説明

インフレーター

【課題】破裂板を破る作動装置を備えていても、外形形状をコンパクトに構成することができ、軽量化を図ることが可能なシリンダタイプのインフレーターの提供。
【解決手段】本発明のインフレーター10は、加圧ガスG0を内蔵させたタンク部11の端側壁部13に、破裂板15により閉塞される流出口14を備え、作動装置18の作動時、破裂板15を破って流出口14を開口させる構成である。インフレーター10は、作動装置18側に連通され、流出口14から流出される加圧ガスG0をエアバッグ1側へ吐出可能な吐出口26aを有した排出部20を、備える。排出部20が、作動装置18を収納させた収納室21と、収納室21から延びる供給路部22と、から、構成される。供給路部22が、タンク部11内を挿通され、タンク部11の他端側に配設される端側壁部から突出した先端側に、吐出口26aを配設させている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されるエアバッグ装置に使用されるインフレーターに関するものであり、具体的には、タンク部に設けられた流出口を閉塞している破裂板を、作動装置を作動させて破ることにより、タンク内に内蔵される加圧ガスを吐出させる構成のインフレーターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上記構成のインフレーターでは、作動装置の作動時に破裂板を破って開口された流出口から流出された加圧ガスは、作動装置側に連通される排出部を経て、排出部の先端側に設けられる吐出口から、エアバッグ側へ吐出される構成であった(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−25951公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
通常、作動装置の作動時に破裂板を破って流出口を開口させる構成のインフレーターでは、作動装置が破裂板の近傍となる位置に配置されることから、作動装置は、吐出口の近傍に配設されることとなる。しかし、作動装置には、作動信号入力用のリード線を結線させたコネクタが、接続されることとなることから、従来のインフレーターでは、吐出口を作動装置から離れた位置に配置させるように、排出部を構成する供給路部を、インフレーターの一端側に配置された作動装置側から、一旦、インフレーターの軸直交方向に向かって突出させ、先端側をインフレーターの軸方向に沿わせるように、屈曲させて、さらに、その先端側に、吐出口を配設させた構成としていた。また、従来のインフレーターでは、この排出部を構成する供給路部をタンク部の外部に配置させていることから、供給路部を、作動装置側に強固に連結させる必要があった。そのため、従来のインフレーターでは、外形形状をコンパクトにする点や、インフレーター自体を軽量化する点に、改善の余地があった。
【0004】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、破裂板を破る作動装置を備えていても、外形形状をコンパクトに構成することができ、かつ、軽量化を図ることが可能なシリンダタイプのインフレーターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るインフレーターは、シリンダタイプとされて、
略円筒状の周壁部と、周壁部の両端側を閉塞する端側壁部と、から構成されるとともに、エアバッグの膨張用に供給する加圧ガスを内蔵させて構成され、一端側の端側壁部に、破裂板により閉塞される流出口を備える構成のタンク部と、
タンク部の一端側における破裂板と対向する位置に配置されて、作動時に、破裂板を破って流出口を開口可能に構成される作動装置と、
作動装置側に連通されるとともに、先端側に、開口時の流出口から流出される加圧ガスをエアバッグ側へ吐出可能な吐出口を、配設させた構成の排出部と、
を備える構成のインフレーターであって、
排出部が、流出口と連通されて流出口を設けた一端側の端側壁部を覆うように構成されるとともに作動装置を収納させた収納室と、収納室から延びるように構成される供給路部と、から、構成され、
供給路部が、両端側を端側壁部に支持されるようにして、タンク部内を挿通されるとともに、タンク部の他端側に配設される端側壁部から突出した先端側に、吐出口を配設させる構成とされていることを特徴とする。
【0006】
本発明のインフレーターでは、排出部を構成する供給路部が、タンク部内を挿通される構成であり、供給路部におけるタンク部の他端側に配設される端側壁部から突出した先端側に、開口時の流出口から流出される加圧ガスをエアバッグ側に吐出する吐出口が、配設される構成である。すなわち、本発明のインフレーターでは、排出部を構成する供給路部が、タンク部の外周側に露出せず、タンク部の内周側に配設されていることから、インフレーターの外形形状をコンパクトにすることができる。また、本発明のインフレーターでは、供給路部が、タンク部を構成する端側壁部に、両端側を支持されていることから、排出部を構成する供給路部を保持するための補強部材が不要となって、インフレーターの重量が増大することも抑えることができる。
【0007】
したがって、本発明のインフレーターでは、破裂板を破る作動装置を備えていても、外形形状をコンパクトに構成することができ、かつ、軽量化を図ることができる。
【0008】
勿論、本発明のインフレーターでは、加圧ガスを吐出される吐出口が、作動装置を配設させた収納室と逆方向のタンク部の他端側に配設されるため、車両への組付作業時等において、作動装置の作動用のリード線を容易に作動装置に結線させることができ、車両への組付作業性も良好である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明すると、実施形態のインフレーター10は、図1〜3に示すように、シリンダタイプとされるもので、先端側となる後述する吐出口26a側に、エアバッグ1内に膨張用ガスを流出可能なディフューザー30を連結させて使用されるものである。実施形態の場合、図1,2に示すように、エアバッグ1における筒状のガス流入口部2を、図示しないクランプを利用して、ディフューザー30と接続させることにより、インフレーター10がエアバッグ1に連結される構成である。なお、実施形態の場合、エアバッグ1は、図示しないが、車両の窓を覆う頭部保護エアバッグ装置に使用されるものである。
【0010】
インフレーター10は、実施形態の場合、エアバッグ1の膨張用に供給する加圧ガスG0を内蔵させたタンク部11と、タンク部11の一端側となる元部11a側に配置される作動装置としてのスクイブ18と、スクイブ18側に連通されるとともにエアバッグ1側へ加圧ガスG0を吐出可能な吐出口26aを備えた排出部20と、から構成されている。実施形態の場合、インフレーター10は、スクイブ18の作動時に、後述する破裂板15を破って、後述する流出口14から、タンク部11内に内蔵された加圧ガスG0を流出させるストアードガスタイプとされている。
【0011】
タンク部11は、金属パイプから形成される略円筒形状の周壁部12と、周壁部12の元部12a側を閉塞する板金製の端側壁部13と、から構成されている。周壁部12は、実施形態の場合、元部12a側を大径とし、先端12b側にかけて小径とするように縮径させた構成とされている。なお、実施形態の場合、周壁部12の先端12b側は、排出部20を構成する後述する口金部24により閉塞されるもので、口金部24における元部側(タンク部11側)の部位25aが、周壁部12の先端12b側を閉塞する端側壁部を構成している。タンク部11は、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス、または、それらの混合ガス等の不活性ガスからなる加圧ガスG0を内蔵させて構成される。端側壁部13は、周壁部12に対して、溶接されて結合されるもので、タンク部11の中心軸C(図2参照)から外周側へずれた位置(図例では中心軸Cから上方へずれた位置)に、流出口14を備える構成とされている。そして、タンク部11の内側における流出口14の周縁には、破裂板15が固着されて、流出口14を閉塞している。この破裂板15は、作動装置としてのスクイブ18の作動時に発生する燃焼ガスの圧力や衝撃波を受けて破れるように構成され、それ以外には、タンク部11内に貯留させた加圧ガスG0を流出させないように、流出口14を閉塞している。また、端側壁部13において、タンク部11の中心軸Cから外周側へずれた位置であって、流出口14と略対称となる位置(図例では中心軸Cから下方へずれた位置)には、排出部20を構成する後述する供給路部22におけるパイプ部23の元部23a側を挿通可能な挿通孔16が、形成されている。
【0012】
作動装置としてのスクイブ18は、排出部20を構成する後述する収納室21内において、タンク部11の外部における破裂板15と対向する位置に接近して配置されている。スクイブ18は、先端側を収納室21内に挿入させて、元部側を収納室21外へ露出させるように、収納室21内に収納されるもので、元部側を、作動信号入力用の図示しないリード線に結線させる構成である。実施形態の場合、スクイブ18は、内部に少量の燃焼ガスを発生可能な薬剤を収納させた構成とされるもので、インフレーター10をエアバッグ装置として車両に搭載させた際に、このリード線を介して、車両の制御装置に電気的に接続され、制御装置からの作動信号を受けて、薬剤を燃焼させるように作動し、発生した燃焼ガスの圧力により、破裂板15を破る構成とされている。なお、スクイブとしては、これに限られるものではなく、作動時に衝撃波を発生させ、衝撃波により破裂板を破る構成のものを使用してもよい。
【0013】
排出部20は、スクイブ18を収納させる収納室21と、収納室21から延びるように構成される供給路部22と、から構成されている。
【0014】
収納室21は、図1,2に示すように、流出口14と連通可能に、端側壁部13全体を覆うように構成される有底の略円筒状とされるもので、破裂板15により閉塞された流出口14と対向した位置に、スクイブ18を配置させるように、スクイブ18を収納可能な構成とされている。また、実施形態の場合、収納室21は、供給路部22の元部側に対向した部位を、凹ませるように、構成されている。
【0015】
供給路部22は、タンク部11内において、端側壁部13から延びるように配設されるパイプ部23と、パイプ部23の先端23b側に配置される口金部24の内周側の貫通孔25cの周縁と、から、構成されている。口金部24は、既述したように、周壁部12の先端12b側を閉塞するように配設されるもので、パイプ部23は、端側壁部13と口金部24における後述する固定側部25とを連結するように、配置されている。パイプ部23は、金属パイプから形成されるもので、図1〜3に示すように、タンク部11の周壁部12に沿って傾斜するように部分的に屈曲された状態で、タンク部11内を挿通されて、元部23a側を、端側壁部13の挿通孔16周縁に固定され、先端23b側を、口金部24における固定側部25の貫通孔25c周縁に固定されている。そして、パイプ部23の元部23a側は収納室21に連通され、パイプ部23の先端23b側は貫通孔25cを介して口金部24における後述するガス吐出口部26の吐出口26aに連通されている。
【0016】
口金部24は、鋼等の金属材料から形成されるもので、タンク部11の先端11b側において、周壁部12の先端12b側を閉塞するように配設されている。実施形態の場合、口金部24は、元部側に配置されて外径寸法を周壁部12における先端12b側の外径寸法と略同一に設定される固定側部25と、先端側に配置されて固定側部25より小径とされるガス吐出口部26と、から、構成されている。固定側部25は、元部側の周縁を溶接されて周壁部12に固定されるもので、外周側に、軸回り方向に沿った全域にわたって凹溝部25bを配設させた構成とされている。実施形態では、この凹溝部25bに、ディフューザー30の元部側をかしめることにより、ディフューザー30がインフレーター10に連結される構成である。ガス吐出口部26は、先端側を閉塞された略円筒状とされるもので、外周面の軸回り方向に沿った全域にわたって、吐出口26aを多数配設させた構成とされている。また、口金部24における固定側部25には、吐出口26aに連通されるように、ガス吐出口部26と連通される貫通孔25cが、インフレーター10の軸方向に沿って貫通するように、配設されている。そして、具体的には、口金部24におけるこの貫通孔25cとガス吐出口部26とが、供給路部22の先端22a側の部位を構成することとなる。また、口金部24における固定側部25の元部側の部位25aは、タンク部11における周壁部12の先端12b側を閉塞する端側壁部を構成している。
【0017】
実施形態のインフレーター10では、エアバッグ装置として車両に搭載した状態において、作動装置としてのスクイブ18に、図示しないリード線を介して作動信号が入力されると、スクイブ18から燃焼ガスが発生して、破裂板15を破り、流出口14が開口されることとなる。そして、タンク部11内に貯留されている加圧ガスG0が、開口された流出口14から、排出部20における収納室21を介して、供給路部22のパイプ部23内に流入し、供給路部22の先端22a側となる口金部24に形成された吐出口26aから、膨張用ガスG1として、吐出されることとなる。そして、吐出口26aから吐出された膨張用ガスG1は、ディフューザー30を経て、エアバッグ1内に流入し、エアバッグ1を膨張させることとなる。
【0018】
そして、実施形態のインフレーター10では、排出部20を構成する供給路部22のパイプ部23が、タンク部11内を挿通される構成であり、供給路部22におけるタンク部11の他端側に配設される端側壁部から突出した先端22a側、実施形態の場合、具体的には、口金部24におけるガス吐出口部26に、開口時の流出口14から流出される加圧ガスG0をエアバッグ1内に吐出する吐出口26aが、配設される構成である。すなわち、実施形態のインフレーター10では、排出部20を構成する供給路部22が、図1〜3に示すように、タンク部11の外周側に露出せず、タンク部11の内周側に配設されていることから、インフレーター10の外形形状をコンパクトにすることができる。特に、実施形態のインフレーター10では、インフレーター10の軸方向に沿った両端側の離れた位置に、作動装置としてのスクイブ18と、吐出口26aと、が、配置されていることから、インフレーター10を、部分的に軸直交方向側に突出することを抑えて、略円柱状とできて、車両搭載時の収納性も良好である。また、実施形態のインフレーター10では、供給路部22を構成するパイプ部23が、元部23a側を、タンク部11を構成する端側壁部13に支持され、先端23b側を、端側壁部を構成する口金部24における固定側部25の元部側の部位25aに支持されていることから、排出部を構成する供給路部を保持するための補強部材が不要となって、インフレーターの重量が増大することも抑えることができる。
【0019】
したがって、実施形態のインフレーター10では、破裂板15を破る作動装置としてのスクイブ18を備えていても、外形形状をコンパクトに構成することができ、かつ、軽量化を図ることができる。
【0020】
勿論、実施形態のインフレーター10では、車両搭載時にはエアバッグ1に覆われることとなる加圧ガスG0を吐出される吐出口26aが、スクイブ18を配設させた収納室21と逆方向のタンク部11の他端側に配設されるため、車両への組付作業時等において、スクイブ18の作動用の図示しないリード線を容易にスクイブ18に結線させることができ、車両への組付作業性も良好である。
【0021】
なお、実施形態のインフレーター10では、供給路部22の先端22a側を、パイプ部23と別体の口金部24における固定側部25の貫通孔25cとガス吐出口部26とから構成しているが、インフレーターとして、口金部を設けずに、タンク部を閉塞する端側壁部を別途配設させ、供給路部をパイプ部のみから構成して、パイプ部の先端を端側壁部から突出させつつタンク本体外に延ばすようにして、パイプ部の先端側に吐出口を設ける構成のものを使用してもよい。また、実施形態では、作動装置として、燃焼ガスを発生可能なスクイブを利用しているが、作動装置としてはこれに限られるものではなく、例えば、作動装置として、破裂板を突き破り可能なニードルを駆動機構に連結させた構成のものを使用してもよい。
【0022】
また、実施形態のインフレーター10では、供給路部22を構成するパイプ部23が、タンク部11を構成する周壁部12の傾斜に沿って傾斜させるように部分的に屈曲されて、タンク部11内を挿通されている構成であるが、パイプ部を、屈曲させずに、ストレート状としてタンク部11内を挿通させる構成としてもよい。
【0023】
さらに、実施形態では、インフレーターとして、ストアードガスタイプのものを例に採り説明しているが、本発明を適用可能なインフレーターは、ストアードガスタイプに限られるものではない。本発明を、作動装置として、スクイブの作動時に多量の燃焼ガスを発生可能なものを使用して、燃焼ガスと加圧ガスとを吐出させるハイブリッドタイプのインフレーターに適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態であるインフレーターの概略縦断面図である。
【図2】実施形態のインフレーターの概略部分拡大縦断面図である。
【図3】実施形態のインフレーターの軸直交方向の縦断面図であり、図2のIII−III部位に対応する。
【符号の説明】
【0025】
10…インフレーター、
11…タンク部、
12…周壁部、
13…端側壁部、
14…流出口、
15…破裂板、
18…スクイブ(作動装置)、
20…排出部、
21…収納室、
22…供給路部、
22a…先端、
23…パイプ部、
24…口金部、
25…固定側部、
25a…元部側部位(端側壁部)、
25b…貫通孔(供給路部)、
26…ガス吐出口部(供給路部)、
26a…吐出口、
G0…加圧ガス。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダタイプとされて、
略円筒状の周壁部と、該周壁部の両端側を閉塞する端側壁部と、から構成されるとともに、エアバッグの膨張用に供給する加圧ガスを内蔵させて構成され、一端側の前記端側壁部に、破裂板により閉塞される流出口を備える構成のタンク部と、
該タンク部の一端側における前記破裂板と対向する位置に配置されて、作動時に、前記破裂板を破って前記流出口を開口可能に構成される作動装置と、
前記作動装置側に連通されるとともに、先端側に、開口時の前記流出口から流出される前記加圧ガスを前記エアバッグ側へ吐出可能な吐出口を、配設させた構成の排出部と、
を備える構成のインフレーターであって、
前記排出部が、前記流出口と連通されて前記流出口を設けた一端側の前記端側壁部を覆うように構成されるとともに前記作動装置を収納させた収納室と、該収納室から延びるように構成される供給路部と、から、構成され、
前記供給路部が、両端側を前記端側壁部に支持されるようにして、前記タンク部内を挿通されるとともに、前記タンク部の他端側に配設される前記端側壁部から突出した先端側に、前記吐出口を配設させる構成とされていることを特徴とするインフレーター。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−254502(P2008−254502A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−96798(P2007−96798)
【出願日】平成19年4月2日(2007.4.2)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】