説明

インターホン装置

【課題】厳しい逆光環境においても来訪者の顔を的確に視認することができるインターホン装置を提供する。
【解決手段】玄関子機10のカメラ14に、その下方部分を覆うような樹脂ケース31を取り付ける。これにより、カメラ14により撮像された撮像画像に常に黒い画像部分が含まれるので、居住者が逆光補正ボタン24を押下した場合、補正領域分割パターンを使用することによって黒い画像部分をその一部に含んだ領域を重み値が最も大きい領域として露出補正を実行することができるため、厳しい逆光環境においても来訪者の顔を視認することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インターホン装置に関し、特に、逆光環境において露出設定の変更が可能なインターホン装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、逆光環境において露出設定を変更する機能を有するインターホン装置が知られている。
このような機能を有するインターホン装置は一般的に、来訪者が居住者を呼び出すための呼出ボタン、来訪者が前記居住者と通話するための子機マイクおよび子機スピーカ、および来訪者を撮像するためのカメラを有する玄関子機と、この玄関子機からの呼び出しに応答するための通話ボタン、居住者が来訪者と通話するための親機マイクおよび親機スピーカ、カメラにより撮像された撮像画像を表示するモニタ、およびモニタに表示される撮像画像の露出を変更するための逆光補正ボタンを有する居室親機とを備えている。
このインターホン装置における露出補正は、カメラで撮像された撮像画像をモニタに表示される位置に基づいて複数の領域に分割するとともに、分割した各領域の被写体光量を計算し、各領域に対し、予め設定された各領域の重要度を示す重み値に乗じた加重平均を行うことにより実行されている。なお、インターホン装置のカメラでは通常、被写体光量の多い上方(空側)と被写体光量の少ない比較的暗い下方(地面側)の双方が撮像されるという特徴から、上述のように露出補正が実行される構成のインターホン装置では、被写体光量の少ない下方の重み値が高く設定されており、被写体光量の多い上方の重み値が低く設定されている。
このような構成のインターホン装置によれば、露出設定を変更することにより、逆光環境においても来訪者の顔を視認することができるようになり、利便性が高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−287200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば地面に雪が積もっている日に光の反射によって下方の光量が増加している場合や、玄関子機が奥まった場所に設置されており、太陽光がトンネル的に射し込むことにより被写体前面と背面との光量の差が非常に大きい場合など、玄関子機が設置される様々な環境の中には、上述のようなインターホン装置において露出設定を変更しても来訪者の顔を的確に視認することができない場合がある。
【0005】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、厳しい逆光環境においても来訪者の顔を的確に視認することができるインターホン装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本願発明者は、以下のようなインターホン装置を提案する。
【0007】
本発明のインターホン装置は、来訪者が居住者を呼び出すための呼出ボタン、前記来訪者が前記居住者と通話するための子機マイクおよび子機スピーカ、および前記来訪者を撮像するためのカメラを有する玄関子機と、前記玄関子機からの呼び出しに応答するための通話ボタン、前記居住者が前記来訪者と通話するための親機マイクおよび親機スピーカ、前記カメラにより撮像された撮像画像を表示するモニタ、および前記モニタに表示される撮像画像の露出を変更するための逆光補正ボタンを有する居室親機と、を有している。
このインターホン装置の玄関子機または居室親機は、前記撮像画像を前記モニタに表示される位置に基づいて複数の領域に分割する際に使用する領域分割のパターンとなる、通常領域分割パターンおよび補正領域分割パターンが記録された領域分割パターン記録部と、前記通常領域分割パターンを使用して前記撮像画像を複数の領域に分割するとともに、分割した各領域の被写体光量を計算し、前記各領域に対し、予め設定された前記各領域の重要度を示す重み値に乗じた加重平均を行うことにより露出補正を実行する画像処理部と、を有しており、前記カメラの下方部分は、カバー部材により遮蔽されており、前記カメラにより撮像された撮像画像は、その下方に、前記カバー部材により遮蔽された箇所の撮像画像である黒い画像部分を常に有しており、前記領域分割パターン記録部に記録されている前記通常領域分割パターンは、前記撮像画像を分割した場合にできる前記複数の領域の中に、前記黒い画像部分の領域と、前記黒い画像部分の領域と隣り合う領域とを含んでおり、前記領域分割パターン記録部に記録されている前記補正領域分割パターンは、前記撮像画像を分割した場合にできる前記複数の領域の一つに、前記黒い画像部分をその一部に含んだ領域を含んでおり、前記画像処理部は、前記居住者により前記逆光補正ボタンが押下される度に、露出補正を実行する際に使用する領域分割パターンを変更する構成となっており、前記カメラによる撮像が開始された場合、前記通常領域分割パターンを使用して前記撮像画像を複数の領域に分割するとともに、前記黒い画像部分の領域と隣り合う領域を前記重み値が最も大きい領域として露出補正を実行し、前記居住者により前記逆光補正ボタンが押下された場合、前記補正領域分割パターンを前記領域分割パターン記録部から読み出し、この補正領域分割パターンを使用して前記撮像画像を複数の領域に分割するとともに、前記黒い画像部分をその一部に含んだ領域を前記重み値が最も大きい領域として露出補正を実行する構成となっている。
発明者は、厳しい逆光環境のもと、従来のインターホン装置のカメラに来訪者とともに黒い布を撮像画像の下部に少しだけ写りこませるようにした場合、来訪者の顔部分における露出の少なさが解消される場合があることを発見した。また、この黒い布を徐々に上昇させていくことによって黒い布が写り込む範囲を広くしていった場合、来訪者の顔部分における露出の少なさが次第に解消されることを発見した。
本発明は、以上の事象を参考にしてなされたものであり、本発明のようなカバー部材を備えるインターホン装置によれば、黒い画像部分を加味した補正領域分割パターンを使用して逆光補正を実行することができるため、居住者が逆光補正ボタンを押下することにより、厳しい逆光環境においても来訪者の顔を視認することができる。すなわち、本発明のカメラにより撮像された撮像画像に常に黒い画像部分が含まれるので、居住者が逆光補正ボタンを押下した場合、補正領域分割パターンを使用することによって黒い画像部分をその一部に含んだ領域を重み値が最も大きい領域として露出補正を実行するため、画像処理部は撮像画像の露出を上げるように露出設定を変更することとなる。つまり、黒い画像部分をその一部に含んだ領域を重み値が最も大きい領域として露出補正を実行することができるので、撮像範囲を多少犠牲にすることで、従来からのインターホン装置が備えている逆光補正機能をさらに効果的に利用することができ、厳しい逆光環境においても来訪者の顔を視認することができるようになる。
なお「カバー部材」とは、カメラの下方部分を遮蔽することができればどのような材質、構成または形状のものであってもよい。例えば、カメラの前に、カメラの下方部分を覆うようなケースをカバー部材として取り付けてもよいし、黒いテープをカバー部材としてカメラの下方部分に貼り付けてもよい。
【0008】
上記領域分割パターン記録部には、前記補正領域分割パターンが複数記録されており、これらの補正領域分割パターンは、前記黒い画像部分をその一部に含んだ領域における黒い画像部分の占める割合がそれぞれ異なっていてもよい。
このように、画像処理部により露出補正が実行される際の重み値が最も大きい領域、すなわち黒い画像部分をその一部に含んだ領域、における黒い画像部分の占める割合が異なる複数の補正領域分割パターンを有するインターホン装置によれば、逆光の程度に応じて使用する補正領域分割パターンを変更することができるため、場面に応じて最適な露出補正を行うことができ、来訪者の顔を的確に視認することができるようになる。
【0009】
上記インターホン装置における画像処理部が露出補正を実行する際に使用する前記補正領域分割パターンは、前記居住者により前記逆光補正ボタンが押下されることにより、前記黒い画像部分をその一部に含んだ領域における黒い画像部分の占める割合が少ない補正領域分割パターンから順番に変更するように構成されており、最後の順序に設定された前記補正領域分割パターンを使用して露出補正が実行された後、前記居住者により前記逆光補正ボタンが押下された場合には、前記画像処理部は、再び前記通常領域分割パターンを使用して露出補正を実行するような構成になっていてもよい。
このような構成のインターホン装置によれば、居住者が逆光補正ボタンを押下する度に、画像処理部により露出補正が実行される際の重み値が最も大きい領域、すなわち黒い画像部分をその一部に含んだ領域における黒い画像部分の占める割合が徐々に大きくなるような構成となっているので、居住者が逆光補正ボタンを一度押下しても来訪者の顔を視認できない場合に、逆光補正ボタンを再度(複数回)押下することで、より厳しい逆光環境においても来訪者の顔を的確に視認することができるようになる。
また、画像処理部により領域分割パターン記録部に記録されたすべての補正領域分割パターンを使用して露出補正が実行された後(最後の順序に設定された補正領域分割パターンを使用して露出補正が実行された後)に逆光補正ボタンが押下された場合には、画像処理部は、再び通常領域分割パターンを使用して露出補正を実行するようになっているので、居住者が最適な領域分割パターンを選択し易い。
【0010】
上記玄関子機または居室親機は、日付または時間等の文字情報を前記撮像画像に追加する画像追加部を有しており、前記画像追加部は、前記黒い画像部分に前記文字情報を追加する構成となっていてもよい。
このような構成のインターホン装置によれば、黒い画像部分の違和感をなくすことができるとともに、犠牲となった撮像範囲を有効に活用することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、厳しい逆光環境においても来訪者の顔を的確に視認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態のインターホン装置1の全体構成を示す図。
【図2】本実施形態のインターホン装置1の構成を示すブロック図。
【図3】インターホン装置1のカメラ14に樹脂ケース31が取り付けられた状態を示す図。
【図4】通常領域分割パターンを使用して撮像画像を分割した複数の領域を示す図。
【図5】インターホン装置1のカメラ14による撮像画像がモニタ25に表示された状態を示す図。
【図6】第1補正領域分割パターンを使用して撮像画像を分割した複数の領域を示す図。
【図7】第2領域分割パターンを使用して撮像画像を分割した複数の領域を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
発明者は、厳しい逆光環境のもと、従来のインターホン装置のカメラに来訪者とともに黒い布を撮像画像の下部に少しだけ写りこませるようにした場合、来訪者の顔部分における露出の少なさが解消される場合があることを発見した。また、この黒い布を徐々に上昇させていくことによって黒い布が写り込む範囲を広くしていった場合、来訪者の顔部分における露出の少なさが次第に解消されることを発見した。本発明は、以上の事象を参考にしてなされたものである。
以下、本発明のインターホン装置の好ましい実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
本実施形態によるインターホン装置1は、概略で図1および図2に示したように構成される。
すなわち、本実施形態のインターホン装置1は、住宅のエントランスに設置され、来訪者が居住者の呼出操作を行うための呼出ボタン11、居住者と通話するための子機マイク12および子機スピーカ13、および来訪者を撮像するためのカメラ14を備える玄関子機10と、住戸内に設置され、玄関子機10からの呼び出しに応答する通話ボタン21、来訪者と通話するための親機マイク22および親機スピーカ23、逆光補正ボタン24およびモニタ25を備える居室親機20とを有している。
この玄関子機10と居室親機20とは伝送線路L1を介して接続されている。
【0015】
玄関子機10は、図2に示すように、カメラ14により撮像した画像である撮像画像を居室親機20のモニタ25に表示される位置に基づいて複数の領域に分割する際に使用する領域分割のパターンとなる、通常領域分割パターンおよび補正領域パターン(第1補正領域分割パターンおよび第2補正領域パターン)が記録された領域分割パターン記録部15と、通常領域分割パターンまたは補正領域分割パターンを使用して露出補正を実行する画像処理部16と、子機マイク12および子機スピーカ13の動作を制御する子機通話回路17と、伝送線路L1を介して居室親機20に撮像画像データ等を送信する子機IF18と、玄関子機全体の動作を制御する子機CPU19とを有している。
この玄関子機10のカメラ14の前には、図3に示すように、カメラ14の下方部分を覆うような樹脂ケース31が取り付けられている。
なお、本実施形態ではこのように樹脂ケース31がカメラ14の前に取り付けられているものとして説明したが、カメラ14の下方部分を常に遮蔽される構成とすることができればどのような材質、構成または形状のものを樹脂ケース31の代わりに用いてもよく、例えば、カメラ14の下方部分に黒いテープを貼り付けた構成としてもよい。
【0016】
居室親機20は、図2に示すように、玄関子機10の子機IF18から送信された撮像画像データ等を、伝送線路L1を介して受信する親機IF26と、日付または時間等の文字情報を撮像画像データに追加する画像追加部27と、親機マイク22および親機スピーカ23の動作を制御する親機通話回路28と、居室親機20機全体の動作を制御する親機CPU29とを有している。
【0017】
次に、以上のように構成されたインターホン装置1の動作について、説明する。
【0018】
来訪者が玄関子機10の呼出ボタン11を押下した場合、居室親機20が呼出状態となるとともに、子機CPU19の制御のもと、玄関子機10のカメラ14による撮像が開始される。
このカメラ14により撮像された撮像画像データは、画像処理部16に送信される。また、カメラ14による撮像が開始したことを示す信号が子機CPU19に送信される。
子機CPU19は、カメラ14による撮像が開始したことを示す信号を受け取ると、領域分割パターン記録部15から通常領域分割パターンを読み出し、この通常領域分割パターンを画像処理部16に送信するよう制御する。画像処理部16は、この通常領域分割パターンを使用して、撮像画像データを居室親機20のモニタ25に表示される位置に基づいて複数の領域に分割するとともに、分割した各領域の被写体光量を計算し、各領域に対し、予め設定された各領域の重要度を示す重み値に乗じた加重平均を行うことにより露出補正を実行する。
【0019】
具体的には、本実施形態の通常領域分割パターンは、図4に示すように、撮像画像データのうち、一般的に被写体光量の多い上方の領域を垂直方向に三等分した領域である領域Aないし領域C、一般的に被写体光量の最も少ない一番下方の部分の領域E、および領域Aないし領域Cと領域Eとの間に位置するブロックDの5つの領域に分割するように構成されている。
なお、撮像画像データは、その下方に、樹脂ケース31により遮蔽された箇所の撮像画像データである黒い画像部分を常に含んでいるが、この黒い画像部分が領域Eとなる。
また、領域Aないし領域Cおよび領域Eの重み値はそれぞれ1/10、領域Dの重み値は6/10に設定されており、領域Dの重み値が最も高く設定されている。
すなわち、通常領域分割パターンを使用して露出補正を実行する場合には、主に領域Dの光量に影響されることとなる。
【0020】
このようにして、画像処理部16により露出補正された撮像画像データは、子機IF18から伝送線路L1を介して親機IF26に送信される。
親機IF26に送信された撮像画像データは、親機CPU29の制御のもと、画像追加部27に送信される。画像追加部27は、撮像画像データの領域Eに相当する部分に、日付または時間等の文字情報を追加する。
画像追加部27により文字情報が追加された撮像画像データは、親機CPU29の制御のもと、モニタ25に送信され、図5のように表示されることとなる。
【0021】
以上のようにモニタ25に撮像画像データが表示されている場合、厳しい逆光環境のもとでは来訪者の顔が暗くて確認できない場合もある。
このような場合、居住者は、逆光補正ボタン24を押下する。
以下、居住者が逆光補正ボタン24を押下した場合のインターホン装置1の動作について説明する。
【0022】
居住者が逆光補正ボタン24を押下すると(一回目)、逆光補正ボタン24を押下したことを示す信号が、親機CPU29の制御のもと、親機IF26から伝送線路L1、子機IF18を介して子機CPU19に送信される。子機CPU19は、逆光補正ボタン24を押下したことを示す信号を受け取ると、画像処理部16で現在使用されている領域分割パターンを確認する。画像処理部16で現在使用されている領域分割パターンが通常領域分割パターンであることを確認すると、子機CPU19は、領域分割パターン記録部15から第1補正領域分割パターンを読み出し、この第1補正領域分割パターンを画像処理部16に送信するよう制御する。画像処理部16は、領域分割パターン記録部15から第1補正領域分割パターンが送信されると、この第1補正領域分割パターンを使用して、撮像画像データを居室親機20のモニタ25に表示される位置に基づいて複数の領域に分割するとともに、分割した各領域の被写体光量を計算し、各領域に対し、予め設定された各領域の重要度を示す重み値に乗じた加重平均を行うことにより露出補正を実行する。
【0023】
具体的には、本実施形態の第1補正領域分割パターンは、図6に示すように、撮像画像データのうち、一番上方の部分の領域P、樹脂ケース31により遮蔽された箇所の撮像画像データである黒い画像部分の領域を一部に含んだ一番下方の領域T、および領域Pと領域Tの間にある領域を垂直方向に三等分した領域である領域Qないし領域Sの5つの領域に分割するように構成されている。
なお、領域Tは、その領域の約50%が黒い画像部分の領域となっている。
領域Pないし領域Sの重み値はそれぞれ1/10、領域Tの重み値は6/10に設定されており、領域Tの重み値が最も高く設定されている。
すなわち、第1補正領域分割パターンを使用して露出補正を実行する場合には、領域Tの光量に主に影響されることとなる。
【0024】
このように、本実施形態のインターホン装置1によれば、第1補正領域分割パターンを使用することによって黒い画像部分をその一部に含んだ領域(領域T)を重み値が最も大きい領域として露出補正が実行されるため、画像処理部16は、撮像画像の露出を上げるように露出設定を変更することとなる。すなわち、居住者が逆光補正ボタン24を押下することにより、厳しい逆光環境においても来訪者の顔を視認することができるようになる。
【0025】
以上のようにして、画像処理部16により露出補正された撮像画像データは、上記と同様、子機IF18から伝送線路L1を介して親機IF26に送信される。
親機IF26に送信された撮像画像データは、親機CPU29の制御のもと、画像追加部27に送信される。画像追加部27は、撮像画像データの領域Eに相当する部分に、日付または時間等の文字情報を追加する。
画像追加部27により文字情報が追加された撮像画像データは、親機CPU29の制御のもと、モニタ25に送信され、表示される。
【0026】
また、居住者がさらに逆光補正ボタン24を押下した場合(二回目)、上述のように、逆光補正ボタン24を押下したことを示す信号が、親機CPU29の制御のもと、親機IF26から伝送線路L1、子機IF18を介して子機CPU19に送信される。子機CPU19は、逆光補正ボタン24を押下したことを示す信号を受け取ると、画像処理部16で現在使用されている領域分割パターンを確認する。画像処理部16で現在使用されている領域分割パターンが第1補正領域分割パターンであることを確認すると、子機CPU19は、領域分割パターン記録部15から第2補正領域分割パターンを読み出し、この第2補正領域分割パターンを画像処理部16に送信するよう制御する。画像処理部16は、領域分割パターン記録部15から第2補正領域分割パターンが送信されると、この第2補正領域分割パターンを使用して、撮像画像データを居室親機20のモニタ25に表示される位置に基づいて複数の領域に分割するとともに、分割した各領域の被写体光量を計算し、各領域に対し、予め設定された各領域の重要度を示す重み値に乗じた加重平均を行うことにより露出補正を実行する。
【0027】
具体的には、本実施形態の第2補正領域分割パターンは、図7に示すように、撮像画像データのうち、一番上方の部分の領域P、樹脂ケース31により遮蔽された箇所の撮像画像データである黒い画像部分の領域を一部に含んだ一番下方の領域X、および領域Pと領域Xの間にある領域を垂直方向に三等分した領域である領域Uないし領域Wの5つの領域に分割するように構成されている。
なお、領域Xは、その領域の約80%が黒い画像部分の領域となっており、その領域において黒い画像部分の占める割合が第1補正領域分割パターンにおける領域Tよりも多い点で、領域Tと異なっている。
領域P、領域Uないし領域Wの重み値はそれぞれ1/10、領域Xの重み値は6/10に設定されており、領域Xの重み値が最も高く設定されている。
すなわち、第2補正領域分割パターンを使用して露出補正を実行する場合には、主に領域Xの光量に影響されることとなる。
【0028】
このように、本実施形態のインターホン装置1によれば、第2補正領域分割パターンを使用することによって、第1補正領域分割パターンにおける領域Tよりも黒い画像部分の占める割合が多い領域Xを重み値が最も大きい領域として露出補正が実行されるため、画像処理部16は撮像画像の露出をさらに上げるように露出設定を変更することとなる。すなわち、逆光補正ボタン24を再度押下することにより、第1補正領域分割パターンを使用した逆光補正では対応できない、より厳しい逆光環境においても来訪者の顔を視認することができるようになる。
以上のように、画像処理部16により露出補正が実行される際の重み値が最も大きい領域、すなわち黒い画像部分をその一部に含んだ領域、における黒い画像部分の占める割合が異なる複数の補正領域分割パターンを有するインターホン装置1によれば、逆光の程度に応じて使用する補正領域分割パターンを変更することができるため、場面に応じて最適な露出補正を行うことができ、来訪者の顔を的確に視認することができるようになる。
なお、本実施形態では、領域分割パターン記録部15に二つの補正領域分割パターンが記録されているものとして記載したが、これに限られず、補正領域分割パターンは一つ記録されている構成としてもよいし、黒い画像部分をその一部に含んだ領域における黒い画像部分の占める割合がそれぞれ異なっている補正領域分割パターンが三つ以上記録されている構成としてもよい。
【0029】
このようにして、画像処理部16により露出補正された撮像画像データは、上記と同様、子機IF18から伝送線路L1を介して親機IF26に送信される。
親機IF26に送信された撮像画像データは、親機CPU29の制御のもと、画像追加部27に送信される。画像追加部27は、撮像画像データの領域Eに相当する部分に、日付または時間等の文字情報を追加する。
画像追加部27により文字情報が追加された撮像画像データは、親機CPU29の制御のもと、モニタ25に送信され、表示される。
【0030】
その後、居住者がさらに逆光補正ボタン24を押下した場合(三回目)、逆光補正ボタン24を押下したことを示す信号が、親機CPU29の制御のもと、親機IF26から伝送線路L1を介して子機IF18から子機CPU19に送信される。子機CPU19は、逆光補正ボタン24を押下したことを示す信号を受け取ると、画像処理部16で現在使用されている領域分割パターンを確認する。画像処理部16で現在使用されている領域分割パターンが第2補正領域分割パターンであることを確認すると、子機CPU19は、領域分割パターン記録部15から通常領域分割パターンを読み出し、この通常領域分割パターンを画像処理部16に送信するよう制御する。画像処理部16は、領域分割パターン記録部15から通常領域分割パターンが送信されると、この通常領域分割パターンを使用して、撮像画像データを居室親機20のモニタ25に表示される位置に基づいて複数の領域に分割するとともに、分割した各領域の被写体光量を計算し、各領域に対し、予め設定された各領域の重要度を示す重み値に乗じた加重平均を行うことにより露出補正を実行することとなる。
【0031】
このように、本実施形態のインターホン装置1によれば、画像処理部16により領域分割パターン記録部15に記録されたすべての補正領域分割パターンを使用して露出補正が実行された後に逆光補正ボタン24が押下された場合には、画像処理部16は、再び通常領域分割パターンを使用して露出補正を実行するようになっているので、居住者が最適な領域分割パターンを選択し易い。
【0032】
また、本実施形態のインターホン装置1によれば、画像追加部27により、黒い画像部分に文字情報が追加される構成となっているので、黒い画像部分の違和感をなくすことができるとともに、犠牲となった撮像範囲を有効に活用することができる。
【0033】
なお、以上のインターホン装置1は、領域分割記録部15および画像処理部16は玄関子機10が、画像追加部27は居室親機20が備える構成となっているものとして説明したが、これに限られず、居室親機20が領域分割記録部15および画像処理部16を備えるような構成であってもよいし、玄関子機10が画像追加部27を備えるような構成であってもよい。
【符号の説明】
【0034】
1・・インターホン装置、10・・玄関子機、11・・呼出ボタン、12・・子機マイク、13・・子機スピーカ、14・・カメラ、15・・領域分割パターン記録部、16・・画像処理部、17・・子機通話回路、18・・子機IF、20・・居室親機、21・・通話ボタン、22・・親機マイク、23・・親機スピーカ、24・・逆光補正ボタン、25・・モニタ、26・・親機IF、27・・画像追加部、28・・親機通話回路、31・・樹脂ケース(カバー部材)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
来訪者が居住者を呼び出すための呼出ボタン、前記来訪者が前記居住者と通話するための子機マイクおよび子機スピーカ、および前記来訪者を撮像するためのカメラを有する玄関子機と、前記玄関子機からの呼び出しに応答するための通話ボタン、前記居住者が前記来訪者と通話するための親機マイクおよび親機スピーカ、前記カメラにより撮像された撮像画像を表示するモニタ、および前記モニタに表示される撮像画像の露出を変更するための逆光補正ボタンを有する居室親機と、を有するインターホン装置において、
前記玄関子機または前記居室親機は、前記撮像画像を前記モニタに表示される位置に基づいて複数の領域に分割する際に使用する領域分割のパターンとなる、通常領域分割パターンおよび補正領域分割パターンが記録された領域分割パターン記録部と、
前記通常領域分割パターンまたは前記補正領域分割パターンを使用して前記撮像画像を複数の領域に分割するとともに、分割した各領域の被写体光量を計算し、前記各領域に対し、予め設定された前記各領域の重要度を示す重み値に乗じた加重平均を行うことにより露出補正を実行する画像処理部と、を有しており、
前記カメラの下方部分は、カバー部材により遮蔽されており、
前記カメラにより撮像された撮像画像は、その下方に、前記カバー部材により遮蔽された箇所の撮像画像である黒い画像部分を常に有しており、
前記領域分割パターン記録部に記録されている前記通常領域分割パターンは、前記撮像画像を分割した場合にできる前記複数の領域の中に、前記黒い画像部分の領域と、前記黒い画像部分の領域と隣り合う領域とを含んでおり、
前記領域分割パターン記録部に記録されている前記補正領域分割パターンは、前記撮像画像を分割した場合にできる前記複数の領域の一つに、前記黒い画像部分をその一部に含んだ領域を含んでおり、
前記画像処理部は、前記居住者により前記逆光補正ボタンが押下される度に、露出補正を実行する際に使用する領域分割パターンを変更する構成となっており、前記カメラによる撮像が開始された場合、前記通常領域分割パターンを使用して前記撮像画像を複数の領域に分割するとともに、前記黒い画像部分の領域と隣り合う領域を前記重み値が最も大きい領域として露出補正を実行し、前記居住者により前記逆光補正ボタンが押下された場合、前記補正領域分割パターンを前記領域分割パターン記録部から読み出し、この補正領域分割パターンを使用して前記撮像画像を複数の領域に分割するとともに、前記黒い画像部分をその一部に含んだ領域を前記重み値が最も大きい領域として露出補正を実行する、
インターホン装置。
【請求項2】
前記領域分割パターン記録部には、前記補正領域分割パターンが複数記録されており、
これらの補正領域分割パターンは、前記黒い画像部分をその一部に含んだ領域における黒い画像部分の占める割合においてそれぞれ異なっている、
請求項1記載のインターホン装置。
【請求項3】
前記画像処理部が露出補正を実行する際に使用する領域分割パターンは、前記居住者により前記逆光補正ボタンが押下される度に、前記黒い画像部分をその一部に含んだ領域における黒い画像部分の占める割合が少ない補正領域分割パターンから順番に変更するように構成されており、
最後の順序に設定された前記補正領域分割パターンを使用して露出補正が実行された後、前記居住者により前記逆光補正ボタンが押下された場合には、前記画像処理部は、再び前記通常領域分割パターンを使用して露出補正を実行する、
請求項2記載のインターホン装置。
【請求項4】
前記玄関子機または居室親機は、日付または時間等の文字情報を前記撮像画像に追加する画像追加部を有しており、
前記画像追加部は、前記黒い画像部分に前記文字情報を追加する構成となっている、
請求項2または3記載のインターホン装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−75019(P2012−75019A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−219501(P2010−219501)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000100908)アイホン株式会社 (777)
【Fターム(参考)】