説明

インタークーラ

【課題】圧縮空気に含まれる熱エネルギーを回収し、エネルギー効率を向上させ、かつ効率よく圧縮空気を冷却できるインタークーラを提供すること。
【解決手段】ターボチャージャ104とエンジン106との間に設けられ、ターボチャージャ104からの圧縮空気を冷却するインタークーラ10において、インタークーラ10のターボチャージャ104からの圧縮空気が導入される流入室12と、流入室12に設けられ、熱電素子30の吸熱面と放熱面の間の温度差で起電力を生じさせる吸熱発電装置18と、を備え、流入室12に導入されたターボチャージャ104からの圧縮空気を吸熱発電装置18の吸熱面に導入させ、圧縮空気の熱を利用して吸熱発電装置18で発電を行わせることとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱電素子による吸熱発電機構を備え、ターボチャージャによる圧縮空気の熱量を発電により回収可能としたインタークーラに関する。
【背景技術】
【0002】
貨物用車両の駆動機構の一例として、インタークーラ付きターボチャージドディーゼルエンジンがある。かかる駆動機構では、ターボチャージャ(排気利用過給器)が、エンジンの排気を利用して吸気を圧縮し、大量の空気をエンジンに送り込み、出力を向上させている。
【0003】
一方、空気は、温度が低い方が密度が高く、同一の容量でも多量の燃料を燃焼できることから、ターボチャージャで圧縮され高温になった圧縮空気を、エンジンに送る前にインタークーラで冷却し、圧縮空気の温度を下げている。
【0004】
又、インタークーラとエンジンの吸気通路との間に熱電素子に設け、吸気通路を通過する吸入空気を熱電素子で冷却し、吸入空気の温度を低下させる吸気装置の発明が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−255364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、一般にインタークーラは、ターボチャージャで圧縮され高温になった圧縮空気の熱を大気中に放散し、圧縮空気の温度を低下させるだけであった。したがって、圧縮空気に含まれている熱量(熱エネルギー)を利用して、車両のエネルギー効率、すなわち燃費を向上させることはできなかった。
【0007】
又、上記熱電素子を用いた吸気装置は、熱電素子に電力を供給して冷却動作を行わせており、吸気を冷却させるために電力を消費していた。
【0008】
本発明は上記課題を解決し、ターボチャージャで生成された圧縮空気に含まれる熱量を回収し、エネルギー効率を向上させ、かつ電力を必要とすることなく、効率よく圧縮空気を冷却できるインタークーラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決し、目的を達成するため、本発明に係るインタークーラは、次のように構成されている。
【0010】
車両のターボチャージャとエンジンの吸気通路との間に設けられ、ターボチャージャからの圧縮空気を冷却するインタークーラにおいて、ターボチャージャからの圧縮空気が直接導入される流入室と、吸熱面と放熱面を有し、吸熱面と放熱面との間の温度差で起電力が生じる熱電素子を備えた吸熱発電装置とを備え、流入室に導入されるターボチャージャからの圧縮空気が吸熱面に接するように、吸熱発電装置を流入室に設けた。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ターボチャージャからの圧縮空気に含まれる熱量を回収し、エネルギー効率を向上させ、かつ電力を必要とすることなく、効率よく圧縮空気を冷却できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態にかかるインタークーラを用いた車両の駆動機構を示す構成図。
【図2】同インタークーラを示す正面図。
【図3】同インタークーラを一部破断して示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明の一実施形態のインタークーラ10を備えた大型貨物用の車両の駆動機構102である。駆動機構102は、インタークーラ付きターボチャージドディーゼルエンジンであり、インタークーラ10は、ターボチャージャ104とエンジン106の吸気通路108の間に設けられている。
【0014】
ターボチャージャ104は、エンジン106の排気管107に連結されたタービン110と、タービン110により回転されるコンプレッサ112とを備えている。コンプレッサ112は、エアクリーナ114に接続し、タービン110により回転されるとエアクリーナ114からの吸気を圧縮し、インタークーラ10に送り出す。以下、インタークーラ10を流れる圧縮空気の流れ方向を基準として、上流と下流を定める。
【0015】
図2は、インタークーラ10の正面図、図3は、インタークーラ10を一部破断した斜視図である。インタークーラ10は、図2に示すように流入室12と、熱交換部としての熱交換器14と、送出室16と、吸熱発電装置18とを備えている。
【0016】
流入室12は、ターボチャージャ104に接続される流入口20を有し、下流にて熱交換器14に接続している。流入室12の内部には、吸熱発電装置18が設けてあり、吸熱発電装置18により流入室12の内部が第1室22と第2室24に区分されている。第1室22は、吸熱発電装置18の上流に配置され、第2室24は、吸熱発電装置18の下流に配置されている。
【0017】
吸熱発電装置18は、図3にも示すように熱電素子30と、吸熱板32と、放熱板34とを備えている。熱電素子30は、吸熱面と放熱面と備えた半導体素子で、吸熱面には吸熱板32が、放熱面には放熱板34が取り付けてある。熱電素子30は、吸熱板32と放熱板34で挟んであり、吸熱板32と放熱板34との間に、吸熱板32の温度を高くして温度差を生じさせると出力端子36間に起電力が発生する。熱電素子30の出力端子36は、車両の充電機構やライト等の負荷類等が接続してある。
【0018】
第1室22は、流入室12の一部と吸熱発電装置18の吸熱板32で区画されており、上部に流入口20が設けてある。吸熱発電装置18の吸熱板32は、第1室22の内部に露出した状態となっており、吸熱板32に加えられた熱が熱電素子30の吸熱面に効率よく伝達されるようになっている。第1室22の底壁38には、連通路としての連通管40の一端が接続してある。
【0019】
第2室24は、流入室12の一部と吸熱発電装置18の放熱板34と仕切板42で区画形成されている。放熱板34と仕切板42は対向しており、仕切板42には、圧縮空気を通過させる熱交換器14の管体50が連結されている。又、第2室24の底壁44には、連通管40の他端が接続してある。
【0020】
放熱板34には、冷却機構52が設けられている。冷却機構52は、放熱板34の内部に設けられた通水管54と、通水管54に接続されたラジエータ116を備え、冷却通路120を通してラジエータ116で冷却された冷却液が流通して放熱板34を冷却する。基本的にラジエータ116は、エンジン106からの冷却液を通し、冷却風により冷却液を冷却し、温度が低下した冷却液をエンジン106に戻し、エンジン106を冷却させている。尚、冷却機構52は、これに限らず、エアコンディショナーの冷媒や、冷却風、更に放熱板34専用の冷却機構を用いてもよい。
【0021】
熱交換器14は、複数の管体50と管体50の外方に取り付けられた複数のフィン56とを備えている。熱交換器14は、従来のインタークーラにおける熱交換器と同等の構成であり、フィン56を備えた管体50を多数備え、管体50を通る高温の圧縮空気の熱が管体50や管体50を通してフィン56に伝達し、これらから熱が大気に放散して、熱交換がなされる。
【0022】
送出室16は、熱交換器14の下流、つまり圧縮空気の流出側に接続しており、管体50を通り熱交換器14で冷却された圧縮空気が導入される。送出室16には、流出口46が設けてあり、流出口46を通してエンジン106の吸気通路108に接続している。尚、インタークーラ10は空冷としたが、本発明のインタークーラは水冷方式でもよい。
【0023】
次に、インタークーラ10の作用、効果について説明する。
【0024】
エンジン106が作動し、エンジン106から排出された排気がターボチャージャ104のタービン110を回転駆動させる。タービン110が回転駆動されると、エアクリーナ114でろ過された空気がコンプレッサ112で圧縮され、生成された圧縮空気がインタークーラ10に送られる。
【0025】
ターボチャージャ104で生成された圧縮空気は、圧力が高く、かつ高温であり、流入口20を通ってインタークーラ10の内部に流入する。流入口20からインタークーラ10の内部に流入された圧縮空気は、流入室12の第1室22に流入する。第1室22に流入した圧縮空気は、吸熱発電装置18の吸熱板32に接触し、吸熱板32を加熱する。
【0026】
一方、吸熱発電装置18の放熱板34は、冷却機構52によりエンジン106の冷却液で冷却されている。吸熱発電装置18の吸熱板32が圧縮空気により加熱され、放熱板34が冷却液で冷却されているので、熱電素子30に温度差が発生し、吸熱発電装置18の出力端子36間に起電力が生じる。吸熱発電装置18は、発生した起電力で車両の充電機構に電流を送り出す。
【0027】
そして吸熱板32を加熱した圧縮空気は、吸熱板32で吸熱されたこととなり、温度が低下して連通管40を通って第2室24に流入する。第2室24に流入した圧縮空気は、管体50を通って送出室16に流入する。圧縮空気は、管体50を通る際に熱が管体50に伝達し、更に管体50からフィン56に伝達され、大気との間での熱交換により温度が低下する。温度が低下した圧縮空気は、送出室16から流出口46を通ってエンジン106の吸気通路に送り込まれる。
【0028】
このように本実施形態にかかるインタークーラ10によれば、ターボチャージャ104のコンプレッサ112で生成された圧縮空気が、インタークーラ10の流入室12の内部に設けられた吸熱発電装置18で冷却され、その後インタークーラ10の熱交換器14で冷却され、低い温度でエンジン106に供給される。
【0029】
圧縮空気の熱により吸熱発電装置18で発生した電力が取り出され、車両の電力として蓄えられたり、使用されたりし、エネルギー効率が高められる。吸熱発電装置18での発電により、従来廃棄されていた圧縮空気の熱を回収し、エネルギーに利用できる。これにより、車両の発電機での発電量を抑制し、発電負荷を低減させて燃費を向上できる。
【0030】
吸熱発電装置18の熱電素子30により、高温の圧縮空気から熱を吸収し、圧縮空気を電力を必要とすることなく、効率よく冷却できる。これにより、温度の低い圧縮空気がエンジン106に導入され、高い効率でエンジン106が作動される。吸熱発電装置18により圧縮空気が冷却されるので、熱交換器14の容積を小さくでき、インタークーラを小型、軽量化できる。
【0031】
尚、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。例えば、駆動機構102は、インタークーラ付きターボチャージドディーゼルエンジンに限るものではなく、ガソリンエンジンでもよい。この他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で変形して実施可能である。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、車両のターボチャージャの圧縮空気を冷却するインタークーラに用いられる。
【符号の説明】
【0033】
10…インタークーラ、12…流入室、14…熱交換器、16…送出室、18…吸熱発電装置、20…流入口、22…第1室、24…第2室、30…熱電素子、32…吸熱板、34…放熱板、40…連通管、46…流出口、52…冷却機構、102…駆動機構、104…ターボチャージャ、106…エンジン、108…吸気通路、110…タービン、112…コンプレッサ、114…エアクリーナ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のターボチャージャとエンジンの吸気通路との間に設けられ、前記ターボチャージャからの圧縮空気を冷却するインタークーラにおいて、
前記ターボチャージャからの圧縮空気が直接導入される流入室と、
吸熱面と放熱面を有し、前記吸熱面と前記放熱面との間の温度差で起電力が生じる熱電素子を備えた吸熱発電装置とを備え、
前記流入室に導入される前記ターボチャージャからの圧縮空気が前記吸熱面に接するように、前記吸熱発電装置を前記流入室に設けたことを特徴とするインタークーラ。
【請求項2】
車両のターボチャージャとエンジンの吸気通路との間に設けられ、前記ターボチャージャからの圧縮空気を冷却するインタークーラにおいて、
前記ターボチャージャからの前記圧縮空気を、熱交換により冷却する熱交換部と、
前記ターボチャージャに連通する流入口を有し、前記ターボチャージャからの前記圧縮空気が前記流入口を通して直接流入する、前記熱交換部の上流に設けられた流入室と、
前記エンジンの吸気通路に連通する流出口を有する、前記熱交換部の下流に設けられた送出室と、
吸熱面と放熱面を有し、前記吸熱面と前記放熱面との間の温度差で起電力が生じる熱電素子を備えた吸熱発電装置と、を備え、
前記吸熱発電装置は、前記流入室を、前記流入口を有する第1室と、前記熱交換部に連通された第2室とに区分し、前記第1室に前記吸熱面を臨ませ、前記放熱面に、該放熱面を冷却する冷却機構を設け、
前記第1室と前記第2室とを連通路により連通させたことを特徴とするインタークーラ。
【請求項3】
前記冷却機構は、前記エンジンの冷却液を用いていることを特徴とする請求項2に記載のインタークーラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−50062(P2013−50062A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−187914(P2011−187914)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(598051819)ダイムラー・アクチェンゲゼルシャフト (1,147)
【氏名又は名称原語表記】Daimler AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 137,70327 Stuttgart,Deutschland
【Fターム(参考)】