説明

インピーダンス測定装置

【課題】製造コストを低減し得るインピーダンス測定装置を提供する。
【解決手段】電池12に交流電流Iを供給する交流電流供給部2と、交流電流供給部2とは互いに絶縁された異なる電源系統を有して、電池12の両極間に発生する信号S1を増幅する増幅部6と、交流電流Iに同期して交流電流供給部2のグランドを基準とする同期信号St1を出力する同期信号生成部(コンパレータ2d)と、増幅部6から出力された信号S2を同期信号Stで同期検波する同期検波部8と、同期信号St1の電圧をコンパレータ7の同相入力電圧範囲内に減衰させるアッテネータ3と、減衰された同期信号St2を増幅部6のグランドを基準とすると共に矩形波状に波形整形して同期信号Stを生成して同期検波部8に出力するコンパレータ7とを備え、同期検波部8から出力される信号S3と交流電流Iとに基づいて電池12の内部インピーダンスRを算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流起電力を有する電池の内部インピーダンスを測定するのに適したインピーダンス測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のインピーダンス測定装置として、発明者は、特開平11−295362号公報に開示されているインピーダンス測定装置を既に提案している。ところで、この種のインピーダンス測定装置では、交流電流供給部からプローブを介して電池に交流電流を供給し、このときに電池の両極間に発生する信号(電圧)と交流電流とに基づいて、電池の内部抵抗(内部インピーダンス)を測定している。この場合、プローブと電池の各電極との間には接触抵抗が常に存在する。したがって、この接触抵抗に交流電流が流れたときに発生する電圧が電池の両極間に発生する信号に対して同相ノイズとなり、この結果、電池の内部インピーダンスの測定を困難とすることがある。このため、上記公報に開示しているインピーダンス測定装置では、計装アンプ(高入力インピーダンスの差動増幅回路)を採用することにより、この同相ノイズを除去している。
【0003】
他方、計装アンプは高価であるため、発明者は、図2に示すような、安価なシングルエンド入力型(非差動入力型)の増幅器(演算増幅器)を用いたインピーダンス測定装置21も開発している。このインピーダンス測定装置21は、同図に示すように、交流電流供給部2、一対の入力端子4,5、フォトカプラ27、増幅部6、同期検波部8、演算制御部10および表示部11を備えると共に、交流電流供給部2の電源およびグランド(同図において黒く塗りつぶして表示されている)と、増幅部6および同期検波部8を含む他の電気回路(交流電流供給部2以外の他の電気回路)の電源およびグランド(同図において白抜きで表示されている)とが絶縁(分離)されて構成されている。つまり、交流電流供給部2と、増幅部6等を含む他の電気回路とは互いに絶縁された異なる電源系統を有している。このインピーダンス測定装置21では、交流電流供給部2の交流電流源2aが、一対の出力端子2b,2cを介して交流電流Iを電池12に供給すると共に交流電流Iに同期した矩形波状の同期信号St1をコンパレータ2dを介して出力する。この場合、電池12の両極間には、電池12の内部抵抗12aに交流電流Iが流れることに起因して発生する交流成分V2が電池12の直流起電力V1に重畳している信号S1が発生する。増幅部6では、シングルエンド入力型の演算増幅器6aが入力端子4を介して信号S1を入力し、抵抗6b,6cで規定されたゲインで増幅して、信号S2として出力する。一方、フォトカプラ27は、同期信号St1を、この同期信号St1とは電気的に絶縁された同期信号Stに変換して同期検波部8に伝達する。次いで、同期検波部8は、信号S2を同期信号Stで同期検波して信号S3を生成する。この後、演算制御部10が、この信号S3と交流電流Iとに基づいて、電池12の内部インピーダンスRを測定して表示部11に表示させる。
【0004】
このインピーダンス測定装置21によれば、交流電流供給部2の電源およびグランドと、増幅部6および同期検波部8を含む他の電気回路の電源およびグランドとを絶縁すると共に、フォトカプラ27を用いて同期信号St1と同期信号Stとを絶縁したことにより、交流電流供給部2のグランドと増幅部6のグランドとの間に電流が流れる事態を確実に防止することができる。このため、入力端子5と電池12の電極との間に接触抵抗Rcが存在していたとしても、この接触抵抗Rcに電流が流れないために同相ノイズの発生が回避される。なお、図2では、便宜上、入力端子5と増幅部6のグランドとの間に接触抵抗Rcを接続させている。以下、図1でも同様とする。したがって、このインピーダンス測定装置21によれば、安価なシングルエンド入力型の演算増幅器6aで増幅部6を構成することによって装置コストを低減しつつ、演算制御部10において電池12の内部インピーダンスRを正確に測定することができる。
【特許文献1】特開平11−295362号公報(第3頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、計装アンプほどではないにしても、フォトカプラも高価であるため、インピーダンス測定装置全体としても依然として高い製造コストを必要としている。このため、低コストのインピーダンス測定装置の開発が望まれている。
【0006】
本発明は、このような要求に応えるべくなされたものであり、インピーダンス測定装置の製造コストを低減することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成すべく請求項1記載のインピーダンス測定装置は、電池に交流電流を供給する交流電流供給部と、前記交流電流供給部とは互いに絶縁された異なる電源系統を有して、前記交流電流の供給時において前記電池の両極間に発生する信号を増幅して出力する増幅部と、前記交流電流に同期して前記交流電流供給部のグランドを基準とする第1同期信号を出力する同期信号生成部と、前記増幅部から出力された前記信号を前記第1同期信号に基づいて生成される第2同期信号で同期検波する同期検波部とを備え、前記同期検波部の出力信号と前記交流電流とに基づいて前記電池の内部インピーダンスを算出するインピーダンス測定装置であって、アッテネータとコンパレータとを備え、前記アッテネータは、前記同期信号生成部から出力された前記第1同期信号の電圧を前記コンパレータの同相入力電圧範囲内に減衰させ、前記コンパレータは、当該減衰された第1同期信号を前記増幅部のグランドを基準とすると共に矩形波状に波形整形して前記第2同期信号を生成して前記同期検波部に出力する。
【0008】
また、請求項2記載のインピーダンス測定装置は、請求項1記載のインピーダンス測定装置において、前記コンパレータは、ヒステリシス特性を備えている。
【0009】
また、請求項3記載のインピーダンス測定装置は、請求項1または2記載のインピーダンス測定装置において、前記交流電流供給部のグランドと前記アッテネータおよび前記増幅部のグランドとの電位差を検出すると共に当該電位差が所定電圧以上のときに警報信号を出力する警報部を備えている。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載のインピーダンス測定装置によれば、交流電流供給部と増幅器およびコンパレータとを互いに絶縁された異なる電源系統とし、増幅部を例えばシングルエンド入力型の演算制御部で構成し、かつアッテネータをコンパレータに直接接続すると共にコンパレータを同期検波部に接続することにより、計装アンプやフォトカプラなどの高価な部品を用いることなく構成することができるため、装置の製造コストを十分に低減することができる。また、例えば、交流電流供給部およびアッテネータのグランドと、増幅部およびコンパレータのグランドとの間の電位差が所定電圧未満のときにおいて、コンパレータに入力される第1同期信号の電圧値がアッテネータによって常にコンパレータの同相入力電圧範囲内になるように規定することにより、交流電流供給部から、アッテネータ、コンパレータの電源、電源とグランドとの間に接続されているいずれかの電気素子や電気回路、コンパレータのグランド、および電池の電極に接触させた入力端子を介して、交流電流供給部のグランドまでに至る経路に電流が流れる事態を防止することができる。したがって、電池の電極に接触させた入力端子とこの電極との間に存在する接触抵抗での電圧(同相ノイズ)の発生を防止できるため、電池の内部インピーダンスを正確に測定することができる。
【0011】
請求項2記載のインピーダンス測定装置によれば、ヒステリシス特性を備えてコンパレータを構成したことにより、交流電流供給部のグランドとコンパレータのグランドとの間の電位差が変動するなどして、交流電流供給部から出力される第1同期信号に歪みが生じたとしても、コンパレータがこの第1同期信号を良好に波形整形してノイズの少ない第2同期信号を出力することができる。したがって、同期検波部がこの第2同期信号に基づいて同期検波動作を正常に続行できるため、正常な信号を安定して検出できる。したがって、演算部が、同期検波部の出力信号と交流電流供給部が電池に供給している交流電流とに基づいて、電池の内部インピーダンスを正確に、しかも安定して測定することができる。
【0012】
請求項3記載のインピーダンス測定装置によれば、交流電流供給部のグランドと、増幅部およびコンパレータのグランドとの間の電位差が所定電圧以上になったときに、例えば、警報部から出力される警報信号に基づいて、その旨を表示部に表示させて報知することができる。したがって、上記の各グランド間の電位差が所定電圧以上になり、アッテネータから出力される第2同期信号の電圧値がコンパレータの同相入力電圧範囲を超えることにより、コンパレータが波形整形動作を正常に続行し得なくなる事態が発生したり、各グランド間の電位差がさらに大きくなることにより、交流電流供給部から、アッテネータ、コンパレータの電源、電源とグランドとの間に接続されているいずれかの電気素子や電気回路、コンパレータのグランド、および電池の電極に接触させた入力端子を介して、交流電流供給部のグランドまでに至る経路に電流が流れる事態が発生したりして、その結果として、同期検波部が同期検波によって電池の内部抵抗に発生する電圧の実効値を正確に示す信号を生成し得ない状態になったときでも、測定した内部インピーダンスが正確なものでない可能性があることを確実に報知することができ、この結果、誤測定を回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明に係るインピーダンス測定装置の最良の形態について説明する。
【0014】
最初に、インピーダンス測定装置1の構成について説明する。
【0015】
インピーダンス測定装置1は、図1に示すように、交流電流供給部2、アッテネータ3、一対の入力端子4,5、増幅部6、コンパレータ7、同期検波部8、警報部9、演算制御部10および表示部11を備えて構成されている。この場合、交流電流供給部2およびアッテネータ3の電源およびグランド(同図において黒く塗りつぶして表示されている)は、交流電流供給部2およびアッテネータ3以外の他の電気回路(増幅部6およびコンパレータ7など)の電源およびグランド(同図において白抜きで表示されている)から絶縁されている。つまり、交流電流供給部2およびアッテネータ3と、それ以外の他の電気回路とは、互いに絶縁された異なる電源系統を有している。
【0016】
交流電流供給部2は、本発明おける交流電流供給部および同期信号生成部に相当し、図1に示すように、交流電流源2a、一対の出力端子2b,2cおよびコンパレータ2dを備えて構成されて、交流電流源2aで生成した交流電流Iを一対の出力端子2b,2cを介して電池12に供給する。この場合、出力端子2cは、交流電流供給部2のグランドに接続されている。また、交流電流供給部2は、交流電流Iに同期した同期信号St0を生成すると共に、この同期信号St0をコンパレータ2dで矩形波状の同期信号St1(本発明における第1同期信号)に波形整形して出力する。アッテネータ3は、同期信号St1を分圧して同期信号St2として出力する。本例では、アッテネータ3は、一例として、コンパレータ2dの出力端子とグランドとの間に、直列接続された2つの抵抗3a,3bで構成されている。また、アッテネータ3の減衰量(抵抗3a,3bの各抵抗値で規定される減衰量)は、コンパレータ7のグランドと、アッテネータ3(交流電流供給部2)のグランドとの間の電位差が所定電圧未満のときには、同期信号St2の電圧値が常にコンパレータ7の同相入力電圧範囲内になるように規定されている。ここで、同相入力電圧範囲とは、コンパレータ7が正常動作する入力電圧の許容範囲(同期信号St2の電圧範囲)を意味する。
【0017】
増幅部6は、図1に示すように、演算増幅器6aおよび抵抗6b,6cを備え、シングルエンド入力型の非反転増幅回路として構成されている。この場合、演算増幅器6aの非反転入力端子に入力端子4が接続され、増幅部6のグランドに入力端子5が接続されている。この構成により、増幅部6は、入力端子4を介して入力した電池12の両極間に発生する信号S1を増幅して信号S2(本発明における増幅部から出力された信号)として出力する。
【0018】
コンパレータ7は、図1に示すように、コンパレータ本体7a、およびコンパレータ本体7aのヒステリシス特性を規定する抵抗7b,7c(抵抗値:R1,R2)を備えて構成されている。コンパレータ7は、アッテネータ3から出力された同期信号St2を矩形波状(上限および下限電圧:+Vc,−Vc)に波形整形して増幅部6のグランドを基準とする同期信号St(本発明における第2同期信号)として出力する。したがって、コンパレータ7は、同期信号St2が上限コンパレート電圧(+(Vc×R2)/(R1+R2))を上回ったときに出力電圧が−Vcになり、同期信号St2が下限コンパレート電圧(−(Vc×R2)/(R1+R2))を下回ったときに出力電圧が+Vcになるヒステリシス特性を備えている。本例のインピーダンス測定装置1では、アッテネータ3のグランドと、コンパレータ7の電源およびグランドとは、上記したように絶縁されている。このため、コンパレータ7のグランドを基準としたときに、アッテネータ3(交流電流供給部2)のグランドの電位が変動し、この電位の変動に起因して、アッテネータ3から出力される同期信号St2の電圧波形に歪みが生じることがある。しかしながら、コンパレータ7は、同期信号St2が歪んだ状態であっても同相入力電圧範囲内にある限り、上記した上限および下限コンパレート電圧で規定されるヒステリシス特性に基づいて同期信号St2の波形を、歪みのない矩形波の同期信号Stに波形整形して出力する。
【0019】
同期検波部8は、図1に示すように、同期信号St2に基づいて生成された同期信号Stで信号S2を同期検波することにより、交流電流Iが電池12を流れているときに、電池12の内部抵抗12aに発生する電圧の実効値を示す信号S3(本発明における同期検波の出力信号)を生成して出力する。警報部9は、同図に示すように、2つのコンパレータ9a,9b、出力電圧V3の2つの基準電源9c,9d、2つのダイオード9e,9fおよび終端抵抗9gを備えて構成されている。この構成により、警報部9は、交流電流供給部2のグランドと、増幅部6(警報部9でもある)のグランドとの間の電位差が所定電圧以上のとき(−V3以上+V3以下の範囲を外れたとき)に警報信号S4を演算制御部10に出力する。演算制御部10は、本発明における演算部に相当し、A/D変換器、CPUおよびメモリなど(いずれも図示せず)を備えて構成されている。メモリには、交流電流供給部2が供給する交流電流Iの電流値(実効値)が予め記憶されている。演算制御部10は、同期検波部8から出力される信号S3の電圧値と交流電流Iの電流値とに基づいて、電池12の内部抵抗12aの抵抗値(電池12の内部インピーダンス)Rを算出するインピーダンス算出処理を実行する。また、演算制御部10は、警報信号S4を入力したときには、警報処理を実行する。表示部11は、例えば、液晶ディスプレイなどで構成されている。
【0020】
次に、インピーダンス測定装置1による電池12の内部インピーダンスRの測定動作について説明する。
【0021】
まず、図1に示すように、電池12の正極に出力端子2bを接続すると共に、電池12の負極に出力端子2cを接続し、その状態において交流電流供給部2に対して交流電流Iの供給を開始させる。次いで、入力端子4を電池12の正極に接続し、入力端子5を電池12の負極に接続する。この際に、増幅部6には、電池12の内部抵抗12aに交流電流Iが流れることに起因して発生する交流成分V2が電池12の直流起電力V1に重畳している信号S1が入力端子4を介して入力される。増幅部6は、信号S1を所定の増幅率で増幅して、同期検波部8に信号S2として出力する。
【0022】
一方、交流電流供給部2は、交流電流Iの供給を開始した際に、交流電流Iに同期する同期信号St1もコンパレータ2dを介してアッテネータ3に出力する。次いで、アッテネータ3は、同期信号St1を分圧して、同期信号St2として出力する。続いて、コンパレータ7は、同期信号St2を矩形波状に波形整形して、同期信号Stとして同期検波部8に出力する。この場合、アッテネータ3は、コンパレータ7のグランドと交流電流供給部2のグランドとの間の電位差が所定電圧未満のときには、同期信号St2の電圧値がコンパレータ7の同相入力電圧範囲内になるように、同期信号St2を減衰させる。このため、この状態においては、同相入力電圧範囲を超える同期信号St2がコンパレータ7に入力される事態が確実に回避される。したがって、コンパレータ2dから、アッテネータ3、コンパレータ7の電源、電源とグランドとの間に接続されているいずれかの電気素子や電気回路、コンパレータ7のグランド、および入力端子5介して、交流電流供給部2のグランドまでに至る経路に電流が流れる事態が防止される結果、入力端子5と電池12の電極との間に存在する接触抵抗Rcでの電圧(同相ノイズ)の発生が防止される。また、コンパレータ7は、上記のヒステリシス特性を備えているため、交流電流供給部2のグランドとコンパレータ7のグランドとの間の電位差が変動するなどして、同期信号St2にノイズ信号(同相電圧)が重畳したときでも、同期信号St2を良好に波形整形して同期信号Stを出力する。
【0023】
次いで、同期検波部8は、同期信号Stで信号S2を同期検波することにより、電池12の内部抵抗12aに発生する電圧の実効値を示す信号S3を生成して出力する。演算制御部10は、同期検波部8から出力される信号S3に基づいて、インピーダンス算出処理を実行して、電池12の内部抵抗12aの内部インピーダンスRを算出する。具体的には、演算制御部10は、メモリから読み出した交流電流Iの電流値で、信号S3で示される電圧の実効値を除算することにより、電池12の内部インピーダンスR(内部抵抗12aの抵抗値)を算出する。また、演算制御部10は、算出した内部インピーダンスRを表示部11に表示させる。
【0024】
一方、警報部9は、交流電流供給部2のグランドと、増幅部6(警報部9でもある)のグランドとの間の電位差を常時監視して、この電位差が所定電圧以上のとき(−V3以上+V3以下の範囲を外れたとき)に警報信号S4を出力する。演算制御部10は、警報信号S4の入力を常時監視して、警報信号S4を入力していないときには、上記したように、算出した内部インピーダンスRを表示部11に表示させる。他方、演算制御部10は、警報信号S4を入力したときには、警報処理を実行する。この処理では、演算制御部10は、交流電流供給部2のグランドと、増幅部6(警報部9でもある)のグランドとの間の電位差が所定電圧以上になったため、同期検波部8が同期信号Stで信号S2を正常に同期検波できないと判別して、その旨(例えば「測定不能」の文字)を表示部11に表示させる。この結果、誤測定を回避することができる。
【0025】
このように、このインピーダンス測定装置1によれば、交流電流供給部2と増幅器6およびコンパレータ7とを互いに絶縁された異なる電源系統とし、増幅部6をシングルエンド入力型の演算制御部として構成し、かつアッテネータ3をコンパレータ7に直接接続すると共にコンパレータ7を同期検波部8に接続することにより、計装アンプやフォトカプラなどの高価な部品を使用しないため、装置の製造コストを十分に低減することができる。また、交流電流供給部2およびアッテネータ3のグランドと、増幅部6およびコンパレータ7のグランドとの間の電位差が所定電圧未満のときにおいて、コンパレータ7に入力される同期信号St2の電圧値がアッテネータ3によって常にコンパレータ7の同相入力電圧範囲内になるように規定したことにより、コンパレータ7での波形整形動作を正常に続行させつつ、コンパレータ2dから、アッテネータ3、コンパレータ7の電源、電源とグランドとの間に接続されているいずれかの電気素子や電気回路、コンパレータ7のグランド、および入力端子5介して、交流電流供給部2のグランドまでに至る経路に電流が流れる事態を防止することができる。したがって、このインピーダンス測定装置1によれば、入力端子5と電池12の電極との間に存在する接触抵抗Rcでの電圧(同相ノイズ)の発生を防止できるため、電池12の内部インピーダンスRを正確に測定することができる。
【0026】
また、このインピーダンス測定装置1によれば、ヒステリシス特性を備えてコンパレータ7を構成したことにより、交流電流供給部2のグランドとコンパレータ7のグランドとの間の電位差が変動するなどして、同期信号St2に歪みが生じたとしても、同期信号St2を良好に波形整形してノイズの少ない同期信号Stを出力することができる。したがって、同期検波部8が正常な信号S3を安定して検出できるため、電池12の内部インピーダンスRを正確に、しかも安定して測定することができる。
【0027】
さらに、このインピーダンス測定装置1によれば、警報部9を備えたことにより、交流電流供給部2のグランドと、増幅部6およびコンパレータ7のグランドとの間の電位差が所定電圧以上になったときに、例えば、警報部9から出力される警報信号S4に基づいて演算制御部10がその旨を表示部11に表示させて報知することができる。したがって、上記の各グランド間の電位差が所定電圧以上になり、アッテネータ3から出力される同期信号St2の電圧値がコンパレータ7の同相入力電圧範囲を超えることにより、コンパレータ7が波形整形動作を正常に続行し得なくなる事態が発生したり、各グランド間の電位差がさらに大きくなることにより、コンパレータ2dから、アッテネータ3、コンパレータ7の電源、電源とグランドとの間に接続されているいずれかの電気素子や電気回路、コンパレータ7のグランド、および入力端子5介して、交流電流供給部2のグランドまでに至る経路に電流が流れる事態が発生したりして、その結果として、同期検波部8が同期検波によって電池12の内部抵抗12aに発生する電圧の実効値を正確に示す信号S3を生成し得ない状態になったときでも、演算制御部10で測定した内部インピーダンスR(表示部11に表示されている内部インピーダンス)が正確なものでない可能性があることを確実に報知することができ、この結果、誤測定を回避することができる。
【0028】
なお、本発明は、上記の構成に限定されない。例えば、このインピーダンス測定装置1では、ヒステリシス特性を備えてコンパレータ7が構成されているが、同期信号St2へのノイズの重畳が少ないときには、ヒステリシス特性を備えない構成を採用することもできる。また、交流電流供給部2のグランドと、増幅部6およびコンパレータ7のグランドとの間の電位差を低いレベルに抑制でき、これによって同期検波部8が常に正常に同期検波できるときには、警報部9の配設を不要にすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】インピーダンス測定装置1の構成を示すブロック図である。
【図2】インピーダンス測定装置21の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0030】
1 インピーダンス測定装置
2 交流電流供給部
3 アッテネータ
4,5 入力端子
6 増幅部
7 コンパレータ
8 同期検波部
9 警報部
10 演算制御部
12 電池
I 交流電流
R 内部インピーダンス
St1 同期信号
S1,S2,S3 信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池に交流電流を供給する交流電流供給部と、
前記交流電流供給部とは互いに絶縁された異なる電源系統を有して、前記交流電流の供給時において前記電池の両極間に発生する信号を増幅して出力する増幅部と、
前記交流電流に同期して前記交流電流供給部のグランドを基準とする第1同期信号を出力する同期信号生成部と、
前記増幅部から出力された前記信号を前記第1同期信号に基づいて生成される第2同期信号で同期検波する同期検波部とを備え、
前記同期検波部の出力信号と前記交流電流とに基づいて前記電池の内部インピーダンスを算出するインピーダンス測定装置であって、
アッテネータとコンパレータとを備え、前記アッテネータは、前記同期信号生成部から出力された前記第1同期信号の電圧を前記コンパレータの同相入力電圧範囲内に減衰させ、前記コンパレータは、当該減衰された第1同期信号を前記増幅部のグランドを基準とすると共に矩形波状に波形整形して前記第2同期信号を生成して前記同期検波部に出力するインピーダンス測定装置。
【請求項2】
前記コンパレータは、ヒステリシス特性を備えている請求項1記載のインピーダンス測定装置。
【請求項3】
前記交流電流供給部のグランドと前記アッテネータおよび前記増幅部のグランドとの電位差を検出すると共に当該電位差が所定電圧以上のときに警報信号を出力する警報部を備えている請求項1または2記載のインピーダンス測定装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−132806(P2007−132806A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−326233(P2005−326233)
【出願日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【出願人】(000227180)日置電機株式会社 (982)
【Fターム(参考)】