説明

インドールに基づく悪臭の発生を防止するフレグランス組成物およびその使用方法

【課題】糞便および尿汚れ由来の悪臭源であるインドールおよびインドール関連物質による悪臭物質の発生を防止する。
【解決手段】気密シール容器中の適切な新鮮ヒト尿に0.28重量%加え、室温で24時間インキュベーションした後のこのサンプルにおけるインドール発生を0.01ppm(重量/重量)未満に制御することのできるアルデヒド、α,β−不飽和アルデヒド、アルコール、ケトンおよびこれらの混合物の中から選択される芳香物質を含むフレグランス組成物を、ホームケア製品用またはパーソナルケア製品用のフレグランス組成物として用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、尿または糞便のような排出物に微生物が作用することによって発生する悪臭を防止するために種々の製品において使用されるフレグランス組成物、その成分化合物およびこれらの使用方法に関する。本発明は、インドールおよびインドール関連物質による悪臭物質の発生を防止することを目的とする。
【背景技術】
【0002】
悪臭をマスキングするため、種々の用途で香料が用いられている。特に悪臭のマスキングが必要とされるものとしては、例えば、ヒトから発散されるまたはヒトから排出される物質、具体的には汗、尿、糞便または月経液から生じる臭気、動物の尿または糞便、特に家庭のペットの尿または糞便から発生する臭気などが挙げられる。
【0003】
悪臭は通常、硫化水素のような硫黄化合物、低分子量チオール、低分子量チオエーテルなどの含硫化合物、アンモニアやピラジン、インドールなどの複素環化合物を含むアミン類のような含窒素化合物、脂肪酸、ステロイドのような酸素含有化合物などの特に悪臭性の物質によって生じる。これらの悪臭性物質は、排出物に対するあるいは食物や飲料の消化中における微生物の作用によって生成することが多い。これらの悪臭は天然の生成物であることから、それ自体複雑な混合物であり、発生源に応じ、上記悪臭性物質の数種を含むものから全てを含むものまである。このため、悪臭の防止、無効化、軽減あるいは撲滅は、容易なことではない。
【0004】
悪臭を無効にするまたは軽減するために種々の方法が開発されおり、代表的な方法としては強力な香料を用いて臭気以上のマスキングを行う方法が挙げられる。また、悪臭の吸収剤として活性炭およびゼオライトが用いられているが、これらは製品によっては利用できないものもある。さらに、悪臭の発生に関与する微生物を殺すために、亜鉛化合物、トリクロサン(2’,4’,4’−トリクロロ−2−ヒドロキシ−ジフェニルエーテル)などの種々の抗菌剤が用いられているが、その多くは非特異的であって、天然の微生物相に不均衡を生じさせる。
【0005】
米国特許第4,304,679号、同第4,322,308号、同第4,278,658号、同第4,134,838号には、ヒトの皮膚に適用された際あるいはランドリー製品に含有された際に防臭作用を示す芳香剤が記載されている。これらは、種々の機構、例えば、悪臭化合物の蒸気圧を低減する、悪臭を生じる酵素を阻害する、悪臭と混ぜ合わせることにより知覚される悪臭の香調を変更する、のいずれかまたは全てにより機能していると考えられている。
【0006】
米国特許第4,719,105号には、それ自体は強い芳香を有しないが悪臭のマスキングに用いることのできる、低臭性物質としてのシクロメタノール(cyclomethanol)およびそのエステルが記載されている。
【0007】
米国特許出願公開第2004/0147416号には、悪臭分子を捕捉するためにサイクロデキストリンを使用することが記載されている。
【0008】
時間が経過するにしたがって微生物の個体数が増え、また悪臭生成物も増えるため、悪臭は強力になる傾向がある。ここに、悪臭をマスキングするために香料を用いる際の大きな問題がある。香料は、使用直後は悪臭をマスキングすることができるが、香料の強さは時間が経つと減少するのに対し、悪臭は、増殖する微生物のコロニーによってほぼ確実に強さが増す。同様のことは、悪臭分子と反応することによって作用する中和剤にも当てはまり、時間が経つにつれて悪臭が中和剤を圧倒するようになる。香料および中和剤の効果は、悪臭の強さを緩和または低減することであるが、商業的な用途によってはこのような効果で十分なものもある。
【0009】
これらとは異なるアプローチとして、特定の生物学的経路を阻害する方法がある。より特異的に作用する化合物として、ドイツ特許出願公開第4,343,265号には、汗分解エステラーゼを阻害する、飽和C3−C10二酸が記載されている。
【0010】
米国特許第6,183,731号には、身体の悪臭の予防剤として、オクタデカン酸のような5α−リダクターゼのインヒビターである薬剤の使用が記載されている。
【0011】
米国特許第5,395,555号には、微生物の増殖に必須の重金属を遮絶すると考えられていることにより選択された金属イオン封鎖剤を含有する、尿汚れの悪臭を軽減するために特に有用な、カーペット、ラグおよび織物用水性洗浄組成物が示されている。
【0012】
しかし、前記したとおり、悪臭は複合体であり、このようなアプローチは、悪臭の全ての成分に効果を有するものではないものの、悪臭の性質を変性するには適し、この点では有用であるが、問題の部分的な解決でしかない。
【0013】
アルデヒドは、時に、悪臭中和剤として用いられる。米国特許第4,906,454号には、高濃度のアルデヒドおよび/またはケトンと、ピロクトン酸および香料とを、身体の悪臭を防ぐ際の脱臭剤中に使用することが記載されている。一方、米国特許第6,177,070号には、アセタールおよびヘミアセタールのような付加化合物の形態で存在する、少なくとも2種の異なるアルデヒドと不飽和化合物とを含有する脱臭製品が記載されている。しかし、本発明のアルデヒドは、付加化合物として存在せず、また各種用品に直接添加されるフレグランス組成物の一部をなしていることから、米国特許第6,177,070号に記載されたアルデヒドとは全く異なるものである。
【0014】
さらに、米国特許出願公開第2005/0124512号には、空気中の悪臭成分と反応する空気または布地の清浄化スプレー用品の成分として、布地に害をなさない(すなわち、非変色性)アルデヒドを用いることが記載されている。しかし、この特許には、アルデヒドが悪臭の形成を阻害し得ること、具体的には、香料が損なわれない非反応方式で、悪臭の形成を阻害し得ることを教示するものは存在しない。
【0015】
米国特許第5,676,163号には、相加的にまたは相乗的に作用して、タバコの煙の悪臭を軽減する2種のアルデヒドが記載されている。この特許も、アルデヒドが、いくつかの悪臭分子と反応することを教示するのみで、悪臭の生物学的生成を防止できることを教示するものではない。
【0016】
米国特許出願公開第2005/0187123号および同第2005/0187124号には、カーペットから悪臭を除くために、固体および液体のカーペットクリーナーおよび脱臭剤に混合される組成物が記載されている。米国特許出願第2005/0187123号では、アルデヒドは混合物の任意成分として用いられているが、それらが悪臭との反応効果および悪臭に対するマスキング効果を有すること以上について教示するものではない。しかし、米国特許出願公開第2005/0187124号では、アルデヒドは、酵素インヒビターとして記載され、一方でアルデヒドおよびケトンは、臭気に対する反応物質として記載されている。この特許には、酵素が阻害されるという証拠も、悪臭化合物が減少されたり、防止されたりするという証拠も挙げられておらず、例示されたアルデヒドの中では唯一ベンズアルデヒドが芳香性アルデヒドと考えられていることが示されているのみである。しかし、ベンズアルデヒドの有効性については、実施例により実証されていない。
【0017】
米国特許出願公開第2002/0010447号には、悪臭軽減のために、身体から排出される液体用の繊維性吸収材中に、2つのカテゴリーのアルデヒドを用いることが記載されている。相乗的に作用すると主張されているこれら2つのアルデヒドは、脂肪族アルデヒドと、アルデヒド炭素に対してα位でsp2に結合した炭素を有するアルデヒドである。この文献にも、前記アルデヒドが、化学反応または蒸気圧の低減により悪臭を軽減する効果を示すものであること以上の他の阻害性効果を有することを示唆するものはない。
【0018】
米国特許出願公開第2003/0044309号には、カーペットクリーナー剤において悪臭中和反応に用いられる2種のアルデヒドの混合物が記載されているが、全ての実施例には、試験処方物と化学反応させる悪臭源との緊密混合が記載されているだけで、この文献には、インドールに基づく悪臭が防止されることを示唆する記載はどこにもない。
【0019】
前記の全ての先行技術文献およびこれらの実施例から、ホルムアルデヒドを除いてアルデヒドは、インドールを主成分とする悪臭を特に効果的に防止するというより、むしろ既に存在する臭気物質と化学反応することにより作用すると考えられる。ホルムアルデヒドは、抗菌剤として周知のものであり、直接またはホルムアルデヒドを徐放する誘導体の形態でしばしば処方物に含まれている。
【0020】
【特許文献1】米国特許第4,304,679号
【特許文献2】米国特許第4,322,308号
【特許文献3】米国特許第4,278,658号
【特許文献4】米国特許第4,134,838号
【特許文献5】米国特許第4,719,105号
【特許文献6】米国特許出願公開第2004/0147416号
【特許文献7】ドイツ特許出願公開第4,343,265号
【特許文献8】米国特許第6,183,731号
【特許文献9】米国特許第5,395,555号
【特許文献10】米国特許第4,906,454号
【特許文献11】米国特許第6,177,070号
【特許文献12】米国特許出願公開第2005/0124512号
【特許文献13】米国特許第5,676,163号
【特許文献14】米国特許出願公開第2005/0187123号
【特許文献15】米国特許出願公開第2005/0187124号
【特許文献16】米国特許出願公開第2002/0010447号
【特許文献17】米国特許出願公開第2003/0044309号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
このように、悪臭を予防することを目的とする多数の方法があることは先行技術から明らかであるが、これらはいずれも十分に満足できるものではない。本発明は、広範なホームケア製品およびパーソナルケア製品に含まれる芳香成分について、特定成分を選択することにより、尿または糞便から発せられる悪臭成分のいくつかの成分の発生を防止する、簡易かつ安価な方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、ホームケア製品用またはパーソナルケア製品用のフレグランス組成物の使用方法であって、該フレグランス組成物は、アルデヒド、α,β−不飽和アルデヒド、アルコール、ケトンおよびこれらの混合物の中から選択される芳香物質を含み、該芳香物質は、これを気密シール容器中の適切な新鮮ヒト尿に0.28重量%加え、室温で24時間インキュベーションした後、インドールの発生を0.01ppm(重量/重量)未満に制御する、糞便および尿汚れ由来のインドールを主成分とする悪臭の発生を防止することを特徴とするフレグランス組成物の使用方法に関する。また、本発明は、該フレグランス組成物にも関する。
【0023】
本明細書においては、「ホームケア製品またはパーソナルケア製品」とは、家庭内および身体のケアにおいて一般に用いられる全ての製品を指し、例えば以下のものを含む。
a)リム・ブロック製品、シスターン・ブロックまたは液体リム・ブロック製品。
b)硬質面用の液体、ゲル状またはペースト状家庭用洗浄剤。
c)室内繊維製備品用洗浄剤あるいは清浄剤、特に液体スプレー。
d)空気清浄剤。
e)動物用敷材。
f)パーソナルケア用の繊維性液体吸収物品、例えば、生理用ナプキン、オムツ、または失禁用品。
【0024】
本発明の特に好ましい形態は、ホームケア製品用またはパーソナルケア製品用のフレグランス組成物の使用方法において、該フレグランス組成物は、前記されたアルデヒド、α,β−不飽和アルデヒド、アルコール、およびケトンのうちから選択される芳香物質を含み、該芳香物質を気密シート容器中の適切な新鮮ヒト尿に0.28重量%加え、室温で24時間インキュベーションした後にも、該芳香物質の濃度が60重量%以下、好ましくは30重量%以下に減少しない、糞便および尿汚れ由来のインドールを主成分とする悪臭の発生を防止するフレグランス組成物の使用方法に関する。また、該フレグランス組成物は、本発明の特に好ましいグレグランス組成物の形態でもある。
【0025】
本発明のさらに好ましい形態は、前記のインドール阻害試験を満足するアルデヒド、α,β−不飽和アルデヒド、およびアリルアルコール類から選択される芳香物質を含む、ホームケア製品用またはパーソナルケア製品用のフレグランス組成物の使用方法に関する。また、該フレグランス組成物は、本発明のさらに好ましいグレグランス組成物の形態でもある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明は、ホームケア製品用またはパーソナルケア製品用のフレグランス組成物の使用方法であって、該フレグランス組成物は、アルデヒド、α,β−不飽和アルデヒド、アルコールまたはケトン、およびその混合物の中から選択される芳香物質を、好ましくは2.5重量%〜100重量%、より好ましくは10重量%〜100重量%、さらに好ましくは20重量%〜100重量%、そして特に好ましくは40重量%〜100重量%含有し、該芳香物質は、これを気密シール容器中の新鮮なヒト尿に0.28重量%加え、室温で24時間インキュベーションした後、インドールの発生を0.01ppm(重量/重量)未満に制御する、糞便および尿汚れ由来のインドールを主成分とする悪臭の発生を防止することを特徴とするフレグランス組成物の使用方法に関する。
【0027】
本発明の特に好ましい形態は、ホームケア製品用またはパーソナルケア製品用のフレグランス組成物の使用方法であって、該フレグランス組成物は、上記のアルデヒド、α,β−不飽和アルデヒド、アルコール、およびケトンならびにその混合物の中から選択される化合物を好ましくは2.5重量%〜100重量%、より好ましくは10重量%〜100重量%、さらに好ましくは20重量%〜100重量%、特に好ましくは40重量%〜100重量%含有し、上記条件において気密性容器中において室温で24時間インキュベーションした後に、それ自身、濃度を60重量%以下、好ましくは30重量%以下減少することなく、糞便および尿汚れ由来のインドールを主成分とする悪臭の発生を防止することを特徴とするフレグランス組成物の使用方法に関する。
【0028】
本発明の有効な芳香物質は、上記された条件において気密性容器中における室温での24時間のインキュベーション後に、インドール化合物の濃度を0.01ppm(重量/重量)未満に制限することができるというインドール阻害試験を通過する、アルデヒド、α,β−不飽和アルデヒド、アルコール、またはケトンの芳香物質である。
【0029】
適切な新鮮ヒト尿
尿は可変性の物質であって、尿の全てのバッチがインドール阻害試験を行うために適切なものであるとはいえないことが見出されている。従って、新鮮なヒト尿のブランクサンプルが、候補芳香物質を含有するサンプルと同時に試験されることが必須であり、この尿のブランクサンプルが特定の基準を満たす場合にのみ、芳香物質試験の結果は正当なものとみなされる。新鮮なヒト尿が適切なものであることを保証するためには、尿は、以下に記載される試験方法によって決定した場合、実験の開始時点でインドールの濃度が0.01ppm(重量/重量)未満であり、気密性容器中、室温で24時間の保存後に、インドールを0.25ppm(重量/重量)〜1.25ppm(重量/重量)含有しなければならない。尿ブランクサンプルが両方の基準と一致する場合にのみ、試験された芳香物質についての結果は妥当なものであるとみなされる。尿ブランクサンプルが両基準を満たさなければ、試験された芳香物質についての結果は捨て、尿の新バッチでの試験がなされなければならない。
【0030】
本発明の芳香物質は、試薬としてではなくトリプトファン代謝の生物学的プロセスを阻害すると考えられるが、本発明がこの理論に拘束されるものではない。有効な芳香物質の多くは、ほとんど変化しないままでありながら、効果は大きいことが本発明の重要な利点である。もし芳香物質が悪臭と反応すれば、調香師によって注意深く調香された香りの質はおそらく低減され、その香調は変化することになる。
【0031】
本発明の好ましい態様としては、アルデヒド、アルコールまたはケトン濃度の変化は、60重量%未満、好ましくは30重量%未満であり、調香時の香調が維持されている。
【0032】
アルデヒド、アルコールおよびケトンは、アンモニアまたは他のアミン種と反応して経時的に濃度が減少することもあるが、これは望ましくないし、また本発明の主たる態様でもない。また、多様な製品処方、更にこれらの処方に用いられる香料、悪臭の複雑さのため、これら芳香物質の一部或いは何れもが反応に対し活性な剤として有効に作用する可能性については、個々の芳香物質が固有の反応性を有することなどについてと同様、これ以上さらに言及はしない。
【0033】
フレグランス組成物
本発明において、「香料組成物(perfume composition)」とも命名される「フレグランス組成物(fragrance composition)」は、本発明の本質的な部分である。「フレグランス組成物」という用語は、悪臭中和剤として作用する物質を含む香気性物質の任意の混合物、すなわち、2以上の化学種の混合物を意味する。広範な化学物質が、フレグランス用途に公知である。これらの化学物質には、本発明のアルデヒド、α,β−不飽和アルデヒド、アリルアルコール類を含むアルコール、およびケトンに要求される化学官能基を有する物質のみならず、アルケン、エステル、エーテル、ニトリル、アミン、オキシム、アセタール、ケタール、チオール、アセタールなども含まれる。特に限定するものではないが、これら芳香物質は、十分な揮発性を有するべく、好ましくは、325未満、より好ましくは300未満、そしてさらに好ましくは275未満の分子量を有するものである。また、この芳香物質は、100より大きく、好ましくは120より大きい分子量を有するものである。その理由は、分子量が小さすぎると、任意の時間長で悪臭発生を防止するには揮発性であり過ぎるかもしれないからである。さらに、このフレグランス組成物の成分は、揮発性を阻害する強くイオン化する官能基、例えば、スルフォン酸塩、硫酸塩、四級アンモニウムイオンなどを含有しない。
【0034】
また、種々の化学成分の複雑な混合物である、天然に生成される植物油および動物油並びに抽出物を香料として用いることも公知であり、このような物質を、本発明において用いることができる。本発明のフレグランス組成物は、その組成が最低2つの香料もしくは芳香成分を含む比較的単純なものでもよく、任意の所望の香りを与えるように選択された、天然および合成化学成分の極めて複雑な混合物を含むものであってもよい。芳香成分をさらに詳細に記載した引用文献としては、S.Arctander,Perfume Flavors and Chamicals.Vols.IおよびII,Montclair,N.J.およびMerck Index,第8版、Merck&Co.,Inc.Rahway,N.J.が挙げられる。
【0035】
アルデヒド基、アルコール基およびケトン基を有する芳香物質は、全てではないが、インドール由来の悪臭を防止するのに有効である。このため、インドール阻害試験は、どの化合物が有効であるかを決定する方法として記載されている。
【0036】
本発明において有用な適切な芳香物質の選択は、次のようにして当業者は容易に行うことができる。すなわち、気密シール容器中に収容された適切な新鮮ヒト尿に、芳香物質を試験芳香物質量が0.28重量%となるように添加し、室温において24時間インキュベーションした後に形成されたインドール量を測定し、このインドール形成試験と同じ条件で保管されたコントロールの値と比較して、当該芳香物質により得られるインドール阻害効果を検出する。インドールの形成は、当業者によって周知の任意の分析技術、例えば、標準的なGC−MS条件下でインドールの特徴的なイオンを検出することによって、決定される。
【0037】
本発明の目的に有用な、アルデヒド、α,β−不飽和アルデヒド、アルコール、ケトンおよびその混合物は、上記の条件下で0.01ppm(重量/重量)未満までにインドールの形成を制限するものである。
室温とは、18℃〜22℃である。
【0038】
インドール阻害試験
適切な芳香物質は、以下の工程を含む以下の好ましいインドール阻害試験を用いることによって適宜選択される。
A)0.02gのフレグランスおよび0.02gのテルギトール(Tergitol) 15−s−12を、ポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEと記載する場合もある)面を有する隔膜でシールされた20mlヘッドスペースガラス瓶中の7gの新鮮ヒト尿に添加し、磁気スターラーを用いて10分間十分混合した。他方、新鮮ヒト尿バッチの適切性を試験するため、ブランクサンプルとして7gのヒト尿に対し0.02gの脱塩水および0.02gのテルギトール 15−s−12を添加した。さらに、製品自体の有効性を試験するためコントロールが必要な場合には、コントロールとして、0.02gのフレグランスは添加するが、活性な作用剤および0.02gのテルギトール 15−s−12は添加されていない7gのヒト尿を用いる。
【0039】
B)ガラス瓶は、室温で自動サンプリングトレイに入れられる。
C)異なる時期に、35℃で10分インキュベーションした後、ガラス瓶中のヘッドスペースを、SPMEファイバー(Supelco社製PDMSファイバー)によって35℃で5分間サンプリングする。
D)SPMEファイバーは、CTC Combipalオートサンプラーから265℃で1分脱着され、HP−INNOWAXカラム(30m×0.25×0.25)を備えるAgilent GC−MS 5973Nに、スプリットレスモードで注入される(オーブン条件:50℃で2分間−10℃/分で250℃に−250℃で5分間)。
【0040】
E)上記GC−MS条件下で、インドールは、19.14分の保持時間を有し、またその特徴的なイオンによって認識できる(m/z 117、m/z 89およびm/z 90)。
F)この研究で決定される値の範囲では、インドールピーク(117)領域は、ガラス瓶中の実際の濃度に直線的に関係しており、「活性(Active)」フレグランス、「ブランク(Blank)」フレグランス、もし存在する場合には「コントロール(Control)」フレグランスにおけるインドールの濃度を確証するため、さらに補正を行うことなく用いられた。
G)もし、試験サンプル中のインドールの濃度が、室温での24時間のインキュベーション後に0.01ppm(重量/重量)未満であり、またブランクサンプルにおけるインドールが室温、24時間保管後に0.25ppm(重量/重量)〜1.25ppm(重量/重量)であれば、その物質は活性とみなされる。
H)活性成分濃度の変化は、適切な特徴的なイオンを用いて、実験の開始時点と24時間後の測定値を比較することによって決定される。
【0041】
検量線は、上記した量の新鮮なヒト尿とテルギトール 15−s−12中に、正確に計量された種々の量のインドールを含ませて一連の標準溶液を作成し、これら標準溶液のインドール量を定量することにより引かれた。この検量線は本質的に0.01ppmのインドールに直線であり、そのレベルより下ではインドールは定量されない。テルギトール 15−s−12は、二級アルコールエトキシレート界面活性剤の商業グレード製品についてのダウ・ケミカル(Dow Chemical)社の商品名である。これは、シグマ アルドリッヒ(Sigma Aldrich)社からも入手可能である。テルギトール 15−s−12および他の供給業者から入手可能なこれと同一の製品は、ケミカル・アブストラクト・ナンバーCAS68131−40−8を有する。テルギトール 15−s−12は、その濃度では尿に直接溶解されないフレグランス成分の可溶化剤として機能する。
【0042】
製品中でのフレグランスの有効性は、0.02gの芳香物質を含有する賦香製品の一定分量を、PTFE面の隔膜でシールした20mlヘッドスペースガラス瓶に含まれる7gの新鮮な適切なヒト尿に添加し、磁気スターラーを用いて10分間よく混合することから始められる、上記実験手順を用いることによって見出される。ブランクサンプルに対しては、尿の適切性を試験するために、7gの同一サンプルのヒト尿に対して0.02gの脱塩水および0.02gのテルギトール 15−s−12が添加され、一方、コントロールに対しては、その処方物の他の部分が尿の形成を阻害し得るか否かを評価するため、0.02gの香料を含有するが公知の活性成分を含まない同重量の生成物が、サンプルおよびブランクサンプルに用いられたと同じバッチから採られた別の7gのヒト尿に添加される。
【0043】
有効なフレグランス化合物が消耗されることによる不利な影響を受けることがないよう、フレグランスの香調は、インドール阻害試験中濃度が変わらないアルデヒド、α,β−不飽和アルデヒド、アルコール、およびケトンを選択するのが好ましい。これは、試験工程Iに記載されるとおり、インドール阻害試験の開始時および終了時に、試験カクテルを含有するサンプル中の香料の濃度を測定することによって決定される。両測定間での濃度の違いが60重量%未満、好ましくは30重量%未満である場合、その物質は、フレグランスノートを変えるほど十分には変化しておらず、特に好ましいものであるとみなされる。
【0044】
本発明はまた、アセトフェノン、アルデヒドC−11、アルデヒドC−10、ベンズアルデヒド、ベンゾフェノン、シンナミックアルデヒド、シトロネラール、シトラール、2−メチル−3−(3,4−メチレンジオキシフェニル)−プロパナール(ヘリオブーケ:高砂香料工業株式会社商品名)、トランス−2−ヘキセナール、トランス−2−ヘキセノール、ペリラアルデヒド、ペリラアルコール、およびマルトール(Veltol Plus:Pfizer Inc.,商品名)、またはそれらの混合物の中から選択される芳香物質を、インドールインヒビターとして使用することに関する。
【0045】
本発明はまた、糞便および尿汚れ由来の悪臭源であるインドールの発生を防止することを目的としたフレグランス組成物の調製のために、アセトフェノン、アルデヒドC−11、アルデヒドC−10、ベンズアルデヒド、ベンゾフェノン、シンナミックアルデヒド、シトロネラール、シトラール、2−メチル−3−(3,4−メチレンジオキシフェニル)−プロパナール(ヘリオブーケ:高砂香料工業株式会社商品名)、トランス−2−ヘキセナール、トランス−2−ヘキセノール、ペリラアルデヒド、ペリラアルコール、およびマルトール(Veltol Plus:Pfizer Inc.,商品名)、またはそれらの混合物の中から選択される芳香物質を使用することに関する。
【0046】
任意成分
多くの場合、悪臭の発生を無効にするまたは防止する方法を組み合わせて利用することが好ましい。以下に、製品によっては、悪臭をさらに減少させるために有利に使用される任意成分を示す。本発明が関連する製品は多種多様に亘ることから、これら任意成分の全てがあらゆる製品への使用において適しているというわけではないが、これらの製品を処方する当業者は、どの成分が適切であり、どの成分がそうでないかを認識することができる。
【0047】
金属イオン封鎖剤
抗菌効果および酵素阻害効果をそれ自体が有するか、または従来の殺生物剤の有効性を増強する金属イオン封鎖剤の例としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸などのアミノカルボキシレート、ヒドロキシエタンジメチレンホスホン酸、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタメチルホスホン酸などのアミノホスホン酸、および個々にまたは混合して用いられるそれらの塩が挙げられる。特に好ましいのは、生分解性の金属イオン封鎖剤であり、これらに限定されるものではないが、S,S−エチレンジアミンジコハク酸、およびその塩、またはグルタミン酸N,N−二酢酸四ナトリウム塩(Dissolvine GL−38 ex Akzo Nobel)およびそれらの化合物が挙げられる。製品形態の多様性や、製品によってはカルシウムおよびマグネシウムを含有する水「硬水(hard water)」により希釈される可能性もあることから、金属イオン封鎖剤は、処方物中に0.01〜0.5重量%という広範な濃度範囲で含有させることができる。
【0048】
抗菌剤
本発明と組み合わせで有効に用いられる広範囲の抗菌剤としては、例えば、クオタニウム15、塩化ベンザルコニウム、塩化セトリモニウム、塩化ミリスタルコニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化ラウリルピリジニウムなどの陽イオン性薬剤があげられる。また、これに限定されるものではないが、抗菌特性を有する酸およびそれらの陰イオン化物の例としては、ソルビン酸、安息香酸、およびデヒドロ酢酸が挙げられる。他の抗菌剤としては、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール、DMDMヒダントイン、イミダゾリジニルウレア、2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオールおよび4,4−ジメチルオキサゾリジンが挙げられる。さらに、フェノール系抗菌物質として、クロロキシレノール、サリチル酸、ならびにKathon(Lonza)およびProxelおよびProxemal(Astra Zeneca)の商品名で市販されているイソチアゾリン誘導体が用いられてもよい。
【0049】
悪臭吸収材
悪臭の吸収材としては、Degussa社からTego Deoとして販売されているリシノール酸亜鉛、ならびに米国特許第5,942,217号;同第5,955,093号;および同第6,033,679号に記載のサイクロデキストリンが挙げられる。ペットの敷材用トレイに用いてもよい、悪臭を吸収する他の吸収材としては、粘土またはゼオライトが挙げられる。
【0050】
本発明の適用製品
<トイレ用固形リム・ブロック及びシスターン・ブロック(便器用および貯水槽用固形防汚洗浄剤)>
本発明の一つの実施形態は、トイレの防汚洗浄剤に関する。この防汚洗浄剤としては、水洗の間に、貯水槽からの水が防汚洗浄剤の上から流れることで防汚洗浄剤の一部を溶かすように、トイレの便器または小便器の縁の下に設置して使用される防汚洗浄剤が挙げられる。このような防汚洗浄剤は一般に当分野においては、「便器用防汚洗浄剤(リム・ブロック)」として公知であり、そして本明細書においてはそのように、または単に「防汚洗浄剤」と呼ばれる。また、本発明は、貯水槽中に置かれ、その水の中でゆっくり溶ける、いわゆる貯水槽用防汚洗浄剤(シスターン・ブロック)に関する。これら2つの製品の溶解特性が、全く異なることは容易に理解されるだろう。なぜなら、一方は水との接触が断続的で短時間であるのに対し、他方は常に水面下にあるからである。しかし、これらは両方とも、界面活性剤、賦形剤、本発明の成分を含有していてもよいフレグランスを含有し、また、必要に応じて漂白剤、殺菌薬および抗ライムスケール(水あか落とし)剤を含有してもよい。代表的な処方物は、国際特許出願公開WO97/7721、同WO82/03532、欧州特許出願公開第0 462 643号、英国特許出願公開第2 178 442号および米国特許第4,874,536号に教示されおり、これらは全て引用によって本明細書の説明の一部とされる。
【0051】
<液体リム・ブロック(便器用液体防汚洗浄剤)>
本発明のフレグランスの別の実施形態は、液体リム・ブロック(便器用液体防汚洗浄剤)として公知のトイレ用洗浄剤に関する。便器用液体防汚洗浄剤は、便器の縁の下から液体組成物が直接トイレの便器へ分配される仕組みになっている。このような液体防汚洗浄剤は一般に、種々の方法、例えばフックなどによって、トイレの便器の縁に取り付けられる。液体防汚洗浄剤が装備されたトイレは水洗される度に、ある量の組成物がトイレの便器に分配される。便器用液体防汚洗浄剤の例として、国際出願WO02/40792には、吊るすための手段と複数の活性物質のために少なくとも2つの区画を有する液体防汚洗浄剤装置が提示されている。また、国際出願公開WO02/04951には、液体防汚洗浄剤と、2500mPa.sより大きい粘度を有する液体組成物をトイレの便器の縁の下から分配するための分配器からなる、トイレの洗浄装置が提示されている。他の同様の装置は、欧州特許出願公開第0775741号および国際出願公開WO01/94520に記載され、これらは全て引用によって本明細書の一部とされる。
【0052】
<硬質面用液体洗浄剤処方物>
本発明のさらなる実施形態は、万能洗浄剤または汎用洗浄剤としても公知の硬質面用洗浄剤処方物に関する。これらには、等方性液体(isotropic liquids)や、研磨剤を含むまたは含まない濃厚な液体、あるいはムース(mousse)などの広範囲の製品がある。これらは、容器から直接塗布されてもよいし、水で希釈した後に塗布されてもよい。種々の使用手段が使用者の便宜のために考案されている。そのうちのいくつかを挙げると、引金式スプレー容器から表面上に噴霧する、あるいは、表面上に直接注がれて、例えばトイレが水洗されるときに除かれるものなどである。それらは、さらなる成分、例えば、水あか除去のための酸、衛生のための殺菌剤、または漂白剤を含有してもよい。結果として、この種製品には広範な種々の処方物がある。下の表1には、主な処方成分とこれに用いられる標準的な化合物をまとめて示す(これは、Surfactant Science Series 第67巻、Liquid Detergents chapter on Speciality Liquid Household Surface Cleaners p479、表4からとっている)。本発明に係るフレグランスは、酸化漂白剤(例えば、次亜塩素酸ナトリウムまたは過酸化水素)が処方に含まれている場合を除いて、全ての製品中のフレグランスとして用いられてもよい。
【0053】
【表1】

【0054】
<ペット用敷材>
動物ペット数が増えたことから、動物用敷材の使用が増えている。多数の動物用敷材製品が市販され、また先行技術によって教示されている。
動物用敷材は、通常、砂、顆粒化粘土、顆粒化ゼオライトなどの豊富に存在する天然鉱物;ウッドチップ、おがくず、細断紙、ペレット状または細断されたリサイクル布地、砕樹皮、アルファルファなどのリサイクル廃棄セルロース性材料;または粉砕したトウモロコシ外皮のようなその他の植物材料などの安価な材料からなっている。動物用敷材の機能を改善するために、動物用敷材には、さらに、吸収性を改善する物質、粒子を凝集させる物質、廃棄を容易にする物質、悪臭処理剤などが用いられている。例えば、米国特許第4,437,429号には、粘土ベースの敷材の臭気をコントロールするためにゼオライトを用いることが示されている。また、米国特許第3,789,717号には、ベントナイト粘土と、脱臭剤として機能するクロロフィルを供給するアルファルファとを組み合わせることが記載されている。本発明のフレグランス組成物は、製造の際にペットの敷材に含まれてもよいし、敷材を使用する際に用いられてもよい。
【0055】
<カーペットクリーナー>
カーペットクリーナーの形態としては、例えば粉末、液体、泡、噴霧スポット処理などがある。これらの製品の多くは、大面積を処理する場合には、特定のクリーニング装置と組み合わせて用いなければならない。しかし、カーペットをクリーニングする場合、クリーニング後に心地よい香りを残すことが望ましいことから、カーペットクリーニング製品に本発明のフレグランス組成物の少なくとも一種を使用することが適当であるしまた望ましい。
【0056】
<空気清浄器、織物および室内繊維製備品用脱臭スプレー>
空気中の、または織物および室内繊維製備品の悪臭を軽減または隠蔽するための製品は、例えばSCジョンソン(SC Johnson)社のグレイド(Glade)、プロクター アンド ギャンブル(Proctor and Gamble)社のファブリーズ(Febreze)などとして既に知られている。これら製品は、空気中にまたは製品使用対象物の表面に噴霧するように作られている。これらは、揮発性の噴霧ガスを用いて、または噴霧ガスを必要としない引金式スプレーを用いて、エアロゾルの形態で適用される。米国特許出願公開第2005/0124512号には、空気中のアミンと反応させるために繊維非変色性アルデヒドが用いられた製品を包含するサイクロデキストリンが示されている。しかし、この特許には、アルデヒド自身は反応せず悪臭形成を阻害することができることについての示唆は、どこにもない。また米国特許出願公開第2003/0044309号には、インドールベースの悪臭の発生の防止というより、繊維と直接接触した際に反応して既に存在する悪臭を無臭化する、芳香性アルデヒドを含有するエマルジョンが記載されている。インドール阻害物質を含むフレグランス組成物は、これらの製品にも好ましく用いられる。
【0057】
<室内空気清浄器>
悪臭を無臭化して周辺空気を清浄化または芳香化する製品あるいは虫除け器としては、電源を有さず拡散によって働くもの、あるいは液体貯蔵器と接触する芯を電気的に加熱し、これによりフレグランスの発散速度を制御するものが挙げられる。このような機器は、米国特許第6,917,754号に記載されるような、コンセント接続型のもの、いわゆるプラグイン清浄器であってもよいし、バッテリー電源接続型のもの、すなわち、携帯型のものもしくは自動車内で使用されるものであってもよい。このような機器は、必要であれば、フレグランスを撒くために噴霧スプレーを使用してもよいし、電動ファンを備えていてもよい。本発明のフレグランス組成物は、悪臭の発生を防止するため、上記したような清浄化機器で撒き散らされてもよいし、種々の対象物外面に適用されてもよい。
【0058】
<身体から排出される液体の吸収を目的とする繊維物品>
ヒトおよび動物の排泄物を吸収、保持することを目的として用いられる製品においては、かなりの成功が収められている。例えば使い捨てオムツおよびトレーニングパンツ、生理用ナプキン、タンポンおよび失禁用品のような物品は、排泄物をより多く保持し、かつ漏出を防ぐようにするために、弾性物質、障壁層、超吸収性ポリマー等を用いることで高性能化されてきている。これらの技術については、米国特許第4,846,823号;同第5,932,495号;同第4,335,722号を引用することにより、本発明の説明の一部とされる。上記したような技術的改善によって、交換頻度が少なくて済むようになったことから、これらの製品に収容される排出物の量が増えるようになっており、悪臭のコントロールへの挑戦はまだまだ続くのである。
【0059】
このような悪臭の発生を防止する、あるいは形成された悪臭を吸収する際に、しばしば抗菌処理が試みられている。このような抗菌処理には、活性炭、ゼオライト、金属、例えば、銅、金属酸化物、水酸化アルミニウム、鉱物、例えば、ホルマイト(holmite)、ラコナイト(laconite)、カオリン、並びに分子篩の修飾物のような添加剤を使用すること、および種々の悪臭形成成分を中和するために、酸性/塩基相互作用を使用することが提案されている。米国特許第6,031,147号では、使い捨て吸収製品における臭気制御のために、界面活性剤を使用することが提案されている。また米国特許出願公開第2002/0010447号には、上記のいくつかが教示されているし、またタイプの異なる2種のアルデヒドの混合物を使用することも教示されているが、この出願は、該2タイプのアルデヒドが、インドール化合物類に関連する悪臭の発生を防止すること、および該2タイプのアルデヒドが相互作用によって変化されないことのいずれも教示していない。このような努力にもかかわらず、臭気をより良好に制御する必要性は依然として存在する。
【実施例1】
【0060】
(活性な芳香化合物の同定)
新鮮なヒト尿のサンプルを等量に分け、1以上の有効物質を含むフレグランス組成物をインドール阻害試験に記載したとおりに添加した。不活性化合物に置換られたコントロールサンプルを調製するとともに、尿の適切性を決定するために、フレグランス組成物を用いない第3のブランクサンプルも調製した。これらのサンプルを保管して、24時間後にインドール含量およびフレグランス活性含量を、ガスクロマトグラフィー−質量分析(GCMS)検出器によって測定した。活性成分を含有するこれらの処方物は、インドールの形成を阻害したが、フレグランス組成物を用いないサンプルおよびアルコール含有コントロールサンプルは、両者とも、インドールの存在量がかなり大きかった。また、GCMS測定によって、活性化合物は、この化合物それ自体がプロセスの一部として消費される程度の減少量であることが示された。表2には、芳香成分の減少が3つのカテゴリーに分類されている。表中のYの文字は、測定された化合物がどのカテゴリーに該当したかを示している。いずれのカテゴリーにもYの文字がなければ、その化合物は減少が測定されなかったことを意味する。
【0061】
【表2】

【0062】
以下の化合物は、24時間後に尿中のインドールレベルの低減に効果がないことが分った。
【0063】
不活性化合物 CAS番号
ベンジルアルコール 100−51−6
フェニルエチルアルコール 60−12−8
シンナミックアルコール 104−54−1
シトロネロール 106−22−9
アルコール C10 112−30−1
ヘキシルシンナミルアルデヒド 101−86−0
アミルシンナミルアルコール 101−85−9
コバノール 31906−04−4
(高砂香料工業株式会社:商品名)
アニスアルコール 105−13−5
ジメチルオクテノン 2550−11−0
ジメチルオクタノール 106−21−8
α−ダマスコン 24720−09−0
フェニルアセトアルデヒド 122−78−1
リリアール 80−54−6
ラウリナール 107−75−5
ゲラニオール 106−24−1
ネロール 106−25−2
β−イオノン 14901−07−6
シクラメンアルデヒド 103−95−7
マイラックアルデヒド 37677−14−8
バニリン 121−33−5
エチルバニリン 121−32−4
カントキサール 5462−06−6
クミンアルデヒド 122−03−2
フェノキサノール 55066−48−3
トリプラール(Triplal) 68039−49−6
【実施例2】
【0064】
(液体リム・ブロックでの実施)
下記表3の活性組成物(実施例2)を、実施例6の組成を有する液体リム・ブロック処方物中に混合し、インドール阻害試験のパートBに記載されるような0.02gの活性芳香剤量となるよう、その0.25gを、7.0gの新鮮な適切ヒト尿サンプルに添加した。24時間後にインドール含量を測定し、その結果をファイルURIN40.Dとして図1に示した。比較例Aとしてのコントロールを、同じ液体リム・ブロック処方物と混合して、図1中のファイルURIN41.Dの結果を得た。他方、尿中に0.2gの液体リム・ブロック処方物を含むブランクサンプルでは、図1中のファイルURIN39.Dの結果となった。これらの結果から、本発明のフレグランス組成物は、インドール濃度を0.01ppm(重量/重量)未満に低下させたことが分かった。ただし、液体リム・ブロック中の実施例2および比較Aの用量は、通常添加される全芳香剤量の約30重量%である。
【0065】
【表3】

【実施例3】
【0066】
下記表4に、家庭用製品での使用に適した、5%の活性成分を含有する本発明のフレグランス組成物と、本発明のフレグランス組成物の活性なアルデヒドに対応する不活性なアルコールを含有するコントロール比較フレグランス例Bを示す。
【0067】
【表4】

【実施例4】
【0068】
表5に、家庭用製品での使用に適した、23%の活性成分を含有する本発明のフレグランス組成物と、このフレグランス組成物の活性なアルデヒドに対応する不活性なアルコールを含有するコントロール比較フレグランス例Cを示す。
【0069】
【表5】

【実施例5】
【0070】
(家庭用洗浄剤)
表6に、本発明のフレグランス組成物を配送するために用いられる液体の家庭用洗浄剤の例を示す。
【0071】
【表6】

【実施例6】
【0072】
液体リム・ブロック
表7に、本発明のフレグランス組成物を配送するために用いられる液体リム・ブロックの例を示す。
【0073】
【表7】

【実施例7】
【0074】
表8に、本発明のフレグランス組成物を配送するために用いられる酸性の便器洗浄剤の例を示す。
【0075】
【表8】

【実施例8】
【0076】
(便器用濃縮洗浄剤)
表9に、本発明のフレグランス組成物を配送するために用いられる便器用濃縮洗浄剤の例を示す。
【0077】
【表9】

【実施例9】
【0078】
(酸性研磨洗浄剤)
表10に、本発明のフレグランス組成物を配送するために用いられる酸性研磨洗浄剤の例を示す。
【0079】
【表10】

【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】液体リム・ブロックにおける、実施例2の、ブランクサンプル、コントロールサンプルおよび活性なフレグランス組成物に対するインドールピークについての比較図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホームケア製品用またはパーソナルケア製品用のフレグランス組成物の使用方法であって、該フレグランス組成物は、アルデヒド、α,β−不飽和アルデヒド、アルコール、ケトンおよびこれらの混合物の中から選択される芳香物質を含み、該芳香物質は、これを気密シール容器中の適切な新鮮ヒト尿に0.28重量%加え、室温で24時間インキュベーションした後、インドールの発生を0.01ppm(重量/重量)未満に制御する、糞便および尿汚れ由来のインドールを主成分とする悪臭の発生を防止することを特徴とするフレグランス組成物の使用方法。
【請求項2】
請求項1に記載されたアルデヒド、α,β−不飽和アルデヒド、アルコール、ケトンおよびこれらの混合物の中から選択される芳香物質を少なくとも2.5重量%〜100重量%、好ましくは10重量%〜100重量%、さらに好ましくは20重量%〜100重量%、それよりさらに好ましくは40重量%〜100重量%含有する、請求項1に記載のフレグランス組成物の使用方法。
【請求項3】
請求項1に記載されたアルデヒド、α,β−不飽和アルデヒド、およびこれらの混合物の中から選択される芳香物質を2.5%〜100重量%、好ましくは10%〜100重量%、さらに好ましくは20%〜100重量%、それよりさらに好ましくは40%〜100重量%含有する、請求項1に記載のフレグランス組成物の使用方法。
【請求項4】
請求項1に記載されたアルデヒド、α,β−不飽和アルデヒド、アルコール、ケトンおよびこれらの混合物の中から選択される芳香物質が、請求項1に記載のインキュベーション条件下で60重量%以下、好ましくは30重量%以下に減少しない、請求項1〜3のいずれかに記載のフレグランス組成物の使用方法。
【請求項5】
アセトフェノン、アルデヒドC−11、アルデヒドC−10、ベンズアルデヒド、ベンゾフェノン、シンナミックアルデヒド、シトロネラール、シトラール、2−メチル−3−(3,4−メチレンジオキシフェニル)−プロパナール、トランス−2−ヘキセナール、トランス−2−ヘキセノール、ペリラアルデヒド、ペリラアルコール、マルトール、またはこれらの混合物の中から選択される芳香物質を2.5重量%〜100重量%含有し、ホームケア製品またはパーソナルケア製品に含まれたときに、インドールを含有する悪臭の発生を防止するフレグランス組成物の使用方法。
【請求項6】
アセトフェノン、アルデヒドC−11、アルデヒドC−10、ベンズアルデヒド、ベンゾフェノン、シンナミックアルデヒド、シトロネラール、シトラール、2−メチル−3−(3,4−メチレンジオキシフェニル)−プロパナール、トランス−2−ヘキセナール、トランス−2−ヘキセノール、ペリラアルデヒド、ペリラアルコール、マルトール、またはこれらの混合物の中から選択される芳香物質を10重量%〜100重量%含有し、ホームケア製品またはパーソナルケア製品に含まれたときに、インドールを含有する悪臭の発生を防止するフレグランス組成物の使用方法。
【請求項7】
リム・ブロック、シスターン・ブロックおよび液体リム・ブロックのような芳香性トイレ用品に用いられる、請求項1〜6のいずれかに記載されたフレグランス組成物。
【請求項8】
タンポン、生理用ナプキン、オムツ、幼児パンツ、失禁用品などの繊維性液体吸収物およびその他の身体からの排出物吸収用品において使用される、請求項1〜6のいずれかに記載されたフレグランス組成物。
【請求項9】
硬質表面洗浄剤、室内装飾用布地洗浄剤および室内空気清浄剤のような家庭用洗浄製品において使用される、請求項1〜6のいずれかに記載されたフレグランス組成物。
【請求項10】
動物用の敷材に含まれる、請求項1〜6のいずれかに記載されたフレグランス組成物。
【請求項11】
室内装飾用布地用引金式スプレー洗浄剤において用いられる、請求項1〜6のいずれかに記載のフレグランス組成物。
【請求項12】
カーペットクリーナーにおいて用いられる、請求項1〜6のいずれかに記載のフレグランス組成物。
【請求項13】
アセトフェノン、アルデヒドC−11、アルデヒドC−10、ベンズアルデヒド、ベンゾフェノン、シンナミックアルデヒド、シトロネラール、シトラール、2−メチル−3−(3,4−メチレンジオキシフェニル)−プロパナール、トランス−2−ヘキセナール、トランス−2−ヘキセノール、ペリラアルデヒド、ペリラアルコール、マルトール、またはこれらの混合物の中から選択される化合物の、インドールインヒビターとしての使用方法。
【請求項14】
糞便および尿汚れ由来の悪臭原であるインドールの発生を防止することを目的する請求項7に記載のフレグランス組成物の調製方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−36434(P2008−36434A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−202795(P2007−202795)
【出願日】平成19年8月3日(2007.8.3)
【出願人】(000169466)高砂香料工業株式会社 (194)
【Fターム(参考)】