環状構造を有する単官能ラジカル重合性モノマーとは、ヘテロ原子を含んでもよい脂環式炭化水素基を有する単官能ラジカル重合性モノマーであり、芳香族単官能ラジカル重合性モノマーとは、芳香族基を有する単官能ラジカル重合性モノマーである。また、単官能ラジカル重合性モノマーは、重合性のあるエチレン性不飽和結合を1つのみ有する化合物であり、重合性のあるエチレン性不飽和結合を有する基としては、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、ビニル基、ビニルオキシ基が好ましく例示できる。
なお、脂肪族環状構造を有するラジカル重合性モノマーは、脂肪族環状構造の他にラジカル重合性基を有しており、脂肪族環状構造内に有するエチレン性不飽和結合は、重合性のあるエチレン性不飽和結合に該当しないものとする。
【0126】
【化18】

【0127】
上記式(A1)において、R1は水素原子、ハロゲン原子、又は、炭素数1〜4のアルキル基を表し、X1は、単結合、エーテル結合(−O−)、エステル結合(−C(O)O−又は−OC(O)−)、アミド結合(―C(O)NH−、又は、−NHC(O)−)、カルボニル結合(−C(O)―)、分岐を有していてもよい炭素数20以下のアルキレン基、又はこれらを組み合わせた第2の二価の連結基が結合してもよく、第1の二価の連結基のみ又は第2の二価の連結基を有する場合はエーテル結合、エステル結合及び炭素数20以下のアルキレン基を有するものが好ましい。
2は単環芳香族基及び多環芳香族基を含む芳香族基又は脂環式炭化水素基であり、前記芳香族基及び脂環式炭化水素基は、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アミノ基、シロキサン基、炭素数30以下の置換基を有していてもよく、前記芳香族基又は脂環炭化水素基の環状構造には、O、N、S等のヘテロ原子を含んでいてもよい。
【0128】
上記式(A1)において、R1は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましく、より好ましくは水素原子又はメチル基であり、特に好ましくは水素原子である。
また、X1はエステル結合(−C(O)O−)を有するものであることが好ましい。
すなわち、本発明において、脂肪族環状構造を有する単官能ラジカル重合性モノマー及び芳香族単官能ラジカル重合性モノマーは、アクリレート(アクリル酸エステル)又はメタクリレート(メタクリル酸エステル)であることが好ましい。
【0129】
これらの脂肪族環状構造を有する単官能ラジカル重合性モノマー及び芳香族単官能ラジカル重合性モノマーの含有量は、インク組成物A及びインク組成物Bの1.0〜80.0重量%であることが好ましい。含有量が上記範囲内であると、良好な硬化性及び硬化膜の柔軟性を得ることができるので好ましい。より好ましくは、5.0〜70.0重量%であり、さらに好ましくは10.0〜60.0重量%である。
なお、脂肪族環状構造を有する単官能ラジカル重合性モノマーと、芳香族単官能ラジカル重合性モノマーとを併用することもできるし、いずれか一方のみを用いることも好ましい。
【0130】
〔脂肪族環状構造を有する単官能ラジカル重合性モノマー〕
式(A1)のR2は脂環式炭化水素基でもよい。また、O、N、Sなどのヘテロ原子を含む脂環式炭化水素基を有する基でもよい。
脂環式炭化水素基は、炭素数3〜12のシクロアルカン類を有する基でもよい。
上記O、N、Sなどのヘテロ原子を含む脂環式炭化水素基は、具体的には、ピロリジン、ピラゾリジン、イミダゾリジン、イソオキサゾリジン、イソチアゾリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルフォリン、チオモルフォリン、ジアゾール、トリアゾール、テトラゾールから1つ以上の水素を除いた基が例示できる。
これらの脂環式炭化水素基及びヘテロ環を有する脂環式炭化水素基は、置換基を有していてもよく、該置換基としては、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アミノ基、チオール基、シロキサン基、さらに置換基を有していてもよい総炭素数30以下の炭化水素基若しくはO、N、S等のヘテロ原子を含む複素環基、又は、二価の置換基としてオキシ基(=O)であることが好ましい。
【0131】
脂肪族環状構造を有する単官能ラジカル重合性モノマーは、下記式(A2)で表されるノルボルネン骨格を有する化合物であることがより好ましい。
【0132】
【化19】

【0133】
式(A2)中、R1は水素原子、ハロゲン原子、又は、炭素数1〜4のアルキル基を表し、X1は二価の連結基を表し、エーテル基(−O−)、エステル基(−C(O)O−若しくは−OC(O)−)、アミド基(−C(O)NR’−)、カルボニル基(−C(O)−)、イミノ基(−NR’−)、置換基を有していてもよい炭素数1〜15のアルキレン基、又は、これらを2以上組み合わせた二価の基であることが好ましい。なお、R’は水素原子、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状若しくは環状アルキル基、又は、炭素数6〜20のアリール基を表す。R2は置換基を表し、rは0〜5の整数を表し、qは環状炭化水素構造を表し、前記環状炭化水素構造として炭化水素結合以外にカルボニル結合(−C(O)−)及び/又はエステル結合(−C(O)O−)を含んでいてもよく、r個存在するR2はそれぞれ同じであっても、異なっていてもよく、また、ノルボルネン骨格中の一炭素原子をエーテル結合(−O−)及び/又はエステル結合(−C(O)O−)で置換してもよい。
式(A2)中、R1は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましく、より好ましくは水素原子又はメチル基である。
【0134】
式(A2)におけるX1のビニル基と結合する端部は、X1のカルボニル炭素とビニル基とが結合するエステル基又はアミド基であることが好ましく、より好ましくはエステル結合である。特に、H2C=C(R1)−C(O)O−の構造を有するものであることが好ましい。その場合、ノルボルネン骨格と結合するX1の他の部分は、単結合であっても、前記の基から任意に選択したものであってもよい。
1及びX1を含むビニル部分(H2C=C(R1)−X1−)は、脂環式炭化水素構造上の任意の位置で結合することができる。なお、「脂環式炭化水素構造上」とは、式(A2)におけるノルボルネン構造上及びqを含む環状炭化水素構造上を指す。
また、着色剤との親和性を向上させるという観点から、式(A2)におけるX1の脂環式炭化水素構造と結合する端部は、酸素原子であることが好ましく、エーテル性酸素原子であることがより好ましく、式(A2)におけるX1は−C(O)O(CH2CH2O)p−(pは1又は2を表す。)であることがさらに好ましい。
【0135】
式(A2)におけるR2はそれぞれ独立に置換基を表し、脂環式炭化水素構造上の任意の位置で結合することができる。また、r個存在するR2はそれぞれ同じであっても、異なっていてもよい。
r個存在するR2は、それぞれ独立に一価又は多価の置換基であってもよく、一価の置換基としてヒドロキシル基、置換若しくは無置換のアミノ基、チオール基、シロキサン基、さらに置換基を有していてもよい総炭素数30以下の炭化水素基若しくは複素環基、又は、二価の置換基としてオキシ基(=O)であることが好ましい。
2の置換数rは0〜5の整数を表す。
【0136】
式(A2)におけるqは、環状炭化水素構造を表し、その両端はノルボルネン骨格の任意の位置で置換していてもよく、単環構造であっても、多環構造であってもよく、また、前記環状炭化水素構造として炭化水素結合以外に、カルボニル結合(−C(O)−)及び/又はエステル結合(−C(O)O−)を含んでいてもよい。
【0137】
前記式(A2)で表されるモノマーとしては、式(A3)又は式(A4)で表されるモノマーであることが好ましい。なお、式(A4)中の環状炭化水素構造中の不飽和結合は、ラジカル重合性が低く、本発明において、式(A4)で表される化合物は単官能ラジカル重合性モノマーであるとする。
【0138】
【化20】

【0139】
式(A3)及び式(A4)中、R1は水素原子、ハロゲン原子、又は、炭素数1〜4のアルキル基を表し、X1は二価の連結基を表し、R3及びR4はそれぞれ独立に置換基を表し、s及びtはそれぞれ独立に0〜5の整数を表し、また、s個存在するR3及びt個存在するR4はそれぞれ同じであっても、異なっていてもよい。
【0140】
式(A3)又は式(A4)におけるR1及びX1は、式(A2)におけるR1及びX1と同義であり、好ましい範囲も同様である。
式(A3)又は式(A4)におけるR1及びX1を含むビニル部分は、式(A3)又は式(A4)における下記に示す各脂環式炭化水素構造上の任意の位置で結合することができる。
【0141】
【化21】

【0142】
式(A3)又は式(A4)におけるR3及びR4はそれぞれ独立に置換基を表し、式(A3)、又は式(A4)における上記各脂環式炭化水素構造上の任意の位置で結合することができる。R3及びR4における置換基は、式(A2)のR2における置換基と同義であり、好ましい範囲も同様である。
式(A3)又は式(A4)におけるs及びtはそれぞれ独立に0〜5の整数を表し、また、s個存在するR3及びt個存在するR4はそれぞれ同じであっても、異なっていてもよい。
【0143】
式(A2)で表されるモノマーとして、単官能アクリレートの好ましい具体例を以下に示す。
なお、下記例示化合物の一部において、炭化水素鎖を炭素(C)及び水素(H)の記号を省略した簡略構造式で記載する。
【0144】
【化22】

【0145】
式(A2)で表されるモノマーとして、単官能メタクリレートの好ましい具体例を以下に示す。
【0146】
【化23】

【0147】
式(A2)で表されるモノマーとして、単官能アクリルアミドの好ましい具体例を以下に示す。
【0148】
【化24】

【0149】
〔芳香族単官能ラジカル重合性モノマー〕
芳香族単官能ラジカル重合性モノマーは、以下の式(A5)で表される重合性モノマーであることが好ましい。
【0150】
【化25】

(式(A5)中、R1は水素原子、ハロゲン原子、又は、炭素数1〜4のアルキル基を表し、X1は二価の連結基を表し、R5は置換基を表し、uは0〜5の整数を表し、また、u個存在するR5はそれぞれ同じであっても、異なっていてもよく、複数のR5がお互いに結合して環を形成してもよく、その環は芳香環であってもよい。)
【0151】
式(A5)中、R1として好ましくは、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であり、より好ましくは水素原子又はメチル基であり、さらに好ましくは水素原子である。
1は式(A2)におけるX1と同義であり、その好ましい範囲も同じである。
u個存在するR5は、それぞれ独立に一価又は多価の置換基であってもよく、一価の置換基としてヒドロキシル基、置換若しくは無置換のアミノ基、チオール基、シロキサン基、又は、さらに置換基を有していてもよい総炭素数30以下の炭化水素基若しくは複素環基であることが好ましい。
【0152】
式(A5)中、複数のR5は、お互いに結合して環を形成している場合には、芳香環を形成していることが好ましい。
すなわち、式(A5)中、芳香族基として好ましいものは、単環芳香族であるベンゼンから1つ以上の水素を除いた基(フェニル基、フェニレン基等)のほか、2〜4つの環を有する多環芳香族基であり、限定されるものではない。具体的には、ナフタレン、アントラセン、1H−インデン、9H−フルオレン、1H−フェナレン、フェナントレン、トリフェニレン、ピレン、ナフタセン、テトラフェニレン、ビフェニレン、as−インダセン、s−インダセン、アセナフチレン、フルオランテン、アセフェナントリレン、アセアントリレン、クリセン、プレイアンデン等から1つ以上の水素原子を除いた基が例示できる。
【0153】
これらの芳香族基は、O、N、S等のヘテロ原子を含む芳香族複素環基であってもよい。具体的には、フラン、チオフェン、1H−ピロール、2H−ピロール、1H−ピラゾール、1H−イミダゾール、イソオキサゾール、イソチアゾール、2H−ピラン、2H−チオピラン、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール等の単環芳香族複素環化合物から、少なくとも1つの水素原子を除いた基が挙げられる。
【0154】
また、チアントレン、イソベンゾフラン、イソクロメン、4H−クロメン、キサンテン、フェノキサチイン、インドリジン、イソインドール、インドール、インダゾール、プリン、4H−キノリジン、イソキノリン、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、カルバゾール、β−カルボリン、フェナントリジン、アクリジン、ペリミジン、フェナントロリン、フェナジン、フェノチアジン、フェノキサジン、ピロリジン、等の多環芳香族複素環化合物から、少なくとも1つの水素原子を除いた基が挙げられる。
【0155】
上記の芳香族基は、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アミノ基、チオール基、シロキサン基、炭素数30以下の置換基を1又は2以上有していてもよい。例えば無水フタル酸や無水フタルイミドのように芳香族基が有する2以上の置換基でO、N、S等のヘテロ原子を含む環状構造を形成してもよい。
【0156】
本発明において、多環芳香族基としてさらに好ましいものは、2〜3つの環を有する多環芳香族基であり、特に好ましいものは、ナフチル基である。
【0157】
芳香族単官能ラジカル重合性モノマーの具体例として[L−1]〜[L−67]が好ましく挙げられるが、下記に限定されたものではない。
【0158】
【化26】

【0159】
【化27】

【0160】
【化28】

【0161】
【化29】

【0162】
【化30】

【0163】
【化31】

【0164】
(カチオン重合性化合物)
本発明に用いることができるカチオン重合性化合物としては、後述するカチオン重合開始剤から発生するカチオン重合開始種により重合反応を開始し、硬化する化合物であれば特に制限はなく、カチオン重合性モノマーとして知られる各種公知のカチオン重合性のモノマーを使用することができる。カチオン重合性モノマーとしては、例えば、特開平6−9714号、特開2001−31892号、同2001−40068号、同2001−55507号、同2001−310938号、同2001−310937号、同2001−220526号などの各公報に記載されているエポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、オキセタン化合物などが好ましく挙げられる。また、カチオン重合性化合物としては、例えば、カチオン重合系の光硬化性樹脂が知られており、最近では400nm以上の可視光波長域に増感された光カチオン重合系の光硬化性樹脂も、例えば特開平6−43633号、特開平8−324137号の各公報等に公開されている。
【0165】
(D)重合開始剤
本発明のインク組成物は、(D)重合開始剤を含有することが好ましい。
本発明で用いることができる重合開始剤としては、公知の重合開始剤を使用することができる。本発明に用いることができる重合開始剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、ラジカル重合開始剤とカチオン重合開始剤とを併用してもよい。
本発明に用いることのできる重合開始剤は、外部エネルギーを吸収して重合開始種を生成する化合物である。重合を開始するために使用される外部エネルギーは、熱及び活性放射線に大別され、それぞれ、熱重合開始剤及び光重合開始剤が使用される。活性放射線としては、γ線、β線、電子線、紫外線、可視光線、赤外線が例示できる。
本発明で用いることができる重合開始剤としては、光重合開始剤であることが好ましく、特に光ラジカル重合開始剤であることが好ましい。
【0166】
(ラジカル重合開始剤)
本発明において、光重合開始剤として、アシルホスフィンオキサイド化合物及び/又はα−アミノケトン化合物を含有することが好ましい。
本発明において、光重合開始剤としては、アシルホスフィンオキサイド化合物及びα−ヒドロキシアセトフェノン化合物以外にも公知のラジカル重合開始剤を併用して使用することができる。
本発明に用いることのできる光重合開始剤は、活性放射線の照射により重合開始種を生成する化合物である。活性放射線としては、γ線、β線、電子線、紫外線、可視光線、赤外線が例示できるが、装置コストや操作上の安全性の観点から、紫外線又は可視光線が好ましい。
【0167】
本発明において、上記式(I)で表される化合物と併用して、重合開始剤として、アシルホスフィンオキサイド化合物及び/又はα−アミノアセトフェノン化合物を使用することにより、硬化性を高めることができる。
また、本発明において、光重合開始剤として、少なくとも一種のアシルホスフィンオキサイド化合物及び、少なくとも一種のα−アミノアセトフェノン化合物を併用することがより好ましい。
好ましく用いることができるアシルホスフィンオキサイド化合物及びα−アミノアセトフェノン化合物は以下の通りである。
【0168】
<アシルホスフィンオキサイド化合物>
アシルホスフィンオキサイド化合物としては、下記式(2)又は下記式(3)で表される化合物であることが好ましい。
【0169】
【化32】

【0170】
前記式(2)中のR1及びR2は、それぞれ独立に脂肪族基、芳香族基、脂肪族オキシ基、芳香族オキシ基、複素環基を表し、R3は、脂肪族基、芳香族基、複素環基を表す。前記R1とR2は結合して5員環乃至9員環を形成してもよい。前記環構造は、環構造中に酸素原子、窒素原子、硫黄原子等を有する複素環であってもよい。
前記R1、R2又はR3で表される脂肪族基は、例えば、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基、置換アルキニル基、アラルキル基、又は置換アラルキル基等が挙げられ、中でも、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アラルキル基、又は置換アラルキル基が好ましく、アルキル基、置換アルキル基が特に好ましい。また、前記脂肪族基は、環状脂肪族基でも鎖状脂肪族基でもよい。また、鎖状脂肪族基は分岐を有していてもよい。
前記アルキル基としては、直鎖状、分岐状、環状のアルキル基が挙げられ、該アルキル基の炭素原子数としては、1以上30以下が好ましく、1以上20以下がより好ましい。置換アルキル基のアルキル部分の炭素原子数の好ましい範囲については、アルキル基の場合と同様である。前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、ネオペンチル基、イソプロピル基、イソブチル基等が挙げられる。
前記置換アルキル基の置換基としては、−COOH(カルボキシル基)、−SO3H(スルホ基)、−CN(シアノ基)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子)、−OH(ヒドロキシ基)、炭素数30以下のアルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基)、炭素数30以下のアルキルスルホニルアミノカルボニル基、アリールスルホニルアミノカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、炭素数30以下のアシルアミノスルホニル基、炭素数30以下のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、ベンジルオキシ基、フェノキシエトキシ基、フェネチルオキシ基等)、炭素数30以下のアルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、メチルチオエチルチオエチル基等)、炭素数30以下のアリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、p−トリルオキシ基、1−ナフトキシ基、2−ナフトキシ基等)、ニトロ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、炭素数30以下のアシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基等)、炭素数30以下のアシル基(例えば、アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基等)、カルバモイル基(例えば、カルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、モルホリノカルボニル基、ピペリジノカルボニル基等)、スルファモイル基(例えば、スルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基、モルホリノスルホニル基、ピペリジノスルホニル基等)、炭素数30以下のアリール基(例えば、フェニル基、4−クロロフェニル基、4−メチルフェニル基、α−ナフチル基等)、置換アミノ基(例えば、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアリールアミノ基、アシルアミノ基等)、置換ウレイド基、置換ホスホノ基、複素環基等が挙げられる。ここで、カルボキシル基、スルホ基、ヒドロキシ基、ホスホノ基は、塩の状態であってもよい。その際、塩を形成するカチオンは、陽イオンを形成し得る基であり、有機カチオン性化合物、遷移金属配位錯体カチオン(特許2791143号公報に記載の化合物等)又は金属カチオン(例えば、Na+、K+、Li+、Ag+、Fe2+、Fe3+、Cu+、Cu2+、Zn2+、Al3+等)が好ましい。
【0171】
前記アルケニル基としては、直鎖状、分岐状、環状のアルケニル基が挙げられ、該アルケニル基の炭素原子数としては、2以上30以下が好ましく、2以上20以下がより好ましい。また、該アルケニル基は、置換基を有する置換アルケニル基、無置換のアルケニル基のいずれであってもよく、置換アルケニル基のアルケニル部分の炭素原子数の好ましい範囲はアルケニル基の場合と同様である。前記置換アルケニル基の置換基としては、前記置換アルキル基の場合と同様の置換基が挙げられる。
前記アルキニル基としては、直鎖状、分岐状、環状のアルキニル基が挙げられ、該アルキニル基の炭素原子数としては、2以上30以下が好ましく、2以上20以下がより好ましい。また、該アルキニル基は、置換基を有する置換アルキニル基、無置換のアルキニル基のいずれであってもよく、置換アルキニル基のアルキニル部分の炭素原子数の好ましい範囲はアルキニル基の場合と同様である。置換アルキニル基の置換基としては、前記置換アルキル基の場合と同様の置換基が挙げられる。
前記アラルキル基としては、直鎖状、分岐状、環状のアルキル側鎖を有するアラルキル基が挙げられ、該アラルキル基の炭素原子数としては、7以上35以下が好ましく、7以上25以下がより好ましい。また、該アラルキル基は、置換基を有する置換アラルキル基、無置換のアラルキル基のいずれであってもよく、置換アラルキル基のアラルキル部分の炭素原子数の好ましい範囲はアラルキル基の場合と同様である。置換アラルキル基の置換基としては、前記置換アルキル基の場合と同様の置換基が挙げられる。また、アラルキル基のアリール部分が置換基を有していてもよく、該置換基としては前記置換アルキル基の場合と同様の置換基及び炭素数30以下の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基が例示できる。
【0172】
前記R1、R2又はR3で表される芳香族基としては、例えば、アリール基、置換アリール基が挙げられる。アリール基の炭素原子数としては、6以上30以下が好ましく、6以上20以下がより好ましい。置換アリール基のアリール部分の好ましい炭素原子数の範囲としては、アリール基と同様である。前記アリール基としては、例えば、フェニル基、α−ナフチル基、β−ナフチル基等が挙げられる。置換アリール基の置換基としては、前記置換アルキル基の場合と同様の置換基及び炭素数30以下の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基が挙げられる。
前記R1又はR2で表される脂肪族オキシ基としては、炭素数1以上30以下のアルコキシ基が好ましく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、オクチルオキシ基、フェノキシエトキシ基等が挙げられる。但し、これらに限定されるものではない。
前記R1又はR2で表される芳香族オキシ基としては、炭素数6以上30以下のアリールオキシ基が好ましく、例えば、フェノキシ基、メチルフェニルオキシ基、クロロフェニルオキシ基、メトキシフェニルオキシ基、オクチルオキシフェニルオキシ基等が挙げられる。但し、これらに限定されるものではない。
前記R1、R2又はR3で表される複素環基としては、N、O又はS原子を含む複素環基が好ましく、例えば、ピリジル基、フリル基、チエニル基、イミダゾリル基、ピロリル基等が挙げられる。
【0173】
【化33】

【0174】
前記式(3)中のR4及びR6は、それぞれ独立にアルキル基、アリール基、複素環基を表し、R5は、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環基を表す。
前記R4、R5又はR6で表される、アルキル基、アリール基、複素環基、アルコキシ基及びアリールオキシ基は、置換基を有していてもよく、該置換基としては、前記式(2)における場合と同様の置換基が挙げられる。
前記式(3)におけるアルキル基、アリール基、複素環基、アルコキシ基及びアリールオキシ基としては、前記式(2)における場合と同義である。
【0175】
前記式(2)で表される化合物は、下記式(4)で表される化合物であることがより好ましい。
【0176】
【化34】

【0177】
式(4)中、R7及びR8はそれぞれ独立に、フェニル基、メトキシ基、又は、イソプロポキシ基を表し、R9は2,4,6−トリメチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、2−メチルフェニル基(o−トルイル基)、イソブチル基、又は、t−ブチル基を表す。
【0178】
前記式(3)で表される化合物は、下記式(5)で表される化合物であることがより好ましい。
【0179】
【化35】

【0180】
式(5)中、R10及びR12はそれぞれ独立に、2,4,6−トリメチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、又は、2,6−ジメトキシフェニル基を表し、R11はフェニル基、又は、2,4,4−トリメチルペンチル基を表す。
【0181】
前記式(2)又は(3)で表されるアシルホスフィンオキサイド化合物としては、例えば、特公昭63−40799号公報、特公平5−29234号公報、特開平10−95788号公報、特開平10−29997号公報等に記載の化合物を挙げることできる。
具体的なアシルホスフィンオキサイド化合物の例としては、以下に示す化合物(例示化合物(P−1)乃至(P−26))が挙げられるが、本発明においては、これらに限定されるものではない。
【0182】
【化36】

【0183】
【化37】

【0184】
アシルホスフィンオキサイド化合物としては、モノアシルホスフィンオキサイド化合物及びビスアシルホスフィンオキサイド化合物等を使用することができ、モノアシルホスフィンオキサイド化合物としては、公知のモノアシルホスフィンオキサイド化合物を使用することができる。例えば特公昭60−8047号公報、特公昭63−40799号公報に記載のモノアシルホスフィンオキサイド化合物が挙げられる。具体例としては、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスインオキサイド、イソブチリル−メチルホスフィン酸メチルエステル、イソブチリル−フェニルホスフィン酸メチルエステル、ピバロイル−フェニルホスフィン酸メチルエステル、2−エチルヘキサノイル−フェニルホスフィン酸メチルエステル、ピバロイル−フェニルホスフィン酸イソプロピルエステル、p−トルイル−フェニルホスフィン酸メチルエステル、o−トルイル−フェニルホスフィン酸メチルエステル、2,4−ジメチルベンゾイル−フェニルホスフィン酸メチルエステル、p−三級ブチルベンゾイル−フェニルホスフィン酸イソプロピルエステル、アクリロイル−フェニルホスフィン酸メチルエステル、イソブチリル−ジフェニルホスフィンオキサイド、2−エチルヘキサノイル−ジフェニルホスフィンオキサイド、o−トルイル−ジフェニルホスフィンオキサイド、p−三級ブチルベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキサイド、3−ピリジルカルボニル−ジフェニルホスフィンオキサイド、アクリロイル−ジフェニルホスフィンオキサイド、ベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキサイド、ピバロイル−フェニルホスフィン酸ビニルエステル、アジポイル−ビス−ジフェニルホスフィンオキサイド、ピバロイル−ジフェニルホスフィンオキサイド、p−トルイル−ジフェニルホスフィンオキサイド、4−(三級ブチル)−ベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキサイド、2−メチルベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキサイド、2−メチル−2−エチルヘキサノイル−ジフェニルホスフィンオキサイド、1−メチル−シクロヘキサノイル−ジフェニルホスフィンオキサイド、ピバロイル−フェニルホスフィン酸メチルエステル及びピバロイル−フェニルホスフィン酸イソプロピルエステル等が挙げられる。
【0185】
ビスアシルホスフィンオキサイド化合物としては公知のビスアシルホスフィンオキサイド化合物が使用できる。例えば特開平3−101686号、特開平5−345790号、特開平6−298818号の各公報に記載のビスアシルホスフィンオキサイド化合物が挙げられる。具体例としては、ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−4−エトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−4−プロピルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−2−ナフチルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−1−ナフチルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−4−クロルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−2,4−ジメトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−デシルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−4−オクチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロル−3,4,5−トリメトキシベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロル−3,4,5−トリメトキシベンゾイル)−4−エトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2−メチル−1−ナフトイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2−メチル−1−ナフトイル)−4−エトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2−メチル−1−ナフトイル)−2−ナフチルホスフィンオキサイド、ビス(2−メチル−1−ナフトイル)−4−プロピルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2−メチル−1−ナフトイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2−メトキシ−1−ナフトイル)−4−エトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2−クロル−1−ナフトイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド等が挙げられる。
【0186】
これらの中でも、本発明において、アシルホスフィンオキサイド化合物としては、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド(IRGACURE 819:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキサイド(DAROCUR TPO:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、LUCIRIN TPO:BASF社製)などが好ましい。
【0187】
<α−アミノアセトフェノン化合物>
α−アミノアセトフェノン化合物は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を使用することもできる。
該α−アミノアセトフェノン化合物としては下記の式(1)で表される化合物を好ましく用いることができる。
【0188】
【化38】

【0189】
式中X1は下記(a)、(b)又は(c)で表される基を表す。
【0190】
【化39】

式中pは0又は1である。
【0191】
【化40】

式中qは0乃至3の整数であり、rは0又は1である。
【0192】
【化41】

【0193】
式中、Yは水素原子、ハロゲン原子、OH基、炭素数1以上12以下のアルキル基(なお、特に断りのない場合、アルキル基とは直鎖状又は分岐状のアルキル基を意味する。本発明において、同様。)、炭素数1以上12以下のアルコキシ基、芳香環基、又は、複素環基を表す。前記芳香環基としては、フェニル基、又は、ナフチル基が好ましく例示できる。また、前記複素環基としては、フリル基、チエニル基、又は、ピリジル基が好ましく例示できる。
Yにおけるアルキル基、アルコキシ基、芳香環基、及び、複素環基は置換基を有していてもよい。
Yにおけるアルキル基が有していてもよい置換基としては、OH基、ハロゲン原子、−N(X102(X10は水素原子、炭素数1以上8以下のアルキル基、炭素数3以上5以下のアルケニル基、炭素数7以上9以下のフェニルアルキル基、炭素数1以上4以下のヒドロキシアルキル基、もしくはフェニル基を表す。)、炭素数1以上12以下のアルコキシ基、−COOR(Rは炭素数1以上18以下のアルキル基を表す。)、−CO(OCH2OCH2nOCH3(nは1以上20以下の整数を表す。)、又は、−OCOR(Rは炭素数1以上4以下のアルキル基を表す。)が挙げられる。
Yにおけるアルコキシ基が有していてもよい置換基としては、−COOR(Rは炭素数1以上18以下のアルキル基を表す。)、又は、−CO(OCH2CH2nOCH3(nは1以上20以下の整数を表す。)が挙げられる。
Yにおける芳香環基又は複素環基が有していてもよい置換基としては、−(OCH2CH2nOH(nは1以上20以下の整数を表す。)、−(OCH2CH2nOCH3(nは1以上20以下の整数を表す。)、炭素数1以上8以下のアルキルチオ基、フェノキシ基、−COOR(Rは炭素数1以上18以下のアルキル基を表す。)、−CO(OCH2CH2nOCH3(nは1以上20以下の整数を表す。)、フェニル基、又は、ベンジル基が挙げられる。
これら置換基は、可能であれば2以上有していてもよく、可能であれば、置換基をさらに置換していてもよい。
また、式中、X12は水素原子、炭素数1以上8以下のアルキル基、又は、フェニル基を表す。X13、X14及びX15は互いに独立して水素原子、又は、炭素数1以上4以下のアルキル基を表す。X13とX14とは架橋して炭素数3以上7以下のアルキレン基を形成してもよい。
【0194】
式中X2は前記X1と同じ基、炭素数5もしくは6のシクロアルキル基、炭素数1以上12以下のアルキル基、又は、フェニル基を表す。
2におけるアルキル基、及び、フェニル基は置換基を有していてもよい。
2におけるアルキル基が有していてもよい置換基としては、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、フェノキシ基、ハロゲン原子、又は、フェニル基が挙げられる。
2におけるフェニル基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1以上12以下のアルキル基、又は、炭素数1以上4以下のアルコキシ基が挙げられる。
これら置換基は、可能であれば2以上有していてもよく、可能であれば、置換基をさらに置換していてもよい。
また、式中X1とX2とは架橋して次式で表される基を形成してもよい。
【0195】
【化42】

【0196】
式中X3は水素原子、炭素数1以上12以下のアルキル基、炭素数3以上5以下のアルケニル基、炭素数5以上12以下のシクロアルキル基、又は、炭素数7以上9以下のフェニルアルキル基を表す。
3におけるアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、及び、フェニルアルキル基は、置換基を有していてもよく、該置換基としては、OH基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、−CN、又は、−COOR(Rは炭素数1以上4以下のアルキル基を表す。)が挙げられる。
式中X4は炭素数1以上12以下のアルキル基、炭素数3以上5以下のアルケニル基、炭素数5以上12以下のシクロアルキル基、炭素数7以上9以下のフェニルアルキル基、又は、フェニル基を表す。
4におけるアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、フェニルアルキル基、及び、フェニル基は置換基を有していてもよい。
4におけるアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、及び、フェニルアルキル基が有していてもよい置換基としては、OH基、炭素数1以上4以下のアルコキシル基、−CN、又は、−COOR(Rは炭素数1以上4以下のアルキル基を表す。)が挙げられる。また、X4におけるアルキル基が置換基を有する場合、置換されるアルキル基の炭素数は2以上4以下であることが好ましい。
4におけるフェニル基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1以上12以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、又は、−COOR(Rは炭素数1以上4以下のアルキル基を表す。)が挙げられる。
ここで、X2とX4とは架橋して炭素数1以上7以下のアルキレン基、炭素数7以上10以下のフェニルアルキレン基、o−キシリレン基、2−ブテニレン基、又は、炭素数2もしくは3のオキサ−もしくはアザ−アルキレン基を形成してもよい。
また、X3とX4とは架橋して炭素数3以上7以下のアルキレン基を形成してもよい。
3とX4とが架橋して形成するアルキレン基は、置換基として、OH基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、又は、−COOR(Rは炭素数1以上4以下のアルキルを表す。)を有していてもよく、また、結合中に−O−、−S−、−CO−、又は、−N(X16)−(X16は水素原子、炭素数1以上12以下のアルキル基、又は、結合鎖中に1もしくは2以上の−O−を介在させた炭素数1以上12以下のアルキル基、炭素数3以上5以下のアルケニル基、炭素数7以上9以下のフェニルアルキル基、炭素数1以上4以下のヒドロキシアルキル基、−CH2CH2CN、−CH2CH2COOR(Rは炭素数1以上4以下のアルキル基を表す。)、炭素数2以上8以下のアルカノイル基もしくはベンゾイル基を介在させた炭素数1以上12以下のアルキル基を表す。)を介在させてもよい。
式中X5、X6、X7、X8、X9は互いに独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上12以下のアルキル基、炭素数5もしくは6のシクロアルキル基、フェニル基、ベンジル基、ベンゾイル基、−OX17基、−SX18基、−SO−X18基、−SO2−X18基、−N(X19)(X20)基、−NH−SO2−X21基、又は、次式で表される基を表す。
【0197】
【化43】

【0198】
式中、Zは−O−、−S−、−N(X10)−X11−N(X10)−又は次式で表される基を表す。X1、X2、X3及びX4は前記式(1)と同義である。
【0199】
【化44】

【0200】
式中X10は前記と同じ、X11は炭素数が2以上16以下の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基、又はこれらの鎖中に1以上の−O−、−S−、もしくは−N(X10)−が介在する炭素数が2以上16以下の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基(X10は前記と同じ)を表す。
17は水素原子、炭素数1以上12以下のアルキル基、−(CH2CH2O)nH(nは2以上20以下の整数)、炭素数2以上8以下のアルカノイル基、炭素数3以上12以下のアルケニル基、シクロヘキシル基、ヒドロキシシクロヘキシル基、フェニル基、炭素数7以上9以下のフェニルアルキル基、又は、−Si(R4r(R53-r(R4は炭素数1以上8以下のアルキル基、R5はフェニル基、rは1、2もしくは3)を表す。
17におけるアルキル基、及び、フェニル基は置換基を有していてもよい。
17におけるアルキル基が有していてもよい置換基としては、−CN、−OH、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、炭素数3以上6以下のアルケニルオキシ基、−OCH2CH2CN、−CH2CH2COOR(Rは炭素数1以上4以下のアルキル基を表す。)、−COOH、又は、−COOR(Rは炭素数1以上4以下のアルキル基を表す。)が挙げられる。また、X17におけるアルキル基が置換基を有する場合、置換されるアルキル基の炭素数は1以上6以下であることが好ましい。
17におけるフェニル基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1以上12以下のアルキル基、又は、炭素数1以上4以下のアルコキシ基が挙げられる。
18は水素原子、炭素数1以上12以下のアルキル基、炭素数3以上12以下のアルケニル基、シクロヘキシル基、フェニル基、又は、炭素数7以上9以下のフェニルアルキル基を表す。
18におけるアルキル基、及び、フェニル基は置換基を有していてもよい。
18におけるアルキル基が有していてもよい置換基は、−SH、−OH、−CN、−COOR(Rは炭素数1以上4以下のアルキル基を表す。)、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、−OCH2CH2CN、又は、−OCH2CH2COOR(Rは炭素数1以上4以下のアルキルを表す。)が挙げられる。
18におけるフェニル基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1以上12以下のアルキル基、又は、炭素数1以上4以下のアルコキシ基が挙げられる。
19及びX20は互いに独立して水素原子;炭素数1以上12以下のアルキル基;炭素数2以上4以下のヒドロキシアルキル基;炭素数2以上10以下のアルコキシアルキル基;炭素数3以上5以下のアルケニル基;炭素数5以上12以下のシクロアルキル基;炭素数7以上9以下のフェニルアルキル基;フェニル基;ハロゲン原子、炭素数1以上12以下のアルキル基もしくは炭素数1以上4以下のアルコキシ基により置換されたフェニル基;又は炭素数2若しくは3のアルカノイル基;又はベンゾイル基を表す。また、X19とX20とは架橋して炭素数2以上8以下のアルキレン基、又は、OH基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基もしくは−COOR(Rは炭素数1以上4以下のアルキル)基により置換された炭素数2以上8以下のアルキレン基;結合鎖中に−O−、−S−もしくは−N(X16)−を介在させた炭素数2以上8以下のアルキレン基(X16は前記と同じ)を形成してもよい。
21は炭素数1以上18以下のアルキル基;フェニル基;ナフチル基;又は、ハロゲン原子、炭素数1以上12以下のアルキル基もしくは炭素数1以上8以下のアルコキシ基によって置換されたフェニル基もしくはナフチル基を表す。
【0201】
式(1)は式(d)で表されることがより好ましい。
【0202】
【化45】

【0203】
式(d)中、X1及びX2はそれぞれ独立に、メチル基、エチル基、又は、ベンジル基を表し、−NX34はジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基又は、モルフォリノ基を表し、X5は、水素原子、炭素数1以上8以下のアルキル基、炭素数1以上8以下のアルコキシ基、炭素数1以上8以下のアルキルチオ基、ジメチルアミノ基、又は、モルフォリノ基を表す。これらの中でも−NX34はジメチルアミノ基、又は、モルフォリノ基であることがより好ましい。
【0204】
さらに、α−アミノアセトフェノン化合物として、上記式(1)で表される化合物の酸付加物塩を使用することもできる。
また、市販のα−アミノアセトフェノン化合物として、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製からイルガキュア907(IRGACURE 907)、イルガキュア369(IRGACURE 369)、イルガキュア379(IRGACURE 379)の商品名で入手可能な重合開始剤が例示できる。
【0205】
α−アミノアセトフェノン化合物として、具体的には、以下の化合物が例示できる。
例えば、2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ジエチルアミノ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−2−モルホリノ−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−(4−メチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ジメチルアミノ−1−(4−エチルフェニル)−2−メチルプロパン−1−オン、2−ジメチルアミノ−1−(4−イソプロピルフェニル)−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−ブチルフェニル)−2−ジメチルアミノ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ジメチルアミノ−1−(4−メトキシフェニル)−2−メチルプロパン−1−オン、2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)プロパン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン(IRGACURE 907)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン(IRGACURE 369)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−ジメチルアミノフェニル)−ブタン−1−オン、2−ジメチルアミノ−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルフォルニル)フェニル]−1−ブタノン(IRGACURE 379)などが挙げられる。
【0206】
<その他重合開始剤>
本発明の光硬化性組成物及びインク組成物は、その他の光重合開始剤を含有することができる。重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤を含有することが好ましい。
具体的な光重合開始剤は当業者間で公知のものを制限なく使用でき、具体的には、例えば、Bruce M. Monroeら著、Chemical Revue, 93, 435 (1993)や、R. S. Davidson著、Journal of Photochemistry and Biology A: Chemistry, 73, 81 (1993)や、J. P. Faussier "Photoinitiated Polymerization - Theory and Applications": Rapra Review, vol.9, Report, Rapra Technology (1998)や、M. Tsunooka et al., Prog. Polym. Sci., 21, 1 (1996)に多く、記載されている。また、有機エレクトロニクス材料研究会編、「イメージング用有機材料」、ぶんしん出版(1993年)、187〜192ページ参照、に化学増幅型フォトレジストや光カチオン重合に利用される化合物が多く記載されている。さらには、F. D. Saeva, Topics in Current Chemistry, 156, 59 (1990)、G. G. Maslak, Topics in Current Chemistry, 168, 1 (1993)、H. B. Shuster et al, JACS, 112, 6329 (1990)、I. D. F. Eaton et al, JACS, 102, 3298 (1980)等に記載されているような、増感色素の電子励起状態との相互作用を経て、酸化的もしくは還元的に結合解裂を生じる化合物群も知られる。
【0207】
(カチオン重合開始剤)
本発明においてカチオン重合性化合物を用いる場合、カチオン重合開始剤を用いることが好ましい。本発明に用いることができるカチオン重合開始剤(光酸発生剤)としては、例えば、化学増幅型フォトレジストや光カチオン重合に利用される化合物が用いられる(有機エレクトロニクス材料研究会編、「イメージング用有機材料」、ぶんしん出版(1993年)、187〜192ページ参照)。本発明に好適なカチオン重合開始剤の例を以下に挙げる。
【0208】
第1に、ジアゾニウム、アンモニウム、ヨードニウム、スルホニウム、ホスホニウムなどの芳香族オニウム化合物のB(C654-、PF6-、AsF6-、SbF6-、CF3SO3-塩を挙げることができる。第2に、スルホン酸を発生するスルホン化物を挙げることができる。第3に、ハロゲン化水素を光発生するハロゲン化物も用いることができる。第4に、鉄アレーン錯体を挙げることができる。
【0209】
(E)分散剤
本発明のインク組成物は、(E)分散剤を含有することが好ましい。
本発明に用いることができる分散剤としては、高分子分散剤が好ましい。なお、本発明における「高分子分散剤」とは、重量平均分子量が1,000以上の分散剤を意味する。
【0210】
高分子分散剤としては、DisperBYK−101、DisperBYK−102、DisperBYK−103、DisperBYK−106、DisperBYK−111、DisperBYK−161、DisperBYK−162、DisperBYK−163、DisperBYK−164、DisperBYK−166、DisperBYK−167、DisperBYK−168、DisperBYK−170、DisperBYK−171、DisperBYK−174、DisperBYK−182(BYKケミー社製)、EFKA4010、EFKA4046、EFKA4080、EFKA5010、EFKA5207、EFKA5244、EFKA6745、EFKA6750、EFKA7414、EFKA745、EFKA7462、EFKA7500、EFKA7570、EFKA7575、EFKA7580(エフカアディティブズ社製)、ディスパースエイド6、ディスパースエイド8、ディスパースエイド15、ディスパースエイド9100(サンノプコ(株)製)等の高分子分散剤;ソルスパース(Solsperse)3000,5000,9000,12000,13240,13940,17000,22000,24000,26000,28000,32000,36000,39000,41000,71000などの各種ソルスパース分散剤(アビシア社製);アデカプルロニックL31,F38,L42,L44,L61,L64,F68,L72,P95,F77,P84,F87、P94,L101,P103,F108、L121、P−123(旭電化(株)製)及びイソネットS−20(三洋化成(株)製)、楠本化成(株)製「ディスパロン KS−860,873SN,874(高分子分散剤)、#2150(脂肪族多価カルボン酸)、#7004(ポリエーテルエステル型)」が挙げられる。
インク組成物中における分散剤の含有量は、使用目的により適宜選択されるが、インク組成物全体の重量に対し、それぞれ0.05〜15重量%であることが好ましい。
【0211】
(G)その他の成分
本発明のインク組成物には、必要に応じて、前記成分以外の他の成分を添加することができる。
その他の成分としては、例えば、強増感剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、褪色防止剤、導電性塩類、溶剤、高分子化合物、塩基性化合物等が挙げられる。
【0212】
<強増感剤>
本発明のインク組成物は、強増感剤を含有することも好ましい。本発明において強増感剤は、増感剤の活性放射線に対する感度を一層向上させる、又は、酸素による重合性化合物の重合阻害を抑制する等の作用を有する。
この様な強増感剤の例としては、アミン類、例えばM. R. Sanderら著,Journal of Polymer Society,第10巻,3173頁(1972)、特公昭44−20189号公報、特開昭51−82102号公報、特開昭52−134692号公報、特開昭59−138205号公報、特開昭60−84305号公報、特開昭62−18537号公報、特開昭64−33104号公報、Research Disclosure 33825号記載の化合物等が挙げられる。
【0213】
強増感剤の別の例としては、チオール及びスルフィド類、例えば、特開昭53−702号公報、特公昭55−500806号公報、特開平5−142772号公報記載のチオール化合物、特開昭56−75643号公報記載のジスルフィド化合物等が挙げられる。
具体的には、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプト−4(3H)−キナゾリン、β−メルカプトナフタレン等が挙げられる。
【0214】
また別の例としては、アミノ酸化合物(例、N−フェニルグリシン等)、特公昭48−42965号公報記載の有機金属化合物(例、トリブチル錫アセテート等)、特公昭55−34414号公報記載の水素供与体、特開平6−308727号公報記載のイオウ化合物(例、トリチアン等)、特開平6−250387号公報記載のリン化合物(ジエチルホスファイト等)、特開平8−54735号公報記載のSi−H、Ge−H化合物等が挙げられる。
本発明のインク組成物中における強増感剤の含有量は、使用目的により適宜選択されるが、インク組成物全体の重量に対し、0.05〜4重量%であることが好ましい。
【0215】
<界面活性剤>
本発明のインク組成物には、長時間安定した吐出性を付与するため、界面活性剤を添加することが好ましい。
界面活性剤としては、特開昭62−173463号、同62−183457号の各公報に記載されたものが挙げられる。例えば、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤が挙げられる。なお、前記界面活性剤の代わりに有機フルオロ化合物を用いてもよい。前記有機フルオロ化合物は、疎水性であることが好ましい。前記有機フルオロ化合物としては、例えば、フッ素系界面活性剤、オイル状フッ素系化合物(例、フッ素油)及び固体状フッ素化合物樹脂(例、四フッ化エチレン樹脂)が含まれ、特公昭57−9053号(第8〜17欄)、特開昭62−135826号の各公報に記載されたものが挙げられる。
界面活性剤としては、ポリジアルキルシロキサン類であることが好ましく、ポリエトキシ変性ポリジメチルシロキサンであることがより好ましい。
インク組成物中における界面活性剤の含有量は使用目的により適宜選択されるが、インク組成物全体の重量に対し、それぞれ0.0001〜1重量%であることが好ましい。
【0216】
<紫外線吸収剤>
本発明においては、得られる画像の耐候性向上、退色防止の観点から、紫外線吸収剤を用いることができる。
紫外線吸収剤としては、例えば、特開昭58−185677号公報、同61−190537号公報、特開平2−782号公報、同5−197075号公報、同9−34057号公報等に記載されたベンゾトリアゾール系化合物、特開昭46−2784号公報、特開平5−194483号公報、米国特許第3214463号等に記載されたベンゾフェノン系化合物、特公昭48−30492号公報、同56−21141号公報、特開平10−88106号公報等に記載された桂皮酸系化合物、特開平4−298503号公報、同8−53427号公報、同8−239368号公報、同10−182621号公報、特表平8−501291号公報等に記載されたトリアジン系化合物、リサーチディスクロージャーNo.24239号に記載された化合物やスチルベン系、ベンズオキサゾール系化合物に代表される紫外線を吸収して蛍光を発する化合物、いわゆる蛍光増白剤などが挙げられる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、固形分換算で0.5〜15重量%であることが好ましい。
【0217】
<酸化防止剤>
インク組成物の安定性向上のため、酸化防止剤を添加することができる。酸化防止剤としては、ヨーロッパ公開特許第223739号公報、同309401号公報、同第309402号公報、同第310551号公報、同第310552号公報、同第459416号公報、ドイツ公開特許第3435443号公報、特開昭54−48535号公報、同62−262047号公報、同63−113536号公報、同63−163351号公報、特開平2−262654号公報、特開平2−71262号公報、特開平3−121449号公報、特開平5−61166号公報、特開平5−119449号公報、米国特許第4814262号明細書、米国特許第4980275号明細書等に記載のものを挙げることができる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、固形分換算で0.1〜8重量%であることが好ましい。
【0218】
<褪色防止剤>
本発明のインク組成物には、各種の有機系及び金属錯体系の褪色防止剤を使用することができる。前記有機系の褪色防止剤としては、ハイドロキノン類、アルコキシフェノール類、ジアルコキシフェノール類、フェノール類、アニリン類、アミン類、インダン類、クロマン類、アルコキシアニリン類、ヘテロ環類などが挙げられる。前記金属錯体系の褪色防止剤としては、ニッケル錯体、亜鉛錯体などが挙げられ、具体的には、リサーチディスクロージャーNo.17643の第VIIのI〜J項、同No.15162、同No.18716の650頁左欄、同No.36544の527頁、同No.307105の872頁、同No.15162に引用された特許に記載された化合物や、特開昭62−215272号公報の127頁〜137頁に記載された代表的化合物の一般式及び化合物例に含まれる化合物を使用することができる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、固形分換算で0.1〜8重量%であることが好ましい。
【0219】
<導電性塩類>
本発明のインク組成物には、吐出物性の制御を目的として、チオシアン酸カリウム、硝酸リチウム、チオシアン酸アンモニウム、ジメチルアミン塩酸塩などの導電性塩類を添加することができる。
【0220】
<溶剤>
本発明のインク組成物には、被記録媒体との密着性を改良するため、極微量の有機溶剤を添加することも有効である。
溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン系溶剤、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、1−ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール系溶剤、クロロホルム、塩化メチレン等の塩素系溶剤、ベンゼン、トルエン等の芳香族系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピルなどのエステル系溶剤、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤などが挙げられる。
この場合、耐溶剤性やVOCの問題が起こらない範囲での添加が有効であり、その量はインク組成物全体に対し0.1〜5重量%が好ましく、より好ましくは0.1〜3重量%の範囲である。
【0221】
<高分子化合物>
本発明のインク組成物には、膜物性を調整するため、各種高分子化合物を添加することができる。高分子化合物としては、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、シェラック、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類、その他の天然樹脂等が使用できる。また、これらは2種以上併用してもかまわない。これらのうち、アクリル系のモノマーの共重合によって得られるビニル系共重合が好ましい。さらに、高分子化合物の共重合組成として、「カルボキシル基含有モノマー」、「メタクリル酸アルキルエステル」、又は「アクリル酸アルキルエステル」を構造単位として含む共重合体も好ましく用いられる。
【0222】
<塩基性化合物>
塩基性化合物は、インク組成物の保存安定性を向上させる観点から添加することが好ましい。本発明に用いることができる塩基性化合物としては、公知の塩基性化合物を用いることができ、例えば、無機塩等の塩基性無機化合物や、アミン類等の塩基性有機化合物を好ましく用いることができる。
【0223】
この他にも、必要に応じて、例えば、レベリング添加剤、マット剤、膜物性を調整するためのワックス類、ポリオレフィンやPET等の被記録媒体への密着性を改善するために、重合を阻害しないタッキファイヤーなどを含有させることができる。
タッキファイヤーとしては、具体的には、特開2001−49200号公報の5〜6pに記載されている高分子量の粘着性ポリマー(例えば、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜20のアルキル基を有するアルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数3〜14の脂環族アルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数6〜14の芳香族アルコールとのエステルからなる共重合物)や、重合性不飽和結合を有する低分子量粘着付与性樹脂などが例示できる。
【0224】
(2)インクジェット記録方法、インクジェット記録装置及び印刷物
本発明のインク組成物は、インクジェット記録用として好適に使用される。
本発明のインクジェット記録方法は、本発明のインク組成物をインクジェット記録用として被記録媒体(支持体、記録材料等)上に吐出し、被記録媒体上に吐出されたインク組成物に活性放射線を照射し、インクを硬化して画像を形成する方法である。
【0225】
より具体的には、本発明のインクジェット記録方法は、(a1)被記録媒体上に、本発明のインク組成物を吐出する工程、及び、(b1)吐出されたインク組成物に活性放射線を照射して、該インク組成物を硬化する工程、を含むことを特徴とする。
本発明のインクジェット記録方法は、上記(a1)及び(b1)工程を含むことにより、被記録媒体上において硬化したインク組成物により画像が形成される。
また、本発明の印刷物は、本発明のインク組成物を使用して得られた印刷物であり、本発明のインクジェット記録方法によって記録された印刷物であることが好ましい。
【0226】
本発明のインクジェット記録方法における(a1)工程には、以下に詳述するインクジェット記録装置が用いることができる。
【0227】
〔インクジェット記録装置〕
本発明のインクジェット記録方法に用いられるインクジェット記録装置としては、特に制限はなく、目的とする解像度を達成しうる公知のインクジェット記録装置を任意に選択して使用することができる。即ち、市販品を含む公知のインクジェット記録装置であれば、いずれも、本発明のインクジェット記録方法の(a1)工程における被記録媒体へのインクの吐出を実施することができる。
本発明で用いることのできるインクジェット記録装置としては、例えば、インク供給系、温度センサー、活性放射線源を含む装置が挙げられる。
インク供給系は、例えば、本発明のインク組成物を含む元タンク、供給配管、インクジェットヘッド直前のインク供給タンク、フィルター、ピエゾ型のインクジェットヘッドからなる。ピエゾ型のインクジェットヘッドは、好ましくは1〜100pl、より好ましくは8〜30plのマルチサイズドットを、好ましくは320×320〜4,000×4,000dpi、より好ましくは400×400〜1,600×1,600dpi、さらに好ましくは720×720dpiの解像度で吐出できるよう駆動することができる。なお、本発明でいうdpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す。
【0228】
上述したように、本発明のインク組成物のように放射線硬化型インクは、吐出されるインクを一定温度にすることが望ましいことから、インク供給タンクからインクジェットヘッド部分までは、断熱及び加温を行うことができる。温度コントロールの方法としては、特に制約はないが、例えば、温度センサーを各配管部位に複数設け、インク流量、環境温度に応じた加熱制御をすることが好ましい。温度センサーは、インク供給タンク及びインクジェットヘッドのノズル付近に設けることができる。また、加熱するヘッドユニットは、装置本体を外気からの温度の影響を受けないよう、熱的に遮断若しくは断熱されていることが好ましい。加熱に要するプリンタ立上げ時間を短縮するため、或いは熱エネルギーのロスを低減するために、他部位との断熱を行うとともに、加熱ユニット全体の熱容量を小さくすることが好ましい。
【0229】
上記のインクジェット記録装置を用いて、本発明のインク組成物の吐出は、インク組成物を、好ましくは25〜80℃、より好ましくは25〜50℃に加熱して、インク組成物の粘度を、好ましくは3〜15mPa・s、より好ましくは3〜13mPa・sに下げた後に行うことが好ましい。特に、本発明のインク組成物として、25℃におけるインク粘度が50mPa・s以下であるものを用いると、良好に吐出が行えるので好ましい。この方法を用いることにより、高い吐出安定性を実現することができる。
本発明のインク組成物のような放射線硬化型インク組成物は、概して通常インクジェット記録用インクで使用される水性インクより粘度が高いため、吐出時の温度変動による粘度変動が大きい。インクの粘度変動は、液滴サイズの変化及び液滴吐出速度の変化に対して大きな影響を与え、ひいては画質劣化を引き起こす。従って、吐出時のインクの温度はできるだけ一定に保つことが必要である。よって、本発明において、インクの温度の制御幅は、好ましくは設定温度の±5℃、より好ましくは設定温度の±2℃、さらに好ましくは設定温度±1℃とすることが適当である。
【0230】
次に、(b1)吐出されたインク組成物に活性放射線を照射して、該インク組成物を硬化する工程について説明する。
被記録媒体上に吐出されたインク組成物は、活性放射線を照射することによって硬化する。これは、本発明のインク組成物に含まれる重合開始剤が活性放射線の照射により分解して、ラジカル、酸、塩基などの開始種を発生し、その開始種の機能にラジカル重合性化合物の重合反応が、生起、促進されるためである。このとき、インク組成物において重合開始剤と共に増感剤が存在すると、系中の増感剤が活性放射線を吸収して励起状態となり、重合開始剤と接触することによって重合開始剤の分解を促進させ、より高感度の硬化反応を達成させることができる。
【0231】
ここで、使用される活性放射線は、α線、γ線、電子線、X線、紫外線、可視光又は赤外光などが使用され得る。活性放射線のピーク波長は、増感剤の吸収特性にもよるが、例えば、200〜600nmであることが好ましく、300〜450nmであることがより好ましく、350〜420nmであることがさらに好ましい。
【0232】
また、本発明のインク組成物の、重合開始系は、低出力の活性放射線であっても十分な感度を有するものである。従って、露光面照度が、好ましくは10〜4,000mW/cm2、より好ましくは20〜2,500mW/cm2で硬化させることが適当である。
【0233】
活性放射線源としては、水銀ランプやガス・固体レーザー等が主に利用されており、紫外線光硬化型インクジェット記録用インクの硬化に使用される光源としては、水銀ランプ、メタルハライドランプが広く知られている。しかしながら、現在環境保護の観点から水銀フリー化が強く望まれており、GaN系半導体紫外発光デバイスへの置き換えは産業的、環境的にも非常に有用である。さらに、LED(UV−LED),LD(UV−LD)は小型、高寿命、高効率、低コストであり、光硬化型インクジェット用光源として期待されている。
また、発光ダイオード(LED)及びレーザーダイオード(LD)を活性放射線源として用いることが可能である。特に、紫外線源を要する場合、紫外LED及び紫外LDを使用することができる。例えば、日亜化学(株)は、主放出スペクトルが365nmと420nmとの間の波長を有する紫色LEDを上市している。さらに一層短い波長が必要とされる場合、米国特許番号第6,084,250号明細書は、300nmと370nmとの間に中心付けされた活性放射線を放出し得るLEDを開示している。また、他の紫外LEDも、入手可能であり、異なる紫外線帯域の放射を照射することができる。本発明で特に好ましい活性放射線源はUV−LEDであり、特に好ましくは350〜420nmにピーク波長を有するUV−LEDである。
なお、LEDの被記録媒体上での最高照度は10〜2,000mW/cm2であることが好ましく、20〜1,000mW/cm2であることがより好ましく、50〜800mW/cm2であることが特に好ましい。
【0234】
本発明のインク組成物は、このような活性放射線に、好ましくは0.01〜120秒、より好ましくは0.1〜90秒照射されることが適当である。
活性放射線の照射条件並びに基本的な照射方法は、特開昭60−132767号公報に開示されている。具体的には、インクの吐出装置を含むヘッドユニットの両側に光源を設け、いわゆるシャトル方式でヘッドユニットと光源を走査することによって行われる。活性放射線の照射は、インク着弾後、一定時間(好ましくは0.01〜0.5秒、より好ましくは0.01〜0.3秒、さらに好ましくは0.01〜0.15秒)をおいて行われることになる。このようにインク着弾から照射までの時間を極短時間に制御することにより、被記録媒体に着弾したインクが硬化前に滲むことを防止するこが可能となる。また、多孔質な被記録媒体に対しても光源の届かない深部までインクが浸透する前に露光することができるため、未反応モノマーの残留を抑えることができるので好ましい。
さらに、駆動を伴わない別光源によって硬化を完了させてもよい。国際公開第99/54415号パンフレットでは、照射方法として、光ファイバーを用いた方法やコリメートされた光源をヘッドユニット側面に設けた鏡面に当て、記録部へUV光を照射する方法が開示されており、このような硬化方法もまた、本発明のインクジェット記録方法に適用することができる。
【0235】
上述したようなインクジェット記録方法を採用することにより、表面の濡れ性が異なる様々な被記録媒体に対しても、着弾したインクのドット径を一定に保つことができ、画質が向上する。なお、カラー画像を得るためには、明度の低い色から順に重ねていくことが好ましい。明度の低いインクから順に重ねることにより、下部のインクまで照射線が到達しやすくなり、良好な硬化感度、残留モノマーの低減、密着性の向上が期待できる。また、照射は、全色を吐出してまとめて露光することが可能だが、1色毎に露光するほうが、硬化促進の観点で好ましい。
このようにして、本発明のインク組成物は、活性放射線の照射により高感度で硬化することで、被記録媒体表面に画像を形成することができる。
【0236】
本発明のインクジェット記録方法には、本発明のインクセットを好適に使用することができる。吐出する各着色インク組成物の順番は、特に限定されるわけではないが、明度の低い着色インク組成物から被記録媒体に付与することが好ましく、本発明のインク組成物及びイエロー、シアン、マゼンタ、ブラックを使用する場合には、本発明のインク組成物→イエロー→シアン→マゼンタ→ブラックの順で被記録媒体上に付与することが好ましい。また、これにホワイトを加えて使用する場合にはホワイト→本発明のインク組成物→イエロー→シアン→マゼンタ→ブラックの順で被記録媒体上に付与することが好ましい。
本発明において、オレンジ、バイオレット、グリーン、イエロー、シアン、マゼンタ及びブラックの各色インク組成物からなる7色のインクセットとして使用することが好ましく、さらにホワイトのインク組成物を加えた8色のインクセットとして使用することも好ましい。さらに、本発明はこれに限定されず、ライトシアン、ライトマゼンタ、ライトブラック等のインク組成物と、シアン、マゼンタ、ブラック、ホワイト、イエローの濃色インク組成物が含まれるインクセットとして使用することもできる。
なお、上記7色のインク組成物からなるインクセットを使用してインクジェット記録を行う場合には、シアン→マゼンタ→イエロー→グリーン→バイオレット→オレンジ→ブラックの順で吐出を行うことが好ましく、上記8色の場合には、シアンインク組成物の前にホワイトインク組成物の吐出を行うことが好ましい。
【0237】
本発明において、被記録媒体としては、特に限定されず、支持体や記録材料として公知の被記録媒体を使用することができる。例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上述した金属がラミネートされ又は蒸着された紙又はプラスチックフィルム等が挙げられる。また、本発明における被記録媒体として、非吸収性被記録媒体が好適に使用することができる。
【0238】
(インクセット)
本発明のインクセットは、本発明のインク組成物を少なくとも1つ含み、本発明のインク組成物又は本発明以外のインク組成物とを組み合わせた2種以上のインク組成物を有するインクセットであれば、特に制限はないが、オレンジインク組成物、バイオレットインク組成物、及び、グリーンインク組成物を含むインクセットであることがより好ましい。
また、これらの他に、シアン、マゼンタ、イエロー及びブラックの各色を呈するインク組成物と併用してインクセットとすることが好ましく、必要に応じてホワイト色を呈するインク組成物を併用することが好ましい。
また、本発明のインクセットは、本発明のインクジェット記録方法に好適に用いることができる。
本発明のインク組成物を使用してフルカラー画像を得るためには、本発明のインクセットとして、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックよりなる4色のインク組成物と本発明のインク組成物を少なくとも1つ組み合わせたインクセットであることが好ましく、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラック、ホワイトよりなる5色のインク組成物と本発明のインク組成物を少なくとも1つ組み合わせたインクセットであることがより好ましく、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラック、ホワイトよりなる5色のインク組成物とオレンジ、バイオレット、グリーンよりなる3色の本発明のインク組成物を組み合わせたインクセットであることがさらに好ましい。
また、本発明のインクセットには、前記式(I)で表される化合物を含有しないインク組成物を含んでいてもよいことはいうまでもない。
【実施例】
【0239】
以下、本発明を、実施例を挙げてより詳細に説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【0240】
(顔料分散物の作製)
表1に示す成分を混合し、1時間スターラーで撹拌した。撹拌後の混合物をビーズミル分散にて分散し、顔料分散物を得た。分散条件は直径0.65mmのジルコニアビーズを70%の充填率で充填し、周速を9m/sとし、分散時間は、2〜8時間で行った。
【0241】
【表1】

【0242】
【表2】

【0243】
ここで、上記の表で使用した各成分は以下の通りである。
・バイオレット顔料A:PV23(HOSTAPERM VIOLET RL−NF;クラリアント社製)
・オレンジ顔料A:PO36(KENALAKE ORANGE HPRLO;Albion Colours社製)
・グリーン顔料A:PG7(HEUCO GREEN 600703K;Heubach GmbH社製)
・シアン顔料A:PB15:3(IRGALITE BLUE GLO;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)
・マゼンタ顔料A:PV19(CINQUASIA MAGENTA RT−355D;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)
・イエロー顔料A:PY120(NOVOPERM YELLOW H2G;クラリアント社製)
・カーボンブラックA:SPECIAL BLACK 250(デグサ社製)
・二酸化チタンA:CR60−2(石原産業社製)
・分散剤A:ソルスパース32000(ノベオン社製)
・分散剤B:ソルスパース5000(ノベオン社製)
・分散剤C:BYK−168(ビックケミー社製)
・分散剤D:ソルスパース36000(ノベオン社製)
・重合性化合物A:PEA(フェノキシエチルアクリレート;第一工業製薬社製)
【0244】
(インク組成物の作製)
表2に示す成分(単位は重量部)を撹拌混合溶解し、下塗り液及び着色液を得た。なお、これらの下塗り液及び着色液の表面張力を、表面張力計(協和界面科学(株)製、表面張力計CBVP−Z等)を用いて、ウィルヘルミー法で液温25℃にて測定したところ、いずれのインク組成物の表面張力も、25〜26mN/mの範囲内であった。
【0245】
【表3】

【0246】
【表4】

【0247】
【表5】

【0248】
【表6】

【0249】
【表7】

【0250】
なお、上記の表で使用した各成分は以下の通りである。
・重合性化合物B:DPGDA(ジプロピレングリコールジアクリレート;ダイセル・サイテック(株)製)
・重合性化合物C:FA−512A(ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレ−ト;新中村化学工業(株)製)
・重合性化合物D:A−TMPT(トリメチロールプロパントリアクリレート;新中村化学工業(株)製)
・界面活性剤A:BYK―307(ビックケミー社製、界面活性剤)
・重合禁止剤A:FIRSTCURE ST−1(Albemarle社製)
・重合開始剤A:2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン(Irgacure 907;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)
・重合開始剤B:2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキサイド(Darocure TPO;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)
・重合開始剤C:ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド(Irgacure 819;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)
・アミン化合物:下記化合物(A−1)
・増感剤A:下記化合物(B−1)
・増感剤B:カヤキュア−ITX(日本化薬(株)製)
【0251】
【化46】

【0252】
(画像記録装置)
印刷に使用したインクジェット記録用プリンタ1の概略構成図を図1に示す。また、図2には、インクジェット記録用ヘッドユニット部2の概略構成斜視図を示す。
上記インク組成物をインクタンク8に収容した。インクタンク8から、インク供給用チューブ12を通して、インクジェット記録用ヘッドユニット部2にインク組成物を供給した。
該インクジェット記録用ヘッドユニット部2は、長軸の金属軸からなる固定軸5で固定し、往復運動が可能な動力部4によって、可変スピードで往復運動を行なう。なお、往復運動が可能な動力部4には、インク供給用チューブ12とヘッド制御用の電気配線(不図示)が内蔵されている。
該インクジェット記録用ヘッドユニット部2の固定軸5の両端には、ヘッドのメンテナンス及びクリーニングを実施するためのメンテナンス部3を具備する。さらにこれらの外側には、インクジェット記録用プリンタをコントロールするための制御部6(例えば、パーソナルコンピュータ)、及び、インクタンク8を配置した。
インクジェット記録用ヘッドユニット部2は、市販ヘッド(東芝テック社製ヘッドCA4)を1色当たり2つ配列して600npiにしたヘッドセットを8組(図2中、21〜28)と、市販の紫外線硬化型ランプ(メタルハライドランプ)2基(図2中、29)で構成した。なお、ヘッドセットは、ホワイトインク用インクジェットヘッド21、シアンインク用インクジェットヘッド22、マゼンタインク用インクジェットヘッド23、イエローインク用インクジェットヘッド24、グリーンインク用インクジェットヘッド25、バイオレットインク用インクジェットヘッド26、オレンジインク用インクジェットヘッド27、ブラックインク用インクジェットヘッド28の順で配置し、上記の順で被記録媒体に吐出を行った。
ヘッドの直下には、被記録媒体を吸引固定可能な被記録媒体吸引ステージ7を配置した。被記録媒体9は、複数本の被記録媒体搬送用ローラー10と被記録媒体巻取用ローラー11によって、ヘッドの往復運動とは垂直方向に搬送する機構となっている。
ヘッドの吐出周波数とヘッド往復運動のスピードを制御し、常に600×600dpiの打滴密度で画像を印刷するように設定した。また、メタルハライドランプからの照射強度は被記録媒体上で約1,000mW/cm2と一定にし、照射量は5段階(300mJ/cm2、600mJ/cm2、900mJ/cm2、1,200mJ/cm2、1,500mJ/cm2)の可変となるように往復運動のスピードとメタルハライドランプに内蔵しているスリット開口幅を調整した。
被記録媒体は白色PVC粘着シートと透明PET粘着シートを使用した。白色PVC粘着シートに印刷する場合は、ホワイトインクを使用しなかった。透明PET粘着シートに印刷する場合は、下地にホワイトインクを使用し、他の色で画像を形成した。
【0253】
(実施例1、2、比較例1〜3)
実施例1においては、上記画像記録装置にインクセット1に充填し、印刷物を得た。実施例2ではインクセット2を、比較例1ではインクセット3を、比較例2ではインクセット4を、比較例3ではインクセット5を使用した。
作製した印刷物の硬化感度、色再現性を下記評価に従い評価した。
【0254】
(硬化感度)
印刷後の表面のベトツキが無くなる露光エネルギーによって硬化感度を定義した。印刷後の表面のベトツキの有無は、印刷直後に普通紙(富士ゼロックス社製コピー用紙C2)を押し付け、下塗り液及び/又は着色液の移りが起きる場合はベトツキ有り、移りが起きない場合はベトツキ無しと判断した。
露光エネルギーは、300mJ/cm2、600mJ/cm2、900mJ/cm2、1,200mJ/cm2、1,500mJ/cm2と変化させた。
ここでは、硬化感度は低い方が表面硬化性の観点から好ましく、特に、900mJ/cm2以下であることが好ましい。従って、表8より、インクセット1、2、3、及び、5が硬化感度として実用レベルに達している。
表8には、被記録媒体として白色PVC粘着シートを用いた場合を示すが、被記録媒体として透明PET粘着シートを使用した場合も、同様の結果であった。
【0255】
【表8】

【0256】
(色再現領域)
前記の画像記録装置を用いて印刷したサンプルの色相(a*、b*)を、市販の測色計(グレタグ社製SPM100−II)にて測定し、色再現性を評価した。なお、印刷画像データは、均等に割り付けた全950色のカラーパッチデータである。
測定した色再現域を図3に示す。図3には印刷物のa*、b*データに加えて、パントーン色見本帳のデータ(PANTONE FORMULA GUIDE SOLID COATED)の結果も併記する。
ここでは、併記したPANTONEの色再現域とほぼ同等であることが好ましい。インクセット1、2、及び、4を用いた場合は、PANTONEの色再現域に近い色再現域が確保でき、実用レベルの色再現性が得られた。なお、図3(a)には、インクセット1を使用した場合の色再現域を示したが、インクセット2及びインクセット4を使用した場合も同様の色再現性が得られた。
これに対し、インクセット5は、PANTONEの色再現域に対して色再現域は極めて小さく、実用レベルに達していない。インクセット3は、レッド、オレンジ、イエロー領域の色再現性については、実用レベルに達していたが、マゼンタ、バイオレット、ブルー、シアン、グリーン領域の色再現性が好ましくなかった。
なお、図3には、被記録媒体として白色PVC粘着シートを用いた場合を示す。
【図面の簡単な説明】
【0257】
【図1】実施例で使用したインクジェット記録用プリンタの概略構成図である。
【図2】実施例で使用したインクジェット記録用ヘッドユニット部の概略構成斜視図である。
【図3】実施例で得られた色再現域の測定結果である。
【符号の説明】
【0258】
1 インクジェット記録用プリンタ
2 インクジェット記録用ヘッドユニット部
3 メンテナンス部
4 動力部
5 固定軸
6 制御部
7 被記録媒体吸引ステージ
8 インクタンク
9 被記録媒体
10 被記録媒体搬送用ローラー
11 被記録媒体巻取用ローラー
12 インク供給用チューブ
21 ホワイトインク用インクジェットヘッド
22 シアンインク用インクジェットヘッド
23 マゼンタインク用インクジェットヘッド
24 イエローインク用インクジェットヘッド
25 グリーンインク用インクジェットヘッド
26 バイオレットインク用インクジェットヘッド
27 オレンジインク用インクジェットヘッド
28 ブラックインク用インクジェットヘッド
29 メタルハライドランプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)オレンジ、バイオレット、又はグリーン色を呈する有機顔料の少なくとも1種、
(B)下記式(I)で表される化合物、及び、
(C)重合性化合物を含有することを特徴とする
インク組成物。
【化1】

(式(I)中、XはO、S、又は、NRを表し、nは0又は1を表し、Rは水素原子、アルキル基、又は、アシル基を表し、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、及び、R8はそれぞれ独立に、水素原子、又は、一価の置換基を表し、R1、R2、R3、及び、R4は、それぞれ隣接する2つが互いに連結して環を形成していてもよい。)
【請求項2】
前記重合性化合物がエチレン性不飽和化合物である、請求項1に記載のインク組成物。
【請求項3】
(D)重合開始剤を含有し、該(D)重合開始剤がアシルホスフィンオキサイド化合物及び/又はα−アミノアセトフェノン化合物である、請求項1又は2に記載のインク組成物。
【請求項4】
前記有機顔料が以下に示す群から選ばれた少なくとも1種である、請求項1〜3いずれか1つに記載のインク組成物。
C.I.ピグメントオレンジ36,38,43,71、
C.I.ピグメントバイオレット23,32,37,39、及び
C.I.ピグメントグリーン7,36,37
【請求項5】
前記有機顔料が以下に示す群から選ばれた少なくとも1種である、請求項1〜4いずれか1つに記載のインク組成物。
C.I.ピグメントオレンジ36、
C.I.ピグメントバイオレット23、37及び
C.I.ピグメントグリーン7
【請求項6】
前記有機顔料が式(A)で表されるジオキサジン型化合物である、請求項1〜5いずれか1つに記載のインク組成物。
【化2】

式(A)中、R1〜R10はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)又は1価の基を表す。
【請求項7】
前記ジオキサジン型化合物がC.I.ピグメントバイオレット23又はC.I.ピグメントバイオレット37である、請求項6に記載のインク組成物。
【請求項8】
インクジェット記録用である、請求項1〜7いずれか1つに記載のインク組成物。
【請求項9】
(a1)被記録媒体上に、請求項1〜8いずれか1つに記載のインク組成物を吐出する工程、及び、
(b1)吐出されたインク組成物に活性放射線を照射して、該インク組成物を硬化する工程、を含むことを特徴とするインクジェット記録方法。
【請求項10】
前記活性放射線が、発光ピーク波長が350〜420nmの範囲にあり、かつ、被記録媒体表面での最高照度が10〜2,000mW/cm2となる紫外線を発生する発光ダイオードにより照射される紫外線である、請求項9に記載のインクジェット記録方法。
【請求項11】
請求項9又は10に記載のインクジェット記録方法によって記録された印刷物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−13574(P2010−13574A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−175599(P2008−175599)
【出願日】平成20年7月4日(2008.7.4)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】