説明

インシュリンシグナルを増強するためのGLUT4リン酸化と移行を促進する方法

本発明はII型糖尿病の予防及び/又は治療の方法に関するもので、また、シグナル伝達経路におけるインシュリンシグナルを増強するために、Glut4リン酸化及び標的細胞膜へのGlut4移行を増す方法に関するものであり;更に、II型糖尿病の予防及び/又は治療に有用な、抽出物質及びその後、選択的にその活性なn−ブタノール分画及び活性分子ルピノシドPA(LPA)を得る簡便で安価な方法であり;最後に、その医薬用組成物に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、II型糖尿病の予防及び/又は治療の方法に関し、また、シグナル伝達経路におけるインシュリンシグナルを増強するために、Glut4リン酸化及び標的細胞膜へのGlut4移行を増す方法に関し、更に、II型糖尿病の予防及び/又は治療に有用な抽出物質及びその後、選択的にその活性なn−ブタノール分画及び活性分子ルピノシドPA(Lupinoside PA, LPA4)をも得る簡便で安価な工程に関し、最後に、その医薬用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
潜行性の病気であるII型インシュリン耐性―糖尿病は糖尿病症例の95%以上の原因となっている。この均質でない疾病は流行となって増加しており、世界的に見たこの疾患の発生率は毎年6%以上増加が予想されている1,2。この疾病は当初、骨格筋、脂肪及び肝臓へのグルコース処理に欠陥がある高血糖症の形で発現し、次第にこれらの臓器はインシュリンに非応答になり、又はインシュリン耐性になる3,4。諸遊離脂肪酸(FFAs)がインシュリン不活化の原因であることを支持する多くの証拠が蓄積されてきた。FFAsの循環量が増加すると、インシュリン機能が損なわれ、また一般的に、肥満及びII型糖尿病と結びつく5−7。脂質注入により血漿FFA濃度が増すと、ラット及びヒト骨格筋においてインシュリン耐性が引き起こされる7−9。分離した筋肉片又は培養筋肉細胞とFFAとのインキュベート、又は骨格筋中のリポタンパクリパーゼ発現によって、インシュリンが介在するグルコースの取り込みが減少する6−12。これらの報告は、インシュリン感受性組織において、脂質の沈着が増すと、インシュリン反応低下及び耐性がもたらされることを示唆する。FFAによるインシュリン活性の阻害はインシュリンシグナル異常と関係しているであろう。FFAによるグルコース輸送の低下は、IRS−1リン酸化、IRS−1関連のホスファチジルイノシトール−3リン酸キナーゼ(PI3K)等のインシュリンに感作された活性化が、FFAによって阻害されることと関係する13−15。チアゾリジンジオン(TZD)処理は、標的組織におけるインシュリン作用を抑えるFFA循環を減少させ、インシュリン活性を改善する16−18.PPARγ活性化により脂肪細胞のグリセロールキナーゼ遺伝子発現を誘導することで、TZDはトリグリセリドにグリセロール取り込みを増し、脂肪細胞からのFFA分泌を減少させ、このようにしてインシュリン感作に役立つ19
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の主要な目的はII型糖尿病を予防及び/又は治療する方法を開発することである。
本発明の他の主要な目的は、シグナル伝達経路におけるインシュリンシグナルを増強するために、Glut4リン酸化及び標的細胞膜へのGlut4移行を促進する方法を開発することである。
更に、本発明の他の主要な目的は、II型糖尿病の予防及び/又は治療に有用な抽出物質及びその後、選択的にその活性なn−ブタノール分画及び活性分子ルピノシドPA(LPA)を得る簡便で安価な工程を開発することである。
更に、本発明の他の主要な目的は、II型糖尿病を予防及び/又は治療するための医薬用組成物を開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明はII型糖尿病の予防及び/又は治療の方法に関するもので、また、シグナル伝達経路におけるインシュリンシグナルを増強するために、Glut4リン酸化及び標的細胞膜へのGlut4移行を促進する方法に関するものであり;更に、II型糖尿病の予防及び/又は治療に有用な抽出物質及びその後、選択的にその活性なn−ブタノール分画及び活性分子ルピノシドPA(LPA)を得る簡便で安価な工程に関するものであり;最後に、その医薬用組成物に関するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
本発明は、従って、II型糖尿病の予防及び/又は治療の方法に関するもので、また、シグナル伝達経路におけるインシュリンシグナルを増強するために、Glut4リン酸化及び標的細胞膜へのGlut4移行を促進する方法に関するものであり;更に、II型糖尿病の予防及び/又は治療に有用な、抽出物質及びその後、選択的にその活性なn−ブタノール分画及び活性分子ルピノシドPA(LPA)を得る簡便で安価な工程に関するものであり;最後に、その医薬用組成物に関するものである。
本発明の他の実施態様において、本発明は必要な被検体のII型糖尿病を防止する及び/又は治療する方法に関するものであり、該方法には、植物クズ(Pureria tuberosa)の抽出物、又は抽出物のブタノール分画、又はルピノシドPA(LPA)を、適宜、添加剤と共に被検体に対して、医薬学的に有効量投与する段階がある。
【0006】
本発明の他の実施態様において、被験体は動物である。
本発明の他の実施態様において、被験体はヒトである。
本発明の他の実施態様において、本分画を1〜40mg/kg体重の濃度範囲で投与する。
本発明の他の実施態様において、本発明は、ルピノシドが1〜40mg/kg体重の濃度範囲で投与される、請求項1に記載された方法に関するものである。
本発明の他の実施態様において、本発明は投与経路が経口、経静脈、経筋肉及び経皮下から成る群から選択されるものである、請求項1に記載された方法に関するものである。
本発明の他の実施態様において、本発明はII型糖尿病を予防する及び/又は治療するに有用な医薬用組成物であり、該組成物は植物クズの抽出物、又は抽出物のブタノール分画又はルピノシドPA(LPA)及び添加剤から成る。
本発明の他の実施態様において、添加剤はタンパク質、炭化水素、糖類、タルク、ステアリン酸マグネシウム、セルロース、炭酸カルシウム、デンプン、ゼラチンペースト、医薬学的に許容された担体、賦形剤、稀釈剤及び溶媒から成る群から選択される。
【0007】
本発明の他の実施態様において、抽出物は植物の根から得られる。
本発明の他の実施態様において、本分画は1〜40mg/kg体重の濃度範囲である。
本発明の他の実施態様において、ルピノシドは1〜40mg/kg体重の濃度範囲である。
本発明の他の実施態様において、本組成物はカプセル、シロップ、濃縮飲料、粉末及び顆粒から成るグループから選択した形をとる。
本発明の他の実施態様において、抽出物は水性抽出物である。
本発明の他の実施態様において、本発明は必要とする被検体にシグナル伝達経路のインシュリンシグナルを増強するために、その方法が植物クズの抽出物、又は抽出物のブタノール分画、又はルピノシドPA(LPA)を、適宜添加剤と共に医薬学的に有効量を被検体に対し投与することから成る、Glut4リン酸化及び標的細胞膜へのGlut4移行を促進する方法に関するものである。
【0008】
本発明の他の実施態様において、添加物は、タンパク質、炭化水素、糖類、タルク、ステアリン酸マグネシウム、セルローズ、炭酸カルシウム、デンプン、ゼラチンペースト、医薬的に許容された担体、賦形剤、稀釈剤及び溶媒、の様な栄養物から成る群から選択されるものである。
本発明の他の実施態様において、本分画は1〜40mg/kg体重の濃度範囲で投与される。
本発明の他の実施態様において、ルピノシドは1〜40mg/kg体重の濃度範囲で投与される。
本発明の他の実施態様において、本方法はII型糖尿病を予防及び/又は治療することに役立つ。
本発明の他の実施態様において、本方法は細胞によるグルコース取り込みを増加させることを示す。
本発明の他の実施態様において、本方法は細胞に対し毒性がない。
本発明の他の実施態様において、移行は細胞質からインシュリン応答細胞の膜へのものである。
本発明の他の実施態様において、ルピノシドPA(LPA)は、インシュリンシグナル伝達上でパルミチン酸塩により引き起こされる障害から守る。
本発明の他の実施態様において、ルピノシドPA(LPA)は、インシュリンにIR−ベーター及びAktリン酸化を刺激させる。
【0009】
本発明の他の実施態様において、本発明は、a.植物器官を小部分に切断する工程、
b.切断した器官をメタノール及び水で抽出する工程、
c.メタノール及び水抽出物を酢酸エチルと水の間で分配する工程、
d.水層を更にn−ブタノールで抽出し、ブタノール分画を得る工程、及び、
e.n−ブタノール分画をクロマトグラフィーにかけ、水及びメタノールを溶出液とし、ルピノシドPA(LPA)を得る工程
から成る、II型糖尿病の予防及び/又は治療に有用な抽出物質及びその後、選択的にその活性なn−ブタノール分画及び活性分子ルピノシドPA(LPA)を得る簡便で安価な方法に関するものである。
本発明の他の実施態様において、植物器官は根である。
本発明の他の実施態様において、溶媒はメタノール及び水から成る群から選択される。
本発明の他の実施態様において、水及びメタノールの割合はおよそ1:1である。
本発明の他の実施態様において、クロマトグラフィーはカラムクロマトグラフィーである。
【0010】
標的組織のインシュリン感受性の減少、又はインシュリン耐性がII型糖尿病の原因となり、この疾病は今や産業社会において流行にまでなっている。どのようにインシュリンが感受性を失うのかは尚はっきりしない。多くの証拠により、諸遊離脂肪酸(FFAs)がインシュリン耐性の原因となっているとされている。我々は、FFAsの一つである、パルミチン酸塩が、3T3L1脂肪細胞細胞膜の210KDa受容体タンパク質へのインシュリンの結合を阻害することを示した。Kaが変わらないので、パルミチン酸塩はインシュリン結合の親和性を変化させず、インシュリンの受容体飽和度をBmax7.3pM(インシュリン)から3.46pM(インシュリン+パルミチン酸塩)と顕著に減少させる。パルミチン酸塩による、インシュリンとインシュリン受容体(IR)との相互作用の阻害は、インシュリン−IR複合体の後に続く重要な標的細胞応答である、IRβチロシンリン酸化の減少と同時に起こる。次ぎに我々は、IRβチロシンリン酸化の後で、結果としてリン酸化される、インシュリンにより刺激された下流シグナルを吟味した。3T3L1細胞とパルミチン酸塩との24時間インキュベーションが影響して、インシュリンにより増加するIRS1,PI3キナーゼ及びAktリン酸化は約半分に減少し、インシュリン誘導型のGlut4移行は完全に阻害された。
これらの結果は、パルミチン酸塩によるインシュリンシグナルの低下を示し、またインシュリン不作用を引き起こす。植物根から抽出したルピノシドPA(LPA)はパルミチン酸塩により引き起こされるインシュリンシグナル伝達の障害から守る。パルミチン酸塩と共インキュベートしたLPAは、インシュリンのIRβ及びAktリン酸化及びインシュリン誘導型のGlut4移行を促進させる。従って、LPAはインシュリン耐性とII型糖尿病の治療剤としての使用が約束されていることを示す。
【0011】
これらの報告により、インシュリン耐性とII型糖尿病を引き起こす主要な化合物として、我々はFFAsに注意を向けた。以前の報告により、FFAsの中で、パルミチン酸塩がインシュリン活性の最も効力のある阻害剤であることが分かる12,20−23,しかしながらパルミチン酸塩がどの様に障害を起こすかについて疑問が残る。3T3L1脂肪細胞をパルミチン酸塩、ミリスチン酸塩、ブチル化物、カプリル酸塩、ステアリン酸塩、ラウリン酸塩及びリノール酸塩で24時間前処理した後、インシュリンと30分インキュベートし、H−2デオキシグルコース(2−DOG)取り込みを測定すると、パルミチン酸塩が最も強力な阻害剤であることが分かった(データ非表示)。このことから我々は、インシュリン刺激によるグルコース取り込みがパルミチン酸塩によって阻害されること、に関わるメカニズムを探索した。パルミチン酸塩とインキュベートした脂肪細胞を溶解し、膜を分離し、可溶化し、非変性SDS−PAGEで泳動し、その後オートラジオグラフィーを行った。125I−インシュリン結合タンパク質はゲルの210kDa領域に位置したので、これは3T3L1脂肪細胞において、非変性条件で界面活性剤に可溶化したインシュリン受容体に関する以前の報告の確認となった24−26
【0012】
図1aは、パルミチン酸塩がインシュリンの受容体への結合を効果的に減少させることを示す。β―アドレナリン受容体で報告されたように27−29、IRのパルミチン酸塩結合又はパルミトイル化は親和性に影響するのではなく、受容体飽和度を約半分にまで減少させ、Bmaxは7.3から3.46pMに減少した(図1b)。125I−インシュリンの受容体への結合はステアリン酸塩又はミリスチン酸塩により減少しなかった(データ非表示)ので、我々はこれがパルミチン酸塩に特異的効果であると推測した。興味深いことに、放射標識したパルミチン酸塩は類似の分子量のタンパク質(1a)に結合し、IRのパルミトイル化と示唆される。モデルを使い、この仮説の論理を図1cに説明する。可能なパルミトイル化の位置を同定するために、最近決定された、I型インシュリン類似成長因子受容体の結晶構造30との相同性に基づき、ラットインシュリン受容体の最初の3個の領域の3−D構造をモデル化した。アラニン走査突然変異テストにより、インシュリン受容体(図1cの青緑色円の内部)のこの領域が、インシュリン結合の可能性が最も高い位置であると強く示唆される31
【0013】
コンセンサスアミノ酸配列が欠けている27ことから、パルミトイル化優先傾向は3−D構造で決定され、正荷電表面及び/又は中性表面が好まれると示唆される。モデル化した構造の表面静電ポテンシャルの計算、溶媒可触性及びシステイン残基の近接性の測定により、IRのL1−Cysリッチ−L2領域内の16個のCys対の中でパルミトイル化の為の可能性のある2対のCys残基(Cys−8&Cys−26及びCys−266&Cys−274)を定めた。パルミチン酸塩とIRの単なる会合は生物的関連性を意味しないので、結合が機能的な重要性と関係することを明示するために、我々はインシュリン刺激によるシグナルに対するパルミチン酸塩による妨害を研究した。最初、我々は、3T3L1細胞をパルミチン存在又は非存在下で24時間インキュベートした後、インシュリンとのインキュベーションによって、インシュリン受容体β(IRβ)のリン酸化を観測した。IRβのインシュリン刺激によるリン酸化はパルミチン酸塩により顕著に減少したが、ステアリン酸塩の場合はその様な阻害効果は見られなかった(図1d)。これらの結果により、IRβリン酸化はインシュリン標的細胞において決定的応答であるので、パルミチン酸塩会合又は受容体のパルミトイル化は生理的な関連を有する。
【0014】
更なる証拠を求めて、我々はインシュリンが増強した下流シグナルを吟味したが、下流シグナルは、受容体チロシンキナーゼリン酸化に続いて、結果としてリン酸化される。リン酸化特異的抗体を用いて、我々は、インシュリン刺激によるIRS−1リン酸化とPI3K活性は、パルミチン酸塩により顕著に減少することを見出した。パルミチン酸塩は、Akt活性化のような他の下流分子のインシュリンによる活性化も阻害した。しかしながら、ステアリン酸塩とのインキュベーションではその様な阻害効果を示さなかった(図2a)。インシュリン刺激による、IRSと関連したリン酸化及びIRS1と関連したPI3K活性化がFFAにより減少したこと、は既に報告されているが13,15,20、本稿で我々はパルミチン酸塩単独で上記のような障害を起こすことを示した。我々の研究で観測された他の興味ある傾向は、パルミチン酸塩による阻害程度の近接性である。ウェスタンブロットの黒化度解析によると、インシュリン刺激による、IRβ、PI3Kリン酸化及びAktリン酸化は、半分に減少した(データは非表示)。IRβ、PI3K及びAktのタンパク質プロフィールに対し、インシュリンもパルミチン酸塩も影響を与えなかった(図2a)。我々の発見によると、パルミチン酸塩によるインシュリンシグナルの破壊は恐らく、IRレベルに由来しており、その後、阻害は下流のシグナル分子に波及する様である。従って、PIPキナーゼの補充が制限されて、Aktと結びついたPIP3が阻害され、さらにGlut4輸送上の様々な効果がもたらされると考えられる。最後に、この方向での裏付けは、細胞内へのグルコースの取り込みに重要な、Glut4移行において得ることが出来た。インシュリン誘導型のGFP−Glut4の細胞質から脂肪細胞膜への移行は、パルミチン酸塩により完全に阻害された(図2b)。
【0015】
インドにおける薬草植物の抗―糖尿病活性を探索する過程で、クズ(Pureria tuberosa)根からのメタノール−水(1:1)抽出物は、パルミチン酸塩によるインシュリン活性の障害を改善することが、3T3L1細胞によるH−2DOG取り込みによって、分かった。DiaionHP−20クロマトグラフィーにより、我々は5個の分画(A−E)を得、その中、分画Eが要求する活性を有することが分かった。E分画のセファデックスLH20クロマトグラフィーによる分画は3分画(F−H)をもたらし、F分画はパルミチン酸塩による障害を改善した。F分画を更にHPLCにより精製し単一分子を得たが、この分子は2D NMRと質量分析によりルピノシドPA32と同定された(図3a)。LPAの、パルミチン酸塩によるインシュリンシグナリング分子損傷に対する、防御効果を、3T3L1脂肪細胞を使って調べた。図3bは、脂肪細胞における、インシュリンによるH−2−DOG取り込み増加の、パルミチン酸塩による減少がLPAによって阻止されたことを示す。インシュリンによるIRβチロシン及びAktリン酸化に対する、パルミチン酸塩の弱化効果はLPAにより抑えられた(図3c)。
【0016】
Aktは非常に重要な下流シグナルとして知られているが、これは、インシュリン標的細胞において、細胞膜へのGlut4移行過程で重要なGlut4を活性化する33,34。インシュリンに応答して、Akt2はGlut4を保持する媒体に補充され、成分タンパク質をリン酸化する35。従って、インシュリンによるAktリン酸化をパルミチン酸塩が阻害すると言う障害がインシュリン耐性を引き起こすので、この経路における阻害をLPAが抑制することは意味がある。このことは、更に、インシュリン誘導型のGluA4移行をパルミチン酸塩が阻害するという我々の観察を裏付ける。パルミチン酸塩と共インキュベートしたLPAは、インシュリン誘導型の、細胞質から細胞膜へのGFP−Glut4移行を、明らかに阻害しない(図3d)。Glut4はインシュリン応答細胞におけるグルコースの極めて重要な担体であり、細胞表面を経由して構成的にもとに戻る。インシュリンは、細胞内位置にあるGlut4を盛んに隔離させ、Glut4の細胞膜への輸送速度を増加させる32。Glut4輸送現象に関係する細胞メカニズムは大部分が謎であるが、Glut4移行障害がインシュリン耐性に関与する34
【0017】
GFP−Glut4移行の測定に関する我々の結果によると、パルミチン酸塩はインシュリン誘導型のGlut4移行を完全に阻害し、この阻害はLPAによって完全に消失することが示された。これらの結果はインシュリン耐性又はII型糖尿病との関連で、次の理由により、とくに興味深い:(i)多くの研究により、インシュリン耐性の発生過程に、FFAs,特にパルミチン酸塩、が関係すると見なされている20−23;(ii)パルミチン酸塩は、血管循環及び骨格筋肉細胞で最も多く見出されるFFAである10,12;(iii)脂肪抽出物のジグリセリド分画に最も一般的なアシル鎖の一つがパルミチン酸塩である36;(iv)パルミチン酸塩の消費はインシュリン感受性を減少させる37,38また(v)インシュリン耐性筋肉はパルミチン酸塩取り込みを多く行う39。これらの報告全てから、インシュリン耐性を引き起こすFFAsの中で、パルミチン酸塩が主要な候補であることが分かる。しかしながら、少数の研究によると、パルミチン酸塩が引き起こすインシュリン作用の障害は、セラミドを介するとされる12.インシュリン反応低下に関与している多くの経路があるが、セラミドはそれ等の一つかも知れない、また我々の観察によると、パルミチン酸塩は直接インシュリン反応低下の原因に直接関与する。LPAは、パルミチン酸塩によるインシュリン反応低下を救済する。LPAは、細胞質から膜へのGlut4移行を含むあらゆる重要な段階で、パルミチン酸塩が作用するインシュリンシグナリング損傷から救済するので、このルピノシドは、インシュリン耐性とII型糖尿病の治療薬として、有望な可能性を有する。
【実施例】
【0018】
以下、実施例にて本発明を例証するが本発明を限定することを意図するものではない。
細胞培養と処理
3T3L1細胞株はNational Center for Cell Science,Pune,Indiaより購入し、37℃で、95%O/5%CO中で、25mMグルコース及び10%仔牛胎児血清を含む、ダルベッコ修正イーグル培地(DMEM)を用いて培養した。記述の際は常に、集密状態の細胞を0.75mM遊離脂肪酸(FFAs,パルミチン酸塩、ステアリン酸塩)と共に24時間処理した。
【0019】
可溶化した受容体調製物への放射標識したインシュリンの結合
対照(control)及びFFA処理した3T3L1脂肪細胞を最初、3回、0.14M NaClを含む0.02Mリン酸緩衝液(pH7.4)で洗浄し、次にプロテアーゼ阻害剤(1μg/mlアプロチニン、1μg/mlペプスタチン、1μg/mlロイペプチン、2mMフェニルメチルスルフォニルフルオライド及び1μg/mlトリプシン阻害剤)を補強した溶解緩衝液(20mM Tris−HCl、40mM NaCl,5mM EDTA,5mMヨードアセトアミド、pH8.4)に懸濁した。これらの細胞を3回、―70℃の凍結融解を繰り返し、4℃、15分間、10、000rpmで遠心した。集めた沈殿物を溶解緩衝液に懸濁し、超音波破壊し、再び4℃で、15−20分間、10,000rpmで遠心した。上清を一晩10mM Tris−HCl(pH7.4)緩衝液に対して透析し、体積を凍結乾燥で減少させた。次ぎに膜調製物を膜タンパク濃度が5mg/mlとなるように、0.1Mジヨードサリチル酸リチウムと混合し、混合物をモーター駆動型のガラスーテフロンホモジナイザーでホモジナイズし、これを20分間35,000gで遠心し、上清を12時間20mM重炭酸ナトリウムpH 9.4に対し透析した。この溶液に、常に攪拌しながら、0.1%トリトンX−100(v/v)及び25%グリセロールを加えた。この溶液を透析乾燥して体積を減少させ、10mM Tris−HCl緩衝液(pH8.4)に対して透析した。遺伝子組み換えヒトインシュリンを125Iで放射標識し、0.14M NaCl及び1%(w/v)BSAを含む0.01Mリン酸緩衝液(pH 7.2)で平衡化したセファデクス−G15カラムを用いて、125I−インシュリンを遊離ヨードから分離した。125I−インシュリンの比活性は30.55μCi/μgタンパク質であった。
【0020】
対照及びFFA処理した3T3L1脂肪細胞からの可溶化したインシュリン受容体調製物(各インキュベーションに対し25μg)を、4℃で、一晩、0.15M NaCl及び0.25%BSA(PBS)を含む、最終500μlの0.02Mリン酸緩衝液(pH 8.4)の中で2ngの125I標識したヒト組み換えインシュリンとインキュベートした。インキュベーション終了後、10g、1時間の超遠心(Sorvall Ultra−80)により沈殿させた。各チューブの沈殿物を1X試料緩衝液(63mM Tris−HCl、pH6.8,10%グリセロール、2%SDS,及び0.025%ブロモフェノールブルー)に可溶化し、非変性SDS−PAGE(4%スタッキングゲルを6.5%分離用ゲルの上に上層した)。ゲルを乾燥し、Kodak XOMAT ARに露光し、オートラジオグラフィーを行った(図1a参照)。
【0021】
スカッチャード解析
受容体タンパクに対する125I−インシュリンの最適の結合条件を決めるために、異なる温度及び時間間隔で、様々な量の可溶化した受容体調製物と結合インキュベーションを行った。pH8.4及び4℃で、一晩、インキュベーションを行い、最大の放射標識をしたインシュリン結合を得た。受容体調製物(15μgタンパク質)は一晩、4℃で、最終体積500μl緩衝液(0.15M NaCl及び0.25%BSAを含む0.02M リン酸緩衝液、pH8.4)中で、様々な濃度の125I−インシュリン(0.18−0.72nmoles/L)と、10,000倍過剰量の非標識インシュリン非存在下(全結合)又は存在下(非特異的結合)で、インキュベートした。他の一連の実験において、非標識0.08mMパルミチン酸塩の存在以外、上記と同条件で、受容体調製物を同時に125I−インシュリン及び非標識インシュリンとインキュベーションした。インキュベーション終了後、遊離及び結合した放射活性を500μlの0.5%冷却ポリエチレングリコール(PEG;MW6000)を加えて分離した。試料をボルテクスし充分に混合し、氷下に10分間保ち、冷却遠心機により15分間20,000gで遠心した。上清を吸引廃棄し、沈殿物を洗浄緩衝液(0.15M NaCl及び0.25%BSAを含む0.02Mリン酸緩衝液)で3回洗浄した。最終沈殿物中の放射活性を125I−ガンマ計数器で測定した。全結合カウントより非特異的結合にカウントを差し引き、特異的結合体を計算した。データをスキャチャード解析により解析し、親和性及びパルミチン酸塩存在下及び非存在下のインシュリン受容体結合飽和度を定量した(図1b)。
【0022】
分子モデリング
インシュリン受容体の相同モデルを、InsightII98.0(Accelrys Inc.,SanDiego,CA,USA)を用いて、IGF−1R27X−線構造体(アミノ酸同一性59%を持つPDB1IGR.ENT)の上に作成した。cff91力場を用いてInsightIIのDISCOVERモデュールにより、Silicon GraphicsOCTANEワークステーション上で、エネルギー最小化及び分子動力学計算を行った。最急降下法と共役傾斜法(各100ステップ)のコンビネーションを使い、0.001kcal/molの収束基準を使って、エネルギー最小化を行った;これらのステップを、満足のいく立体配座パラメーターが得られるまで繰り返した。1フェムト秒の時間ステップを使い、100ステップの平衡と1000ステップの動力学を計算し、分子動力学シミュレーションを行った。選択した断片の調節のために最小化と動力学は計算しながら、距離上の制約を分子の他の部分に適用した(図1c)。
【0023】
免疫沈殿
200μgの対照及びFFA処理の細胞破壊液(溶解緩衝液中[1%NP−40,20mM HEPES(pH 7.4),2mM EDTA,100mM NaF,10mMピロリン酸ナトリウム、1mMオルトバナジウム酸ナトリウム、1μg/mlロイペプチン、1μg/mlアプロチニン、1μg/mlペプスタチン、1mM PMSF]で、氷中10分間超音波処理)を、2μgインシュリン受容体(IR)β抗体と、4℃で、1晩インキュベートした。50μlのProteinA−アガロースを各チューブに加え、4℃で、2時間インキュベートした。4℃、2分間、10,000gで遠心後、500μlのPBSに溶かした0.1%CHAPSを沈殿物に加え、再懸濁し、4℃、2分間10,000g遠心を行った。沈殿物を充分洗浄し、SDS−PAGEに掛け、抗―リン酸チロシン抗体(抗マウス;1:1000)を用いて、ウェスターンブロットを行った(図1d参照)。
【0024】
電気泳動と免疫ブロッティング
対照及び処理細胞破壊液(60μg)を10%SDS−PAGEで分離し、90V,4℃、1.5時間、移動緩衝液中(25mM Tris、193mMグリシン、20%メタノール、pH 8.5)で、PVDF膜(Millipore, Bedford, MA01730)に移動した。膜を5%脱脂粉乳を溶かしたTBST緩衝液(20mMTris塩基、137mM NaCl, 1mM HCl、0.1%Tween20)でブロックし、抗p−IRS(抗山羊;1:1000)、抗p−PI3K(抗山羊;1:1000)及び抗p−Akt(抗ウサギ;1:2000)と一晩インキュベートした。
免疫反応性バンドはアルカリホスファターゼ結合二次抗体により検出した(図2a参照)。
【0025】
トランスフェクションとGlut4移行
3T3L1細胞をカバースリップが置いてある60mm培養皿に播き、空気/CO(19:1)環境下で、10%(v/v)FBS及び100μg/mlペニシリン/ストレプトマイシンを加えたDMEM中で維持した。24時間後、細胞をFBS及び抗生物質なしのDMEMで洗浄した。業者のプロトコール(Life Technologies)に従い、Lipofectamine試薬を用いて、各60mmプレート当たり2x10細胞にGFP−Glut4(2μg)のプラスミドDNAを遺伝子導入した。遺伝子導入48時間後に、細胞を0.75mMパルミチン酸塩と、又は無しで24時間処理し、その後100nMインシュリン非存在下又は存在下で30分間インキュベートした。カバースリップ上の細胞をパラホルムアルデヒド(3.5%)で固定し、ガラススライド上に埋め込んだ。レーザー走査共焦点顕微鏡(Leica Corp.,Rockleigh,NJ)下で、カバースリップ上の細胞におけるGFP−Glut4の移行を調べた(図2b参照)。
【0026】
クズからルピノシドPAの抽出と分離
クズ根(1kg)を細かく切断し、メタノール(3x1.5L)で抽出した。抽出した溶液から、減圧下で蒸発後、残渣(90g)が得られ、生物活性を調べた。メタノール抽出物を酢酸エチルと水の間で分配した。水層を、更にnーブタノールで抽出した。酢酸エチル層、n−ブタノール層及び水層から減圧下で溶媒を除き、それぞれ、2.5g、12g及び64gの分画を得た。各分画の生物活性を調べ、活性がn−ブタノール分画に見出された。この分画を、水及びメタノールを溶出液として、DiaionHP−20カラムクロマトグラフィーに掛けた。メタノール溶出液を蒸発させて乾燥させ(2.4g)、さらに、メタノール−水(1:1)及びメタノールを溶出液として、セファデクスLH−20クロマトグラフィーに掛けた。メタノール−水分画を減圧下で蒸発させ、生物活性を持つ固体(1.4g)を得た。この固体を調整用HPLC(μ―Bondapak,C−18逆相カラム、メタノール−1%水性酢酸(7:3)、流速12mm/min及びUV検出器210nm)に掛け、ルピノシドPA(LPA32(0.28g)と同定した均一化合物を得、この構造を、1D,2DNMR及びQ−TOF−MS及び幾つかの化学反応で決定した(図3a参照)。
【0027】
パルミチン酸塩によるグルコース取り込みの阻害に対するLPA処理の効果
3T3L1脂肪細胞を、0.2%仔牛血清アルブミンを補強したクレプス=リンガーリン酸(KRP)緩衝液(12.5mM HEPES,pH7.4,120mM NaCl,6mM KCl、1.2mM MgSO,1mM CaCl,0.4mM NaHPO、0.6mM NaHPO)中で、24時間LPA(20μg/ml)及びパルミチン酸塩(0.75mM)非存在又は存在下で処理を行い、次ぎに30分間100nMインシュリンと処理し、次ぎに,インキュベーション終了5分間前に、H−2−DOG(0.4nmoles)を各インキュベーション細胞に加えた。単純拡散及び放射活性の非特異的トラッピングを補正した、グルコース取り込みデータを得るために、3T3L1細胞を、0.3mMフロレチン存在下で、氷令したKRP緩衝液で3回洗浄した。細胞を1%NP−40で可溶化して、[H]−デオキシグルコースを液体シンチレーションカウンター(Packard, Tricarb 2100TR)により測定した(図3b参照)。
LPA及びパルミチン酸塩非存在下又は存在下で同様にインキュベートした3T3L1細胞を、超音波によって破壊し、上記で述べたように、溶解物のp−IR及びp−Aktを検出した(図3c参照)。他の一連の実験において、細胞を、既に記したように、GFP−Glut4で遺伝子導入し、24時間LPA及びパルミチン酸塩なし、又は、と共にインキュベートした。その後、細胞を100nMインシュリンとインキュベートし、Glut4移行を、共焦点顕微鏡下で観察した(図3d参照)。
【0028】
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【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】(a)パルミチン酸塩はインシュリンの受容体への結合及び受容体のチロシンキナーゼリン酸化の阻害を引き起こす。可溶化したインシュリン受容体調整品へ結合する放射標識したインシュリンとパルミチン酸塩のオートラジオグラフィー。パルミチン酸塩存在下及び非存在下で、3T3L1脂肪細胞を24時間インキュベートし、受容体調整品を0.1%トリトンX−100に可溶化した。25μgタンパク質を一晩、4℃で、2ng125I−インシュリン(比活性30.55μCi/μgタンパク質)とインキュベートした。インキュベーション終了後、10g、1時間の超遠心により沈殿物とした。125I−インシュリンは可溶化した受容体調製物に結合した。インシュリン受容体調製物と125I−インシュリンを非放射性パルミチン酸塩(PA)又はステアリン酸塩(SA)存在下で同様にインキュベートした。可溶化した25μgタンパク質の受容体調製物と[1−14C]−パルミチン酸塩と4℃で、一晩、インキュベートし、オートラジオグラフィー(14C−PA)を行った.(b)結合親和性及びスキャチャード解析による受容体飽和度の定量。インシュリンの可溶化した受容体への結合に対する、Bmax及びKaは、それぞれ7.3pM及び0.16x1010−1であった。しかしながら、パルミチン酸塩存在下では、インシュリン結合のKaは殆ど変わらず、0.158x1010−1であったが、Bmaxは3.46pMに減少した。(c)パネル(i)はインシュリン受容体の3個の領域(L1−Cysリッチ−L2)の相同モデルを表す。青緑色帯環で印したL1領域の部分はインシュリン結合位置である可能性が高い。アラニンへの突然変異により結合定数がおよそ300分の1に減少した残基を赤色で示し;突然変異により結合が10分の1から100分の1に低下した残基をピンク色で、また結合が3分の1から9分の1になった他の残基を黄色で示した。システイン残基は緑色で示され、これらの中Cys−8&Cys−26(iiの様に赤色円で印す)及びCys−266&Cys−274(iiiの様に赤色円で印す)はパルミトイル化の可能性が最も高い位置である。パネル(ii)及び(iii)は2個の可能性のあるシステイン対の周りの静電ポテンシャルを示し、Cys−8&Cys−26及びCys−266&Cys−274の周囲は正電荷(青色)及び中性(白色)静電ポテンシャルが優勢であるのでパルミトイル化の位置として選択した。パネル(iv)はCys−192&Cys−201対の周りの静電ポテンシャルを示し、この周囲は正(正及び中性)電荷を示すが、表面下に完全に埋め込まれているので可能性のある位置としては選択されなかった。パネル(iv)はCys−126&Cys−155対の周りの静電ポテンシャルを表し、この位置は負電荷(赤色)が優勢な位置のため、棄てられた位置である。(d)対照及びFFA処理の3T3L1脂肪細胞を溶解緩衝液中で超音波処理により溶解し、10,000gで10分間遠心した。対照及び処理細胞からの200μg上清タンパク質を2μgIRβ抗体と4℃で、一晩インキュベートした。抗原―抗体複合体をProteinA−アガロースと沈殿させ、沈殿を充分に洗浄し、再沈殿し、SDS−PAGE試料緩衝液中でボイルし、電気泳動した。ゲルからのタンパク質をPVDF膜に移動させ、抗−p−Tyr抗体、を用いて、免疫ブロットした。I−インシュリン;P−パルミチン酸塩;S−ステアリン酸塩を示す。
【図2】(a)3T3L1脂肪細胞を、図1において記載したように、パルミチン酸塩及びステアリン酸塩とインキュベートした。インキュベーション終了時に、細胞を溶解緩衝液中で超音波処理により溶解し、10,000gで10分間遠心した。上清タンパク質(各50μg)を5分間、SDS−PAGE試料緩衝液中でボイルし、12%ゲルSDS−PAGEで分離し、PVDF膜に移動し、アルカリホスファターゼ結合2次抗体を用いて、p−IRS−1(1:1000)、p−PI3キナーゼp85α(1:1000)及びp−Akt1/2(1:1000)抗体で免疫検知した。抗―IRS1,PI−3K及びAkt1/2抗体を用いて、処理によるタンパク質プロフィールを検知した。b)3T3L1脂肪細胞におけるインシュリン誘導型Glut4移行へのパルミチン酸塩の効果。カバースリップ上に蒔いた3T3L1細胞を、GFP−Glut4プラスミド(2μg)で48時間、リポフェクタミン試薬を用いてトランスフェクトした。安定化後、細胞をパルミチン酸塩存在下及び非存在下に、24時間インキュベートし、その後インシュリンと30分間インキュベートした。対照(Con)として、GFP−Glut4トランスフェクトした細胞を、脂肪酸とインシュリン非存在下でインキュベートした。インキュベーション終了時に、GFP−Glut4の局在位置をレーザー走査共焦点顕微鏡を用いて調べた。
【図3】(a)LPAの構造と精製。DiaionHP−20クロマトグラフィーを用いて、5分画(A−E)を得、その中、分画Eが要求された活性を有した。E分画のセファデックスLH20クロマトグラフィーによる分画は3分画(F−H)をもたらし、F分画はパルミチン酸塩により損なわれたインシュリン活性を改善した。F分画を更にHPLCにより精製し単一分子を得たが、この分子は2DNMRと質量分析によりルピノシドPAと同定された32。(b)脂肪細胞を24時間パルミチン酸塩、又はパルミチン酸塩プラスLPA、又はLPAとインキュベートし、その後30分間インシュリンとインキュベートした。インキュベーション終了5分間前に、各インキュベーション細胞に、H−デオキシグルコースを加えた。その後、単純拡散及び放射活性の非特異的トラッピングを補正して、グルコースの取り込みを測定するために、細胞を0.3mMフロレティン存在下で、氷冷KRP緩衝液で3回洗浄した。細胞を1%NP−40で可溶化し、放射活性を液体シンチレーションカウンターにより計数した。(c)3T3L1脂肪細胞を24時間、パルミチン酸塩、又はLPA、又はパルミチン酸塩プラスLPA非存在下又は存在下でインキュベートし、その後30分間インシュリンとインキュベートした。 各ケースの細胞溶解物50μgを変性ゲルにかけ、PVDF膜に移動し、抗―p−Akt抗体を用いて免疫ブロットした。50μgの細胞溶解物を抗―IRβ抗体と免疫沈降を行い、抗―p−Tyr抗体を用いて免疫ブロットした。(d)処理細胞のGlut4移行は図2bに記載したと同様な方法で定量した。
【図1b】

【図3a】

【図3b】

【図1a】

【図1c】

【図1d】

【図2a】

【図2b】

【図3c】

【図3d】

【図3e】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
その必要がある被験体のII型糖尿病の予防及び/又は治療の方法であり、該方法が薬学的に有効な量の、植物クズの抽出物又は抽出物のブタノール分画、又はルピノシドPA(LPA)を、随意的に添加剤と共に被験体に投与する方法。
【請求項2】
被験体が動物である、請求項1に記載された方法。
【請求項3】
被験体がヒトである、請求項1に記載された方法。
【請求項4】
抽出物が植物の根から得られる、請求項1に記載された方法。
【請求項5】
添加剤がタンパク質、炭化水素、砂糖、タルク、ステアリン酸マグネシウム、セルローズ、炭酸カルシウム、デンプン、ゼラチンペースト、医薬的に許容された担体、賦形剤、稀釈剤及び溶媒などの様な栄養素からなるグループから選択されたものである、請求項1に記載された方法。
【請求項6】
その分画が1〜40mg/kg体重の濃度範囲で投与される、請求項1に記載された方法。
【請求項7】
ルピノシドが1〜40mg/kg体重の濃度範囲で投与される、請求項1に記載された方法。
【請求項8】
投与経路が経口、経静脈、経筋肉及び経皮から成る群から選択される、請求項1に記載された方法。
【請求項9】
II型糖尿病を予防及び/又は治療するに有用な医薬用組成物であり、該組成物は植物クズの抽出物、又は抽出物のブタノール分画、又はルピノシドPA(LPA)及び添加剤から成る組成物。
【請求項10】
添加剤がタンパク質、炭化水素、砂糖、タルク、ステアリン酸マグネシウム、セルローズ、炭酸カルシウム、デンプン、ゼラチンペースト、医薬的に許容された担体、賦形剤、稀釈剤及び溶媒などの様な栄養素からなるグループから選択されたものである、請求項9に記載された医薬用組成物。
【請求項11】
抽出物が植物の根から得られる、請求項9に記載された医薬用組成物。
【請求項12】
その分画の濃度範囲が1〜40mg/kg体重である、請求項9に記載された医薬用組成物。
【請求項13】
ルピノシドの濃度範囲が1〜40mg/kg体重である、請求項9に記載された医薬用組成物。
【請求項14】
その組成物がカプセル、シロップ、濃縮物、粉末及び顆粒から成る群から選択される形である、請求項9に記載された医薬用組成物。
【請求項15】
抽出物が水性抽出物である、請求項9に記載された医薬用組成物。
【請求項16】
その必要のある被験体のシグナル伝達経路上のインシュリンシグナルを促進するために、Glut4リン酸化及び標的細胞膜へのGlut4移行を増加させる方法であり、該方法は医薬的に有効量の植物クズ抽出物又は抽出物のブタノール分画又はルピノシドPA(LPA)を随意的に添加剤と共に被験体に投与する方法。
【請求項17】
被験体が動物である、請求項16に記載された方法。
【請求項18】
被検体がヒトである、請求項16に記載された方法。
【請求項19】
抽出物が植物の根から得られた、請求項16に記載された方法。
【請求項20】
添加剤がタンパク質、炭化水素、砂糖、タルク、ステアリン酸マグネシウム、セルローズ、炭酸カルシウム、デンプン、ゼラチンペースト、医薬的に許容された担体、賦形剤、稀釈剤及び溶媒などの様な栄養素からなるグループから選択されたものである、請求項16に記載された方法。
【請求項21】
その分画が1〜40mg/kg体重の濃度範囲で投与される、請求項16に記載された方法。
【請求項22】
ルピノシドが1〜40mg/kg体重の濃度範囲で投与される、請求項16に記載された方法。
【請求項23】
該方法がII型糖尿病を予防/治療するのに役立つ、請求項16に記載された方法。
【請求項24】
該方法が細胞のグルコース取り込みの増加を示す、請求項16に記載された方法。
【請求項25】
該方法が細胞に非毒性である、請求項16に記載された方法。
【請求項26】
移行がインシュリン応答細胞の細胞質から膜への移行である、請求項16に記載された方法。
【請求項27】
ルピノシドPA(LPA)がパルミチン酸塩が引き起こすインシュリンシグナル上の障害を阻止する、請求項16に記載された方法。
【請求項28】
ルピノシドPA(LPA)がインシュリンによるIR−β及びAktリン酸化の促進を可能にする、請求項16に記載された方法。
【請求項29】
a.植物器官を小部分に切断する工程、
b.切断した器官をメタノール及び水で抽出する工程、
c.メタノール及び水抽出物を酢酸エチルと水の間で分配する工程、
d.水層を更にn−ブタノールで抽出し、ブタノール分画を得る工程、及び、
e.n−ブタノール分画をクロマトグラフィーにかけ、水及びメタノールを溶出液とし、ルピノシドPA(LPA)を得る工程
から成る、II型糖尿病の予防及び/又は治療に有用な抽出物質及びその後、選択的にその活性なn−ブタノール分画及び活性分子ルピノシドPA(LPA)を得る簡便で安価な方法。
【請求項30】
その植物器官が根である請求項29に記載された方法。
【請求項31】
その溶媒がメタノール及び水から成る群から選択されるものである請求項29に記載された方法。
【請求項32】
水とメタノールの比が約1:1である請求項29に記載された方法。
【請求項33】
クロマトグラフィーがカラムクロマトグラフィーである請求項29に記載された方法。

【公表番号】特表2007−531709(P2007−531709A)
【公表日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−548420(P2006−548420)
【出願日】平成16年12月27日(2004.12.27)
【国際出願番号】PCT/IB2004/004273
【国際公開番号】WO2005/074958
【国際公開日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(595059872)カウンシル オブ サイエンティフィク アンド インダストリアル リサーチ (81)
【Fターム(参考)】