説明

インモールドラベル付き容器

【課題】 容器本体の安定した内容物収納能力を維持したまま、容器に所望する剛性を付与することにより、容器の剛性を低下させることなく、一つの容器を成形するのに要する合成樹脂材料量を、大幅に低減させることを目的とする。
【解決手段】 合成樹脂シート7から熱成形された、口鍔部5付きカップ状の肉薄な容器本体1の胴部2に、剛性の大きい筒状の厚紙ラベル6を、脚部を形成する形態で、インモールド法により貼着して外装組付けし、厚紙ラベル6の剛性を容器の剛性として効果的に作用させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂製シートの熱成形による容器本体の成形と同時にラベルを貼着するインモールドラベル付き容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂製容器の表面に対する、装飾模様とか商品名や説明文の表示を達成する手段として、表面に装飾模様とか商品名、説明文を印刷表示したラベルを、容器本体の胴部表面に貼着する手段が多用されている。
【0003】
そして、このラベルを貼着する方法の一つとして、容器本体を射出成形、ブロー成形、あるいは熱成形する際に、ラベルを予め成形型面にセットして、成形と同時に貼着する所謂インモールド法がある。
【0004】
このインモールド法は、容器本体の成形と同時に、容器本体に対するラベルの貼着が達成され、専用の別工程の貼着作業を必要とすることなしに、容器を成形することができること、容器本体の表面とインモールドラベルとの間に段差が生じないので、段差による容器の外観体裁や触感の劣化の恐れがないこと、そして容器本体の薄肉化に関わり無く、容器本体に対するラベルの強固で安定した貼着を確実に得ることができること、と云う優れた作用を発揮する。
【0005】
また、このインモールド法にあっては、容器本体に対するラベルの貼着が、強固で安定したものとなることから、胴部外周面全周に亘って巻回貼着して表示機能範囲を良好に拡大し、場合によっては、ラベルによって容器本体の胴部を機械的に補強するとか、ラベルに遮光性や酸素バリア性を与えておくことにより、容器にこの遮光性や酸素バリア性を簡単に与えることができる。
【特許文献1】特開平5−338018号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した従来技術にあっては、容器本体に安定した自立機能を付与する必要があること、また容器に、ハンドリング低下、減圧変形、さらには充填ラインでの潰れの発生を未然に防止するため、容器本体に或る程度以上の剛性を付与しておくことが必要であり、このため容器本体の充分な肉薄化を実現できない、と云う問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、上記した従来技術における問題点を解消すべく創案されたもので、容器本体の安定した内容物収納能力を維持したまま、容器に所望する剛性を付与することを技術的課題とし、もって容器の剛性を低下させることなく、一つの容器を成形するのに要する合成樹脂材料量を、大幅に低減させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によるインモールドラベル付き容器は、合成樹脂シートの熱成形品である容器本体と、剛性の大きい厚紙を筒状に成形された、インモールドラベルである厚紙ラベルと、から構成されている。
【0009】
ポリオレフィン系樹脂やポリスチレン樹脂等の合成樹脂シートの熱成形品である容器本体は、下端を底部で塞いだ胴部の開口端に、外鍔状の口鍔部を一体に連設して構成されており、胴部および底部は口鍔部に比べて、充分に肉薄となっている。
【0010】
剛性の大きい厚紙を筒状に成形して構成された、インモールドラベルである厚紙ラベルは、容器本体の熱成形時に、インモールド法により容器本体の胴部に、巻回状に貼着されるもので、その下端は、容器本体の底部の下端よりも下位に位置している。
【0011】
それゆえ、厚紙ラベルは、その剛性により、容器本体の胴部を補強し、容器として、横圧荷重および押下げ荷重に対して充分な耐久性を発揮する。
【0012】
また、厚紙ラベルは、その下端が、容器本体の底部の下端よりも下位に位置しているので、容器の脚部を形成することになり、それゆえ容器本体の胴部は、荷重に対して、大きな自己形状保持力を発揮する必要がなく、このため容器本体の胴部および底部の肉薄化の促進が可能となる。
【0013】
厚紙ラベルは、筒形状をして胴部に貼着され、容器本体の底部には貼着されていないので、容器本体の底部は撓み変形が容易な状態となっており、このため容器内に減圧が発生した場合には、この底部が撓み変形して、充分な減圧吸収能力を発揮することになる。
【0014】
厚紙ラベルは、容器本体の胴部全周を覆うので、厚紙ラベルを掴んで容器を掴持することになるが、厚紙ラベルは断熱性が高いので、容器に効果的な断熱機能を付与することになる。
【0015】
厚紙ラベルは、容器の内容積の割には大きな表面積を持つので、容器の外観を大きくすると共に、大きな表示面を提供できる。
【0016】
本発明の別の構成は、胴部の上端部に、厚紙ラベルの上端面を覆う拡径段部を形成した、ことにある。
【0017】
拡径段部を形成したものにあっては、厚紙ラベルの高さ寸法に、多少の誤差があっても、容器の口部に不良成形部、具体的には、シール面を形成する口鍔部の上面の一部に凹凸が形成されることがない。
【0018】
また、本発明の別の構成は、容器本体の底部を球弧状に膨出させた、ことにある。
【0019】
容器本体の底部を球弧状に膨出させたものにあっては、肉薄となっている底部の、容器内部への陥没撓み変形が容易である。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、上記した構成となっているので、以下に示す効果を奏する。
本発明にあっては、剛性の大きい厚紙ラベルが、充分な耐横圧荷重強度および耐押下げ荷重強度を発揮し、かつ容器の脚部を形成するので、容器本体の胴部および底部の肉薄化の促進が可能となり、これにより容器の成形に要する合成樹脂材料の、大きな省資源化を得ることができる。
【0021】
容器本体の肉薄化を充分に促進させることにより、容器における紙の比率を大きくアップさせ、これにより容器を紙容器とすることが可能となり、容器製造のコスト低減が得られる。
【0022】
また、容器本体の底部を、減圧吸収機能部分として機能させることができるので、大きな減圧吸収能力を得ることができると共に、底部が厚紙ラベルに隠れた部分であるので、底部の減圧吸収変形状態が、容器の外観体裁を害することがない。
【0023】
厚紙ラベルが優れた断熱性を発揮するので、熱い内容物を収納した状態での、手による取扱いが容易であり、内容物に対して優れた保温性を発揮する。
【0024】
良好な印刷性を有する厚紙ラベルが、平滑で大きな表面を形成するので、印刷による大きな加飾効果を得ることができる。
【0025】
拡径段部を形成したものにあっては、シール面を形成する口鍔部の上面の一部に不正な凹凸が形成されることがないので、良好なシール性を確実に得ることができる。
【0026】
容器本体の底部を球弧状に膨出させたものにあっては、底部の、容器内部への陥没撓み変形が容易であるので、大きな減圧吸収能力を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明による容器の全体斜視、図2は、図1に示した容器の全体縦断面図で、ポリオレフィン系樹脂やポリスチレン樹脂製の合成樹脂シート7から熱成形によりカップ状に成形された容器本体1と、厚紙を丸めて円筒状に成形された厚紙ラベル6とから構成されている。
【0028】
容器本体1は、下端を一体設した底部4で塞いだ円筒形状の胴部2と、この胴部2の上端に、胴部2の上端部に形成された拡径段部3を介して連設された外鍔状の口鍔部5とから構成されている。
【0029】
この容器本体1は、熱成形時における胴部2および底部4の延伸倍率を大きくするとか、合成樹脂シート7の厚みを小さくする等により、内容積の割には樹脂材料量を充分に小さくすることができる。
【0030】
厚紙ラベル6は、剛性の大きい厚紙を、円筒状に丸めて成形したもので、その外表面には、インモールド成形に先立って、商品表示や装飾模様が予め印刷されている。
【0031】
この厚紙ラベル6は、その高さが、胴部2の拡径段部3から底部4までの高さよりも大きく設定されているが、その差は、容器本体1に内容物を収納した状態で垂れ下がる底部4が、厚紙ラベル6の下端よりも下方に突出しない値に設定されている。
【0032】
厚紙ラベル6には、全高さ範囲に亘って小さな隙間6aが形成されているが、この隙間6aは、熱成形された容器本体1、特に胴部2の熱収縮変形を吸収するためのものであり、また厚紙ラベル6自体の成形寸法誤差を吸収するためのものである。
【0033】
この厚紙ラベル6は、その上端が、口鍔部5の下面ではなく、拡径段部3に覆われた状態で当接しているので、厚紙ラベル6の高さ寸法に成形寸法誤差があったとしても、この誤差が、例えばシール面を形成する口鍔部5の上面に、シール性を劣化させる凹凸を形成する、と云うような不都合は発生しない。
【0034】
図3は、図1および図2に示した容器の熱成形形態の一例を示すもので、主金型部12と底金型部13とからなる熱成形金型11に、主金型部12と底金型部13と間に挿入する形態で、予め厚紙ラベル6を挿入組付けしておき、熱成形金型11の成形型面を覆って加熱した合成樹脂シート7をセットする。
【0035】
この状態から、成形型面が形成する成形空間内の空気を、主金型部12および底金型部13に設けたバキューム通路14を通して吸引し、合成樹脂シート7の成形部分8(容器本体1の胴部2と底部4なる)をバキューム成形する。
【0036】
この成形部分8のバキューム成形により、厚紙ラベル6に接触している成形部分8の拡径段部3を除いた胴部2となる部分は、その熱により厚紙ラベル6に貼着する。
【0037】
成形部分8のバキューム成形が完了したならば、この成形部分8の周囲に周囲部分9を残して、合成樹脂シート7を切断箇所10で切断し、この成形部分8と周囲部分9とからなる成形品である容器本体1と厚紙ラベル6との組合せ物を、熱成形金型11から離型して容器の熱成形が完了する。
【0038】
この容器本体1の熱成形は、バキューム成形法に限ることはなく、圧空成形法でもよく、さらにはこれらにプラグアシスト成形法を併用して、成形効率を高めるようにしてもよい。
【0039】
なお、主金型部12に設けられたバキューム通路14は、成形空間内の空気をバキュームするだけではなく、熱成形金型11にセットされた厚紙ラベル6が、不正に変位しないように、吸着保持する機能も発揮している。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】容器の一実施形態例を示す、全体外観斜視図である。
【図2】図1に示した容器の、全体縦断面図である。
【図3】図1に示した容器の、成形形態例を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0041】
1 ;容器本体
2 ;胴部
3 ;拡径段部
4 ;底部
5 ;口鍔部
6 ;厚紙ラベル
6a;隙間
7 ;合成樹脂シート
8 ;成形部分
9 ;周囲部分
10;切断箇所
11;熱成形金型
12;主金型部
13;底金型部孔
14;バキューム通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下端を底部で閉鎖した肉薄な胴部の開口端に、外鍔状の口鍔部を連設した、合成樹脂シートからの熱成形品である容器本体と、剛性の大きい厚紙を筒状に成形した厚紙ラベルとから容器を構成し、前記厚紙ラベルを、前記胴部に、熱成形と同時にインモールド法により貼着し、前記厚紙ラベルの下端を、前記底部よりも下位に位置させたインモールドラベル付き容器。
【請求項2】
胴部の上端部に、厚紙ラベルの上端面を覆う拡径段部を形成した請求項1に記載のインモールドラベル付き容器。
【請求項3】
容器本体の底部を球弧状に膨出させた請求項1または2記載のインモールドラベル付き容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−188777(P2008−188777A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−22290(P2007−22290)
【出願日】平成19年1月31日(2007.1.31)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】