説明

インバンドループバック機能を有するネットワーク装置

【課題】インバンドループバック機能を有するネットワーク装置において、エンドユーザの負担増を少なく抑えながら、通信信号の永続的なループに好適に対処することを可能にする。
【解決手段】局装置11は、第1の伝送路21上に設けられ、第1の伝送路21を通じて入力される第1の入力信号のループバック制御値を、第1の入力信号を折り返すための期待値Aと照合し、第1の入力信号を選択的に折り返す第1のルート切替部25と、第2の伝送路31上に設けられ、第2の伝送路31を通じて入力される第2の入力信号のループバック制御値を、第2の入力信号を折り返すための期待値Lと照合し、第2の入力信号を選択的に折り返す第2のルート切替部36と、第1の伝送路21上に設けられ、第1の入力信号のループバック制御値と期待値Lとを照合し、それらが一致したときに第2のルート切替部36の折り返し機能を無効化するLBチェック部23とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インバンドループバック機能を有するネットワーク装置に関し、特に、ANSI T1.403の北米DS1仕様のネットワークに適した装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ネットワーク内の通信装置や回線の状態を確認する方法として、通信装置の1つから発信した試験信号をネットワーク内で折り返し、それを試験信号の発信元の通信装置に還送するループバックが広く用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、ループバックによる回線試験にあたり、図5に示すように、キャリア(通信事業者)のネットワーク72を介在させてエンドユーザ端末(末端端末)73、74を接続したネットワークでは、エンドユーザが自発的に回線試験を行うことができない。すなわち、キャリアのネットワーク72は、キャリアの管轄下にあり、その回線試験もキャリアが行うのが原則であるため、エンドユーザが回線状態を把握したい場合には、その都度、キャリアに連絡を取り、回線試験を依頼せざるを得ない。
【0004】
そこで、上記のような煩わしさを解消する方法の1つとして、ANSI T1.403のDS1にインバンドループバックが規定されている。このインバンドループバックは、ループバックの実行、解除を指定する固有のデータ(以下、「ループバック制御値」という)をエンドユーザ端末73、74の出力データ(DS1データ)に組み入れ、それをキャリアのネットワーク72で検出することにより、ループバックの実行、解除を制御するものである。
【0005】
尚、DS1には、通信信号のフレームフォーマットとして、アンフレームド、SF及びESFの3種類が規定されているが、上記のループバック制御値は、それらのフォーマットのペイロード領域にコードとして組み込まれる。尚、ESFの場合、マルチフレームビット領域にメッセージとして組み込まれる場合もある。
【0006】
ここで、インバンドループバック機能を利用したループバックの基本動作について、図5、図6を参照しながら説明する。図5に示すネットワークは、多段配置された3つの中継部75、76、77がキャリアのネットワーク72に存在する例であり、中継部75〜77の各々には、対向配置された一対の局装置81、82、83、84、85、86が設けられる。
【0007】
尚、図5では、両端の中継部75、77にエンドユーザ端末を1台ずつ接続した例を示しているが、中継部75〜77の各々には、複数のエンドユーザ端末を接続することができ、その場合には、それらの端末からの発信信号を多重化して通信する。また、局装置81〜86に関し、以下においては、図6に示すように、中継部75〜77の各々で、試験信号の発信元に近い側の局を「自局」と称し、発信元から遠い側の局を「対向局」と称することがある。
【0008】
インバンドループバック機能には、大別して、「インバンドFar−Endループバック」と「インバンドNear−Endループバック」との2種類が規定されている。このうち、インバンドFar−Endループバックは、図6(a)に示すように、中継部75〜77への入力信号を対向局で折り返すものであり、一方、インバンドNear−Endループバックは、図6(b)に示すように、中継部75〜77への入力信号を自局で折り返すものである。
【0009】
インドバンドループバックの実行にあたっては、先ず、図5に示すように、局装置81〜86の各々に対して、インドバンドループバック用の期待値A〜期待値Lを設定する。ここで、期待値とは、上記のループバック制御値に対応するものである。
【0010】
期待値は、局装置81〜86毎に異なる値を設定し、また、局装置81〜86の各々において、エンドユーザ端末73からの発信信号OS1をループバックするための期待値と、エンドユーザ端末74からの発信信号OS2をループバックするための期待値との2方向の期待値を設定する。例えば、中継部75の局装置81であれば、エンドユーザ端末73からの発信信号OS1をインバンドNear−Endループバックで折り返すための期待値Aと、エンドユーザ端末74からの発信信号OS2をインバンドFar−Endループバックで折り返すための期待値Lとを設定する。
【0011】
尚、ループバック制御値ではループバックの実行と解除で異なる値を用いるため、期待値A〜Lの各々において、ループバックの実行に対応する期待値と、ループバックの解除に対応する期待値との2種類を設定する。
【0012】
そして、例えば、エンドユーザ端末73から信号を発信し、それを中継部77の局装置86で折り返すループバックを希望する場合には、エンドユーザ端末73の発信信号OS1に、局装置86に設定した期待値Fと同一値を有するループバック制御値を組み入れて発信する。
【0013】
局装置81〜86では、エンドユーザ端末73の発信信号OS1のコード又はメッセージを自身に設定された期待値と対比し、自身の期待値と一致するループバック制御値を所定時間又は所定回数に亘って検出した場合に、回線の状態を折り返し側に切り替える。このため、期待値Fと同一値のループバック制御値を発信信号OS1に組み入れた場合には、局装置86において、回線が折り返し側に切り替わり、その後の入力信号が折り返されるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】国際公開WO2004/070975号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかし、インバンドループバック機能により回線試験を行うように構成されたネットワークにおいては、局装置81〜86の期待値A〜Lの入力設定を誤り、重複して設定すると、通信信号の永続的なループを招くという欠点がある。
【0016】
例えば、中継部77の局装置86の期待値F(エンドユーザ端末73からの発信信号OS1をインバンドFar−Endループバックで折り返すための期待値)と、中継部75の局装置81の期待値L(エンドユーザ端末74からの発信信号OS2をインバンドFar−Endループバックで折り返すための期待値)とが重複した状態で、局装置86で折り返すための発信信号OS1を出力した場合には、次のような事態を生じ得る。
【0017】
ループバック制御値がコードに組み込まれ、ループバックの設定が“実行:5秒連続”、“解除:5秒連続”であったとすると、局装置86では、期待値F(実行用の期待値)と同一値のコードを5秒間に亘って検出したときに、回線を折り返し側に切り替える。このため、エンドユーザ端末73からの発信信号OS1は、最初の5秒間は局装置86で折り返されることなく真っ直ぐ進み、5秒の経過後から、図7に示すように、局装置86で折り返されることになる。
【0018】
しかし、上記の設定の下で、5秒間分のコード(期待値Fと同一値)を2回に亘って出力すると、2回目の5秒のコードが局装置86で折り返され、局装置85〜82を経て局装置81に進入する。このとき、期待値Lと期待値Fが重複していると、局装置81でも、コードと期待値が一致し、回線が折り返し側に切り替えられる。その結果、局装置81〜局装置86の間で閉ループが形成され、以後、通信信号がキャリアのネットワーク72内を循環し続けることになる。
【0019】
こうした問題は、インバンドNear−Endループバックの場合にも同様に生じ、例えば、中継部77の局装置85の期待値E(エンドユーザ端末73からの発信信号OS1をインバンドNear−Endループバックで折り返すための期待値)と、中継部75の局装置82の期待値K(エンドユーザ端末74からの発信信号OS2をインバンドNear−Endループバックで折り返すための期待値)とが重複した場合には、図8に示すように、局装置82〜局装置85の間で通信信号が永続的にループされるようになる。
【0020】
このような永続的なループ状態に陥ると、キャリアのネットワーク72を使用できなくなるため、インバンドループバック機能付きのネットワークの構築にあたっては、ネットワーク72を統括的に制御する装置(例えば、ネットワークOpS等)を配置して局装置81〜86と接続し、通信信号の永続的なループが発生した場合に、それを強制的に解除し得る構成を採ることが好ましい。
【0021】
しかし、上記のような制御装置を接続した場合には、制御装置自身の装置コストや局装置81〜86との接続コスト等が必要になるため、ネットワーク全体のコストが大幅に増大し、エンドユーザの負担増を招くという問題がある。
【0022】
また、かかる制御装置はキャリアの管轄下に置かれるため、無限ループの解除にあたっては、エンドユーザがキャリアに連絡して不具合を報告し、それを受けてキャリアが解除操作を進めるという流れになる。このため、エンドユーザから見て利便性が低く、また、ネットワーク72の復旧までに長時間を要して迅速性に欠けるという問題もある。
【0023】
そこで、本発明は、上記従来の技術における問題点に鑑みてなされたものであって、インバンドループバック機能を有するネットワーク装置において、ネットワーク全体のコスト増を少なく抑えながら、通信信号の永続的なループに好適に対処することが可能なネットワーク装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記課題を解決するため、本発明は、末端端末の発信信号に組み入れたループバック制御値に基づき、第1の方向で信号を伝送する第1の伝送路と、該第1の方向と逆向きの第2の方向で信号を伝送する第2の伝送路との一方から他方へ信号を折り返すインバンドループバック機能を有するネットワーク装置であって、前記第1の伝送路上に設けられ、該第1の伝送路を通じて入力される第1の入力信号のループバック制御値を、該第1の入力信号を折り返すための第1の期待値と照合し、該第1の入力信号を選択的に折り返す第1のルート切替部と、前記第2の伝送路上に設けられ、該第2の伝送路を通じて入力される第2の入力信号のループバック制御値を、該第2の入力信号を折り返すための第2の期待値と照合し、該第2の入力信号を選択的に折り返す第2のルート切替部と、前記第1の伝送路上に設けられ、前記第1の入力信号のループバック制御値と前記第2の期待値とを照合し、それらが一致したときに前記第2のルート切替部の折り返し機能を無効化するLBチェック部とを備えることを特徴とする。
【0025】
そして、本発明によれば、第1の入力信号を第2の期待値と照合し、それらが一致する場合には、第2のルート切替部の折り返し機能を無効化するため、永続的なループの発生を未然に防止することができ、ネットワーク全体のコスト増を少なく抑えながら、通信信号の永続的なループに好適に対処することが可能になる。
【0026】
上記ネットワーク装置において、前記第2の入力信号の前記第2のルート切替部への入力タイミングを遅延させる遅延部を設けることができる。これによれば、第2のルート切替部の折り返し機能を無効化する前に第2の入力信号(第1の入力信号が折り返された戻り信号)が第2のルート切替部に進入するのを防止することができ、通信信号の再折り返しを回避することが可能になる。
【0027】
上記ネットワーク装置において、前記遅延部の遅延時間を、前記LBチェック部による照合処理の開始から前記第2のルート切替部の折り返し機能の無効化の完了までに要する時間よりも長くすることができる。これによれば、通信信号の再折り返しを確実に回避することが可能になる。
【0028】
上記ネットワーク装置において、前記インバンドループバック機能をANSI T1.403のDS1で規定されるものとし、前記ループバック制御値を前記発信信号のコード又はメッセージに組み入れることができる。
【0029】
上記ネットワーク装置において、前記インバンドループバック機能をインバンドFar−Endループバック機能及びインバンドNear−Endループバック機能を有するものとすることができる。
【発明の効果】
【0030】
以上のように、本発明によれば、インバンドループバック機能を有するネットワーク装置において、ネットワーク全体のコスト増を少なく抑えながら、通信信号の永続的なループに好適に対処し得るネットワーク装置を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明にかかるネットワーク装置を適用したネットワーク構成例を示す図である。
【図2】図1の局装置の構成を示す図である。
【図3】図1の局装置の構成を示す図である。
【図4】図1のネットワークの動作を説明するための図である。
【図5】従来のネットワーク構成例を示す図である。
【図6】インバンドループバックを説明するための図である。
【図7】インバンドFar−Endループバック時の誤動作を示す図である。
【図8】インバンドNear−Endループバック時の誤動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
次に、発明を実施するための形態について、図1〜図4を参照しながら詳細に説明する。これらの図において、図5〜図8と同一の構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0033】
図1は、本発明にかかるネットワーク装置を適用したネットワーク構成例を示し、このネットワーク1は、キャリアのネットワーク2を構成する複数の中継部3、4、5と、両端の中継部3、5に接続されたエンドユーザ端末(末端端末)73、74とから構成される。尚、図1では、中継部3、5にエンドユーザ端末を1台ずつ接続した例を示しているが、中継部3〜5の各々に複数のエンドユーザ端末を接続することができる。
【0034】
中継部3〜5の各々には、対向配置された一対の局装置11、12、13、14、15、16が設けられる。局装置11〜16に関し、以下においては、中継部3〜5の各々で、試験信号の発信元に近い側の局を「自局」と称し、発信元から遠い側の局を「対向局」と称することがある。
【0035】
尚、中継部4、5の局装置13、15は、中継部3の局装置11と同様の構成を有し、また、中継部4、5の局装置14、16は、中継部3の局装置12と同様の構成を有するため、ここでは、中継部3の局装置11、12を例にとって詳細に説明する。
【0036】
局装置11は、図2に示すように、エンドユーザ端末73からの信号を局装置12に伝送する第1の伝送路21と、局装置12からの信号をエンドユーザ端末73に伝送する第2の伝送路31とを有する。
【0037】
第1の伝送路21上には、エンドユーザ端末73の発信信号を受信する第1の受信部22と、第1の受信部22の受信信号を監視する第1のLBチェック部23と、第1の受信部22の受信信号を遅延させる第1の遅延部24と、第1の受信部22の受信信号に含まれるループバック制御値に基づいて受信信号の伝送ルートを切り替える第1のルート切替部25と、入力信号を多重化するMUX26と、MUX26で多重化された信号を局装置12に送信する第1の送信部27とが設けられる。
【0038】
一方、第2の伝送路31上には、局装置12から伝送される信号を受信する第2の受信部32と、第2の受信部32の受信信号(多重化信号)を分離するDEMUX33と、第2の受信部32の受信信号(分離後の信号)を監視する第2のLBチェック部34と、第2の受信部32の受信信号を遅延させる第2の遅延部35と、第2の受信部32の受信信号に含まれるループバック制御値に基づいて受信信号の伝送ルートを切り替える第2のルート切替部36と、第2のルート切替部36から伝送された信号をエンドユーザ端末73に送信する第2の送信部37とが設けられる。
【0039】
また、局装置11には、局装置11のインバンドNear−Endループバックの期待値Aを格納し、第1のルート切替部25及び第2のLBチェック部34に出力する第1のレジスタ28と、局装置11のインバンドFar−Endループバックの期待値Lを格納し、第2のルート切替部36及び第1のLBチェック部23に出力する第2のレジスタ38とが設けられる。
【0040】
上記構成において、第1のLBチェック部23は、エンドユーザ端末73側から入力される信号のコード又はメッセージを監視し、第2のレジスタ38に格納された期待値Lとの一致判定を行う。その結果、両者が一致すれば、その旨を示すフラグ信号(以下、「一致フラグ」という)を第2のルート切替部36に出力する。
【0041】
第2のLBチェック部34においても、局装置12側から入力される信号のコード又はメッセージと、第1のレジスタ28に格納された期待値Aとを対比し、両者が一致する場合に、一致フラグを第1のルート切替部25に出力する。
【0042】
第1のルート切替部25は、エンドユーザ端末73側から入力される信号のコード又はメッセージを監視し、第1のレジスタ28に格納された期待値Aとの一致判定を行う。その結果、両者が一致する場合には、信号を折り返して第2のルート切替部36に出力し(インバンドNear−Endループバック)、逆に、一致しない場合には、信号を折り返すことなくMUX26に出力する。
【0043】
但し、第2のLBチェック部34から一致フラグを受信していた場合には、ループバック機能を無効とし、入力信号のコード等と期待値Aが一致しても信号を折り返さずにMUX26に出力する。
【0044】
第2のルート切替部36においても、局装置12側から入力される信号のコード又はメッセージと、第2のレジスタ38に格納された期待値Lとを対比し、両者が一致する場合には、信号を折り返して第1のルート切替部25に出力する(インバンドFar−Endループバック)。但し、この場合も、第1のLBチェック部23から一致フラグを受信していた場合には、ループバック機能を無効とし、信号を折り返さずに第2の送信部37に出力する。
【0045】
図3に示すように、局装置12は、中継部4(図1参照)からの信号を局装置11に伝送する第1の伝送路41と、局装置11の送信信号を中継部4に伝送する第2の伝送路51とを有する。第1の伝送路41には、第1の受信部42、第1のLBチェック部43、第1の遅延部44、第1のルート切替部45、MUX46及び第1の送信部47が設けられ、第2の伝送路51には、第2の受信部52、DEMUX53、第2のLBチェック部54、第2の遅延部55、第2のルート切替部56及び第2の送信部57が設けられる。
【0046】
尚、第1の受信部42〜第1の送信部47は、局装置11の第1の受信部22〜第1の送信部27と同様のものであり、また、第2の受信部52〜第2の送信部57は、局装置11の第2の受信部32〜第2の送信部37と同様のものである。
【0047】
さらに、局装置12には、局装置12のインバンドNear−Endループバックの期待値Kを格納し、第1のルート切替部45及び第2のLBチェック部54に出力する第1のレジスタ48と、局装置12のインバンドFar−Endループバックの期待値Bを格納し、第2のルート切替部56及び第1のLBチェック部43に出力する第2のレジスタ58とが設けられる。
【0048】
次に、上記構成を有するネットワーク1の動作について、図1〜図4を参照しながら説明する。ここでは、先ず、図4(a)に示すように、エンドユーザ端末73からの発信信号OSを局装置(自局)11で折り返し(インバンドNear−Endループバック)、戻り信号RSをエンドユーザ端末73に還送する場合について説明する。
【0049】
同処理にあたっては、先ず、エンドユーザ端末73において、局装置11の第1のレジスタ28に格納された期待値Aと同一値を有するループバック制御値を発信信号OSに組み入れ、その状態で発信信号OSを中継部3に送信する。局装置11では、第1のLBチェック部23において、エンドユーザ端末73からの発信信号OSのコード又はメッセージを監視し、第2のレジスタ38に格納された期待値Lとの一致判定を行う。
【0050】
このとき、期待値A〜Lが正しく入力設定されており、期待値Aと期待値Lに異なる値が設定されていた場合には、コード等に組み込まれたループバック制御値と、第2のレジスタ38の期待値Lとが一致しないため、第1のLBチェック部23は、特別な処理を行うことなく、発信信号OSを第1の遅延部24に出力する。
【0051】
これに対し、期待値A〜Lの入力設定を誤り、期待値Aと期待値Lが重複していた場合には、発信信号OS中のループバック制御値と期待値Lとが一致する。この場合、第1のLBチェック部23は、第2のルート切替部36に一致フラグを出力した上で、発信信号OSを第1の遅延部24に出力する。
【0052】
次いで、発信信号OSを第1の遅延部24で遅延させた後、第1のルート切替部25において、発信信号OS中のループバック制御値と第1のレジスタ28に格納された期待値Aとを対比し、発信信号OSを折り返して第2のルート切替部36に出力する。その後、第2のルート切替部36において、戻り信号RS中のループバック制御値と第2のレジスタ38に格納された期待値Lとを対比し、信号RSを折り返すべきか否かを判別する。
【0053】
このとき、期待値Aと期待値Lに異なる値が設定されており、戻り信号RS中のループバック制御値と期待値Lが一致しなれば、通常どおり、戻り信号RSをそのまま第2の送信部37に出力する。また、期待値Aと期待値Lが重複して設定され、戻り信号RS中のループバック制御値と期待値Lとが一致する場合でも、前述のように、第1のLBチェック部23から一致フラグを受信しているため、再度の折り返しを行うことなく、戻り信号RSを第2の送信部37に出力する。
【0054】
このように、本実施の形態によれば、入力信号のコード又はメッセージを逆方向の期待値と照合し、それらが一致する場合には、逆方向のループバック機能を無効化するため、折り返し後の戻り信号RSが再び折り返されるのを回避することができ、永続的なループの発生を未然に防止することが可能になる。
【0055】
このため、ネットワークOpS等のような統括的な制御装置の接続が不要となり、ネットワーク全体のコスト増を少なく抑えることでき、エンドユーザに過大な負担を強いるのを回避することが可能になる。また、逆方向のループバック機能を無効化するにあたり、キャリア側の操作を待つことなく、局装置11〜16内で自動的に処理を進めることができるため、利便性・迅速性に優れたシステムを構築することが可能になる。
【0056】
尚、上記の処理に際しては、第1の遅延部24で発信信号を遅延させているが、これは、第2のルート切替部36のループバック機能の無効化が完了する前に、戻り信号RSが第2のルート切替部36に進入して折り返されるのを防止するためである。
【0057】
ここで、第1の遅延部24の遅延時間は、第1のLBチェック部23による一致判定の開始から第2のルート切替部36のループバック機能の無効化の完了までに要する時間よりも長い時間に設定されるのが好ましい。このことは、他の遅延部35、44、55においても同様である。
【0058】
次に、図4(b)に示すように、エンドユーザ端末73からの発信信号を局装置(対向局)12で折り返し(インバンドFar−Endループバック)、エンドユーザ端末73に還送させる場合について説明する。
【0059】
この場合も、局装置11の第1のLBチェック部23において、エンドユーザ端末73からの発信信号と局装置11の第2のレジスタ38に格納された期待値Lとの一致判定を行うとともに、局装置12の第2のLBチェック部54において、局装置11からの受信信号と局装置12の第1のレジスタ48に格納された期待値Kとの一致判定を行う。そして、それらの判定処理において、信号に含まれるループバック制御値と期待値L、Kとが一致すれば、局装置11の第2のルート切替部36のループバック機能、局装置12の第1のルート切替部45のループバック機能を無効とする。
【0060】
このため、前述の場合と同様、局装置12の第2のルート切替部56で折り返された戻り信号RSが再び折り返されるのを防止することができ、永続的なループ状態に陥るのを回避することが可能になる。
【0061】
尚、上記の説明では、ループバック制御値を含む信号をエンドユーザ端末73から発信し、局装置11を自局として、局装置12を対向局として機能させる場合を例示したが、ループバック制御値を含む信号をエンドユーザ端末74から発信し、局装置12を自局として、局装置11を対向局として機能させる場合でも、同様に動作させることができる。
【0062】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、それらの構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0063】
例えば、上記実施の形態においては、3段の中継部3〜5を配置したネットワークを例示したが、中継部の数は、2段又は4段以上であってもよいし、さらには、1段のみとしてもよい。
【0064】
また、上記実施の形態においては、エンドユーザ端末73、74及び中継部3、5の間の通信形式、並びに、中継部3〜5間の通信形式について記載していないが、これらの間の通信形式は、特に限定されるものではなく、有線通信を用いることもできるし、無線通信を用いることもできる。
【符号の説明】
【0065】
1 ネットワーク
2 キャリアのネットワーク
3〜5 中継部
11〜16 局装置
21 第1の伝送路
22 第1の受信部
23 第1のLBチェック部
24 第1の遅延部
25 第1のルート切替部
26 MUX
27 第1の送信部
28 第1のレジスタ
31 第2の伝送路
32 第2の受信部
33 DEMUX
34 第2のLBチェック部
35 第2の遅延部
36 第2のルート切替部
37 第2の送信部
38 第2のレジスタ
41 第1の伝送路
42 第1の受信部
43 第1のLBチェック部
44 第1の遅延部
45 第1のルート切替部
46 MUX
47 第1の送信部
48 第1のレジスタ
51 第2の伝送路
52 第2の受信部
53 DEMUX
54 第2のLBチェック部
55 第2の遅延部
56 第2のルート切替部
57 第2の送信部
58 第2のレジスタ
73、74 エンドユーザ端末
OS 発信信号
RS 戻り信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
末端端末の発信信号に組み入れたループバック制御値に基づき、第1の方向で信号を伝送する第1の伝送路と、該第1の方向と逆向きの第2の方向で信号を伝送する第2の伝送路との一方から他方へ信号を折り返すインバンドループバック機能を有するネットワーク装置であって、
前記第1の伝送路上に設けられ、該第1の伝送路を通じて入力される第1の入力信号のループバック制御値を、該第1の入力信号を折り返すための第1の期待値と照合し、該第1の入力信号を選択的に折り返す第1のルート切替部と、
前記第2の伝送路上に設けられ、該第2の伝送路を通じて入力される第2の入力信号のループバック制御値を、該第2の入力信号を折り返すための第2の期待値と照合し、該第2の入力信号を選択的に折り返す第2のルート切替部と、
前記第1の伝送路上に設けられ、前記第1の入力信号のループバック制御値と前記第2の期待値とを照合し、それらが一致したときに前記第2のルート切替部の折り返し機能を無効化するLBチェック部とを備えることを特徴とするネットワーク装置。
【請求項2】
前記第2の入力信号の前記第2のルート切替部への入力タイミングを遅延させる遅延部を備えることを特徴とする請求項1に記載のネットワーク装置。
【請求項3】
前記遅延部の遅延時間が、前記LBチェック部による照合処理の開始から前記第2のルート切替部の折り返し機能の無効化の完了までに要する時間よりも長いことを特徴とする請求項2に記載のネットワーク装置。
【請求項4】
前記インバンドループバック機能がANSI T1.403のDS1で規定されるものであり、前記ループバック制御値が前記発信信号のコード又はメッセージに組み入れられることを特徴とする請求項1、2又は3に記載のネットワーク装置。
【請求項5】
前記インバンドループバック機能がインバンドFar−Endループバック機能及びインバンドNear−Endループバック機能を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のネットワーク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−142541(P2011−142541A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−2684(P2010−2684)
【出願日】平成22年1月8日(2010.1.8)
【出願人】(303013763)NECエンジニアリング株式会社 (651)
【Fターム(参考)】