説明

インダクタ内蔵プリント配線板の製造方法及びインダクタ内蔵プリント配線板

【課題】インダクタ配線層を厚くしても層間配線の抵抗を低減できるインダクタ内蔵プリント配線板の製造方法を提供する。
【解決手段】インダクタ内蔵プリント配線板1の製造方法は、銅配線層32を絶縁層31に形成する工程を有するインダクタ用下層基材4を作製する工程と、磁性体層41の上面に銅配線層42を形成する工程と、磁性体層41の下面に接着層43を形成する工程と、磁性体層41と接着層43とを貫通するビアホール45を形成する工程と、銅配線層42に電気的に接続された層間配線44をビアホール45に形成する工程とを有するインダクタ用上層基材5を作製する工程と、基材4と基材5とを位置合わせ、積層し、大気圧よりも低い気圧中で押圧することにより、層間配線44と銅配線層32とを接続しつつ、銅配線32、銅配線層42および層間配線44によりインダクタを形成する積層工程とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の配線層が積層された多層構造を有するインダクタ内蔵プリント配線板の製造方法及びインダクタ内蔵プリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピュータ、携帯用情報機器、電子交換機等の電子機器は小型化が求められており、それに用いられる電子部品にも、小型、薄型軽量化及び低コスト化の要求が強まっている。しかし、電力を供給するための電源回路においては要求特性や発熱の問題から小型化、薄型化が遅れている。その理由として、ICに外付けされる平滑用のチョークコイルや平滑コンデンサが比較的大きいことが挙げられている。
【0003】
特許文献1には、DC−DCコンバータモジュールにソレノイドインダクタを内蔵したプリント基板が開示されている。具体的には、スルーホールが形成されたプリント基板の回路配線を使用してソレノイドインダクタが形成されている。そして、ソレノイドインダクタの内部に磁性体を内包することにより、平滑化に必要なインダクタンス値を得ている。
【0004】
また、特許文献2には、トロイダル形状のインダクタを内包させた配線回路板が開示されている。この配線回路板は、インダクタ配線層を含む複数の配線層を備えている。複数の配線層は、ビルドアップ法により積層されている。この配線回路板では、メッキ法によりビアホールに埋設されたフィルドビア(層間配線)により配線層と配線層との間を電気的に接続している。
【特許文献1】特開2005−124271号公報
【特許文献2】特開2004−193319号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電源回路に使用するコイルには、高いインダクタンス値と低い直流抵抗値が要求される。ここで、直流抵抗を下げるために特許文献1及び2の技術において、インダクタ配線層を厚くした場合、それを埋め込む絶縁層を厚くしなければならず、ビアホールの直径を大きくしなければならない。これにより、フィルドビアと配線層との間の界面が大きくなるので、界面に形成されるボイドが増加する。この結果、フィルドビアと配線層との間の界面での抵抗が大きくなるといった課題がある。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するために創案されたものであり、インダクタ配線層を厚くしても層間配線の抵抗を低減できるインダクタ内蔵プリント配線板の製造方法及びインダクタ内蔵プリント配線板を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、第1配線形成層の一方の面に第1配線層を形成する工程を有する第1基材を作製する第1基材作製工程と、第2配線形成層の一方の面に第2配線層を形成する工程と、前記第2配線形成層の他方の面に接着層を形成する工程と、前記第2配線形成層と前記接着層とを貫通するビアホールを形成する工程と、前記第2配線層に接続された層間配線を前記ビアホールに形成する工程とを有する第2基材を作製する第2基材作製工程と、前記第1基材と前記第2基材とを位置合わせ、積層し、大気圧よりも低い気圧中で押圧することにより、前記層間配線と前記第1配線層とを電気的に接続しつつ、第1配線層、第2配線層及び層間配線によりインダクタを形成する積層工程とを備えたことを特徴とするインダクタ内蔵プリント配線板の製造方法である。
【0008】
請求項2に係る発明は、真空印刷法で、前記ビアホールに金属粒子を含む導電性ペーストを充填することにより、前記層間配線を形成する工程を有することを特徴とする請求項1に記載のインダクタ内蔵プリント配線板の製造方法である。
【0009】
請求項3に係る発明は、前記第2基材作製工程は、 前記ビアホールと外部とを貫通する貫通穴を前記第2配線層に形成する工程と、前記貫通穴が形成された状態で、前記ビアホール側から導電性ペーストを充填する工程とを含むことを特徴とする請求項2に記載のインダクタ内蔵プリント配線板の製造方法である。
【0010】
請求項4に係る発明は、前記積層工程は、加熱することによって、前記層間配線の導電性ペーストに含まれる金属粒子と前記第1配線層とを合金化する工程を含むことを特徴とする請求項2〜請求項3のいずれか1項に記載のインダクタ内蔵プリント配線板の製造方法である。
【0011】
請求項5に係る発明は、第3配線形成層に第3配線層が形成された1又は複数の第3基材を作製する第3基材作製工程を備え、前記積層工程では、前記第1基材と、前記第2基材と、前記1又は複数の第3基材とを一括して積層することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のインダクタ内蔵プリント配線板の製造方法である。
【0012】
請求項6に係る発明は、第1配線形成層の一方の面に形成された第1配線層を有する第1基材と、第2配線形成層の一方の面に形成された第2配線層と、前記第2配線形成層の他方の面に形成され前記第1配線層よりも厚い接着層と、前記第2配線形成層と前記接着層とを貫通するビアホールに埋設され、前記第1配線層と前記第2配線層とを電気的に接続する層間配線とを有する第2基材とを備え、前記第1基材と前記第2基材は、大気圧よりも低い気圧中で押圧することにより積層され第1配線層、第2配線層及び層間配線によりインダクタを形成したことを特徴とするインダクタ内蔵プリント配線板である。
【0013】
請求項7に係る発明は、前記第1配線形成層、又は第2配線形成層、又は接着層は、磁性体を含むことを特徴とする請求項6に記載のインダクタ内蔵プリント配線板である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、大気圧よりも低い気圧中で、第1基材と第2基材とを積層するので、層間配線と配線層との間にボイドが形成されることを抑制できる。これにより、層間配線の抵抗を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(第1実施形態)
以下、図面を参照して、本発明を電源回路等に適用されるトロイダル型のインダクタ内蔵プリント配線板に適用した第1実施形態について説明する。図1は、第1実施形態によるインダクタ内蔵プリント配線板の断面図である。以下の説明において、図1の矢印で示す上下を上下方向とする。
【0016】
図1に示すように、第1実施形態によるインダクタ内蔵プリント配線板1は、第1多層基板用基材2と、第2多層基板用基材3と、インダクタ用下層基材4と、インダクタ用上層基材5とを備えている。また、インダクタ内蔵プリント配線板1は、インダクタ用下層基材4とインダクタ用上層基材5とにわたって形成されたトロイダル型のインダクタ6を有する。尚、第1多層基板用基材2及び第2多層基板用基材3が、請求項に記載の第3基材に相当する。インダクタ用下層基材4が、請求項に記載の第1基材に相当する。インダクタ用上層基材5が、請求項に記載の第2基材に相当する。
【0017】
第1多層基板用基材2は、絶縁層11と、銅配線層12とを備えている。絶縁層11が、請求項に記載の第3配線形成層に相当する。銅配線層12が、請求項に記載の第3配線層に相当する。
【0018】
絶縁層11は、エポキシ系樹脂をガラス布に含浸させたガラスエポキシからなる。絶縁層11は、約25μmの厚みを有する。
【0019】
銅配線層12は、絶縁層11の上面に形成されている。銅配線層12は、所望の形状にパターニングされている。銅配線層12は、約5μmの厚みを有する。
【0020】
第2多層基板用基材3は、絶縁層21と、銅配線層22と、接着層23と、層間配線24とを備えている。絶縁層21と接着層23には、両層を貫通するビアホール25が形成されている。絶縁層21が、請求項に記載の第3配線形成層に相当する。銅配線層22が、請求項に記載の第3配線層に相当する。
【0021】
絶縁層21は、エポキシ系樹脂をガラス布に含浸させたガラスエポキシからなる。絶縁層21は、約25μmの厚みを有する。
【0022】
銅配線層22は、絶縁層21の上面に形成されている。銅配線層22は、所望の形状にパターニングされている。銅配線層22は、約5μmの厚みを有する。
【0023】
接着層23は、絶縁層21の下面に形成されている。接着層23は、銅配線層12を覆いつつ、絶縁層11に接着されている。接着層23は、熱硬化性エポキシを主成分とする接着剤からなる。
【0024】
層間配線24は、ビアホール25に充填された導電性ペーストからなる。導電性ペーストは、電気抵抗の小さい金属粒子であるニッケル(Ni)と、低融点金属粒子である錫(Sn)と、エポキシ樹脂を主成分とするバインダとを含む。層間配線24は、第2多層基板用基材3の銅配線層22と第1多層基板用基材2の銅配線層12とを電気的に接続する。
【0025】
インダクタ用下層基材4は、絶縁層31と、銅配線層32と、接着層33と、層間配線34とを備えている。絶縁層31と接着層33には、両層31、33を貫通するビアホール35が形成されている。尚、絶縁層31が、請求項に記載の第1配線形成層に相当する。銅配線層32が、請求項に記載の第1配線層に相当する。
【0026】
絶縁層31は、エポキシ系樹脂をガラス布に含浸させたガラスエポキシからなる。絶縁層31は、磁性体を含む。絶縁層31は、約25μmの厚みを有する。
【0027】
銅配線層32は、絶縁層31の上面に形成されている。銅配線層32は、約100μmの厚みを有する。即ち、銅配線層32は、インダクタ6の抵抗を低減するために、銅配線層12、22よりも厚く形成されている。銅配線層32は、所望の形状にパターニングされている。銅配線層32は、インダクタ6の一部を構成するインダクタ下層配線層32aを含む。インダクタ下層配線層32aのL/S(ライン アンド スペース)は、40μm/20μmである。銅配線層32の下部は、シード層32bを含む。シード層32bは、クロム、ニッケル、銅、チタン、タングステン等から選択された金属単体または合金の薄膜からなる。尚、シード層32bを構成する金属の薄膜は、1層でもよいが、2層以上が好ましい。
【0028】
接着層33は、絶縁層31の下面に形成されている。接着層33は、銅配線層22を覆いつつ、絶縁層21に接着されている。接着層33は、熱硬化性エポキシを主成分とする接着剤からなる。
【0029】
層間配線34は、ビアホール35に充填された導電性ペーストからなる。導電性ペーストは、電気抵抗の小さい金属粒子であるニッケル(Ni)と、低融点金属粒子である錫(Sn)と、エポキシ樹脂を主成分とするバインダとを含む。層間配線34は、インダクタ用下層基材4の銅配線層32と第2多層基板用基材3の銅配線層22とを電気的に接続する。
【0030】
インダクタ用上層基材5は、磁性体層41と、銅配線層42と、接着層43と、層間配線44とを備えている。磁性体層41と接着層43には、両層41、43を貫通するビアホール45が形成されている。尚、磁性体層41が、請求項に記載の第2配線形成層に相当する。銅配線層42が、請求項に記載の第2配線層に相当する。接着層43が、請求項に記載の接着層に相当する。層間配線44が、請求項に記載の層間配線に相当する。ビアホール45が、請求項に記載のビアホールに相当する。
【0031】
磁性体層41は、磁性体であるNiZnフェライトを含む薄板からなる。
【0032】
銅配線層42は、磁性体層41の一方の面(以下、上面)に形成されている。銅配線層42は、約100μmの厚みを有する。銅配線層42は、所望の形状にパターニングされている。銅配線層42は、インダクタ6の一部を構成するインダクタ上層配線層42aを含む。銅配線層42の下部は、シード層42bを含む。シード層42bは、クロム、ニッケル、銅、チタン、タングステン等から選択された金属単体または合金の薄膜からなる。銅配線層42には、外部からビアホール45まで貫通した貫通穴42cが形成されている。
【0033】
接着層43は、磁性体層41の他方の面(以下、下面)に形成されている。接着層43は、銅配線層32を覆いつつ、絶縁層31に接着されている。接着層43は、磁性体を含む熱硬化性エポキシを主成分とする接着剤からなる。
【0034】
層間配線44は、ビアホール45に埋設された導電性ペーストからなる。層間配線44は、インダクタ用上層基材5の銅配線層42とインダクタ用下層基材4の銅配線層32とを電気的に接続する。ここで、層間配線44の一部は、銅配線層42のインダクタ上層配線層42aと銅配線層32のインダクタ下層配線層32aとを一巻毎に電気的に接続する。インダクタ下層配線層32aと、インダクタ上層配線層42aと、層間配線44とによってトロイダル型のインダクタ6が形成されている。
【0035】
次に、図面を参照して、上述した第1実施形態によるインダクタ内蔵プリント配線板1の製造方法について説明する。図2〜図3は、第1多層基板用基材の製造工程を説明するための図である。図4〜図7は、第2多層基板用基材の製造工程を説明するための図である。図8〜図13は、インダクタ用下層基材の製造工程を説明するための図である。図14〜図19は、インダクタ用上層基材の製造工程を説明するための図である。図20は、基材を積層する積層工程を説明するための図である。
【0036】
最初に、第1多層基板用基材2を作製する工程を説明する。
【0037】
まず、図2に示すように、銅箔12Aが絶縁層11に張り合わされた片面銅張積層板(以下、片面CCLという)61を用意する。フォトリソグラフィー技術により、片面CCL61の銅箔12A上にレジスト膜62を形成する。
【0038】
次に、図3に示すように、銅箔12Aをパターニングして、銅配線層12を形成する。この後、レジスト膜62を除去する。これにより、第1多層基板用基材2が完成する。
【0039】
次に、第2多層基板用基材3を作製する工程を説明する。
【0040】
まず、図4に示すように、片面CCLを用いた第1多層基板用基材2と同様の製造工程によって、絶縁層21上にパターニングされた銅配線層22を形成する。
【0041】
次に、図5に示すように、絶縁層21の下面に接着層23を80℃〜150℃の温度で5秒〜60秒加熱して仮貼りする。
【0042】
次に、図6に示すように、レーザー加工により、絶縁層21及び接着層23の所定の位置にビアホール25を形成する。レーザー加工には、UV−YAGレーザーまたはエキシマレーザー等のレーザーを用いることができる。この後、プラズマ処理によってビアホール25内のスミアを除去する。
【0043】
次に、図7に示すように、真空印刷法によって導電性ペーストをビアホール25の内部に充填することにより層間配線24を形成する。これにより、ビアホール25と銅配線層22との間の界面にボイドの発生を抑えることができ層間配線24の抵抗を低減した第2多層基板用基材3が完成する。
【0044】
次に、インダクタ用下層基材4を作製する工程を説明する。
【0045】
まず、図8に示すように、0.1μm〜1μmの厚みを有するシード層32bが上面の全体に形成された絶縁層31を用意する。フォトリソグラフィー技術により、シード層32b上にメッキ用レジスト膜64を形成する。
【0046】
次に、図9に示すように、シード層32b上に約100μmの厚みを有する銅をメッキする。これにより、インダクタ6の一部を構成するインダクタ下層配線層32aを含む銅配線層32が、絶縁層31の上面に形成される。
【0047】
次に、図10に示すように、メッキ用レジスト膜64を剥離する。その後、露出しているシード層32bをエッチングする。
【0048】
次に、図11に示すように、絶縁層31の下面に接着層33を80℃〜150℃の温度で5秒〜60秒加熱して仮貼りする。
【0049】
次に、図12に示すように、レーザー加工によって、絶縁層31及び接着層33の所定の位置に、両層31、33を貫通して、銅配線層32まで達するビアホール35を形成する。この後、プラズマ処理によってビアホール35内のスミアを除去する。
【0050】
次に、図13に示すように、真空印刷法によって導電性ペーストをビアホール35の内部に充填することにより層間配線34を形成する。これにより、ビアホール35と銅配線層32との間の界面にボイドの発生を抑えることができ層間配線34の抵抗を低減したインダクタ用下層基材4が完成する。
【0051】
次に、インダクタ用上層基材5を作製する工程を説明する。
【0052】
まず、図14に示すように、薄板状の磁性体層41を用意する。次に、シード層42bを磁性体層41の上面全体に形成する。その後、フォトリソグラフィー技術によって、メッキ用レジスト膜65を形成する。
【0053】
次に、図15に示すように、シード層42b上に約100μmの厚みを有する銅をメッキする。これにより、インダクタ6の一部を構成するインダクタ上層配線層42aを含む銅配線層42が、磁性体層41の上面に形成される。
【0054】
次に、図16に示すように、メッキ用レジスト膜65及びシード層42bを除去する。この後、磁性体層41の下面に接着層43を、80℃〜150℃の温度で5秒〜60秒加熱して仮貼りする。接着層43は、銅配線層32の厚みよりも厚い約120μmの厚みを有する。これにより、後の積層工程において、接着層43によって銅配線層32を十分に覆うことができる。接着層43は、磁性体を含む熱硬化性エポキシ系樹脂の接着剤からなる。
【0055】
次に、図17に示すように、レーザー加工によって、磁性体層41及び接着層43の所定の位置に、両層41、43を貫通して、銅配線層42まで達するビアホール45を形成する。
【0056】
次に、図18に示すように、レーザー加工によって、ビアホール45と外部とを貫通する貫通穴42cを銅配線層42に形成する。この後、プラズマ処理によってビアホール45内のスミアを除去する。
【0057】
次に、図19に示すように、真空印刷法によって、金属粒子を含む導電性ペーストをビアホール45に充填する。ビアホール45と銅配線層42との間の界面にボイドの発生を抑えることができ、層間配線44の抵抗を低減することができる。尚、導電性ペーストは、ビアホール45側から充填される。これにより、銅配線層42に接続された層間配線44がビアホール45内に形成される。ここで、銅配線層42には貫通穴42cが形成されているので、導電性ペーストを充填する際に、貫通穴42cを通って空気が抜ける。このため、確実に導電性ペーストをビアホール45に充填することができる。この結果、インダクタ用上層基材5が完成する。
【0058】
次に、図20に示すように、画像処理によって、互いに電気的に接続可能な位置に基材2〜5を位置合わせし積層する。この後、基材2〜5を150℃〜250℃に加熱し、且つ、基材2〜5の周りの気圧を大気圧よりも低い、1kPa以下に設定する。この状態で、真空プレス機またはキュアプレス機により、1MPa〜5MPaの圧力で基材2〜5を押圧する。この状態を、30分〜2時間継続することにより基材2〜5を一括で積層する。これにより、導電性ペーストの錫粒子と銅配線層12、22、32とが合金化されつつ、各層間配線24、34、44と各銅配線層12、22、32とが電気的に接続される。合金化により、金属フィラー同士が接触し導通をとるペーストに比べて、上下の回路が電気的にも物理的にもより良好に接続し接着層が銅配線層と層間配線との界面に侵入することによって電気抵抗の増加を防ぐことができる。さらに耐湿熱性の向上にもつながる。また、各銅配線層12、22、32が、各接着層23、33、43に覆われる。
【0059】
この結果、図1に示すインダクタ内蔵プリント配線板1が完成する。
【0060】
上述したように、第1実施形態によるインダクタ内蔵プリント配線板1では、大気圧よりも低い気圧内で、各基材2〜5を押圧することによって一括積層している。これにより、層間配線44と銅配線層32との間にボイドが発生することを抑制できる。この結果、インダクタ下層配線層32aを含む銅配線層32が厚くなっても、層間導通の歩留まりを向上させつつ、層間配線44の抵抗を低減することができるとともに、長期信頼性を向上させることができる。
【0061】
また、インダクタ内蔵プリント配線板1は、銅配線層32と銅配線層42とを接続する層間配線44が、ビアホール45に充填された導電性ペーストによって構成されている。このため、層間配線44の抵抗率を低減することができるので、層間配線44が形成されるビアホール45の直径を小さくすることができる。この結果、インダクタ6の配線密度を上げることができるので、同じ配線長でも巻数を増加させることができる。従って、インダクタ6の直流抵抗値を増加させることなく、所望のインダクタンス値を得ることができる。
【0062】
また、インダクタ内蔵プリント配線板1では、銅配線層42にビアホール45と外部とを貫通させる貫通穴42cを形成している。これにより、層間配線44を形成する工程において、ビアホール45に導電性ペーストを容易に充填することができる。この結果、層間配線44にボイドが発生することを抑制でき層間配線44の抵抗を低減することができる。この効果は、層間配線44のアスペクト比を高くした場合に、特に有効である。更に、この効果は、順次積層していくビルドアップ法では同様の貫通穴を形成することができないため、奏することが困難である。
【0063】
また、インダクタ内蔵プリント配線板1では、絶縁層31、磁性体層41及び接着層43が磁性体を含むので、インダクタンス値を向上させることができる。
【0064】
(第2実施形態)
次に、上述した第1実施形態を部分的に変更した第2実施形態について説明する。図21は、第2実施形態によるインダクタ内蔵プリント配線板の断面図である。図22は、第2実施形態によるインダクタ配線の平面図である。尚、第1実施形態と同様の構成には、同じ符号を付けて説明を省略する。
【0065】
図21及び図22に示すように、第2実施形態によるインダクタ内蔵プリント配線板1Aは、スパイラル型のインダクタ76を有する。
【0066】
インダクタ内蔵プリント配線板1Aは、第1多層基板用基材2と、第2多層基板用基材3と、インダクタ用基材74と、外部配線基材75とを備えている。
【0067】
インダクタ用基材74は、インダクタ形成層81と、銅配線層82と、接着層83と、層間配線84とを備えている。インダクタ形成層81と接着層83には、ビアホール85が形成されている。
【0068】
インダクタ形成層81は、エポキシ樹脂をガラス布に含浸させたガラスエポキシからなる。
【0069】
銅配線層82は、インダクタ形成層81の上面に形成されている。銅配線層82は、約100μmの厚みを有する。銅配線層82は、所望の形状にパターニングされている。銅配線層82は、インダクタ配線層82aを含む。インダクタ配線層82aは、スパイラル型のインダクタ76を構成する。銅配線層82の下部は、シード層82bを含む。シード層82bは、クロム、ニッケル、銅、チタン、タングステン等から選択された金属単体または合金の薄膜からなる。
【0070】
接着層83は、インダクタ形成層81の下面に形成されている。接着層83は、熱硬化性エポキシを主成分とする接着剤からなる。
【0071】
層間配線84は、ビアホール85に充填された導電性ペーストからなる。層間配線84は、インダクタ用基材74の銅配線層82と第2多層基板用基材3の銅配線層22とを電気的に接続する。
【0072】
外部配線基材75は、配線形成層91と、銅配線層92と、接着層93と、層間配線94とを備えている。
【0073】
配線形成層91は、エポキシ樹脂をガラス布に含浸させたガラスエポキシからなる。
【0074】
銅配線層92は、配線形成層91の上面に形成されている。銅配線層92は、外部の電源または回路等と接続される。
【0075】
接着層93は、配線形成層91の下面に形成されている。接着層93は、熱硬化性エポキシを主成分とする接着剤からなる。
【0076】
層間配線94は、ビアホール95に充填された導電性ペーストからなる。層間配線94は、外部配線基材75の銅配線層92とインダクタ用基材74の銅配線層82とを電気的に接続する。
【0077】
第2実施形態によるインダクタ内蔵プリント配線板1Aの製造方法を説明する。
【0078】
まず、第1実施形態と同様の工程により、第1多層基板用基材2と、第2多層基板用基材3と、インダクタ用基材74と、外部配線基材75とを別々の工程で作製する。
【0079】
次に、大気圧よりも低い気圧中で、第1多層基板用基材2と、第2多層基板用基材3と、インダクタ用基材74と、外部配線基材75とを積層する。
【0080】
これによって、図21に示すインダクタ内蔵プリント配線板1Aが完成する。
【0081】
以上、実施形態を用いて本発明を詳細に説明したが、本発明は本明細書中に説明した実施形態に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載及び特許請求の範囲の記載と均等の範囲により決定されるものである。以下、上記実施形態を一部変更した変更形態について説明する。
【0082】
各構成の材料、厚みや幅等の数値、形状等は適宜変更可能である。
【0083】
絶縁層は、ポリイミド系樹脂、ポリエステル系樹脂を主体とする樹脂をガラス布に含浸させたものを適用してもよい。
【0084】
配線層を構成する材料は、銅に限定されるものではないが、低抵抗率を有する金属が好ましい。
【0085】
接着層は、熱可塑性ポリイミドを主成分とする接着剤により構成してもよい。
【0086】
層間配線を構成する導電性ペーストに含まれる金属は適宜変更可能である。例えば、電気抵抗が小さい金属粒子には、銀(Ag)、銅(Cu)から選択される少なくとも1種類の金属粒子を適用してもよい。また、低融点金属粒子には、ビスマス(Bi)、インジウム(In)、鉛(Pb)、亜鉛(Zn)から選択される少なくとも1種類の低融点金属粒子を適用してもよい。ここで、低融点金属粒子としては、銅配線層と合金化が可能な錫等が好ましい。これにより、金属フィラー同士が接触することによって導通させる導電性ペーストに比べて、各層間の回路が電気的にも物理的にもより良好に接続され、且つ、接着層が導電性ペーストと銅配線層との界面に侵入することによって電気抵抗の増加を抑制することができる。
【0087】
また、層間配線24、34を形成する際には、層間配線44と同様に貫通穴を設けてもよい。
【0088】
磁性体層は、NiZnフェライトからなる薄板に限定されるものではなく、抵抗率の高い磁性体材料を分散させた絶縁樹脂シートにより構成してもよい。
【0089】
絶縁層、接着層及び磁性体層に含まれる磁性体は、適宜省略可能である。
【0090】
インダクタを構成する銅配線の厚みは、適宜変更可能であるが、100μm以上が好ましい。これにより、インダクタの直流抵抗を低減して、発熱を抑制できる。
【0091】
また、上述した実施形態では、4層の基材を積層したインダクタ内蔵プリント配線板を例に説明したが、2層、3層及び5層以上の基材を積層したインダクタ内蔵プリント配線板に本発明を適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】第1実施形態によるインダクタ内蔵プリント配線板の断面図である。
【図2】第1多層基板用基材の製造工程を説明するための図である。
【図3】第1多層基板用基材の製造工程を説明するための図である。
【図4】第2多層基板用基材の製造工程を説明するための図である。
【図5】第2多層基板用基材の製造工程を説明するための図である。
【図6】第2多層基板用基材の製造工程を説明するための図である。
【図7】第2多層基板用基材の製造工程を説明するための図である。
【図8】インダクタ用下層基材の製造工程を説明するための図である。
【図9】インダクタ用下層基材の製造工程を説明するための図である。
【図10】インダクタ用下層基材の製造工程を説明するための図である。
【図11】インダクタ用下層基材の製造工程を説明するための図である。
【図12】インダクタ用下層基材の製造工程を説明するための図である。
【図13】インダクタ用下層基材の製造工程を説明するための図である。
【図14】インダクタ用上層基材の製造工程を説明するための図である。
【図15】インダクタ用上層基材の製造工程を説明するための図である。
【図16】インダクタ用上層基材の製造工程を説明するための図である。
【図17】インダクタ用上層基材の製造工程を説明するための図である。
【図18】インダクタ用上層基材の製造工程を説明するための図である。
【図19】インダクタ用上層基材の製造工程を説明するための図である。
【図20】基材を積層する積層工程を説明するための図である。
【図21】第2実施形態によるインダクタ内蔵プリント配線板の断面図である。
【図22】第2実施形態によるインダクタの平面図である。
【符号の説明】
【0093】
1、1A インダクタ内蔵プリント配線板
2 第1多層基板用基材
3 第2多層基板用基材
4 インダクタ用下層基材
5 インダクタ用上層基材
6 インダクタ
11、21、31 絶縁層
12、22、32、42 銅配線層
12A 銅箔
23、33、43 接着層
24、34、44 層間配線
25、35、45 ビアホール
32a インダクタ下層配線層
32b、42b シード層
41 磁性体層
42a インダクタ上層配線層
42c 貫通穴
62 レジスト膜
64 メッキ用レジスト膜
65 メッキ用レジスト膜
74 インダクタ用基材
75 外部配線基材
76 インダクタ
81 インダクタ形成層
82、92 銅配線層
82a インダクタ配線層
82b シード層
83、93 接着層
84、94 層間配線
85、95 ビアホール
91 配線形成層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1配線形成層の一方の面に第1配線層を形成する工程を有する第1基材を作製する第1基材作製工程と、
第2配線形成層の一方の面に第2配線層を形成する工程と、前記第2配線形成層の他方の面に接着層を形成する工程と、前記第2配線形成層と前記接着層とを貫通するビアホールを形成する工程と、前記第2配線層に接続された層間配線を前記ビアホールに形成する工程とを有する第2基材を作製する第2基材作製工程と、
前記第1基材と前記第2基材とを位置合わせ、積層し、大気圧よりも低い気圧中で押圧することにより、前記層間配線と前記第1配線層とを電気的に接続しつつ、第1配線層、第2配線層および層間配線によりインダクタを形成する積層工程とを備えたことを特徴とするインダクタ内蔵プリント配線板の製造方法。
【請求項2】
真空印刷法で、前記ビアホールに金属粒子を含む導電性ペーストを充填することにより、前記層間配線を形成する工程を有することを特徴とする請求項1に記載のインダクタ内蔵プリント配線板の製造方法。
【請求項3】
前記第2基材作製工程は、
前記ビアホールと外部とを貫通する貫通穴を前記第2配線層に形成する工程と、
前記貫通穴が形成された状態で、前記ビアホール側から導電性ペーストを充填する工程とを含むことを特徴とする請求項2に記載のインダクタ内蔵プリント配線板の製造方法。
【請求項4】
前記積層工程は、
加熱することによって、前記層間配線の導電性ペーストに含まれる金属粒子と前記第1配線層とを合金化する工程を含むことを特徴とする請求項2〜請求項3のいずれか1項に記載のインダクタ内蔵プリント配線板の製造方法。
【請求項5】
第3配線形成層に第3配線層が形成された1又は複数の第3基材を作製する第3基材作製工程を備え、
前記積層工程では、前記第1基材と、前記第2基材と、前記1又は複数の第3基材とを一括して積層することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のインダクタ内蔵プリント配線板の製造方法。
【請求項6】
第1配線形成層の一方の面に形成された第1配線層を有する第1基材と、
第2配線形成層の一方の面に形成された第2配線層と、前記第2配線形成層の他方の面に形成され前記第1配線層よりも厚い接着層と、前記第2配線形成層と前記接着層とを貫通するビアホールに埋設され、前記第1配線層と前記第2配線層とを電気的に接続する層間配線とを有する第2基材とを備え、
前記第1基材と前記第2基材は、大気圧よりも低い気圧中で押圧することにより積層され第1配線層、第2配線層および層間配線によりインダクタを形成したことを特徴とするインダクタ内蔵プリント配線板。
【請求項7】
前記第1配線形成層、又は第2配線形成層、又は接着層は、磁性体を含むことを特徴とする請求項6に記載のインダクタ内蔵プリント配線板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2010−62464(P2010−62464A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−228806(P2008−228806)
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】