説明

インプリントシステム及び物品の製造方法

【課題】パーティクル等の異物の影響を低減したインプリント処理に有用な技術を提供する。
【解決手段】インプリント装置を含むインプリントシステムは、前記インプリント装置を格納する空間をインプリント処理がなされる第1空間と該第1空間を取り囲む第2空間とに分割する第1隔壁と、前記インプリント装置を格納する前記空間と当該空間を取り囲む第3空間とを仕切る第2隔壁と、前記第1空間及び前記第2空間に浄化された空気をそれぞれ供給する第1給気部及び第2給気部と、前記第1空間及び前記第2空間から空気をそれぞれ排出する第1排気部及び第2排気部と、前記第1空間内の異物の濃度を検出する検出器と、制御器とを備える。前記制御器は、前記検出器により検出された前記濃度が基準値を超える場合に前記第2空間を通過する空気の量に対する前記第1空間を通過する空気の量の比を増大させるように、前記第1給気部、前記第2給気部、前記第1排気部及び前記第2排気部を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インプリントシステム及び物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インプリント技術は、磁気記憶媒体や半導体デバイスの量産向けナノリソグラフィ技術の一つとして実用化されつつある。インプリント技術は、微細パターンが形成された型を原版として、シリコンウェハやガラスプレート等の基板上に塗布した樹脂に型を押し付けて樹脂にパターンを転写することで微細パターンを形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4185941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のインプリント装置では、パーティクルを含む清浄度の高くない空気が、装置の外部から装置の内部に侵入する問題があった。インプリント装置にパーティクルが侵入すると、パーティクルを減少させるまで10時間以上かかる場合があり、パーティクルが減少するまで長時間にわたって生産に入れない。また、パーティクルが残ったままインプリントを行うと、基板もしくはモールドにパーティクルが付着し、転写不良を起こすことがある。さらに、パーティクルが付着することにより、原版となるモールドを破損させる恐れがある。
【0005】
本発明は、パーティクル等の異物の影響を低減したインプリント処理に有用な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、基板に塗布された樹脂と型のパターン面とを接触させた状態で該樹脂を硬化させてパターンを形成するインプリント処理を前記基板に行うインプリント装置を含むインプリントシステムであって、前記インプリント装置を格納する空間をインプリント処理がなされる第1空間と該第1空間を取り囲む第2空間とに分割する第1隔壁と、前記インプリント装置を格納する前記空間と当該空間を取り囲む第3空間とを仕切る第2隔壁と、前記第1空間及び前記第2空間に浄化された空気をそれぞれ供給する第1給気部及び第2給気部と、前記第1空間及び前記第2空間から空気をそれぞれ排出する第1排気部及び第2排気部と、前記第1空間内の異物の濃度を検出する検出器と、制御器と、を備え、前記制御器は、前記検出器により検出された前記濃度が基準値を超える場合に前記第2空間を通過する空気の量に対する前記第1空間を通過する空気の量の比を増大させるように、前記第1給気部、前記第2給気部、前記第1排気部及び前記第2排気部を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、パーティクル等の異物の影響を低減したインプリント処理に有用な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係るインプリントシステムを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明に係るインプリントシステムを、図1を用いて詳細に説明する。インプリントシステムは、インプリント装置20と、インプリント装置を格納する空間に浄化された空気を供給し、当該空間から空気を排出する空気の給排機構を格納する機械室101とを含んでいる。インプリント装置20は、パターン面を有する型(モールド)6を保持する型保持部(モールドチャック)7を備えている。モールドチャック7は、構造体8に取り付けられ、不図示の駆動機構と制御機構によって基板3とモールド6が近づいたり離れたりする方向に駆動される。基板3に塗布された樹脂を硬化させるために、紫外光源(不図示)と照明光学系(不図示)を備えている。基板ステージ4は、基板3を保持してステージ定盤5上を駆動する。塗布器10は、基板3に樹脂を塗布する。塗布器10は、樹脂を吐出するノズルを持ち、基板ステージ4を駆動して基板3をノズルの下に移動させて塗布器10により樹脂を塗布する。樹脂が塗布された基板3の所望の部分をモールド6の下へ移動させるために、基板ステージ4を駆動する。このとき、測長機器(レーザー干渉計またはエンコーダー)9を用いて基板ステージ4の水平方向の位置を計測し、不図示の制御機構とアライメント機構によって数ナノメートル以下の精度でモールド6と基板ステージ4との位置合わせ制御を行う。
【0010】
モールドチャック7を駆動させて、基板3上の樹脂にモールド6のパターン面を接触させた状態で紫外線を照射して樹脂を硬化させる。なお、紫外線で樹脂を硬化させるかわりに、モールドチャック7に設置されたヒーターなどの熱源で樹脂を熱硬化させてもよい。これら一連のインプリント処理により、基板3の樹脂にモールド6のパターンを転写する。
【0011】
モールド6や基板3にパーティクル等の異物が付着すると、転写したパターンの不良になる。従って、インプリント装置20は通常クリーンルームに設置される。しかし、クリーンルーム全体を清浄にするには限度があり、また、高度な清浄度を保つためにはコストが大幅に上昇してしまう。そこで、クリーンルーム内にインプリント装置20の全体を格納する空間を筐体100で囲む。筐体100は、インプリント装置20を格納する空間と当該空間を取り囲む空間(第3空間)とを仕切る第2隔壁を構成している。
【0012】
機械室101には、送風機102が設置され、送風機102から供給経路50A及び50Bを通りフィルタ12で浄化された空気を筐体100の内部に供給する。したがって、筐体100の内部空間は、筐体100外部のクリーンルーム(第3空間)より高度に浄化された空間とされる。筐体100の内部に送風機102で空気を供給することで、筐体100の内部を筐体100の外部より圧力が高くなる(陽圧となる)ように保つ。これにより、筐体100にわずかな隙間があっても、筐体100の内部から筐体100の外部へ向かって空気が流れ出るため、筐体100の外部からパーティクルが混入することが防がれる。
【0013】
筐体100の内部の空間は、第1隔壁11によって、インプリント処理がなされる空間(第1空間)1A,1Bと当該第1空間1A,1Bを取り囲む空間(第2空間)2とに分割されている。空間1Aは、基板ステージ4が駆動する空間であり、その中にモールドチャック7、基板ステージ4、塗布器10が配置される。空間1Bは、基板3を搬送するための空間であり、空間1Aと連続した空間としてもよいし、隔壁を設けて空間1と別空間としてもよい。本実施形態では、空間1Aと空間1Bとを連続した空間としている。送風機102から供給経路50A及び50Cを通りフィルタ13を通った空気を第1空間1A,1Bに供給することで、第1空間1A、1Bを当該第1空間1A,1Bを取り囲む筐体100内の第2空間2よりも圧力が高くなるように保つ。これより、第1隔壁11にわずかな隙間があっても、第1空間1A,1Bにその外部からパーティクルが混入するのを防いでいる。空間1Bと空間1Aとの間に扉を設けて別空間とする場合、空間1Aは空間1Bより圧力が高くなるようにして、空間1Bから空間1Aへのパーティクルの混入を防ぐようにすることも可能である。
【0014】
筐体100内の空間1A、空間1B、空間2内の空気は、回収経路51を通って再び送風機102に戻されて送風する循環系が組まれている。クリーンルーム(第3空間)の空気を送風機102で第1空間1A,1B、第2空間2に取り入れた後クリーンルームに放出する循環系としない場合、クリーンルームのパーティクルを常にフィルタ12,13で取り続ける必要がある。そのため、クリーンルームの空気を循環系としない場合には、フィルタ12,13の寿命が短くなってしまう。クリーンルームの空気を循環系にすることにより、フィルタ12、13を通過した清浄な空気を再度利用できる為、フィルタ12,13の寿命を延ばすことができる。回収経路51を通って戻ってきた空気の一部は排出口53からクリーンルーム又は工場設備の排気経路(不図示)に排出してもよい。また、空気の一部を外気取入口52から取り入れてもよい。外気取入口52にはフィルタ14を設けてもよい。外気取入口52にフィルタ14を設けることにより、循環系内を流れる空気の清浄度を維持し、フィルタ12、13の寿命をさらに延ばすことができる。送風機102は、送風機用インバータ103により回転数を変化させることができ、制御器104に接続されている。外気取入口52、排出口53、供給経路50B、空間1A,1Bの空気の排出口、空間2の空気の排出口にそれぞれ流量調整弁54A〜Fが設けられ、制御器104により空気の流量を調整できる。外気取入口52、送風機102、供給経路50A,50C、フィルタ13は、第1空間1a,1bに浄化された空気を供給する第1給気部を構成する。外気取入口52、送風機102、供給経路50A,50B、フィルタ12は、第2空間2に浄化された空気を供給する第2給気部を構成する。空間1A,1Bの空気の排出口、流量調整弁54D,54F、回収経路51は、第1空間1A,1Bから空気を排出する第1排気部を構成する。空間2の空気の排出口、流量調整弁54E、回収経路51は、第2空間2ら空気を排出する第2排気部を構成する。
【0015】
空間1Aにパーティクルを測定するためのパーティクル測定口106A、空間1Bにパーティクルを測定する為のパーティクル測定口106Bが設けられている。各パーティクル測定口106A,106Bは測定器105に接続され、空間1A、空間1B内の清浄度すなわちパーティクルの濃度を測定することができる。測定器105で測定されたパーティクルの濃度は制御器104に入力される。パーティクル測定口106A、106Bは、空間1A、空間1B内に複数個も受けてもよい。また、本実施形態では空間の清浄度を測定する為にパーティクルを測定しているが、有機物量や無機物量のガス成分を検出するようにしてもよい。測定口106A,106B、測定器105は、第1空間内の異物の濃度を検出する検出器を構成している。
【0016】
装置の組立後や装置のメンテナンス後、基板ステージ4の駆動や空間1B内における基板搬送装置(不図示)の駆動により空間1A,1B2の清浄度が低下してモールド6や基板3にパーティクルが付着することがある。そうすると、モールド6のパターンを基板3に転写する際に不良が発生する。従来の装置では、パーティクルが発生すると、パーティクルが減少するまで空気を循環させたまま待つ必要があった。パーティクルが減少するまでに、長い場合では10時間以上待つこともある。そこで、本実施形態では以下の動作を行うことにより、パーティクルの濃度を短時間に減少させ、転写の不良発生を抑えると共に、高スループットを実現する。
【0017】
空間1A,1Bのパーティクル測定口106A、106Bから第1空間内の空気をそれぞれ取り込み、測定器105でパーティクルの濃度を測定する。測定されたパーティクルの濃度は制御器104に入力され、濃度が基準値を超える場合、制御器104は、送風機用インバータ103を制御して送風機102の回転数を上げ、送風量を上げる。また、制御器104は、供給経路50Bに設けられた流量調整弁54Cの開度を制御することにより、第2空間2を通過する空気の量に対する第1空間を通過する空気の量の比を増大させる。また、制御器104は、空間1Aの排出口に設けられた流量調整弁54Dの開度と空間1Bの排出口に設けられた流量調整弁54Fの開度を調整することにより、空間1Aから空間1Bへの流れを作ったり、空間1Bから空間1Aへの流れを作ったりすることができる。空間1A、空間1Bの各排出口に設けられる流量調整弁54D、54Fはそれぞれ複数個、例えば駆動部の発塵源の近くに設けてもよい。複数個設けられた流量調整弁の内いくつかは、通常運転時は全閉とし、パーティクルを減少させたいときのみ開くように開度が調整されるようにしてもよい。
【0018】
筐体100内の第2空間2の排出口に設けられた流量調整弁54Eは第2空間2と空間1Aと空間1Bとへの送風量が増えたときに、第2空間2の圧力が空間1Aと空間1Bの圧力よりも低くなるように開度が調整される。空間1A、空間1Bに対する空気の供給に使用される給気管、空間1A、空間1Bからの空気の排出に使用される排気管の数を複数とし、パーティクルの濃度が基準値を超える場合に使用される給気管、排気管の数を増大させてもよい。
【0019】
送風機102の送風量を上げた際、排出口53に設けられた流量調整弁54Bの開度は一定もしくは絞り、さらに供給経路50Bに設けられた流量調整弁54Cを絞り、外気取入口52に設けられた流量調整弁54Aの開度を大きくする。そうすることにより、第2空間2の圧力を第1空間1A,1Bの圧力よりも小さくかつクリーンルームの第3空間の圧力よりも大きくして、第1空間に対する外部からのパーティクルの進入を防ぎ、空気の清浄度を高めることもできる。不図示のモールドを搬送するための空間が構成される場合は同様に送風口、排出口を設けてパーティクルの減少させるための時間を短縮することができる。
【0020】
空間1A等における複数の場所でパーティクルの濃度を検出することが可能である場合、フィルタ12、13に空気の吹き出し角度を調整できる整流板を設けて、パーティクルの濃度が高い箇所に整流板を向ける。そうすると、パーティクルをより効率的に除去することが可能となる。
【0021】
[物品の製造方法]
物品としてのデバイス(半導体集積回路素子、液晶表示素子等)の製造方法は、上述したインプリント装置を用いて基板(ウエハ、ガラスプレート、フィルム状基板)にパターンを転写(形成)する工程を含む。さらに、該製造方法は、パターンを転写された基板をエッチングする工程を含みうる。なお、パターンドメディア(記録媒体)や光学素子などの他の物品を製造する場合には、該製造方法は、エッチングの代わりに、パターンを転写された基板を加工する他の処理を含みうる。以上、本発明の実施の形態を説明してきたが、本発明はこれらの実施の形態に限定されず、その要旨の範囲内において様々な変形及び変更が可能である。
【0022】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形および変更が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に塗布された樹脂と型のパターン面とを接触させた状態で該樹脂を硬化させてパターンを形成するインプリント処理を前記基板に行うインプリント装置を含むインプリントシステムであって、
前記インプリント装置を格納する空間をインプリント処理がなされる第1空間と該第1空間を取り囲む第2空間とに分割する第1隔壁と、
前記インプリント装置を格納する前記空間と当該空間を取り囲む第3空間とを仕切る第2隔壁と、
前記第1空間及び前記第2空間に浄化された空気をそれぞれ供給する第1給気部及び第2給気部と、
前記第1空間及び前記第2空間から空気をそれぞれ排出する第1排気部及び第2排気部と、
前記第1空間内の異物の濃度を検出する検出器と、
制御器と、
を備え、
前記制御器は、前記検出器により検出された前記濃度が基準値を超える場合に前記第2空間を通過する空気の量に対する前記第1空間を通過する空気の量の比を増大させるように、前記第1給気部、前記第2給気部、前記第1排気部及び前記第2排気部を制御する、
ことを特徴とするインプリントシステム。
【請求項2】
前記第1給気部は複数の給気管を備え、前記第1排気部は複数の排気管を備え、
前記制御器は、前記検出器により検出された前記濃度が前記基準値を超える場合に前記第1空間に対する空気の供給及び前記第1空間からの排出にそれぞれ使用される前記給気管及び前記排気管の数を増大させることを特徴とする請求項1に記載のインプリントシステム。
【請求項3】
前記制御器は、前記第2空間における圧力が前記第3空間における圧力よりも大きくかつ前記第1空間における圧力よりも小さくなるように、前記第1給気部、前記第2給気部、前記第1排気部及び前記第2排気部をさらに制御することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のインプリントシステム。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のインプリントシステムを用いてインプリント処理を基板に対して行う工程と、
前記工程で前記インプリント処理の行われた基板を加工する工程と、
を含むことを特徴とする物品の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2013−26474(P2013−26474A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−160303(P2011−160303)
【出願日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】