説明

インバータ装置およびMR装置

【課題】直列に接続された複数のインバータブリッジを備えたインバータ装置において、インバータブリッジ間の利用率を変えて、インダクタンス性負荷を効率よく駆動する際に、インバータブリッジの入力電源電圧を安定させる。
【解決手段】制御部52が、所望の電流波形における電流値Iの正負および電流微分値dIt/dtの正負に基づいて、インバータブリッジ直列回路25がインダクタンス性負荷30に与える電力のインバータブリッジ21,22間のバランスと、インダクタンス性負荷30からインバータブリッジ直列回路25に回生される電力のインバータブリッジ21,22間のバランスとの不均衡を是正するよう、各インバータブリッジ21,22のオンデューティを制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直列に接続された複数のインバータブリッジ(inverter bridge)を備えたインバータ装置、およびそのインバータ装置を備えたMR(Magnetic Resonance)装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、MR装置は、勾配磁場発生装置を備えている。図1に、勾配磁場発生装置の構成例を概略的に示す。この勾配磁場発生装置は、例えば、複数のスイッチング(switching)素子を含むインバータブリッジ20を備えたインバータ装置である。インバータ装置の入力側には電圧Vbus(例えば800V)のバス電源10が接続され、その出力側にはインダクタンス(inductance)性負荷である勾配コイル(coil)30が接続されている。インバータブリッジ20には、さらに制御部50が接続され、勾配コイル30には、電流センサ(sensor)40が接続されている。制御部50は、目標となる電流波形の電流Itと電流センサ40の出力による実際の電流波形の電流Irとの差分が小さくなるよう、インバータブリッジ20のスイッチング動作をフィードバック(feedback)制御する。
【0003】
このフィードバック制御は、具体的には、電力を伝えるための実質的なスイッチングを行うスイッチング素子の選択と、選択されたスイッチング素子をスイッチングするときのオンデューティεの調整とを行って、出力電圧の正負および大きさを制御することである。図1の例では、スイッチング素子Qa,Qbを選択し、これらをオンデューティ(on-duty)εで同期したスイッチングを行うと、出力電圧Voutは+ε・Vbusとなる。また、スイッチング素子Qc,Qdを選択し、これらをオンデューティεで同期したスイッチングを行うと、出力電圧Voutは−ε・Vbusとなる。
【0004】
ここで、勾配コイル30の電流Iとインバータブリッジ20の出力電圧Voutとの関係について考えてみる。仮に、勾配コイル30に台形状のパルス波形で電流Iを流す場合、勾配コイル30の電流Iとインバータブリッジ20の出力電圧Voutとは、例えば図2に示すような関係になる。そして、電流Iと電圧Voutとの極性が等しいときは、インバータブリッジ20から勾配コイル30に電力が与えられ、互いの極性が逆のときは、勾配コイル30からインバータブリッジ20に電力が回生されることになる。
【0005】
ところで、勾配コイル30に流したい電流波形の中には、一般的に、急峻な立上りや立下りが含まれている。電流Iを高速に上昇させたり下降させたりするには、インバータブリッジ20の出力電圧Voutの絶対値を大きくする必要がある。そして、出力電圧Voutの絶対値を大きくするには、インバータブリッジ20の入力側に接続されるバス電源10の電圧Vbusを高くする必要がある。
【0006】
しかし、インバータブリッジ20を高い電圧のバス電源で常時駆動すると、内部抵抗や安定化のためのダミー(dummy)負荷等により消費電力が増大するため、好ましくない。また、勾配コイル30に流す実際の電流波形は、概してフラット(flat)な部分が多く、急峻な立上りや立下り部分は、割合としてはそれほど多くはない。
【0007】
そこで、改善策の一つとして、入力電源電圧が異なる複数のインバータブリッジを直列に接続したインバータブリッジ直列回路を用い、必要な出力電圧に応じてインバータブリッジ間の利用率を変化させることを考える。
【0008】
例えば、図3に示すように、電源電圧が相対的に高い電圧Vbus1(例えば700V)である第1のバス電源11に接続された第1のインバータブリッジ21と、電源電圧が相対的に低い電圧Vbus2(例えば100V)である第2のバス電源12に接続された第2のインバータブリッジ22とを直列に接続したインバータブリッジ直列回路25を用意する。このインバータブリッジ直列回路25の出力側には、勾配コイル30が接続されている。そして、制御部51は、目標とする勾配コイル30の電流波形に応じて、必要な出力電圧Voutが得られるよう、第1および第2のインバータブリッジ21,22のそれぞれにおけるスイッチング素子の選択と、その選択されたスイッチング素子をスイッチングするときのオンデューティα,βの調整とを行って、それぞれのインバータブリッジの出力電圧V1(=±α×Vbus1),V2(=±β×Vbus2)を制御する(特許文献1,図3等参照)。
【0009】
このようにすれば、高い電圧Vbus1の第1のバス電源11による第1のインバータブリッジ21を、必要なときだけ、必要な分だけ利用することができ、消費電力を抑えつつ、勾配コイル30に目標の電流波形で電流を流すことが可能になる。なお、オンデューティαを0にして、第1のインバータブリッジ21の出力を完全にカットオフ(cut off)するようにしてもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第4362176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、このような勾配磁場発生装置では、勾配コイル30の電流波形によっては、インバータブリッジ直列回路25が勾配コイル30に電力を与えるときの、その電力のインバータブリッジ間のバランスと、勾配コイル30からインバータブリッジ直列回路25に電力が回生されるときの、その電力のインバータブリッジ間のバランス(balance)とが異なるという現象が起きる。
【0012】
例えば、図4に示すように、勾配コイル30に、電流値が比較的緩やかに上昇した後、急峻に下降するような三角波の電流波形で電流を流す場合を考える。
【0013】
電流Iを緩やかに上昇させるときは、出力電圧Voutを+(正)側で比較的小さく保てばよいので、入力電源電圧が低い第2のインバータブリッジ22のみで、あるいは、これをメイン(main)として駆動し、入力電源電圧が高い第1のインバータブリッジ21を休ませることができる。この場合は、勾配コイル30へ与える電力は、比較的小さく、第2のインバータブリッジ22が主に担うことになる。
【0014】
一方、電流Iを、上昇し切った後に急峻に下降させるときは、出力電圧Voutを、瞬間的に−(負)側で大きくする必要があるので、第1および第2のインバータブリッジ21,22の両方を駆動しなければならない。この場合は、勾配コイル30から回生される電力は、比較的大きく、より大きな電圧を出力する第1のインバータブリッジ21に、大きな割合で電力が回生されることになる。
【0015】
つまり、第1のインバータブリッジ21では、勾配コイル30に与える電力がほとんどない状態から、突如、大きな電力が回生されることになる。一方、第2のインバータブリッジ22では、勾配コイル30に比較的小さい電力を与えていた状態から、比較的小さい電力が回生されることになる。これは、すなわち、インバータブリッジ直列回路25が勾配コイル30に電力を与えるときの、その電力のインバータブリッジ間のバランスと、勾配コイル30からインバータブリッジ直列回路25に電力が回生されるときの、その電力のインバータブリッジ間のバランスとが異なることを意味する。
【0016】
こうなると、第1のインバータブリッジ21では、与える電力よりも回生される電力の方が大きく上回るので、第1のバス電源11は余った電力を吸収しきれず、電源電圧が上昇するなど不安定な動作をすることになる。
【0017】
このように、勾配コイル30に流す電流波形によっては、インバータブリッジにおける与える電力と回生される電力との不均衡が極端に増大することがある。そして、この不均衡が大きくなると、第1のバス電源11もしくは第2のバス電源12またはその両方がその不均衡を吸収できなり、出力電圧V1,V2が意図した電圧に制御できなくなる。その結果、バス電源そのものが不安定になり、勾配コイル30の電流波形にも歪が発生することになる。
【0018】
なお、このような現象は、MR装置の勾配磁場発生装置に限らず、直列に接続された複数のインバータブリッジを備えたインバータ装置で、インダクタンス性負荷を所望の電流波形で駆動しようとする際に発生するものである。
【0019】
このような事情により、直列に接続された複数のインバータブリッジを備えたインバータ装置において、インバータブリッジ間の利用率を変えて、インダクタンス性負荷を効率よく駆動する際に、インバータブリッジの入力電源電圧を安定させる技術が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0020】
第1の観点の発明は、複数のインバータブリッジが出力側で直列に接続されたインバータブリッジ直列回路であって、各々のインバータブリッジの入力電源電圧のうち少なくとも一つが他の入力電源電圧と異なるインバータブリッジ直列回路と、前記インバータブリッジ直列回路の出力側に接続されたインダクタンス性負荷と、前記インバータブリッジ直列回路の出力電圧が、前記インダクタンス性負荷に所望の電流波形で電流が流れるような電圧となるよう、前記複数のインバータブリッジのそれぞれのオンデューティを制御する制御部と、を備えたインバータ装置であって、前記制御部が、前記所望の電流波形における電流値の正負および電流微分値の正負に基づいて、前記インバータブリッジ直列回路が前記インダクタンス性負荷に与える電力のインバータブリッジ間のバランスと、前記インダクタンス性負荷から前記インバータブリッジ直列回路に回生される電力のインバータブリッジ間のバランスとの不均衡を是正するよう、前記それぞれのオンデューティを制御するインバータ装置を提供する。
【0021】
第2の観点の発明は、前記インバータブリッジ直列回路が、入力電源電圧が相対的に高い第1のインバータブリッジと、入力電源電圧が相対的に低い第2のインバータブリッジとが出力側で直列に接続された回路である上記第1の観点のインバータ装置を提供する。
【0022】
第3の観点の発明は、前記制御部が、前記所望の電流波形における電流値が正であり、電流微分値が正であるとき、前記第1のインバータブリッジのオンデューティを下げ、前記第2のインバータブリッジのオンデューティを上げる制御を行う上記第2の観点のインバータ装置を提供する。
【0023】
第4の観点の発明は、前記制御部が、前記所望の電流波形における電流値が正であり、電流微分値が負であるとき、前記第1のインバータブリッジのオンデューティを上げ、前記第2のインバータブリッジのオンデューティを下げる制御を行う上記第2の観点または第3の観点のインバータ装置を提供する。
【0024】
第5の観点の発明は、前記制御部が、前記所望の電流波形における電流値が負であり、電流微分値が負であるとき、前記第1のインバータブリッジのオンデューティを下げ、前記第2のインバータブリッジのオンデューティを上げる制御を行う上記第2の観点から第3の観点のいずれか一つの観点のインバータ装置を提供する。
【0025】
第6の観点の発明は、前記制御部が、前記所望の電流波形における電流値が負であり、電流微分値が正であるとき、前記第1のインバータブリッジのオンデューティを上げ、前記第2のインバータブリッジのオンデューティを下げる制御を行う上記第2の観点から第4の観点のいずれか一つの観点のインバータ装置を提供する。
【0026】
第7の観点の発明は、前記制御部が、前記所望の電流波形と前記インダクタンス性負荷の電流波形との差分が小さくなるよう、前記オンデューティをフィードバック制御する上記第1の観点から第6の観点のいずれか一つの観点のインバータ装置を提供する。
【0027】
第8の観点の発明は、前記インバータブリッジを構成するスイッチング素子が、それぞれ、IGBT(絶縁ゲート・バイポーラトランジスタ)またはGTO(ゲート・ターンオフ・サイリスタ)である上記第1の観点から第7の観点のいずれか一つの観点のインバータ装置を提供する。
【0028】
第9の観点の発明は、前記インダクタンス性負荷が、MR撮影用の勾配コイルであり、前記所望の電流波形が、MR撮影用の勾配パルスを発生させるための電流波形である上記第1の観点から第8の観点のいずれか一つの観点のインバータ装置を提供する。
【0029】
第10の観点の発明は、上記第9の観点のインバータ装置を備えたMR装置を提供する。
【発明の効果】
【0030】
上記観点の発明によれば、制御部が、複数のインバータブリッジが直列に接続されたインバータブリッジ直列回路からインダクタンス性負荷に与えられる電力のインバータブリッジ間のバランスと、インダクタンス性負荷からインバータブリッジ直列回路に回生される電力のインバータブリッジ間のバランスとの不均衡が是正されるように、それぞれのインバータブリッジのオンデューティを制御するので、各インバータブリッジの上記不均衡による不安定動作を抑制することができ、それぞれのインバータブリッジの入力電源電圧をより安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】従来の勾配磁場発生装置の構成例を概略的に示す図である。
【図2】勾配コイルにおける電流波形と電圧波形との関係の第一例を示す図である。
【図3】従来の改良型勾配磁場発生装置の構成例を概略的に示す図である。
【図4】勾配コイルにおける電流波形と電圧波形との関係の第二例を示す図である。
【図5】発明の実施形態に係る勾配磁場発生装置の構成を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、発明の実施形態について説明する。なお、これにより発明が限定されるものではない。
【0033】
図5は、本実施形態に係る勾配磁場発生装置(インバータ装置)の構成を概略的に示す図である。
【0034】
図5に示すように、勾配磁場発生装置100は、インバータブリッジ直列回路25と、勾配コイル30と、電流センサ40と、制御部52とを備えている。
【0035】
インバータブリッジ直列回路25は、第1のインバータブリッジ21と第2のインバータブリッジ22とが出力側で直列に接続された回路である。本例では、第1および第2のインバータブリッジ21,22は、いずれもフルブリッジ型である。第1のインバータブリッジ21の入力側には、相対的に高い電圧Vbus1を電源電圧とする第1のバス電源11が接続されている。第2のインバータブリッジ22の入力側には、相対的に低い電圧Vbus2を電源電圧とする第2のバス電源12が接続されている。第1および第2のインバータブリッジ21は、それぞれ、複数のスイッチング素子により構成されている。高い電圧Vbus1は、例えば700Vであり、低い電圧Vbus2は、例えば100Vである。スイッチング素子としては、例えば、IGBT(絶縁ゲート・バイポーラトランジスタ)やGTO(ゲート・ターンオフ・サイリスタ)、パワーMOSFET(電界効果トランジスタ)、パワー・バイポーラトランジスタなどが考えられる。インバータブリッジのスイッチング周波数は、例えば、50〜100kHz程度である。
【0036】
インバータブリッジ直列回路25の出力側には、インダクタンス性負荷である勾配コイル30が接続されている。勾配コイル30は、勾配コイル30の電流波形に応じた勾配パルス(pulse)磁場を発生させる。
【0037】
電流センサ40は、勾配コイル30に流れる電流を検出する。電流センサ40としては、例えば、非接触型のホール素子などが考えられる。
【0038】
制御部52は、基本的に、インバータブリッジ直列回路25の出力電圧Voutが、勾配コイル30に所望の電流波形で電流が流れるような電圧となるよう、第1および第2のインバータブリッジ21,22において、スイッチング素子の選択と、選択されたスイッチング素子に対するスイッチングのオンデューティの調整とを行う。所望の電流波形とは、すなわち、勾配コイル30に目的の勾配パルス磁場を発生させるための電流波形である。
【0039】
また、制御部52は、インバータブリッジ直列回路25の出力電圧Voutを変化させないことを前提に、所望の電流波形における電流値の正負および電流微分値の正負に基づいて、インバータブリッジ直列回路25が勾配コイル30に電力を与えるときのその電力のインバータブリッジ間のバランスと、勾配コイル30からインバータブリッジ直列回路25に電力が回生されるときのその電力のインバータブリッジ間のバランスとの不均衡を是正するよう、それぞれのインバータブリッジのオンデューティを調整する。
【0040】
本例では、インバータブリッジのオンデューティをメイン因子とサブ(sub)因子との積とし、制御部52は、第1のインバータブリッジ21に対するメイン因子αおよびサブ因子Aと、第2のインバータブリッジ22に対するメイン因子βおよびサブ因子Bとを略リアルタイムで決定して、オンデューティを調整するものとする。なお、サブ因子A,Bは、いずれも1を基準値として大小に振られるパラメータ(parameter)である。
【0041】
制御部52には、目的の勾配パルス磁場を発生させるのに必要な勾配コイル30の所望の電流波形と、電流センサ40によって実測された勾配コイル30の電流波形とが入力される。制御部52は、所望の電流波形と実測された電流波形との差分が小さくなるよう、所定のルール(rule)に従って、メイン因子α,βを調整する。
【0042】
例えば、目標電流波形の電流Itなどから想定されるインバータブリッジ直列回路25の出力電圧Voutを電圧Vout1として、
条件a:100V≧Vout1>0Vであるときは、スイッチング素子Q1,Q2、Q5,Q6を、スイッチング対象に選択し、そのオンデューティのメイン因子α,βを、その比をα:β=1:9に保持しながら調整する。
【0043】
条件b:800V≧Vout1>100Vであるときは、スイッチング素子Q1,Q2、Q5,Q6を、スイッチング対象に選択し、そのオンデューティのメイン因子α,βを、β=0.8に固定しながら調整する。
【0044】
条件c:0>Vout1≧−100Vであるときは、スイッチング素子Q3,Q4、Q7,Q8を、スイッチング対象に選択し、そのオンデューティのメイン因子α,βを、その比をα:β=1:9に保持しながら調整する。
【0045】
条件d:−100V>Vout1>−800Vであるときは、スイッチング素子Q3,Q4、Q7,Q8を、スイッチング対象に選択し、そのオンデューティのメイン因子α,βを、β=0.8に固定しながら調整する。
【0046】
また、制御部52は、所望の電流波形における電流値Itの正負の別と、その電流微分値dIt/dt(すなわち電流波形を数式で表したときの傾き係数)の正負の別との組合せに応じて、第1のインバータブリッジ21のオンデューティを構成するサブ因子Aと、第2のインバータブリッジ22のオンデューティを構成するサブ因子Bとを決定する。
【0047】
例えば、条件1:電流値It>0であり、かつ、電流微分値dIt/dt>0のときは、電流Iと電圧Voutとの極性が同じになり、インバータブリッジ直列回路25から勾配コイル30に電力が与えられるので、サブ因子Aを下げて、サブ因子Bを上げる。
【0048】
条件2:電流値It>0であり、かつ、電流微分値dIt/dt<0のときは、電流Iと電圧Voutとの極性が逆になり、勾配コイル30からインバータブリッジ直列回路25に電力が回生されるので、サブ因子Aを上げて、サブ因子Bを下げる。
【0049】
条件3:電流値It<0であり、かつ、電流微分値dIt/dt<0のときは、電流Iと電圧Voutとの極性が同じになり、インバータブリッジ直列回路25から勾配コイル30に電力が与えられるので、サブ因子Aを下げて、サブ因子Bを上げる。
【0050】
条件4:電流値It<0であり、かつ、電流微分値dIt/dt>0のときは、電流Iと電圧Voutとの極性が逆になり、勾配コイル30からインバータブリッジ直列回路25に電力が回生されるので、サブ因子Aを上げて、サブ因子Bを下げる。
【0051】
これにより、インバータブリッジ直列回路25が勾配コイル30に電力を与えるとき、すなわち上記の条件1、3を満たすときは、入力電源電圧が高い第1のインバータブリッジ21の寄与率が上がる傾向が強いので、この寄与率を下げる制御が行われる。また、インバータブリッジ直列回路25が勾配コイル30から電力の回生を受けるとき、すなわち上記の条件2、4を満たすときは、入力電源電圧が低い第2のインバータブリッジ22に回生される率が上がる傾向が強いので、この回生される率を下げる制御が行われる。
【0052】
なお、制御部52としては、例えば、PLDやASICなどのICが考えられる。
【0053】
このような構成の勾配磁場発生装置100によれば、インバータブリッジ直列回路25が勾配コイル30に与える電力のインバータブリッジ間のバランスと、勾配コイル30からインバータブリッジ直列回路25に回生される電力のインバータブリッジ間のバランスとの不均衡を是正し、各インバータブリッジの上記不均衡による不安定動作を抑制することができ、それぞれのインバータブリッジの入力電源電圧をより安定させることができる。
【0054】
また、このような勾配磁場発生装置100によれば、上記不均衡の是正を制御部52によりアクティブ(active)に行うので、安定化のためのダミー負荷を不要あるいはより小さいものにすることができ、省スペース(space)化、コスト(cost)削減が可能になる。
【0055】
なお、上記実施形態は、発明であるインバータ装置をMR撮影用の勾配磁場発生装置に適用した例であるが、このような勾配磁場発生装置を備えたMR装置もまた、発明の実施形態の一例である。また、発明の実施形態は、その発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0056】
10 バス電源
11 第1のバス電源
12 第2のバス電源
20 インバータブリッジ
21 第1のインバータブリッジ
22 第2のインバータブリッジ
30 勾配コイル
40 電流センサ
50〜52 制御部
100 勾配磁場発生装置(インバータ装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のインバータブリッジが出力側で直列に接続されたインバータブリッジ直列回路であって、各々のインバータブリッジの入力電源電圧のうち少なくとも一つが他の入力電源電圧と異なるインバータブリッジ直列回路と、
前記インバータブリッジ直列回路の出力側に接続されたインダクタンス性負荷と、
前記インバータブリッジ直列回路の出力電圧が、前記インダクタンス性負荷に所望の電流波形で電流が流れるような電圧となるよう、前記複数のインバータブリッジのそれぞれのオンデューティを制御する制御部と、を備えたインバータ装置であって、
前記制御部は、前記所望の電流波形における電流値の正負および電流微分値の正負に基づいて、前記インバータブリッジ直列回路が前記インダクタンス性負荷に与える電力のインバータブリッジ間のバランスと、前記インダクタンス性負荷から前記インバータブリッジ直列回路に回生される電力のインバータブリッジ間のバランスとの不均衡を是正するよう、前記それぞれのオンデューティを制御するインバータ装置。
【請求項2】
前記インバータブリッジ直列回路は、入力電源電圧が相対的に高い第1のインバータブリッジと、入力電源電圧が相対的に低い第2のインバータブリッジとが出力側で直列に接続された回路である請求項1に記載のインバータ装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記所望の電流波形における電流値が正であり、電流微分値が正であるとき、前記第1のインバータブリッジのオンデューティを下げ、前記第2のインバータブリッジのオンデューティを上げる制御を行う請求項2に記載のインバータ装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記所望の電流波形における電流値が正であり、電流微分値が負であるとき、前記第1のインバータブリッジのオンデューティを上げ、前記第2のインバータブリッジのオンデューティを下げる制御を行う請求項2または請求項3に記載のインバータ装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記所望の電流波形における電流値が負であり、電流微分値が負であるとき、前記第1のインバータブリッジのオンデューティを下げ、前記第2のインバータブリッジのオンデューティを上げる制御を行う請求項2から請求項3のいずれか一項に記載のインバータ装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記所望の電流波形における電流値が負であり、電流微分値が正であるとき、前記第1のインバータブリッジのオンデューティを上げ、前記第2のインバータブリッジのオンデューティを下げる制御を行う請求項2から請求項4のいずれか一項に記載のインバータ装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記所望の電流波形と前記インダクタンス性負荷の電流波形との差分が小さくなるよう、前記オンデューティをフィードバック制御する請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のインバータ装置。
【請求項8】
前記インバータブリッジを構成するスイッチング素子は、それぞれ、IGBT(絶縁ゲート・バイポーラトランジスタ)またはGTO(ゲート・ターンオフ・サイリスタ)である請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のインバータ装置。
【請求項9】
前記インダクタンス性負荷は、MR撮影用の勾配コイルであり、
前記所望の電流波形は、MR撮影用の勾配パルスを発生させるための電流波形である請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のインバータ装置。
【請求項10】
請求項9に記載のインバータ装置を備えたMR装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−51751(P2013−51751A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−186906(P2011−186906)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(300019238)ジーイー・メディカル・システムズ・グローバル・テクノロジー・カンパニー・エルエルシー (1,125)
【Fターム(参考)】