説明

インバータ装置

【課題】冷却ファン駆動用電動機駆動用の専用のインバータを設けることなく省エネルギー運転を達成可能なインバータ装置を提供する。
【解決手段】交流電圧または直流電圧を入力とし、2乗トルク低減負荷特性を有する負荷機械駆動用の交流電動機2を駆動するための交流を出力する電力変換器1と、電力変換器1用の電力用半導体素子及び全体を制御する制御部6と、電力変換器1を収納する筐体1aに取り付けられ、電力用半導体素子を冷却するための第1の冷却ファン5aとで構成する。第1の冷却ファン5aを駆動する第1のファン駆動電動機5は、電力変換器1の出力に第1の開閉器4を介して接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流電動機を駆動するインバータ装置に係わり、特に、2乗低減トルク負荷駆動用のインバータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インバータ装置は、商用交流あるいは直流の電源を所定の電圧で所定の周波数の交流に変換し、交流電動機を可変速駆動するために使用される。この変換のために電力用半導体素子が使用されるが、この電力用半導体素子で発生する損失による電力用半導体素子の温度上昇を所定値以内に抑えるために、空冷の場合は、これら電力用半導体素子は冷却フィンに取り付けられ、この冷却フィンは、冷却ファンによる風によって冷却される構造になっている。
【0003】
ここで、交流電動機が駆動する負荷機械が、ファンやポンプ等の所謂2乗低減トルク負荷特性を有する場合、冷却ファン駆動用電動機を商用交流電源で駆動すると、その回転速度は最高速度に近い一定の速度となるため、交流電動機の低速領域では必要以上の風量を与えることになる。このため、電動機駆動用の専用のインバータを設け、例えば冷却フィンに取り付けた温度センサの信号に基づいてこのインバータの周波数を制御することによって省エネルギー運転を行う提案が為されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−250498号公報(全体)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に示された手法によれば、冷却フィンの温度が所定値を超えない範囲で冷却ファンの回転数を制御するので木目細かい省エネルギー運転を達成することができるが、冷却ファン駆動用電動機駆動用の専用のインバータを新たに設ける必要があり、初期投資が大きくなるという問題がある。
【0006】
本発明は,上記問題に鑑みてなされたもので、冷却ファン駆動用電動機駆動用の専用のインバータを設けることなく省エネルギー運転を達成可能なインバータ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明のインバータ装置は、交流電圧または直流電圧を入力とし、2乗トルク低減負荷特性を有する負荷機械駆動用の交流電動機を駆動するための交流を出力する電力変換器と、前記電力変換器用の電力用半導体素子及び全体を制御する制御部と、前記電力変換器を収納する筐体に取り付けられ、前記電力用半導体素子を冷却するための第1の冷却ファンとを具備し、前記第1の冷却ファンを駆動する第1のファン駆動電動機は、前記電力変換器の出力に第1の開閉器を介して接続されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、冷却ファン駆動用電動機駆動用の専用のインバータを設けることなく省エネルギー運転を達成可能なインバータ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施例1に係るインバータ装置の構成図。
【図2】本発明の実施例2に係るインバータ装置の構成図。
【図3】本発明の実施例2に係るインバータ装置の冷却ファン運転制御のフローチャート。
【図4】本発明の実施例3に係るインバータ装置の構成図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0011】
以下、図1を参照して本発明の実施例1に係るインバータ装置を説明する。図1は本発明の実施例1に係るインバータ装置の構成図であり、図1(a)は回路構成図、そして図1(b)はインバータ装置の冷却構造の模式説明図である。
【0012】
図1(a)に示すインバータ装置10は、ポンプ、ブロワ等の2乗低減トルク特性を有する負荷機械駆動用の交流電動機2を可変速駆動する。交流電源または直流電源から得られる電力は、複数の電力用半導体素子で構成された電力変換器1に与えられる。電源が交流の場合、電力変換器1はマトリクスコンバータまたは入力側にコンバータを有するインバータであり、電源が直流であれば電力変換器1はインバータである。
【0013】
電力変換器1の出力には、変圧器3が接続され、変圧器3の2次巻線は開閉器4を介して冷却ファン駆動用電動機5に接続されている。そして、制御回路6は電力変換器1内の
電力用半導体素子のオンオフを制御して電力変換器1の出力を制御すると共に、開閉器4を制御して冷却ファン駆動用電動機5を運転制御する。ここで、交流電動機2と冷却ファン駆動用電動機5の定格電圧が同レベルであれば、変圧器3は省略することができる。
【0014】
図1(b)にはインバータ装置10の冷却構造を模式的に示す。インバータ装置10は筐体10aに収納される。筐体10aの内部には電力用半導体素子を冷却するためのヒートシンクである冷却フィン1aが電力用半導体素子と一体となって取り付けられている。筐体10a上部には冷却ファン駆動用電動機5で駆動される冷却ファン5aが取り付けられている。そして冷却フィン1aを冷却するための冷却風は、筐体10aの正面下部に位置し、その裏面に図示しないエアフィルタを備えた吸気口11から外気を吸引し、冷却フィン1aと熱交換を行ったあと、筐体10aの上部に設けられた排気口12から盤外に排出される。
【0015】
以上述べた本発明の実施例1に係るインバータ装置は、交流電動機2の負荷が2乗低減トルク特性を有する負荷機械であるので、その出力が速度の2乗に比例することになる。このため、電力変換器1の損失も略速度の2乗に比例するので、冷却ファン5aの速度を交流電動機2の速度に略比例して上昇させるようにすれば冷却フィン1aを適切に冷却できることになる。従って、交流電動機2が低速状態のときの冷却ファン駆動用電動機5の省エネルギー運転を行うことができる。また、交流電動機2が低速状態のときの冷却ファン5aの騒音を低減することが可能となる。
【実施例2】
【0016】
図2は本発明の実施例2に係るインバータ装置の構成図である。この実施例2の各部について、図1(a)の実施例1に係るインバータ装置の構成図の各部と同一部分は同一符号で示し、その説明は省略する。この実施例2が実施例1と異なる点は、交流電源8によってファン駆動用電動機5を駆動するように切換えるための開閉器7を設けた点である。
【0017】
実施例1で述べたように、負荷が2乗低減トルク特性を有する負荷機械であればインバータ装置の出力は速度の2乗に比例することになるが、これはあくまで定常状態の特性である。負荷機械の慣性モーメントが大きく、且つ加速あるいは減速に要する時間を短縮したい場合には、電力変換器1は交流電動機2に対して加速トルク乃至減速トルクに見合う電流を供給する必要がある。この場合は定常状態の特性に対し、加速または減速に要する電流が加算されるので、加減速のレートが一定であれば電力変換器1の損失のうち通電による損失は速度に拠らず略一定となる。通常この通電による損失は、電力変換器1の電力用半導体素子をスイッチングするときの損失と共に全体損失に占める比率が高いため、実施例1のままでは加速時または減速時に冷却ファン5aによる冷却風量が不足し、冷却フィン1aの温度が規定値を超えてしまう恐れがある。
【0018】
このため、冷却フィン1aの温度が規定値を超えてしまう恐れのあるとき、交流電源8から開閉器7を介してファン駆動用電動機5を商用電源の周波数(通常は最高速度)で運転するようにし、定常状態になったとき開閉器7を開放し、開閉器4を投入するようにすれば、加減速を行っている過渡時の冷却を正常に行うと同時に連続運転を行う定常時には目的とする省エネルギー運転を行うことが可能となる。
【0019】
図3には上記考え方によるインバータ装置の冷却ファン運転制御のフローチャートの一例を示す。
【0020】
まずインバータ装置10を運転し、交流電動機2を起動する(ステップST1)。これと同時にファン駆動用電動機5を商用周波数で運転開始する。即ち、開閉器4は開放し、開閉器7を投入する(ステップST2)。
【0021】
次に、インバータ装置10が加速中または減速中かどうか判定する(ステップST3)。この判定は、例えば制御装置6に与えられる図示しない速度指令が加速指令または減速指令となっているかどうかによって判定する。そして、加速中または減速中であれば、ファン駆動用電動機5の商用周波数での運転を継続する。
【0022】
そしてステップST3で加速中または減速中でなければ、インバータ装置10が停止かどうかを判定する(ステップST4)。インバータ装置10が停止でないときは、開閉器7を開放し、直後に開閉器4を投入してファン駆動用電動機5を電力変換器1の出力で運転するように切換える(ステップST5)。尚、ファン駆動用電動機5の容量は、交流電動機2の容量に比べて遥かに小さいので上記切換えの擾乱は問題とならない。ステップST4でインバータ装置10が停止であれば、開閉器4及び開閉器7を開放してファン駆動用電動機5の運転を停止する(ステップST6)。停止の判断は、例えば制御装置6に与えられる図示しない停止指令で行う。
【0023】
上記ステップST5の状態は定常運転状態であり、交流電動機2を例えば省エネルギーのために速度を下げて運転している状態であれば、ファン駆動用電動機5も同じように省エネルギー運転が行われる。そして、ステップ3T3及びステップST4のチェックを繰り返す。ステップST3で再び加速または減速中と判定されれば、ステップST2の動作となって、開閉器4を開放してファン駆動用電動機5をインバータ装置の出力から切り離し、開閉器7を投入して再びファン駆動用電動機5の商用周波数での運転に切換える。以下、ステップST6で停止となるまで上記を繰り返す。
【0024】
このようにすれば、加減速時の発熱増大に対する冷却を問題なく行いながら定常連続運転時には省エネルギー運転を行うことができる。
【実施例3】
【0025】
図4は本発明の実施例3に係るインバータ装置の構成図である。この実施例3の各部について、図1の実施例1に係るインバータ装置の構成図の各部と同一部分は同一符号で示し、その説明は省略する。この実施例3が実施例1と異なる点は、図3(a)において交流電源8から開閉器9を介して駆動される第2のファン駆動電動機5Bを追加した点、図1(b)において、筐体10aを変換器盤筐体10bと制御盤筐体10cから構成されるようにし、制御盤筐体10c側にファン駆動電動機5Bで駆動される冷却ファン5bを設ける構成とした点である。
【0026】
図4(a)において、電力変換器1の損失については、前述したように略、交流電動機2の速度の2乗に比例して増加するが、制御回路6の損失は交流電動機2の速度に係わらず一定である。このため、実施例1のようにインバータ装置10内の発熱部品全てをファン駆動電動機5のみで冷却しようとすると、低速領域における冷却が困難となってしまう恐れが生じる。従って、図4(b)に示したように筐体10aを変換器盤筐体10bと制御盤筐体10cから構成されるようにして、制御盤筐体10c内に収納した制御回路6を、ファン駆動電動機5Bで駆動される冷却ファン5bによる冷却風で冷却するようにすれば効率良く全体を冷却することが可能となる。尚、この場合のファン駆動電動機5Bの容量はファン駆動電動機5に比べて遥かに小さいもので良い。
【0027】
以上本発明のいくつかの実施例を説明したが、これらの実施例は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施例やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0028】
例えば、実施例2における加減速かどうかの検出は、電力変換器1の出力電流或いは交流電動機2の入力電流が運転速度によって定められた所定の値を超えたかどうかによって検出しても良い。
【0029】
また、実施例3において、固定速度の冷却ファン5bによる冷却対象は制御回路以外の発熱部品を含むようにしても良い。更に、実施例3において、筐体10を必ずしも変換器盤筐体10bと制御盤筐体10cとに分離する必要はなく、筐体10のまま固定速度の冷却ファン5bを追加して設け、通風ダクトや通風制御板を設けて冷却ファン5による冷却フィン1a用の冷却風路と冷却ファン5bによる他の発熱部品用の冷却風路を分離する構成としても良い。
【0030】
また、図1(b)等に冷却構成の模式図を示したが、必ずしもこのような構成にする必要はなく、例えば吸気口は筐体下面にあっても良い。また冷却ファンは筐体側面あるいは筐体下面に設ける構成としても良い。
【符号の説明】
【0031】
1 電力変換器
1a 冷却フィン
2 交流電動機
3 変圧器
4 開閉器
5、5B ファン駆動電動機
5a、5b 冷却ファン
6、6A 制御回路
10 インバータ装置
10a 筐体
10b 変換器盤筐体
10c 制御盤筐体
11、11a 吸気口
12、12a 排気口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電圧または直流電圧を入力とし、2乗トルク低減負荷特性を有する負荷機械駆動用の交流電動機を駆動するための交流を出力する電力変換器と、
前記電力変換器用の電力用半導体素子及び全体を制御する制御部と、
前記電力変換器を収納する筐体に取り付けられ、前記電力用半導体素子を冷却するための第1の冷却ファンと
を具備し、
前記第1の冷却ファンを駆動する第1のファン駆動電動機は、前記電力変換器の出力に第1の開閉器を介して接続されていることを特徴とするインバータ装置。
【請求項2】
前記電力変換器の出力と前記第1の開閉器の間に電圧調整用の変圧器を接続したことを特徴とする請求項1に記載のインバータ装置。
【請求項3】
交流電源と前記第1のファン駆動電動機の間に第2の開閉器を設け、
前記第1のファン駆動電動機は、
前記第1の開閉器を投入し、前記第2の開閉器を開放するインバータ運転と、前記第2の開閉器を投入し、前記第1の開閉器を開放する商用電源運転とが切換えられるようにしたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のインバータ装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記交流電動機が加速中または減速中かを検出する検出手段を有し、
前記交流電動機が加速中または減速中のとき、前記第1のファン駆動電動機を商用電源運転とし、前記交流電動機が加速中または減速中でないとき、前記第1のファン駆動電動機をインバータ運転することを特徴とする請求項3に記載のインバータ装置。
【請求項5】
交流電源から第3の開閉器を介して第2の冷却ファンを駆動する第2のファン駆動電動機を設け、
前記電力用半導体素子は前記第1の冷却ファンによる通風で冷却し、
前記制御部は前記第2の冷却ファンによる通風で冷却するようにしたことを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載のインバータ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−21877(P2013−21877A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−155080(P2011−155080)
【出願日】平成23年7月13日(2011.7.13)
【出願人】(501137636)東芝三菱電機産業システム株式会社 (904)
【Fターム(参考)】