説明

インク組成物

【課題】インク組成物の保存安定性及び吐出性が良好であり、光照射時の硬化性に優れ、硬化後の膜の耐擦過性、柔軟性及び基材への密着性に優れたインク組成物を提供すること。
【解決手段】塩基性分散剤、重合性化合物、重合開始剤、及び、下記式(1)で表されるアゾ顔料を含むことを特徴とするインク組成物。式(1)中、Qは、Qが結合する2つの炭素原子と共に5〜7員のヘテロ環を形成するのに必要な非金属原子団を表し、Wはアルコキシ基、アミノ基、アルキル基又はアリール基を表し、X1、X2はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アシル基、アルキルスルホニル基又はアリールスルホニル基を表し、R1は水素原子又は置換基を表し、R2はヘテロ環基を表し、nは1〜4の整数を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線硬化型インク組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
画像データ信号に基づき、紙などの被記録媒体に画像を形成する画像記録方法として、電子写真方式、昇華型及び溶融型熱転写方式、インクジェット方式などがある。中でもインクジェット方式は、安価な装置で実施可能であり、かつ、必要とされる画像部のみにインク組成物を吐出して被記録媒体上に直接画像形成を行うため、インク組成物を効率よく使用でき、ランニングコストが安い。さらに、騒音が少なく、画像記録方式として優れている。
近年、紫外線などの放射線の照射により硬化可能なインク組成物(放射線硬化型インクジェット記録用インク組成物)を、インクジェットにより描画した後、紫外線などの放射線を照射して、インク組成物を硬化する、無溶剤型のインクジェット記録方式が注目されている。一般に、水を希釈剤として含む水性インク組成物や有機溶剤を希釈剤として含む溶剤型インク組成物と比較して、放射線硬化型インク組成物によるインクジェット記録方式は、ガラス、金属、プラスチック基材といった非吸収性基材への描画が可能であり、基材の適応範囲が広い、描画画像の耐擦過性や耐溶剤性に優れる、感度が高い、生産性に優れる、揮発性の溶剤を含まないので臭気等の人体への影響や環境への負荷が小さい、といったメリットを有する。
【0003】
放射線硬化型インクジェット記録用インク組成物の着色剤としては、耐光性や耐候性に優れることから、顔料が広く使用されている。しかし、顔料は凝集を起こし易く、顔料の沈降や、インク組成物の粘度上昇を引き起こしやすい。これらは、インクジェットによって描画を行う際のインク組成物の曲がり(デビエーション)、ミストの発生あるいは不吐出(ノズル欠け)の原因となり、良好な画質が得られないという実用上の大きな問題を生じる。そのため、インク組成物中に長期間にわたって顔料を安定に分散させることが不可欠であり、このような問題を改良する目的で、一般に、高分子分散剤及び/又は分散助剤(シナジストともいう。)と呼ばれる顔料誘導体を使用して、顔料分散が行われる。
【0004】
従来は、顔料に対する高分子分散剤及び/又は分散助剤の吸着性を高めて、インク組成物中の顔料の分散安定性を向上させる目的で、顔料と相互作用するような極性基(例えばスルホン酸基やカルボン酸基等)を導入した化合物を用いる試みが行われてきた。
例えば、特許文献1には、イエロー顔料としてC.I.ピグメントイエロー180、塩基性の吸着基を有する高分子分散剤、並びに分散助剤としてC.I.ピグメントイエロー151を含有する紫外線硬化型インクジェット記録用インク組成物が開示されている。特許文献2には、顔料、顔料分散に有効な官能基を導入した顔料分散剤及び活性エネルギー線で重合可能なモノマーを含有する活性エネルギー線硬化型インクジェットインクが開示されている。特許文献3には、カーボンブラック、光重合性化合物、光重合開始剤、塩基性の吸着基を有する高分子分散剤と、フタロシアニンスルホン酸系化合物とを含有する紫外線硬化型インクジェット記録用インク組成物が開示されている。特許文献4には、高分子分散剤、モノマー、ジケトピロロピロール顔料、及び顔料誘導体からなる活性エネルギー線硬化型インクジェットインキが開示されている。さらに特許文献5には、高分子分散剤、モノマー、フタロシアニン顔料、及びフタロシアニンスルホン酸アミン塩からなる活性エネルギー線硬化型インクジェットインキが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−2528号公報
【特許文献2】特開2004−18656号公報
【特許文献3】特開2004−27211号公報
【特許文献4】特開2006−348200号公報
【特許文献5】特開2006−348201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、インク組成物の保存安定性及び吐出性が良好であり、光照射時の硬化性に優れ、硬化後の膜の耐擦過性、柔軟性及び基材への密着性に優れたインク組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記課題は、下記の<1>に記載の手段により解決された。好ましい実施態様である<2>〜<14>とともに以下に記載する。
<1>塩基性分散剤、重合性化合物、重合開始剤、及び、下記式(1)で表されるアゾ顔料を含むことを特徴とするインク組成物、
【0008】
【化1】

(式(1)中、Qは、Qが結合する2つの炭素原子と共に5〜7員のヘテロ環を形成するのに必要な非金属原子団を表し、Wはアルコキシ基、アミノ基、アルキル基又はアリール基を表し、X1、X2はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アシル基、アルキルスルホニル基又はアリールスルホニル基を表し、R1は水素原子又は置換基を表し、R2はヘテロ環基を表し、nは1〜4の整数を表す。n=2〜4の場合、式(1)はQ、W、X1、X2、R1、又はR2を介して結合した2〜4量体をそれぞれ表す。)
【0009】
<2>前記塩基性分散剤が、高分子化合物である上記<1>に記載のインク組成物、
<3>前記塩基性分散剤が、N原子を含有する分散剤である上記<1>又は<2>に記載のインク組成物、
<4>前記式(1)で表されるアゾ顔料が、下記式(2)で表されるアゾ顔料である上記<1>〜<3>のいずれか1つに記載のインク組成物、
【0010】
【化2】

(式(2)中、Qは、Qが結合する2つの炭素原子と共に5〜7員のヘテロ環を形成するのに必要な非金属原子団を表し、Wはアルコキシ基、アミノ基、アルキル基又はアリール基を表し、X1はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アシル基、アルキルスルホニル基又はアリールスルホニル基を表し、R1は水素原子又は置換基を表し、R2はヘテロ環基を表し、nは1〜4の整数を表す。n=2〜4の場合、式(2)はQ、W、X1、R1、又はR2を介して結合した2〜4量体をそれぞれ表す。)
【0011】
<5>前記式(1)中のQが、Qが結合する2つの炭素原子と共に5員の含窒素ヘテロ環を形成するのに必要な非金属原子団である上記<1>〜<4>のいずれか1つに記載のインク組成物、
<6>前記式(1)中のnが、2である上記<1>〜<5>のいずれか1つに記載のインク組成物、
<7>前記式(2)中のX1が、水素原子である上記<4>に記載のインク組成物、
<8>前記式(1)で表されるアゾ顔料が、下記式(3)で表されるアゾ顔料である上記<1>〜<3>のいずれか1つに記載のインク組成物、
【0012】
【化3】

(式(3)中、Yは水素原子又は置換基を表し、Gは水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又はヘテロ環基を表す。Wはアルコキシ基、アミノ基、アルキル基又はアリール基を表し、X1、X2はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アシル基、アルキルスルホニル基又はアリールスルホニル基を表し、R1は水素原子又は置換基を表し、R2はヘテロ環基を表し、nは1〜4の整数を表す。n=2〜4の場合、式(3)はG、Y、W、X1、X2、R1、又はR2を介して結合した2〜4量体をそれぞれ表す。)
【0013】
<9>前記式(1)中のWが、総炭素数3以下のアルコキシ基、アミノ基、又は総炭素数3以下のアルキルアミノ基である上記<1>〜<8>のいずれか1つに記載のインク組成物、
<10>前記式(3)中のGが、総炭素数3以下のアルキル基である上記<8>に記載のインク組成物、
<11>前記式(3)で表されるアゾ顔料が、下記式(4)で表されるアゾ顔料である上記<8>に記載のインク組成物、
【0014】
【化4】

(式(4)中、Zは5〜8員の含窒素ヘテロ環に由来する二価の基を表し、Y1、Y2、R11、R12は、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、G1、G2は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、又はヘテロ環基を表し、W1、W2はそれぞれ独立にアルコキシ基、アミノ基、アルキル基又はアリール基を表す。)
【0015】
<12>前記式(4)中のW1、W2が、それぞれ独立に総炭素数3以下のアルコキシ基、アミノ基、又は総炭素数3以下のアルキルアミノ基である上記<11>に記載のインク組成物、
<13>前記式(4)中のG1、G2が、それぞれ独立に総炭素数3以下のアルキル基である上記<11>又は<12>に記載のインク組成物、
<14>前記式(4)中のZが、6員の含窒素ヘテロ環である上記<11>〜<13>のいずれか1つに記載のインク組成物。
上記の<1>〜<14>に記載のインク組成物は、いずれもインクジェットインク組成物として好ましく使用することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、インク組成物の保存安定性及び吐出性が良好であり、光照射時の硬化性に優れ、硬化後の膜の耐擦過性、柔軟性及び基材への密着性に優れたインク組成物を提供することができた。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(放射線硬化型インク組成物)
本発明の放射線硬化型インク組成物(本発明において、単に「インク組成物」ともいう。)は、塩基性分散剤、重合性化合物、重合開始剤、及び、下記式(1)で表されるアゾ顔料を含むことを特徴とする。
【0018】
【化5】

(式(1)中、Qは、Qが結合する2つの炭素原子と共に5〜7員のヘテロ環を形成するのに必要な非金属原子団を表し、Wはアルコキシ基、アミノ基、アルキル基又はアリール基を表し、X1、X2はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アシル基、アルキルスルホニル基又はアリールスルホニル基を表し、R1は水素原子又は置換基を表し、R2はヘテロ環基を表し、nは1〜4の整数を表す。n=2〜4の場合、式(1)はQ、W、X1、X2、R1、又はR2を介して結合した2〜4量体をそれぞれ表す。)
【0019】
本発明のインク組成物は、放射線により硬化可能なインク組成物であり、また、油性のインク組成物である。
本発明でいう「放射線」とは、その照射によりインク組成物中において開始種を発生させ得るエネルギーを付与することができる活性放射線であれば、特に制限はなく、広くα線、γ線、X線、紫外線(UV)、可視光線、電子線などを包含するものであるが、中でも、硬化感度及び装置の入手容易性の観点から紫外線及び電子線が好ましく、特に紫外線が好ましい。したがって、本発明のインク組成物としては、放射線として、紫外線を照射することにより硬化可能なインク組成物が好ましい。
本発明のインク組成物は、インクジェット記録用インク組成物として好適に用いることができる。
以下、それぞれの成分について説明する。
【0020】
(塩基性分散剤)
本発明のインク組成物は、好ましくは放射線硬化型インク組成物(以下、単に「本発明のインク組成物」ともいう。)であり、分散剤として塩基性分散剤を用いることが特徴である。
分散剤として、その分子量に特に制限はないが、好ましくは高分子分散剤を用いることが好ましい。
また、本発明において、塩基性の高分子分散剤として各種の塩基性高分子分散剤を使用することができる。塩基性の分散剤としては、窒素原子(N原子)を含有する分散剤が好ましく、塩基性としてN原子を含有する極性基を有する公知の高分子分散剤を広く使用することができる。また、塩基性の分散剤としては、塩基性基としてN原子を含有する基を有する分散剤がより好ましい。
塩基性の官能基としては一級、二級、又は三級アミノ基、ピリジン、ピリミジン、ピラジン等の含窒素ヘテロ環等をあげることができる。特に脂肪酸アミン系の分散剤が好ましく使用できる。
また、本発明において、分散剤はアミン価が酸価よりも大きい化合物であることが特に好ましい。
ここで、アミン価とは、一級、二級及び三級アミンの総量を示すもので、試料1gを中和するのに要する塩酸に当量のKOHのmg数で表わしたものである。また、酸価とは、試料1g中に含有する遊離脂肪酸、樹脂酸などを中和するのに必要なKOHのmg数である。
本発明において、分散剤の酸価とアミン価との差は、5mgKOH/g以上であることが好ましい。
【0021】
塩基性の高分子分散剤としては、具体的には、DisperBYK−161(アミン価11mgKOH/g、酸価0mgKOH/g)、DisperBYK−162(アミン価13mgKOH/g、酸価0mgKOH/g)、DisperBYK−163(アミン価10mgKOH/g、酸価0mgKOH/g)、DisperBYK−164(アミン価18mgKOH/g、酸価0mgKOH/g)、DisperBYK−166(アミン価20mgKOH/g、酸価0mgKOH/g)、DisperBYK−167(アミン価13mgKOH/g、酸価0mgKOH/g)、DisperBYK−168(アミン価10mgKOH/g、酸価0mgKOH/g)、DisperBYK−182(アミン価13mgKOH/g、酸価0mgKOH/g)(以上BYKケミー社製)、EFKA4046(アミン価17〜21mgKOH/g、酸価0mgKOH/g)、EFKA4060(アミン価6〜10mgKOH/g、酸価0mgKOH/g)、EFKA4080(アミン価3.6〜4.1mgKOH/g、酸価0mgKOH/g)、EFKA4800(アミン価37〜43mgKOH/g、酸価0mgKOH/g)、EFKA7462(アミン価8mgKOH/g、酸価0mgKOH/g)(以上エフカアディティブ社製)、ソルスパース13240(塩基性分散剤)、ソルスパース13940(塩基性分散剤)、ソルスパース24000(アミン価47mgKOH/g、酸価24mgKOH/g)、ソルスパース28000(塩基性分散剤)、ソルスパース32000(アミン価27.1mgKOH/g、酸価24.8mgKOH/g)などの各種ソルスパース分散剤(以上ゼネカ社製)、ディスパロン DA−234(アミン価20mgKOH/g、酸価16mgKOH/g)、ディスパロン DA−325(アミン価20mgKOH/g、酸価14mgKOH/g)(以上、楠本化成(株)製)が挙げられる。
【0022】
前記塩基性の分散剤は、単独で使用することもできるが、後述する塩基性化合物と併用して使用することが好ましい。この場合、N−ビニルラクタム類の安定性がより向上し、インク組成物の長期安定性が向上するので好ましい。
【0023】
また、その他の公知の分散剤を使用することもできる。具体的には、DisperBYK−101、DisperBYK−102、DisperBYK−103、DisperBYK−106、DisperBYK−111、DisperBYK−170、DisperBYK−171、DisperBYK−174(以上BYKケミー社製)、EFKA4010、EFKA5010(以上エフカアディティブ社製)等の高分子分散剤;ソルスパース3000,26000,36000,39000,41000,71000などの各種ソルスパース分散剤(以上ゼネカ社製);アデカプルロニックL31,F38,L42,L44,L61,L64,F68,L72,P95,F77,P84,F87、P94,L101,P103,F108、L121、P−123(旭電化(株)製)及びディスパロン KS−860,873SN(高分子分散剤)、#2150(脂肪族多価カルボン酸)、#7004(ポリエーテルエステル型)(以上楠本化成(株)製)が挙げられる。
また、フタロシアニン誘導体(商品名:EFKA−745(エフカ社製))、ソルスパース5000,12000、ソルスパース22000(ゼネカ社製)等の顔料誘導体もあわせて使用することができる。
本発明のインク組成物中における分散剤の含有量は使用目的により適宜選択されるが、インク組成物全体の重量に対し、0.01〜5重量%であることが好ましい。
【0024】
(重合性化合物)
本発明のインク組成物に用いる重合性化合物はカチオン重合性化合物、及び、ラジカル重合性化合物のいずれをも使用できる。
【0025】
<カチオン重合性化合物>
本発明に用いることができるカチオン重合性化合物は、後述するカチオン重合開始剤から発生する酸により重合反応を開始し、硬化する化合物であれば特に制限はなく、光カチオン重合性モノマーとして知られる各種公知のカチオン重合性のモノマーを使用することができる。カチオン重合性モノマーとしては、例えば、特開平6−9714号、特開2001−31892号、同2001−40068号、同2001−55507号、同2001−310938号、同2001−310937号、同2001−220526号などの各公報に記載されているエポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、オキセタン化合物などが挙げられる。
【0026】
エポキシ化合物としては、芳香族エポキシド、脂環式エポキシド、及び、脂肪族エポキシドなどが挙げられる。
芳香族エポキシドとしては、少なくとも1個の芳香族核を有する多価フェノールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体とエピクロルヒドリンとの反応によって製造されるジ又はポリグリシジルエーテルが挙げられ、例えば、ビスフェノールAあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールAあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル、並びにノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0027】
脂環式エポキシドとしては、少なくとも1個のシクロへキセン又はシクロペンテン環等のシクロアルカン環を有する化合物を、過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化することによって得られる、シクロヘキセンオキサイド又はシクロペンテンオキサイド含有化合物が好ましく挙げられる。
脂肪族エポキシドとしては、脂肪族多価アルコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル等があり、その代表例としては、エチレングリコールのジグリシジルエーテル、プロピレングリコールのジグリシジルエーテル又は1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル等のアルキレングリコールのジグリシジルエーテル、グリセリンあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はトリグリシジルエーテル等の多価アルコールのポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテルに代表されるポリアルキレングリコールのジグリシジルエーテル等が挙げられる。ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0028】
本発明に用いることのできる単官能及び多官能のエポキシ化合物を詳しく例示する。
単官能エポキシ化合物の例としては、例えば、フェニルグリシジルエーテル、p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、1,2−ブチレンオキサイド、1,3−ブタジエンモノオキサイド、1,2−エポキシドデカン、エピクロロヒドリン、1,2−エポキシデカン、スチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、3−メタクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3−アクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3−ビニルシクロヘキセンオキサイド等が挙げられる。
【0029】
また、多官能エポキシ化合物の例としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールFジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールSジグリシジルエーテル、エポキシノボラック樹脂、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールSジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンオキサイド、4−ビニルエポキシシクロヘキサン、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3’,4’−エポキシ−6’−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレングリコールのジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル類、1,1,3−テトラデカジエンジオキサイド、リモネンジオキサイド、1,2,7,8−ジエポキシオクタン、1,2,5,6−ジエポキシシクロオクタン等が挙げられる。
【0030】
これらのエポキシ化合物の中でも、芳香族エポキシド及び脂環式エポキシドが、硬化速度に優れるという観点から好ましく、特に脂環式エポキシドが好ましい。
【0031】
ビニルエーテル化合物としては、例えばエチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等のジ又はトリビニルエーテル化合物、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、イソプロペニルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル等のモノビニルエーテル化合物等が挙げられる。
【0032】
以下に、単官能ビニルエーテルと多官能ビニルエーテルを詳しく例示する。
単官能ビニルエーテルの例としては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、n−ノニルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルメチルビニルエーテル、4−メチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、ジシクロペンテニルビニルエーテル、2−ジシクロペンテノキシエチルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、ブトキシエチルビニルエーテル、メトキシエトキシエチルビニルエーテル、エトキシエトキシエチルビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールビニルエーテル、テトラヒドロフルフリルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシメチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールビニルエーテル、クロルエチルビニルエーテル、クロルブチルビニルエーテル、クロルエトキシエチルビニルエーテル、フェニルエチルビニルエーテル、フェノキシポリエチレングリコールビニルエーテル等が挙げられる。
【0033】
また、多官能ビニルエーテルの例としては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ブチレングリコールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキサイドジビニルエーテル、ビスフェノールFアルキレンオキサイドジビニルエーテルなどのジビニルエーテル類;トリメチロールエタントリビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、グリセリントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、エチレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテルなどの多官能ビニルエーテル類等が挙げられる。
ビニルエーテル化合物としては、ジ又はトリビニルエーテル化合物が、硬化性、被記録媒体との密着性、形成された画像の表面硬度などの観点から好ましく、特にジビニルエーテル化合物が好ましい。
【0034】
本発明に使用できるオキセタン化合物は、少なくとも1つのオキセタン環を有する化合物を指し、特開2001−220526号、同2001−310937号、同2003−341217号の各公報に記載される如き、公知のオキセタン化合物を任意に選択して使用できる。
本発明のインク組成物に使用し得るオキセタン環を有する化合物としては、その構造内にオキセタン環を1〜4個有する化合物が好ましい。このような化合物を使用することで、インク組成物の粘度をハンドリング性の良好な範囲に維持することが容易となり、また、硬化後のインクの被記録媒体との高い密着性を得ることができる。
【0035】
分子内に1〜2個のオキセタン環を有する化合物としては、下記式(1)〜(3)で示される化合物等が挙げられる。
【0036】
【化6】

【0037】
a1は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のフルオロアルキル基、アリル基、アリール基、フリル基又はチエニル基を表す。分子内に2つのRa1が存在する場合、それらは同じであっても異なるものであってもよい。
アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられ、フルオロアルキル基としては、これらアルキル基の水素のいずれかがフッ素原子で置換されたものが好ましく挙げられる。
a2は、水素原子、炭素数1〜6個のアルキル基、炭素数2〜6個のアルケニル基、芳香環を有する基、炭素数2〜6個のアルキルカルボニル基、炭素数2〜6個のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜6個のN−アルキルカルバモイル基を表す。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられ、アルケニル基としては、1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基、2−メチル−2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基等が挙げられ、芳香環を有する基としては、フェニル基、ベンジル基、フルオロベンジル基、メトキシベンジル基、フェノキシエチル基等が挙げられる。アルキルカルボニル基としては、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ブチルカルボニル基等が、アルキコキシカルボニル基としては、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基等が、N−アルキルカルバモイル基としては、エチルカルバモイル基、プロピルカルバモイル基、ブチルカルバモイル基、ペンチルカルバモイル基等が挙げられる。また、Ra2は置換基を有していてもよく、置換基としては、1〜6のアルキル基、フッ素原子が挙げられる。
【0038】
a3は、線状又は分枝状アルキレン基、線状又は分枝状ポリ(アルキレンオキシ)基、線状又は分枝状不飽和炭化水素基、カルボニル基又はカルボニル基を含むアルキレン基、カルボキシル基を含むアルキレン基、カルバモイル基を含むアルキレン基、又は、以下に示す基を表す。アルキレン基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基が挙げられ、ポリ(アルキレンオキシ)基としては、ポリ(エチレンオキシ)基、ポリ(プロピレンオキシ)基等が挙げられる。不飽和炭化水素基としては、プロペニレン基、メチルプロペニレン基、ブテニレン基等が挙げられる。
【0039】
【化7】

【0040】
a3が上記多価基である場合、Ra4は、水素原子、炭素数1〜4個のアルキル基、炭素数1〜4個のアルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メルカプト基、低級アルキルカルボキシル基、カルボキシル基、又はカルバモイル基を表す。
a5は、酸素原子、硫黄原子、メチレン基、NH、SO、SO2、C(CF32、又は、C(CH32を表す。
a6は、炭素数1〜4個のアルキル基、又は、アリール基を表し、nは0〜2,000の整数である。Ra7は炭素数1〜4個のアルキル基、アリール基、又は、下記構造を有する一価の基を表す。下記式中、Ra8は炭素数1〜4個のアルキル基、又はアリール基であり、mは0〜100の整数である。
【0041】
【化8】

【0042】
式(1)で表される化合物として、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン(OXT−101:東亞合成(株)製)、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン(OXT−212:東亞合成(株)製)、3−エチル−3−フェノキシメチルオキセタン(OXT−211:東亞合成(株)製)が挙げられる。式(2)で表される化合物としては、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン(OXT−121:東亞合成(株)製)が挙げられる。また、式(3)で表される化合物としては、ビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル(OXT−221:東亞合成(株)製)が挙げられる。
【0043】
3〜4個のオキセタン環を有する化合物としては、下記式(4)で示される化合物が挙げられる。
【0044】
【化9】

【0045】
式(4)において、Ra1は、前記式(1)におけるのと同義である。また、他か連結基であるRa9としては、例えば、下記A〜Cで示される基等の炭素数1〜12の分枝状アルキレン基、下記Dで示される基等の分枝状ポリ(アルキレンオキシ)基又は下記Eで示される基等の分枝状ポリシロキシ基等が挙げられる。jは、3又は4である。
【0046】
【化10】

【0047】
上記Aにおいて、Ra10はメチル基、エチル基又はプロピル基を表す。また、上記Dにおいて、pは1〜10の整数である。
【0048】
また、本発明に好適に使用し得るオキセタン化合物の別の態様として、側鎖にオキセタン環を有する下記式(5)で示される化合物が挙げられる。
【0049】
【化11】

【0050】
式(5)において、Ra8は前記式におけるのと同義である。Ra11はメチル基、エチル基、プロピル基又はブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基又はトリアルキルシリル基であり、rは1〜4である。
【0051】
このようなオキセタン環を有する化合物については、前記特開2003−341217号公報、段落番号0021ないし0084に詳細に記載され、ここに記載の化合物は本発明にも好適に使用し得る。
特開2004−91556号公報に記載されたオキセタン化合物も本発明に使用することができる。段落番号0022ないし0058に詳細に記載されている。
本発明で使用するオキセタン化合物の中でも、インク組成物の粘度と粘着性の観点から、オキセタン環を1個有する化合物を使用することが好ましい。
【0052】
本発明に用いることのできるカチオン重合性化合物は、1種のみを用いても、2種以上を併用してもよいが、インク硬化時の収縮を効果的に抑制するといった観点からは、オキセタン化合物とエポキシ化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物と、ビニルエーテル化合物とを併用することが好ましい。
インク組成物中のカチオン重合性化合物の含量は、組成物の全固形分に対し、10〜95重量%が好ましく適当であり、より好ましくは30〜90重量%、さらに好ましくは50〜85重量%の範囲である。インク組成物中のカチオン重合性化合物の含有量が上記範囲内であると、硬化性に優れるインク組成物を得ることができるので好ましい。
なお、インク組成物中のカチオン重合性化合物の含有量が上記範囲内となるように、顔料分散物中のカチオン重合性化合物の含有量及びその後に添加するカチオン重合性化合物を適宜調整することが好ましい。
【0053】
<ラジカル重合性化合物>
本発明のインク組成物は、重合性化合物としてラジカル重合性化合物を含有することができる。
ラジカル重合性化合物は、ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物であり、分子中にラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を少なくとも1つ有する化合物であればどのようなものでもよく、モノマー、オリゴマー、ポリマー等の化学形態を持つものが含まれる。ラジカル重合性化合物は1種のみ用いてもよく、また目的とする特性を向上するために任意の比率で2種以上を併用してもよく、2種以上併用して用いることが、反応性、印刷物の品質を制御する上で好ましい。
重合性化合物としては、芳香族単官能エチレン性不飽和化合物、N−ビニルラクタム類、脂肪族環状構造を有する単官能エチレン性不飽和化合物、及び、多官能エチレン性不飽和化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物を含有することがより好ましい。以下、それぞれについて詳述する。
【0054】
<芳香族単官能エチレン性不飽和化合物及び脂肪族環状構造を有する単官能エチレン性不飽和化合物>
脂肪族環状構造を有する単官能エチレン性不飽和化合物及び芳香族単官能エチレン性不飽和化合物は、以下の式(D1)で表される単官能エチレン性不飽和化合物であることが好ましい。なお、脂肪族環状構造を有する単官能エチレン性不飽和化合物とは、ヘテロ原子を含んでもよい脂環式炭化水素基を有する単官能エチレン性不飽和化合物であり、芳香族単官能エチレン性不飽和化合物とは芳香族基を有する単官能エチレン性不飽和化合物である。また、単官能エチレン性不飽和化合物は、ラジカル重合性モノマーであり、重合性のあるエチレン性不飽和結合を1つのみ有するモノマーである。重合性のあるエチレン性不飽和結合を有する基としては、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、ビニル基、ビニルオキシ基が好ましく例示できる。
なお、本発明において、脂肪族環状構造を有するラジカル重合性モノマーは、脂肪族環状構造の他にエチレン性不飽和結合を有しており、脂肪族環状構造内に有するエチレン性不飽和結合は、重合性のあるエチレン性不飽和結合に該当しない。また、芳香族単官能エチレン性不飽和化合物は、芳香族基の他に、エチレン性不飽和結合を1つ有する化合物である。
【0055】
【化12】

【0056】
上記式(D1)において、R1は水素原子、ハロゲン原子、又は、炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、X1は、単結合、エーテル結合(−O−)、エステル結合(−C(O)O−又は−OC(O)−)、アミド結合(−C(O)NH−、又は、−NHC(O)−)、カルボニル結合(−C(O)−)、分岐を有していてもよい炭素原子数20以下のアルキレン基、又はこれらを組み合わせた第2の二価の連結基が結合してもよく、第1の二価の連結基のみ又は第2の二価の連結基を有する場合はエーテル結合、エステル結合及び炭素原子数20以下のアルキレン基を有するものが好ましい。
【0057】
Yは単環芳香族基及び多環芳香族基を含む芳香族基又は脂環式炭化水素基であり、前記芳香族基及び脂環式炭化水素基は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基、シロキサン基、炭素原子数30以下の置換基を有していてもよく、前記芳香族基又は脂環炭化水素基の環状構造には、O、N、S等のヘテロ原子を含んでいてもよい。
【0058】
上記式(D1)において、R1は水素原子又は炭素原子数1〜4のアルキル基であることが好ましく、より好ましくは水素原子又はメチル基であり、特に好ましくは水素原子である。
また、X1はエステル結合を有するものであることが好ましい。
すなわち、本発明において、脂肪族環状構造を有する単官能エチレン性不飽和化合物及び芳香族単官能エチレン性不飽和化合物は、アクリレート又はメタクリレート(以下、「(メタ)アクリレート」とも表記する。)であることが好ましい。
【0059】
<芳香族単官能エチレン性不飽和化合物>
芳香族単官能エチレン性不飽和化合物は、以下の式(D2)で表される重合性モノマーであることが好ましい。
【0060】
【化13】

【0061】
式(D2)中、R1は水素原子、ハロゲン原子、又は、炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、X1は二価の連結基を表し、R5は置換基を表し、uは0〜5の整数を表し、また、u個存在するR5はそれぞれ同じであっても、異なっていてもよく、複数のR5がお互いに結合して環を形成してもよく、その環は芳香環であってもよい。
【0062】
式(D2)中、R1として好ましくは、水素原子又は炭素原子数1〜4のアルキル基であり、より好ましくは水素原子又はメチル基であり、さらに好ましくは水素原子である。
1は式(D1)におけるX1と同義である。式(D2)におけるX1のビニル基と結合する端部は、X1のカルボニル炭素とビニル基とが結合するカルボン酸エステル基又はアミド基であることが好ましく、より好ましくはカルボン酸エステル基である。特に、H2C=C(R1)−C(O)O−の構造を有するものであることが好ましい。その場合、芳香環と結合するX1の他の部分は、単結合であっても、前記の基から任意に選択したものであってもよい。
【0063】
1及びX1を含むビニル部分(H2C=C(R1)−X1−)は、芳香環の任意の位置で結合することができる。また、(A)顔料との親和性を向上させるという観点から、式(D2)におけるX1の芳香環と結合する端部は、酸素原子であることが好ましく、エーテル性酸素原子であることがより好ましく、式(D2)におけるX1は−C(O)O(CH2CH2O)p−(pは1又は2を表す。)であることがさらに好ましい。
u個存在するR5は、それぞれ独立に一価又は多価の置換基であってもよく、一価の置換基として水素原子、ヒドロキシ基、置換若しくは無置換のアミノ基、チオール基、シロキサン基、又は、さらに置換基を有していてもよい総炭素原子数30以下の炭化水素基若しくは複素環基であることが好ましい。
【0064】
式(D2)中、複数のR5は、お互いに結合して環を形成している場合には、芳香環を形成していることが好ましい。
すなわち、式(D2)中、芳香族基として好ましいものは、単環芳香族であるベンゼンから1つ以上の水素を除いた基(フェニル基、フェニレン基等)のほか、2〜4つの環を有する多環芳香族基であり、限定されるものではない。具体的には、ナフタレン、アントラセン、1H−インデン、9H−フルオレン、1H−フェナレン、フェナントレン、トリフェニレン、ピレン、ナフタセン、テトラフェニレン、ビフェニレン、as−インダセン、s−インダセン、アセナフチレン、フルオランテン、アセフェナントリレン、アセアントリレン、クリセン、プレイアンデン等から1つ以上の水素原子を除いた基が例示できる。
【0065】
これらの芳香族基は、O、N、S等のヘテロ原子を含む芳香族複素環基であってもよい。具体的には、フラン、チオフェン、1H−ピロール、2H−ピロール、1H−ピラゾール、1H−イミダゾール、イソオキサゾール、イソチアゾール、2H−ピラン、2H−チオピラン、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール等の単環芳香族複素環化合物から、少なくとも1つの水素原子を除いた基が挙げられる。
【0066】
また、チアントレン、イソベンゾフラン、イソクロメン、4H−クロメン、キサンテン、フェノキサチイン、インドリジン、イソインドール、インドール、インダゾール、プリン、4H−キノリジン、イソキノリン、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、カルバゾール、β−カルボリン、フェナントリジン、アクリジン、ペリミジン、フェナントロリン、フェナジン、フェノチアジン、フェノキサジン、ピロリジン、等の多環芳香族複素環化合物から、少なくとも1つの水素原子を除いた基が挙げられる。
【0067】
上記の芳香族基は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基、チオール基、シロキサン基、炭素原子数30以下の置換基を1又は2以上有していてもよい。例えば無水フタル酸や無水フタルイミドのように芳香族基が有する2以上の置換基でO、N、S等のヘテロ原子を含む環状構造を形成してもよい。
【0068】
本発明において、多環芳香族基としてさらに好ましいものは、2〜3つの環を有する多環芳香族基であり、特に好ましいものは、ナフチル基である。
【0069】
芳香族単官能エチレン性不飽和化合物の具体例として[L−1]〜[L−71]が好ましく挙げられるが、下記に限定されるものではない。
【0070】
【化14】

【0071】
【化15】

【0072】
【化16】

【0073】
【化17】

【0074】
【化18】

【0075】
【化19】

【0076】
【化20】

【0077】
<脂肪族環状構造を有する単官能エチレン性不飽和化合物>
脂肪族環状構造を有する単官能エチレン性不飽和化合物は、下記式(D3)で表されるノルボルネン骨格を有する化合物であることがより好ましい。
【0078】
【化21】

【0079】
式(D3)中、R1は水素原子、ハロゲン原子、又は、炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、X1は二価の連結基を表し、エーテル基(−O−)、エステル基(−C(O)O−又は−OC(O)−)、アミド基(−C(O)NR’−)、カルボニル基(−C(O)−)、窒素原子(−NR’−)、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜15のアルキレン基、又は、これらを2以上組み合わせた二価の基であることが好ましい。なお、R’は水素原子、炭素原子数1〜20の直鎖状、分岐状若しくは環状アルキル基、又は、炭素原子数6〜20のアリール基を表す。R2は置換基を表し、rは0〜5の整数を表し、qは環状炭化水素構造を表し、前記環状炭化水素構造として炭化水素結合以外にカルボニル結合(−C(O)−)及び/又はエステル結合(−C(O)O−)を含んでいてもよく、r個存在するR2はそれぞれ同じであっても、異なっていてもよく、また、ノルボルネン骨格中の一炭素原子をエーテル結合(−O−)及び/又はエステル結合(−C(O)O−)で置換してもよい。
式(D3)中、R1は水素原子又は炭素原子数1〜4のアルキル基であることが好ましく、より好ましくは水素原子又はメチル基である。
【0080】
式(D3)におけるX1のビニル基と結合する端部は、X1のカルボニル炭素とビニル基とが結合するエステル基又はアミド基であることが好ましく、より好ましくはエステル結合である。特に、H2C=C(R1)−C(O)O−の構造を有するものであることが好ましい。その場合、ノルボルネン骨格と結合するX1の他の部分は、単結合であっても、前記の基から任意に選択したものであってもよい。
1及びX1を含むビニル部分(H2C=C(R1)−X1−)は、各脂環式炭化水素構造上の任意の位置で結合することができる。なお、「各脂環式炭化水素構造上」とは、式(D3)におけるノルボルネン構造上及びqを含む環状炭化水素構造上を指す。
【0081】
また、(A)顔料との親和性を向上させるという観点から、式(D3)におけるX1の脂環式炭化水素構造と結合する端部は、酸素原子であることが好ましく、エーテル性酸素原子であることがより好ましく、式(D3)におけるX1は−C(O)O(CH2CH2O)p−(pは1又は2を表す。)であることがさらに好ましい。
【0082】
式(D3)におけるR2はそれぞれ独立に置換基を表し、各脂環式炭化水素構造上の任意の位置で結合することができる。また、r個存在するR2はそれぞれ同じであっても、異なっていてもよい。
r個存在するR2は、それぞれ独立に一価又は多価の置換基であってもよく、一価の置換基として水素原子、ヒドロキシ基、置換若しくは無置換のアミノ基、チオール基、シロキサン基、さらに置換基を有していてもよい総炭素原子数30以下の炭化水素基若しくは複素環基、又は、二価の置換基としてオキシ基(=O)であることが好ましい。
2の置換数rは0〜5の整数を表す。
【0083】
式(D3)におけるqは、環状炭化水素構造を表し、その両端はノルボルネン骨格の任意の位置で置換していてもよく、単環構造であっても、多環構造であってもよく、また、前記環状炭化水素構造として炭化水素結合以外に、カルボニル結合(−C(O)−)及び/又はエステル結合(−C(O)O−)を含んでいてもよい。
【0084】
前記式(D3)で表されるモノマーとしては、式(D4)又は式(D5)で表されるモノマーであることが好ましい。なお、式(D5)中の環状炭化水素構造中の不飽和結合は、ラジカル重合性が低く、本発明において、式(D5)で表される化合物は単官能エチレン性不飽和化合物であるものとする。
【0085】
【化22】

【0086】
式(D4)及び式(D5)中、R1は水素原子、ハロゲン原子、又は、炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、X1は二価の連結基を表し、R3及びR4はそれぞれ独立に置換基を表し、s及びtはそれぞれ独立に0〜5の整数を表し、また、s個存在するR3及びt個存在するR4はそれぞれ同じであっても、異なっていてもよい。
【0087】
式(D4)又は式(D5)におけるR1及びX1は、式(D3)におけるR1及びX1と同義であり、好ましい範囲も同様である。
式(D4)又は式(D5)におけるR1及びX1を含むビニル部分は、式(D4)又は式(D5)における下記に示す各脂環式炭化水素構造上の任意の位置で結合することができる。
【0088】
【化23】

【0089】
式(D4)又は式(D5)におけるR3及びR4はそれぞれ独立に置換基を表し、式(D4)又は式(D5)における上記各脂環式炭化水素構造上の任意の位置で結合することができる。R3及びR4における置換基は、式(D4)のR2における置換基と同義であり、好ましい範囲も同様である。
式(D4)又は式(D5)におけるs及びtはそれぞれ独立に0〜5の整数を表し、また、s個存在するR3及びt個存在するR4はそれぞれ同じであっても、異なっていてもよい。
【0090】
式(D3)で表されるモノマーとして、単官能アクリレートの好ましい具体例を以下に示す。
なお、下記例示化合物の一部において、炭化水素鎖を炭素(C)及び水素(H)の記号を省略した簡略構造式で記載する。
【0091】
【化24】

【0092】
式(D3)で表されるモノマーとして、単官能メタクリレートの好ましい具体例を以下に示す。
【0093】
【化25】

【0094】
式(D3)で表されるモノマーとして、単官能アクリルアミドの好ましい具体例を以下に示す。
【0095】
【化26】

【0096】
<N−ビニルラクタム類>
本発明において、重合性化合物として、N−ビニルラクタム類を使用することができる。本発明に用いることができるN−ビニルラクタム類の好ましい例として、下記式(D6)で表される化合物が挙げられる。
【0097】
【化27】

【0098】
式(D6)中、mは1〜5の整数を表し、インク組成物が硬化した後の柔軟性、被記録媒体との密着性、及び、原材料の入手性の観点から、mは2〜4の整数であることが好ましく、mが2又は4であることがより好ましく、mが4である、すなわちN−ビニルカプロラクタムであることが特に好ましい。N−ビニルカプロラクタムは安全性に優れ、汎用的で比較的安価に入手でき、特に良好なインク硬化性、及び硬化膜の支持体への密着性が得られるので好ましい。
【0099】
また、上記N−ビニルラクタム類は、ラクタム環上にアルキル基、アリール基等の置換基を有していてもよく、飽和又は不飽和環構造を連結していてもよい。上記N−ビニルラクタム類はインク組成物中に1種のみ含有されていてもよく複数種含有されていてもよい。
【0100】
<多官能モノマー>
ラジカル重合性化合物としてアクリレート基、メタクリレート基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、ビニルオキシ基、及びN−ビニル基よりなる群から選択されるエチレン性不飽和二重結合基を2つ以上有する多官能モノマーを使用することもできる。多官能モノマーを含有することで、高い硬化膜強度を有する画像を提供できるインク組成物が得られる。
【0101】
多官能モノマーは具体的には、ビス(4−アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、変性グリセリントリ(メタ)アクリレート、変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのPO付加物ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのEO付加物ジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でも、環状構造を有していない非環状多官能モノマーが好ましい。
【0102】
本発明に用いることができるインク組成物の全体に対するラジカル重合性化合物の総量は40〜95重量%であることが好ましく、50〜90重量%であることがより好ましく、60〜85重量%含有することがさらに好ましい。上記範囲内であると、硬化性に優れ、また、粘度が適度であるため好ましい。
【0103】
本発明において、ラジカル重合性化合物として芳香族単官能エチレン性不飽和化合物を含有する場合には、芳香族単官能エチレン性不飽和化合物の含有量は、インク組成物全体の80重量%以下であることが好ましく、より好ましくは5〜70重量%であり、さらに好ましくは10〜50重量%である。上記の数値の範囲内であると、適切な粘度に調整でき、インクジェット吐出性に優れるため好ましい。
【0104】
本発明において、N−ビニルラクタム類を用いる場合は、インク組成物全体の50重量%以下含有することが好ましく、より好ましくは5〜45重量%であり、さらに好ましくは、10〜40重量%である。上記範囲において他のラジカル重合性化合物との良好な共重合性を示し、硬化性に優れるインク組成物が得られるので好ましい。
【0105】
また、脂肪族環状構造を有する単官能エチレン性不飽和化合物を使用する場合には、インク組成物全体の50重量%以下含有することが好ましく、5〜45重量%含有することがより好ましく、10〜40重量%含有することがさらに好ましい。上記範囲において硬化性、耐擦過性に優れるインク組成物が得られるので好ましい。
【0106】
硬化膜の基材(被記録媒体)密着性を保持する観点で、多官能モノマーがインク組成物全体に占める割合は、70重量%以下であることが好ましい。より好ましくは0〜60重量%である。特に柔軟な硬化膜を得るためには0〜40重量%であることが好ましく、1〜30重量%であることがより好ましい。
【0107】
(重合開始剤)
本発明のインク組成物は、重合開始剤を含有する。
本発明で用いることができる重合開始剤としては、公知の重合開始剤を使用することができる。本発明に用いることができる重合開始剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、カチオン重合開始剤とラジカル重合開始剤とを併用してもよい。
本発明に用いることのできる重合開始剤は、外部エネルギーを吸収して重合開始種を生成する化合物である。重合を開始するために使用される外部エネルギーは、熱及び活性放射線に大別され、それぞれ、熱重合開始剤及び光重合開始剤が使用される。活性放射線としては、γ線、β線、電子線、紫外線、可視光線、赤外線が例示できる。
【0108】
<カチオン重合開始剤>
本発明のインク組成物において、カチオン重合性化合物を使用する場合には、カチオン重合開始剤を併用することが好ましい。
【0109】
第1に、ジアゾニウム、アンモニウム、ヨードニウム、スルホニウム、ホスホニウムなどの芳香族オニウム化合物のB(C654-、PF6-、AsF6-、SbF6-、CF3SO3-塩を挙げることができる。第2に、スルホン酸を発生するスルホン化物を挙げることができる。第3に、ハロゲン化水素を光発生するハロゲン化物も用いることができる。第4に、鉄アーレン錯体を挙げることができる。
【0110】
また、例えば、S. I. Schlesinger, Photogr. Sci. Eng., 18, 387 (1974)、T. S. Bal et al, Polymer, 21, 423 (1980)等に記載のジアゾニウム塩、米国特許第4,069,055号、同4,069,056号、同 Re 27,992号、特開平3−140140号等に記載のアンモニウム塩、D. C. Necker et al, Macromolecules, 17, 2468 (1984)、C. S. Wen et al, Tech, Proc. Conf. Rad. Curing ASIA, p478 Tokyo, Oct (1988)、米国特許第4,069,055 号、同4,069,056号等に記載のホスホニウム塩、J. V. Crivello et al, Macromolecules, 10(6), 1307 (1977)、Chem. & Eng. News, Nov. 28, p31 (1988)、欧州特許第104,143号、同第339,049号、同第410,201号、特開平2−150848号、特開平2−296514号等に記載のヨードニウム塩、
【0111】
J. V. Crivello et al, Polymer J. 17, 73 (1985)、J. V. Crivello et al, J. Org. Chem., 43, 3055 (1978)、W. R. Watt et al, J. Polymer Sci., Polymer Chem. Ed., 22, 1789 (1984)、J. V. Crivello et al, Polymer Bull., 14, 279 (1985)、J. V. Crivello et al, Macromolecules, 14(5), 1141 (1981)、J. V. Crivello et al, J. Polymer Sci., Polymer Chem. Ed., 17, 2877 (1979)、欧州特許第370,693号、同161,811号、同410,201号、同339,049号、同233,567号、同297,443号、同297,442号、米国特許第3,902,114号、同4,933,377号、同4,760,013号、同4,734,444号、同2,833,827号、独国特許第2,904,626号、同3,604,580号、同3,604,581号、特開平7−28237号、同8−27102号等に記載のスルホニウム塩、
【0112】
J. V. Crivello et al, Macromolecules, 10(6), 1307 (1977)、J. V. Crivello et al, J. Polymer Sci., Polymer Chem. Ed., 17, 1047 (1979)等に記載のセレノニウム塩、C. S. Wen et al, Tech, Proc. Conf. Rad. Curing ASIA, p478 Tokyo, Oct (1988)等に記載のアルソニウム塩等のオニウム塩、米国特許第3,905,815号、特公昭46−4605号、特開昭48−36281号、特開昭55−32070号、特開昭60−239736号、特開昭61−169835号、特開昭61−169837号、特開昭62−58241号、特開昭62−212401号、特開昭63−70243号、特開昭63−298339号等に記載の有機ハロゲン化合物、K. Meier et al, J. Rad. Curing, 13(4), 26 (1986)、T. P. Gill et al, Inorg. Chem., 19, 3007 (1980)、D. Astruc, Acc. Chem. Res., 19(12), 377 (1986)、特開平2−161445号等に記載の有機金属/有機ハロゲン化物、
【0113】
S. Hayase et al, J. Polymer Sci., 25, 753 (1987)、E. Reichmanis et al, J. Polymer Sci., Polymer Chem. Ed., 23, 1 (1985)、Q. Q. Zhu et al, J. Photochem., 36, 85, 39, 317 (1987)、B. Amit et al, Tetrahedron Lett., (24) 2205 (1973)、D. H. R. Barton et al, J. Chem. Soc., 3571 (1965)、P. M. Collins et al, J. Chem. Soc., Perkin I, 1695 (1975)、M. Rudinstein et al,Tetrahedron Lett., (17), 1445 (1975)、J. W. Walker et al, J. Am. Chem. Soc., 110, 7170 (1988)、S. C. Busman et al, J. Imaging Technol., 11 (4), 191 (1985)、H. M. Houlihan et al, Macromolecules, 21, 2001 (1988)、P. M. Collins et al, J. Chem. Soc., Chem. Commun., 532 (1972)、S. Hayase et al, Macromolecules, 18, 1799 (1985)、E. Reichmanis et al, J. Electrochem. Soc., Solid State Sci. Technol., 130(6)、F. M. Houlihan et al, Macromolcules, 21, 2001 (1988)、欧州特許第0290,750号、同046,083号、同156,535号、同271,851号、同0,388,343号、米国特許第3,901,710号、同4,181,531号、特開昭60−198538号、特開昭53−133022号等に記載のO−ニトロベンジル型保護基を有する重合開始剤、
【0114】
M. TUNOOKA et al, Polymer Preprints Japan, 35(8)、G.Berner et al, J. Rad. Curing, 13(4)、W. J. Mijs et al, Coating Technol., 55 (697), 45 (1983)、Akzo H. Adachi et al, Polymer Preprints, Japan, 37(3)、欧州特許第0199,672号、同84515号、同044,115号、同第618,564号、同0101,122号、米国特許第4,371,605号、同4,431,774号、特開昭64−18143号、特開平2−245756号、特開平3−140109号等に記載のイミノスルフォネ−ト等に代表される光分解してスルホン酸を発生する化合物、特開昭61−166544号、特開平2−71270号等に記載のジスルホン化合物、特開平3−103854号、同3−103856号、同4−210960号等に記載のジアゾケトスルホン、ジアゾジスルホン化合物を挙げることができる。
【0115】
また、これらの光により酸を発生する基、あるいは化合物をポリマーの主鎖又は側鎖に導入した化合物、たとえば、M. E. Woodhouse et al, J. Am. Chem. Soc., 104, 5586 (1982)、S. P. Pappas et al, J. Imaging Sci., 30(5), 218 (1986)、S. Kondo et al, Macromol. Chem., Rapid Commun., 9, 625 (1988)、Y. Yamada et al, Macromol. Chem., 152, 153, 163 (1972)、J. V. Crivello et al, J. Polymer Sci., Polymer Chem. Ed., 17, 3845 (1979)、米国特許第3,849,137号、独国特許第3,914,407号、特開昭63−26653号、特開昭55−164824号、特開昭62−69263号、特開昭63−146038号、特開昭63−163452号、特開昭62−153853号、特開昭63−146029号等に記載の化合物を用いることができる。たとえば、ジアゾニウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、セレノニウム塩、アルソニウム塩等のオニウム塩、有機ハロゲン化合物、有機金属/有機ハロゲン化物、o−ニトロベンジル型保護基を有する重合開始剤、イミノスルフォネート等に代表される光分解してスルホン酸を発生する化合物、ジスルホン化合物、ジアゾケトスルホン、ジアゾジスルホン化合物を挙げることができる。
【0116】
さらにV. N. R. Pillai, Synthesis, (1), 1 (1980)、A. Abad et al, Tetrahedron Lett., (47) 4555 (1971)、D. H. R. Barton et al, J. Chem. Soc., (C), 329 (1970)、米国特許第3,779,778号、欧州特許第126,712号等に記載の光により酸を発生する化合物も使用することができる。
【0117】
<ラジカル重合開始剤>
本発明に用いることができる光ラジカル重合開始剤としては、(a)芳香族ケトン類、(b)アシルホスフィン化合物、(c)芳香族オニウム塩化合物、(d)有機過酸化物、(e)チオ化合物、(f)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(g)ケトオキシムエステル化合物、(h)ボレート化合物、(i)アジニウム化合物、(j)メタロセン化合物、(k)活性エステル化合物、及び、(l)炭素ハロゲン結合を有する化合物、等が挙げられる。これらのラジカル重合開始剤は、上記(a)〜(l)の化合物を単独もしくは組み合わせて使用してもよい。本発明におけるラジカル重合開始剤は単独もしくは2種以上の併用によって好適に用いられる。
【0118】
(a)芳香族ケトン類、(b)アシルホスフィン化合物、及び、(e)チオ化合物の好ましい例としては、"RADIATION CURING IN POLYMER SCIENCE AND TECHNOLOGY", J. P. FOUASSIER, J.F.RABEK(1993)、pp.77〜117記載のベンゾフェノン骨格又はチオキサントン骨格を有する化合物等が挙げられる。より好ましい例としては、特公昭47−6416号公報記載のα−チオベンゾフェノン化合物、特公昭47−3981号公報記載のベンゾインエーテル化合物、特公昭47−22326号公報記載のα−置換ベンゾイン化合物、特公昭47−23664号公報記載のベンゾイン誘導体、特開昭57−30704号公報記載のアロイルホスホン酸エステル、特公昭60−26483号公報記載のジアルコキシベンゾフェノン、特公昭60−26403号公報、特開昭62−81345号公報記載のベンゾインエーテル類、特公平1−34242号公報、米国特許第4,318,791号、ヨーロッパ特許0284561A1号記載のα−アミノベンゾフェノン類、特開平2−211452号公報記載のp−ジ(ジメチルアミノベンゾイル)ベンゼン、特開昭61−194062号公報記載のチオ置換芳香族ケトン、特公平2−9597号公報記載のアシルホスフィンスルフィド、特公平2−9596号公報記載のアシルホスフィン、特公昭63−61950号公報記載のチオキサントン類、特公昭59−42864号公報記載のクマリン類等を挙げることができる。
【0119】
(c)芳香族オニウム塩化合物としては、周期律表の15、16及び17族の元素、具体的にはN、P、As、Sb、Bi、O、S、Se、Te、又はIの芳香族オニウム塩が含まれる。例えば、欧州特許104143号明細書、米国特許4837124号明細書、特開平2−150848号公報、特開平2−96514号公報に記載されるヨードニウム塩類、欧州特許370693号、同233567号、同297443号、同297442号、同279210号、及び同422570号の各明細書、米国特許3902144号、同4933377号、同4760013号、同4734444号、及び同2833827号の各明細書に記載されるジアゾニウム塩類(置換基を有してもよいベンゼンジアゾニウム等)、ジアゾニウム塩樹脂類(ジアゾジフェニルアミンのホルムアルデヒド樹脂等)、N−アルコキシピリジニウム塩類等(例えば、米国特許4,743,528号明細書、特開昭63−138345号、特開昭63−142345号、特開昭63−142346号、及び特公昭46−42363号の各公報等に記載されるもので、具体的には1−メトキシ−4−フェニルピリジニウムテトラフルオロボレート等)、さらには特公昭52−147277号、同52−14278号、及び同52−14279号の各公報記載の化合物が好適に使用される。活性種としてラジカルや酸を生成する。
【0120】
(d)有機過酸化物としては、分子中に酸素−酸素結合を1個以上有する有機化合物のほとんど全てが含まれるが、その例としては、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−アミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ヘキシルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−オクチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(クミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(p−イソプロピルクミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、ジ−t−ブチルジパーオキシイソフタレートなどの過酸化エステル系の化合物が好ましい。
【0121】
(f)ヘキサアリールビイミダゾール化合物としては、特公昭45−37377号公報、特公昭44−86516号公報記載のロフィンダイマー類、例えば2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−ブロモフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o,p−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラ(m−メトキシフェニル)ビイミダゾール、2,2’−ビス(o,o’−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−ニトロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−メチルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−トリフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール等が挙げられる。
【0122】
(g)ケトオキシムエステル化合物としては、3−ベンゾイロキシイミノブタン−2−オン、3−アセトキシイミノブタン−2−オン、3−プロピオニルオキシイミノブタン−2−オン、2−アセトキシイミノペンタン−3−オン、2−アセトキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ベンゾイロキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、3−p−トルエンスルホニルオキシイミノブタン−2−オン、2−エトキシカルボニルオキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン等が挙げられる。
【0123】
(h)ボレート化合物の例としては、米国特許3,567,453号、同4,343,891号、ヨーロッパ特許109,772号、同109,773号の各明細書に記載されている化合物が挙げられる。
【0124】
(i)アジニウム化合物の例としては、特開昭63−138345号、特開昭63−142345号、特開昭63−142346号、特開昭63−143537号、及び特公昭46−42363号の各公報記載のN−O結合を有する化合物群を挙げることができる。
【0125】
(j)メタロセン化合物の例としては、特開昭59−152396号、特開昭61−151197号、特開昭63−41484号、特開平2−249号、特開平2−4705号の各公報記載のチタノセン化合物ならびに、特開平1−304453号、特開平1−152109号の各公報記載の鉄−アレーン錯体を挙げることができる。
【0126】
上記チタノセン化合物の具体例としては、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ジ−クロライド、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−フェニル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4,6−トリフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−2,6−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4−ジフルオロフェニ−1−イル、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(ピリ−1−イル)フェニル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(メチルスルホンアミド)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−ブチルビアロイルアミノ)フェニル〕チタン等を挙げることができる。
【0127】
(k)活性エステル化合物の例としては、欧州特許0290750号、同046083号、同156153号、同271851号、及び同0388343号の各明細書、米国特許3901710号、及び同4181531号の各明細書、特開昭60−198538号、及び特開昭53−133022号の各公報に記載されるニトロベンズルエステル化合物、欧州特許0199672号、同84515号、同199672号、同044115号、及び同0101122号の各明細書、米国特許4618564号、同4371605号、及び同4431774号の各明細書、特開昭64−18143号、特開平2−245756号、及び特開平4−365048号の各公報記載のイミノスルホネート化合物、特公昭62−6223号、特公昭63−14340号、及び特開昭59−174831号の各公報に記載される化合物等が挙げられる。
【0128】
(l)炭素ハロゲン結合を有する化合物の好ましい例としては、例えば、若林ら著、Bull. Chem. Soc. Japan、42、2924(1969)記載の化合物、英国特許1388492号明細書記載の化合物、特開昭53−133428号公報記載の化合物、独国特許3337024号明細書記載の化合物等を挙げることができる。
【0129】
また、F. C. Schaefer等によるJ. Org. Chem.、29、1527(1964)記載の化合物、特開昭62−58241号公報記載の化合物、特開平5−281728号公報記載の化合物等を挙げることができる。ドイツ特許第2641100号に記載されているような化合物、ドイツ特許第3333450号に記載されている化合物、ドイツ特許第3021590号に記載の化合物群、あるいはドイツ特許第3021599号に記載の化合物群等を挙げることができる。
【0130】
本発明のインク組成物における重合開始剤の含有量は、重合性化合物の総含有量に対して、0.01〜35重量%であることが好ましく、0.5〜20重量%であることがより好ましく、1.0〜15重量%であることがさらに好ましい。0.01重量%以上であると、組成物を十分硬化させることができ、35重量%以下であると、硬化度が均一な硬化膜を得ることができる。
また、本発明のインク組成物に後述する増感剤を用いる場合、重合開始剤の総使用量は、増感剤に対して、重合開始剤:増感剤の重量比で、好ましくは200:1〜1:200、より好ましくは50:1〜1:50、さらに好ましくは20:1〜1:5の範囲である。
【0131】
(アゾ顔料)
本発明に用いられるアゾ顔料は、代表的には式(1)で表され、前記アゾ顔料は式(1)で表される構造であっても、その互変異性体であってもよく、また、それらの塩及び水和物の少なくとも1種であってもよい。
以下、下記式(1)で表されるアゾ顔料について説明する。
式(1)で表される化合物は、その特異的な構造により分子間相互作用を形成しやすく、水又は有機溶媒等に対する溶解性が低く、アゾ顔料とすることができる。
顔料は、水や有機溶媒等に分子分散状態で溶解させて使用する染料とは異なり、溶媒中に分子集合体等の固体粒子として微細に分散させて用いるものである。
【0132】
【化28】

式(1)中、Qはそれが結合する2つの炭素原子と共に5〜7員のヘテロ環を形成するのに必要な非金属原子団を表し、Wはアルコキシ基、アミノ基、アルキル基又はアリール基を表し、X1、X2はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アシル基、アルキルスルホニル基又はアリールスルホニル基を表し、R1は水素原子又は置換基を表し、R2はヘテロ環基を表し、nは1〜4の整数を表す。n=2〜4の場合は、Q、W、X1、X2、R1、又はR2を介して結合した2〜4量体をそれぞれ表す。
【0133】
nが1の場合、式(1)で表されるアゾ顔料は、モノ型アゾ顔料を表す。
またnが2の場合、式(1)で表されるアゾ顔料は、括弧内に示されるアゾ化合物の2つが、Q、W、X1、X2、R1、及びR2のいずれかを介して互いに結合したビス型アゾ顔料を表す。
【0134】
nが3の場合、式(1)で表されるアゾ顔料は、括弧内に示されるアゾ化合物の3つが、Q、W、X1、X2、R1、及びR2のいずれかを介して互いに結合したトリス型アゾ顔料を表す。前記各アゾ化合物の結合様式としては、例えば、前記アゾ化合物の1つにおけるQ、W、X1、X2、R1、及びR2のうちの2つが二価の基であって、他の2つのアゾ化合物におけるQ、W、X1、X2、R1、及びR2のいずれかがそれぞれ二価の基であるか、前記アゾ化合物の1つにおけるQ、W、X1、X2、R1、及びR2のうちの1つが3価の基であって、他の2つのアゾ化合物におけるQ、W、X1、X2、R1、及びR2のいずれかがそれぞれ二価の基である。
【0135】
nが4の時、式(1)で表されるアゾ顔料は、括弧内に示されるアゾ化合物の4つが、Q、W、X1、X2、R1、及びR2のいずれかを介して互いに結合したテトラキス型アゾ顔料を表す。前記各アゾ化合物の結合様式としては、例えば、前記アゾ化合物の1つにおけるQ、W、X1、X2、R1、及びR2のうちの3つが二価の基であって、他の3つのアゾ化合物におけるQ、W、X1、X2、R1、及びR2のいずれかがそれぞれ二価の基であるか、前記アゾ化合物の1つにおけるQ、W、X1、X2、R1、及びR2のうちの2つが二価の基で、他の1つが3価の基であって、他の3つのアゾ化合物におけるQ、W、X1、X2、R1、及びR2のいずれかがそれぞれ二価の基であるか、前記アゾ化合物の1つにおけるQ、W、X1、X2、R1、及びR2のうちの1つが4価の基で、他の3つのアゾ化合物におけるQ、W、X1、X2、R1、及びR2のいずれかがそれぞれ二価の基である。
【0136】
本発明においてnは、1〜3の整数が好ましく、さらに1又は2が好ましく、その中でも特に2が最も好ましい。nを2とすることで水や有機溶剤に対する溶解性が低下(実質的に難溶化)し、耐水性、耐薬品堅牢性が向上する点で好ましい。
【0137】
式(1)において、X1、X2はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アシル基、アルキルスルホニル基又はアリールスルホニル基を表す。
【0138】
1、X2で表されるアルキル基としては、それぞれ独立に直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルキル基が挙げられ、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、更に環構造が多いトリシクロ構造なども包含するものである。以下に説明する置換基の中のアルキル基(例えば、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、アルキルスルホニル基のアルキル基)もこのような概念のアルキル基を表す。
具体的には、アルキル基としては、好ましくは、炭素数1から30のアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、n−オクチル基、エイコシル基、2−クロロエチル基、2−シアノエチル基、2―エチルヘキシル基等が挙げられる。シクロアルキル基としては、好ましくは、炭素数3から30の置換又は無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、4−n−ドデシルシクロヘキシル基等が挙げられる。ビシクロアルキル基としては、好ましくは、炭素数5から30の置換もしくは無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5から30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基、例えば、ビシクロ[1.2.2]ヘプタン−2−イル基、ビシクロ[2.2.2]オクタン−3−イル基等が挙げられる。
【0139】
1、X2で表される好ましいアシル基としては、それぞれ独立に、ホルミル基、炭素数2から30の置換又は無置換のアルキルカルボニル基、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールカルボニル基、炭素数2から30の置換もしくは無置換の炭素原子でカルボニル基と結合している複素環カルボニル基、例えば、アセチル基、ピバロイル基、2−クロロアセチル基、ステアロイル基、ベンゾイル基、p−n−オクチルオキシフェニルカルボニル基、2−ピリジルカルボニル基、2−フリルカルボニル基等が挙げられる。
【0140】
1、X2で表される好ましいアルキルスルホニル基又はアリールスルホニル基としては、それぞれ独立に炭素数1から30の置換又は無置換のアルキルスルホニル基、6から30の置換又は無置換のアリールスルホニル基、例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、フェニルスルホニル基、p−メチルフェニルスルホニル基等が挙げられる。
【0141】
その中でも好ましいX1、X2は、それぞれ独立に水素原子、アシル基、アルキルスルホニル基であり、特に好ましくは、水素原子であり、その中でも特にX1とX2が共に水素原子であることが最も好ましい。
【0142】
式(1)において、Wはアルコキシ基、アミノ基、アルキル基又はアリール基を表す。
【0143】
Wで表されるアルコキシ基としては、好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルコキシ基、例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、t−ブトキシ基、n−オクチルオキシ基、2−メトキシエトキシ基等が挙げられる。
【0144】
Wで表されるアミノ基としては、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基を含み、好ましくは、アミノ基、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルアミノ基、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアニリノ基、例えば、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、アニリノ基、N−メチル−アニリノ基、ジフェニルアミノ基等が挙げられる。
【0145】
Wで表されるアルキル基としては、前記X1、X2で表されるアルキル基と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0146】
Wで表されるアリール基としては、好ましくは、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリール基、例えば、フェニル基、p−トリル基、ナフチル基、m−クロロフェニル基、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル基等が挙げられる。
【0147】
その中でも好ましいWは、アルコシキ基、アミノ基又はアルキル基であり、より好ましくはアルコキシ基、又はアミノ基であり、さらに好ましくは、総炭素数5以下のアルコキシ基、アミノ基(−NH2基)、総炭素数5以下のアルキルアミノ基であり、特に好ましくは、総炭素数3以下のアルコキシ基又は総炭素数3以下のアルキルアミノ基であり、その中でも特にメトキシ基が最も好ましい。
Wが、総炭素数5以下のアルコキシ基、アミノ基、又は総炭素数5以下のアルキルアミノ基の場合、色素分子が分子内及び分子間で相互作用を強固に形成しやすくなり、より安定な分子配列の顔料を構成しやすくなることで、良好な色相、高い堅牢性(耐光・ガス・熱・水・薬品)の点で好ましい。
【0148】
式(1)において、R1は水素原子又は置換基を表し、R1が置換基を表す場合の置換基としては、炭素数1〜12の直鎖又は分岐鎖アルキル基、炭素数7〜18の直鎖又は分岐鎖アラルキル基、炭素数2〜12の直鎖又は分岐鎖アルケニル基、炭素数2〜12の直鎖又は分岐鎖アルキニル基、炭素数3〜12の直鎖又は分岐鎖シクロアルキル基、炭素数3〜12の直鎖又は分岐鎖シクロアルケニル基(例えばメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、2−エチルヘキシル、2−メチルスルホニルエチル、3−フェノキシプロピル、トリフルオロメチル、シクロペンチル)、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子)、アリール基(例えば、フェニル、4−t−ブチルフェニル、2,4−ジ−t−アミルフェニル)、ヘテロ環基(例えば、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、2−フリル、2−チエニル、2−ピリミジニル、2−ベンゾチアゾリル)、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、カルボキシ基、アミノ基、アルキルオキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、2−メトキシエトキシ、2−メチルスルホニルエトキシ)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ、2−メチルフェノキシ、4−t−ブチルフェノキシ、3−ニトロフェノキシ、3−t−ブチルオキシカルボニルフェノキシ、3−メトキシカルボニルフェニルオキシ、アシルアミノ基(例えば、アセトアミド、ベンズアミド、4−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノキシ)ブタンアミド)、アルキルアミノ基(例えば、メチルアミノ、ブチルアミノ、ジエチルアミノ、メチルブチルアミノ)、アリールアミノ基(例えば、フェニルアミノ、2−クロロアニリノ)、ウレイド基(例えば、フェニルウレイド、メチルウレイド、N,N−ジブチルウレイド)、スルファモイルアミノ基(例えば、N,N−ジプロピルスルファモイルアミノ)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ、オクチルチオ、2−フェノキシエチルチオ)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ、2−ブトキシ−5−t−オクチルフェニルチオ、2−カルボキシフェニルチオ)、アルキルオキシカルボニルアミノ基(例えば、メトキシカルボニルアミノ)、アルキルスルホニルアミノ基及びアリールスルホニルアミノ基(例えば、メチルスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ、p−トルエンスルホニルアミノ)、カルバモイル基(例えば、N−エチルカルバモイル、N,N−ジブチルカルバモイル)、スルファモイル基(例えば、N−エチルスルファモイル、N,N−ジプロピルスルファモイル、N−フェニルスルファモイル)、スルホニル基(例えば、メチルスルホニル、オクチルスルホニル、フェニルスルホニル、p−トルエンスルホニル)、アルキルオキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、ブチルオキシカルボニル)、ヘテロ環オキシ基(例えば、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ、2−テトラヒドロピラニルオキシ)、アゾ基(例えば、フェニルアゾ、4−メトキシフェニルアゾ、4−ピバロイルアミノフェニルアゾ、2−ヒドロキシ−4−プロパノイルフェニルアゾ)、アシルオキシ基(例えば、アセトキシ)、カルバモイルオキシ基(例えば、N−メチルカルバモイルオキシ、N−フェニルカルバモイルオキシ)、シリルオキシ基(例えば、トリメチルシリルオキシ、ジブチルメチルシリルオキシ)、アリールオキシカルボニルアミノ基(例えば、フェノキシカルボニルアミノ)、イミド基(例えば、N−スクシンイミド、N−フタルイミド)、ヘテロ環チオ基(例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ、2,4−ジ−フェノキシ−1,3,5−トリアゾール−6−チオ、2−ピリジルチオ)、スルフィニル基(例えば、3−フェノキシプロピルスルフィニル)、ホスホニル基(例えば、フェノキシホスホニル、オクチルオキシホスホニル、フェニルホスホニル)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェノキシカルボニル)、アシル基(例えば、アセチル、3−フェニルプロパノイル、ベンゾイル)、イオン性親水性基(例えば、カルボキシル基、スルホ基、ホスホノ基及び4級アンモニウム基)が挙げられる。
【0149】
式(1)において、好ましいR1は、置換もしくは無置換の総炭素数1〜8のアシルアミノ基、置換もしくは無置換の総炭素数1〜12のアルキル基、置換もしくは無置換の総炭素数6〜18のアリール基、又は置換もしくは無置換の総炭素数4〜12のヘテロ環基であり、より好ましくは、総炭素数1〜8の直鎖アルキル基又は分岐アルキル基であり、更にメチル基又はt−ブチル基が好ましくその中でも特にt−ブチル基が最も好ましい。
【0150】
式(1)において、R2はヘテロ環基を表し、それらは更に縮環していてもよい。R2として好ましくは5〜8員のヘテロ環基であり、より好ましくは、5又は6員の置換もしくは無置換のヘテロ環基であり、特に好ましくは、炭素数3から10の6員含窒素ヘテロ環基である。
【0151】
前記R2で表されるヘテロ環基を、置換位置を限定しないで例示すると、ピリジル、ピラジニル、ピリダジニル、ピリミリジル、トリアジニル、キノリニル、イソキノリニル、キナゾリニル、シンノリニル、フタラジニル、キノキサリニル、ピロリル、インドリル、フリル、ベンゾフリル、チエニル、ベンゾチエニル、ピラゾリル、イミダゾリル、ベンズイミダゾリル、トリアゾリル、オキサゾリル、ベンズオキサゾリル、チアゾリル、ベンゾチアゾリル、イソチアゾリル、ベンズイソチアゾリル、チアジアゾリル、イソオキサゾリル、ベンズイソオキサゾリル、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、イミダゾリジニル、チアゾリニル、スルホラニルなどが挙げられる。
【0152】
2で表されるヘテロ環基の好ましい例としては、ピリジン環、ピリミジン環、S−トリアジン環、ピリダジン環、ピラジン環、1,2,4−チアジアゾール環、1,3,4−チアジアゾール環、イミダゾール環に由来する基であり、より好ましくは、ピリジン環、ピリミジン環、S−トリアジン環、ピリダジン環、ピラジン環に由来する基であり、特に好ましくは、ピリミジン環、S−トリアジン環に由来する基であり、その中でも特にピリミジン環に由来する基が最も好ましい。
ここでヘテロ環に由来する基とは、ヘテロ環化合物から水素原子を1つ取り除いて形成される基を意味し、水素原子が取り除かれる位置は特に限定されない。
【0153】
式(1)において、Qはそれが結合する2つの炭素原子と共に5〜7員のヘテロ環を形成するのに必要な非金属原子団を表す。前記ヘテロ環には、脂肪族環、芳香族環、又は他のヘテロ環が縮合していてもよい。
Qが炭素原子と共に形成する5〜7員のヘテロ環としては、例えば、チオフェン環、フラン環、ピロール環、インドリン環、イミダゾール環、ピラゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、トリアジン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、オキサアゼピン環などが挙げられる。各ヘテロ環は、更に置換基を有していてもよい。前記置換基は、式(1)中のR1における置換基と同義である。
【0154】
Qが炭素原子と共に形成する5〜7員のヘテロ環として好ましくは、5員の含窒素ヘテロ環であり、特に好ましくは、下記式(a)〜(i)で表されるヘテロ環のいずれかであることが最も好ましい。
なお、下記式(a)〜(i)において、「*」は式(1)におけるアゾ基との結合位置を表す。
【0155】
【化29】

【0156】
式(a)〜(i)において、Raは、水素原子又は置換基を表し、Rb及びRcは、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又はヘテロ環基を表す。
Wは式(1)中のWと同義であり好ましいものも同じである。
【0157】
Raとして好ましくは、水素原子、置換もしくは無置換の総炭素数1〜12のアルキル基、置換もしくは無置換の総炭素数6〜18のアリール基、又は置換もしくは無置換の総炭素数4〜12ヘテロ環基であり、より好ましくは、水素原子、総炭素数1〜8の直鎖アルキル基及び又は分岐アルキル基であり、特に好ましくは、水素原子、又は総炭素数1〜4の直鎖アルキル基であり、水素原子、メチル基が好ましく、その中でも特に水素原子が最も好ましい。
【0158】
Rb、Rcとして好ましくは、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のアルキニル基、置換もしくは無置換のアラルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、又は置換もしくは無置換のヘテロ環基であり、より好ましくは、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、又は置換もしくは無置換のヘテロ環基であり、特に好ましくは、総炭素数3以下のアルキル基であり、その中でも特にメチル基が最も好ましい。
【0159】
本発明において、Q、W、X1、X2、R1、及びR2が、更に置換基を有する場合の置換基としては、下記の置換基(以下「置換基J」と称する場合がある)を挙げることができる。
【0160】
例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル又はアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、アルキル又はアリールスルフィニル基、アルキル又はアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール又はヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基が例として挙げられる。
【0161】
本発明の式(1)で表される顔料の好ましい置換基の組み合わせについては、種々の置換基の少なくとも1つが前記の好ましい基である化合物が好ましく、より多くの種々の置換基が前記好ましい基である化合物がより好ましく、全ての置換基が前記好ましい基である化合物が最も好ましい。
【0162】
本発明の式(1)で表されるアゾ顔料として特に好ましい置換基の組み合わせは、以下の(イ)〜(ヘ)を含むものである。
【0163】
(イ)X1、X2はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、シクロプロピル基)、アシル基(例えば、ホルミル基、アセチル基、ピバロイル基、ベンゾイル基)、アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、又はエチルスルホニル基)、アリールスルホニル基(例えば、フェニルスルホニル基)が好ましく、その中でも水素原子、アセチル基、メチルスルホニル基が好ましく、特に水素原子が好ましく、その中でも特にX1とX2が共に水素原子であることが最も好ましい。
【0164】
(ロ)Wは、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、t−ブトキシ基)、アミノ基(例えば、−NH2基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、アニリノ基)、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、シクロプロピル基)又はアリール基(例えば、フェニル基、p−トリル基、ナフチル基)が好ましく、その中でもアルコシキ基、アミノ基又はアルキル基が好ましく、更にアルコキシ基、アミノ基が好ましく、より好ましくは、総炭素数5以下のアルコキシ基、アミノ基(−NH2基)、総炭素数5以下のアルキルアミノ基であり、特に好ましくは、総炭素数3以下のアルコキシ基、アミノ基(−NH2基)、総炭素数3以下のアルキルアミノ基であり、その中でも特にメトキシ基(−OCH3基)が最も好ましい。
【0165】
(ハ)R1は、水素原子、又は置換基(例えば、置換もしくは無置換の総炭素数1〜8のアシルアミノ基、置換もしくは無置換の総炭素数1〜12のアルキル基、置換もしくは無置換の総炭素数6〜18のアリール基、又は置換もしくは無置換の総炭素数4〜12のヘテロ環基)が好ましく、より好ましくは、総炭素数1〜8の直鎖アルキル基又は分岐アルキル基であり、更にメチル基又はt−ブチル基が好ましく、その中でも特にt−ブチル基が最も好ましい。
【0166】
(ニ)R2は、ヘテロ環基を表し、それらは更に縮環していてもよい。R2として好ましくは5〜8員ヘテロ環基であり、より好ましくは、5又は6員の置換もしくは無置換のヘテロ環基であり、特に好ましくは、炭素数3から10の6員含窒素ヘテロ環基である。更に好ましいヘテロ環の例は、ピリジン環、ピリミジン環、S−トリアジン環、ピリダジン環、ピラジン環、1,2,4チアジアゾール環、1,3,4チアジアゾール環、イミダゾール環であり、より好ましくは、ピリジン環、ピリミジン環、S−トリアジン環、ピリダジン環、ピラジン環であり、特に好ましくは、ピリミジン環、S−トリアジン環であり、その中でも特にピリミジン環が最も好ましい。
【0167】
(ホ)Qは、それが結合する2つの炭素原子と共に5〜7員のヘテロ環を形成するのに必要な非金属原子団を表し、ヘテロ環に脂肪族環、芳香族環、又は他のヘテロ環が縮合していてもよい。特に好ましいQが炭素原子と共に形成する5〜7員のヘテロ環としては、例えば、チオフェン環、フラン環、ピロール環、インドール環、イミダゾール環、ピラゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、トリアジン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、オキサアゼピン環などが挙げられる。各ヘテロ環には、更に置換基を有していてもよい。特に、Qが炭素原子と共に形成する5〜7員のヘテロ環として好ましくは、5員含窒素ヘテロ環であり、特に好ましくは、下記式(a)〜(i)で表されるヘテロ環が最も好ましい。
【0168】
【化30】

【0169】
式(a)〜(i)において、Raは、水素原子又は置換基を表し、Rb及びRcは、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、基、アリール基又はヘテロ環基を表す。Wは式(1)中のWと同義であり好ましいものも同じである。
【0170】
Raとして好ましくは、水素原子、置換もしくは無置換の総炭素数1〜12のアルキル基、置換もしくは無置換の総炭素数6〜18のアリール基、又は置換もしくは無置換の総炭素数4〜12ヘテロ環基であり、より好ましくは、水素原子、総炭素数1〜8の直鎖アルキル基及び又は分岐アルキル基であり、特に好ましくは、水素原子、又は総炭素数1〜4の直鎖アルキル基であり、水素原子、メチル基が好ましく、その中でも特に水素原子が最も好ましい。
【0171】
Rb、Rcとして好ましくは、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のアルキニル基、置換もしくは無置換のアラルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、又は置換もしくは無置換のヘテロ環基であり、より好ましくは、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、又は置換もしくは無置換のヘテロ環基であり、特に好ましくは、総炭素数3以下のアルキル基であり、その中でも特にメチル基が最も好ましい。
【0172】
更に、Qが炭素原子と共に形成する5員のヘテロ環として特に上記式(a)、(b)、(c)が好ましく、その中でも式(a)がもっとも好ましい。
【0173】
(ヘ)nは、1〜3の整数が好ましく、さらに1又は2が好ましく、その中でも特にn=2が最も好ましい。
【0174】
上記式(1)で表されるアゾ顔料は、下記式(2)で表されるアゾ顔料であることが好ましい。
以下、式(2)により表されるアゾ顔料について詳細に説明する。
【0175】
【化31】

【0176】
式(2)中のQ、W、X1、R1、R2及びnは、前記式(1)中のQ、W、X1、R1、R2及びnと同義である。n=2〜4の場合は、括弧内に示されるアゾ化合物の2〜4つが、Q、W、X1、R1、又はR2を介して互いに結合した2〜4量体をそれぞれ表す。
【0177】
以下に、前記Q、W、X1、R1、R2、及びnを更に詳しく説明する。
Q、W、X1、R1、R2、及びnの例は、上記式(1)中のQ、W、X1、R1、R2、及びnの例とそれぞれ同義であり、好ましい例もそれぞれ同じである。
【0178】
本発明の式(2)で表される顔料の好ましい置換基の組み合わせについては、種々の置換基の少なくとも1つが前記の好ましい基である化合物が好ましく、より多くの種々の置換基が前記好ましい基である化合物がより好ましく、全ての置換基が前記好ましい基である化合物が最も好ましい。
【0179】
本発明の式(2)で表されるアゾ顔料として特に好ましい置換基の組み合わせは、前述の式(1)で表されるアゾ顔料における(イ)〜(ヘ)と同様の組み合わせを含むものである。
【0180】
(イ)X1は水素原子、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、シクロプロピル基)、アシル基(例えば、ホルミル基、アセチル基、ピバロイル基、ベンゾイル基)、アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、又はエチルスルホニル基)、アリールスルホニル基(例えば、フェニルスルホニル基)が好ましく、その中でも水素原子、アセチル基、メチルスルホニル基が好ましく、水素原子であることが最も好ましい。
【0181】
(ロ)〜(ヘ)は前述の式(1)で表されるアゾ顔料における(ロ)〜(ヘ)と同じである。
【0182】
本発明におけるアゾ顔料は、式(1)又は(2)で表されるアゾ顔料の互変異性体もその範囲に含むものである。式(1)及び(2)は、化学構造上取り得る数種の互変異性体の中から1つの極限構造式の形で示しているが、明示的に記載された構造以外の互変異性体であってもよく、複数の互変異性体を含有した混合物であってもよい。
【0183】
例えば、式(2)で表される顔料には、下記式(2’)で表されるアゾ−ヒドラゾンの互変異性体が考えられ、式(2)で表されるアゾ顔料の互変異性体である以下の式(2’)で表される化合物も本発明の範囲に含むものである。
【0184】
【化32】

【0185】
式(2’)中、R1、R2、Q、W、X1、及びnは、式(2)中のR1、R2、Q、W、X1、及びnと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0186】
本発明における上記式(1)で表されるアゾ顔料は、下記式(3)で表されるアゾ顔料であることがより好ましい。
【0187】
【化33】

【0188】
式(3)中のYは水素原子又は置換基を表し、Gは水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又はヘテロ環基を表し、W、X1、X2、R1、R2及びnは前記式(1)中のW、X1、X2、R1、R2及びnとそれぞれ同義である。n=2〜4の場合、括弧内に示されたアゾ化合物の2〜4つが、G、Y、W、X1、X2、R1、又はR2を介して互いに結合した2量体〜4量体をそれぞれ表す。
【0189】
以下に、前記W、X1、X2、R1、R2、G、Y及びnを更に詳しく説明する。
W、X1、X2、R1、R2及びnの例としては、上記式(1)中のW、X1、X2、R1、R2及びnの例とそれぞれ同義であり、好ましい例もそれぞれ同じである。
【0190】
Gは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又はヘテロ環基を表し、特に好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、シクロプロピル基、ベンジル基、2−フェネチル基、ビニル基、アリル基、エチニル基、プロパルギル基、フェニル基、p−トリル基、ナフチル基、ピリジル基、ピリミジニル基、ピラジニル基が好ましく、更に水素原子、メチル基、フェニル基、ピリジル基、ピリミジニル基、ピラジニル基が好ましく、その中でもメチル基、2−ピリジル基、2,6−ピリミジニル基、2,5−ピラジニル基が好ましい。
またGがアルキル基を表す場合、総炭素数5以下のアルキル基であることが好ましく、総炭素数3以下のアルキル基であることがより好ましく、メチル基が最も好ましい。
【0191】
Yが置換基を表す場合の例としては、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル又はアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、アルキル又はアリールスルフィニル基、アルキル又はアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール又はヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基が例として挙げられる。
Yとして特に好ましくは、水素原子、アルキル基(例えば、メチル基)アリール基(例えば、フェニル基)、ヘテロ環基(例えば2−ピリジル基)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基)であり、更に水素原子、メチル基、フェニル基、メチルチオ基であり、その中でも水素原子が最も好ましい。
【0192】
本発明の式(3)で表される顔料の好ましい置換基の組み合わせについては、種々の置換基の少なくとも1つが前記の好ましい基である化合物が好ましく、より多くの種々の置換基が前記好ましい基である化合物がより好ましく、全ての置換基が前記好ましい基である化合物が最も好ましい。
【0193】
本発明の式(3)で表されるアゾ顔料として特に好ましい置換基の組み合わせは、以下の(イ)〜(ト)を含むものである。
【0194】
(イ)X1、X2はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、シクロプロピル基)、アシル基(例えば、ホルミル基、アセチル基、ピバロイル基、ベンゾイル基)、アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、又はエチルスルホニル基)、アリールスルホニル基(例えば、フェニルスルホニル基)が好ましく、その中でも水素原子、アセチル基、メチルスルホニル基が好ましく、特に水素原子が好ましく、その中でも特にX1とX2の少なくとも一方が水素原子であることがより好ましく、共に水素原子であることが最も好ましい。
1とX2の少なくとも一方が水素原子であることにより、色素分子の分子間相互作用だけでなく、分子内相互作用を強固に形成しやすくなる事でより安定な分子配列の顔料を構成しやすくなり、良好な色相、高い堅牢性(耐光・ガス・熱・水・薬品)の点で好ましい。
【0195】
(ロ)〜(ニ)は前述の式(1)で表されるアゾ顔料における(ロ)〜(ニ)と同じである。
【0196】
(ホ)Gは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又はヘテロ環基を表し、特に好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、シクロプロピル基、ベンジル基、2−フェネチル基、ビニル基、アリル基、エチニル基、プロパルギル基、フェニル基、p−トリル基、ナフチル基、ピリジル基、ピリミジニル基、ピラジニル基が好ましく、更に水素原子、フェニル基、ピリジル基、ピリミジニル基、ピラジニル基が好ましく、その中でも2−ピリジル基、2,6−ピリミジニル基、2,5−ピラジニル基が好ましい。
またGがアルキル基を表す場合、総炭素数5以下のアルキル基であることが好ましく、総炭素数3以下のアルキル基であることが好ましく、メチル基が最も好ましい。
【0197】
(ヘ)Yは、水素原子、アルキル基(例えば、メチル基)アリール基(例えば、フェニル基)、ヘテロ環基(例えば2−ピリジル基)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基)であり、更に水素原子、メチル基、フェニル基、メチルチオ基であり、その中でも水素原子が最も好ましい。
【0198】
(ト)nは、1〜3の整数が好ましく、さらに1又は2が好ましく、その中でも特にn=2が最も好ましい。
【0199】
式(1)、(2)及び(3)において、好ましいnは2又は3のときであり、特に好ましくは、nが2のときである。nが2の場合、着色力が高く耐光性に優れ、かつ耐薬品堅牢性が向上する。
【0200】
式(1)、(2)及び(3)において、n=2の場合のアゾ顔料は、括弧内に示されるアゾ化合物の2つが、Q、W、X1、X2、R1、又はR2を介して互いに結合した2量体を表す。
【0201】
本発明におけるアゾ顔料が2量体を表す場合、例えば、下記式(4)、(5)、(6)、(7)、(8)及び(9)で表される連結様式が挙げられる。
【0202】
【化34】

【0203】
式(4)中、G1、G2はそれぞれ独立に、前記式(3)中のGと同義である。R11、R12はそれぞれ独立に、前記式(3)中のR1と同義である。W1、W2はそれぞれ独立に、前記式(3)中のWと同義である。Y1、Y2はそれぞれ独立に、前記式(3)中のYと同義である。
【0204】
Zは、5〜8員の含窒素ヘテロ環に由来する二価の基を表す。
前記5〜8員の含窒素ヘテロ環は、式(3)中のR2における5〜8員のヘテロ環の例として挙げたヘテロ環のうちの含窒素ヘテロ環と同義であり、好ましい範囲も同様である。
また、含窒素ヘテロ環に由来する二価の基とは、含窒素ヘテロ環化合物から2つの水素原子を取り除いて形成される二価の基を意味し、水素原子が取り除かれる位置は特に限定されない。
【0205】
【化35】

【0206】
式(5)中、G1、G2はそれぞれ独立に、前記式(3)中のGと同義である。R11、R12はそれぞれ独立に、前記式(3)中のR1と同義である。W1、W2はそれぞれ独立に、前記式(3)中のWと同義である。
1、Z2はそれぞれ独立に、前記式(3)中のR2と同義である。
【0207】
5は二価の基を表し、前記式(3)中のYとして例示した置換基のうち、二価の置換基となり得る置換基と同義である。具体的には、Y5としてはアルキル基、アリール基、ヘテロ環基、又はアルキルチオ基に由来する二価の基であることが好ましい。
【0208】
【化36】

【0209】
式(6)中、G1、G2はそれぞれ独立に、前記式(3)中のGと同義である。R11、R12はそれぞれ独立に、前記式(3)中のR1と同義である。W1、W2はそれぞれ独立に、前記式(3)中のWと同義である。Y1、Y2はそれぞれ独立に、前記式(3)中のYと同義である。Z1、Z2はそれぞれ独立に、前記式(3)中のR2と同義である。
【0210】
6は二価の基を表し、前記式(3)中のX1又はX2として例示した置換基のうち、二価の置換基となり得る置換基と同義である。具体的には、X6としてはアルキル基、アシル基、アルキルスルホニル基、又はアリールスルホニル基に由来する二価の基であることが好ましい。
【0211】
【化37】

【0212】
式(7)中、G1、G2はそれぞれ独立に、前記式(3)中のGと同義である。R11、R12はそれぞれ独立に、前記式(3)中のR1と同義である。Y1、Y2はそれぞれ独立に、前記式(3)中のYと同義である。Z1、Z2はそれぞれ独立に、前記式(3)中のR2と同義である。
【0213】
7は二価の基を表し、前記式(3)中のWとして例示した置換基のうち、二価の置換基となり得る置換基と同義である。具体的には、W7としてはアルコキシ基、アルキル基、又はアリール基に由来する二価の基であることが好ましい。
【0214】
【化38】

【0215】
式(8)中、G1、G2はそれぞれ独立に、前記式(3)中のGと同義である。W1、W2はそれぞれ独立に、前記式(3)中のWと同義である。Y1、Y2はそれぞれ独立に、前記式(3)中のYと同義である。Z1、Z2はそれぞれ独立に、前記式(3)中のR1と同義である。
【0216】
8は二価の基を表し、前記式(3)中のR1として例示した置換基のうち、二価の置換基となり得る置換基と同義である。具体的には、R8としてはアシルアミノ基、アルキル基、アリール基、又はヘテロ環基に由来する二価の基であることが好ましい。
【0217】
【化39】

【0218】
式(9)中、R11、R12はそれぞれ独立に、前記式(3)中のR1と同義である。W1、W2はそれぞれ独立に、前記式(3)中のWと同義である。Y1、Y2はそれぞれ独立に、前記式(3)中のYと同義である。Z1、Z2はそれぞれ独立に、前記式(3)中のR1と同義である。
【0219】
9は二価の基を表し、前記式(3)中のGとして例示した置換基のうち、二価の置換基となり得る置換基と同義である。具体的には、G9としてはアルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、又はヘテロ環基に由来する二価の基であることが好ましい。
【0220】
本発明において、式(3)で表されるアゾ顔料は、特に、上記式(4)、(5)、(7)、(8)及び(9)で表されるアゾ顔料であることが好ましく、更に上記式(4)、(5)、(7)及び(9)で表されるアゾ顔料であることがより好ましく、その中でも特に上記式(4)で表されるアゾ顔料であることが特に好ましい。
【0221】
以下、式(4)により表されるアゾ顔料、及びその互変異性体について詳細に説明する。
【0222】
【化40】

【0223】
式(4)中、Zは5〜8員の含窒素ヘテロ環に由来する二価の基を表し、Y1、Y2、R11、R12は、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、G1、G2は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又はヘテロ環基を表し、W1、W2はそれぞれ独立にアルコキシ基、アミノ基、アルキル基又はアリール基を表す。
【0224】
式(4)において、Zは二価の5〜8員の含窒素ヘテロ環に由来する二価の基を表す。好ましい含窒素ヘテロ環を、置換位置を限定せずに例示すると、ピロール環、ピラゾール環、トリアゾール環、イミダゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアジアゾール環、チオフェン環、フラン環、ピリジン環、ピリミジン環、トリアジン環、ピリダン環である。より好ましくは、6員含窒素ヘテロ環であり、例えば、ピリジン環、ピリミジン環、S−トリアジン環が挙げられる。Zとして特に好ましくは、ピリミジン環に由来する二価の基である。
Zが6員含窒素ヘテロ環の場合、色素分子の分子内、分子間作用が、水素結合性、分子の平面性の点からもより向上しやすい点で好ましい。
【0225】
式(4)において、Y1、Y2は、前記式(3)中のYと同義であり、好ましい例も同じである。またG1、G2は、前記式(3)中のGと同義であり、好ましい例も同じである。また、R11、R12は、前記式(3)中のR1と同義であり、好ましい例も同じである。またW1、W2は、前記式(1)中のWと同義であり、好ましい例も同じである。
【0226】
本発明におけるアゾ顔料は、式(4)で表されるアゾ顔料の互変異性体もその範囲に含むものである。式(4)は、化学構造上取り得る数種の互変異性体の中から極限構造式の形で示しているが、記載された構造以外の互変異性体であってもよく、複数の互変異性体を含有した混合物として用いてもよい。
例えば、式(4)で表されるアゾ顔料には、下記式(4’)で表されるアゾ−ヒドラゾンの互変異性体が考えられる。
本発明は、式(4)で表されるアゾ顔料の互変異性体である以下の式(4’)で表される化合物もその範囲に含むものである。
【0227】
【化41】

【0228】
式(4’)中、R11、R12、W1、W2、Y1、Y2、G1、G2及びZは、式(4)中のR11、R12、W1、W2、Y1、Y2、G1、G2及びZとそれぞれ同義である。
【0229】
なお、前記式(4)で表される化合物の好ましい置換基の組み合わせについては、種々の置換基の少なくとも1つが前記の好ましい基である化合物が好ましく、より多くの種々の置換基が前記好ましい基である化合物がより好ましく、全ての置換基が前記好ましい基である化合物が最も好ましい。
【0230】
本発明の式(4)で表されるアゾ顔料として特に好ましい組み合わせは、以下の(イ)〜(ホ)を含むものである。
【0231】
(イ)W1、W2はそれぞれ独立に、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、t−ブトキシ基)、アミノ基(例えば、−NH2基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、アニリノ基)、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、シクロプロピル基)又はアリール基(例えば、フェニル基、p−トリル基、ナフチル基)が好ましく、その中でもアルコシキ基、アミノ基又はアルキル基が好ましく、更にアルコキシ基、アミノ基が好ましく、さらに好ましくは、総炭素数5以下のアルコキシ基、アミノ基(−NH2基)、総炭素数5以下のアルキルアミノ基であり、特に好ましくは、総炭素数3以下のアルコキシ基、アミノ基(−NH2基)、総炭素数3以下のアルキルアミノ基であり、その中でも特にメトキシ基(−OCH3基)が最も好ましい。
【0232】
(ロ)R11、R12はそれぞれ独立に、水素原子、又は置換基(例えば、置換もしくは無置換の総炭素数1〜8のアシルアミノ基、置換もしくは無置換の総炭素数1〜12のアルキル基、置換もしくは無置換の総炭素数6〜18のアリール基、又は置換もしくは無置換の総炭素数4〜12のヘテロ環基)が好ましく、より好ましくは、総炭素数1〜8の直鎖アルキル基又は分岐アルキル基であり、更にメチル基、イソプロピル基又はtert−ブチル基が好ましく、その中でも特にtert−ブチル基が最も好ましい。
【0233】
(ハ)Zは、5〜8員の含窒素ヘテロ環基に由来する二価の基を表し、それらは更に縮環していてもよい。Zにおける含窒素ヘテロ環としては、5又は6員の置換もしくは無置換の含窒素ヘテロ環、例えば、ピロール環、ピラゾール環、トリアゾール環、イミダゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアジアゾール環、チオフェン環、フラン環、ピリジン環、ピリミジン環、トリアジン環、ピリダジン環が好ましく、特に好ましくは、炭素数3から10の6員含窒素ヘテロ環基である。更に好ましいヘテロ環の例は、ピリジン環、ピリミジン環、S−トリアジン環、ピリダジン環、ピラジン環であり、より好ましくは、ピリジン環、ピリミジン環、S−トリアジン環、ピリダジン環、ピラジン環であり、更に好ましくは、ピリミジン環、S−トリアジン環であり、その中でも特にピリミジン環が最も好ましい。
【0234】
(ニ)G1、G2はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又はヘテロ環基を表し、特に好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、シクロプロピル基、ベンジル基、2−フェネチル基、ビニル基、アリル基、エチニル基、プロパルギル基、フェニル基、p−トリル基、ナフチル基、ピリジル基、ピリミジニル基、ピラジニル基が好ましく、更に水素原子、メチル基、フェニル基、ピリジル基、ピリミジニル基、ピラジニル基が好ましく、その中でもメチル基、2−ピリジル基、2,6−ピリミジニル基、2,5−ピラジニル基が好ましい。
またG1、G2で表されるアルキル基としては、総炭素数5以下のアルキル基がより好ましく、総炭素数3以下のアルキル基がより好ましく、メチル基が最も好ましい。
【0235】
(ホ)Y1、Y2はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基(例えば、メチル基)アリール基(例えば、フェニル基)、ヘテロ環基(例えば2−ピリジル基)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基)であり、更に水素原子、メチル基、フェニル基、メチルチオ基であり、その中でも水素原子が最も好ましい。
【0236】
本発明のアゾ顔料において、式(1)、(2)及び(3)における好ましいnは、2又は3のときであり、特に好ましくは、nが2のときである。nが2の場合、着色力が高く耐光性に優れ、かつ耐薬品堅牢性が向上する。
【0237】
本発明における上記式(1)、(2)、(3)及び(4)で表されるアゾ顔料のうち、好ましくは下記式(10)〜(13)のいずれかで表されるアゾ顔料である。
【0238】
【化42】

【0239】
上記式(10)中のR1、R2、W及びQは、上記式(2)中のR1、R2、W及びQとそれぞれ同義である。
上記式(11)中のG、R1、R2、W及びYは、上記式(3)中のG、R1、R2、W及びYとそれぞれ同義である。
【0240】
【化43】

【0241】
上記式(12)中のG1、G2、R11、R12、W1、W2、Y1及びY2は、上記式(4)中のG1、G2、R11、R12、W1、W2、Y1及びY2とそれぞれ同義である。
11、X12は、それぞれ独立に上記式(4)中のZで表される含窒素ヘテロ環に由来する二価の基(Het.)中のヘテロ原子を表す。
【0242】
【化44】

【0243】
上記式(13)中、G1、G2及びG3はそれぞれ独立に上記式(3)中のGと同義である。またW1、W2及びW3はそれぞれ独立に上記式(3)中のWと同義である。またY1、Y2及びY3はそれぞれ独立に上記式(3)中のYと同義である。またR11、R12及びR13はそれぞれ独立に上記式(3)中のR1と同義である。
さらにX11、X12及びX13はそれぞれ独立に、上記式(3)中の括弧内に示されるアゾ化合物がそれぞれ有する3つのR2によって構成される3価のヘテロ環基(Het.)中のヘテロ原子を表す。
【0244】
本発明において、上記式(1)、(2)、(3)及び(4)で表されるアゾ顔料においては多数の互変異性体が考えられる。
また、本発明において、式(1)で表されるアゾ顔料は、分子内水素結合又は分子内交叉水素結合を形成する置換基を有することが好ましい。本発明における式(1)で表されるアゾ顔料は、少なくとも1個以上の分子内交叉水素結合を形成する置換基を有することが好ましく、少なくとも3個以上の分子内水素結合を形成する置換基を有することがより好ましく、少なくとも3個以上の分子内水素結合を形成する置換基を有し、且つ、それらの水素結合の少なくとも2個が分子内交叉水素結合を形成する置換基を有する場合が特に好ましい。
【0245】
式(1)、(2)、(3)及び(4)で表されるアゾ顔料のうち、前述したように特に好ましいアゾ顔料の式の例としては、上記式(10)〜(13)で表されるアゾ顔料を挙げることができる。
【0246】
これらの構造が好ましい要因としては、式(10)〜(13)で示すようにアゾ顔料構造に含有するヘテロ環を構成する窒素原子、水素原子及びヘテロ原子(アゾ基又はその互変異性体であるヒドラゾン基の窒素原子とカルボニル基の酸素原子又はアミノ基の窒素原子)が少なくとも1個以上の分子内の交叉水素結合(分子内水素結合)を容易に形成し易いことが挙げられる。
これらの構造が好ましい要因としては、上記式(10)及び(11)で示すように、アゾ顔料が含有するヘテロ環基を構成する窒素原子、アミノ基の水素原子及びヘテロ原子(例えば、アゾ基又はその互変異性体であるヒドラゾン基の窒素原子、カルボニル基の酸素原子、及びアミノ基の窒素原子)が少なくとも1個以上の分子内の交叉水素結合を容易に形成し易いことが挙げられる。
【0247】
更に好ましくは、上記式(12)及び(13)で示すように、アゾ顔料が含有するヘテロ環基を構成する窒素原子、アミノ基の水素原子及びヘテロ原子(例えば、アゾ基又はその互変異性体であるヒドラゾン基の窒素原子、カルボニル基の酸素原子又はアミノ基の窒素原子)が少なくとも4個以上の分子内水素結合を容易に形成し易く、且つ、少なくとも2個以上の分子内の交叉水素結合を容易に形成し易いことが挙げられる。
その結果、分子の平面性が上がり、更に分子内・分子間相互作用が向上し、例えば式(12)で表されるアゾ顔料の結晶性が高くなり(高次構造を形成し易くなり)、顔料としての要求性能である、光堅牢性、熱安定性、湿熱安定性、耐水性、耐ガス性及び又は耐溶剤性が大幅に向上するため、最も好ましい例となる。
【0248】
また、本発明におけるアゾ顔料においては、式(1)〜(13)で表される化合物中に同位元素(例えば、2H、3H、13C、15N)を含有していてもよい。
【0249】
以下に前記式(1)〜(13)で表されるアゾ顔料の具体例として、Pig.−1〜Pig.−60を以下に示すが、本発明に用いられるアゾ顔料は、下記の例に限定されるものではない。また、以下の具体例の構造は化学構造上取り得る数種の互変異性体の中から極限構造式の形で示されているが、記載された構造以外の互変異性体構造のものであってもよいことは言うまでもない。
【0250】
【化45】

【0251】
【化46】

【0252】
【化47】

【0253】
【化48】

【0254】
【化49】

【0255】
【化50】

【0256】
【化51】

【0257】
【化52】

【0258】
【化53】

【0259】
本発明における式(1)〜(4)で表されるアゾ顔料は、化学構造式が式(1)〜(4)又はその互変異性体であればよいが、その結晶形態についても特に制限はない。例えば、多形(結晶多形)とも呼ばれるいかなる結晶形態の顔料であってもよい。
【0260】
結晶多形は、同じ化学組成を有するが、結晶中におけるビルディングブロック(分子又はイオン)の配置が異なる結晶のことを言う。結晶多形においては、その結晶構造によって化学的及び物理的性質が決定され、各結晶多形は、レオロジー、色相、及び他の色特性によってそれぞれ区別することができる。また、異なる結晶多形は、X-Ray Diffraction
(粉末X線回折測定)やX-Ray Analysis(X線結晶構造解析)によって確認することもできる。
本発明における式(1)〜(4)で表されるアゾ顔料に結晶多形が存在する場合、その結晶型はどの多形であってもよく、また2種以上の多形の混合物であってもよいが、結晶型が単一のものを主成分とすることが好ましい。すなわち結晶多形の混入が少ないものが好ましく、単一の結晶型を有するアゾ顔料の含有量はアゾ顔料全体に対し70%〜100%、好ましくは80%〜100%、より好ましくは90%〜100%、更に好ましくは95%〜100、特に好ましくは100%である。
【0261】
単一の結晶型を有するアゾ顔料を主成分とすることで、色素分子の配列に対して規則性が向上し、分子内・分子間相互作用が強まり高次な3次元ネットワークを形成しやすくなる。その結果として色相の向上・光堅牢性・熱堅牢性・湿度堅牢性・酸化性ガス堅牢性及び耐溶剤性等、顔料に要求される性能の点で好ましい。
アゾ顔料における結晶多形の混合比は、単結晶X線結晶構造解析、粉末X線回折(XRD)、結晶の顕微鏡写真(TEM)、IR(KBr法)等の固体の物理化学的測定値から確認できる。
【0262】
本発明において、式(1)で表されるアゾ顔料が酸基を有する場合には、酸基の一部あるいは全部が塩型のものであってもよく、塩型の顔料と遊離酸型の顔料が混在していてもよい。上記の塩型の例としてNa、Li、K等のアルカリ金属の塩、アルキル基もしくはヒドロキシアルキル基で置換されていてもよいアンモニウムの塩、又は有機アミンの塩が挙げられる。有機アミンの例として、低級アルキルアミン、ヒドロキシ置換低級アルキルアミン、カルボキシ置換低級アルキルアミン及び炭素数2〜4のアルキレンイミン単位を2〜10個有するポリアミン等が挙げられる。これらの塩型の場合、その種類は1種類に限られず複数種混在していてもよい。
【0263】
更に、本発明で使用するアゾ顔料の構造において、その1分子中に酸基が複数含まれる場合は、その複数の酸基は、それぞれ独立に塩型あるいは酸型であり、互いに異なるものであってもよい。
【0264】
本発明において、前記式(1)で表されるアゾ顔料は、結晶中に水分子を含む水和物であってもよく、また結晶中に含まれる水分子の数にも特に制限はない。
【0265】
次に上記式(1)で表されるアゾ顔料の製造方法の一例について説明する。例えば、下記式(A)で表されるヘテロ環アミンを酸性条件でジアゾニウム化し、下記式(B)で表される化合物とカップリング反応を行い、常法による後処理を行って上記式(1)で表されるアゾ顔料を製造することができる。
【0266】
【化54】

【0267】
式(A)及び(B)中、W、Q、R1、R2、X1、及びX2は式(1)におけるW、Q、R1、R2、X1、及びX2とそれぞれ同義である。
【0268】
上記式(A)で表されるヘテロ環アミンは、一般的には公知慣用の方法、例えば、Helv.Chim.Acta,41,1958,1052〜1056やHelv.Chim.Acta,42,1959,349〜352等に記載の方法、及び、それに準じた方法で製造することができる。
また、上記式(B)で表される化合物は、国際公開第06/082669号や特開2006−57076号公報に記載の方法、及び、それに準じた方法で製造することができる。
【0269】
上記式(A)で表されるヘテロ環アミンのジアゾニウム化反応は、例えば、硫酸、リン酸、酢酸、塩酸、メタンスルホン酸などの酸性溶媒中、亜硝酸ナトリウム、ニトロシル硫酸、亜硝酸イソアミル等の試薬を15℃以下の温度で10分〜6時間程度反応させることで行うことができる。
カップリング反応は、上述の方法で得られたジアゾニウム塩と上記式(B)で表される化合物とを40℃以下、好ましくは、25℃以下で10分〜12時間程度反応させることで行うことができる。
【0270】
このようにして反応させたものは、結晶が析出している場合もあるが、一般的には、反応液に水、あるいはアルコール系溶媒を添加し、結晶を析出させ、結晶を濾取することができる。また、反応液にアルコール系溶媒、水等を添加して結晶を析出させて、析出した結晶を濾取することができる。濾取した結晶を必要に応じて洗浄・乾燥して、式(1)で表されるアゾ顔料を得ることができる。
【0271】
上記の製造方法によって、上記式(1)で表されるアゾ顔料は粗アゾ顔料(クルード)として得られるが、本発明の顔料として用いる場合、後処理を行うことが望ましい。この後処理の方法としては、例えば、ソルベントソルトミリング、ソルトミリング、ドライミリング、ソルベントミリング、アシッドペースティング等の磨砕処理、溶媒加熱処などによる顔料粒子制御工程、樹脂、界面活性剤及び分散剤等による表面処理工程が挙げられる。
【0272】
本発明の式(1)で表されるアゾ顔料は後処理として溶媒加熱処理及び/又はソルベントソルトミリングを行うことが好ましい。
溶媒加熱処理に使用される溶媒としては、例えば、水、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、イソプロパノール、イソブタノール等のアルコール系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等の極性非プロトン性有機溶媒、氷酢酸、ピリジン、又はこれらの混合物等が挙げられる。上記で挙げた溶媒に、さらに無機又は有機の酸又は塩基を加えてもよい。溶媒加熱処理の温度は所望する顔料の一次粒子径の大きさによって異なるが、40〜150℃が好ましく、60〜100℃がさらに好ましい。また、処理時間は、30分〜24時間が好ましい。
【0273】
ソルベントソルトミリングとしては、例えば、粗アゾ顔料と、無機塩と、それを溶解しない有機溶剤とを混練機に仕込み、その中で混練磨砕を行うことが挙げられる。上記無機塩としては、水溶性無機塩が好適に使用でき、例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム等の無機塩を用いることが好ましい。また、平均粒子径0.5〜50μmの無機塩を用いることがより好ましい。当該無機塩の使用量は、粗アゾ顔料に対して3〜20重量倍とするのが好ましく、5〜15重量倍とするのがより好ましい。有機溶剤としては、水溶性有機溶剤が好適に使用できるが、混練時の温度上昇により溶剤が蒸発し易い状態になるため、安全性の点から高沸点溶剤が好ましい。
【0274】
このような有機溶剤としては、例えばジエチレングリコール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール、液体ポリプロピレングリコール、2−(メトキシメトキシ)エタノール、2−ブトキシエタノール、2ー(イソペンチルオキシ)エタノール、2−(ヘキシルオキシ)エタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコール又はこれらの混合物が挙げられる。当該水溶性有機溶剤の使用量は、粗アゾ顔料に対して0.1〜5重量倍が好ましい。混練温度は、20〜130℃が好ましく、40〜110℃が特に好ましい。混練機としては、例えばニーダーやミックスマーラー等が使用できる。
【0275】
本発明における前記スチレン−アクリル酸系共重合体と前記式(1)で表されるアゾ顔料とを含む高分子ビニルポリマー粒子の調製方法としては特に限定されない。例えば、特開平10−140065号公報に記載のカプセル化顔料の製造方法で製造することができる。具体的には、前記スチレン−アクリル酸系共重合体と、式(1)で表されるアゾ顔料とを水溶性有機溶剤を含む水性媒体中で分散処理した後、水溶性有機溶媒の少なくとも1部を除去することで着色粒子の水分散体を得ることができる。
【0276】
(その他の成分)
【0277】
<増感剤>
インク組成物には、カチオン重合開始剤(好ましくは光酸発生剤)の酸発生効率の向上、感光波長の長波長化の目的で、必要に応じ、増感剤を添加してもよい。増感剤としては、カチオン重合開始剤(好ましくは光酸発生剤)に対し、電子移動機構又はエネルギー移動機構で増感させるものであれば、何れでもよい。好ましくは、アントラセン、9,10−ジアルコキシアントラセン、ピレン、ペリレンなどの芳香族多縮環化合物、アセトフェノン、ベンゾフェノン、チオキサントン、ミヒラーケトンなどの芳香族ケトン化合物、フェノチアジン、N−アリールオキサゾリジノンなどのヘテロ環化合物が挙げられる。添加量は目的に応じて適宜選択されるが、一般的には、カチオン重合開始剤に対し0.01〜1モル%、好ましくは0.1〜0.5モル%で使用される。
【0278】
より好ましい増感剤の例としては、下記式(IX)〜(XIII)で表される化合物が挙げられる。
【0279】
【化55】

【0280】
式(IX)中、A1は硫黄原子又はNR50を表し、R50はアルキル基又はアリール基を表し、L2は隣接するA1及び隣接炭素原子と共同して色素の塩基性核を形成する非金属原子団を表し、R51、R52はそれぞれ独立に水素原子又は一価の非金属原子団を表し、R51、R52は互いに結合して、色素の酸性核を形成してもよい。Wは酸素原子又は硫黄原子を表す。
【0281】
【化56】

【0282】
式(X)中、Ar1及びAr2はそれぞれ独立にアリール基を表し、−L3−による結合を介して連結している。ここでL3は−O−又は−S−を表す。また、Wは式(IX)に示したものと同義である。
【0283】
【化57】

【0284】
式(XI)中、A2は硫黄原子又はNR59を表し、L4は隣接するA2及び炭素原子と共同して色素の塩基性核を形成する非金属原子団を表し、R53、R54、R55、R56、R57及びR58はそれぞれ独立に一価の非金属原子団の基を表し、R59はアルキル基又はアリール基を表す。
【0285】
【化58】

【0286】
式(XII)中、A3、A4はそれぞれ独立に−S−、−NR62−又は−NR63−を表し、R62、R63はそれぞれ独立に置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のアリール基を表し、L5、L6はそれぞれ独立に、隣接するA3、A4及び隣接炭素原子と共同して色素の塩基性核を形成する非金属原子団を表し、R60、R61はそれぞれ独立に水素原子又は一価の非金属原子団であるか又は互いに結合して脂肪族性又は芳香族性の環を形成することができる。
【0287】
【化59】

【0288】
式(XIII)中、R66は置換基を有してもよい芳香族環又はヘテロ環を表し、A5は酸素原子、硫黄原子又は=NR67を表す。R64、R65及びR67はそれぞれ独立に水素原子又は一価の非金属原子団を表し、R67とR64、及びR65とR67はそれぞれ互いに脂肪族性又は芳香族性の環を形成するため結合することができる。
【0289】
式(IX)〜(XIII)で表される化合物の好ましい具体例としては、以下に示す(E−1)〜(E−20)が挙げられる。
【0290】
【化60】

【0291】
【化61】

【0292】
本発明のインク組成物中における増感剤の含有量は使用目的により適宜選択されるが、一般的には、インク組成物全体の重量に対し、0.05〜4重量%であることが好ましい。
【0293】
<共増感剤>
さらに、本発明のインク組成物には、感度を一層向上させる、あるいは酸素による重合阻害を抑制する等の作用を有する公知の化合物を共増感剤として加えてもよい。
このような共増感剤としては、アミン類、例えば、M. R. Sanderら著「Journal of Polymer Society」第10巻3173頁(1972)、特公昭44−20189号公報、特開昭51−82102号公報、特開昭52−134692号公報、特開昭59−138205号公報、特開昭60−84305号公報、特開昭62−18537号公報、特開昭64−33104号公報、Research Disclosure 33825号に記載の化合物等が挙げられ、より具体的には、トリエタノールアミン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p−ホルミルジメチルアニリン、p−メチルチオジメチルアニリン等が挙げられる。
【0294】
他の共増感剤としては、チオール及びスルフィド類、例えば、特開昭53−702号公報、特公昭55−500806号公報、特開平5−142772号公報記載のチオール化合物、特開昭56−75643号公報のジスルフィド化合物等が挙げられ、より具体的には、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプト−4(3H)−キナゾリン、β−メルカプトナフタレン等が挙げられる。
また他の共増感剤としては、例えば、アミノ酸化合物(例、N−フェニルグリシン等)、特公昭48−42965号公報記載の有機金属化合物(例、トリブチル錫アセテート等)、特公昭55−34414号公報記載の水素供与体、特開平6−308727号公報記載のイオウ化合物(例、トリチアン等)、特開平6−250387号公報記載のリン化合物(ジエチルホスファイト等)、特開平8−54765号公報記載のSi−H、Ge−H化合物等が挙げられる。
【0295】
<アミン化合物>
塩基性化合物は、インク組成物の保存安定性を向上させる観点から添加することが好ましい。本発明に用いることができる塩基性化合物としては、公知の塩基性化合物を用いることができ、例えば、無機塩等の塩基性無機化合物や、アミン類等の塩基性有機化合物を好ましく用いることができる。
【0296】
<紫外線吸収剤>
本発明においては、得られる画像の耐候性向上、退色防止の観点から、紫外線吸収剤を用いることができる。
紫外線吸収剤としては、例えば、特開昭58−185677号公報、同61−190537号公報、特開平2−782号公報、同5−197075号公報、同9−34057号公報等に記載されたベンゾトリアゾール系化合物、特開昭46−2784号公報、特開平5−194483号公報、米国特許第3214463号等に記載されたベンゾフェノン系化合物、特公昭48−30492号公報、同56−21141号公報、特開平10−88106号公報等に記載された桂皮酸系化合物、特開平4−298503号公報、同8−53427号公報、同8−239368号公報、同10−182621号公報、特表平8−501291号公報等に記載されたトリアジン系化合物、リサーチディスクロージャーNo.24239号に記載された化合物やスチルベン系、ベンズオキサゾール系化合物に代表される紫外線を吸収して蛍光を発する化合物、いわゆる蛍光増白剤、などが挙げられる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、インク組成物中に0.5〜15重量%程度である。
【0297】
<酸化防止剤>
インク組成物の安定性向上のため、酸化防止剤を添加することができる。酸化防止剤としては、ヨーロッパ公開特許第223739号公報、同309401号公報、同第309402号公報、同第310551号公報、同第310552号公報、同第459416号公報、ドイツ公開特許第3435443号公報、特開昭54−48535号公報、同62−262047号公報、同63−113536号公報、同63−163351号公報、特開平2−262654号公報、特開平2−71262号公報、特開平3−121449号公報、特開平5−61166号公報、特開平5−119449号公報、米国特許第4814262号明細書、米国特許第4980275号明細書等に記載のものを挙げることができる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、インク組成物中に0.1〜8重量%程度である。
【0298】
<褪色防止剤>
本発明のインク組成物には、各種の有機系及び金属錯体系の褪色防止剤を使用することができる。前記有機系の褪色防止剤としては、ハイドロキノン類、アルコキシフェノール類、ジアルコキシフェノール類、フェノール類、アニリン類、アミン類、インダン類、クロマン類、アルコキシアニリン類、ヘテロ環類、などが挙げられる。前記金属錯体系の褪色防止剤としては、ニッケル錯体、亜鉛錯体、などが挙げられ、具体的には、リサーチディスクロージャーNo.17643の第VIIのI〜J項、同No.15162、同No.18716の650頁左欄、同No.36544の527頁、同No.307105の872頁、同No.15162に引用された特許に記載された化合物や、特開昭62−215272号公報の127頁〜137頁に記載された代表的化合物の式及び化合物例に含まれる化合物を使用することができる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、インク組成物中に0.1〜8重量%程度である。
【0299】
<導電性塩類>
本発明のインク組成物には、射出物性の制御を目的として、チオシアン酸カリウム、硝酸リチウム、チオシアン酸アンモニウム、ジメチルアミン塩酸塩などの導電性塩類を添加することができる。
【0300】
<溶剤>
本発明のインク組成物には、被記録媒体との密着性を改良するため、極微量の有機溶剤を添加することも有効である。
溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン系溶剤、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、1−ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール系溶剤、クロロホルム、塩化メチレン等の塩素系溶剤、ベンゼン、トルエン等の芳香族系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピルなどのエステル系溶剤、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤、などが挙げられる。
この場合、耐溶剤性やVOCの問題が起こらない範囲での添加が有効であり、その量は
組成物全体に対し5重量%以下が好ましく、より好ましくは3重量%以下の範囲であり、使用しないことがさらに好ましい。
【0301】
<高分子化合物>
本発明のインク組成物には、膜物性を調整するため、各種高分子化合物を添加することができる。高分子化合物としては、アクリル系重合体、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、シェラック、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類、その他の天然樹脂等が使用できる。また、これらは2種以上併用してもかまわない。これらのうち、アクリル系のモノマーの共重合によって得られるビニル系共重合が好ましい。さらに、高分子結合材の共重合組成として、「カルボキシル基含有モノマー」、「メタクリル酸アルキルエステル」、又は「アクリル酸アルキルエステル」を構造単位として含む共重合体も好ましく用いられる。
【0302】
<界面活性剤>
本発明のインク組成物には、界面活性剤を添加してもよい。
界面活性剤としては、特開昭62−173463号、同62−183457号の各公報に記載されたものが挙げられる。例えば、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類、シリコーンオイル等のノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩類、第4級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤が挙げられる。なお、前記界面活性剤の代わりに有機フルオロ化合物を用いてもよい。前記有機フルオロ化合物は、疎水性であることが好ましい。前記有機フルオロ化合物としては、例えば、フッ素系界面活性剤、オイル状フッ素系化合物(例、フッ素油)及び固体状フッ素化合物樹脂(例、四フッ化エチレン樹脂)が含まれ、特公昭57−9053号(第8〜17欄)、特開昭62−135826号の各公報に記載されたものが挙げられる。
インク組成物中の界面活性剤の含量は、インクジェットヘッドの吐出に適した表面張力に適合させるように適宜調整されるが、0〜6重量%が好ましく、より好ましくは0〜4重量%、さらに好ましくは0〜2重量%の範囲である。
【0303】
この他にも、必要に応じて、例えば、レベリング添加剤、マット剤、膜物性を調整するためのワックス類、ポリオレフィンやPET等の被記録媒体への密着性を改善するために、重合を阻害しないタッキファイヤー(粘着付与剤)などを含有させることができる。
タッキファイヤーとしては、具体的には、特開2001−49200号公報の5〜6pに記載されている高分子量の粘着性ポリマー(例えば、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜20のアルキル基を有するアルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数3〜14の脂環族アルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数6〜14の芳香族アルコールとのエステルからなる共重合物)や、重合性不飽和結合を有する低分子量粘着付与性樹脂などである。
【0304】
(インク物性)
本発明においては、吐出性を考慮し、25℃における粘度が40mPa・s以下であるインク組成物を使用することが好ましい。より好ましくは5〜40mPa・s、さらに好ましくは7〜30mPa・sである。また吐出温度(好ましくは25〜80℃、より好ましくは25〜50℃)における粘度が、3〜15mPa・sであることが好ましく、3〜13mPa・sであることがより好ましい。本発明のインク組成物は、粘度が上記範囲になるように適宜組成比を調整することが好ましい。室温での粘度を高く設定することにより、多孔質な被記録媒体を用いた場合でも、被記録媒体中へのインク浸透を回避し、未硬化モノマーの低減が可能となる。さらにインク液滴着弾時のインクの滲みを抑えることができ、その結果として画質が改善されるので好ましい。
【0305】
本発明のインク組成物の25℃における表面張力は、20〜35mN/mであることが好ましい。より好ましくは23〜33mN/mである。ポリオレフィン、PET、コート紙、非コート紙など様々な被記録媒体へ記録する場合、滲み及び浸透の観点から、20mN/m以上が好ましく、濡れ性の点では35mN/m以下が好ましい。
【0306】
(インクジェット記録方法、インクジェット記録装置及び印刷物)
本発明のインクジェット記録方法は、本発明のインク組成物をインクジェット記録用として被記録媒体(支持体、記録材料等)上に吐出し、被記録媒体上に吐出されたインク組成物に活性放射線を照射し、インクを硬化して画像を形成する方法である。
【0307】
より具体的には、本発明のインクジェット記録方法は、被記録媒体上に、本発明のインクジェット記録用インク組成物を吐出する工程、及び、吐出されたインクジェット記録用インク組成物に活性放射線を照射して、前記インクジェット記録用インク組成物を硬化する工程を含むことを特徴とする。
本発明のインクジェット記録方法は、上記工程を含むことにより、被記録媒体上において硬化したインク組成物により画像が形成される。
また、本発明の印刷物は、本発明のインクジェット記録方法によって記録された印刷物である。
【0308】
本発明のインクジェット記録方法には、以下に詳述するインクジェット記録装置を用いることができる。
【0309】
(インクジェット記録装置)
本発明のインクジェット記録方法に用いられるインクジェット記録装置としては、特に制限はなく、目的とする解像度を達成し得る公知のインクジェット記録装置を任意に選択して使用することができる。すなわち、市販品を含む公知のインクジェット記録装置であれば、いずれも、本発明のインクジェット記録方法における被記録媒体へのインクの吐出を実施することができる。
【0310】
本発明で用いることのできるインクジェット記録装置としては、例えば、インク供給系、温度センサー、活性放射線源を含む装置が挙げられる。
インク供給系は、例えば、本発明のインク組成物を含む元タンク、供給配管、インクジェットヘッド直前のインク供給タンク、フィルター、ピエゾ型のインクジェットヘッドからなる。ピエゾ型のインクジェットヘッドは、好ましくは1〜100pl、より好ましくは8〜30plのマルチサイズドットを、好ましくは320×320〜4,000×4,000dpi、より好ましくは400×400〜1,600×1,600dpi、さらに好ましくは720×720dpiの解像度で吐出できるよう駆動することができる。なお、本発明でいうdpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す。
【0311】
上述したように、本発明のインク組成物のように放射線硬化型インクは、吐出されるインクを一定温度にすることが望ましいことから、インクジェット記録装置には、インク組成物温度の安定化手段を備えることが好ましい。一定温度にする部位はインクタンク(中間タンクがある場合は中間タンク)からノズル射出面までの配管系、部材の全てが対象となる。すなわち、インク供給タンクからインクジェットヘッド部分までは、断熱及び加温を行うことができる。
温度コントロールの方法としては、特に制約はないが、例えば、温度センサーを各配管部位に複数設け、インク流量、環境温度に応じた加熱制御をすることが好ましい。温度センサーは、インク供給タンク及びインクジェットヘッドのノズル付近に設けることができる。また、加熱するヘッドユニットは、装置本体を外気からの温度の影響を受けないよう、熱的に遮断若しくは断熱されていることが好ましい。加熱に要するプリンター立上げ時間を短縮するため、あるいは熱エネルギーのロスを低減するために、他部位との断熱を行うとともに、加熱ユニット全体の熱容量を小さくすることが好ましい。
【0312】
上記のインクジェット記録装置を用いて、インク組成物の吐出はインク組成物を好ましくは25〜80℃、より好ましくは25〜50℃に加熱して、インク組成物の粘度を、好ましくは3〜15mPa・s、より好ましくは3〜13mPa・sに下げた後に行うことが好ましい。特に、本発明のインク組成物として、25℃におけるインク粘度が50mPa・s以下であるものを用いると、良好に吐出が行えるので好ましい。この方法を用いることにより、高い吐出安定性を実現することができる。
本発明のインク組成物のような活性放射線硬化型インクジェット記録用インク組成物は、概して通常インクジェット記録用インクで使用される水性インクより粘度が高いため、吐出時の温度変動による粘度変動が大きい。インク組成物の粘度変動は、液滴サイズの変化及び液滴吐出速度の変化に対して大きな影響を与え、ひいては画質劣化を引き起こす。したがって、吐出時のインク組成物の温度はできるだけ一定に保つことが必要である。よって、本発明において、インク組成物の温度の制御幅は、好ましくは設定温度の±5℃、より好ましくは設定温度の±2℃、さらに好ましくは設定温度±1℃とすることが適当である。
【0313】
次に、吐出されたインク組成物に放射線を照射して、前記インク組成物を硬化する工程について説明する。
被記録媒体上に吐出されたインク組成物は、放射線を照射することによって硬化する。これは、本発明のインク組成物に含まれるカチオン重合開始剤が放射線の照射により分解して、カチオンを発生し、そのカチオンによってカチオン重合性化合物の重合反応が、生起、促進されるためである。このとき、インク組成物においてカチオン重合開始剤ととも増感剤が存在すると、系中の増感剤が放射線を吸収して励起状態となり、カチオン重合開始剤と接触することによってカチオン重合開始剤の分解を促進させ、より高感度の硬化反応を達成させることができる。
【0314】
ここで、使用される活性放射線は、α線、γ線、電子線、X線、紫外線、可視光又は赤外光などが使用され得る。活性放射線のピーク波長は、増感剤の吸収特性にもよるが、例えば、200〜600nmであることが好ましく、300〜450nmであることがより好ましく、350〜420nmであることがさらに好ましい。
【0315】
また、本発明のインク組成物は、低出力の活性放射線であっても十分な感度を有するものである。したがって、露光面照度が、好ましくは10〜4,000mW/cm2、より好ましくは20〜2,500mW/cm2で硬化させることが適当である。
【0316】
活性放射線源としては、水銀ランプやガス・固体レーザー等が主に利用されており、紫外線光硬化型インクジェット記録用インクの硬化に使用される光源としては、水銀ランプ、メタルハライドランプが広く知られている。しかしながら、現在環境保護の観点から水銀フリー化が強く望まれており、GaN系半導体紫外発光デバイスへの置き換えは産業的、環境的にも非常に有用である。さらに、LED(UV−LED),LD(UV−LD)は小型、高寿命、高効率、低コストであり、光硬化型インクジェット用光源として期待されている。
また、発光ダイオード(LED)及びレーザーダイオード(LD)を活性放射線源として用いることが可能である。特に、紫外線源を要する場合、紫外LED及び紫外LDを使用することができる。例えば、日亜化学(株)は、主放出スペクトルが365nmと420nmとの間の波長を有する紫色LEDを上市している。さらに一層短い波長が必要とされる場合、米国特許番号第6,084,250号明細書は、300nmと370nmとの間に中心付けされた活性放射線を放出し得るLEDを開示している。また、他の紫外LEDも、入手可能であり、異なる紫外線帯域の放射を照射することができる。本発明で特に好ましい活性放射線源はUV−LEDであり、特に好ましくは350〜420nmにピーク波長を有するUV−LEDである。
なお、LEDの被記録媒体上での最高照度は10〜2,000mW/cm2であることが好ましく、20〜1,000mW/cm2であることがより好ましく、50〜800mW/cm2であることが特に好ましい。
【0317】
本発明のインク組成物は、このような活性放射線に、好ましくは0.01〜120秒、より好ましくは0.1〜90秒照射されることが適当である。
活性放射線の照射条件並びに基本的な照射方法は、特開昭60−132767号公報に開示されている。具体的には、インクの吐出装置を含むヘッドユニットの両側に光源を設け、いわゆるシャトル方式でヘッドユニットと光源を走査することによって行われる。活性放射線の照射は、インク着弾後、一定時間(好ましくは0.01〜0.5秒、より好ましくは0.01〜0.3秒、さらに好ましくは0.01〜0.15秒)をおいて行われることになる。このようにインク着弾から照射までの時間を極短時間に制御することにより、被記録媒体に着弾したインクが硬化前に滲むことを防止するこが可能となる。また、多孔質な被記録媒体に対しても光源の届かない深部までインクが浸透する前に露光することができるため、未反応モノマーの残留を抑えることができるので好ましい。
さらに、駆動を伴わない別光源によって硬化を完了させてもよい。国際公開第99/54415号パンフレットでは、照射方法として、光ファイバーを用いた方法やコリメートされた光源をヘッドユニット側面に設けた鏡面に当て、記録部へUV光を照射する方法が開示されており、このような硬化方法もまた、本発明のインクジェット記録方法に適用することができる。
【0318】
上述したようなインクジェット記録方法を採用することにより、表面の濡れ性が異なる様々な被記録媒体に対しても、着弾したインクのドット径を一定に保つことができ、画質が向上する。
【0319】
本発明のインク組成物は、複数の色のインク組成物を組み合わせてインクセットとして使用することもできる。例えば、シアン色のインク組成物、マゼンタ色のインク組成物と組み合わせて使用することができる。
また、ブラック色、ホワイト色のインク組成物とともにインクセットとして使用することもできるし、ライトマゼンタ、ライトシアン等のインク組成物とともにインクセットとして使用することもできる。カラー画像を得るためには、明度の低い色から順に重ねていくことが好ましい。明度の低いインクから順に重ねることにより、下部のインクまで照射線が到達しやすくなり、良好な硬化感度、残留モノマーの低減、密着性の向上が期待できる。また、照射は、全色を吐出してまとめて露光することが可能だが、1色毎に露光するほうが、硬化促進の観点で好ましい。
このようにして、本発明のインク組成物は、活性放射線の照射により高感度で硬化することで、被記録媒体表面に画像を形成することができる。
【0320】
本発明のインクジェット記録方法には、本発明のインク組成物を含むインクセットを好適に使用することができる。吐出する各着色インク組成物の順番は、特に限定されるわけではないが、明度の低い着色インク組成物から被記録媒体に付与することが好ましく、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックを使用する場合には、イエロー→シアン→マゼンタ→ブラックの順で被記録媒体上に付与することが好ましい。さらに、本発明はこれに限定されず、ライトシアン、ライトマゼンタ色のインク組成物とシアン、マゼンタ、ブラック、ホワイト、イエローの濃色インク組成物の計7色が少なくとも含まれるインクセットをとして使用することもでき、その場合には、ホワイト→ライトシアン→ライトマゼンタ→イエロー→シアン→マゼンタ→ブラックの順で被記録媒体上に付与することが好ましい。
【0321】
本発明において、被記録媒体としては、特に限定されず、支持体や記録材料として公知の被記録媒体を使用することができる。例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上述した金属がラミネートされ又は蒸着された紙又はプラスチックフィルム等が挙げられる。また、本発明における被記録媒体として、非吸収性被記録媒体が好適に使用することができる。
【0322】
本発明のインク組成物をインクジェットプリンターにより被記録媒体に印字し、その後、好ましくは、印字されたインク組成物に活性放射線を照射して硬化することで、本発明の印刷物を得ることができる。本発明の印刷物は、画像形成に用いられるインクが色相及び感度に優れるため、発色性と鮮鋭度に優れた高品質な画像を有することから、広汎な分野に適用し得る。
【実施例】
【0323】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」及び「%」は重量基準である。
【0324】
[合成例1]
<例示化合物(Pig.−1)の合成>
例示化合物(Pig.−1)の合成スキームを下記に示す。
【0325】
【化62】

【0326】
(1)中間体(a)の合成
シアノ酢酸メチル29.7g(0.3モル)にオルトギ酸トリメチル42.4g(0.4モル)、無水酢酸20.4g(0.2モル)、p−トルエンスルホン酸0.5gを加えて110℃(外温)に加熱し、反応系から生じる低沸点成分を留去しながら20時間撹拌した。この反応液を減圧濃縮した後、シリカゲルカラム精製を行い、前記中間体(a)を14.1g(黄色粉末、収率30%)で得た。得られた中間体(a)のNMR測定結果は以下の通りである。
1H−NMR(300MHz、CDCl3)δ=7.96(s,1H)、4.15(s,3H)、3.81(s,3H)
【0327】
(2)中間体(b)の合成
メチルヒドラジン7.4mL(141ミリモル)にイソプロパノール150mLを加えて15℃(内温)に冷却し、この混合液に中間体(a)7.0g(49.6ミリモル)を徐々に添加した後、50℃に加熱して1時間40分撹拌した。この反応液を減圧濃縮した後、シリカゲルカラム精製を行い、前記中間体(b)を10.5g(白色粉末、収率50%)で得た。得られた中間体(b)のNMR測定結果は以下の通りである。
1H−NMR(300MHz、CDCl3)δ=7.60(s,1H)、4.95(brs,2H)、3.80(s,3H)、3.60(s,3H)
【0328】
(3)中間体(c)の合成
ヒドラジン1水和物130mLにメタノール100mLを加えて10℃(内温)に冷却し、この混合液に4,6−ジクロロピリミジン50.0g(336ミリモル)を徐々に添加(内温20℃以下)した後、50℃に加熱して4時間30分撹拌した。反応液から析出した結晶をろ取、イソプロパノールでかけ洗い後、乾燥を行い、前記中間体(c)を43.1g(白色粉末、収率92%)で得た。得られた中間体(c)のNMR測定結果は以下の通りである。
1H−NMR(300MHz、d6−DMSO)δ=7.82(s,1H)、7.55(s,2H)、5.96(s,1H)、4.12(s,4H)
【0329】
(4)中間体(d)の合成
中間体(c)35.0g(0.25モル)、ピバロイルアセトニトリル68.8g(0.55モル)に水900mLを加えて室温で撹拌した。この懸濁液に1M塩酸水をpH3になるように滴下した後、50℃に加熱して8時間撹拌した。この反応液に8M水酸化カリウム水溶液を滴下してpH8に調整して、更に1M塩酸水を滴下してpH6に調整して析出した結晶をろ取、イソプロパノールでかけ洗い後、乾燥を行い前記中間体(d)を83.0g(白色粉末、収率94%)で得た。得られた中間体(d)のNMR測定結果は以下の通りである。
1H−NMR(300MHz、d6−DMSO)δ=8.73(s,1H)、7.97(s,1H)、6.88(s,4H)、5.35(s,2H)
【0330】
(5)例示化合物(Pig.−1)の合成
濃硫酸4.1mLに酢酸18.5mLを加えて氷冷で撹拌し、40%ニトロシル硫酸3.85g(12.1ミリモル)を滴下した。この混合液に中間体(b)1.71g(11.0ミリモル)を徐々に添加(内温0℃以下)した後、0℃で2時間撹拌した。この反応液に尿素150mgを添加し、さらに0℃で15分撹拌して、ジアゾ液Aを調製した。
中間体(d)1.77g(5ミリモル)にメタノール50mLを加えて加熱溶解させた後、氷冷で撹拌した混合液に前記ジアゾ液Aをゆっくり滴下した(内温10℃以下)。この反応液を室温で2時間撹拌した後、析出した結晶をろ取、メタノールでかけ洗いして前記例示化合物(Pig.−1)の粗結晶を得た。さらに前記粗結晶に水を加えて撹拌した後、この懸濁液を水酸化ナトリウム水溶液でpH7に調整し、さらにジメチルアセトアミド20mLを加えて、80℃で2時間撹拌した。析出した結晶をろ取、さらにメタノールで懸濁洗浄し得られた結晶をろ取、乾燥して例示化合物(Pig.−1)を2.0g(黄色粉末、収率79%)で得た。
なお、上記合成スキームと同様にして、例示化合物(Pig.−18)、例示化合物(Pig.−49)、及び例示化合物(Pig.−52)を合成した。
【0331】
本発明で使用した素材は下記に示す通りである。
・NOVOPERM YELLOW H2G(イエロー顔料、クラリアント社製)
・新規合成顔料(式(1)で表される化合物)
・ファンクリル512A(例示化合物M−11に相当、日立化成工業(株)製)
・N−ビニルカプロラクタム(Aldrich社製)
・Actilane421(プロポキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレート、Akcros社製)
・NKエステルAMP−10G(フェノキシエチルアクリレート、新中村化学工業(株)製)
・ジメチルアミノエチルアクリレート(大阪有機化学工業(株)製)
・FIRSTCURE ST−1(重合禁止剤、Chem First社製)
・Lucirin TPO(光開始剤、BASF社製)
・ベンゾフェノン(光開始剤、和光純薬工業(株)製)
・IRGACURE 184(光開始剤、チバスペシャリティーケミカルズ社製)
・BYK−307(界面活性剤、BYK Chemie社製)
・Firstcure ITX(増感剤、Chem First社製)
・RAPI−CURE DVE−3(トリエチレングリコールジビニルエーテル、ISP社製)
・CELLOXIDE 2021P((3’,4’−エポキシシクロヘキサン)メチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ダイセル・サイテック社製)
・アロンオキセタンOXT−221(ビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、東亞合成(株)製)
・UVI−6992(スルホニウム塩光酸発生剤(triarylsulfonium hexafluoroantimonate salts in propylene carbonate (mixed))、Dow Chemicals社製)
・Anthracure UVS−1331(9,10−ジブトキシアントラセン、川崎化成工業(株)製)
・DisperBYK−164(分散剤、BYK Chemie社製)
・DisperBYK−166(分散剤、BYK Chemie社製)
・DisperBYK−168(分散剤、BYK Chemie社製)
・DisperBYK−182(分散剤、BYK Chemie社製)
・EFKA4046(分散剤、エフカアディティブ社製)
・ソルスパース32000(分散剤、ゼネカ社製)
・ソルスパース44000(分散剤、ゼネカ社製)
【0332】
(イエローミルベースAの調製)
例示化合物Pig.−1 300重量部
Actilane421(Akcros社製アクリレートモノマー) 500重量部
DisperBYK−168(アミン価:10mgKOH/g、酸価:0mgKOH/g) 200重量部
上記の成分を撹拌混合し、顔料インクを得た。なお、顔料ミルベースの調製は分散機モーターミルM50(アイガー社製)に入れて、直径0.65mmのジルコニアビーズを用い、周速9m/sで4時間分散を行った。
【0333】
(イエローミルベースBの調製)
例示化合物Pig.−1 300重量部
Actilane421(Akcros社製アクリレートモノマー) 500重量部
DisperBYK−164(アミン価18mgKOH/g、酸価0mgKOH/g)
200重量部
上記の成分を撹拌混合し、顔料インクを得た。なお、顔料ミルベースの調製は分散機モーターミルM50(アイガー社製)に入れて、直径0.65mmのジルコニアビーズを用い、周速9m/sで4時間分散を行った。
【0334】
(イエローミルベースCの調製)
例示化合物Pig.−1 300重量部
Actilane421(Akcros社製アクリレートモノマー) 500重量部
DisperBYK−166(アミン価20mgKOH/g、酸価0mgKOH/g)
200重量部
上記の成分を撹拌混合し、顔料インクを得た。なお、顔料ミルベースの調製は分散機モーターミルM50(アイガー社製)に入れて、直径0.65mmのジルコニアビーズを用い、周速9m/sで4時間分散を行った。
【0335】
(イエローミルベースDの調製)
例示化合物Pig.−1 300重量部
Actilane421(Akcros社製アクリレートモノマー) 500重量部
DisperBYK−182(アミン価13mgKOH/g、酸価0mgKOH/g)
200重量部
上記の成分を撹拌混合し、顔料インクを得た。なお、顔料ミルベースの調製は分散機モーターミルM50(アイガー社製)に入れて、直径0.65mmのジルコニアビーズを用い、周速9m/sで4時間分散を行った。
【0336】
(イエローミルベースEの調製)
例示化合物Pig.−1 300重量部
Actilane421(Akcros社製アクリレートモノマー) 500重量部
EFKA4046(アミン価17〜21mgKOH/g、酸価0mgKOH/g)
200重量部
上記の成分を撹拌混合し、顔料インクを得た。なお、顔料ミルベースの調製は分散機モーターミルM50(アイガー社製)に入れて、直径0.65mmのジルコニアビーズを用い、周速9m/sで4時間分散を行った。
【0337】
(イエローミルベースFの調製)
例示化合物Pig.−1 300重量部
Actilane421(Akcros社製アクリレートモノマー) 500重量部
ソルスパース32000(アミン価27.1mgKOH/g、酸価24.8mgKOH/g) 200重量部
上記の成分を撹拌混合し、顔料インクを得た。なお、顔料ミルベースの調製は分散機モーターミルM50(アイガー社製)に入れて、直径0.65mmのジルコニアビーズを用い、周速9m/sで4時間分散を行った。
【0338】
(イエローミルベースGの調製)
例示化合物Pig.−18 300重量部
Actilane421(Akcros社製アクリレートモノマー) 500重量部
ソルスパース32000(アミン価27.1mgKOH/g、酸価24.8mgKOH/g) 200重量部
上記の成分を撹拌混合し、顔料インクを得た。なお、顔料ミルベースの調製は分散機モーターミルM50(アイガー社製)に入れて、直径0.65mmのジルコニアビーズを用い、周速9m/sで4時間分散を行った。
【0339】
(イエローミルベースHの調製)
例示化合物Pig.−49 300重量部
Actilane421(Akcros社製アクリレートモノマー) 500重量部
DisperBYK−168(アミン価:10mgKOH/g、酸価:0mgKOH/g) 200重量部
上記の成分を撹拌混合し、顔料インクを得た。なお、顔料ミルベースの調製は分散機モーターミルM50(アイガー社製)に入れて、直径0.65mmのジルコニアビーズを用い、周速9m/sで4時間分散を行った。
【0340】
(イエローミルベースIの調製)
例示化合物Pig.−52 300重量部
Actilane421(Akcros社製アクリレートモノマー) 500重量部
DisperBYK−168(アミン価:10mgKOH/g、酸価:0mgKOH/g) 200重量部
上記の成分を撹拌混合し、顔料インクを得た。なお、顔料ミルベースの調製は分散機モーターミルM50(アイガー社製)に入れて、直径0.65mmのジルコニアビーズを用い、周速9m/sで4時間分散を行った。
【0341】
(イエローミルベースJの調製)
NOVOPERM YELLOW H2G 300重量部
Actilane421(Akcros社製アクリレートモノマー) 500重量部
DisperBYK−168(アミン価:10mgKOH/g、酸価:0mgKOH/g) 200重量部
上記の成分を撹拌混合し、顔料インクを得た。なお、顔料ミルベースの調製は分散機モーターミルM50(アイガー社製)に入れて、直径0.65mmのジルコニアビーズを用い、周速9m/sで4時間分散を行った。
【0342】
(イエローミルベースKの調製)
例示化合物Pig.−1 300重量部
Actilane421(Akcros社製アクリレートモノマー) 500重量部
ソルスパース44000(酸価:12mgKOH/g、アミン価:0mgKOH/g)
200重量部
上記の成分を撹拌混合し、顔料インクを得た。なお、顔料ミルベースの調製は分散機モーターミルM50(アイガー社製)に入れて、直径0.65mmのジルコニアビーズを用い、周速9m/sで4時間分散を行った。
【0343】
(イエローミルベースLの調製)
例示化合物Pig.−1 300重量部
RAPI−CURE DVE−3(トリエチレングリコールジビニルエーテル、ISP社製) 500重量部
DisperBYK−168(アミン価:10mgKOH/g、酸価:0mgKOH/g) 200重量部
上記の成分を撹拌混合し、顔料インクを得た。なお、顔料ミルベースの調製は分散機モーターミルM50(アイガー社製)に入れて、直径0.65mmのジルコニアビーズを用い、周速9m/sで4時間分散を行った。
【0344】
〔実施例1〕
以下の成分を、高速水冷式撹拌機により撹拌し、イエロー色のUVインクジェット用インクを得た。粘度は19mPa・sであった。
(イエロー色インク組成物)
・イエローミルベースA 12.0部
・ファンクリル512A 35.4部
・N−ビニルカプロラクタム 25.0部
・NKエステルAMP−10G 14.0部
・First cure ST−1 0.05部
・Lucirin TPO(BASF社製光開始剤) 8.5部
・ベンゾフェノン(光開始剤) 3.0部
・Irgacure 184(CSC社製光開始剤) 2.0部
・Byk 307(BYK Chemie社製界面活性剤) 0.05部
・ジメチルアミノエチルアクリレート 1.0部
【0345】
(インクの評価)
得られたインク組成物を用い、インクジェット記録を行った。硬化性、インクの保存安定性、吐出性及びN−ビニルカプロラクタム分解性の評価結果を表1に示した。また、保存前後の画像柔軟性及び密着性の評価結果を表1に示した。
【0346】
〔実施例2〜9、比較例1〜2〕
使用するイエローミルベースをB〜Kまで変えた以外は実施例1と同様にしてインク組成物を調製した。
また、得られたインク組成物を用い、インクジェット記録を行った。硬化性、インクの保存安定性、吐出性及びN−ビニルカプロラクタム分解性の評価結果を表1に示した。また、保存前後の画像柔軟性及び密着性の評価結果を表1に示した。
【0347】
〔実施例10〕
以下の成分を、高速水冷式撹拌機により撹拌し、イエロー色のUVインクジェット用インクを得た。粘度は18.5mPa・sであった。
・イエローミルベースL 10.0部
・CELLOXIDE 2021P 30.0部
・アロンオキセタンOXT−221 34.3部
・RAPI−CURE DVE−3 13.6部
・UVI−6992 9.0部
・Anthracure UVS−1331 3.0部
・BYK−307 0.1部
【0348】
得られたインク組成物を用い、インクジェット記録を行った。硬化性、インクの保存安定性、及び吐出性の評価結果を表1に示した。また、保存前後の画像柔軟性及び密着性の評価結果を表1に示した。
【0349】
(インク組成物の評価)
これらのインク組成物を用いて、硬化性、インクの保存安定性、吐出性、N−ビニルカプロラクタムの分解割合、柔軟性及び密着性を評価した。
インク組成物中のN−ビニルカプロラクタムの分解割合は、液体クロマトグラフィーにより測定し、N−ビニルカプロラクタムのピーク面積の初期状態からの変動を確認した。
【0350】
<保存安定性>
インク組成物をガラス製バイアル瓶に入れ、60℃、4週間保管後の粘度の上昇率を評価した。上昇率が小さいものほど保存安定性は良好であり、概ね20%以下であれば実用上の問題を生じない。
上昇率(%)=(保管後の粘度−保管前の粘度)/保管前の粘度×100
【0351】
《インクジェット画像記録方法》
経時前のインク及び経時後の各インク組成物を使用して、ピエゾ型インクジェットノズルを有するインクジェット記録実験装置を用いて、被記録媒体への記録を行った。インク供給系は、元タンク、供給配管、インクジェットヘッド直前のインク供給タンク、フィルター、ピエゾ型のインクジェットヘッドから成り、インク供給タンクからインクジェットヘッド部分までを断熱及び加温を行った。温度センサーは、インク供給タンク及びインクジェットヘッドのノズル付近にそれぞれ設け、ノズル部分が常に45℃±2℃となるよう、温度制御を行った。ピエゾ型のインクジェットヘッドは、8〜30plのマルチサイズドットを720×720dpiの解像度で射出できるよう駆動した。着弾後はUV光を露光面照度1,630mW/cm2、に集光し、被記録媒体上にインク着弾した0.1秒後
に照射が始まるよう露光系、主走査速度及び射出周波数を調整した。また、画像に照射される積算光量を4,500mJ/cm2となるようにした。紫外線ランプには、HAN250NL ハイキュア水銀ランプ(ジーエス・ユアサ コーポレーション社製)を使用した。なお、本発明でいうdpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す。被記録媒体として、エステルフィルムE5000(膜厚125μm、東洋紡績(株)製)を用いた。
【0352】
<硬化速度>
インク組成物を、被記録媒体としてのポリ塩化ビニル(厚み220μm)の表面に、Kハンドコーター(バーNo.2)を用いてウェット膜厚12μmとなるように塗布した。次いで、オゾンレスメタルハライドランプMAN125Lを搭載し、コンベアスピード6m/分、露光強度1,800W/cm2に設定したUVコンベア装置CSOT(ジーエス・ユアサライティング製)内を、塗布表面の粘着性が無くなるまで繰り返し通過させ、放射線硬化させた。硬化速度は、下記基準で評価した。結果を表1に示す。
◎:通過回数1回でタックフリーになった。硬化速度は極めて速い。
○:通過回数2回でタックフリーになった。硬化速度は速い。
△:通過回数3回でタックフリーになった。硬化時間はやや遅い。
×:通過回数4回以上でタックフリーになった。硬化時間は遅い。
【0353】
<耐擦過性>
インク組成物を、被記録媒体としてのポリ塩化ビニル(厚み220μm)の表面に、Kハンドコーター(バーNo.2)を用いてウェット膜厚12μmとなるように塗布した。次いで、オゾンレスメタルハライドランプMAN125Lを搭載し、コンベアスピード6m/分、露光強度1,800W/cm2に設定したUVコンベア装置CSOT((株)ジーエス・ユアサ ライティング製)内を、塗布表面の粘着性が無くなるまで繰り返し通過させ、放射線硬化させた。強度は、この硬化塗膜を用いてISO15184(引っかき硬度−鉛筆法)により下記の基準で評価した。結果を表1に示す。
◎:4H以上、耐擦過性は極めて良い。
○:F以上3H以下、耐擦過性は良い。
△:3B以上HB以下、耐擦過性はやや悪い。
×:4B以下、耐擦過性は悪い。
【0354】
<インクジェット吐出性>
インクジェットプリントヘッドCA3(東芝テック(株)製)を搭載したJetLyzer(ミマキエンジニアリング社製)を吐出電圧22V、吐出ドロップ数7ドロップに設定し、インク組成物を45℃にて60分間連続吐出して、下記の基準で評価した。結果を表1に示す。
◎:正常に打滴されていた。インクジェット吐出性は極めて良い。
○:わずかにミストの発生が見られた。インクジェット吐出性は良い。
△:ミストの発生が見られた。インクジェット吐出性はやや悪い。
×:酷いミストの発生が見られた。インクジェット吐出性は悪い。
【0355】
<柔軟性評価方法:折り曲げテスト>
本実施例では、保存前後での硬化膜の柔軟性を評価する方法として、折り曲げテストを実施した。
上記インクジェット画像記録方法に従い、被記録媒体として、エステルフィルムE5000(膜厚125μm、東洋紡績(株)製)を用い、画像部の平均膜厚が12μm、24μm、36μmの3つのベタ画像を描画した。折り曲げテストは画像を形成した被記録材を25℃の条件下で1回折り曲げ、画像部の割れの有無によって評価した。一般に平均膜厚が厚くなると、画像部を折り曲げた際に画像部にかかる歪が大きくなり、割れを生じやすくなる。すなわち、より厚い膜厚で画像部に割れが生じないかをテストすることで、柔軟性の尺度とすることができる。
評価基準は以下の通りである。
4: 平均膜厚12μm、24μm、36μmのサンプルでは割れが発生しない。
3: 平均膜厚12μm、24μmのサンプルでは割れが発生しない。
2: 平均膜厚12μmのサンプルでは割れが発生しないが、平均膜厚24μmのサンプルで、画像部の折り曲げた部分に割れが入る。
1: 平均膜厚12μm、24μm、36μmすべてのサンプルで、画像部の折り曲げた部分に割れが入る。
【0356】
<基材密着性評価方法:クロスハッチテスト(EN ISO2409)>
被記録媒体として、PET(エステルフィルムE5000、膜厚125μm、東洋紡社製)を用い、上記インクジェット画像記録方法に従い、それぞれの基板に画像部の平均膜厚が12μmのベタ画像を描画した。その後、各々の印刷物に対して、クロスハッチテスト(EN ISO2409)を実施した。なお、評価は、0(優秀)〜5(不良)の6段階で評価を行った。ここで、評価0がカットの縁が完全に滑らかで、どの格子の目にも剥がれがないことを意味する。
【0357】
<粘度測定方法>
本実施例における粘度測定は、B型粘度計:Brookfield LVDV−I(Brookfield社製)を用い、25℃条件下で、ローターの回転数20rpmで粘度測定を行った。
【0358】
【表1】

【0359】
本発明によれば、インクとしての保存安定性、吐出性が良好であり、光照射時の硬化性にも問題なく、硬化膜(インクジェット描画画像)としての柔軟性、基材密着性を満足する。さらには、NVCの分解も抑制され、インクとして安定した品質のものが実現できる。一方、比較例1に示すように、顔料が市販品として一般に使用される顔料では、顔料分散における安定性確保が難しく、保存安定性が不十分であり、顔料の凝集等による吐出性悪化が顕在化している。また比較例2に示すように、酸性分散剤の使用では、NCVの分解が起こり、インクの硬化性が悪化し、硬化膜自体の不良が顕在化している。
【0360】
本発明により、インクとしての保存安定性に優れ、吐出性が問題なく、さらには、硬化性が良好であり、硬化後の膜特性が良好な印刷画像を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩基性分散剤、
重合性化合物、
重合開始剤、及び、
下記式(1)で表されるアゾ顔料を含むことを特徴とする
インク組成物。
【化1】

(式(1)中、Qは、Qが結合する2つの炭素原子と共に5〜7員のヘテロ環を形成するのに必要な非金属原子団を表し、Wはアルコキシ基、アミノ基、アルキル基又はアリール基を表し、X1、X2はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アシル基、アルキルスルホニル基又はアリールスルホニル基を表し、R1は水素原子又は置換基を表し、R2はヘテロ環基を表し、nは1〜4の整数を表す。n=2〜4の場合、式(1)はQ、W、X1、X2、R1、又はR2を介して結合した2〜4量体をそれぞれ表す。)
【請求項2】
前記塩基性分散剤が、高分子化合物である請求項1に記載のインク組成物。
【請求項3】
前記塩基性分散剤が、N原子を含有する分散剤である請求項1又は2に記載のインク組成物。
【請求項4】
前記式(1)で表されるアゾ顔料が、下記式(2)で表されるアゾ顔料である請求項1〜3のいずれか1項に記載のインク組成物。
【化2】

(式(2)中、Qは、Qが結合する2つの炭素原子と共に5〜7員のヘテロ環を形成するのに必要な非金属原子団を表し、Wはアルコキシ基、アミノ基、アルキル基又はアリール基を表し、X1はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アシル基、アルキルスルホニル基又はアリールスルホニル基を表し、R1は水素原子又は置換基を表し、R2はヘテロ環基を表し、nは1〜4の整数を表す。n=2〜4の場合、式(2)はQ、W、X1、R1、又はR2を介して結合した2〜4量体をそれぞれ表す。)
【請求項5】
前記式(1)中のQが、Qが結合する2つの炭素原子と共に5員の含窒素ヘテロ環を形成するのに必要な非金属原子団である請求項1〜4のいずれか1項に記載のインク組成物。
【請求項6】
前記式(1)中のnが、2である請求項1〜5のいずれか1項に記載のインク組成物。
【請求項7】
前記式(2)中のX1が、水素原子である請求項4に記載のインク組成物。
【請求項8】
前記式(1)で表されるアゾ顔料が、下記式(3)で表されるアゾ顔料である請求項1〜3のいずれか1項に記載のインク組成物。
【化3】

(式(3)中、Yは水素原子又は置換基を表し、Gは水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又はヘテロ環基を表す。Wはアルコキシ基、アミノ基、アルキル基又はアリール基を表し、X1、X2はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アシル基、アルキルスルホニル基又はアリールスルホニル基を表し、R1は水素原子又は置換基を表し、R2はヘテロ環基を表し、nは1〜4の整数を表す。n=2〜4の場合、式(3)はG、Y、W、X1、X2、R1、又はR2を介して結合した2〜4量体をそれぞれ表す。)
【請求項9】
前記式(1)中のWが、総炭素数3以下のアルコキシ基、アミノ基、又は総炭素数3以下のアルキルアミノ基である請求項1〜8のいずれか1項に記載のインク組成物。
【請求項10】
前記式(3)中のGが、総炭素数3以下のアルキル基である請求項8に記載のインク組成物。
【請求項11】
前記式(3)で表されるアゾ顔料が、下記式(4)で表されるアゾ顔料である請求項8に記載のインク組成物。
【化4】

(式(4)中、Zは5〜8員の含窒素ヘテロ環に由来する2価の基を表し、Y1、Y2、R11、R12は、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、G1、G2は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、又はヘテロ環基を表し、W1、W2はそれぞれ独立にアルコキシ基、アミノ基、アルキル基又はアリール基を表す。)
【請求項12】
前記式(4)中のW1、W2が、それぞれ独立に総炭素数3以下のアルコキシ基、アミノ基、又は総炭素数3以下のアルキルアミノ基である請求項11に記載のインク組成物。
【請求項13】
前記式(4)中のG1、G2が、それぞれ独立に総炭素数3以下のアルキル基である請求項11又は12に記載のインク組成物。
【請求項14】
前記式(4)中のZが、6員の含窒素ヘテロ環である請求項11〜13のいずれか1項に記載のインク組成物。

【公開番号】特開2010−202693(P2010−202693A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−46682(P2009−46682)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】