インジェクタ噴射孔加工方法及びその装置
【課題】レーザ光のインジェクタ体への照射により発生した気化ガスを効率良く排出することができるインジェクタ噴射孔加工技術を提供することを課題とする。
【解決手段】排出量と供給量とを制御することでチャンバー50内を所定圧に保ち、インジェクタ体15の流路16を所定圧より低圧に保ち、この状態でレーザ光72の照射を実施するインジェクタ噴射孔加工方法において、噴射孔18が貫通形成されるタイミングで、ガス排出管48を閉じて、チャンバー50からのガスの排出を停止する。
【効果】噴射孔が貫通形成されるタイミングでガス排出管を閉じるので、噴射孔が貫通した瞬間から気化ガスが低圧手段側に流れ、レーザ光のインジェクタ体への照射により発生した気化ガスを効率良く排出することができる。
【解決手段】排出量と供給量とを制御することでチャンバー50内を所定圧に保ち、インジェクタ体15の流路16を所定圧より低圧に保ち、この状態でレーザ光72の照射を実施するインジェクタ噴射孔加工方法において、噴射孔18が貫通形成されるタイミングで、ガス排出管48を閉じて、チャンバー50からのガスの排出を停止する。
【効果】噴射孔が貫通形成されるタイミングでガス排出管を閉じるので、噴射孔が貫通した瞬間から気化ガスが低圧手段側に流れ、レーザ光のインジェクタ体への照射により発生した気化ガスを効率良く排出することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光を照射することにより、インジェクタ体の壁部に噴射孔を貫通形成するインジェクタ噴射孔加工技術に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料噴射ノズルを製造する際、インジェクタ体の壁部に噴射孔を形成するため、レーザ光を照射して穴開けを行う。このとき、レーザ光によりインジェクタ体が溶けて気化ガスが生じる。この気化ガスがインジェクタ体に付着すると好ましくない。このため、気化ガスを取り除く技術が各種提案されている(例えば、特許文献1(図8)参照。)。
【0003】
図13は従来技術に係るインジェクタ噴射孔加工技術の基本原理を説明する図であり、(a)に示されるように、ワーク200の中空部201に充填体202が振動機構203に支持された態様で挿入されている。中空部201は低圧手段204により吸引されている。
また、ワーク200はチャンバー205で囲われ、このチャンバー205にガスを供給するガス供給手段206が接続され、さらにチャンバー205にガスを排出するガス排出手段207が設けられている。
【0004】
レーザ光208をワーク200に照射すると、ワーク200の壁部209が溶けて気化ガスやちり211が発生する。ガス供給手段206でチャンバー205内にガスを供給すると共にガス排出手段207でガスを排出することで、チャンバー205内の気圧が中空部201よりも高く且つ大気圧以下にする。結果、気化ガスやちり211はガス排出手段207から排出される。
【0005】
(b)に示すように、貫通穴212が形成された後は、弁213を閉じてガス排出手段207を停止させる。貫通穴212が完全に貫通形成された時点からある程度の時間が経過してから、弁213が閉じられる。
貫通形成前に弁213が閉じられると、チャンバー211内に気化ガスやちり211が溜まり壁部209に付着するという不具合があるからである。
【0006】
しかし、貫通穴212が空いてその後しばらくしてから弁213を閉じていたのでは、弁213を閉じるまでの間に(c)に示すように、気化ガスやちり211はガス排出手段207及び低圧手段204の両方に吸引され、気化ガスやちり211の排出が効率良くならない。すなわち、気化ガスやちり211(以下「気化ガス」と言う。)を効率良く排出する技術が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−201449公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、レーザ光のインジェクタ体への照射により発生した気化ガスを効率良く排出することができるインジェクタ噴射孔加工技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、中空状を呈することで内部に流路を有するインジェクタ体に、レーザ光を照射して貫通する孔を形成することで噴射孔を形成するに際し、少なくとも前記インジェクタ体の前記噴射孔が形成される部位をチャンバーで囲い、このチャンバーにガス供給管でガスを供給し前記チャンバーからガス排出管で前記ガスを排出し、前記排出量と前記供給量とを制御することで前記チャンバー内を所定圧に保ち、前記インジェクタ体の流路を前記所定圧より低圧に保ち、この状態で前記レーザ光の照射を実施するインジェクタ噴射孔加工方法において、前記インジェクタ体に孔が貫通するタイミングで、前記ガス排出管を閉じて、前記チャンバーからのガスの排出を停止することを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る発明では、低圧が10kPa〜大気圧(略1atm)であるときに、チャンバー内の所定圧は、孔が貫通するまでは、圧力範囲を10kPa〜1000kPaとすることを特徴とする。
【0011】
請求項3に係る発明では、チャンバー内の所定圧は、孔が貫通した後は、圧力範囲を大気圧(略1atm)〜1100kPaとすることを特徴とする。
【0012】
請求項4に係る発明は、ガス排出管を閉じて、チャンバーからのガスの吸引を停止するタイミング制御は、タイマーで計数されていることを特徴とする。
【0013】
請求項5に係る発明は、中空状を呈することで内部に流路を有するインジェクタ体に、レーザ光を照射して貫通する孔を形成することで噴射孔を形成するに際し、少なくともインジェクタ体の噴射孔が形成される部位をチャンバーで囲い、このチャンバーにガス供給管でガスを供給しチャンバーからガス排出管でガスを排出し、排出量と供給量とを制御することでチャンバー内を所定圧に保ち、インジェクタ体の流路を所定圧より低圧に保ち、この状態でレーザ光の照射を実施するインジェクタ噴射孔加工装置において、チャンバー内にガスを供給するガス供給手段と、チャンバー内のガスを排出するガス排出手段と、レーザ光の照射により、噴射孔が形成されるまではチャンバー内の圧力範囲を10kPa〜1000kPaとし、噴射孔が形成された後はチャンバー内にガスを供給すると共にチャンバー内のガスの排出を停止することでチャンバー内の圧力範囲を大気圧(略1atm)〜1100kPaとし、1つ以上の噴射孔の径毎に所定の圧力範囲で噴射孔の径に対応した所望の圧力が規定されたタイムスケジュールを電子記憶媒体に記憶し、噴射孔をレーザ光で加工する際には噴射孔の径にあったタイムスケジュールになるようにガス供給手段及びガス排出手段を制御する制御部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明では、噴射孔が貫通形成されるタイミングで、ガス排出管を閉じて、チャンバーからのガスの排出を停止する。噴射孔が貫通形成されるタイミングでガス排出管を閉じるので、噴射孔が貫通した瞬間から気化ガスが低圧手段側に流れ、レーザ光のインジェクタ体への照射により発生した気化ガスを効率良く排出することができる。
【0015】
請求項2に係る発明では、チャンバー内の所定圧は、孔が貫通するまでは、圧力範囲を10kPa〜1000kPaとする。孔が貫通するまでは、チャンバー内の圧力を1000kPaを超えると、周囲のガスが気化ガスを抑えてしまい気化ガスの排出が効率よく実施されない。チャンバー内の圧力が10kPa未満でも気化ガスの排出が効率良く実施されない。この点、本発明では、チャンバー内の圧力範囲を10kPa〜1000kPaとしたので、効率良く気化ガスを排出することができる。
【0016】
請求項3に係る発明では、チャンバー内の所定圧は、孔が貫通した後は、圧力範囲を大気圧(略1atm)〜1100kPaとする。孔(噴射孔)が貫通したタイミング以降では、チャンバー内の圧力を大気圧(略1atm)未満とすると、気化ガスを押し出す力が弱まり効率よく気化ガスの排出ができない。他方、噴射孔が貫通したタイミング以降では、チャンバー内の圧力を1100kPaを超えると、周囲のガスが気化ガスを抑えてしまい気化ガスの排出が効率よく実施されない。この点、本発明では、噴射孔が形成されたタイミング以降のチャンバー内の圧力範囲を大気圧(略1atm)〜1100kPaとしたので、効率良く気化ガスを排出することができる。
【0017】
請求項4に係る発明では、ガス排出管を閉じて、チャンバーからのガスの吸引を停止するタイミング制御は、タイマーで計数されている。噴射孔を開けるインジェクタ体の材質、形状を一定であるので、レーザ光を照射する条件を一定にすれば噴射孔が貫通するタイミングも一定になる。タイミング制御をタイマーで計数するので、噴射孔が貫通するタイミングでガスの吸引を停止することができる。
【0018】
請求項5に係る発明では、1つ以上の噴射孔の径毎に所定の圧力範囲で噴射孔の径に対応した所望の圧力が規定されたタイムスケジュールを電子記憶媒体に記憶する。噴射孔の径にあったタイムスケジュールになるようにガス供給手段及びガス排出手段を制御するので、複数種類の径の噴射孔を高品質で開けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】インジェクタの説明図である。
【図2】インジェクタ先端部の説明図である。
【図3】本発明に係るインジェクタ噴射孔加工装置の全体図である。
【図4】本発明に係るインジェクタ噴射孔加工装置の要部断面図である。
【図5】インジェクタ体のセットについて説明する図である。
【図6】インジェクタ体支持部の作業位置までの移動について説明する図である。
【図7】作業部の移動について説明する図である。
【図8】図7の8−8線断面図である。
【図9】本発明に係るインジェクタ噴射孔加工装置の作用図である。
【図10】本発明に係るインジェクタ噴射孔加工方法のフロー図である。
【図11】噴射孔が形成されるまでのチャンバー内圧力気化ガスの付着の関係を説明する図である。
【図12】噴射孔が形成された後のチャンバー内圧力気化ガスの付着の関係を説明する図である。
【図13】従来技術の基本原理を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
【実施例1】
【0021】
本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1に示されるように、インジェクタ10は、ノズルホルダ11と、このノズルホルダ11の先端部に保持され燃料を噴射するノズル12と、ノズルホルダ11の中程に設けられ燃料を吸入する吸入口13とからなる。
【0022】
次にノズル12の要部について説明する。
図2に示されるように、ノズル12の先端部14は、ホール型を呈し、ワークとしてのインジェクタ体15と、このインジェクタ体15の中空状の流路16に挿入され燃料流路を開閉するノズルニードル17とからなる。
インジェクタ体15には、突出する先端部14に燃料を噴射する複数の噴口としての噴射孔18が開けられている。これらの噴射孔18が、本発明のインジェクタ噴射孔加工装置によって開けられる。
【0023】
次にインジェクタ噴射孔加工装置について説明する。
図3に示されるように、インジェクタ噴射孔加工装置20は、インジェクタ体(図2、符号15)をクランプするためのインジェクタ体クランプ機構21と、このインジェクタ体クランプ機構21によりクランプされるインジェクタ体15を支持するインジェクタ体支持部材22と、このインジェクタ体支持部材22を回転可能に支持しインジェクタ体15を回動するためのインジェクタ体回転機構23と、インジェクタ体支持部材22にかぶせられる蓋部24を昇降させるための昇降機構25と、この昇降機構25及び蓋部24を一体的に回転させるための蓋部回転機構26と、蓋部24の位置決めを行うための位置決めブロック27と、この位置決めブロック27及び蓋部回転機構26を支持する作業台30とからなる。
【0024】
インジェクタ体クランプ機構21は、クランプシリンダ31の先端に板体32が接続され、クランプシリンダ31を作動させることにより、この板体32を矢印(1)に示すように昇降させる。これにより、インジェクタ体15のクランプ及びクランプ解除を操作する。
【0025】
詳細は後述するが、図に示されるような状態では、インジェクタ体支持部材22内に配置されるインジェクタ体15がクランプされる。ここからクランプシリンダ31を作動させ板体32を上昇させることにより、クランプ状態が解除される。
【0026】
インジェクタ体回転機構23は、回転機構支持部33と、この回転機構支持部33に回転可能に支持されインジェクタ体支持部材22を支持するL字形のインジェクタ体回転テーブル34とからなる。
インジェクタ体回転テーブル34は、矢印(2)で示すように回転軸線28を中心に回動される。この回転軸線28は、インジェクタ体支持部材22内に支持されるインジェクタ体15を貫通する。即ち、インジェクタ体15は、インジェクタ体回転テーブル34の回転軸線28上に配置されている。
【0027】
昇降機構25は、蓋部昇降シリンダ35が矢印(3)に示すように上方下方に作動することにより、蓋部24と、この蓋部24を支持する蓋部支持体36と、この蓋部支持体36の底面に配置される位置決めピン37が一体的に昇降される。
【0028】
図に示す状態から蓋部昇降シリンダ35を作動させ、蓋部24、蓋部支持体36、位置決めピン37を降下させる。蓋部24はインジェクタ体支持部材22に被せられ、位置決めピン37は位置決めブロック27に挿入される。
【0029】
蓋部回転機構26は、蓋部24を水平方向に旋回させるための蓋部回転モータ38と、この蓋部回転モータ38の上面に配置され蓋部昇降シリンダ35を支持するための支持柱39とからなる。
蓋部回転モータ38を作動させることにより、矢印(4)に示すように支持柱39が回転軸41を中心に回転する。これにより支持柱39に支持される蓋部昇降シリンダ35、蓋部支持体36、蓋部24、位置決めピン37が一体的に回動される。
【0030】
例えば、インジェクタ体回転テーブル34を作動させる(矢印(2))際には、蓋部24にクランプシリンダ31が接触しないようにする必要がある。このような場合に、蓋部24等を想像線で示す待機位置42に移動させておく。
【0031】
次にインジェクタ噴射孔加工装置20の要部について説明する。
図4に示すように、蓋部24は、上面の支持枠43に支持されレーザ光を通す透過板44と、この透過板44を通過したレーザ光が通過する通路45とを備える。この通路45を通過したレーザ光により照射されるインジェクタ体15を、収容するチャンバー50の空間を形成する隔壁51に、当該通路45が開口している。更に、蓋部24は、この通路45に繋げられガス供給手段46から供給される圧縮ガスが通されるガス供給管47と、ノズル状に形成され、レーザ光が照射される部位にそのノズル状先端が向けられて、そのノズル状先端の開口が隔壁51から突出して配置されるガス排出管48と、このガス排出管48からレーザ光の照射により発生する気化ガスを吸い込むガス排出手段49と、インジェクタ体支持部材22に蓋部24を被せた際にインジェクタ体支持部材22に接触するシール材52とを備える。
【0032】
なお、レーザ光が照射される部位にそのノズル状先端が向けられているガス排出管48の例を説明したが、必ずしもレーザ光が照射される部位にそのノズル状先端が向けられていなくてもよい。
隔壁51に存在する通路45の開口とガス排出管48のノズル状先端の開口との位置関係のために、例えばチャンバー50空間に供給される圧縮ガスが、レーザ光が照射される部位の雰囲気とはなり難く、供給される圧縮ガスのほとんどが、そのままガス排出管48により排出されて、ガス排出管48が、レーザ光の照射により発生する気化ガスを吸い込む効率が下がることが問題であるから、例えばそのノズル状先端の開口が隔壁51から突出して配置されるガス排出管48として、例えば通路45の開口よりも、ガス排出管48のノズル状先端の開口をレーザ光が照射される部位の近くに配置すればよい。
【0033】
なお、レーザ光の照射により発生する気化ガスとは、プリュームと呼ばれる、レーザ加工時にインジェクタ体15の表面の金属が熱で蒸発してできた金属蒸気や、イオン化した混合気体のことである。
また、図4における矢印(1)と矢印(3)は、図1の矢印(1)、矢印(3)と同じである。
【0034】
蓋部24は、上部基体53と下部基体54とから構成され、シール材52はこれらの上部基体53と下部基体54とに挟まれるように配置される。
ガス供給手段46から供給されるガスとしては、空気の他、窒素等の不活性ガスを用いることもでき、圧縮ガスの種類は問わない。
【0035】
一方、インジェクタ体支持部材22は、シール材52に接触する外壁部55と、隔壁51に対向する位置にチャンバー50の空間を形成する内壁部56を有する凹部57と、この凹部57の底部にインジェクタ体15が載置される第1ワークポケット58と、この第1ワークポケット58に向かって先端が延ばされる超音波振動子を用いた振動機構61と、この振動機構61の先端付近に繋げられ第1ワークポケット58の下側を低圧にする低圧手段(詳細は後述)とからなる。
【0036】
板体32を降下させることにより、この板体32に接続される支持板62、支持柱63、63、クランプ板64が一体的に降下される。インジェクタ体15は、想像線で示すようにクランプ板64の下面に形成される第2ワークポケット65と、第1ワークポケット58でクランプされる。
【0037】
この後、矢印(3)で示すように蓋部24を降下させインジェクタ体支持部材22に被せる。このとき蓋部24とインジェクタ体支持部材22とで囲われた領域が、レーザ光の照射を行うチャンバー50である。即ち、ガス供給手段46は、チャンバー50に繋げられチャンバー50内に圧縮ガスを供給するということができる。また、ガス排出手段49は、ノズル状に形成されたガス排出管48がチャンバー50内に伸ばされているということができる。また、ガス供給手段46及びガス排出手段49は、制御部59に接続され、ガスの供給量とガスの排出量を調整することで、チャンバー50内の圧力が調整される。
【0038】
次図でインジェクタ体15のセットについて説明する。
図5(a)に示すように振動機構61の先端が上を向いている状態から、ワーク回転テーブル(図3、符号34)を作動させ、振動機構61の先端が下を向く、図5(b)に示す状態にインジェクタ体支持部材22を回転させる。
なお、図5は回転軸線28が図面表裏に延びる方向からインジェクタ体支持部材22を見ている。
【0039】
次に(b)に示す状態で、前述の第1ワークポケット58における振動機構61側を低圧にする低圧手段66を作動させる。そして、レーザ光で溶融しないジルコニア製ボールを充填体67として、インジェクタ体15の中空部68に充填し、第1ワークポケット58に配置する。
【0040】
このとき、低圧手段66の作用により、インジェクタ体15には上向きに引っ張られる力が掛かる。従って、クランプ板64でクランプする前にインジェクタ体15から手を離しても、インジェクタ体15が落下することはない。
【0041】
充填体67たるジルコニア製ボールは、酸化物セラミックであるジルコニアからなる。周知の通りジルコニアは、融点が極めて高く、このためレーザ光が入射しても溶融することはない。なお、充填体67においてレーザ光が入射した箇所は、崩壊を起こす。その結果微粉末が発生する。
【0042】
なお、充填体にはジルコニア製ボールの他に、粉体を用いることもできる。即ち、ジルコニア製の粉体を含む充填体67の直径は、レーザ光の照射時間や発振周波数に基づいて設定される。換言すると、レーザ光が照射される前のジルコニア製の充填体67の体積をV0、パルス毎に崩壊する体積をZ、レーザ光の発振周波数をf、レーザ光の照射時間をt、とするとき、最低限必要な充填体の半径Rは、下記の式(1)で表されるとおりである。
R={3V0−tfZ/4π}1/3・・・(1)
【0043】
更に換言すると、充填体67としては、式(1)で求められる半径Rよりも半径が大きいものが選定される。また、式(1)のパルス毎に崩壊する体積Zは、予め実験により求められる体積であるから、ジルコニア製の粉体を含む充填体以外のものでも、例えば素材がジルコニアの充填体であっても予め実験によりパルス毎に崩壊する体積Zが求めることができれば選定することができる。
【0044】
なお、レーザ光がインジェクタ体15に照射される間に、該インジェクタ体15の壁部に貫通穴を形成して、該貫通穴を通る該レーザ光が、貫通穴が形成された壁部と対向するインジェクタ体15の内周面に到達することを回避するべく、充填体67は設けられたものであり、レーザ光を照射して溶融しないもので且つ、前記インジェクタ体15に形成される貫通穴の直径、及び上述の式(1)で求められるRよりも半径が大きいものであれば、充填体の素材、形状は特に限定されない。
【0045】
貫通穴の直径は3μm〜200μmであり、少なくとも貫通穴よりも大きい粉体を用いる必要があり、ジルコニア製ボールを用いる場合、ジルコニア製ボールの直径は直径30μm〜20mmであることが望ましい。
【0046】
次に(c)の矢印(1)で示すようにクランプ板64を上昇させて、インジェクタ体15をクランプする。これでインジェクタ体15のセットが完了する。
この図に示されるとおり、低圧手段66は、中空部68に繋げられ、この中空部68の気圧を壁部71の外側よりも低くしている。
【0047】
低圧手段66により、中空部68の気圧を壁部71の外側よりも低くする。これにより、インジェクタ体15を低圧側に引っ張る力が作動する。穴あけ前には、この力によりインジェクタ体15がしっかり抑えられる。
【0048】
次図でワーク支持部の作業位置までの移動について説明する。
図6(a)に示されるように、インジェクタ体15をクランプした後は、ワーク回転テーブル(図3、符号34)を作動させ、(b)に示すように再び振動機構61の先端が上向きになるような位置まで、インジェクタ体支持部材22を移動させる。
【0049】
次図で、インジェクタ体支持部材22に蓋部24を被せる際の作用について説明する。
図7に示されるように、待機位置(図3、符号42)からインジェクタ体支持部材22の上に蓋部24を移動させ、その後、矢印(3)で示すように蓋部24を降下させる。この動作により、蓋部24の隔壁51及びシール材52、並びにインジェクタ体支持部材22の内壁部56及びクランプ板64の上面によりチャンバー50が形成される。このようにしてチャンバー50を形成した上で、インジェクタ体15にレーザ光を照射する。
【0050】
図8に示すようにレーザ光72を照射する際は、ガス供給手段46で圧縮ガスを供給しつつ、レーザ光72を照射することにより発生する気化ガスをガス排出手段49で排出する。ガス供給手段46で圧縮ガスを供給することによりチャンバー50内の気圧は高くなる。このため、ガス排出手段49を作動させることにより、チャンバー50内を大気圧と同じ気圧に保つことができる。
振動機構61、低圧手段66、ガス供給手段46及びガス排出手段49は、それぞれが接続される制御部59によって制御され、作動される。
【0051】
レーザ光は、ナノ秒レーザ光やピコ秒レーザ光を用いることができる。また、レーザ加工ヘッドにナノ秒レーザ光の照射機及びピコ秒レーザ光の照射機の両方を支持させることもできる。この場合には、ナノ秒レーザ光により大まかな穴あけを行った後、ピコ秒レーザ光で仕上げを行うことにより、精度の高い穴あけ作業を短時間で行うことができる。
【0052】
以上の述べたインジェクタ噴射孔加工装置20の作用を次に述べる。
図9(a)に示すように、ガス排出手段49を作動させながらインジェクタ体15にレーザ光72を照射し、被照射部73で発生する気化ガス74を素早く回収する。
噴射孔((c)、符号18)が貫通形成されるまでの間、制御部59は、チャンバー50内の気圧が、流路16の気圧よりも高く且つ大気圧以下にするように制御している。
【0053】
即ち、ガス供給手段46の単位時間当たりのガスの供給量よりも多くガス排出手段49で吸引している場合がある。加えて、このガス排出手段49の単位時間当たりの吸引量よりも多く、低圧手段66で吸引している。
気圧の差を生じさせることによりチャンバー50内に気流が発生する。この気流により効率よく気化ガスが外部へ排出される。
ガス排出手段49を作動させながらインジェクタ体15にレーザ光72を照射することにより、気化ガス74の再付着を防ぐことができ、早く穴を貫通させることができる。
【0054】
制御部59により、チャンバー50を、大気圧若しくは大気圧よりも若干低圧に保った状態にすることができる。前記いずれかの状態で図示しないレーザ加工ヘッドからレーザ光72を発射し、中空状のインジェクタ体15の外側面に照射する。加工により気化ガス(プリューム)74が発生する。制御部59には、内部タイマーとしてタイマー機能がある。
また、噴射孔18が形成されるまでは、流路16の圧力(低圧)が10kPa〜大気圧(略1atm)であり、チャンバー50内の圧力範囲を10kPa〜1000kPaとする。
【0055】
なお、噴射孔18が形成されるまでは、チャンバー50に気体の逃げ場がない場合は、加圧しすぎると加工が透過板44または密閉部材に負荷をかける。また、加圧しすぎると空気が気化ガス74を押さえてしまい、加工されるべき箇所から気化ガス74が除去されずに、その気化ガス74がレーザ光72を遮ってしまうおそれがある。更に換言すると、加圧しすぎない方が加工が進むからである。
【0056】
(b)に示すように噴射項18が貫通形成されるタイミングで、ガス排出管48を閉じて、チャンバー50からのガスの排出を停止する。噴射孔18が形成されると、レーザ光72は充填体67に衝突する。この衝突により、充填体67はレーザ光72のエネルギを吸収する。充填体67がエネルギを吸収することにより、レーザ光72が内周面75に照射されることを防ぐことができる。
【0057】
また、レーザ光72を照射された充填体67は、振動機構61により振動を与えられている。例えば、このときの振動周波数は30kHZ〜100kHzであり、振幅は5μm〜30μmである。この振動により充填体67が動かされ、レーザ光72の照射される場所を少しずつ変えることができる。
【0058】
具体的には、このような振動条件の下では充填体67は、鉛直方向に沿って約0.1mm上方移動ないし下方移動しながら、回転動作をすることができる。即ち、レーザ光72の照射される場所が充填体67の1箇所に集中しないようにすることにより、レーザ光72によるダメージの分散を図ることができ、充填体67の長寿命化を図ることができる。
【0059】
レーザ光72での加工が進むと、図9(b)のとおり最終的には噴射孔18となる貫通孔が形成され、その後は、弁76を閉じ、ガス排出手段49を停止させる。孔18が貫通した後は、低圧手段66により気化ガス74が回収される。貫通孔18形成後には、ガス供給手段46と低圧手段66との作用下に低圧手段66によりレーザ光72の照射により発生した気化ガス74が回収され、噴射孔18付近に気化ガス74が留まらない。
また、貫通孔18が形成されるタイミングで、チャンバー50内の所定圧は、圧力範囲を大気圧(略1atm)〜1100kPaとし、結果流路16の圧力は自然と大気圧以上となる。
この低圧手段66での単位時間当たりの吸引能力よりも高く、ガス供給手段46で供給している。
ガス排出管48を閉じて、チャンバー50からのガスの吸引を停止するタイミング制御は、制御部59のタイマーで計数されている。
【0060】
なお、(a)の状態では、内周面75で形成されるインジェクタ体15の中空部の気圧を、インジェクタ体15の壁部71の外側よりも低くされて制御されている。そして、(c)に示すように噴射孔18が形成されると、圧力差で空気がインジェクタ体15の中空部内を矢印の用に流れ、この流れに伴い気化ガス74は低圧手段66に押し流される。
【0061】
また、弁76を切替えると、チャンバー50は(a)の状態よりも気圧が高圧になり、チャンバー50の気圧とインジェクタ体15の流路16の気圧との圧力差が更に大きくなり、図(c)の矢印のように示されるインジェクタ体15の流路16内の空気の流れがよりいっそう円滑になる。
気化ガス74の噴射孔18付近への再付着を防ぐことができ、作業の効率化を図ることができる。
【0062】
噴射孔18が形成された後は、ガス排出手段49の排出機能を停止させる。これにより、気流がガス供給手段46から低圧手段66に向かう気流のみになる。気化ガス74を排出するための気流を一つに絞ることにより、効率よく気化ガス74を外部へ排出することができる。
【0063】
充填体67の大きさは30μm〜20mmであって、振動機構61が発振する振動周波数は30kHz〜100kHzであり、発振の際の振幅は5μm〜30μmである。充填体67の大きさは30μm〜20mmである。この大きさであれば、インジェクタ体15に燃料噴射ノズルを用いた場合に流路16内に充填体を振動させるための程良いスペースが空く。また、前述の振動条件で振動させることにより充填体67をよく振動させることができるため、充填体67の長寿命化を図ることができる。
【0064】
次にインジェクタ噴射孔加工方法をフロー図に基づいて説明する。
図10に示されるように、ステップ番号(以下STと略記する。)01で、インジェクタ体15をインジェクタ噴射孔加工装置20にセットする。ST02でチャンバー50にガス供給管47からガスを供給し、ST03でチャンバー50からガス排出管48でガスを排出し、チャンバー50内の圧力範囲を10kPa〜1000kPaとする。ST04で低圧手段66により、インジェクタ体15の流路16の圧力(低圧)を10kPa〜大気圧(略1atm)とする。
なお、インジェクタ噴射孔加工装置20の起動ボタンを押した後、ST02が開始する。そして前述の所定の圧力になったところで、制御部59は、内部タイマーを0として計数開始し、遅滞なくST05で図示しないレーザ加工ヘッドに作動信号を発信する。
【0065】
ST05で遅滞なくレーザ加工ヘッドは、レーザ孔をインジェクタ体15に照射する。ST06で噴射孔18が貫通形成されたか否かを判断する。この判断は、インジェクタ体15の噴射孔18の径に対応した所望圧力が規定されたタイムスケジュールを制御部59の電子記憶媒体に記憶し、各々の径にあったタイムスケジュールにより行う。YESであればST07に進み、NOであればST05に戻る。
【0066】
噴射孔18が貫通形成されたタイミングで、ST07に進みガス排出管48を閉じる。このとき、チャンバー50内の圧力範囲を大気圧(略1atm)〜1100kPaとする。
ST08でレーザ光を停止し、ST09でガス供給管47及び流路16の吸引を停止する。さらに、ST10でインジェクタ体15を取り出す。
【0067】
次に噴射孔が形成されるまでのチャンバー内圧力と気化ガスの付着の関係について説明する。
図11に示されるように、噴射孔(図2、符号18)が形成されるまでにおいて、チャンバー(図8、符号50)内の圧力が1000KPaを超えると、噴射孔18の状態が不合格となる。また、チャンバー50内を完全な真空状態にすることは難しい。すなわち、噴射孔18が形成されるまでは、流路16の圧力(低圧)を10kPa〜大気圧(略1atm)とし、チャンバー50内の圧力範囲を10kPa〜1000kPaにすると、噴射孔18の状態を合格にすることができる。
【0068】
次に噴射孔が形成された後のチャンバー内圧力と気化ガスの付着の関係について説明する。
図12に示されるように、噴射孔(図2、符号18)が形成された後において、チャンバー(図8、符号50)内の圧力を大気圧(略101KPa)より小さくすると、噴射孔18の状態が不合格となる。また、チャンバー50内の圧力が1100KPaを超えても噴射孔18の状態が不合格となる。すなわち、噴射孔18が形成された後は、チャンバー50内の圧力範囲を大気圧(略101kPa)〜1100kPaにすると、噴射孔18の状態を合格にすることができる。
【0069】
以上に述べたインジェクタ噴射孔加工装置20の作用効果をまとめて以下に記載する。
上記の図9に示されるように、中空状を呈することで内部に流路を有するインジェクタ体15に、レーザ光72を照射して貫通する孔を形成することで噴射孔18を形成するに際し、少なくともインジェクタ体15の噴射孔18が形成される部位をチャンバー50で囲い、このチャンバー50にガス供給管47でガスを供給しチャンバー50からガス排出管48でガスを排出し、この排出量と供給量とを制御することでチャンバー50内を所定圧に保ち、インジェクタ体15の流路16を所定圧より低圧に保ち、この状態でレーザ光72の照射を実施するインジェクタ噴射孔加工方法において、インジェクタ体15に孔18が貫通するタイミングで、ガス排出管48を閉じて、チャンバー50からのガスの排出を停止する。
【0070】
この工程により、噴射孔18が貫通形成されるタイミングでガス排出管48を閉じるので、噴射孔18が貫通した瞬間から気化ガスが低圧手段66側に流れ、レーザ光72のインジェクタ体15への照射により発生した気化ガス74を効率良く排出することができる。
【0071】
上記の図11に示されるように、低圧が10kPa〜大気圧(略1atm)であるときに、チャンバー内の所定圧は、孔18が貫通するまでは、圧力範囲を10kPa〜1000kPaとする。
孔18が貫通するまでは、チャンバー50内の圧力を1000kPaを超えると、周囲のガスが気化ガスを抑えてしまい気化ガスの排出が効率よく実施されない。チャンバー50内の圧力が10kPa未満でも気化ガスの排出が効率良く実施されない。この点、本発明では、チャンバー50内の圧力範囲を10kPa〜1000kPaとしたので、効率良く気化ガスを排出することができる。
【0072】
上記の図12に示されるように、チャンバー50内の所定圧は、孔18が貫通した後は、圧力範囲を大気圧(略1atm)〜1100kPaとする。
孔18(噴射孔)が貫通したタイミング以降では、チャンバー50内の圧力を大気圧(略1atm)未満とすると、気化ガスを押し出す力が弱まり効率よく気化ガスの排出ができない。他方、噴射孔18が貫通したタイミング以降では、チャンバー50内の圧力を1100kPaを超えると、周囲のガスが気化ガスを抑えてしまい気化ガスの排出が効率よく実施されない。この点、本発明では、噴射孔18が形成されたタイミング以降のチャンバー50内の圧力範囲を大気圧(略1atm)〜1100kPaとしたので、効率良く気化ガスを排出することができる。
【0073】
上記の図10に示されるように、ガス排出管を閉じて、チャンバーからのガスの吸引を停止するタイミング制御は、タイマーで計数されている。
噴射孔18を開けるインジェクタ体15の材質、形状を一定であるので、レーザ光を照射する条件を一定にすれば噴射孔18が貫通するタイミングも一定になる。タイミング制御をタイマーで計数するので、噴射孔18が貫通するタイミングでガスの吸引を停止することができる。
【0074】
上記の図4に示されるように、中空状を呈することで内部に流路を有するインジェクタ体15に、レーザ光を照射して貫通する孔を形成することで噴射孔(図2、符号18)を形成するに際し、少なくともインジェクタ体15の噴射孔18が形成される部位をチャンバー50で囲い、このチャンバー50にガス供給管47でガスを供給しチャンバー50からガス排出管48でガスを排出し、この排出量と供給量とを制御することでチャンバー50内を所定圧に保ち、インジェクタ体15の流路を所定圧より低圧に保ち、この状態でレーザ光の照射を実施するインジェクタ噴射孔加工装置20である。
【0075】
また、チャンバー50内にガスを供給するガス供給手段46と、チャンバー50内のガスを排出するガス排出手段49と、レーザ光の照射により、噴射孔18が形成されるまではチャンバー50内の圧力範囲を10kPa〜1000kPaとし、噴射孔18が形成された後はチャンバー50内にガスを供給すると共にチャンバー50内のガスの排出を停止することでチャンバー50内の圧力範囲を大気圧(略1atm)〜1100kPaとし、1つ以上の噴射孔18の径毎に所定の圧力範囲で噴射孔18の径に対応した所望の圧力が規定されたタイムスケジュールを電子記憶媒体に記憶し、噴射孔18をレーザ光で加工する際には噴射孔18の径にあったタイムスケジュールになるようにガス供給手段46及びガス排出手段49を制御する制御部59とを備える。
【0076】
この構成により、噴射孔18の径にあったタイムスケジュールになるようにガス供給手段46及びガス排出手段49を制御するので、複数種類の径の噴射孔18を高品質で開けることができる。
【0077】
尚、本発明に係るインジェクタ噴射孔加工方法は、噴射孔が貫通形成されるタイミングをタイマーで計数したが、これに限定されず、センサー等で噴射孔が貫通形成されたことを検出する態様でもよく、噴射孔が貫通形成されたタイミングでガス排気管を閉じれば、他の態様でもあっても差し支えない。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明に係るインジェクタ噴射孔加工方法は、インジェクタ体の噴射孔加工に好適である。
【符号の説明】
【0079】
10…インジェクタ、15…インジェクタ体(ワーク)、16…流路、18…噴射孔(孔、貫通孔)、20…インジェクタ噴射孔加工装置、46…ガス供給手段、47…ガス供給管、48…ガス排出管、49…ガス排出手段、50…チャンバー、59…制御部、72…レーザ光、74…気化ガス。
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光を照射することにより、インジェクタ体の壁部に噴射孔を貫通形成するインジェクタ噴射孔加工技術に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料噴射ノズルを製造する際、インジェクタ体の壁部に噴射孔を形成するため、レーザ光を照射して穴開けを行う。このとき、レーザ光によりインジェクタ体が溶けて気化ガスが生じる。この気化ガスがインジェクタ体に付着すると好ましくない。このため、気化ガスを取り除く技術が各種提案されている(例えば、特許文献1(図8)参照。)。
【0003】
図13は従来技術に係るインジェクタ噴射孔加工技術の基本原理を説明する図であり、(a)に示されるように、ワーク200の中空部201に充填体202が振動機構203に支持された態様で挿入されている。中空部201は低圧手段204により吸引されている。
また、ワーク200はチャンバー205で囲われ、このチャンバー205にガスを供給するガス供給手段206が接続され、さらにチャンバー205にガスを排出するガス排出手段207が設けられている。
【0004】
レーザ光208をワーク200に照射すると、ワーク200の壁部209が溶けて気化ガスやちり211が発生する。ガス供給手段206でチャンバー205内にガスを供給すると共にガス排出手段207でガスを排出することで、チャンバー205内の気圧が中空部201よりも高く且つ大気圧以下にする。結果、気化ガスやちり211はガス排出手段207から排出される。
【0005】
(b)に示すように、貫通穴212が形成された後は、弁213を閉じてガス排出手段207を停止させる。貫通穴212が完全に貫通形成された時点からある程度の時間が経過してから、弁213が閉じられる。
貫通形成前に弁213が閉じられると、チャンバー211内に気化ガスやちり211が溜まり壁部209に付着するという不具合があるからである。
【0006】
しかし、貫通穴212が空いてその後しばらくしてから弁213を閉じていたのでは、弁213を閉じるまでの間に(c)に示すように、気化ガスやちり211はガス排出手段207及び低圧手段204の両方に吸引され、気化ガスやちり211の排出が効率良くならない。すなわち、気化ガスやちり211(以下「気化ガス」と言う。)を効率良く排出する技術が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−201449公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、レーザ光のインジェクタ体への照射により発生した気化ガスを効率良く排出することができるインジェクタ噴射孔加工技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、中空状を呈することで内部に流路を有するインジェクタ体に、レーザ光を照射して貫通する孔を形成することで噴射孔を形成するに際し、少なくとも前記インジェクタ体の前記噴射孔が形成される部位をチャンバーで囲い、このチャンバーにガス供給管でガスを供給し前記チャンバーからガス排出管で前記ガスを排出し、前記排出量と前記供給量とを制御することで前記チャンバー内を所定圧に保ち、前記インジェクタ体の流路を前記所定圧より低圧に保ち、この状態で前記レーザ光の照射を実施するインジェクタ噴射孔加工方法において、前記インジェクタ体に孔が貫通するタイミングで、前記ガス排出管を閉じて、前記チャンバーからのガスの排出を停止することを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る発明では、低圧が10kPa〜大気圧(略1atm)であるときに、チャンバー内の所定圧は、孔が貫通するまでは、圧力範囲を10kPa〜1000kPaとすることを特徴とする。
【0011】
請求項3に係る発明では、チャンバー内の所定圧は、孔が貫通した後は、圧力範囲を大気圧(略1atm)〜1100kPaとすることを特徴とする。
【0012】
請求項4に係る発明は、ガス排出管を閉じて、チャンバーからのガスの吸引を停止するタイミング制御は、タイマーで計数されていることを特徴とする。
【0013】
請求項5に係る発明は、中空状を呈することで内部に流路を有するインジェクタ体に、レーザ光を照射して貫通する孔を形成することで噴射孔を形成するに際し、少なくともインジェクタ体の噴射孔が形成される部位をチャンバーで囲い、このチャンバーにガス供給管でガスを供給しチャンバーからガス排出管でガスを排出し、排出量と供給量とを制御することでチャンバー内を所定圧に保ち、インジェクタ体の流路を所定圧より低圧に保ち、この状態でレーザ光の照射を実施するインジェクタ噴射孔加工装置において、チャンバー内にガスを供給するガス供給手段と、チャンバー内のガスを排出するガス排出手段と、レーザ光の照射により、噴射孔が形成されるまではチャンバー内の圧力範囲を10kPa〜1000kPaとし、噴射孔が形成された後はチャンバー内にガスを供給すると共にチャンバー内のガスの排出を停止することでチャンバー内の圧力範囲を大気圧(略1atm)〜1100kPaとし、1つ以上の噴射孔の径毎に所定の圧力範囲で噴射孔の径に対応した所望の圧力が規定されたタイムスケジュールを電子記憶媒体に記憶し、噴射孔をレーザ光で加工する際には噴射孔の径にあったタイムスケジュールになるようにガス供給手段及びガス排出手段を制御する制御部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明では、噴射孔が貫通形成されるタイミングで、ガス排出管を閉じて、チャンバーからのガスの排出を停止する。噴射孔が貫通形成されるタイミングでガス排出管を閉じるので、噴射孔が貫通した瞬間から気化ガスが低圧手段側に流れ、レーザ光のインジェクタ体への照射により発生した気化ガスを効率良く排出することができる。
【0015】
請求項2に係る発明では、チャンバー内の所定圧は、孔が貫通するまでは、圧力範囲を10kPa〜1000kPaとする。孔が貫通するまでは、チャンバー内の圧力を1000kPaを超えると、周囲のガスが気化ガスを抑えてしまい気化ガスの排出が効率よく実施されない。チャンバー内の圧力が10kPa未満でも気化ガスの排出が効率良く実施されない。この点、本発明では、チャンバー内の圧力範囲を10kPa〜1000kPaとしたので、効率良く気化ガスを排出することができる。
【0016】
請求項3に係る発明では、チャンバー内の所定圧は、孔が貫通した後は、圧力範囲を大気圧(略1atm)〜1100kPaとする。孔(噴射孔)が貫通したタイミング以降では、チャンバー内の圧力を大気圧(略1atm)未満とすると、気化ガスを押し出す力が弱まり効率よく気化ガスの排出ができない。他方、噴射孔が貫通したタイミング以降では、チャンバー内の圧力を1100kPaを超えると、周囲のガスが気化ガスを抑えてしまい気化ガスの排出が効率よく実施されない。この点、本発明では、噴射孔が形成されたタイミング以降のチャンバー内の圧力範囲を大気圧(略1atm)〜1100kPaとしたので、効率良く気化ガスを排出することができる。
【0017】
請求項4に係る発明では、ガス排出管を閉じて、チャンバーからのガスの吸引を停止するタイミング制御は、タイマーで計数されている。噴射孔を開けるインジェクタ体の材質、形状を一定であるので、レーザ光を照射する条件を一定にすれば噴射孔が貫通するタイミングも一定になる。タイミング制御をタイマーで計数するので、噴射孔が貫通するタイミングでガスの吸引を停止することができる。
【0018】
請求項5に係る発明では、1つ以上の噴射孔の径毎に所定の圧力範囲で噴射孔の径に対応した所望の圧力が規定されたタイムスケジュールを電子記憶媒体に記憶する。噴射孔の径にあったタイムスケジュールになるようにガス供給手段及びガス排出手段を制御するので、複数種類の径の噴射孔を高品質で開けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】インジェクタの説明図である。
【図2】インジェクタ先端部の説明図である。
【図3】本発明に係るインジェクタ噴射孔加工装置の全体図である。
【図4】本発明に係るインジェクタ噴射孔加工装置の要部断面図である。
【図5】インジェクタ体のセットについて説明する図である。
【図6】インジェクタ体支持部の作業位置までの移動について説明する図である。
【図7】作業部の移動について説明する図である。
【図8】図7の8−8線断面図である。
【図9】本発明に係るインジェクタ噴射孔加工装置の作用図である。
【図10】本発明に係るインジェクタ噴射孔加工方法のフロー図である。
【図11】噴射孔が形成されるまでのチャンバー内圧力気化ガスの付着の関係を説明する図である。
【図12】噴射孔が形成された後のチャンバー内圧力気化ガスの付着の関係を説明する図である。
【図13】従来技術の基本原理を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
【実施例1】
【0021】
本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1に示されるように、インジェクタ10は、ノズルホルダ11と、このノズルホルダ11の先端部に保持され燃料を噴射するノズル12と、ノズルホルダ11の中程に設けられ燃料を吸入する吸入口13とからなる。
【0022】
次にノズル12の要部について説明する。
図2に示されるように、ノズル12の先端部14は、ホール型を呈し、ワークとしてのインジェクタ体15と、このインジェクタ体15の中空状の流路16に挿入され燃料流路を開閉するノズルニードル17とからなる。
インジェクタ体15には、突出する先端部14に燃料を噴射する複数の噴口としての噴射孔18が開けられている。これらの噴射孔18が、本発明のインジェクタ噴射孔加工装置によって開けられる。
【0023】
次にインジェクタ噴射孔加工装置について説明する。
図3に示されるように、インジェクタ噴射孔加工装置20は、インジェクタ体(図2、符号15)をクランプするためのインジェクタ体クランプ機構21と、このインジェクタ体クランプ機構21によりクランプされるインジェクタ体15を支持するインジェクタ体支持部材22と、このインジェクタ体支持部材22を回転可能に支持しインジェクタ体15を回動するためのインジェクタ体回転機構23と、インジェクタ体支持部材22にかぶせられる蓋部24を昇降させるための昇降機構25と、この昇降機構25及び蓋部24を一体的に回転させるための蓋部回転機構26と、蓋部24の位置決めを行うための位置決めブロック27と、この位置決めブロック27及び蓋部回転機構26を支持する作業台30とからなる。
【0024】
インジェクタ体クランプ機構21は、クランプシリンダ31の先端に板体32が接続され、クランプシリンダ31を作動させることにより、この板体32を矢印(1)に示すように昇降させる。これにより、インジェクタ体15のクランプ及びクランプ解除を操作する。
【0025】
詳細は後述するが、図に示されるような状態では、インジェクタ体支持部材22内に配置されるインジェクタ体15がクランプされる。ここからクランプシリンダ31を作動させ板体32を上昇させることにより、クランプ状態が解除される。
【0026】
インジェクタ体回転機構23は、回転機構支持部33と、この回転機構支持部33に回転可能に支持されインジェクタ体支持部材22を支持するL字形のインジェクタ体回転テーブル34とからなる。
インジェクタ体回転テーブル34は、矢印(2)で示すように回転軸線28を中心に回動される。この回転軸線28は、インジェクタ体支持部材22内に支持されるインジェクタ体15を貫通する。即ち、インジェクタ体15は、インジェクタ体回転テーブル34の回転軸線28上に配置されている。
【0027】
昇降機構25は、蓋部昇降シリンダ35が矢印(3)に示すように上方下方に作動することにより、蓋部24と、この蓋部24を支持する蓋部支持体36と、この蓋部支持体36の底面に配置される位置決めピン37が一体的に昇降される。
【0028】
図に示す状態から蓋部昇降シリンダ35を作動させ、蓋部24、蓋部支持体36、位置決めピン37を降下させる。蓋部24はインジェクタ体支持部材22に被せられ、位置決めピン37は位置決めブロック27に挿入される。
【0029】
蓋部回転機構26は、蓋部24を水平方向に旋回させるための蓋部回転モータ38と、この蓋部回転モータ38の上面に配置され蓋部昇降シリンダ35を支持するための支持柱39とからなる。
蓋部回転モータ38を作動させることにより、矢印(4)に示すように支持柱39が回転軸41を中心に回転する。これにより支持柱39に支持される蓋部昇降シリンダ35、蓋部支持体36、蓋部24、位置決めピン37が一体的に回動される。
【0030】
例えば、インジェクタ体回転テーブル34を作動させる(矢印(2))際には、蓋部24にクランプシリンダ31が接触しないようにする必要がある。このような場合に、蓋部24等を想像線で示す待機位置42に移動させておく。
【0031】
次にインジェクタ噴射孔加工装置20の要部について説明する。
図4に示すように、蓋部24は、上面の支持枠43に支持されレーザ光を通す透過板44と、この透過板44を通過したレーザ光が通過する通路45とを備える。この通路45を通過したレーザ光により照射されるインジェクタ体15を、収容するチャンバー50の空間を形成する隔壁51に、当該通路45が開口している。更に、蓋部24は、この通路45に繋げられガス供給手段46から供給される圧縮ガスが通されるガス供給管47と、ノズル状に形成され、レーザ光が照射される部位にそのノズル状先端が向けられて、そのノズル状先端の開口が隔壁51から突出して配置されるガス排出管48と、このガス排出管48からレーザ光の照射により発生する気化ガスを吸い込むガス排出手段49と、インジェクタ体支持部材22に蓋部24を被せた際にインジェクタ体支持部材22に接触するシール材52とを備える。
【0032】
なお、レーザ光が照射される部位にそのノズル状先端が向けられているガス排出管48の例を説明したが、必ずしもレーザ光が照射される部位にそのノズル状先端が向けられていなくてもよい。
隔壁51に存在する通路45の開口とガス排出管48のノズル状先端の開口との位置関係のために、例えばチャンバー50空間に供給される圧縮ガスが、レーザ光が照射される部位の雰囲気とはなり難く、供給される圧縮ガスのほとんどが、そのままガス排出管48により排出されて、ガス排出管48が、レーザ光の照射により発生する気化ガスを吸い込む効率が下がることが問題であるから、例えばそのノズル状先端の開口が隔壁51から突出して配置されるガス排出管48として、例えば通路45の開口よりも、ガス排出管48のノズル状先端の開口をレーザ光が照射される部位の近くに配置すればよい。
【0033】
なお、レーザ光の照射により発生する気化ガスとは、プリュームと呼ばれる、レーザ加工時にインジェクタ体15の表面の金属が熱で蒸発してできた金属蒸気や、イオン化した混合気体のことである。
また、図4における矢印(1)と矢印(3)は、図1の矢印(1)、矢印(3)と同じである。
【0034】
蓋部24は、上部基体53と下部基体54とから構成され、シール材52はこれらの上部基体53と下部基体54とに挟まれるように配置される。
ガス供給手段46から供給されるガスとしては、空気の他、窒素等の不活性ガスを用いることもでき、圧縮ガスの種類は問わない。
【0035】
一方、インジェクタ体支持部材22は、シール材52に接触する外壁部55と、隔壁51に対向する位置にチャンバー50の空間を形成する内壁部56を有する凹部57と、この凹部57の底部にインジェクタ体15が載置される第1ワークポケット58と、この第1ワークポケット58に向かって先端が延ばされる超音波振動子を用いた振動機構61と、この振動機構61の先端付近に繋げられ第1ワークポケット58の下側を低圧にする低圧手段(詳細は後述)とからなる。
【0036】
板体32を降下させることにより、この板体32に接続される支持板62、支持柱63、63、クランプ板64が一体的に降下される。インジェクタ体15は、想像線で示すようにクランプ板64の下面に形成される第2ワークポケット65と、第1ワークポケット58でクランプされる。
【0037】
この後、矢印(3)で示すように蓋部24を降下させインジェクタ体支持部材22に被せる。このとき蓋部24とインジェクタ体支持部材22とで囲われた領域が、レーザ光の照射を行うチャンバー50である。即ち、ガス供給手段46は、チャンバー50に繋げられチャンバー50内に圧縮ガスを供給するということができる。また、ガス排出手段49は、ノズル状に形成されたガス排出管48がチャンバー50内に伸ばされているということができる。また、ガス供給手段46及びガス排出手段49は、制御部59に接続され、ガスの供給量とガスの排出量を調整することで、チャンバー50内の圧力が調整される。
【0038】
次図でインジェクタ体15のセットについて説明する。
図5(a)に示すように振動機構61の先端が上を向いている状態から、ワーク回転テーブル(図3、符号34)を作動させ、振動機構61の先端が下を向く、図5(b)に示す状態にインジェクタ体支持部材22を回転させる。
なお、図5は回転軸線28が図面表裏に延びる方向からインジェクタ体支持部材22を見ている。
【0039】
次に(b)に示す状態で、前述の第1ワークポケット58における振動機構61側を低圧にする低圧手段66を作動させる。そして、レーザ光で溶融しないジルコニア製ボールを充填体67として、インジェクタ体15の中空部68に充填し、第1ワークポケット58に配置する。
【0040】
このとき、低圧手段66の作用により、インジェクタ体15には上向きに引っ張られる力が掛かる。従って、クランプ板64でクランプする前にインジェクタ体15から手を離しても、インジェクタ体15が落下することはない。
【0041】
充填体67たるジルコニア製ボールは、酸化物セラミックであるジルコニアからなる。周知の通りジルコニアは、融点が極めて高く、このためレーザ光が入射しても溶融することはない。なお、充填体67においてレーザ光が入射した箇所は、崩壊を起こす。その結果微粉末が発生する。
【0042】
なお、充填体にはジルコニア製ボールの他に、粉体を用いることもできる。即ち、ジルコニア製の粉体を含む充填体67の直径は、レーザ光の照射時間や発振周波数に基づいて設定される。換言すると、レーザ光が照射される前のジルコニア製の充填体67の体積をV0、パルス毎に崩壊する体積をZ、レーザ光の発振周波数をf、レーザ光の照射時間をt、とするとき、最低限必要な充填体の半径Rは、下記の式(1)で表されるとおりである。
R={3V0−tfZ/4π}1/3・・・(1)
【0043】
更に換言すると、充填体67としては、式(1)で求められる半径Rよりも半径が大きいものが選定される。また、式(1)のパルス毎に崩壊する体積Zは、予め実験により求められる体積であるから、ジルコニア製の粉体を含む充填体以外のものでも、例えば素材がジルコニアの充填体であっても予め実験によりパルス毎に崩壊する体積Zが求めることができれば選定することができる。
【0044】
なお、レーザ光がインジェクタ体15に照射される間に、該インジェクタ体15の壁部に貫通穴を形成して、該貫通穴を通る該レーザ光が、貫通穴が形成された壁部と対向するインジェクタ体15の内周面に到達することを回避するべく、充填体67は設けられたものであり、レーザ光を照射して溶融しないもので且つ、前記インジェクタ体15に形成される貫通穴の直径、及び上述の式(1)で求められるRよりも半径が大きいものであれば、充填体の素材、形状は特に限定されない。
【0045】
貫通穴の直径は3μm〜200μmであり、少なくとも貫通穴よりも大きい粉体を用いる必要があり、ジルコニア製ボールを用いる場合、ジルコニア製ボールの直径は直径30μm〜20mmであることが望ましい。
【0046】
次に(c)の矢印(1)で示すようにクランプ板64を上昇させて、インジェクタ体15をクランプする。これでインジェクタ体15のセットが完了する。
この図に示されるとおり、低圧手段66は、中空部68に繋げられ、この中空部68の気圧を壁部71の外側よりも低くしている。
【0047】
低圧手段66により、中空部68の気圧を壁部71の外側よりも低くする。これにより、インジェクタ体15を低圧側に引っ張る力が作動する。穴あけ前には、この力によりインジェクタ体15がしっかり抑えられる。
【0048】
次図でワーク支持部の作業位置までの移動について説明する。
図6(a)に示されるように、インジェクタ体15をクランプした後は、ワーク回転テーブル(図3、符号34)を作動させ、(b)に示すように再び振動機構61の先端が上向きになるような位置まで、インジェクタ体支持部材22を移動させる。
【0049】
次図で、インジェクタ体支持部材22に蓋部24を被せる際の作用について説明する。
図7に示されるように、待機位置(図3、符号42)からインジェクタ体支持部材22の上に蓋部24を移動させ、その後、矢印(3)で示すように蓋部24を降下させる。この動作により、蓋部24の隔壁51及びシール材52、並びにインジェクタ体支持部材22の内壁部56及びクランプ板64の上面によりチャンバー50が形成される。このようにしてチャンバー50を形成した上で、インジェクタ体15にレーザ光を照射する。
【0050】
図8に示すようにレーザ光72を照射する際は、ガス供給手段46で圧縮ガスを供給しつつ、レーザ光72を照射することにより発生する気化ガスをガス排出手段49で排出する。ガス供給手段46で圧縮ガスを供給することによりチャンバー50内の気圧は高くなる。このため、ガス排出手段49を作動させることにより、チャンバー50内を大気圧と同じ気圧に保つことができる。
振動機構61、低圧手段66、ガス供給手段46及びガス排出手段49は、それぞれが接続される制御部59によって制御され、作動される。
【0051】
レーザ光は、ナノ秒レーザ光やピコ秒レーザ光を用いることができる。また、レーザ加工ヘッドにナノ秒レーザ光の照射機及びピコ秒レーザ光の照射機の両方を支持させることもできる。この場合には、ナノ秒レーザ光により大まかな穴あけを行った後、ピコ秒レーザ光で仕上げを行うことにより、精度の高い穴あけ作業を短時間で行うことができる。
【0052】
以上の述べたインジェクタ噴射孔加工装置20の作用を次に述べる。
図9(a)に示すように、ガス排出手段49を作動させながらインジェクタ体15にレーザ光72を照射し、被照射部73で発生する気化ガス74を素早く回収する。
噴射孔((c)、符号18)が貫通形成されるまでの間、制御部59は、チャンバー50内の気圧が、流路16の気圧よりも高く且つ大気圧以下にするように制御している。
【0053】
即ち、ガス供給手段46の単位時間当たりのガスの供給量よりも多くガス排出手段49で吸引している場合がある。加えて、このガス排出手段49の単位時間当たりの吸引量よりも多く、低圧手段66で吸引している。
気圧の差を生じさせることによりチャンバー50内に気流が発生する。この気流により効率よく気化ガスが外部へ排出される。
ガス排出手段49を作動させながらインジェクタ体15にレーザ光72を照射することにより、気化ガス74の再付着を防ぐことができ、早く穴を貫通させることができる。
【0054】
制御部59により、チャンバー50を、大気圧若しくは大気圧よりも若干低圧に保った状態にすることができる。前記いずれかの状態で図示しないレーザ加工ヘッドからレーザ光72を発射し、中空状のインジェクタ体15の外側面に照射する。加工により気化ガス(プリューム)74が発生する。制御部59には、内部タイマーとしてタイマー機能がある。
また、噴射孔18が形成されるまでは、流路16の圧力(低圧)が10kPa〜大気圧(略1atm)であり、チャンバー50内の圧力範囲を10kPa〜1000kPaとする。
【0055】
なお、噴射孔18が形成されるまでは、チャンバー50に気体の逃げ場がない場合は、加圧しすぎると加工が透過板44または密閉部材に負荷をかける。また、加圧しすぎると空気が気化ガス74を押さえてしまい、加工されるべき箇所から気化ガス74が除去されずに、その気化ガス74がレーザ光72を遮ってしまうおそれがある。更に換言すると、加圧しすぎない方が加工が進むからである。
【0056】
(b)に示すように噴射項18が貫通形成されるタイミングで、ガス排出管48を閉じて、チャンバー50からのガスの排出を停止する。噴射孔18が形成されると、レーザ光72は充填体67に衝突する。この衝突により、充填体67はレーザ光72のエネルギを吸収する。充填体67がエネルギを吸収することにより、レーザ光72が内周面75に照射されることを防ぐことができる。
【0057】
また、レーザ光72を照射された充填体67は、振動機構61により振動を与えられている。例えば、このときの振動周波数は30kHZ〜100kHzであり、振幅は5μm〜30μmである。この振動により充填体67が動かされ、レーザ光72の照射される場所を少しずつ変えることができる。
【0058】
具体的には、このような振動条件の下では充填体67は、鉛直方向に沿って約0.1mm上方移動ないし下方移動しながら、回転動作をすることができる。即ち、レーザ光72の照射される場所が充填体67の1箇所に集中しないようにすることにより、レーザ光72によるダメージの分散を図ることができ、充填体67の長寿命化を図ることができる。
【0059】
レーザ光72での加工が進むと、図9(b)のとおり最終的には噴射孔18となる貫通孔が形成され、その後は、弁76を閉じ、ガス排出手段49を停止させる。孔18が貫通した後は、低圧手段66により気化ガス74が回収される。貫通孔18形成後には、ガス供給手段46と低圧手段66との作用下に低圧手段66によりレーザ光72の照射により発生した気化ガス74が回収され、噴射孔18付近に気化ガス74が留まらない。
また、貫通孔18が形成されるタイミングで、チャンバー50内の所定圧は、圧力範囲を大気圧(略1atm)〜1100kPaとし、結果流路16の圧力は自然と大気圧以上となる。
この低圧手段66での単位時間当たりの吸引能力よりも高く、ガス供給手段46で供給している。
ガス排出管48を閉じて、チャンバー50からのガスの吸引を停止するタイミング制御は、制御部59のタイマーで計数されている。
【0060】
なお、(a)の状態では、内周面75で形成されるインジェクタ体15の中空部の気圧を、インジェクタ体15の壁部71の外側よりも低くされて制御されている。そして、(c)に示すように噴射孔18が形成されると、圧力差で空気がインジェクタ体15の中空部内を矢印の用に流れ、この流れに伴い気化ガス74は低圧手段66に押し流される。
【0061】
また、弁76を切替えると、チャンバー50は(a)の状態よりも気圧が高圧になり、チャンバー50の気圧とインジェクタ体15の流路16の気圧との圧力差が更に大きくなり、図(c)の矢印のように示されるインジェクタ体15の流路16内の空気の流れがよりいっそう円滑になる。
気化ガス74の噴射孔18付近への再付着を防ぐことができ、作業の効率化を図ることができる。
【0062】
噴射孔18が形成された後は、ガス排出手段49の排出機能を停止させる。これにより、気流がガス供給手段46から低圧手段66に向かう気流のみになる。気化ガス74を排出するための気流を一つに絞ることにより、効率よく気化ガス74を外部へ排出することができる。
【0063】
充填体67の大きさは30μm〜20mmであって、振動機構61が発振する振動周波数は30kHz〜100kHzであり、発振の際の振幅は5μm〜30μmである。充填体67の大きさは30μm〜20mmである。この大きさであれば、インジェクタ体15に燃料噴射ノズルを用いた場合に流路16内に充填体を振動させるための程良いスペースが空く。また、前述の振動条件で振動させることにより充填体67をよく振動させることができるため、充填体67の長寿命化を図ることができる。
【0064】
次にインジェクタ噴射孔加工方法をフロー図に基づいて説明する。
図10に示されるように、ステップ番号(以下STと略記する。)01で、インジェクタ体15をインジェクタ噴射孔加工装置20にセットする。ST02でチャンバー50にガス供給管47からガスを供給し、ST03でチャンバー50からガス排出管48でガスを排出し、チャンバー50内の圧力範囲を10kPa〜1000kPaとする。ST04で低圧手段66により、インジェクタ体15の流路16の圧力(低圧)を10kPa〜大気圧(略1atm)とする。
なお、インジェクタ噴射孔加工装置20の起動ボタンを押した後、ST02が開始する。そして前述の所定の圧力になったところで、制御部59は、内部タイマーを0として計数開始し、遅滞なくST05で図示しないレーザ加工ヘッドに作動信号を発信する。
【0065】
ST05で遅滞なくレーザ加工ヘッドは、レーザ孔をインジェクタ体15に照射する。ST06で噴射孔18が貫通形成されたか否かを判断する。この判断は、インジェクタ体15の噴射孔18の径に対応した所望圧力が規定されたタイムスケジュールを制御部59の電子記憶媒体に記憶し、各々の径にあったタイムスケジュールにより行う。YESであればST07に進み、NOであればST05に戻る。
【0066】
噴射孔18が貫通形成されたタイミングで、ST07に進みガス排出管48を閉じる。このとき、チャンバー50内の圧力範囲を大気圧(略1atm)〜1100kPaとする。
ST08でレーザ光を停止し、ST09でガス供給管47及び流路16の吸引を停止する。さらに、ST10でインジェクタ体15を取り出す。
【0067】
次に噴射孔が形成されるまでのチャンバー内圧力と気化ガスの付着の関係について説明する。
図11に示されるように、噴射孔(図2、符号18)が形成されるまでにおいて、チャンバー(図8、符号50)内の圧力が1000KPaを超えると、噴射孔18の状態が不合格となる。また、チャンバー50内を完全な真空状態にすることは難しい。すなわち、噴射孔18が形成されるまでは、流路16の圧力(低圧)を10kPa〜大気圧(略1atm)とし、チャンバー50内の圧力範囲を10kPa〜1000kPaにすると、噴射孔18の状態を合格にすることができる。
【0068】
次に噴射孔が形成された後のチャンバー内圧力と気化ガスの付着の関係について説明する。
図12に示されるように、噴射孔(図2、符号18)が形成された後において、チャンバー(図8、符号50)内の圧力を大気圧(略101KPa)より小さくすると、噴射孔18の状態が不合格となる。また、チャンバー50内の圧力が1100KPaを超えても噴射孔18の状態が不合格となる。すなわち、噴射孔18が形成された後は、チャンバー50内の圧力範囲を大気圧(略101kPa)〜1100kPaにすると、噴射孔18の状態を合格にすることができる。
【0069】
以上に述べたインジェクタ噴射孔加工装置20の作用効果をまとめて以下に記載する。
上記の図9に示されるように、中空状を呈することで内部に流路を有するインジェクタ体15に、レーザ光72を照射して貫通する孔を形成することで噴射孔18を形成するに際し、少なくともインジェクタ体15の噴射孔18が形成される部位をチャンバー50で囲い、このチャンバー50にガス供給管47でガスを供給しチャンバー50からガス排出管48でガスを排出し、この排出量と供給量とを制御することでチャンバー50内を所定圧に保ち、インジェクタ体15の流路16を所定圧より低圧に保ち、この状態でレーザ光72の照射を実施するインジェクタ噴射孔加工方法において、インジェクタ体15に孔18が貫通するタイミングで、ガス排出管48を閉じて、チャンバー50からのガスの排出を停止する。
【0070】
この工程により、噴射孔18が貫通形成されるタイミングでガス排出管48を閉じるので、噴射孔18が貫通した瞬間から気化ガスが低圧手段66側に流れ、レーザ光72のインジェクタ体15への照射により発生した気化ガス74を効率良く排出することができる。
【0071】
上記の図11に示されるように、低圧が10kPa〜大気圧(略1atm)であるときに、チャンバー内の所定圧は、孔18が貫通するまでは、圧力範囲を10kPa〜1000kPaとする。
孔18が貫通するまでは、チャンバー50内の圧力を1000kPaを超えると、周囲のガスが気化ガスを抑えてしまい気化ガスの排出が効率よく実施されない。チャンバー50内の圧力が10kPa未満でも気化ガスの排出が効率良く実施されない。この点、本発明では、チャンバー50内の圧力範囲を10kPa〜1000kPaとしたので、効率良く気化ガスを排出することができる。
【0072】
上記の図12に示されるように、チャンバー50内の所定圧は、孔18が貫通した後は、圧力範囲を大気圧(略1atm)〜1100kPaとする。
孔18(噴射孔)が貫通したタイミング以降では、チャンバー50内の圧力を大気圧(略1atm)未満とすると、気化ガスを押し出す力が弱まり効率よく気化ガスの排出ができない。他方、噴射孔18が貫通したタイミング以降では、チャンバー50内の圧力を1100kPaを超えると、周囲のガスが気化ガスを抑えてしまい気化ガスの排出が効率よく実施されない。この点、本発明では、噴射孔18が形成されたタイミング以降のチャンバー50内の圧力範囲を大気圧(略1atm)〜1100kPaとしたので、効率良く気化ガスを排出することができる。
【0073】
上記の図10に示されるように、ガス排出管を閉じて、チャンバーからのガスの吸引を停止するタイミング制御は、タイマーで計数されている。
噴射孔18を開けるインジェクタ体15の材質、形状を一定であるので、レーザ光を照射する条件を一定にすれば噴射孔18が貫通するタイミングも一定になる。タイミング制御をタイマーで計数するので、噴射孔18が貫通するタイミングでガスの吸引を停止することができる。
【0074】
上記の図4に示されるように、中空状を呈することで内部に流路を有するインジェクタ体15に、レーザ光を照射して貫通する孔を形成することで噴射孔(図2、符号18)を形成するに際し、少なくともインジェクタ体15の噴射孔18が形成される部位をチャンバー50で囲い、このチャンバー50にガス供給管47でガスを供給しチャンバー50からガス排出管48でガスを排出し、この排出量と供給量とを制御することでチャンバー50内を所定圧に保ち、インジェクタ体15の流路を所定圧より低圧に保ち、この状態でレーザ光の照射を実施するインジェクタ噴射孔加工装置20である。
【0075】
また、チャンバー50内にガスを供給するガス供給手段46と、チャンバー50内のガスを排出するガス排出手段49と、レーザ光の照射により、噴射孔18が形成されるまではチャンバー50内の圧力範囲を10kPa〜1000kPaとし、噴射孔18が形成された後はチャンバー50内にガスを供給すると共にチャンバー50内のガスの排出を停止することでチャンバー50内の圧力範囲を大気圧(略1atm)〜1100kPaとし、1つ以上の噴射孔18の径毎に所定の圧力範囲で噴射孔18の径に対応した所望の圧力が規定されたタイムスケジュールを電子記憶媒体に記憶し、噴射孔18をレーザ光で加工する際には噴射孔18の径にあったタイムスケジュールになるようにガス供給手段46及びガス排出手段49を制御する制御部59とを備える。
【0076】
この構成により、噴射孔18の径にあったタイムスケジュールになるようにガス供給手段46及びガス排出手段49を制御するので、複数種類の径の噴射孔18を高品質で開けることができる。
【0077】
尚、本発明に係るインジェクタ噴射孔加工方法は、噴射孔が貫通形成されるタイミングをタイマーで計数したが、これに限定されず、センサー等で噴射孔が貫通形成されたことを検出する態様でもよく、噴射孔が貫通形成されたタイミングでガス排気管を閉じれば、他の態様でもあっても差し支えない。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明に係るインジェクタ噴射孔加工方法は、インジェクタ体の噴射孔加工に好適である。
【符号の説明】
【0079】
10…インジェクタ、15…インジェクタ体(ワーク)、16…流路、18…噴射孔(孔、貫通孔)、20…インジェクタ噴射孔加工装置、46…ガス供給手段、47…ガス供給管、48…ガス排出管、49…ガス排出手段、50…チャンバー、59…制御部、72…レーザ光、74…気化ガス。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空状を呈することで内部に流路を有するインジェクタ体に、レーザ光を照射して貫通する孔を形成することで噴射孔を形成するに際し、少なくとも前記インジェクタ体の前記噴射孔が形成される部位をチャンバーで囲い、このチャンバーにガス供給管でガスを供給し前記チャンバーからガス排出管で前記ガスを排出し、前記排出量と前記供給量とを制御することで前記チャンバー内を所定圧に保ち、前記インジェクタ体の流路を前記所定圧より低圧に保ち、この状態で前記レーザ光の照射を実施するインジェクタ噴射孔加工方法において、
前記インジェクタ体に孔が貫通するタイミングで、前記ガス排出管を閉じて、前記チャンバーからのガスの排出を停止することを特徴とするインジェクタ噴射孔加工方法。
【請求項2】
前記低圧が10kPa〜大気圧(略1atm)であるときに、前記チャンバー内の所定圧は、前記孔が貫通するまでは、圧力範囲を10kPa〜1000kPaとすることを特徴とする請求項1記載のインジェクタ噴射孔加工方法。
【請求項3】
前記チャンバー内の所定圧は、前記孔が貫通した後は、圧力範囲を大気圧(略1atm)〜1100kPaとすることを特徴とする請求項1記載のインジェクタ噴射孔加工方法。
【請求項4】
前記ガス排出管を閉じて、前記チャンバーからのガスの吸引を停止するタイミング制御は、タイマーで計数されていることを特徴とする請求項3記載のインジェクタ噴射孔加工方法。
【請求項5】
中空状を呈することで内部に流路を有するインジェクタ体に、レーザ光を照射して貫通する孔を形成することで噴射孔を形成するに際し、少なくとも前記インジェクタ体の前記噴射孔が形成される部位をチャンバーで囲い、このチャンバーにガス供給管でガスを供給し前記チャンバーからガス排出管で前記ガスを排出し、前記排出量と前記供給量とを制御することで前記チャンバー内を所定圧に保ち、前記インジェクタ体の流路を前記所定圧より低圧に保ち、この状態で前記レーザ光の照射を実施するインジェクタ噴射孔加工装置において、
前記チャンバー内にガスを供給するガス供給手段と、
前記チャンバー内のガスを排出するガス排出手段と、
前記レーザ光の照射により、前記噴射孔が形成されるまでは前記チャンバー内の圧力範囲を10kPa〜1000kPaとし、前記噴射孔が形成された後は前記チャンバー内にガスを供給すると共に前記チャンバー内のガスの排出を停止することで前記チャンバー内の圧力範囲を大気圧(略1atm)〜1100kPaとし、1つ以上の前記噴射孔の径毎に前記所定の圧力範囲で前記噴射孔の径に対応した所望の圧力が規定されたタイムスケジュールを電子記憶媒体に記憶し、前記噴射孔をレーザ光で加工する際には前記噴射孔の径にあったタイムスケジュールになるように前記ガス供給手段及び前記ガス排出手段を制御する制御部とを備えることを特徴とするインジェクタ噴射孔加工装置。
【請求項1】
中空状を呈することで内部に流路を有するインジェクタ体に、レーザ光を照射して貫通する孔を形成することで噴射孔を形成するに際し、少なくとも前記インジェクタ体の前記噴射孔が形成される部位をチャンバーで囲い、このチャンバーにガス供給管でガスを供給し前記チャンバーからガス排出管で前記ガスを排出し、前記排出量と前記供給量とを制御することで前記チャンバー内を所定圧に保ち、前記インジェクタ体の流路を前記所定圧より低圧に保ち、この状態で前記レーザ光の照射を実施するインジェクタ噴射孔加工方法において、
前記インジェクタ体に孔が貫通するタイミングで、前記ガス排出管を閉じて、前記チャンバーからのガスの排出を停止することを特徴とするインジェクタ噴射孔加工方法。
【請求項2】
前記低圧が10kPa〜大気圧(略1atm)であるときに、前記チャンバー内の所定圧は、前記孔が貫通するまでは、圧力範囲を10kPa〜1000kPaとすることを特徴とする請求項1記載のインジェクタ噴射孔加工方法。
【請求項3】
前記チャンバー内の所定圧は、前記孔が貫通した後は、圧力範囲を大気圧(略1atm)〜1100kPaとすることを特徴とする請求項1記載のインジェクタ噴射孔加工方法。
【請求項4】
前記ガス排出管を閉じて、前記チャンバーからのガスの吸引を停止するタイミング制御は、タイマーで計数されていることを特徴とする請求項3記載のインジェクタ噴射孔加工方法。
【請求項5】
中空状を呈することで内部に流路を有するインジェクタ体に、レーザ光を照射して貫通する孔を形成することで噴射孔を形成するに際し、少なくとも前記インジェクタ体の前記噴射孔が形成される部位をチャンバーで囲い、このチャンバーにガス供給管でガスを供給し前記チャンバーからガス排出管で前記ガスを排出し、前記排出量と前記供給量とを制御することで前記チャンバー内を所定圧に保ち、前記インジェクタ体の流路を前記所定圧より低圧に保ち、この状態で前記レーザ光の照射を実施するインジェクタ噴射孔加工装置において、
前記チャンバー内にガスを供給するガス供給手段と、
前記チャンバー内のガスを排出するガス排出手段と、
前記レーザ光の照射により、前記噴射孔が形成されるまでは前記チャンバー内の圧力範囲を10kPa〜1000kPaとし、前記噴射孔が形成された後は前記チャンバー内にガスを供給すると共に前記チャンバー内のガスの排出を停止することで前記チャンバー内の圧力範囲を大気圧(略1atm)〜1100kPaとし、1つ以上の前記噴射孔の径毎に前記所定の圧力範囲で前記噴射孔の径に対応した所望の圧力が規定されたタイムスケジュールを電子記憶媒体に記憶し、前記噴射孔をレーザ光で加工する際には前記噴射孔の径にあったタイムスケジュールになるように前記ガス供給手段及び前記ガス排出手段を制御する制御部とを備えることを特徴とするインジェクタ噴射孔加工装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−135800(P2012−135800A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−290661(P2010−290661)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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