説明

インパネビーム及びその製造方法

【課題】十分な軽量性と高い剛性とを有すると共に、インストルメントパネルの内側に大きな空間を確保することができ、しかも全長寸法の精度出しが容易なインパネビームを提供すること、及びそのようなインパネビームを有利に製造可能な方法を提供すること。
【解決手段】運転席側と助手席側とに跨って車幅方向に延びるように配置されて、車幅方向の両側に位置する車体部材間に架設されるインパネビーム10であって、助手席側に配置される部分がアルミニウムパイプ14からなる一方、運転席側に配置される部分が鋼パイプ12にて構成されており、該アルミニウムパイプ14が鋼製の連結板16の一方の面に摩擦圧接されると共に、該鋼パイプ12が該連結板16の他方の面に摩擦圧接されることによって、それらアルミニウムパイプ14と鋼パイプ12とが該連結板16を介して一体的に連結されてなるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インパネビームとその製造方法とに係り、特に、自動車のインストルメントパネルの内側に配設されるインパネビームの改良と、そのようなインパネビームを有利に製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車のインストルメントパネルの内側には、インパネビーム(ステアリングハンガービーム、クロスカービーム等とも称される)が、運転席側と助手席側とに跨って車幅方向に延びるように配置されて、車幅方向の両側に位置する車体部材間に架設されている。そして、このインパネビームにおいては、助手席側に配置される部分に、空調ユニットやエアバック等を取り付けるための取付ブラケット等が固定されるようになっており、また、運転席側に配置された部分には、ステアリングコラムが取り付けられるようになっている。
【0003】
ところで、そのようなインパネビームには、以下のような性能が要求される。即ち、(ア)自動車の軽量化による燃費の向上等に寄与し得る軽量性と、(イ)アイドリング時の入力振動に対してステアリングを共振させない剛性と、(ウ)車幅方向両側に位置する特定の車体部材(例えば、Aピラー等)に対して確実に取付可能な全長を確保できる高い寸法精度と、(エ)インストルメントパネルの内側に可及的に大きな空間を確保して、ダクトやハーネス、オーディオシステム、空調ユニット、エアバック等の様々な部材や部品の効率的な収納を可能とする設計自由度が、インパネビームにおいて必要とされているのである。
【0004】
そこで、近年では、上記の要求性能を満たすべく、様々な構造のインパネビームが提案されている。例えば、特開2001−253368号公報(特許文献1)や特開2001−63628号公報(特許文献2)には、助手席側に配置される部分が小径のアルミニウム合金製押出形材からなる一方、運転席側に配置される部分が大径のアルミニウム合金製押出形材にて構成され、そして、そのような異径の押出形材の間に連結具を介在させて、それらをねじ止め等の機械的手段にて固定してなるインパネビーム(インパネリインフォースメント)が、提案されている。また、助手席側の押出形材と運転席側の押出形材とを偏心状態で連結してなるインパネビームも開示されている。
【0005】
そして、それらの公報には、そこに開示のインパネビームが、以下の如き特徴を有していることが、明らかにされている。 (i)インパネビーム全体がアルミニウム合金にて形成されるため、十分な軽量化が図られ得る。(ii)インパネビームの運転席側部分が大径とされていることで、ステアリングコラムが取り付けられる運転席側部分の剛性が確保され得る。 (iii)インパネビームの助手席側部分が小径とされているために、インストルメントパネルの内側の助手席側の空間を比較的大きく確保することができる。(iv)運転席側部分と助手席側部分とを偏心状態で連結することによって、運転席側部分と助手席側部分とが同軸的に連結される場合に比して、インストルメントパネルの内側部分の空間を有効活用できる。
【0006】
ところが、よく知られているように、アルミニウム合金のヤング率は、鋼の約1/3程度である。そのために、助手席側部分よりも運転席側部分を大径化してインパネビームをオールアルミ化する場合には、運転席側部分の外径が極端に大きくなってしまうこととなる。そうすると、オールアルミ化による軽量化のメリットが大きく損なわれるだけでなく、インストルメントパネルの内側の運転席側部分に大きな空間を確保することが困難となるのである。しかも、インパネビームの運転席側部分と助手席側部分とを、連結具を介して、ねじ止め等の機械的手段で連結する場合には、異材質接合対策として、防錆処理が必要となるところから、余分な作業を行わなければならなかったのである。その上、インパネビーム全体の長さを所望の長さとするために、インパネビームの運転席側部分及び助手席側部分と連結具のそれぞれに対して、ねじの挿通孔や雌ねじ孔等を正確な位置に寸法精度良く設ける必要があり、それは容易ではなかったのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−253368号公報
【特許文献2】特開2001−63628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここにおいて、本発明は、上述せる如き事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、十分な軽量性と高い剛性とを有すると共に、インストルメントパネルの内側に大きな空間を確保することができ、しかも全長寸法の精度出しが容易なインパネビームを提供することにある。また、本発明は、そのようなインパネビームを有利に製造可能な方法を提供することをも、その解決課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そして、本発明にあっては、インパネビームに係る課題の解決のために、自動車のインストルメントパネルの内側に、運転席側と助手席側とに跨って車幅方向に延びるように配置されて、車幅方向の両側に位置する車体部材間に架設されるインパネビームであって、助手席側に配置される部分がアルミニウムパイプからなる一方、運転席側に配置される部分が鋼パイプにて構成されており、該アルミニウムパイプが鋼製の連結板の一方の面に摩擦圧接されると共に、該鋼パイプが該連結板の他方の面に摩擦圧接されることによって、それらアルミニウムパイプと鋼パイプとが該連結板を介して一体的に連結されてなることを特徴とするインパネビームを、その要旨とするものである。なお、ここで言うアルミニウムパイプは、純アルミニウムからなるアルミニウムパイプとアルミニウム合金からなるアルミニウムパイプの両方を含んだものとして、用いられている。以下、同一の意味において使用するものである。
【0010】
本発明の好ましい態様の一つによれば、前記鋼パイプが、前記アルミニウムパイプよりも大きな径を有して構成される。
【0011】
本発明の望ましい態様の一つによれば、前記アルミニウムパイプと前記鋼パイプとが、互いに非同軸的に位置した状態で、前記連結板を介して一体的に連結される。
【0012】
また、本発明の有利な態様の一つによれば、前記連結板の一方の面に対する前記アルミニウムパイプの摩擦圧接により、該アルミニウムパイプの該連結板との当接側端部に生ずるバリを、該当接側端部の外径を大ならしめる厚肉部として形成すると共に、該連結板の一方の面に接合せしめることとなる。
【0013】
そして、本発明にあっては、インパネビームの製造方法に係る課題の解決のために、自動車のインストルメントパネルの内側に、運転席側と助手席側とに跨って車幅方向に延びるように配置されて、車幅方向の両側に位置する車体部材間に架設されるインパネビームを製造する方法であって、(a)アルミニウムパイプと鋼パイプと、該アルミニウムパイプの外径及び該鋼パイプの外径よりも大きな板面を備えた鋼製の連結板とを準備する工程と、(b)前記連結板の一方の面に対する前記アルミニウムパイプの摩擦圧接操作と、該連結板の他方の面に対する前記鋼パイプの摩擦圧接操作とを同時に実施して、該アルミニウムパイプと該鋼パイプとを該連結板を介して一体的に連結する工程とを含むことを特徴とするインパネビームの製造方法をも、また、その要旨とするものである。
【0014】
なお、前記連結板は、前記アルミニウムパイプの外径よりも10mm以上大きく、且つ前記鋼パイプのの外径よりも10mm以上大きな直径の円を描き得る大きさの板面を有していることが、好ましい。
【0015】
また、かかる本発明の望ましい態様の一つによれば、前記鋼パイプの外径よりも大きな板面を備えた前記連結板を変位不能で且つ回転不能に保持すると共に、該連結板の一方の面に第一の裏当て部材を当接配置する一方、該連結板の他方の面に第二の裏当て部材を当接配置することにより、該連結板の両面の互いに異なる位置に対して、厚さ方向への押圧力が同時に作用したときの該連結板の変形を阻止せしめた状態で、該連結板の一方の面に対して該アルミニウムパイプを摩擦圧接する一方、該連結板の他方の面に対して、該鋼パイプを、該アルミニウムパイプとは非同軸的となる位置において摩擦圧接するようにされる。
【0016】
さらに、本発明の好適な態様の一つによれば、前記連結板の一方の面に対する前記アルミニウムパイプの摩擦圧接操作の実施に際して、該アルミニウムパイプの該連結板との当接側端部の外周面と離間して位置する囲繞面を備えた囲繞部材にて、該アルミニウムパイプの該当接側端部を囲繞して、該当接側端部の外周面と、該連結板の一方の面と、該囲繞部材の囲繞面との間で閉鎖空間を形成し、該連結板に対する該アルミニウムパイプの摩擦圧接操作の実施により該アルミニウムの該当接側端部に生ずるバリを、該閉鎖空間内に閉じ込めて、該連結板の一方の面に接触させることによって、該バリを該連結板の一方の面に接合するようにされる。
【0017】
更にまた、本発明の有利な態様の一つによれば、前記囲繞部材が、前記連結板を挟持する複数のクランプ部材にて構成されると共に、それら複数のクランプ部材に、前記囲繞面を複数に分割した分割囲繞面がそれぞれ設けられ、該複数のクランプ部材が該連結板を挟持したときに、該複数の分割囲繞面が組み合わされて、該囲繞面が形成されると共に、該アルミニウムパイプの該連結板との前記当接側端部が、該囲繞面にて囲繞されるように構成される。
【0018】
また、本発明の別の好ましい態様の一つによれば、前記囲繞部材の囲繞面が、前記連結板の一方の面に当接した前記アルミニウムパイプの当接側端部を囲繞した状態において、該当接側端部の先端に向かって次第に大径化するテーパ面形状を有するように構成されることとなる。
【発明の効果】
【0019】
すなわち、本発明に従うインパネビームにあっては、助手席側部分がアルミニウムパイプにて構成されているため、インパネビーム全体が鋼パイプからなるものに比して、十分な軽量性が有利に確保され得るのである。また、かかるインパネビームでは、運転席側部分に必要とされる程の剛性が助手席側部分に要求されないため、そのような助手席側部分を構成するアルミニウムパイプを小径とすることができる。これによって、かかる小径のアルミニウムパイプが配設されるインストルメントパネルの内側の助手席側部分に、十分に大きな空間が効果的に確保され得ることとなる。更に、運転席側部分が鋼パイプからなるところから、インパネビーム全体がアルミニウムパイプからなるものとは異なって、運転席側部分の外径を極端に大きくすることなく、運転席側部分の剛性が有利に高められ得るのである。そして、そのように、運転席側部分の外径が極端に大きくされるものでないため、インストルメントパネルの内側の運転席側部分の空間も、インパネビームの配設によって著しく狭くなってしまうようなことが、有利に回避され得ることとなる。しかも、鋼パイプの外径をアルミニウムパイプの外径よりもある程度大きくして、鋼パイプの剛性向上を図る場合には、鋼パイプの外径を大きくした分だけ、薄肉化を実現できる。そして、それによって、鋼パイプ、ひいてはインパネビーム全体の軽量化が期待され得ることとなる。
【0020】
また、本発明に係るインパネビームにおいては、運転席側部分を構成する鋼パイプと、助手席側部分を構成するアルミニウムパイプとが、鋼製の連結板の両面に摩擦圧接されて、かかる連結板を介して一体的に連結されている。このため、それら鋼パイプとアルミニウムパイプの連結板に対する摩擦圧接時に、例えば、鋼パイプとアルミニウムパイプの連結板に対する加圧力や回転数を予め設定された値に調節することによって、摩擦圧接後の各パイプの長さ、ひいてはインパネビーム全体の長さを、容易に且つ寸法精度良く、所望の長さと為すことが出来る。しかも、鋼パイプとアルミニウムパイプとが連結板の両面にそれぞれ圧接されているため、それら各パイプの内外径や板厚を、それぞれ独立して、適宜に設定することが出来る。更に、連結板に対する各パイプの摩擦圧接箇所を適宜に変更するだけで、鋼パイプとアルミニウムパイプとを同軸的に位置させたり、互いに非同軸として、偏心状態で位置させたりすることが出来る。また、連結板の大きさを変えることによって、鋼パイプとアルミニウムパイプの偏心量を容易に変更することが出来る。その上、特別な防錆処理を行う必要もない。
【0021】
従って、かくの如き本発明に従うインパネビームにあっては、十分な軽量化と、剛性が必要とされる部分の高剛性化とが有利に実現され得る。また、インストルメントパネルの内側に、十分に大きな空間を確保することが可能となる。しかも、全長寸法の精度出しが容易となって、車体への取付精度の向上が効果的に図られ得ることとなるのである。
【0022】
そして、本発明に従うインパネビームの製造方法にあっては、小径のアルミニウムパイプと大径の鋼パイプの連結板の両面への摩擦圧接操作が同時に実施されるところから、上記の如き優れた特徴を有するインパネビームを、極めて容易に且つ迅速に製造することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に従う構造を有するインパネビームの一実施形態を示す一部切欠正面説明図である。
【図2】図1におけるII−II断面拡大説明図である。
【図3】図1に示されたインパネビームを製造する際に実施される一工程例を示す説明図であって、連結板をクランプ部材にて保持した状態を示している。
【図4】図3に示されたクランプ部材の詳細説明図である。
【図5】図4におけるV矢視説明図である。
【図6】図3におけるVI−VI面説明図である。
【図7】図3に示される工程に引き続いて実施される工程例を示す説明図であって、連結板の両面に対して、アルミニウムパイプと鋼パイプとを同時に摩擦圧接している状態を示している。
【図8】本発明に従う構造を有するインパネビームの別の実施形態を示す、図1に対応する図である。
【図9】図8におけるIX−IX断面拡大説明図である。
【図10】図8に示されたインパネビームを製造する際に実施される一工程例を示す説明図であって、連結板をクランプ部材にて保持した状態を示している。
【図11】図10に示された上側クランプ部材の詳細説明図である。
【図12】図11におけるXII矢視説明図である。
【図13】図10に示された下側クランプ部材の詳細説明図である。
【図14】図13におけるXIV矢視説明図である。
【図15】図10におけるXV−XV断面説明図である。
【図16】図10に示される工程に引き続いて実施される工程例を示す説明図であって、連結板の両面に対して、アルミニウムパイプと鋼パイプとを同時に摩擦圧接している状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の構成について、図面を参照しつつ、詳細に説明することとする。
【0025】
先ず、図1には、本発明に従う構造を有するインパネビームの一実施形態が、一部切欠図を含んだ正面形態において示されている。かかる図1から明らかなように、本実施形態のインパネビーム10は、大径の第一パイプ12と小径の第二パイプ14とが、連結板16に対して、互いに同軸上に位置した状態で、摩擦圧接により一体的に連結されて、1本の長尺なパイプ部材として構成されている。
【0026】
より具体的には、第一パイプ12は、図示しないインストルメントパネルの内側にインパネビーム10が配置された状態下で、運転席側に配置される部分を構成するものであって、インパネビーム10が取り付けられるべき自動車の車幅寸法の略半分の長さを有している。このような第一パイプ12には、インストルメントパネル内側への配置状態下で、ステアリングコラムが取り付けられることとなる。このため、第一パイプ12には、アイドリング時の振動によってステアリングを共振させないだけの剛性が必要となる。それ故に、第一パイプ12は、その形成材料として、高い剛性を有する鋼材が用いられている。即ち、ここでは、第一パイプ12が、鋼パイプにて構成されているのである。なお、この第一パイプ12を構成する鋼パイプの種類(材質)は、特に限定されるものではないものの、一般には、自動車構造用鋼管を用いて、第一パイプ12が形成されることとなる。
【0027】
また、第二パイプ14は、図示しないインストルメントパネルの内側にインパネビーム10が配置された状態下で、助手席側に配置される部分を構成するものであって、インパネビーム10が取り付けられるべき自動車の車幅寸法の略半分の長さを有している。このような第二パイプ14には、インストルメントパネル内側への配置状態下で、ワイヤーハーネス等の軽量物が取り付けられることとなる。このため、第二パイプ14には、第一パイプ12に要求される程の剛性が必要とされず、それよりも軽量性が優先される。それ故、第二パイプ14は、その形成材料として、第一パイプ12の形成材料たる鋼材よりも剛性は低いものの、軽量性に優れた純アルミニウム又はアルミニウム合金(以下、それらを総称して、単にアルミニウムという)が用いられている。即ち、ここでは、第二パイプ14が、アルミニウムパイプ(純アルミニウム製のパイプとアルミニウム合金製のパイプとを含む。以下、同一の意味において使用する)にて構成されているのである。なお、この第二パイプ14を構成するアルミニウムパイプの種類(材質)は、特に限定されるものではないものの、JIS呼称の3000系、5000系、6000系、7000系のアルミニウム合金が、好適に用いられる。
【0028】
さらに、そのようなアルミニウムパイプからなる第二パイプ14は、軽量性の更なる向上と、インストルメントパネルの内側に配置されたときのインストルメントパネル内側の空間を大きく確保するために、小径とされている。これに対して、第一パイプ12は、上記のように十分な剛性を得ることを目的として大径とされ、本実施形態では、第二パイプ14よりも大径とされている。このように、第一パイプ12は、大径とされているところから、剛性の向上のために必要以上に肉厚が大きくされることがない。これによって、第一パイプ12の重量が、可及的に小さくされているのである。なお、第一パイプ12は、第二パイプ14の剛性よりも大きな剛性を確保可能であれば、必ずしも、第二パイプ14よりも大径とされている必要はない。
【0029】
第一パイプ12と第二パイプ14の径(外径)や肉厚寸法は、特に限定されるものではなく、インパネビーム10に必要とされる剛性や軽量性等に応じて、適宜に決定されるものであるが、好適には、以下の寸法とされる。即ち、鋼パイプからなる第一パイプ12の外径は、好ましくは40〜70mmの範囲内の値とされる。また、その肉厚は、一般には1.8〜3.2mmの範囲内の値とされる。何故なら、第一パイプ12の外径が40mmを下回る場合や肉厚が1.8mm未満である場合には、第一パイプ12に要求される所望の剛性を確保することが困難となる恐れがあるからである。また、第一パイプ12の外径が70mmを上回る場合や肉厚が3.2mmを超える場合には、第一パイプ12が大型化し、それにより、インストルメントパネルの内側空間が第一パイプ12にて取られ過ぎたり、或いはインパネビーム10全体の重量が過大となって、インパネビーム10が装着される自動車の燃費効率が低下したりする可能性が大きくなるからである。
【0030】
また、アルミニウムパイプからなる第二パイプ14の外径は、好ましくは25〜55mmの範囲内とされる。そして、その肉厚は、一般には1.8〜4.0mmの範囲内の値とされる。何故なら、第二パイプ14の外径が25mmを下回る場合や肉厚が1.8mm未満である場合には、第二パイプ14の強度が著しく低いものとなる恐れがあるからである。一方、第二パイプ14の外径が55mmを上回る場合や肉厚が4.0mmを超える場合には、第二パイプ14が大型化し、それにより、インストルメントパネルの内側空間が第二パイプ14にて取られ過ぎたり、或いはインパネビーム10全体の重量が過大となって、インパネビーム10が装着される自動車の燃費効率が低下したりする可能性が大きくなるからである。
【0031】
なお、インパネビーム10に求められる剛性乃至は強度、或いは軽量性は、インパネビーム10が装着される自動車の種類によって、種々変更される場合がある。それ故、上記した第一パイプ12と第二パイプ14の外径と肉厚の好適範囲、更には後述する連結板16の肉厚の好適範囲も、インパネビーム10が装着される自動車の種類によって、適宜に変更されることもある。
【0032】
一方、図1及び図2に示されるように、連結板16は、全体として、第一パイプ12の端部外径よりも一周り大きな外径を有する略円形の平板形状を有している。また、連結板16の外周面のうちで、直径方向の両側に位置する部分には、第一及び第二平坦面17a,17bが、互いに平行に延びるように、それぞれ設けられている。そして、この連結板16の一方の面に、鋼パイプからなる第一パイプ12が、また、その他方の面に、アルミニウムパイプからなる第二パイプ14が、それぞれ摩擦圧接されているのである。
【0033】
このような連結板16は、第一パイプ12や第二パイプ14との接合性を考慮すると、第一パイプ12と同材質の鋼製か、若しくは第二パイプ14と同材質の純アルミニウム製又はアルミニウム合金製であることが望ましい。しかしながら、連結板16をアルミニウム製とした場合、連結板16よりも高硬度の鋼パイプからなる第一パイプ12の摩擦圧接時の加圧力により、第一パイプ12の端部が連結板16に食い込んでしまい、そのために、十分な接合ができなくなってしまう可能性が高い。このため、本発明では、連結板16が、鋼材にて構成されているのである。この連結板16の形成材料に用いられる鋼材の種類は、特に限定されるものではないが、好適には、第一パイプ12を形成している鋼材と同一種類のものが使用される。それによって、より十分な接合性乃至は接合強度が確保され得る。
【0034】
なお、連結板16は、同軸上に位置する第一パイプ12と第二パイプ14とが両方の面に対してそれぞれ確実に摩擦圧接され得るように、第一パイプ12の外径と第二パイプ14の外径のうちの大きなもの(ここでは、第一パイプ12の外径)よりも更に大きな板面を有しておれば、その具体的な大きさや形状は、何等特定されるものではない。しかしながら、連結板16、ひいてはインパネビーム10全体の重量の増大を防止する上で、可及的に小さく、且つ第一及び第二パイプ12,14のうちの外径の大きなものの横断面形状に近い形状であることが望ましい。また、その一方で、連結板16に対する第一パイプ12と第二パイプ14の摩擦圧接時に、連結板16を確実に保持して、摩擦圧接操作をスムーズに実施するために、連結板16の板面が、第一パイプ12の外径と第二パイプ14の外径のうちの大きなものよりも、例えば10mm以上大きな直径の円を描き得る大きさを有していることが好ましい。従って、本実施形態では、図2から明らかなように、連結板16が、第一パイプ12の外径:rよりも10mm以上大きな直径:Rの円(図2に二点鎖線で示す)を描き得る大きさの板面を備えた略円板形状とされているのである。
【0035】
そして、そのような連結板16の肉厚(板厚)も、特に限定されるものではないものの、好適には5〜15mmとされる。何故なら、連結板16の肉厚が5mm未満であると、余りに薄いために、剛性乃至は強度が不十分となり、そのために、鋼パイプからなる第一パイプ12の摩擦圧接時の加圧力により変形する等して、十分な接合ができなくなってしまう恐れがあるからである。また、連結板16の肉厚が15mmを超える場合には、厚過ぎて、連結板16の重量が過大となり、インパネビーム10全体の重量を著しく増大させてしまう可能性が高くなるからである。
【0036】
このような連結板16の第二パイプ14との接合面には、第二パイプ14の接合側端部に形成されたバリ18が、テーパ状の外周面を与える厚肉部を形成して、接合されている。即ち、アルミニウムパイプからなる第二パイプ14は、鋼材からなる連結板16よりも硬度が低いため、連結板16に対する摩擦圧接時に、連結板16との当接側(接合側)の端部に対して、その全周にわたって周方向に連続して延びるバリ18が、不可避的に生ずる。本実施形態では、このバリ18が、第二パイプ14の当接端部を大径化するように形成されると共に、連結板16に接合されているのである。また、かかるバリ18の外周面の形状は、ここでは、第二パイプ14の当接端部の外径よりも大なる形態において、連結板16側に向かって次第に大径化するテーパ面形状となるように、制御されている。このようなバリ18の連結板16への接合によって、第二パイプ14の連結板16に対する接合強度が、より効果的に高められている。また、インパネビーム10をインストルメントパネルの内側の限られたスペース内に設置する際に、第二パイプ14に取り付けられるワイヤハーネスなどの部品や部材がバリ18と干渉して、それらの部品や部材の設置が困難となったり、或いはそれらの部品や部材が、例えば尖ったバリ18部分との接触によって損傷したりすることが、バリ18の外周面形状がテーパ面形状に制御されていることによって、有利に防止され得るようになっている。
【0037】
なお、図示されてはいないものの、上記のような構造を有するインパネビーム10は、従来と同様に、インストルメントパネルの内側において、第一パイプ12を運転席側に位置させる一方、第二パイプ14を助手席側に位置させて、それら運転席側と助手席側とに跨って車幅方向に延びるように配置されることとなる。そして、そのような配置状態下で、車幅方向の両側に位置する、例えば、Aピラー(フロントピラー)等の車体部材間に架設されるようになっているのである。
【0038】
ここにおいて、上記のような構造のインパネビーム10は、例えば、以下のようにして製造されることとなる。
【0039】
すなわち、先ず、図3に示されるように、連結板16を、上側クランプ部材20と下側クランプ部材22との間で、上下方向において挟持する。上側クランプ部材20と下側クランプ部材22は、互いに同一の構造を有しており、何れも、図示しない油圧シリンダ等のアクチュエータの作動により、上下方向(図3における白抜きの矢印方向)に移動可能とされている。
【0040】
より詳細には、図4及び図5に示されるように、上側クランプ部材20は、金属製のクランプ部24と、このクランプ部24を図示しないアクチュエータに連結する連結ロッド26とを有している。かかるクランプ部24は、全体として、略逆L字状を有している。そして、水平方向に延びる厚肉平板状を呈し、上面において、連結ロッド26に接続される基板部28と、この基板部28の延出方向(図4の左右方向)の一端部から鉛直下方に向かって突出する、厚肉平板状の当接部30とを、一体的に有している。
【0041】
そのようなクランプ部24の基板部28における下面の延出方向中間部には、凹部32が形成されている。そして、この凹部32の底面が、前記連結板16の第一平坦面17aと、それを間に挟んで周方向両側に位置する外周面部分とに対応した形状を有するクランプ面34とされている。
【0042】
また、当接部30の下面の中央部には、横断面略半円形状を呈する溝部40が形成されている。この溝部40は、図4の右側(基板部28の当接部30が形成される端部とは反対の端部側)に向かって開口する開口部側の内周面部分が、分割囲繞面42とされている一方、図4の左側(基板部28の当接部30が形成される端部側)に向かって開口する開口部側の内周面部分が、分割ガイド面44とされている。
【0043】
さらに、分割囲繞面42は、図4の右側に向かって次第に大径化する半割テーパ面形状を有している。また、この分割囲繞面42の最小半径が、第二パイプ14の外周面の半径(外径の1/2)と同じか、又はそれよりも僅かに大きな寸法とされている。分割ガイド面44は、図4の左側に向かって次第に大径化する半割テーパ面形状を有している。このガイド面44の最小半径も、第二パイプ14の外周面の半径(外径の1/2)と同じか、又はそれよりも僅かに大きな寸法とされている。なお、分割囲繞面42は、半割テーパ面形状のテーパ角度が、分割ガイド面44よりも大きく設定されている。
【0044】
一方、下側クランプ部材22も、金属製のクランプ部24と、このクランプ部24を図示しないアクチュエータに連結する連結ロッド26とを有している。この下側クランプ部材22は、上側クランプ部材20を上下反転して位置させただけで、上側クランプ部材20と全く同一の構造を有している。それ故、ここでは、下側クランプ部材22のクランプ部24の説明を省略する。
【0045】
そして、図3及び図6に示されるように、連結板16が、第一及び第二平坦面17a,17bをそれぞれ上下に位置させるように配された状態で、それを間に挟んで上側と下側にそれぞれ配置された上側クランプ部材20と下側クランプ部材22とが、図示しないアクチュエータにより下方又は上方に移動させられる。これにより、連結板16の第一平坦面17aを含む上端側部分と第二平坦面17bを含む下端側部分とが、上側及び下側クランプ部材20,22の各クランプ部24,24(基板部28,28)に設けられた凹部32,32内に、それぞれ収容、保持されることとなる。
【0046】
そして、図示しないアクチュエータの作動に基づいて、上側及び下側クランプ部材20,22の各凹部32,32の各クランプ面34,34が、連結板16に対して、それぞれ加圧される。これによって、連結板16が、上側クランプ部材20と下側クランプ部材22との間で挟持される。そして、連結板16が、変位不能とされ、且つ各平坦面17a,17bの各クランプ面34,34に対する当接、係合により回転不能とされる。
【0047】
また、そのような上側及び下側クランプ部材20,22による連結板16の挟持状態下では、上側及び下側クランプ部材20,22の各当接部30,30の先端面同士が圧接される。これにより、それらの先端面同士の間に、各当接部30,30に設けられた各溝部40,40にて、挿通孔45が形成される。
【0048】
そして、挿通孔45の一方の開口部(図3の右側への開口部)側の内周面部分が、各分割囲繞面42,42からなる囲繞面46とされている。また、挿通孔45の他方の開口部(図3の左側への開口部)側の内周面部分が、各分割ガイド面44,44からなるガイド面48とされている。囲繞面46は、挿通孔45の一方の開口側に向かって次第に大径化するテーパ面形状とされている。また、ガイド面48は、挿通孔45の他方の開口側に向かって次第に大径化するテーパ面形状とされている。更に、それらテーパ面形状を呈する囲繞面46とガイド面48は、それぞれの最小径が、第二パイプ14の外径と同じか又はそれよりも僅かに大きな寸法とされている。
【0049】
かくして、上側及び下側クランプ部材20,22にて挟持された連結板16が、厚さ方向一方の面と他方の面のそれぞれの外周部を除く部分において、外部に露出されている。
【0050】
そして、連結板16が、上記の如き保持状態となるように、上側及び下側クランプ部材20,22にて挟持されたら、図7に示されるように、第一パイプ12を、その軸方向一方側の先端面において、連結板16の一方の面の外部への露出部分の中心部に当接、位置させる。また、それと共に、第二パイプ14の軸方向一端部を、ガイド面48にて案内させつつ、挿通孔45内に挿通させて、その先端面において、連結板16の他方の面の中心部に当接、位置させる。
【0051】
これによって、第一パイプ12と第二パイプ14とが、連結板16を介して、同軸的に位置させられるのである。また、このとき、第一及び第二クランプ部材20,22の各当接部30,30間に形成される囲繞面46が、第二パイプ14の連結板16への当接側端部を、それと径方向に離間した位置で囲繞する。そうして、第二パイプ14の連結板16への当接側端部の外周面と、連結板16の第二パイプ14の当接側端部との当接面と、囲繞面46との間に、閉鎖空間50を形成する。このことから明らかなように、本実施形態では、分割囲繞面42をそれぞれ有する上側クランプ部材20と下側クランプ部材22とにて、囲繞部材が構成されている。
【0052】
その後、図示しない加圧装置と回転装置にて、第一パイプ12と第二パイプ14とを、同時に、連結板16の両面に押し付けながら、軸心回りに回転させる。これによって、連結板16の一方の面に対する第一パイプ12の摩擦圧接操作と、連結板16の他方の面に対する第二パイプ14の摩擦圧接操作とを、同時に実施するのである。このとき、図7に二点鎖線で示されるように、アルミニウムパイプからなる第二パイプ14の当接側端部に、バリ18が不可避的に発生する。このバリ18は、前記閉鎖空間50内に閉じ込められて、充填される。そして、そのようなバリ18が、第二パイプ14の連結板16への当接側端面と共に、回転しながら連結板16に押し付けられる。これによって、バリ18が、連結板16に接合されると共に、閉鎖空間50に対応した形状に成形されて、その外周面が、囲繞面46に対応したテーパ面形状に形成されることとなる。そして、第一パイプ12の摩擦圧接操作と第二パイプ14の摩擦圧接操作とが、同時に或いは時間差をおいて終了することによって、図1に示されるような構造を備えた、目的とするインパネビーム10を得るのである。
【0053】
なお、第一パイプ12と第二パイプ14の連結部16に対する摩擦圧接操作の実施条件は、特に限定されるものではないが、それらの摩擦圧接操作の実施に際して、第一パイプ12や第二パイプ14の連結部16に対する加圧力が80〜150MPaとされていることが好ましく、また、それら第一パイプ12や第二パイプ14の回転数が600〜1200rpmとされていることが望ましい。何故なら、各パイプ12,14の加圧力が80MPa未満とされる場合や回転数が600rpm未満とされる場合には、各パイプ12,14の連結板16に対する接合強度が不充分となる恐れがあるからである。また、各パイプ12,14の加圧力が150MPaを超える大きな値となると、アルミニウムパイプからなる第二パイプ14が、摩擦圧接操作の途中で変形してしまう可能性があるからである。更に、各パイプ12,14を1200rpmを超える回転数で回転させても、接合強度等の接合継手の性能向上が然程望めるものではなく、却って、摩擦圧接に要するコストの増大を招く結果となるからである。しかも、アルミニウムパイプからなる第二パイプ14を1200rpmを超える回転数で回転させた場合には、第二パイプ14の連結板16との接続部の温度が高くなり過ぎて、接合が困難となる恐れさえもあるからである。そして、第一パイプ12と第二パイプ14の連結部16に対する摩擦圧接操作の実施に際しては、例えば、摩擦圧接操作による各パイプ12,14の長さの減少量が予め設定された値となって、インパネビーム10全体の長さが所望の長さとなるように、加圧力や回転数等の実施条件が、適宜に設定されるのである。
【0054】
このように、本実施形態のインパネビーム10にあっては、インストルメントパネルの内側の運転席側部分に配置されて、ステアリングコラムが取り付けられる第一パイプ12が大径の鋼パイプからなる一方、助手席側部分に配置される第二パイプ14が小径のアルミニウムパイプにて構成されている。それ故、インパネビーム10全体の軽量性を十分に確保しつつ、高剛性化が有利に図られて、アイドリング時等の入力振動によるステアリングの共振を効果的に防止出来るのである。また、インストルメントパネルの内側の空間を可及的に大なる大きさにおいて確保することも可能となる。更に、鋼パイプからなる第一パイプ12の径が大きくされている分だけ、第一パイプ12の薄肉化が実現できる。これによっても、第一パイプ12、ひいてはインパネビーム10全体の軽量化が期待され得ることとなる。
【0055】
しかも、第一パイプ12と第二パイプ14の連結板16両面への摩擦圧接する際の加圧力や回転数等の条件を任意に設定するだけで、インパネビーム10全体の長さを、所望の長さに、簡単に且つ高精度に仕上げることが出来る。その結果、インパネビーム10の車体への取付精度を有利に高めることが可能となる。
【0056】
そして、本実施形態のインパネビーム10を、上記の如き手法にて製造することによって、インパネビーム10の製造工程の短縮化及び効率化が有利に図られ得るのである。
【0057】
次に、図8には、本発明に従う構造を有するインパネビームの別の実施形態が示されている。なお、本実施形態のインパネビーム52とその製造方法に関しては、前記第一の実施形態に係るインパネビーム10と同様な構造を有する部材及び部位について、更には、そのようなインパネビーム10の製造に用いられる部材と同様な構造を有する部材について、図1乃至図7と同一の符号を付すことにより、その詳細な説明を省略する。
【0058】
すなわち、図8から明らかなように、本実施形態のインパネビーム52も、インストルメントパネルの内側の運転席側に配置される鋼パイプからなる大径の第一パイプ12と、助手席側に配置されるアルミニウムパイプからなる小径の第二パイプ14とが、鋼製の連結板54に対して摩擦圧接されることで、1本の長手のパイプ部材として形成されている。そして、ここでは、それら第一パイプ12と第二パイプ14とが、互いに非同軸的に配置されている。
【0059】
また、連結板54は、図9に示されるように、全体として、略長円形状を有している。そして、かかる連結板54の一方の面において、その長軸方向の中心から一方側に偏倚した位置に、鋼パイプからなる第一パイプ12が摩擦圧接されている。また、その他方の面において、その長さ方向の中心から、第一パイプ12が接合される側とは反対側に偏倚した位置に、アルミニウムパイプからなる第二パイプ14が、摩擦圧接されている。この連結板54の外周面のうちで、長軸方向の両端に位置する部分には、第一及び第二平坦面17a,17bが、互いに平行に延びるように、それぞれ設けられている。なお、このような連結板54は、その短軸長さが、大径の第一パイプ12の外径よりも大きな寸法(例えば、10mm以上大きな寸法)とされていると共に、第一平坦面17aから第二パイプ14の外周面までの距離と、第二平坦面17bから第一パイプ12の外周面までの距離とが、それぞれ所定量以上大きな寸法(例えば、5mm以上大きな寸法)とされている。
【0060】
このようなインパネビーム52にあっても、第二パイプ14の連結板54との当接側端部の外周面に形成されたバリ18が、連結板54に接合されている。また、そのようなバリ18の外周面が、連結板54側に向かって大径となるテーパ面形状とされて、第二パイプ14の当接側端部の厚肉部として形成されている。
【0061】
そして、このようなインパネビーム52は、例えば、以下のようにして製造されることとなるのである。
【0062】
すなわち、先ず、図10に示されるように、連結板54を、上側クランプ部材56と下側クランプ部材58との間で、上下方向において挟持する。上側及び下側クランプ部材56,58は、何れも、水平方向に延びる基板部28と、この基板部28の延出方向一端部に、一体的に突設された当接部30とを、それぞれ有している。それら上側及び下側クランプ部材56,58の基板部28と当接部30は、前記第一の実施形態に係るインパネビーム10の製造時に用いられる上側及び下側クランプ部材20,22の基板部28と当接部30と同一の構造を有している。即ち、各基板部28には、クランプ面34を有する凹部32が設けられている。また、各当接部30には、分割囲繞面42と分割ガイド面44とを有する溝部40が設けられている。
【0063】
そして、図11及び図12に示されるように、上側クランプ部材56の基板部28における当接部30形成側とは反対側の端部には、裏当て部60が、当接部30と対向する状態で、下方に向かって一体的に突設されている。この裏当て部60は、厚肉の平板形状を呈し、当接部30との対向面が、当接部30と平行に延びる平坦な裏当て面62とされている。
【0064】
一方、図13及び図14に示されるように、下側クランプ部材58は、当接部30が、上側クランプ部材56の当接部30よりも十分に長い突出長さを有している。そして、この当接部30の長さ方向中間部が裏当て部60とされており、また、かかる裏当て部60の厚さ方向一方側(基板部28の当接部30が形成される端部とは反対の端部側)の面が、裏当て面62とされている。
【0065】
そして、図10及び図15に示されるように、連結板54の第一平坦面17aを含む上端側部分が、上側クランプ部材56の凹部32内に突入し、且つ第二平坦面17bを含む下端部分が、下側クランプ部材58の凹部32内に突入した状態で、連結板16が、上側クランプ部材56のクランプ面34と下側クランプ部材58のクランプ面34との間で挟持されている。これによって、前記第一の実施形態のインパネビーム10の製造時と同様に、連結板54が、上側クランプ部材56と下側クランプ部材58との間での挟持状態下で、変位不能で且つ回転不能とされている。
【0066】
また、そのような上側及び下側クランプ部材56,58による連結板54の挟持状態下では、上側及び下側クランプ部材56,58の各当接部30,30の先端面同士の間に、挿通孔45が、各溝部40,40にて形成される。そして、そのような挿通孔45の裏当て面62での開口側の内周面部分が、各分割囲繞面42,42からなる囲繞面46とされている一方、裏当て面62とは反対側の面において開口する開口部側の内周面部分が、各分割ガイド面44,44からなるガイド面48とされている。これによって、上側クランプ部材56の当接部30に対する連結板54の当接面の上側部分の中心部が、挿通孔45を通じて外部に露出している。また、かかる連結板54の当接面とは反対側の面の下側部分が、外部に露出している。
【0067】
そして、ここでは、連結板54の挿通孔45を通じての外部への露出部位に対して、厚さ方向反対側の面において対応する部分が、上側クランプ部材56の裏当て部60の裏当て面62に当接して、裏当て部60にてバックアップされている。また、連結板54の下側部分の外部への露出部位に対して、厚さ方向反対側の面において対応する部分が、下側クランプ部材58の裏当て部60の裏当て面62に当接して、裏当て部60にてバックアップされている。このことから明らかなように、本実施形態では、裏当て部60をそれぞれ有する上側クランプ部材56と下側クランプ部材58とにて、第一の裏当て部材と第二の裏当て部材とが、それぞれ構成されている。
【0068】
そして、連結板54が、上記の如き状態となるように、上側及び下側クランプ部材56,58にて挟持されたら、図16に示されるように、第一パイプ12を、その軸方向一方側の先端面において、連結板54の一方の面の外部に露出した下側部分の幅方向中心部に当接位置させる。また、それと共に、第二パイプ14の軸方向一端部を、ガイド面48にて案内させつつ、挿通孔45内に挿通させて、その先端面において、連結板54の他方の面の外部に露出した上側部分の幅方向中心部に当接、位置させる。
【0069】
これによって、第一パイプ12と第二パイプ14とを、連結板54を介して、非同軸的に、換言すれば偏心させて、位置させる。また、このとき、上側及び下側クランプ部材56,58の各当接部30,30間に形成される囲繞面46が、第二パイプ14の連結板54への当接側端部を、それと径方向に離間した位置で囲繞する。そうして、第二パイプ14の連結板54への当接側端部の外周面と、連結板54の第二パイプ14の当接側端部との当接面と、囲繞面46との間に、閉鎖空間50を形成する。このことから明らかなように、本実施形態にあっても、分割囲繞面42をそれぞれ有する上側クランプ部材56と下側クランプ部材58とにて、囲繞部材が構成されている。
【0070】
その後、図示しない加圧装置と回転装置を用いて、第一パイプ12と第二パイプ14とを、同時に、連結板54の両面に押し付けながら、軸心回りに回転させる。これによって、連結板54の一方の面に対する第一パイプ12の摩擦圧接操作と、連結板54の他方の面に対する第二パイプ14の摩擦圧接操作とを、同時に実施する。このとき、図16に二点鎖線で示される如く、前記第一の実施形態と同様に、アルミニウムパイプからなる第二パイプ14の当接側端部に発生するバリ18が、閉鎖空間50内に閉じ込められて、連結板54に接合されると共に、閉鎖空間50に対応した形状に成形されて、その外周面が、囲繞面46に対応したテーパ面形状とされる。そして、第一パイプ12の摩擦圧接操作と第二パイプ14の摩擦圧接操作とが、同時に或いは時間差をおいて終了することによって、図8に示されるような構造を備えた、目的とするインパネビーム52を得るのである。なお、第一パイプ12と第二パイプ14の連結板54に対する摩擦圧接操作の好適な実施条件も、前記第一の実施形態と同様とされる。
【0071】
このように、インパネビーム52にあっても、インストルメントパネルの内側の運転席側部分に配置されて、ステアリングコラムが取り付けられる第一パイプ12が大径の鋼パイプからなる一方、助手席側部分に配置される第二パイプ14が小径のアルミニウムパイプにて構成されている。また、それら第一パイプ12と第二パイプ14とが鋼製の連結板54の両面に摩擦圧接されている。従って、本実施形態においても、前記第一の実施形態において奏される作用・効果と同一の作用・効果が、有効に享受され得る。
【0072】
そして、本実施形態のインパネビーム52にあっては、特に、第一パイプ12と第二パイプ14とが非同軸的に又は偏心して位置する状態で連結されている。それ故、第一パイプ12と第二パイプ14との位置を適宜に変更することで、インパネビーム52が設置されたインストルメントパネルの内側空間を、より自由に且つ効率的に利用することが可能となる。
【0073】
また、本実施形態のインパネビーム52においては、第一パイプ12と第二パイプ14の摩擦圧接時に、連結板54における第一パイプ12の当接部位の反対側と第二パイプ14の当接部位の反対側とに、上側クランプ部材56の裏当て部60と下側クランプ部材58の裏当て部60とがそれぞれ当接されて、バックアップされた状態で、摩擦圧接操作が進行するようになっている。それ故、第一パイプ12と第二パイプ14とから、連結板54に加えられる反対方向の加圧力によって、連結板54が変形するようなことが、効果的に防止され得ることとなる。これによって、インパネビーム52の品質の安定化が、更に効果的に実現され得るのである。
【0074】
さらに、本実施形態では、裏当て部60をそれぞれ有する上側及び下側クランプ部材56,58が囲繞部材としての機能をも有している。これによって、インパネビーム52の製造装置の低コスト化と製造作業の簡略化とが、共に有利に図られ得ることとなる。
【0075】
以上、本発明の具体的な構成について、代表的な実施形態に基づき詳述してきたが、これはあくまでも例示に過ぎないのであって、本発明は、上記の記載によって、何等の制約をも受けるものではない。
【0076】
例えば、連結板16,54の大きさや形状は、何等限定されるものではなく、接合される第一パイプ12と第二パイプ14の外径やそれらの配置位置等に応じて、適宜の大きさや形状に設定され得るものである。
【0077】
また、連結板16,54の第一パイプ12や第二パイプ14との当接部位に、突出部を設けることも可能である。具体的には、それぞれのパイプ12,14の配置位置と同軸的な位置に、それぞれのパイプ12,14の内径と略同じか、又は僅かに小さい外径を持つ突出部を設けるようにするのである。このような突出部は、第一パイプ12と第二パイプ14とを、当接されるべき位置に案内する為の、ガイドとなり得る他、バリ18の成形を有効に行い、効果的な厚肉部を形成することができる。
【0078】
さらに、連結板16,54の第一パイプ12と第二パイプ14との当接部位に、円環状の溝部を設けることもできる。具体的には、それぞれのパイプ12,14の配置位置と同軸的な位置に、それぞれのパイプ12,14の肉厚と略同じか、又はそれらの肉厚より僅かに大きな溝幅を有する円環状の溝部を設けるものであって、これにより、第一パイプ12や第二パイプ14の摩擦圧接操作を行う際に、円環状溝部の両側面が、それぞれ第一パイプ12や第二パイプ14の外周面及び内周面と接触し、接合されることとなる。その結果、接合面積が拡大されて、第一及び第二パイプ12,14と連結板16,54との間の接合強度が、有利に高められ得る。
【0079】
更にまた、上側クランプ部材20,56や下側クランプ部材22,58の具体的構造も、前記第一及び第二の実施形態に示されるものに、特に限定されるものではない。例えば、前記第一及び第二の実施形態における上側クランプ部材20,56と下側クランプ部材22,58を、上下反転させて配置して、それら上側クランプ部材20,56を下側クランプ部材として用い、また下側クランプ部材22,58を上側クランプ部材として用いることも出来る。
【0080】
また、囲繞面46の形状も、前記第一及び第二の実施形態に示されるものに、特に限定されるものではない。例えば、囲繞面46のテーパ面を、挿通孔45の軸中心方向に向かって膨らませた曲面とすることもできる。これによって、バリ18を、連結板16,54や第二パイプ14と、より滑らかに接合することができる。
【0081】
さらに、上側クランプ部材20,56及び下側クランプ部材22,58において、第一パイプ12を案内するためのガイド面を設けることもできる。このガイド面は、上側クランプ部材20,56及び下側クランプ部材22,58の各基板部28,28における当接部30,30の形成側とは反対側の端部に設けられる。また、かかるガイド面は、例えば、上側クランプ部材20,56及び下側クランプ部材22,58の、連結板16,54と当接する面とは反対面の開口側に向かって次第に大径化するテーパ面形状とされて、それぞれの最小径が、第一パイプ12の外径と同じか又はそれよりも僅かに大きな寸法とされる。
【0082】
加えて、前記幾つかの実施形態では、第一パイプ12と第二パイプ14とを連結板16,54に摩擦圧接する際に、第一パイプ12と第二パイプ14とを同一方向に回転させていたが、それら第一パイプ12と第二パイプ14とを互いに逆の方向に回転させても、何等差し支えない。
【0083】
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもないところである。
【符号の説明】
【0084】
10,52 インパネビーム 12 第一パイプ
14 第二パイプ 16,54 連結板
18 バリ 20,56 上側クランプ部材
22,58 下側クランプ部材 24 クランプ部
26 連結ロッド 28 基板部
30 当接部 32 凹部
34 クランプ面 40 溝部
42 分割囲繞面 44 分割ガイド面
45 挿通孔 46 囲繞面
48 ガイド面 50 閉鎖空間
60 裏当て部 62 裏当て面


【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のインストルメントパネルの内側に、運転席側と助手席側とに跨って車幅方向に延びるように配置されて、車幅方向の両側に位置する車体部材間に架設されるインパネビームであって、
助手席側に配置される部分がアルミニウムパイプからなる一方、運転席側に配置される部分が鋼パイプにて構成されており、該アルミニウムパイプが鋼製の連結板の一方の面に摩擦圧接されると共に、該鋼パイプが該連結板の他方の面に摩擦圧接されることによって、それらアルミニウムパイプと鋼パイプとが該連結板を介して一体的に連結されてなることを特徴とするインパネビーム。
【請求項2】
前記鋼パイプが、前記アルミニウムパイプよりも大きな径を有している請求項1に記載のインパネビーム。
【請求項3】
前記アルミニウムパイプと前記鋼パイプとが、互いに非同軸的に位置した状態で、前記連結板を介して一体的に連結されている請求項1又は請求項2に記載のインパネビーム。
【請求項4】
前記連結板の一方の面に対する前記アルミニウムパイプの摩擦圧接により、該アルミニウムパイプの該連結板との当接側端部に生ずるバリを、該当接側端部の外径を大ならしめる厚肉部として形成すると共に、該連結板の一方の面に接合せしめた請求項1乃至請求項3のうちの何れか1項に記載のインパネビーム。
【請求項5】
自動車のインストルメントパネルの内側に、運転席側と助手席側とに跨って車幅方向に延びるように配置されて、車幅方向の両側に位置する車体部材間に架設されるインパネビームを製造する方法であって、
アルミニウムパイプと鋼パイプと、該アルミニウムパイプの外径及び該鋼パイプの外径よりも大きな板面を備えた鋼製の連結板とを準備する工程と、
前記連結板の一方の面に対する前記アルミニウムパイプの摩擦圧接操作と、該連結板の他方の面に対する前記鋼パイプの摩擦圧接操作とを同時に実施して、該アルミニウムパイプと該鋼パイプとを該連結板を介して一体的に連結する工程と、
を含むことを特徴とするインパネビームの製造方法。
【請求項6】
前記鋼パイプの外径よりも大きな板面を備えた前記連結板を変位不能で且つ回転不能に保持すると共に、該連結板の一方の面に第一の裏当て部材を当接配置する一方、該連結板の他方の面に第二の裏当て部材を当接配置することにより、該連結板の両面の互いに異なる位置に対して、厚さ方向への押圧力が同時に作用したときの該連結板の変形を阻止せしめた状態で、該連結板の一方の面に対して該アルミニウムパイプを摩擦圧接する一方、該連結板の他方の面に対して、該鋼パイプを、該アルミニウムパイプとは非同軸的となる位置において摩擦圧接するようにした請求項5に記載のインパネビームの製造方法。
【請求項7】
前記連結板の一方の面に対する前記アルミニウムパイプの摩擦圧接操作の実施に際して、該アルミニウムパイプの該連結板との当接側端部の外周面と離間して位置する囲繞面を備えた囲繞部材にて、該アルミニウムパイプの該当接側端部を囲繞して、該当接側端部の外周面と、該連結板の一方の面と、該囲繞部材の囲繞面との間で閉鎖空間を形成し、該連結板に対する該アルミニウムパイプの摩擦圧接操作の実施により該アルミニウムの該当接側端部に生ずるバリを、該閉鎖空間内に閉じ込めて、該連結板の一方の面に接触させることにより、該バリを該連結板の一方の面に接合するようにした請求項5又は請求項6に記載のインパネビームの製造方法。
【請求項8】
前記囲繞部材が、前記連結板を挟持する複数のクランプ部材にて構成されると共に、それら複数のクランプ部材に、前記囲繞面を複数に分割した分割囲繞面がそれぞれ設けられ、該複数のクランプ部材が該連結板を挟持したときに、該複数の分割囲繞面が組み合わされて、該囲繞面が形成されると共に、該アルミニウムパイプの該連結板との前記当接側端部が、該囲繞面にて囲繞されるようになっている請求項7に記載のインパネビームの製造方法。
【請求項9】
前記囲繞部材の囲繞面が、前記連結板の一方の面に当接した前記アルミニウムパイプの当接側端部を囲繞した状態において、該当接側端部の先端に向かって次第に大径化するテーパ面形状を有している請求項7又は請求項8に記載のインパネビームの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−25179(P2012−25179A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−162493(P2010−162493)
【出願日】平成22年7月20日(2010.7.20)
【出願人】(000002277)住友軽金属工業株式会社 (552)
【Fターム(参考)】