説明

インデキシング可能な回転キーを備えたコック

本発明は、インデキシング(指示)可能な回転キーを備えたコックに関する。本発明によれば、インデキシング手段は、バレル(2)のハウジング(3)の有形底面(7)に配置された隆起要素(8)と、キー(1)の先端に形成され、横断平面内で弾性変形可能なリング(10)とから構成される。上記隆起要素とリングは、キーを回転させた時にキーをブロック位置に確定するために共働するスタブとノッチとを形成する。本発明のコックは医療器具に使用するのに適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インデキシング可能な(指示可能な)回転キーを備えたコックに関する。
より詳しくは、本発明は、回転キーを備えたコック(cock)に関し、そのキーは、キーがバレルのハウジングの一端から軸方向にブロック手段により決まるある軸方向位置まで差し込まれている時に、バレルの筒状ハウジング内で回転し、ハウジングの側壁は、いくつかの開口部によりハウジングの1エリア内に開口している通路を備え、キーは別の通路とともに、キーの回転中にキーの位置に応じて、これらの開口部をブロックするか、または一部の開口部の間に連通を確保するように設計されている。このコックは、ハウジングの別のエリアに、キーが連通を確保したサービス(使用)位置に達したことをオペレータに触覚で知らせる手段(いわゆるインデキシング手段<指示手段>)を備え、このインデキシング手段は、キーとハウジングの対向する面上に設けられた複数のスタブ(突出部)とノッチとから構成されていて、キーの回転中にキーが或るサービス位置に達したらスタブがノッチの中に入り込み、キーにそれを回転させる実質的な力が加えられた時だけにスタブがノッチから脱出することができるようになっており、キーまたはバレルは、スタブがこの力から生ずる弾性作用によりノッチから脱出することができるように設計されている。
【背景技術】
【0002】
上記のようなコックの1例は、米国特許第5832959号に記載されている。
この例では、スタブがノッチから脱出することができるようにするのに必要な弾性作用を得るために、バレルとキーはどちらも弾性材料から構成される。
【0003】
そのような弾性は、バレルの通路がその内部に開口している上記エリアのシールにとっては有害であり、インデキシング手段が、バレルの通路がその内部に開口している外エリアの内径より大きな内径をもつハウジングエリア内に位置しているため、ますますそうである。
【0004】
米国特許公開第2001/025942号はコックを記載するものであり、そのバレルのハウジングは、隆起要素を備えた、閉じた基底部(土台部)を有し、この隆起要素は、それとハウジングの弾性側壁との間に、その中でキーの端部に形成されたリングが回転しうる環状ミゾを画定し、スタブとノッチは該隆起要素と該リングにそれぞれ形成されている。
【特許文献1】米国特許第5832959号
【特許文献2】米国特許公開第2001/025942号
【発明の開示】
【0005】
本発明の目的は、改善されたシールを備え、その弾性が開口部のエリアに必要なシールを妨げることのないコックを提供することである。
本発明によると、ハウジングが閉じた基底部を有し、この基底部は隆起要素を備え、この隆起要素は、それとハウジングの側壁との間に環状リングを画定し、キーがその端部に、このミゾ内で回転するキーの回転軸に対して横断方向の平面内において弾性変形可能なリングを有し、スタブとノッチが該隆起要素および該リングにそれぞれ形成され、インデキシング手段が見られるエリアの直径が、バレルのハウジングの側壁の通路の開口部がその中に開口しているエリアの直径に対して相対的に小さくなっているコックにより達成される。
【0006】
1好適態様において、前記リングは複数の切り目により分離された複数の円弧状セクターに分割されていて、これらのセクターの中にスタブまたはノッチが形成されている。
本発明のコックはさらに、下記の他の特徴の1または2以上を有していてもよい:
・前記リングが、そのそれぞれが1つのスタブまたはノッチを備える2つの同一のセクターに分割されている。
【0007】
・前記リングが、そのそれぞれが1つのスタブまたはノッチを備える4つの同一のセクターに分割されている。
・前記隆起要素の横断方向の形状が8個のノッチまたは8個のスタブを形成するように適合されている。
【0008】
・インデキシング手段が見られるエリアの直径が、前記の開口部がその中に開口しているエリアの直径より相対的に小さくなっている。
・バレルのハウジングの断面は、キーを導入する(差し込む)ための端部側から小さくなり、キーは略円錐台形状を有する。
【0009】
・前記隆起要素が、凸状セクターと前記ノッチを形成する凹状セクターとが交互につながってなる規則的輪郭を有する。
・キーに形成された円形リブがハウジングの側壁内に形成されたミゾに入り込むことにより、キーがハウジング内に軸方向にブロックされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明に係るコックの態様例を添付図面を参照しながら次に説明する。
図1は、キー(1)をハウジング(3)の一端からバレル(2)の中に差し込む前の、コックのキーとバレルを示す。図を単純化するため、バレルは開口部(4a, 5a)を通ってハウジング内に開口している2つの通路(4, 5)だけを有し、かつキーはこの開口部を連通させるために1つの通路(6)だけを有する、と仮定する。
【0011】
本発明によると、バレル(2)のハウジング(3)は隆起要素(8)を備えた閉じた基底部(7)を有し、この隆起要素は、それとハウジングの側壁との間で環状ミゾ(9)を画定し、キー(1)はその端面に、キーがその軸方向ブロック位置にある時に上記ミゾ内で回転可能なリング(10)を有する。
【0012】
バレルハウジングの基底部に形成された隆起要素(8)の外形は、凸状セクター(8a)と凹状セクター(8b)との交互の規則的な繰り返しを規定するような形状である。凹状セクター(8b)はノッチを形成する。
【0013】
図示例では、隆起要素(8)は8個のノッチを(12)を形作っている。
隆起要素(8)は、図1にはその半分だけが現れており、図2は全体が見えている。
キーのリング(10)は、この例では、切れ目により分離された2つの円弧形状の同一のセクター(10a, 10b)により形成されており、各セクターは盛り上がった垂直方向のスタブ(11)を有する。図1には、1個のセクターしか現れていないが、キーが上下逆向きに示されている図3には、両方のセクターが全体として見えている。
【0014】
リングと隆起要素との相互作用は図4に明らかに見ることができる。この図では、ハッチ入り部分がバレル部分である。
それぞれ図1、3および4に対応する図5〜7には、キーのリングが4個の円弧形状の分離されたセクター(10c, 10d, 10e, 10f)に切り離されている別の態様が示されている。各セクターはそれぞれ1個のスタブを保有している。バレルは上記態様のものと同一でよい。
【0015】
本発明は、これらの例示した態様に限られるものではない。リングのセクターの数、スタブの数およびノッチの数は態様に応じて変動させうる。
インデキシング(指示)の効果的な感触は、リングのアーク(円弧)の高さ、アークの長さ、アークの数、ならびにハウジングの基底部の隆起形状の高さ、により調整することができる。
【0016】
バレル内でのキーの軸方向位置は、例えば、図示例の場合には、キーの外面の環状リブ(13)をバレルの環状壁面のミゾ(14)内にスナップ嵌め(クリップ嵌め)することにより決まる。
【0017】
図面には、インデキシング手段が見られるエリア(C)の径が、バレルのボア(内腔)がその中に開口しているエリア(B)の径より相対的に小さいことも見られる。
本発明の1特徴によると、スナップ嵌めエリア(A)、連通エリア(B)およびインデキシングエリア(C)は階段状に配置されていて、それらの断面は順に小さくなる。
【0018】
本発明は、1つの連通の可能性に限られるものではなく、通路の数をそれ自体公知のように変化させることにより、通常の全ての連通の可能性が本発明に係るコックによって達成されうることは言うまでもない。
【0019】
念のため、三方コックについてその各種の連通の可能性を図8に示す。バレルは、T字形に配置された3つの通路15, 16, 17を有し、キーは2つの垂直通路18, 19を有する。
バレル(21)のハウジングの基底壁面上に形成された、その凸状部(8a)およびその凹状部(8b)を備えた八角形の隆起要素(8)を有するコックと、直径方向に対向する(向かい合った)2つのガドルーン(丸みを帯びたスタブ)(11)を形成する横方向に変形可能な薄い壁面を有する変形可能な円筒形リング(10)からなるキーの先端が、図9および10の図面に示されている。
【0020】
図9では、両方のガドルーンが隆起要素の2つの対向する(向かい合った)凹部に当たっていて、直径方向に互いにより近づいている。
図10では、ガドルーンが隆起要素の凸部の上に乗っていて、キーのリングの壁面を弾性により楕円形に変形させているため、リングは弾性変形し、互いに逆向きの位置において、隆起要素の凸部(8a)とリング(10)との間に遊び(20)が残り、リング(10)とバレルハウジングの壁面(9)との間には遊び(21)が残る。
【0021】
キーの円形から楕円形への弾性変形は、キーを何回も使用した後でも、正確なインデキシングを与えつつガドルーンをエリア(8b)に戻すバネ機能を提供する。
本発明のコックは、医療装置において使用するのに著しく適している。
【0022】
本発明は、好適例として上に説明した態様に制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】キーをバレルに差し込む前のコックのキーとバレルの斜視図であって、キーとバレルの半分だけが図示されている。
【図2】バレル単独の斜視図であって、ハウジングの基底部に形成された隆起要素の全体を示すために一部が破断されている。
【図3】キー単独の斜視図であって、そのリングの全体を示すように上下逆向きに図示されている。
【図4】リングと隆起要素の領域におけるコックの断面を示す下から見た斜視図である。
【図5】本発明の別の態様に関する図1と同様の図である。
【図6】本発明の別の態様に関する図3と同様の図である。
【図7】本発明の別の態様に関する図4と同様の図である。
【図8】三方コックのそれ自体公知の連通の可能性を示す説明図である。
【図9】そのキーが8個のブロック位置を有するコックの、キーがブロック位置にある状態での断面を示す。
【図10】図9のコックのキーが2つのブロック位置の間の中間状態にある時の断面を示す。
【符号の説明】
【0024】
(1):キー、(2):バレル、(3):ハウジング、(4, 5):バレルの通路、(6):キーの通路、(7):閉鎖基底部、(8):隆起要素、(8a):凸状セクター、(8b):凹状セクター、(9):環状ミゾ、(10):キーのリング、(10a〜10f):リングの円弧状セクター、(11):スタブ(ガドルーン)、(12):ノッチ、(13):キーの外面環状リブ、(14):バレル側壁の環状ミゾ、(15〜17):バレルの通路、(18, 19):キーの通路、(20, 21):遊び

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転キーを備えたコックであって、そのキー(1)は、キーがバレル(2)の筒状ハウジング(3)の一端から軸方向に、ブロック手段(13, 14)により決まるある軸方向位置まで差し込まれた時にバレルのハウジング内で回転し、ハウジングの側壁は、いくつかの開口部によりハウジングの1エリア(B)内に開口している通路(4, 5)を備え、キーはその通路(6)とともに、キーの回転中にキーのサービス位置に応じて、これらの開口部をブロックするか、または一部の開口部の間に連通を確保するように設計されており、コックは、ハウジングの別のエリア(C)内に、キーが連通を確保したサービス位置に達したことをオペレータに触覚で知らせるための手段(いわゆるインデキシング手段)を備え、このインデキシング手段は、キーとハウジングが対向する面上に設けられたスタブ(11)とノッチ(12)とから構成され、キーの回転中にキーがあるサービス位置に達したらスタブがノッチに入り込み、キーにそれを回転させる実質的な力が加えられた時にだけスタブがノッチから脱出することができるようになっており、キーまたはバレルは、スタブがこの力から生ずる弾性作用によりノッチから脱出することができるよう設計されており、ハウジング(3)は隆起要素(8)を有する、閉じた基底部(7)を備え、該隆起要素はそれとハウジングの側壁との間に環状ミゾ(9)を画定し、キー(1)はその端部に、このミゾ内で回転するリング(10)を有し、スタブ(11)とノッチ(12)はそれぞれ該隆起要素および該リング(10)に形成されているコックであり、該リング(10)がキーの回転軸に対して横断方向の平面内において弾性変形可能であり、かつインデキシング手段が見られるエリア(C)の直径が、開口部がその中に開口しているエリア(B)の直径より相対的に小さいことを特徴とするコック。
【請求項2】
その前記リング(10)が複数の切り目により離間している複数の円弧状セクターに分割されていて、これらのセクターの中にスタブまたはノッチが形成されている、請求項1に記載のコック。
【請求項3】
その前記リング(10)が、そのそれぞれが1つのスタブ(11)を備える2つの同一のセクター(10a, 10b)に分割されている、請求項2に記載のコック。
【請求項4】
その前記リング(10)が、それぞれ1つのスタブ(11)を備える4つの同一のセクター(10c, 10d, 10e, 10f)に分割されている、請求項2に記載のコック。
【請求項5】
その前記隆起要素(8)が8個のノッチ(12)を形成するような横断形状を有する、請求項3または4に記載のコック。
【請求項6】
インデキシング手段が見られるそのエリア(C)の直径が、前記の開口部がその中に開口しているエリア(B)より相対的に小さくなっている、請求項1〜5のいずれかに記載のコック。
【請求項7】
そのハウジング(3)がハウジングの前記一端から減少する断面を有し、キー(1)が略円錐台形状を有する、請求項1〜6のいずれかに記載のコック。
【請求項8】
前記隆起要素(8)が、凸状セクター(8a)と前記ノッチを形成する凹状セクター(8b)とが交互につながってなる規則的な輪郭を有する、請求項1〜7のいずれかに記載のコック。
【請求項9】
そのキー(1)が、ハウジングの側壁内に形成されたミゾ(14)へのキーに形成された環状リブ(13)の貫入によりハウジング(3)内に軸方向にブロックされる、請求項1〜8のいずれかに記載のコック。
【請求項10】
そのリングの断面が、非変形状態では円形であり、弾性変形した状態では楕円形になる、請求項1〜9のいずれかに記載のコック。
【請求項11】
リング(10)が弾性変形した時に、隆起要素の凸部(8a)と該リングとの間に遊び(20)が存在し、該リングとこのリングに向かい合っているバレルのハウジングの壁面との間に遊び(21)が存在する、請求項1〜10のいずれかに記載のコック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2006−501419(P2006−501419A)
【公表日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−540888(P2004−540888)
【出願日】平成15年10月3日(2003.10.3)
【国際出願番号】PCT/FR2003/002910
【国際公開番号】WO2004/031635
【国際公開日】平成16年4月15日(2004.4.15)
【出願人】(592243302)
【氏名又は名称原語表記】VYGON
【Fターム(参考)】