説明

インビボポリヌクレオチド送達用生分解性ポリアセタール

ポリカチオン、ポリアニオンおよびポリヌクレオチドを含む分解性複合体は、インビボポリヌクレオチド送達用途に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は、参照によりその全文が本明細書に組み込まれる米国仮特許出願第60/507,161号(2003年9月29日出願)に基づく優先権を主張する。
【0002】
(技術分野)
本発明は、概して、インビトロおよびインビボポリヌクレオチド送達用途に有用な分解性ポリマー組成物に関する。特に本発明は、哺乳動物におけるインビボポリヌクレオチド送達用途に有用な、ポリアニオン、ポリカチオンおよびポリヌクレオチドを含む分解性複合体に関する。
【背景技術】
【0003】
低い免疫原性などの望ましい性質を持ち、比較的大規模な生産に適し、ある範囲の生物学的性質を与えるように容易に修飾することができる、非ウイルス薬物送達系が必要とされている。Mulligan,R.C.「The basic science of gene therapy(遺伝子治療の基礎科学)」Science 260,926-932(1993)ならびにLuo,D.およびSaltzman,W.M.「Synthetic DNA delivery systems(合成DNA送達系)」Nat. Biotechnol. 18,33-37(2000)参照。しかし、ポリ(リジン)およびポリエチレンイミン(PEI)などの非分解性カチオン性ポリマーは、著しい細胞毒性を持ちうる。Choksakulnimitr,S.,Masuda,S.,Tokuda,H.,Takakura,Y.およびHashida,M.「In vitro cytotoxicity of macromolecules in different cell culture systems(様々な細胞培養系における高分子のインビトロ細胞毒性)」J. Control Release 34,233-241(1995)、Brazeau,G.A.,Attia,S.,Poxon,S.およびHughes,J.A.「In vitro Myotoxicity of Selected cationic macrolecules used in non-viral gene therapy(非ウイルス遺伝子治療に用いられる選ばれたカチオン性高分子のインビトロ筋毒性)」Pharm. Res. 15,680-684(1998)ならびにAhn,C.-H.,Chae,S.Y.,Bae,Y.H.およびKim,S.W.「Biodegradable poly(ethylenimine) for plasmid DNA delivery(プラスミドDNA送達用の生分解性ポリ(エチレンイミン))」J. Control. Release 80,273-282(2002)参照。
【0004】
細胞毒性を低下させるために、分解性カチオン性ポリマー(ポリカチオン)を開発する努力がいくつかなされている。Ahn,C.-H.,Chae,S.Y.,Bae,Y.H.およびKim,S.W.「Biodegradable poly(ethylenimine) for plasmid DNA delivery(プラスミドDNA送達用生分解性ポリ(エチレンイミン))」J. Control. Release 80,273-282(2002)、Lynn,D.M.,Anderson,D.G.,Putman,D.,Langer,R.「Accelerated Discovery of Synthetic Transfection Vectors: Parallel Synthesis and Screening of a Degradable Polymer Library(合成トランスフェクションベクターの発見の促進:分解性ポリマーライブラリーのパラレル合成およびパラレルスクリーニング)」J. Am. Chem. Soc. 123,8155-8156(2001)、Lim,Y.ら「Biodegradable Polyester, Poly[α-(4-Aminobutyl)-1-Glycolic Acid], as a Non-toxic Gene Carrier(無毒性遺伝子担体としての生分解性ポリエステル、ポリ[α-(4-アミノブチル)-1-グリコール酸])」Pharmaceutical Research 17,811-816(2000)、Lim,Y.,Kim,S.,Suh,H.およびPark,J.-S.「Biodegradable, Endosome Disruptive, and Cationic Network-type Polymer as a High Efficient and Non-toxic Gene Delivery Carrier(高効率無毒性遺伝子送達担体としての生分解性エンドソーム破壊性カチオン性ネットワーク型ポリマー)」Bioconjugate Chem. 13,952-957(2002)、Lim,Y.K.,S.,Lee,Y.,Lee,W.,Yang,T.,Lee,M.,Suh,H.,Park,J.「Cationic Hyperbranched Poly(amino ester): A Novel Class of DNA Condensing Molecule with Cationic Surface, Biodegradable Three-Dimensional Structure, and Tertiary Amine Groups in the Interior(カチオン性高分岐ポリ(アミノエステル):カチオン性表面、生分解性三次元構造、および内部三級アミン基を持つ新しい種類のDNA凝縮分子)」J. Am. Chem. Soc. 123,2460-2461(2001)ならびにTuominen,J.ら「Biodegradation of Lactic Acid Based Polymers under Controlled Composting Conditions and Evaluation of the Ecotoxicological Impact(制御されたコンポスト化条件での乳酸系ポリマーの生分解および生態毒性学的影響の評価)」Biomacromolecules 3,445-455(2002)参照。しかし、生理的条件下では、これらのカチオン性ポリマーは塩基触媒加水分解による分解を受けやすい。
【0005】
アセタール結合を含有する酸感受性ポリマーが報告されている。Tomlinson,R.ら「Pendent Chain Functionalized Polyacetals That Display pH-Dependent Degradation: A Platform for the Development of Novel Polymer Therapeutics(pH依存的分解を示すペンダント鎖官能化ポリアセタール:新規ポリマー治療薬を開発するためのプラットフォーム)」Macromolecules 35,473-480(2002)ならびにMurthy,N.,Thng,Y.X.,Schuck,S.,Xu,M.C.およびFrechet,J.M.J.「A Novel Strategy for Encapsulation and Release of Proteins: Hydrogels and Microgels with Acid-Labile Acetal Cross-Likers(タンパク質の封入および放出に関する新しい戦略:酸不安定性アセタール架橋剤を使ったヒドロゲルおよびマイクロゲル)」J. Am. Chem. Soc. 124,12398-12399(2002)参照。
【0006】
(その他の参考文献)
Kircheis R,Wightman L,Wagner E.「Design and gene delivery activity of modified polyethylenimines(修飾ポリエチレンイミンの設計および遺伝子送達活性)」Adv. Drug Deliv. Rev. 2001,53,341-358.
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Tousignantら「Comprehensive analysis of the acute toxicities induced by systemic administration of cationic lipid:plasmid DNA complexes in mice(カチオン性脂質:プラスミドDNA複合体の全身投与によってマウスに誘発される急性毒性の包括的解析)」Hum Gene Ther 2000,11,2493-2513.
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Trubetskoyら「Layer-by-layer deposition of oppositely charged polyelectrolytes on the Surface of Condensed DNA particles(凝縮DNA粒子の表面における反対荷電を持つ高分子電解質の逐次的沈着)」Nucleic Acids Res. 1999,27,3090-3095.
Trubetskoyら「Recharging cationic DNA complexes with highly charged polyanions for in vitro and in vivo gene delivery(インビトロおよびインビボ遺伝子送達用カチオン性DNA複合体への高荷電ポリアニオンの再装填)」Gene Ther. 2003,10,261-271. 2002年10月11日に出願された米国特許出願第10/270,788号(米国特許出願公開第2003-0215395号(A1)として公開されている)および2002年5月14日に出願された米国仮特許出願第60/378,164号.
2003年2月25日に出願された米国特許出願第10/375,705号(米国特許出願公開第2004-0166089号(A1)として公開されている).
Tomlinson R,Heller J,Brocchini S,Duncan R.「Polyacetal-doxorubicin conjugates designed for pH-dependent degradation(pH依存的分解のために設計されたポリアセタール-ドキソルビシンコンジュゲート)」Bioconjug Chem. 2003,14(6),1096-1106.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図6に図解するように、ポリカチオン-DNA二元複合体はエンドサイトーシス経路によって細胞に進入すると考えられる。しかし、インビボで細胞にポリヌクレオチドを送達するそのような二元複合体の能力は、毒性および低い遺伝子発現による制限を受ける。インビボでのトランスフェクション効率の低下は、正に荷電したポリカチオン-DNA二元複合体と、タンパク質などの負に荷電した成分との相互作用によって起こると考えられる。ポリカチオン-DNA二元複合体の正電荷は、ポリエチレングリコール(PEG)またはトランスフェリンなどのタンパク質による処理で遮蔽することができる。あるいは、図7に示すように、ポリカチオンを使って三元複合体を形成させてもよい。しかし、実際には、そのような追加成分は、DNAの放出および送達を複雑にする傾向があることがわかっている。
【0008】
図8に示すようにポリアニオン、ポリカチオンおよびポリヌクレオチドを含む生分解性三元複合体が、いくつかの利益をもたらすことを、ここに見いだした。したがって、好ましい一実施形態は、細胞にポリヌクレオチドを送達するための複合体であって、ポリヌクレオチド、ポリカチオンおよび酸分解性ポリアニオンを含む複合体を提供する。
【0009】
もう一つの好ましい実施形態は、そのような複合体を製造する方法であって、酸分解性ポリアニオンを含む第1溶液を、ポリカチオンおよびポリヌクレオチドを含む第2溶液と混合することを含む方法を提供する。
【0010】
もう一つの好ましい実施形態は、そのような複合体を細胞内に送達する方法であって、複合体を細胞と接触させることを含む方法を提供する。
【0011】
これらの実施形態および他の実施形態を以下に詳述する。
【0012】
本発明のこれらの態様および他の態様は以下の説明および添付の図面から明白になるだろう。ただし、これらは本発明の例示であって、本発明を限定しようとするものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
好ましい一実施形態は、ポリアニオン、ポリカチオンおよびポリヌクレオチドを含む三元複合体であって、ポリアニオンおよびポリカチオンの少なくとも一方が生分解性(例えば酸分解性)である三元複合体に関する。好ましくは、図8に図解するように、ポリカチオンは生分解性であり、ポリアニオンは酸分解性である。好ましくは、ポリヌクレオチドはDNAまたはRNAである。好ましいポリヌクレオチドの例として、プラスミドDNA、アンチセンスDNA、DNAオリゴマー、siRNA、リボザイム、およびテトラマーなどが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0014】
ポリカチオンは、正に荷電している基または生理的条件下もしくは酸性条件下で正に荷電することができる基を数多く持つ高分子である。4級アミンはカチオン性基の一例であり、1級、2級および3級アミンは生理的条件下または酸性条件下で正に荷電することができる基の例である。ポリカチオンの例としてポリアミンおよびポリ(エチレンイミン)が挙げられる。ポリカチオンは、通例、ポリアニオン上の負荷電基、有機イオン、または無機イオン(例えばフッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硝酸イオン、もしくは硫酸イオン)などの対イオンを伴う。好ましい生分解性ポリカチオンは、1以上の分解性繰り返し単位を含み、その分解性繰り返し単位は、生理的条件下で分解を受け、好ましくは、その結果、ポリカチオン主鎖の切断を起こして、より低分子量の断片を生成する。好ましい分解性繰り返し単位の例として、エステル、アミド、リン酸ジエステル、アセタール、イミン、ヒドラゾン、エノール、エノールエーテル、エナミン、ケタール、およびオキシムが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。したがって好ましい生分解性ポリカチオンの例として、ポリエステル-ポリアミン、ポリリン酸ジエステル-ポリアミン、およびポリアセタール-ポリアミンが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。生分解性ポリカチオンは供給業者から購入するか、当業者に公知の方法で製造することができる。好ましいポリカチオンは、好ましくは、2002年10月11日に出願された米国特許出願第10/270,788号(米国特許出願公開第2003-0215395号(A1)として公開されている)および2002年5月14日に出願された米国仮特許出願第60/378,164号に記載されているように製造され、これらの文献はどちらも参照によりその全文が、特に分解性ポリカチオンの製造を説明する目的で、本明細書に組み込まれる。ポリカチオンの分子量は、好ましくは約500ダルトン〜約5,000,000ダルトンの範囲内、より好ましくは約2,000ダルトン〜約50,000ダルトンの範囲内にある。
【0015】
ポリアニオンは、負に荷電している基を数多く持つ高分子である。カルボン酸イオン基(CO2-)、スルホン酸イオン基(SO3-)、およびリン酸イオン基(PO3-)は、負に荷電している基の例であるが、これらに限定されるわけではない。ポリアニオンは、通例、ポリカチオン上のカチオン性基、アンモニウムイオン(NH4+)、または金属イオン(例えばLi+、Na+、K+、Rb+、Cs+、Be2+、Mg2+、もしくはCa2+)などの対イオンを伴う。好ましい生分解性ポリアニオンは1以上の分解性繰り返し単位を含み、その分解性繰り返し単位は生理的条件下で分解を受け、好ましくは、その結果、ポリカチオン主鎖の切断を起こして、より低分子量の断片を生成する。好ましい生分解性ポリアニオンは酸分解性である。好ましい分解性繰り返し単位の例として、エステル、アミド、リン酸ジエステル、アセタール、イミン、ヒドラゾン、エノール、エノールエーテル、エナミン、ケタール、およびオキシムが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。生分解性ポリアニオンは供給業者から購入するか、当業者に公知の方法で製造することができる。好ましいポリアニオンは、図3に図解するように、対応するポリアセタールエステルの加水分解によって製造されるポリアセタールである。ポリアセタールエステルは、好ましくは、2003年2月25日に出願された米国特許出願第10/375,705号(米国特許出願公開第2004-0166089号(A1)として公開されている)に記載されているように製造され、この文献は参照によりその全文が、特に分解性ポリアセタールの製造を説明する目的で、本明細書に組み込まれる。ポリアニオンの分子量は、好ましくは、約500〜約5,000,000の範囲内にある。
【0016】
特に好ましい実施形態では、生分解性ポリアニオンがターゲティングリガンド、好ましくはガラクトース、ラクトース、マンノース、ペプチド、抗体、抗体断片、およびトランスフェリンからなる群より選択されるターゲティングリガンドを含む。特に好ましいポリアニオンは、式(I):
【化1】

[式中、Yは-(CH22-、-(CH22-O-(CH22-、および-(CH22-O-(CH22-O-(CH22-からなる群より選択され、Wはガラクトース、ラクトース、マンノース、トランスフェリン、抗体、抗体断片、およびRGDペプチドからなる群より選択されるターゲティングリガンドであり、mおよびnはそれぞれ個別に1〜100,000の範囲内の整数であり、そしてZはLi、Na、K、Rb、Cs、Be、Mg、およびCaからなる群より選択される]
で表される繰り返し単位を含む。例えば、非常に好ましいポリアニオンは、式(II):
【化2】

[式中、Yは-(CH22-、-(CH22-O-(CH22-、および-(CH22-O-(CH22-O-(CH22-からなる群より選択され、mおよびnはそれぞれ個別に1〜100,000の範囲内の整数であり、そしてZはLi、Na、K、Rb、Cs、Be、Mg、およびCaからなる群より選択される]
によって表される繰り返し単位を含む。式(II)によって表される繰り返し単位を含むポリアニオンは、好ましくは、対応するポリアセタール前駆体を加水分解して加水分解型ポリアセタールを形成させ、ガラクトサミンをその加水分解型ポリアセタールとカップリングして当該ポリアニオンを形成させることによって製造される。カップリングは、好ましくは、1,3-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、および4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)からなる群より選択されるカップリング試薬を使って行なわれる。ポリアセタール前駆体は、好ましくは、2003年2月25日に出願された米国特許出願第10/375,705号に記載されているように製造され、この文献は上述のように参照により本明細書に組み込まれる。
【0017】
ポリアニオン、ポリカチオンおよびポリヌクレオチドを含む生分解性三元複合体は、様々な方法で製造することができる。好ましくは、ポリアニオン、ポリカチオンおよびポリヌクレオチドを溶解して溶液状態にし、それらを混合して三元複合体を形成させる。より好ましくは、ポリカチオンおよびポリヌクレオチドを溶液として混合し、好ましくは正に荷電した二元複合体を形成させ、次に、得られた溶液を好ましくはポリアニオンと混合して、三元複合体を形成させる。ポリカチオン対ポリヌクレオチドの比およびポリアニオン対ポリヌクレオチドの比は広範囲にわたって変動しうる。好ましくは、ポリカチオン対ポリヌクレオチドの比は約1:1〜約100:1の範囲内、より好ましくは約5:1〜50:1の範囲内にある。
【0018】
ポリアニオン対ポリヌクレオチドの比は、好ましくは、ポリカチオン対ポリヌクレオチド比を考慮し、ポリカチオンとポリヌクレオチドの間に形成される二元複合体中に存在する過剰のカチオン性を少なくとも部分的に中和するのに有効な量のポリアニオンを使用することによって選択される。例えば、ポリカチオンの量は、好ましくは、ポリヌクレオチドの量より重量ベースで過剰であり、したがってポリカチオン上のカチオン電荷の量は、ポリヌクレオチド上の負電荷の量より過剰であることが多い。したがって、そのような量のポリカチオンおよびポリヌクレオチドを使って形成された二元複合体はいずれも、通例、正味の正電荷を持つだろう。そのような量のポリカチオンおよびポリヌクレオチドと共に使用されるポリアニオンの量は、好ましくは、その正味の正電荷を少なくとも部分的に中和するのに有効である。より好ましくは、正味の正電荷を中和するのに有効な量をわずかに越える量で、ポリアニオンを使用する。望ましいヌクレオチド含量および電荷レベルを持つ三元複合体を得るために必要なポリカチオン、ポリアニオンおよびポリヌクレオチドの相対量は、諸成分の既知のまたは決定された電荷レベルに基づいて、前もって計算することができるので、ポリアニオンの添加に先だってポリカチオン-ポリヌクレオチド二元複合体を形成させておく必要がないことは、当業者には理解される。
【0019】
細胞の内部へのポリヌクレオチドのインビトロおよびインビボ送達(トランスフェクション)は、三元複合体を、トランスフェクトされるべき細胞と接触させることによって行なうことができる。好ましくは、細胞は哺乳類細胞である。インビトロでの三元複合体と細胞との接触は、例えば以下に記載する限定ではない実施例で説明するように、当業者に知られる様々な方法で行なうことができる。インビボでの三元複合体と細胞との接触は、好ましくは、複合体を動物(好ましくは哺乳動物)の体内に例えば全身投与または局所投与などで導入することによって行なわれる。好ましくは、投与は、特定ポリヌクレオチドによるトランスフェクションを必要とする細胞を持っている哺乳動物(例えばヒト)を同定した後、その哺乳動物に、当該ポリヌクレオチドを含む三元複合体を、その細胞に望ましい量のポリヌクレオチドを送達するのに有効な量で投与することによって行なわれる。そのような所望のポリヌクレオチドを送達するのに有効な三元複合体の量は、日常的なインビトロ実験によって、および/または当業者に知られる他の方法、例えば臨床試験などによって決定することができる。
【実施例】
【0020】
下記の実施例で使用する細胞株および培養物は以下のように調製した:肝細胞癌(HepaG2)細胞は、10%(v/v)熱非働化ウシ胎仔血清(FBS)、100U/mlペニシリンおよび100μg/mlストレプトマイシンを含有するダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)中で成長させ、7.5%CO2を含有する湿度100%の雰囲気下に、37℃でインキュベートした。プラスミドベクターpCMV-lucは、同じ哺乳類発現ベクター骨格を持つpCMV-0にホタルルシフェラーゼ遺伝子をクローニングすることによって構築した。そのプラスミドをDH5α大腸菌中で増幅させ、Qiagen Plasmid Max Preparation Kitにより、製造者の指示に従って精製した。精製プラスミドDNAの量および品質は、260nmおよび280nmでの分光測光分析ならびに0.8%アガロースゲルでの電気泳動によって評価した。精製プラスミドDNAを滅菌蒸留脱イオンH2Oに再懸濁し、凍結した。ポリアセタール1〜3および生分解性ポリカチオン12は、2002年10月11日に出願された米国特許出願第10/270,788号(米国特許出願公開第2003-0215395号(A1)として公開されている)、2002年5月14日に出願された米国仮特許出願第60/378,164号、および2003年2月25日に出願された米国特許出願第10/375,705号(米国特許出願公開第2004-0166089号(A1)として公開されている)に記載されている方法で合成した。ポリアセタールおよび生分解性ポリカチオンの合成に用いる化学薬品および試薬は全て、供給業者から購入した。ポリ(エチレンイミン)-600ダルトン(PEI-600)はPolysciences,Inc.から購入した。ポリマー分子量は、水性高速サイズ排除クロマトグラフィー(HPSEC)により、ポリエチレングリコール標準物質を使って測定した。二元複合体および三元複合体のサイズおよびゼータ電位は、ZetaPALS(ゼータ電位および粒径分析装置)により、製造者(Brookhaven Instruments Corporation)によって提供されるプロトコールに従って分析した。緩衝液およびPEI(分岐型、25kダルトン、Sigma-Aldrich)は市販品を購入した。
【0021】
(実施例1〜3)
ポリアセタール4〜6の合成(図3):実例としてアニオン性ポリアセタール5の合成を以下に説明する。水酸化リチウム一水和物(0.45g、10.7mmol)のメタノール/水(1:1)(20mL)溶液をポリアセタール2(2.57g、8.6mmol)に加えた。反応混合物を24時間撹拌し、回転蒸発法によって濃縮した。残渣をエタノール(50mL)に再溶解した。得られた溶液にアセトン(200mL)を加えて沈殿物を形成させた。その混合物を傾瀉し、残渣を高真空下に置いてポリアニオン5(1.7g)を得た。
【0022】
(実施例4〜6)
ポリアセタール7〜9の合成(図3):実例としてポリアセタール8の合成を以下に説明する。1,3-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC、0.082g、0.65mmol)のDMF(10mL)溶液をアニオン性ポリアセタール5(0.39g、1.3mmol)に加えた。DMF(15mL)中のN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS、0.075g、0.65mmol)を反応混合物に加えた。反応液を7時間撹拌した。沈殿物を単離し、新たなDMFで洗浄し、高真空下に置いて8(0.45g)を得た。
【0023】
(実施例7)
ポリアセタール10の合成:ガラクトサミン-HCl(0.11g、0.51mmol)および4-ジメチルアミノピリジン(DMAP、0.12g、0.98mmol)のジメチルスルホキシド(DMSO、2mL)溶液を、ポリアニオン8(0.20g)のPBS(8mL)溶液に加えた。反応混合物を15時間撹拌した。反応溶液にアセトン(200mL)を加え、撹拌した。1時間以内に沈殿物が生成した。沈殿物を蒸留水(2mL)に再溶解し、蒸留水(2000mL)中で5時間透析した。溶液を高真空下に置いて10を得た。
【0024】
(実施例8)
以下の実施例で使用するポリカチオン12は、図5に図解するとおり、2002年10月11日に出願された米国特許出願第10/270,788号(米国特許出願公開第2003-0215395号(A1)として公開されている)および2002年5月14日に出願された米国仮特許出願第60/378,164号に記載されているように製造した。
【0025】
(実施例9)
ポリアセタール5の三元複合体化によるDNA/ポリカチオン複合体の形成:プラスミドDNAおよび生分解性ポリカチオン12の試料をOptimem溶液(Life Technologies)に希釈し、それらを混合することにより、重量比で32:1〜8:1のポリカチオン対DNA比を持つ一連のポリカチオン/DNA二元複合体を形成させた。約15分後に、Optimem溶液に溶解したポリアニオン5を、そのポリカチオン/DNA複合体に加え、室温でさらに15分間インキュベートした。得られた三元複合体をアガロースゲルに加え、電気泳動を行なった。すなわち、5μlの色素液(loading dye)を各試料に加え、15μlの各試料を各ウェルに負荷した。1mM EDTAを含有する0.04M Tris-酢酸緩衝液(pH7.4)を使った0.3%アガロースゲルにおける100Vで30分間の電気泳動により、三元複合体を分析した。三元複合体をUV照射によって可視化した。ポリカチオン/ポリアニオン/DNA三元複合体に関する遅延度アッセイ結果を図1に示す。これらの結果は、三元複合体がうまく形成されたこと、およびポリアニオン5はDNAと競合せず、したがってDNAはそれぞれの比で三元複合体から放出されたことを示している。
【0026】
(実施例10)
ポリカチオン12およびアニオン性ポリアセタール10を含む三元複合体を使ったインビトロトランスフェクションを、以下のように行なった。HepaG2細胞を24穴組織培養プレートに播種し(HepaG2細胞について2×105細胞/ウェル)し、10%ウシ胎仔血清(FBS)を含むDMEM中で終夜インキュベートした。各ウェルについて、20μlのポリカチオン12溶液(それぞれ異なる用量の生分解性ポリカチオン12を含有するもの)を、0.6μgのプラスミドDNA(pCMV-GFPプラスミドDNAまたはpCMV-luc)を含有する20μlのDNA溶液中に、ボルテックスしながら滴下した。ボルテックスしながらの滴下は非常に好ましいことがわかった。なぜなら、トランスフェクションの結果は混合条件に依存することがわかったからである。DNAおよびポリカチオン12を含有する溶液を室温で15分間インキュベートして、DNA-ポリカチオン12二元複合体を形成させた。次に、アニオン性ポリアセタール10を含有する溶液20mlをDNA-ポリアニオン12二元複合体のそれぞれに加えて三元複合体(DNA、アニオン性ポリアセタール10、およびポリカチオン12を含有するもの)を形成させた。次に、これらの三元複合体の試料60mLを各ウェルに加え、細胞を24時間インキュベート(37℃、7.5%CO2)した。そのインキュベーション後に、ミバエルシフェラーゼ活性を、以下に説明するように検出した。
【0027】
ルシフェラーゼ活性は、化学発光アッセイを使用し、製造者の指示に従って測定した(Luciferase Assay System、Promega、米国ウィスコンシン州マディソン)。上述したトランスフェクションの約24時間後に、細胞をPBSで2回すすぎ、次に、溶解緩衝液(1%トリトンX-100、100mM K3PO4、2mMジチオスレイトール、10%グリセロール、および2mM EDTA、pH7.8)を使って室温で15分間溶解した。次に、ルミノメーター中、室温で、インジェクターにより、細胞溶解物10μlを、50μlのルシフェラーゼアッセイ試薬と混合した。発光を10秒間にわたって三重に測定し、RLU(相対発光量)として表した。BSAプロテインアッセイ(Pierce、イリノイ州ロックフォード)で決定した各試料のタンパク質含量に対して、相対発光量(RLU)を標準化した。全ての実験を三重に行なった。三元複合体(DNA、アニオン性ポリアセタール10、およびポリカチオン12を含有するもの)を使ったpCMV-lucによるHepaG2細胞のトランスフェクションについて得られた結果を、図2に示す。これらの結果は、ポリアセタール10を含有する三元複合体がトランスフェクション効率を増大させたことを示している。また、これらの結果から、これらの三元複合体がインビボポリヌクレオチド送達に有効であるだろうことも示された。
【0028】
(実施例11)
ポリアセタール13の合成(図9):1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物(5.0g、22.9mmol、Aldrich Chemical Company)を、3,9-ビス(3-アミノプロピル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(6.34g、22.9mmol、TCI Chemical Company)のジメチルアセトアミド(DMA、100mL)溶液に加えた。その混合物を室温で3日間撹拌した。反応を炭酸重炭酸ナトリウム(sodium bicarbonate carbonate)飽和水溶液(50mL)で停止した。沈殿物を濾過し、濾液をアセトン(1000mL)に注ぎ込んだところ、白色沈殿物が生成した。その沈殿物を蒸留水に再溶解し、セルロース膜(分子量カットオフ2,000)に入れて、蒸留水に対して、水を4回交換しながら15時間にわたって透析した。回転蒸発法で水を除去することにより、透明な固形ポリアセタール13(3.2g)を得た。ポリアセタール13の分子量は約45,000ダルトンだった(HPSEC、ポリエチレングリコール標準物質で測定)。ポリアセタール13の1Hおよび13C NMRスペクトルをとったところ、図9に示すポリアセタール13の化学構造と合致することがわかった。図9において、nおよびmはそれぞれ個別に約1〜約200の範囲内の整数である。ポリアセタール13の分子量の制御(したがってmおよびnの制御)は、二無水物モノマー対ジアミンモノマーのモル比を変化させることによって遂行しうる。
【0029】
(実施例12)
ポリカチオンPEI-DNA二元複合体および生分解性ポリカチオン12-DNA二元複合体のサイズおよびゼータ電位は以下のように決定した。
【0030】
サイズ測定:HEPES緩衝液中に様々な量のポリカチオンPEIまたは生分解性ポリカチオン12を含有する一連の溶液(50μL)を、HEPES緩衝液中にDNA(2μg)を含有する溶液(50μL)に、ピペッティングによって加え、ピペッティングによって撹拌した後、1分間平衡化させた。得られた二元複合体の粒径(nm)をZetaPALSで測定した。その結果を下記表1に要約する。
【0031】
ゼータ電位測定:選択した様々な量のPEIまたはポリカチオン12を、DNAの溶液に加えた。濃度はサイズ測定の場合と同様であるが、総液量は1.6mLにスケールアップした。得られた二元複合体のゼータ電位(mV)をZetaPALSで測定した。その結果を下記表1に要約する。
【0032】
【表1】

【0033】
(実施例13)
三元複合体のサイズおよびゼータ電位は以下のように決定した。
【0034】
サイズ測定:緩衝液中に様々な量のポリアセタール13を含有する一連の溶液(100μL)を、HEPES緩衝液中にPEIとDNA(それぞれ8μgおよび2μg)の二元複合体を含有する溶液(100mL)に、ピペッティングによって加え、ピペッティングによって撹拌した後、1分間平衡化させた。得られた三元複合体の粒径(nm)をZetaPALSで測定した。その結果を下記表2に要約する。
【0035】
ゼータ電位測定:緩衝液中に様々な量のポリアセタール13を含有する一連の溶液を、PEIとDNAの二元複合体の溶液に加えた。濃度はサイズ測定の場合と同様であるが、総液量は1.6mLにスケールアップした。得られた三元複合体のゼータ電位(mV)をZetaPALSで測定した。その結果を下記表2に要約する。
【0036】
【表2】

【0037】
(実施例14)
ポリアセタール13の安全性試験:15匹のヘアレスマウス(SKH1モデル、5〜6週齢、18〜20グラム)をCharles River Laboratoriesから購入し、動物施設で3日間飼育してから実験を行なった。15匹のマウスを3群(各群5匹)に分割した。ポリアセタール13試料は、ポリマーを3種類の濃度、すなわち(1)40mg/mL、(2)20mg/mL、および(3)10mg/mLで、PBS(pH7.4)に溶解することによって調製した。次に、各濃度の溶液100μLをマウスに注射(尾静脈)した(1匹につき1回の注射)。マウスを5時間観察した。結果を下記表3に示す。
【0038】
【表3】

【0039】
上述の方法および組成物には本発明の範囲から逸脱することなく様々な省略、追加および変更を加えることができることは、当業者には理解されるだろう。そのような変更および改変は全て、本願の請求項によって定義される本発明の範囲に包含されるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】酸分解性ポリアニオン(ポリアセタール5)、生分解性ポリカチオンおよびDNAから形成される複合体を使って行なった遅延度アッセイの結果を示す写真の模写図である。写真の上の数字はポリカチオン対DNAの比およびポリアニオン対DNA比(重量/重量)を示す。これらの結果は、対照C(ポリマーなし)および分子マーカーMと比較して、この特定条件セットでは、DNAが複合体から放出されなかったことを示している。これらの結果は、酸分解性ポリアニオン(ポリアセタール5)、生分解性ポリカチオンおよびDNAが三元複合体を形成したことを示している。
【図2】酸分解性ポリアニオン(ポリアセタール10)、生分解性ポリカチオン、およびDNAから形成される三元複合体を使ったHepaG2細胞のトランスフェクションに関して、アニオン性ポリマーを含まずに生分解性ポリカチオンおよびDNAから形成される二元複合体と比較した、タンパク質1ミリグラムあたりの相対発光量(RLU)を表す棒グラフである。これらの結果は、三元複合体を使ったトランスフェクションが二元複合体を使ったトランスフェクションより優れていたことを示している。これらの結果は、三元複合体がインビボポリヌクレオチド送達におそらく有効であることを示している。ラベリング:生分解性ポリカチオン:DNAの比(重量/重量)は、鉛直線のバーが32:1であり、水平線のバーが16:1であり、格子線のバーが8:1である。水平軸上の数字はポリアセタール10対DNAの比(重量/重量)である。
【図3】アニオン性ポリアセタール4〜9を製造するための好ましい反応スキームである。
【図4】アニオン性ポリアセタール10を製造するための好ましい反応スキームである。
【図5】生分解性ポリカチオン12を製造するための好ましい反応スキームである。
【図6】細胞内へのポリカチオン-DNA二元複合体の進入に関するエンドサイトーシス経路を表す模式図である。
【図7】ポリアニオン、ポリカチオンおよびポリヌクレオチドの三元複合体を表す模式図である。
【図8】ポリアニオン、ポリカチオンおよびポリヌクレオチドの生分解性三元複合体を表す模式図である。
【図9】実施例11に記載するアニオン性ポリアセタール13を製造するための好ましい反応スキームである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリヌクレオチドを細胞に送達するための複合体であって、
ポリヌクレオチド、
ポリカチオン、および
酸分解性ポリアニオン
を含む複合体。
【請求項2】
ポリヌクレオチドが、DNAおよびRNAからなる群より選択される、請求項1に記載の複合体。
【請求項3】
ポリヌクレオチドが、プラスミドDNA、アンチセンスDNA、DNAオリゴマー、siRNA、リボザイム、およびテトラマーからなる群より選択される、請求項1に記載の複合体。
【請求項4】
ポリカチオンが、高速サイズ排除クロマトグラフィーによる決定で、約2,000ダルトン〜約50,000ダルトンの範囲内の重量平均分子量を持つ、上記請求項のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項5】
ポリカチオンが、ポリアミン、ポリ(エチレンイミン)、ポリエステル-ポリアミン、ポリリン酸ジエステル-ポリアミン、およびポリアセタール-ポリアミンからなる群より選択される、上記請求項のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項6】
ポリカチオンが生分解性ポリカチオンである、上記請求項のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項7】
生分解性ポリカチオンが、ポリエステル-ポリアミン、ポリリン酸ジエステル-ポリアミン、およびポリアセタール-ポリアミンからなる群より選択される、請求項6に記載の複合体。
【請求項8】
酸分解性ポリアニオンが、アセタール、イミン、ヒドラゾン、エノール、エノールエーテル、エナミン、ケタール、およびオキシムからなる群より選択される酸分解性基を含む、上記請求項のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項9】
酸分解性ポリアニオンが、カルボン酸イオン基、スルホン酸イオン基、およびリン酸イオン基からなる群より選択されるアニオン性基を含む、上記請求項のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項10】
酸分解性ポリアニオンがターゲティングリガンドを含む、上記請求項のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項11】
ターゲティングリガンドが、ガラクトース、ラクトース、マンノース、ペプチド、抗体、抗体断片、およびトランスフェリンからなる群より選択される、請求項10に記載の複合体。
【請求項12】
酸分解性ポリアニオンが、式(I):
【化1】

[式中、Yは-(CH22-、-(CH22-O-(CH22-、および-(CH22-O-(CH22-O-(CH22-からなる群より選択され、
Wはガラクトース、ラクトース、マンノース、トランスフェリン、抗体、抗体断片、およびRGDペプチドからなる群より選択されるターゲティングリガンドであり、
mおよびnはそれぞれ個別に1〜100,000の範囲内の整数であり、そして
ZはLi、Na、K、Rb、Cs、Be、Mg、およびCaからなる群より選択される]
で表される繰り返し単位を含む、上記請求項のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項13】
上記請求項のいずれか一項に記載の複合体を製造する方法であって、
酸分解性ポリアニオンを含む第1溶液を、ポリカチオンおよびポリヌクレオチドを含む第2溶液と混合することを含む方法。
【請求項14】
細胞に複合体を送達する方法であって、請求項1〜12のいずれか一項に記載の複合体を細胞と接触させることを含む方法。
【請求項15】
細胞が哺乳類細胞である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
複合体と細胞との接触が、複合体を哺乳動物の体内に導入することによって行なわれる、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
哺乳動物の体内への複合体の導入が全身投与によって行なわれる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
哺乳動物の体内への複合体の導入が局所投与によって行なわれる、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
式(I):
【化2】

[式中、Yは-(CH22-、-(CH22-O-(CH22-、および-(CH22-O-(CH22-O-(CH22-からなる群より選択され、
Wはガラクトース、ラクトース、マンノース、トランスフェリン、抗体、抗体断片、およびRGDペプチドからなる群より選択されるターゲティングリガンドであり、
mおよびnはそれぞれ個別に1〜100,000の範囲内の整数であり、そして
ZはLi、Na、K、Rb、Cs、Be、Mg、およびCaからなる群より選択される]
で表される繰り返し単位を含むポリアニオン。
【請求項20】
式(II):
【化3】

[式中、Yは-(CH22-、-(CH22-O-(CH22-、および-(CH22-O-(CH22-O-(CH22-からなる群より選択され、
mおよびnはそれぞれ個別に1〜100,000の範囲内の整数であり、そして
ZはLi、Na、K、Rb、Cs、Be、Mg、およびCaからなる群より選択される]
によって表される繰り返し単位を含むポリアニオン。
【請求項21】
請求項20に記載のポリアニオンを製造する方法であって、
ポリアセタールを加水分解して加水分解型ポリアセタールを形成させること、そして
ガラクトサミンを加水分解型ポリアセタールとカップリングして請求項20に記載のポリアニオンを形成させること
を含む方法。
【請求項22】
カップリングが、DIC、NHS、およびDMAPからなる群より選択されるカップリング試薬を使って行なわれる、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
式(III):
【化4】

[式中、nおよびmはそれぞれ個別に約1〜約200の範囲内の整数である]
で表される繰り返し単位を含むポリアニオン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2007−511465(P2007−511465A)
【公表日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−528062(P2006−528062)
【出願日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【国際出願番号】PCT/US2004/030323
【国際公開番号】WO2005/032597
【国際公開日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】