説明

インフレーター

【課題】作動当初のマスフローレートを抑制でき、かつ、所定値以上のマスフローレートを長く維持可能なインフレーターを提供すること。
【解決手段】インフレーター10は、エアバッグ1に供給する膨張用の加圧ガスGを内蔵させ、作動時に、吐出口22を閉塞していた破裂板23を破って、吐出口22から加圧ガスGを吐出させる。吐出口22の部位には、吐出口22から吐出される加圧ガスGの流量を調整可能な流量調整機構33が、配設される。流量調整機構33は、移動側の先端を破裂板23に当てて、破裂板23を破り可能なニードル42と、ニードル42によって開口された吐出口22を開閉可能に閉塞し、かつ、吐出口22の開口面積より小さい開口面積として、吐出口22の閉塞時に、加圧ガスGをエアバッグ1側へ供給可能な流出口44を備えた弁体43と、ニードル42と弁体43とを移動させる駆動機構34と、を備えて構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等に搭載されるエアバッグ装置に使用されるインフレーターに関し、詳しくは、エアバッグ装置のエアバッグを膨張させる膨張用の加圧ガス(コールドガス)を内部に貯留して、作動時に、その加圧ガスを吐出するストアードタイプのインフレーターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のストアードタイプのインフレーターとしては、エアバッグに供給する膨張用の加圧ガスを内蔵させ、作動時に、吐出口を閉塞していた破裂板を破って、吐出口から加圧ガスを吐出させていた(例えば、特許文献1参照)。このインフレーターでは、通電時に少量の燃焼ガスを発生させるイニシエータ(スクイブあるいはイグナイタ)を、破裂板の近傍に配設させ、作動時、イニシエータを着火させ、発生させた燃料ガスの圧力によって破裂板を破裂させることにより、吐出口を開口させて、加圧ガスを吐出させていた。
【0003】
また、ストアードタイプではないものの、加圧ガスと燃焼ガスとを併用してエアバッグを膨らませるハイブリッドタイプのインフレーターもあった(例えば、特許文献2,3参照)
【特許文献1】特開2002−120687号公報
【特許文献2】特表2004−503423号公報
【特許文献3】特開2002−120687号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のストアードタイプのインフレーターでは、破裂板を破裂させて吐出口を開口させた当初に、内部に加圧された状態で貯留されていた加圧ガスが、マスフローレートを高くした状態で急激に吐出され、その後、インフレーター内の加圧ガスの流出により、マスフローレートを急激に低下させる状態で、吐出されていた。
【0005】
そのため、インフレーターからの加圧ガスを供給されて膨らむエアバッグは、急激に内圧を上昇させて膨張を完了させ、その後、インフレーターから供給される加圧ガスのマスフローレートの低下に伴って、内圧を急激に低下させていた。すなわち、従来のストアードタイプのインフレーターでは、作動直後のエアバッグの内圧抑制のためのマスフローレートの抑制と、エアバッグの所定値以上の内圧を維持する時間を長くするためのマスフローレートの低下抑制と、に課題があった。
【0006】
また、特許文献2,3に記載のハイブリッドタイプのインフレーターは、吐出口の開口面積を大きくしたりあるいは小さくできる状態で、エアバッグへの膨張用のガスのマスフローレートを調整していた。しかし、これらのインフレーターでは、燃焼ガスを利用し、かつ、吐出口を開口させるための破裂板の破裂を、イニシエータを利用しているため、インフレーターの作動当初のマスフローレートは、吐出口の開口面積を小さく制御していても、急激に高くなることが避けられず、作動当初のマスフローレートを抑制する点に、改善の余地があった。
【0007】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、作動当初のマスフローレートを抑制でき、かつ、所定値以上のマスフローレートを長く維持可能なインフレーターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るインフレーターは、エアバッグに供給する膨張用の加圧ガスを内蔵させ、作動時に、吐出口を閉塞していた破裂板を破って、吐出口から加圧ガスを吐出させるインフレーターであって、
吐出口の部位に、吐出口から吐出される加圧ガスの流量を調整可能な流量調整機構が、配設され、
流量調整機構が、
移動側の先端を破裂板に当てて、破裂板を破り可能なニードルと、
ニードルによって開口された吐出口を開閉可能に閉塞し、かつ、吐出口の開口面積より小さい開口面積として、吐出口の閉塞時に、加圧ガスをエアバッグ側へ供給可能な流出口を備えた弁体と、
ニードルと弁体とを移動させる駆動機構と、
を備えて構成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明に係るインフレーターでは、作動時、駆動機構がニードルと弁体とを移動させることから、ニードルが破裂板に当たって破裂板を破り、と同時に、弁体が吐出口を閉塞する。そのため、弁体の流出口を経て、加圧ガスがエアバッグ側に流出する。その際、流出口は、破裂板が破れて開口する吐出口の開口面積より、小さい開口面積としているため、吐出口の全開開口時より少ないマスフローレートとして、加圧ガスがインフレーターから流出する。その後、マスフローレートが低下し始めてきたタイミングに応じて、駆動機構が、弁体を移動させて、吐出口を開口させれば、流出口より開口面積の広い吐出口が開口することから、内蔵された加圧ガスが吐出し易くなり、マスフローレートの低下を抑制して、加圧ガスがインフレーターから吐出されることとなる。
【0010】
したがって、本発明に係るインフレーターでは、作動当初のマスフローレートを抑制でき、かつ、所定値以上のマスフローレートを長く維持することができる。そして、本発明に係るインフレーターによって膨張するエアバッグは、インフレーターの作動当初の急激な内圧上昇を抑制できて、破損を防止できるとともに、膨張途中で運転者や乗員等の拘束予定者を拘束することとなっても、拘束予定者に与える反力を抑えてクッション性よく拘束できる。また、本発明に係るインフレーターによって膨張するエアバッグは、膨張完了後の内圧低下を抑制できて、拘束予定者が遅れて進入してきても、所定の内圧を確保して、クッション性よく拘束できることとなる。
【0011】
そして、ニードルと弁体とは、一体的に形成して、吐出口の開口面に直交する方向に沿って移動可能に、駆動機構に保持させることが望ましい。このような構成では、駆動機構が、ニードルと弁体とを一体とした一部品を駆動するだけでよく、簡便に構成できる。
【0012】
この場合、吐出口を設けて加圧ガスを内蔵させたタンク室を備えてインフレーターが構成されていれば、流量調整機構は、タンク室の内側に配設するよりも、タンク室の外側に配設することが望ましい。すなわち、流量調整機構がタンク室の外側に配設されていれば、流量調整機構における駆動機構の駆動信号を入力する信号線等の配設を、タンク室の内外に貫通させることなく、タンク室の外側だけで容易に行える。
【0013】
また、駆動機構は、電磁ソレノイドから構成すれば、マイクロガスジェネレータ等の火薬を使用する場合に比べ、管理を含めて、簡便に構成することができる。なお、電磁ソレノイドを駆動機構に利用する場合には、マイクロガスジェネレータに比べて、ニードルや弁体を迅速に駆動させる点で劣るものの、車両の実際の衝突の前段階における車両の衝突を回避できないと判断した時点から、すなわち、衝突予知時(衝突予測時)から作動させるように、構成すれば、実際の衝突時からエアバッグを膨らませる従来のエアバッグ装置に比べて、エアバッグを緩やかに膨張させることができて、膨張途中のエアバッグに拘束予定者が当たっても、エアバッグにより、その拘束予定者を反力を抑えて好適に受け止めることができる。
【0014】
そして、吐出口を設けて加圧ガスを内蔵させたタンク室を備えてインフレーターを構成する場合、タンク室内には、タンク室内の圧力を上昇させて破裂板を破り可能なイニシエータを、配設させておいてもよい。このような構成では、インフレーターの通常の作動を、既述したように、車両の実際の衝突の前段階における車両の衝突を回避できないと判断した衝突予知時から作動させるように、構成していた場合に、好適に使用できる。なぜなら、車両の衝突を予知することなしに、突然に、実際の車両の衝突がある場合、イニシエータを作動させて、インフレーターの作動当初から、開口を全開させた吐出口から、加圧ガスを吐出させることができて、迅速にエアバッグを膨張させることができ、膨張を完了させたエアバッグにより、拘束予定者を好適に受け止めることができるからである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明すると、第1実施形態のインフレーター10は、図1〜3に示すように、円柱状の本体11の周囲を、略円筒状のアウタケース31が覆って構成されている。アウタケース31における本体11の吐出口22から離れた端部側には、図示しないクランプを利用して、エアバッグ1の筒状のガス流入口部2が接続されている。なお、このエアバッグ1は、実施形態の場合、車両の窓を覆う頭部保護エアバッグ装置に使用されるものである。
【0016】
アウタケース31は、金属パイプから形成されて、本体11における吐出口22側の端部のフランジ部29と他端側のフランジ部16との外周面相互に、塑性変形させるようにかしめて結合されて、吐出口22から吐出された加圧ガスGを、開口27、本体11の周壁部13とアウタケース31の内周面との間の円筒状のスペースS、及び、連通孔17を経て、エアバッグ1に流入させるように、配設されている。
【0017】
本体11は、窒素ガス等の不活性ガスからなる加圧ガス(コールドガス)Gを内蔵させたタンク室12と、タンク室12の外側における吐出口22の近傍に配設された流量調整機構33と、を備えて構成されている。タンク室12は、金属パイプからなる円筒状の周壁部13と、周壁部13における吐出口22から離れたエアバッグ1側となる一方の端部を塞ぐ底壁部14と、周壁部13における吐出口22側の端部を塞ぐように配設される吐出側壁部20と、を備えて構成されている。底壁部14と吐出側壁部20とは、金属製のブロックからプレス加工や切削加工等を利用して形成され、周壁部13に対して溶接されて結合されている。
【0018】
吐出側壁部20は、円形に開口する吐出口22を中央に備えた円板状の閉塞壁部21を備えるとともに、閉塞壁部21の外周縁から、タンク室12外のエアバッグ1から離れるように延びる円筒状の連通壁部26を備え、さらに、連通壁部26の先端から本体11の軸直交方向に鍔状に延びるフランジ部29を備えて構成されている。閉塞壁部21と連通壁部26とに囲まれる部位は、流量調整機構33を収納する収容部25を構成している。そして、タンク室12の内側における閉塞壁部21の吐出口22の周縁には、破裂板23が固着されて、吐出口22を閉塞している。この破裂板23は、ニードル42がタンク室12内に進入するように移動してきた際とイニシエータ18の作動時における燃焼ガスの発生によるタンク室12内の内圧上昇時には、破れるように構成され、それ以外には、タンク室12内に貯留させた加圧ガスGを吐出させないように、吐出口22を閉塞している。また、円筒状の連通壁部26には、内外に貫通する複数の開口27が形成されている。
【0019】
底壁部14は、タンク室12の内部側に、イニシエータ18を配設させる収納部15が配設され、また、本体11の軸直交方向に延びる鍔状のフランジ部16を突設させている。フランジ部16には、本体11の軸方向に沿って貫通する複数の連通孔17が開口されている。イニシエータ18は、通電時に少量の燃焼ガスを発生させて、タンク室12内の内圧を上昇させることにより、破裂板23を破裂させるように配設されている。
【0020】
流量調整機構33は、吐出口22から吐出される加圧ガスGの流量を調整するものであり、ニードル42と弁体43とを一体化させた作動片41と、作動片41を駆動させる駆動機構34と、を備えて構成されている。駆動機構34は、コイル36、固定鉄心37、及び、可動鉄心38を備えて、コイル36への通電時に、可動鉄心38をエアバッグ1側に位置した固定鉄心37に吸着させるように移動させる電磁ソレノイド35から構成されている。なお、符号39の部材は、電磁ソレノイド35への通電停止時に、ニードル42や弁体43とともに、可動鉄心38を作動前の位置に復帰させるためのばねである。
【0021】
作動片41は、可動鉄心38に保持されており、吐出口22の開口面に直交する方向に沿って移動することとなる。この作動片41は、円板状の弁体43と、弁体43の中央から棒状に吐出口22側へ突出するニードル42と、を備えて構成されている。円板状の弁体43は、吐出口22の内径寸法より大きな外径寸法として、電磁ソレノイド35の作動時、閉塞壁部21のタンク室12の外側における吐出口22の周縁に当接して、吐出口22を閉塞可能とし、さらに、吐出口22の閉塞時に、タンク室12内の加圧ガスGを収容部25内に流入させる複数の流出口44を備えて構成されている。そして、複数の流出口44の合計の開口面積は、吐出口22の開口面積より小さくしている。ニードル42は、電磁ソレノイド35の作動時、破裂板23に当たり、さらに、破裂板23を破ってタンク室12内に進入するように配設されている。
【0022】
このインフレーター10は、図示しない制御装置がその作動を制御することとなり、その制御は、車両の側面衝突が回避できないと予知された際に、駆動機構34の電磁ソレノイド35に通電され、その後、200〜300ms後のマスフローレートの低下が急激となる際に、通電が停止されるように、制御される。すなわち、図示しない制御装置は、車両の衝突が回避できないと予知された際に、所定の衝突予知センサの信号を入力させて、電磁ソレノイド35を作動させ、所定時間経過後に、電磁ソレノイド35への通電を解除する。なお、電磁ソレノイド35の通電後の通電停止時までの時間は、インフレーター10の作動後におけるマスフローレートの低下が急激となるタイミングをタンク試験等で測定し、そのタイミングに応じて設定する。
【0023】
また、図示しない制御装置は、車両の実際の衝突を検知可能な衝突検知センサの信号も入力させるように構成されており、制御装置が、衝突予知センサの信号を入力させずに、衝突検知センサからの信号に基いて、突然に車両の実際の衝突を検知した際には、電磁ソレノイド35に通電することなく、イニシエータ18を作動させるように通電する。
【0024】
そして、この第1実施形態のインフレーター10では、通常作動時、図3のA,Bに示すように、駆動機構34の電磁ソレノイド35が、可動鉄心38を移動させて、ニードル42と弁体43とを一体化させた作動片41を移動させる。すると、ニードル42が破裂板23に当たって破裂板23を破り、と同時に、弁体43が吐出口22を閉塞する。そのため、加圧ガスGが、弁体43の流出口44を経て収容部25内に流入し、収容部25から開口27を経て本体11とアウタケース31との間のスペースSに流入し(図2参照)、さらに、連通孔17を経て、エアバッグ1側に流出する。その際、流出口44は、破裂板23が破れて開口する吐出口22の開口面積より、小さい開口面積としているため、吐出口22の全開開口時より少ないマスフローレートとして、加圧ガスGがインフレーター10からエアバッグ1側へ流出する(図4の実線参照)。その後、マスフローレートが低下し始めてきたタイミングに応じて、駆動機構34の電磁ソレノイド35への通電を停止させれば、図3のB,Cに示すように、弁体43が吐出口22から離れて吐出口22を開口させて、流出口44より開口面積の広い吐出口22が開口することから、内蔵された加圧ガスGが吐出し易くなり、マスフローレートの低下を抑制して、加圧ガスGがインフレーター10から吐出されることとなる。
【0025】
したがって、第1実施形態のインフレーター10では、作動当初のマスフローレートを抑制でき、かつ、所定値以上のマスフローレートを長く維持することができる。そして、第1実施形態のインフレーター10によって膨張するエアバッグ1は、インフレーター10の作動当初の急激な内圧上昇を抑制できて、破損を防止できるとともに、膨張途中で運転者や乗員等の拘束予定者を拘束することとなっても、拘束予定者に与える反力を抑えてクッション性よく拘束できる。また、第1実施形態のインフレーター10によって膨張するエアバッグ1は、膨張完了後の内圧低下を抑制できて、車両がロールオーバするように転回して拘束予定者が遅れてエアバッグ1に進入してきても、所定の内圧を確保して、クッション性よく拘束できることとなる。
【0026】
なお、図4に示す二点鎖線は、従来のストアードタイプのインフレーターのマススローレートを示すグラフ図であり、さらに、そのインフレーターの作動タイミングは、車両の衝突検知時に作動させている。このグラフ図から解かるように、第1実施形態のインフレーター10では、作動当初のマスフローレートを抑制できて、かつ、作動後のマスフローレートを平均化することができ、車両の衝突予知時から作動させて、エアバッグ1を急激な内圧の上昇を抑えて膨張させ、かつ、エアバッグ1の所定以上の内圧値を維持できる時間を長くしたいエアバッグ装置に、好適に使用できる。
【0027】
そして、実施形態の場合、ニードル42と弁体43とが、一体的に形成された作動片41から構成されて、吐出口22の開口面に直交する方向に沿って移動可能に、駆動機構34を構成する電磁ソレノイド35の可動鉄心38に保持されている。そのため、このような構成では、駆動機構34が、ニードル42と弁体43とを一体とした一部品の作動片41を駆動するだけでよく、簡便に構成できる。
【0028】
さらに、第1実施形態では、吐出口22を設けて加圧ガスGを内蔵させたタンク室12を備えてインフレーター10が構成されて、流量調整機構33が、タンク室12の外側に配設されている。そのため、流量調整機構33をタンク室12の内側に配設する場合に比べて、流量調整機構33における駆動機構34の駆動信号を入力する信号線等の配設を、タンク室12の内外に貫通させることなく、タンク室12の外側だけで容易に行える。勿論、この点を考慮しなければ、流量調整機構33は、タンク室12の内側に配設してもよい。
【0029】
さらにまた、第1実施形態では、駆動機構34を電磁ソレノイド35から構成しており、マイクロガスジェネレータ等の火薬を使用する場合に比べ、管理を含めて、簡便に構成することができる。なお、電磁ソレノイド35を駆動機構34に利用する場合には、マイクロガスジェネレータに比べて、ニードル42や弁体43を迅速に駆動させる点で劣るものの、実施形態のように、車両の実際の衝突の前段階における車両の衝突を回避できないと判断した時点から、すなわち、衝突予知時から作動させるように、構成すれば、実際の衝突時からエアバッグを膨らませる従来のエアバッグ装置に比べて、エアバッグ1を緩やかに膨張させることができて、膨張途中のエアバッグ1に拘束予定者が当たっても、エアバッグ1により、その拘束予定者を反力を抑えて好適に受け止めることができる。
【0030】
そしてさらに、第1実施形態のインフレーター10では、吐出口22を設けて加圧ガスGを内蔵させたタンク室12を備えて構成され、タンク室12内に、タンク室12内の圧力を上昇させて破裂板23を破り可能なイニシエータ18が配設されている。そのため、インフレーター10の通常の作動を、既述したように、車両の実際の衝突の前段階における車両の衝突を回避できないと判断した衝突予知時から作動させるように、構成していた場合に、好適に使用できる。なぜなら、車両の衝突を予知することなしに、実際の車両の衝突がある場合、図5に示すように、イニシエータ18を作動させれば、破裂板23を破裂させて吐出口22を開口させることができる。そのため、インフレーター10の作動当初から、開口を全開させた吐出口22から加圧ガスGを吐出させることができて、迅速にエアバッグ1を膨張させることができ、膨張を完了させたエアバッグ1により、拘束予定者を好適に受け止めることができるからである。
【0031】
なお、図6に示す第2実施形態のインフレーター10Aのように、イニシエータを設けずに構成してもよい。このように構成する場合には、制御装置からの作動信号を入力する信号線を、タンク室12外の流量調整機構33に結線させるだけで済み、車両搭載時等の信号線の取り回しが容易となり、また、インフレーター10Aの搭載スペースを小さくすることが可能となる。ちなみに、このように、円柱状の本体11の周囲を覆って、本体11の両端に配置させた底壁部14と吐出側壁部20とのフランジ部16,29に、円筒状のアウタケース31を結合させて、信号線の配置エリアを、エアバッグ1への膨張用のガスの供給側と反対側にする構成として、インフレーターの信号線の取り回しの容易化と搭載スペースの低減化を図れる構成とする場合には、図7に示すように、破裂板23をイニシエータ18Aで破裂させる従来タイプのストアードタイプのインフレーター9にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の第1実施形態のインフレーターを示す概略縦断面図である。
【図2】第1実施形態のインフレーターの概略拡大部分縦断面図である。
【図3】第1実施形態のインフレーターの通常作動時を順に説明する概略部分断面図である。
【図4】第1実施形態のインフレーターの通常作動時におけるマスフローレートを示すグラフ図である。
【図5】第1実施形態のインフレーターにおけるイニシエータの作動時を示す概略部分縦断面図である。
【図6】第2実施形態のインフレーターを示す概略拡大部分縦断面図である。
【図7】第2実施形態の変形例を示す概略拡大部分縦断面図である。
【符号の説明】
【0033】
1…エアバッグ、
10,10A…インフレーター、
12…タンク室、
22…吐出口、
23…破裂板、
33…流量調整機構、
34…駆動機構、
35…電磁ソレノイド、
42…ニードル、
43…弁体、
44…流出口、
G…加圧ガス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアバッグに供給する膨張用の加圧ガスを内蔵させ、作動時に、吐出口を閉塞していた破裂板を破って、前記吐出口から前記加圧ガスを吐出させるインフレーターであって、
前記吐出口の部位に、前記吐出口から吐出される前記加圧ガスの流量を調整可能な流量調整機構が、配設され、
前記流量調整機構が、
移動側の先端を前記破裂板に当てて、前記破裂板を破り可能なニードルと、
前記ニードルによって開口された前記吐出口を開閉可能に閉塞し、かつ、前記吐出口の開口面積より小さい開口面積として、前記吐出口の閉塞時に、前記加圧ガスを前記エアバッグ側へ供給可能な流出口を備えた弁体と、
前記ニードルと前記弁体とを移動させる駆動機構と、
を備えて構成されていることを特徴とするインフレーター。
【請求項2】
前記ニードルと前記弁体とが、一体的に形成されて、前記吐出口の開口面に直交する方向に沿って移動可能に、前記駆動機構に保持されていることを特徴とする請求項1に記載のインフレーター。
【請求項3】
前記吐出口を設けて前記加圧ガスを内蔵させたタンク室を備えて構成され、
前記流量調整機構が、前記タンク室の外側に配設されていることを特徴とする請求項2に記載のインフレーター。
【請求項4】
前記駆動機構が、電磁ソレノイドから構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のインフレーター。
【請求項5】
前記吐出口を設けて前記加圧ガスを内蔵させたタンク室を備えて構成され、
該タンク室内に、前記タンク室内の圧力を上昇させて前記破裂板を破り可能なイニシエータが、配設されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のインフレーター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−213527(P2008−213527A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−49817(P2007−49817)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】