説明

インダクタおよびその製造方法

【課題】インダクタを形成する導体において実質的な直列抵抗成分の増加を防止すると共に、導体間容量の増加を低減することができる。これらのことから、Q値を向上させたインダクタおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】インダクタ10は、平板状の基板とスパイラル形状の導体11とを備えている。導体11が形成された形成面は、基板の主面に対して実質的に平行である。導体11では、形成面に対して水平な方向において等間隔であり、外側に位置する部分の方が内側に位置する部分よりも幅広且つ肉薄であり、形成面に対して垂直な方向においては上面及び下面の少なくとも一方の面が周回毎に相異なる位置に存在している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上にスパイラル形状の導体が形成されてなるインダクタおよび、その製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話およびPDA(携帯情報端末;Personal Digital Assistant)の普及に伴い、無線インターフェースを備える高周波回路を小型化する要求が強まっている。そのため、今まで半導体装置の外、例えばプリント基板に取り付けられていた(つまり、外付け部品であった)インダクタ等の受動素子を、半導体装置内に収納する例が多くなってきた。また、インダクタは、LNA(Low Noise Amplifier)、PA(Power Amplifier)およびRF(Radio Frequency)オシレータ等のRFIC(Radio Frequency Integrated Circuit)設計への応用に必要な部品である。しかし、抵抗素子及び容量素子をチップ内に形成するのは比較的容易であるのに対し、インダクタについては誘導性を生じさせる構造として様々なものがあり、インダクタをチップ内に形成するのは必ずしも容易ではない。
【0003】
以下、従来の技術について図8(a)及び、図8(b)を参照して説明する。図8(a)はインダクタの平面図を示し、図8(b)は、図8(a)のVIIIB−VIIIB'線における断面図を示している。
【0004】
図8(a)に示すように、インダクタ100は、導体101がスパイラル形状となった構造を有する。また、導体101では、外側に位置する一端と内側に位置する他端とはそれぞれ端子部103aおよび端子部103bとなっており、電流Fは端子部103a側から電流Fを流した際には矢印F1,F2,F3およびF4方向に流れて端子部103bから導出されるようになっている。
【0005】
また、図8(b)に示すように、インダクタ(導体101a、101bおよび101c)は基板上に形成された層間絶縁膜104中に設けられており、導体101を幅方向に切断して得られる断面形状は矩形である。
【0006】
一般にインダクタの特性を表す指標として、Q値(Quality Factor)が用いられ、次の(式1)の形に表される。
【0007】
Q=ωL/R …… (式1)
(式1)において、ωは2πf、πは円周率、fは周波数、Lはインダクタンス値、Rは抵抗値である。
【0008】
Q値が大きな値であるほど、インダクタの電気特性が良いとされている。また、Q値が大きいことは回路の低消費電力化に寄与する。
【0009】
スパイラル形状を有するインダクタの直列抵抗成分が、インダクタのQ値の低下の主な原因となっていることは周知である。インダクタの直列抵抗成分を小さくするひとつの方法は幅の広い導体を使用することであるが、導体の幅を広くするとインダクタの面積が増大し、構造に関連する寄生キャパシタンスが増加してしまう。その結果、インダクタの自己共振周波数が減少し、インダクタの有効周波数が制限される。
【0010】
図8(a)に示すインダクタ100は、導体101間の間隔を等しくした状態で、外側に位置する導体101aの幅よりも内側に位置する導体101cの幅を小さくしている。そのため、内側に位置する導体と外側に位置する導体101aとで幅が同じである場合に比べて、内側に位置する導体101cが中心105から遠くなる。その結果、対向した位置にある導体101間では、互いに磁力線の影響が少なく、従って、インダクタンスLが大きくなって、Q値が高くなっている。
【0011】
図9に、一般的なインダクタのQ特性(周波数に対するQ値の変化)を示す。図9に示すように、Q値は周波数が増加するにつれて一旦は上昇するが、高周波ではインダクタと基板との間の容量結合による容量損失のために低下する。この結果として、Q特性は上に凸状の形状を示す。
【0012】
また、(式1)から判るように、Q値を増大させるためには、インダクタの直列抵抗成分を低減させること及び容量損失を抑えることが効果的である。
【特許文献1】特開2002−134319号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、以上に説明した従来の構成において、次のような問題があった。
【0014】
まず、駆動周波数が高くなるにつれて、表皮効果により導体の表面(図8(b)の導体101a、101bおよび101cのように断面が矩形であれば、上面、下面及び両側面)近傍に電流が集中する傾向がある。また、インダクタの通電動作時に磁場が発生するため、スパイラル形状の導体の場合、外側より内側の方が磁束密度が高くなり、導体の平面形状における内部側に電流が集中する傾向がある。導体の平面形状における内部側に部分的に電流集中が生じると、インダクタの実質的な直列抵抗成分が増加するため、インダクタのQ値が低下する。通電動作時に発生する磁場の影響を小さくするためには、インダクタの中心から導体までの距離を離すことが考えられる。その上、インダクタの占有面積を増加させないためには、導体幅を小さくする、又は、導体間隔を狭くするなどの方法がある。しかし、導体幅を小さくすると、インダクタの直列抵抗成分が増加し、その結果、インダクタのQ値は低下する。又、導体間隔を狭くすると、導体間の容量成分が増大し、その結果、高周波領域でのインダクタのQ値は低下してしまう。
【0015】
また、インダクタのQ値を高めるためには、インダクタの導体を厚い膜厚で形成することが考えられる。しかし、従来のインダクタでは、図8(b)に示すように隣り合う導体101aと導体101bとの間および隣り合う導体101bと導体101cとの間で相互に影響を及ぼし合い、導体101a、101bおよび101cの膜厚が厚くなるにつれて容量成分が発生することとなる。その結果、導体間の容量成分が増大して高周波領域でのインダクタのQ値を低下させる原因となる。よって、これらの解決が課題となっている。
【0016】
以上に鑑みて、本発明は、インダクタの導体における実質的な直列抵抗成分と容量成分の増加を防止し、Q値の向上したインダクタとその製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記の目的を達成するため、本発明に係るインダクタは、平板状の基板と、スパイラル形状の導体とを備えている。導体は、基板の主面に対して実質的に平行となるように配置されている。導体では、導体が配置された形成面に対して水平な方向において等間隔であり、外側に位置する部分の方が内側に位置する部分よりも幅広且つ肉薄であり、形成面に対して垂直な方向において上面及び下面の少なくとも一方の面が周回毎に異なる水平面内に位置している。
【0018】
このような構成によると、スパイラル形状の導体では、内側の方が外側よりも導体の幅が小さいとともに分厚いので、互いに隣り合う部分の上面および下面の少なくとも一方の面は相異なる水平面内に存在している。よって、形成面(導体が形成された面)に対して垂直な方向における磁束成分を低減させることができ、この結果、トータルの渦電流損失を低減させることができる。つまり、導体に鎖交する磁束の成分(磁束の垂直成分)を小さくすることでトータルの渦電流損失を低減できるので、実質的なインダクタの直列抵抗成分の増加を抑制できる。また、導体の厚さを一様に大きくしていないため、インダクタの容量成分の増加も抑制でき、容量損失を抑えることができる。
【0019】
また、本発明に係るインダクタでは、インダクタを構成する導体において、内側に位置する導体の最上面が、外側に位置する導体の最上面に対して、垂直方向において同じ位置または下方に位置してもよい。
【0020】
このような構成によると、スパイラル形状の導体において互いに隣り合う導体の距離を大きくすることができるので、インダクタの通電動作時に発生する磁場の影響等を小さくすることができる。と同時に、形成面に対して垂直な磁束成分を低減させることができるので、トータルの渦電流損失を低減させることができる。結果、実質的な直列抵抗成分の増加を抑制することができる。更に、隣り合う導体間の容量成分を小さくすることができるため高周波領域でのインダクタのQ値の低下を抑制することができる。
【0021】
また、本発明に係るインダクタでは、インダクタを構成する導体において、内側に位置する導体の最下面が、外側に位置する導体の最下面に対して、垂直方向において同じ位置または上方に位置してもよい。
【0022】
このような構成によると、スパイラル形状の導体において互いに隣り合う導体の距離を大きくすることができるので、インダクタの通電動作時に発生する磁場の影響等を小さくすることができる。と同時に、形成面に対して垂直な磁束成分を低減させることができるので、トータルの渦電流損失を低減させることができる。結果、実質的な直列抵抗成分の増加を抑制することができる。更に、隣り合う導体間の容量成分を小さくすることができるため高周波領域でのインダクタのQ値の低下を抑制することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係るインダクタとその製造方法によれば、インダクタの通電動作時に発生する磁場からの影響、及び、高周波における表皮効果等によって、インダクタの導体におけるインダクタ内部側端部の表面近傍に電流が集中しても、実質的な直列抵抗成分の増加を抑制することができる。また、導体間容量の増加を低減することができる。これらのことから、Q値を向上させたインダクタを実現することできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下では、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、本発明は、以下に示す実施形態に限定されない。
【0025】
(第1の実施形態)
図1(a)は本発明の第1の実施形態に係るスパイラル形状を有するインダクタ10の平面図を示し、図1(b)は、図1(a)のIB−IB'線における断面図を示している。図1(c)は、図1(a)のIB−IB'線における断面図の別例を示している。
【0026】
図1(a)に示すように、インダクタ10は、基板(不図示)とスパイラル形状を備えた導体11とを有する。また、導体11では、外側に位置する一端と内側に位置する他端とはそれぞれ端子部13aおよび端子部13bとなっており、端子部13a側から電流を流した際には電流が端子部13bから導出されるようになっている。また、図1(b)に示すように、インダクタ10(図1(b)には導体11の一部である導体11a、導体11bおよび導体11cのみを図示)は、基板上に形成された層間絶縁膜14中に設けられており、導体11a、導体11bおよび導体11cを幅方向に切断した断面形状は矩形である。
【0027】
本実施の形態について図1(b)を用いて説明すると、導体11では、周回毎に下面が異なる水平面内に位置している。例えば図1(b)に示す導体11では、その下面は、最も内側に位置する導体11c、中央に位置する導体11bおよび最も外側に位置する導体11aの順に上に位置している。これにより、形成面に対して垂直な磁束成分が低減し、この結果、トータルの渦電流損失を低減させることができる。つまり、本実施の形態における導体11では、導体11に鎖交する磁束の垂直成分を小さくすることができるので、トータルの渦電流損失を低減できる。その結果、インダクタ10の直列抵抗成分を小さくすることができるので、インダクタ10のQ値の低下を防止できる。
【0028】
このような導体11の構造を実現させるために、本実施の形態では、内側に位置する部分を外側に位置する部分よりも分厚くし、且つ、上面を面一としている。なお、図1(c)に示すように、内側に位置する部分が外側に位置する部分よりも分厚く、且つ、下面が面一であってもよい。図1(c)に示す導体であっても図1(b)に示す導体と同じ作用および効果を奏することができるので、スパイラル形状の導体11としては下面および上面のどちらか一方の面が周回毎に異なる水平面内に存在するものを使用すればよい。
【0029】
本実施の形態について図1(a)を用いてさらに説明すると、スパイラル形状の導体11では、形成面に対して水平な方向において等間隔であり、このような導体11では、外側に位置する部分の方が内側に位置する部分よりも幅広である。例えば図1(a)に示す導体11では、最も内側に位置する導体11cと中央に位置する導体11bとの間隔、および、中央に位置する導体11bと最も外側に位置する導体11aとの間隔は互いに同じであり、また、最も内側に位置する導体11c、中央に位置する導体11bおよび最も外側に位置する導体11aの順に幅広である。
【0030】
このような導体11では、至る所において幅が同じである導体に比べて、インダクタ10の中心15と最も内側に位置する導体11cとの間隔を広くすることができる。よって、導体11に鎖交する磁束の垂直成分が導体11に与える影響を小さく抑えることができる。また、導体11では、内側に位置する部分の方が外側に位置する部分よりも幅狭であるが肉厚であるので、導体の幅を狭くしたことに起因するインダクタ10の直列抵抗成分の増加を抑制できる。さらには、導体11では、外側に位置する部分を分厚くしなくてもよいので、隣り合う部分の容量成分の増加を抑制できる。
【0031】
以上説明したように、本実施の形態では、導体11に鎖交する磁束の垂直成分の大きさを小さくすることができるので、トータルの渦電流損失を小さくすることができる。よって、インダクタ10の直列抵抗成分が大きくなることを防止でき、その結果、インダクタ10のQ値の低下を抑制できる。
【0032】
また、本実施の形態における導体11では、内側に位置する部分の方が外側に位置する部分よりも幅狭であるが肉厚である。これにより、インダクタ10の直列抵抗成分の増加を抑制できるのでインダクタ10のQ値の低下をさらに抑制できるとともに、導体11において隣り合う部分の容量成分の増加を抑制できるので高周波領域でのインダクタ10のQ値の低下を抑制できる。
【0033】
(第2の実施形態)
図2(a)は本発明の第2の実施形態に係るスパイラル形状を有するインダクタ20の平面図を示し、図2(b)は図2(a)のIIB−IIB'線における断面を示し、図2(c)は各層におけるスパイラル形状を示す平面図である。また、図3(a)〜(c)は、それぞれ、図2(a)のIIB−IIB'線における断面図の別例を示している。
【0034】
図2(a)に示すように、インダクタ20は、基板(不図示)とスパイラル形状を備えた導体21とを有する。また、導体21では、外側に位置する一端と内側に位置する他端とはそれぞれ端子部23aおよび端子部23bとなっており、端子部23a側から電流を流した際には端子部23bから電流が導出されるようになっている。また、図2(b)に示すように、インダクタ20(図2(b)には、導体21の一部である導体21a、導体21bおよび導体21c)は基板上に形成された層間絶縁膜24中に設けられており、導体21a、導体21bおよび導体21cを幅方向に切断した断面形状は矩形である。
【0035】
本実施の形態について図2(b)を用いて説明すると、導体21では、外側に位置する部分の下面が内側に位置する部分の上面と面一に位置している。例えば、図2(b)に示す導体21では、最も外側に位置する導体21aの下面は、中央に位置する導体21bの上面と面一であり、中央に位置する導体21bの下面は、最も内側に位置する導体21cの上面と面一である。
【0036】
このように本実施の形態における導体21では、上記第1の実施形態における導体11に比べて周回毎の導体間の距離を大きくすることができるので、インダクタの通電動作時に発生する磁場の影響等を小さくすることができる。また、本実施の形態における導体21では、上面および下面が周回毎に異なる水平面内に存在しているので、上記第1の実施形態と同じく形成面に対して垂直な磁束成分を低減させることができる。これらにより、トータルの渦電流損失を低減させることができるので、インダクタ20の直列抵抗成分の増加を抑制できる。更に、導体間の距離を大きくすることで、導体21では、隣り合う部分の間における容量成分を小さくすることができるので、高周波領域でのインダクタ20のQ値の低下を抑制することができる。
【0037】
導体21について詳細に示すと、本実施の形態では、図2(b)に示すように、外側に位置する導体21aが層間絶縁膜24の上層部分に設けられており、中央に位置する導体21bおよび内側に位置する導体21cの順に層間絶縁膜24の下層寄りに設けられている。また、図2(c)に示すように、外側に位置する導体21aの一端には、端子部23aが存在しており、外側に位置する導体21aの他端の下面は、中央に位置する導体21bの一端の上面と電気的に接続している。中央に位置する導体21bの他端の下面は、内側に位置する導体21cの一端の上面と電気的に接続しており、内側に位置する導体21cの他端には、端子部23bが存在している。
【0038】
なお、図3(a)に示すように、外側に位置する導体の上面が内側に位置する導体の下面と面一であってもよい。例えば、図3(a)に示す導体では、最も外側に位置する導体21aの上面は、中央に位置する導体21bの下面と面一であり、中央に位置する導体21bの上面は、最も内側に位置する導体21cの下面と面一である。この場合であっても、図2(b)に示す導体21と略同一の効果を奏することができる。
【0039】
また、図3(b)に示すように、外側に位置する導体の下面が内側に位置する導体の上面よりも上に位置していてもよい。この場合、図2(c)に示すように外側に位置する導体21aの一端には端子部23aが存在しており、外側に位置する導体21aの他端の下面は、中央に位置する導体21bの一端の上面とビア(不図示)内に設けられた導電性材料(不図示)を介して電気的に接続している。中央に位置する導体21bの他端の下面は、内側に位置する導体21cの一端の上面とビア(不図示)内に設けられた導電性材料(不図示)を介して電気的に接続しており、内側に位置する導体21cの他端には、端子部23bが存在している。この場合であっても、図2(b)に示す導体21と略同一の効果を奏することができる。
【0040】
さらに、図3(c)に示すように、外側に位置する導体の上面が内側に位置する導体の下面よりも下に位置していてもよい。この場合、図2(c)に示すように外側に位置する導体21aの一端には端子部23aが存在しており、外側に位置する導体21aの他端の上面は、中央に位置する導体21bの一端の下面とビア(不図示)内に設けられた導電性材料(不図示)を介して電気的に接続している。中央に位置する導体21bの他端の上面は、内側に位置する導体21cの一端の下面とビア(不図示)内に設けられた導電性材料(不図示)を介して電気的に接続しており、内側に位置する導体21cの他端には、端子部23bが存在している。この場合であっても、図2(b)に示す導体21と略同一の効果を奏することができる。
【0041】
図2(a)を用いてさらに本実施の形態の導体21を説明すると、本実施の形態の導体21では、上記第1の実施形態における導体11と同じく、形成面に対して水平な方向において等間隔であり、このような導体21では、外側に位置する部分の方が内側に位置する部分よりも幅広である。よって、導体21では、至る所において幅が同じである導体に比べて、導体21に鎖交する磁束の垂直成分が導体21に与える影響を小さく抑えることができる。
【0042】
また、本実施の形態における導体21では、上記第1の実施形態における導体11と同じく、外側に位置する部分よりも内側に位置する部分の方が幅狭であるが分厚い。これにより、インダクタ20の直列抵抗成分の増加を抑制できるので、インダクタ20のQ値の低下を抑制できる。更に、本実施の形態では、上記第1の実施形態と同じく外側に位置する部分を分厚くしなくてもよいので、導体21において隣り合う導体間の容量成分の増加を抑制でき、その結果、高周波領域でのインダクタ20のQ値の低下を抑制できる。
【0043】
以上説明したように、本実施の形態における導体21は、上記第1の実施形態における導体11が奏する効果だけでなく、周回毎の導体間の距離を大きくすることができるのでインダクタの通電動作時に発生する磁場の影響等を小さくすることができるという新たな効果も奏する。
【0044】
(第3の実施形態)
図4(a)は本発明の第3の実施形態に係るスパイラル形状を有するインダクタ30の平面図を示し、図4(b)は、図4(a)におけるIVB−IVB'線における断面図を示している。図4(c)は、各層におけるスパイラル形状を示す平面図である。
【0045】
図4(a)に示すように、インダクタ30は、基板(不図示)とスパイラル形状を備えた導体31とを有する。また、導体31では、外側に位置する一端と内側に位置する他端はそれぞれ端子部33aおよび端子部33bとなっており、端子部33a側から電流を流した際には電流が端子部33bから導出されるようになっている。また、図4(b)に示すように、インダクタ30(図4(b)には導体31の一部である第1導体部31a、第2導体部31bおよび第3導体部31cのみを図示している)は基板上に形成された層間絶縁膜34中に設けられており、第1導体部31a、第2導体部31bおよび第3導体部31cを幅方向に切断したときの断面形状は矩形である。
【0046】
上記第1の実施形態における導体11と同じく、スパイラル形状の導体31では、形成面に対して水平な方向において等間隔であり、このような導体31では、外側に位置する部分の方が内側に位置する部分に比べて幅広且つ肉薄であり、さらに、外側に位置する部分と内側に位置する部分とでは下面が相異なる平面内に形成されている。しかし、具体的な構成が導体11と導体31とでは相異なる。
【0047】
導体31は、図4(c)に示すように、第1導体部31a、第2導体部31bおよび第3導体部31cを備えている。第1導体部31aは、図4(c)に示すように、スパイラル形状に形成されており、その第1導体部31aでは外側の方が内側よりも幅広であるが厚みは同一である。
【0048】
第2導体部31bは第1導体部31aと同じくスパイラル形状に形成されており、この第2導体部31bでは外側の方が内側よりも幅広である。ここで、第2導体部31bにおいて外側に位置する部分の幅は、第1導体部31aにおいて中央に位置する部分の幅と同じである。
【0049】
第3導体部31cもスパイラル形状に形成されており、その幅は第2導体部31bにおいて内側に位置する部分の幅と同じである。
【0050】
このような導体31では、図4(b)に示すように、最も外側には、第1導体部31aにおいて外側に位置する部分が配置されている。導体31の中央では、第1導体部31aにおいて中央に位置する部分と第2導体部31bにおいて外側に位置する部分とが、ビア又は溝内に設けられた導電性材料32aを介して、互いに電気的に接続されている。よって、導体31では、最も外側に配置された部分の下面は、中央に配置された部分の下面よりも上に配置される。
【0051】
同様に、導体31の最も内側では、第1導体部31aにおいて内側に位置する部分と第2導体部31bにおいて内側に位置する部分とがビア又は溝内に設けられた導電性材料32aを介して、互いに電気的に接続されており、第2導体部31bにおいて内側に位置する部分と第3導体部31cとがビア又は溝内に設けられた導電性材料32bを介して、互いに電気的に接続されている。よって、導体31では、中央に配置された部分の下面は、最も内側に配置された部分の下面よりも上に配置される。
【0052】
なお、実際には第2導体部31b の領域全体にわたってビア又は溝が形成されており、第1導体部31aと第2導体部31bとを電気的に接続している。同様に、第3導体部31cの領域全体にわたってビア又は溝が形成されており、第2導体部31bと第3導体部31cとを電気的に接続している。
【0053】
このように、本実施形態では、ビア又は溝内に設けられた導電性材料を介して複数の配線層を互いに接続している。これにより、本実施形態におけるインダクタは上記第1の実施形態におけるインダクタと同様の断面構造を有し、また、本実施形態におけるインダクタをトランジスタなどの配線と同時に形成することができる。以下では、図5(a)〜(e)および図6(a)〜(d)を用いて本実施形態における多層配線構造の製造方法を示す。
【0054】
まず、不図示であるが、所定のトランジスタ及び下層配線等が形成された半導体基板(図示せず)があり、下層配線が埋め込まれた層間絶縁膜の表面に、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)によって、第1のエッチングストッパー用絶縁膜41aとして膜厚50nmのSiN膜を成膜する。SiNは層間絶縁膜の材料として使用されるSiOに比べて比誘電率が高いため、SiNを用いて第1のエッチングストッパー用絶縁膜41aを形成すると配線間容量が増大する結果となる。よって、SiN膜の膜厚はなるべく薄い方が望ましい。なお、SiOは層間絶縁膜の構成材料なのでエッチングストッパー用絶縁膜の材料として用いることはできない。
【0055】
第1のエッチングストッパー用絶縁膜41aの上面に、膜厚2μmの第1の層間絶縁膜42aを成膜する(図5(a))。
【0056】
第1の層間絶縁膜42aを成膜した後、第1の接続部43aおよび第1のインダクタ用導体44a(上述の第3導体部31c)を第1の層間絶縁膜42aに形成するためのレジストパターン(不図示)を第1の層間絶縁膜42aの上面上に転写する。この時に転写されたレジストパターンでは、配線領域45には円形状のパターン(第1の接続部43aを形成するためのパターン)が形成されており、インダクタ領域46には線状のパターン(第1のインダクタ用導体44aを形成するためのパターン)が形成されている。円形状のパターンの直径を0.5μmとし、線状のパターンの幅を0.5μm〜10μmとした。
【0057】
レジストパターンを第1の層間絶縁膜42aの上面上に転写させた後、レジストマスクをエッチングマスクとして第1の層間絶縁膜42aをエッチングし、第1の接続部43aを形成するための孔143aおよび第1のインダクタ用導体44aを形成するための溝144aを形成する(図5(b))。このとき、インダクタ領域46では、第1の層間絶縁膜42aの膜厚方向全体にわたって上記溝144aが形成されるため、その溝144aの深さは第1の層間絶縁膜42aの厚みとほぼ同一(2μm)となる。また、第1の層間絶縁膜42aをエッチングする際は、第1のエッチングストッパー用絶縁膜41a上でエッチングが停止するような選択エッチングを実施する。エッチングが終了すれば、レジストを除去する。
【0058】
レジストを除去した後、第1の配線47aを配線領域45に形成するためのレジストパターンを第1の層間絶縁膜42aの上面に転写する。このレジストマスクをエッチングマスクとして第1の層間絶縁膜42aをエッチングし、第1の配線47aを形成するための溝147aを形成する(図5(c))。かかる配線領域45における第1の配線47aを形成するための溝147aの深さは1μmである。
【0059】
エッチングが終了してレジストを除去した後、第1の層間絶縁膜42aに形成された第1の接続部43aを形成するための孔143aの底部および第1のインダクタ用導体44aを形成するための溝144aの底部に露出している第1のエッチングストッパー用絶縁膜41aをエッチングによって除去する。その後、第1の接続部43aを形成するための孔143aの内面、第1の配線47aを形成するための溝147aの内面および第1のインダクタ用導体44aを形成するための溝144aの内面に、膜厚20nmの第1のバリア用窒化タンタル(TaN)膜48aおよび層厚200nmの銅(Cu)のシード層(図示せず)をスパッタ法により成膜させる。ここで、第1のバリア用TaN膜48aの材料としては、導電性を有していればよく、TaNの他に、窒化チタン(TiN)または窒化タングステン(WN)等も適用可能である。
【0060】
次に、電解メッキにより、第1の接続部43aを形成するための孔143aの中、第1の配線47aを形成するための溝147aの中および第1のインダクタ用導体44aを形成するための溝144aの中に、Cuを埋込む。この場合のCuの膜厚は約2.6μmである。その後、CMP(Chemical Mechanical Polishing)法によって、第1の接続部43aを形成するための孔143aの内部、第1の配線47aを形成するための溝147aの内部および第1のインダクタ用導体44aを形成するための溝144aの内部以外の部分に付着したCu及びTaNを研磨して除去する。これにより、第1の配線47a、第1の接続部43aおよび第1のインダクタ用導体44aが形成されて、図5(d)に示すような断面構造を呈する配線構造が形成される。なお、無電解メッキ法も同様な配線層形成に適用可能である。
【0061】
その後、プラズマCVDによって、第1の配線47a、第1の接続部43aおよび第1のインダクタ用導体44aが埋め込まれた第1の層間絶縁膜42aの表面に、第2のエッチングストッパー用絶縁膜41bとして膜厚50nmのSiN膜を成膜する。また、第2のエッチングストッパー用絶縁膜41b上に、膜厚2μmの第2の層間絶縁膜42bを成膜する(図5(e))。
【0062】
第2の層間絶縁膜42bを成膜した後、第2の接続部43bおよび第2のインダクタ用導体44b(上述の第2導体部31b)を第2の層間絶縁膜42bに形成するためのレジストパターンを第2の層間絶縁膜42bの上面に転写する。この時に転写されたレジストパターンでは、配線領域45には円形状のパターン(第2の接続部43bを形成するためのパターン)が形成され、インダクタ領域46には線状のパターン(第2のインダクタ用導体44bを形成するためのパターン)が形成されている。また、円形状のパターンの直径を0.5μmとし、線状のパターンの幅を0.5μm〜10μmとした。また、線状パターンとしては幅が相異なる2つのパターンが形成されている。レジストパターンにおける幅狭パターンおよび幅広パターンの位置については、幅狭パターンは第1のインダクタ用導体44aの直上に配置されていることが好ましく、幅広パターンは幅狭パターンよりも外側(周縁寄り)に配置されている。
【0063】
レジストマスクを第2の層間絶縁膜42bの上面に転写させた後、レジストマスクをエッチングマスクとして第2の層間絶縁膜42bをエッチングし、第2の接続部43bを形成するための孔143bおよび第2のインダクタ用導体44bを形成するための溝144b,244bを第2の層間絶縁膜42bに形成する(図6(a))。このとき、インダクタ領域46では、第2の層間絶縁膜42bの膜厚方向全体にわたって上記溝144b,244bが形成されるため、その溝144b,244bの深さは第2の層間絶縁膜42bの厚みとほぼ同じ(2μm)である。また、第2の層間絶縁膜42bをエッチングする際は、第2のエッチングストッパー用絶縁膜41b上でエッチングが停止するような選択エッチングを実施する。このエッチングにより、第2の層間絶縁膜42bには、第2のインダクタ用導体44bを形成するための2つの溝144b,244bが形成される。2つの溝144b,244bはその幅が相異なり、幅狭な溝144bは第1のインダクタ用導体44aの直上に形成され、幅広な溝244bは幅狭な溝144bよりも外側に形成される。
【0064】
エッチングが終了してレジストを除去した後に、第2の配線47bを配線領域45に形成するためのレジストパターンを第2の層間絶縁膜42bの上面に転写する。その後、レジストマスクをエッチングマスクとして第2の層間絶縁膜42bをエッチングし、第2の配線47bを形成するための溝147bを形成する(図6(b))。かかる配線領域45における第2の配線47bを形成するための溝147bの深さは1μmである。エッチングが終了してレジストを除去した後、第2の層間絶縁膜42bに形成された第2の接続部43bを形成するための孔143bの底部および第2のインダクタ用導体44bを形成するための2つの溝144b,244bの底部に露出している第2のエッチングストッパー用絶縁膜41bをエッチングによって除去する。
【0065】
その後、スパッタ法を用いて、第2の接続部43bを形成するための孔143bの内面、第2の配線47bを形成するための溝147bの内面および第2のインダクタ用導体44bを形成するための2つの溝144b,244bの内面に第2のバリア用TaN膜48bを20nm成膜し、その上にCuのシード層(図示せず)を200nm成膜する。なお、第2のバリア用TaN膜48bも第1のバリア用TaN膜48aと同様、導電性を有する材料からなればよい。
【0066】
さらに、電解メッキにより、第2の接続部43bを形成するための孔143bの中、第2の配線47bを形成するための溝147bの中および第2のインダクタ用導体44bを形成するための2つの溝144b,244bの中に、Cuを埋込む。この場合のCuの膜厚は約2.6μmである。その後、CMP法によって、第2の接続部43bを形成するための孔143bの内部、第2の配線47bを形成するための溝147bの内部および第2のインダクタ用導体44bを形成するための2つの溝144b,244bの内部以外の部分に付着したCu及びTaNを研磨して除去する。これにより、第2の配線47b、第2の接続部43bおよび第2のインダクタ用導体44bが形成されて、図6(c)に示すような断面構造を呈する多層配線構造が形成される。
【0067】
その後、プラズマCVDによって、第2の配線47b、第2の接続部43bおよび第2のインダクタ用導体44bが埋め込まれた第2の層間絶縁膜42bの表面に、第3のエッチングストッパー用絶縁膜41cとして膜厚50nmのSiN膜を成膜する。その後、第3のエッチングストッパー用絶縁膜41c上に、膜厚2μmの第3の層間絶縁膜42cを成膜する。第3の層間絶縁膜42cを成膜した後、第3の接続部43cおよび第3のインダクタ用導体44c(上述の第1導体部31a)を形成するためのレジストパターンを第3の層間絶縁膜42cの上面に転写する。この時に転写されるレジストパターンは、配線領域45には円形状のパターン(第3の接続部43cを形成するためのパターン)が形成されており、インダクタ領域46には線状のパターン(第3のインダクタ用導体44cを形成するためのパターン)が形成されている。なお、円形状のパターンの直径を0.5μmとし、線状のパターンの幅を0.5μm〜10μmとした。また、線状パターンとしては幅が相異なる3つのパターンが形成されている。レジストパターンにおける最も幅狭なパターン、2番目に幅狭なパターン、および3番目に幅狭なパターンの位置については、最も幅狭なパターンは幅狭な第2のインダクタ用導体44bの直上に配置されていることが好ましく、2番目に幅狭なパターンは幅広な第2のインダクタ用導体44bの直上に配置されていることが好ましく、3番目に幅狭なパターンは2番目に幅狭なパターンよりも外側に配置されている。
【0068】
このレジストマスクをエッチングマスクとして第3の層間絶縁膜42cをエッチングし、第3の接続部43cを形成するための孔(不図示)および第3のインダクタ用導体44cを形成するための溝(不図示)を第3の層間絶縁膜42cに形成する。このとき、インダクタ領域46では第3の層間絶縁膜42cの膜厚方向全体にわたって上記溝が形成されるため、この溝全体の深さは第3の層間絶縁膜42cとほぼ同一の膜厚(2μm)となる。また、第3の層間絶縁膜42cをエッチングする際は、第3のエッチングストッパー用絶縁膜41c上でエッチングが停止するような選択エッチングを実施する。このエッチングにより、第3の層間絶縁膜42cには、第3のインダクタ用導体44cを形成するための3つの溝が形成される。3つの溝はその幅が互いに異なり、最も幅狭な溝は幅狭な第2のインダクタ用導体44bの直上に形成され、2番目に幅狭な溝は幅広な第2のインダクタ用導体44bの直上に形成され、3番目に幅狭な溝は2番目に幅狭な溝よりも外側に形成される。
【0069】
エッチングを行った後レジストを除去し、第3の配線47cを配線領域45に形成するためのレジストパターンを第3の層間絶縁膜42cの上面上に転写する。このレジストマスクをエッチングマスクとして第3の層間絶縁膜42cをエッチングし、第3の配線47cを形成するための溝(不図示)を形成する。かかる配線領域45における第3の配線47cを形成するための溝の深さは1μmである。エッチングが終了してレジストを除去した後、第3の層間絶縁膜42cに形成された第3の接続部43cを形成するための孔の底部および第3のインダクタ用導体44cを形成するための溝の底部に露出している第3のエッチングストッパー用絶縁膜41cをエッチングによって除去する。
【0070】
その後、スパッタ法を用いて、第3の接続部43cを形成するための孔の内面、第3の配線47cを形成するための溝の内面および第3のインダクタ用導体44cを形成するための溝の内面に第3のバリア用TaN膜48cを20nm成膜し、その上にCuのシード層(図示せず)を200nm成膜する。なお、第3のバリア用TaN膜48cも第2のバリア用TaN膜48bと同様、導電性を有する材料からなればよい。
【0071】
さらに、電解メッキにより第3の接続部43cを形成するための孔の中、第3の配線47cを形成するための溝の中および第3のインダクタ用導体44cを形成するための溝の中にCuを埋込む。この場合のCuの膜厚は約2.6μmである。その後、CMP法によって第3の接続部43cを形成するための孔の内部、第3の配線47cを形成するための溝の内部および第3のインダクタ用導体44cを形成するための溝の内部以外の部分に付着したCu及びTaNを研磨して除去する。これにより、第3の配線47c、第3の接続部43cおよび第3のインダクタ用導体44cが形成されて、図6(d)に示すような断面構造を呈する多層配線構造が完成する。
【0072】
このように、本実施の形態では、導体31においては周回毎に下面の位置が異なるので、上記第1の実施形態と同じく形成面に対して垂直な磁束成分を低減させることができる。よって、トータルの渦電流損失を低減させることができるので、インダクタ30の実質的な直列抵抗成分の増加を抑制できる。また、導体31において隣り合う部分の容量成分の増加を抑制できるので、高周波領域でのインダクタ30のQ値の低下を抑制できる。
【0073】
なお、図1(c)に示すように、導体31においては周回毎に上面の位置が異なっても良い。このような場合であっても、本実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0074】
(第4の実施形態)
図7(a)は本発明の第4の実施形態に係るスパイラル形状を有するインダクタ50の平面図であり、図7(b)は図7(a)のVIIB−VIIB'における断面図である。図7(c)は図7(a)のVIIC−VIIC'における断面図である。図7(d)は、各層におけるスパイラル形状を示す平面図である。
【0075】
図7(a)に示すように、インダクタ50は、基板(不図示)とスパイラル形状を備えた導体51とを有する。また、導体51では、外側に位置する一端と内側に位置する他端はそれぞれ端子部53aおよび端子部53bとなっており、端子部53a側から電流を流した際には電流が端子部53bから導出されるようになっている。また、図7(b)に示すように、インダクタ50(図7(b)には導体51の一部である第1導体部51a、第2導体部51b、第3導体部51c、第4導体部51d、第5導体部51eおよび第6導体部51fのみを図示している)は基板上に形成された層間絶縁膜54中に設けられており、第1導体部51aなどを幅方向に切断したときの断面形状は矩形である。
【0076】
上記第2の実施形態における導体21と同じく、スパイラル形状の導体51では形成面に対して水平な方向において等間隔である。このような導体51では、外側に位置する部分の方が内側に位置する部分に比べて幅広且つ肉薄であり、さらに、外側に位置する部分と内側に位置する部分とでは上面および下面が相異なる平面内に形成されている。しかし、具体的な構成が導体21と導体51とでは相異なる。
【0077】
導体51は、各々がスパイラル形状に形成された第1導体部51a、第2導体部51b、第3導体部51c、第4導体部51d、第5導体部51eおよび第6導体部51fを有している。これらの幅について示すと、第1導体部51aが最も幅広であり、第2導体部51bおよび第3導体部51cは互いに同一であり、第4導体部51d、第5導体部51eおよび第6導体部51fは互いに同一であり最も幅狭である。
【0078】
層間絶縁膜54では、第1導体部51a、第2導体部51b、第3導体部51c、第4導体部51d、第5導体部51eおよび第6導体部51fの順に下に配置されており、第1導体部51aが導体51における最も外側に位置しており、第2導体部51bおよび第3導体部51cが導体51における中央に位置しており、第4導体部51d、第5導体部51eおよび第6導体部51fが導体51における最も内側に位置している。
【0079】
具体的には、図7(a)に示すように、第1導体部51aの一端には、端子部53aが存在している。第1導体部51aの他端は、図7(c)に示すように、ビアまたは溝内に設けられた導電性材料52aを介して、第2導体部51bの一端と電気的に接続している。第2導体部51bと第3導体部51cとは、図7(b)および(c)に示すように、多数のビアまたは溝内に設けられた導電性材料52bを介して互いに接続されており、実際には第3導体部51cの領域全体に亘ってビアまたは溝が形成されている。
【0080】
第3導体部51cと第4導体部51dとは、図7(c)に示すように、ビア又は溝内に設けられた導電性材料52cを介して、一端同士が互いに接続されている。第4導体部51dと第5導体部51eとは、図7(b)および(c)に示すように多数のビア又は溝内に設けられた導電性材料52dを介して互いに接続されており、実際には第5導体部51eの領域全体にわたってビア又は溝が形成されている。第5導体部51eと第6導体部51fとは、図7(b)および(c)に示すように多数のビア又は溝内に設けられた導電性材料52eを介して互いに接続されており、実際には第6導体部51fの領域全体にわたってビア又は溝が形成されている。
【0081】
このように、本実施の形態における導体51では、最も外側に位置する第1導体部51aの下面は、中央に位置する第2導体部51bの上面よりも上に位置しており、中央に位置する第3導体部51cの下面は、最も内側に位置する第4導体部51dなどの上面よりも上に位置している。よって、本実施の形態は、上記第2の実施形態にかかるインダクタと同様の断面構造を有しており、上記第2の実施形態と同一の効果を奏する。言い換えると、本実施の形態では、周回毎の導体の距離を大きくすることができるのでインダクタの通電動作時に発生する磁場の影響等を小さくすることができる。また、本実施の形態における導体51では、上面および下面が周回毎に異なる水平面内に存在しているので、上記第2の実施形態と同じく形成面に対して垂直な磁束成分を低減させることができる。これらにより、トータルの渦電流損失を低減させることができるので、インダクタ50の直列抵抗成分の増加を抑制できる。更に、上記第2の実施形態と同じく、導体51において隣り合う導体間での容量成分を小さくすることができるので、高周波領域でのインダクタ50のQ値の低下を抑制することができる。
【0082】
また、本実施の形態における多層配線構造の製造方法については、第3の実施形態における多層配線構造の製造方法と同じ方法を用いることができる。
【0083】
なお、第1〜4の実施形態においては、四角形のスパイラル形状を有するインダクタで説明したが、四角形に限定されず三角形、五角形以上の多角形、または、円形であってもよい。
【0084】
また、第3および第4の実施形態においては、製造方法としてデュアルダマシン法を用いたが、デュアルダマシン法に限定されるものではなく、他の形成方法でも良い。
【0085】
さらに、配線層の数またはスパイラルのターン数が実施形態における記載と異なっていても良い。また、導体に用いる導電性材料としてはAl等を用いることもでき、また、導体部を互いに接続する際にはW等の他の導電性材料を用いても良い。
【0086】
また、第1〜4の実施形態においては、本願の冒頭の特許請求の趣旨及び範囲に含まれる変更を加えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0087】
以上説明したように、本発明のインダクタではQ値が向上しており、高周波用集積回路の半導体装置に内蔵されたインダクタ、特に、高周波動作の性能向上が要求されるインダクタ等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】(a)は第1の実施形態に係るインダクタの平面図であり、(b)は第1の実施形態に係るインダクタの断面図であり、(c)は第1の実施形態に係る別のインダクタの断面図である。
【図2】(a)は第2の実施形態に係るインダクタの平面図であり、(b)は第2の実施形態に係るインダクタの断面図であり、(c)は第2の実施形態に係るインダクタの各層のスパイラル形状を示す平面図である。
【図3】(a)は第2の実施形態に係る別のインダクタの断面図であり、(b)は第2の実施形態に係るまた別のインダクタの断面図であり、(c)は第2の実施形態に係るさらに別のインダクタの断面図である。
【図4】(a)は第3の実施形態に係るインダクタの平面図であり、(b)は第3の実施形態に係るインダクタの断面図であり、(c)は第3の実施形態に係るインダクタの各層のスパイラル形状を示す平面図である。
【図5】(a)〜(e)は第3の実施形態に係るインダクタの製造方法の各工程を示す断面図である。
【図6】(a)〜(d)は第3の実施形態に係るインダクタの製造方法の各工程を示す断面図である。
【図7】(a)は第4の実施形態に係るインダクタの平面図であり、(b)は第4の実施形態に係るインダクタの断面図であり、(c)は第4の実施形態に係るインダクタの別の断面図であり、(d)は第4の実施形態に係るインダクタの各層のスパイラル形状を示す平面図である。
【図8】(a)は従来のインダクタの平面図であり、(b)は従来のインダクタの断面図である。
【図9】インダクタのQ値と周波数との相関図である。
【符号の説明】
【0089】
10,20,30,50,100 インダクタ
11,21,31,51,101 導体
32a,32b,52a,52b,52c,52d,52e ビア又は溝内の導電性材料
13a,13b,23a,23b,33a,33b,53a,53b 端子部
103a,103b 端子部
14,24,34,54,104 層間絶縁膜
41a 第1のエッチングストッパー用絶縁膜
41b 第2のエッチングストッパー用絶縁膜
41c 第3のエッチングストッパー用絶縁膜
42a 第1の層間絶縁膜
42b 第2の層間絶縁膜
42c 第3の層間絶縁膜
43a 第1の接続部
43b 第2の接続部
43c 第3の接続部
44a 第1のインダクタ用導体
44b 第2のインダクタ用導体
44c 第3のインダクタ用導体
45 配線領域
46 インダクタ領域
47a 第1の配線
47b 第2の配線
47c 第3の配線
48a 第1のバリア用TaN膜
48b 第2のバリア用TaN膜
48c 第3のバリア用TaN膜
143a,143b,144a,144b,147a,147b,244b 溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状の基板とスパイラル形状の導体とを備えたインダクタであって、
前記導体は、前記基板の主面に対して実質的に平行となるように配置されており、
前記導体では、
前記導体が配置された形成面に対して水平な方向において、等間隔であり、
外側に位置する部分の方が内側に位置する部分よりも幅広且つ肉薄であり、
前記形成面に対して垂直な方向において、上面及び下面の少なくとも一方の面が周回毎に異なる水平面内に位置していることを特徴とするインダクタ。
【請求項2】
前記インダクタを構成する前記導体において、内側に位置する前記導体の最上面が、外側に位置する前記導体の最上面に対して、垂直方向において同じ位置または下方に位置していることを特徴とする請求項1に記載のインダクタ。
【請求項3】
前記インダクタを構成する前記導体において、内側に位置する前記導体の最下面が、外側に位置する前記導体の最下面に対して、垂直方向において同じ位置または上方に位置していることを特徴とする請求項1に記載のインダクタ。
【請求項4】
前記基板の前記主面上には、複数の配線層が絶縁層を挟んで積層されており、
互いに対面する少なくとも2つの前記配線層にそれぞれ設けられた導体部が前記絶縁層に形成されたビアまたは溝内に設けられた導電性材料を介して互いに接続されていることを特徴とする請求項1から3の何れか一つに記載のインダクタ。
【請求項5】
平板状の基板とスパイラル形状の導体とを有するインダクタの製造方法であって、
前記基板上に設けられた第1の層間絶縁膜を貫通する第1の溝を前記第1の層間絶縁膜に形成し、前記第1の溝内に前記導体の第1の部分を形成する工程と、
エッチングストッパー用絶縁層を挟むようにして、前記第1の層間絶縁膜の上面および下面のうちの一方の面上に第2の層間絶縁膜を形成する工程と、
前記第2の層間絶縁膜を貫通する第2および第3の溝を前記第2の層間絶縁膜にそれぞれ形成し、前記第2および前記第3の溝内に前記導体の第2および第3の部分を形成する工程とを備え、
幅が前記第1の溝の幅と同一となるように、且つ、前記第1の層間絶縁膜の前記一方の面における前記導体の前記第1の部分の表面に達するように、前記第2の溝を形成し、
前記第2の溝よりも幅広となるように、且つ、前記第2の溝よりも前記第1の層間絶縁膜の前記一方の面の周縁寄りに配置されるように、前記第3の溝を形成することを特徴とするインダクタの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−272360(P2009−272360A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−119507(P2008−119507)
【出願日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】