説明

インモールドラベル付き薄肉容器

【課題】 本発明は、薄肉のブロー成形容器におけるインモールドラベルの貼着による変形の発生、ラベルでの皺と浮きの発生を効果的に抑制し、ラベルを容器表面に強固に接着させることを課題とする。
【解決手段】 胴部の平均肉厚が0.1〜0.8mmの範囲の合成樹脂製の容器本体に、インモールド成形法により合成樹脂製の基材フィル層と、容器本体と同系統の合成樹脂製の接着層を積層したラベルを胴部に貼着した容器において、接着層をエンボス加工を施したものとし、ラベルの厚さを30〜80ミクロンの範囲とし、ラベルの弾性率を200〜1000MPaの範囲とし、[容器本体の弾性率]−[ラベルの弾性率]で算出される弾性率の差を−500MPa以上の範囲とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はブロー成形と同時にラベルを貼着したインモールドラベル付き薄肉容器に関する。
【背景技術】
【0002】
ブロー成形による合成樹脂製容器の表面に対する装飾模様とか商品名や説明文の表示を達成する手段として、表面に装飾模様とか商品名、説明文を印刷表示したラベルを、容器本体の胴部表面に貼着する手段が多用されている。
たとえば、特許文献1には胴部外周面にラベルが貼合一体化された薄肉のプラスチックボトルについての記載がある。しかしながら特許文献1に記載される方法では、薄肉容器のブロー成形後、ラベルを貼付するために用意した金型内にラベルと該容器を供給する工程が必要であり、生産効率やエネルギー効率が劣るといった問題があった。
【0003】
一方、このラベルを貼着する方法の一つとして、容器本体をブロー成形する際に、ラベルを予め成形型面にセットして成形と同時に貼着する所謂インモールド成形法がある。
【0004】
このインモールド成形法は、容器本体の成形と同時に容器本体に対するラベルの貼着が達成され、専用の別工程の貼着作業を必要としないこと、容器本体の表面とインモールドラベルとの間に段差が生じないので、この段差による容器の外観体裁や触感の劣化の恐れが全くないこと、そして容器本体の薄肉化に関わり無く、容器本体に対するラベルの強固で安定した貼着を確実に得ることができること、と云う優れた作用を発揮する。
【特許文献1】特開2002−321722
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、化石資源消費縮減、炭酸ガス排出量削減による地球温暖化防止等の地球環境への配慮の観点から容器本体およびラベルに使用される樹脂量のさらなる削減、つまりはさらなる薄肉化が要請される中、容器本体の胴部の肉厚を数100ミクロン以下程度にまで薄肉化することが要請されている。
【0006】
一方で、容器本体を薄肉化すると、容器本体をブロー成形で成形する場合、インモールド成形法でラベルを貼着する際、パリソンの熱でラベルが収縮するため、ラベルに皺が入ったり、パリソンとラベルとの間のエアが逃げ切れないため、容器本体とラベルの間に浮きが発生したりする。
また、ラベルが厚い場合には、ラベルが金型によるパリソンの冷却を遅くさせるため、容器本体の胴部のラベルが貼着した面の方がそれ以外の部分の容器本体の成形収縮よりも大きくなり、薄肉故に容器本体が変形してしまうと云う問題、また、ラベルの弾性率が大きな場合や容器本体とラベルの弾性率の差が大きい場合にも容器本体が変形してしまうと云う問題が発生する。
【0007】
そこで、本発明はブロー成形容器、特に薄肉容器におけるインモールド成形法によるラベルの貼着による変形の発生、そしてラベルでの皺と浮きの発生を効果的に抑制することを課題とし、ラベルにより綺麗にそして高品位に外装されたブロー成形容器を、生産効率を低下させることなく廉価で少ないエネルギーで提供することを目的とする。

【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明の手段に係る主たる構成は、
ブロー成形法による胴部の平均肉厚が0.1〜0.8mmの範囲の合成樹脂製の容器本体に、成形と同時にインモールド成形法により、合成樹脂製の基材フィルム層と、接着層を積層したラベルを胴部に貼着した容器において、次の構成要件を満足するようにしたものである。
但し、本願における「ラベル厚さ」とは図3に示すようにラベル断面において基材フィルムの表面から接着層のエンボスの凸部頂点までの平均厚さtを云い、基材フィルム、印刷層、ドライラミネート層、エンボス加工を施す前の接着層となるフィルムの厚さの合計を云う。

(1)接着層を容器本体表面と同系統の合成樹脂製フィルムとし、さらにエンボス加工を施したものとする。
(2)ラベルの厚さを30〜80ミクロンの範囲とする。
(3)ラベルの弾性率を200〜1000MPaの範囲とする。
(4)[容器本体の弾性率]−[ラベルの弾性率]で算出される弾性率の差を−500MPa以上の範囲とする。
【0009】
容器本体にインモールでラベルを貼付する際には主として次の1)〜4)の要素や問題を考慮してラベルの材質や肉厚を選定する必要がある。
1)ラベルの金型キャビティ内への連続的な供給に係る生産性
2)高温の溶融樹脂からなるパリソンが膨張変形しながらラベルに接触することによる、ラベルでの皺の発生や、エア溜まりによる浮きの発生
3)金型内での樹脂の冷却固化そして成形後の収縮に伴なう容器の変形
4)ラベルの容器表面への強固な接着性
特に容器本体の胴部の平均肉厚が0.1〜0.8mm程度の薄肉容器の場合には2)に示される成形中にラベルに発生する皺やエア溜まりの問題、3)に示される成形収縮に起因する容器の変形の問題が顕著に現出する。

このため、たとえば成形中におけるラベルでの皺の発生を抑制することだけを考慮して、ラベルの弾性率を大きくしたり、ラベルを厚くしたりすると、成形収縮による容器の変形が大きくなってしまう等の問題が発生するため、上記した1)〜4)の要素や問題を全体的に考慮してラベルの材質や肉厚を選定する必要がある。
【0010】
そこで、本発明の主たる構成に示される(1)〜(4)の構成要件は上記したインモールドでラベルを貼着する際における1)〜4)の要素や問題を全体的に考慮したものであり、ラベルの材質や肉厚を(1)〜(4)の構成要件に沿って選定することにより、
ラベルの金型キャビティ内への連続的な供給に係る生産性を確保しながら、成形中におけるラベルでの皺の発生や、エア溜まりによる浮きの発生を十分抑制することができると共に、成形収縮に起因する容器の変形を効果的に抑制することができ、高い生産性でラベルを容器本体の胴壁に一体的に高品位に強固に接着できると云う、インモールド成形の特徴を損なうことなく生かしながら、ラベルに皺や浮きがなく、容器に変形のない良好な外観のラベル付き薄肉容器を提供することができる。
【0011】
すなわち、構成要件(1)において、接着層をエンボス加工を施したものとすると、このエンボス加工により形成される凹凸により、皺の発生の主たる要因である高温のパリソンの接触によるラベルの収縮挙動を緩和することができ、皺の発生を効果的に抑制することができる。
また、上記のようにエンボス加工による凹凸により皺の発生を効果的に抑制することができるので、皺の発生を抑えるためにラベルの厚さや弾性率を一定の大きさ以上に大きくする必要がなくなり、後述するようにラベルの厚さや弾性率が大きいことに起因する成形収縮による容器の変形を抑制することが可能となる。
【0012】
また、エンボス加工により重ね合わされたラベル同士の接触面積が小さくなるため、ラベル同士のブロッキングを防止でき、ホルダー内のラベルを一枚毎に確実に金型内に供給することができ、金型内へのラベルの供給に伴なうトラブルをなくして高い生産性を実現することが可能となる。
さらに、エンボス加工による凹凸を利用してパリソンとラベルの間のエアが逃げることができ、エア溜まりよるラベルにおける浮きの発生を効果的に抑制することが可能となる。
【0013】
また、接着層を容器本体表面と同系統の材質とすることにより、接着層表面がパリソンの熱で溶融し、ラベルが容器本体表面と溶着するため、強固に接着し、高温多湿などの過酷な環境下で使用されたり、内容物を取り出すために容器をスクイズしたり、押し潰したりしてもラベルが剥がれることがない。
【0014】
次に、構成要件(2)と(3)に沿って、ラベルの厚さを30ミクロン以上、またラベルの弾性率を200MPa以上の範囲とすることにより、インモールド成形に際し、ラベルを所定のホルダー内に整列させて、一枚毎に確実に金型内に供給することができ、金型内へのラベルの供給に伴なうトラブルをなくして高い生産性を実現することが可能となる。このように、ラベルの確実な供給を実現するためにはラベルの厚さと弾性率が共に一定値以上であることを要し、ラベルの厚さを30ミクロン以上とすると共に、弾性率を200MPa以上とすることによりラベルの確実な供給を実現することができる。
【0015】
また、インモールド成形法によりラベルを貼着した容器の場合、ラベル端部と容器本体との境界部にV字型のノッチ状の溝が形成されるが、ラベルが厚すぎるとこの溝が深く大きくなり、特に薄肉容器の場合、容器を落下させた際、この溝を基点として容器が破損しやすい問題があるが、ラベルの厚さを80ミクロン以下とすることにより、溝を小さくでき、たとえ薄肉容器であっても溝に起因する容器の破損が起こりにくくなる。
【0016】
次に、薄肉容器では、前述したようにラベルが厚い場合には、ラベルが金型によるパリソンの冷却を遅くさせるため、容器本体の胴部のラベルが貼着した面の方がそれ以外の部分の容器本体の成形収縮よりも大きくなり、薄肉故に容器本体が変形してしまう。また、ラベルの弾性率が大きな場合や容器本体とラベルの弾性率の差が大きい場合にも容器本体が変形してしまうと云う問題があるが、
ラベルの材質と肉厚を、構成要件(2)、(3)及び(4)に沿って選定することにより、上記の成形収縮に起因する容器の変形を効果的に抑制することができる。
【0017】
ここで、容器本体の材質は外観、耐薬品性、剛性等の容器としての基本的な性能、さらには材料費等を考慮して選定されるものであり、
構成要件(4)の、[容器本体の弾性率]−[ラベルの弾性率]で算出される弾性率の差を−500MPa以上の範囲とする、と云う要件は、上記のような観点から材料選定される容器本体の弾性率に対して、ラベルの弾性率を必要以上に大きくしないようにするものである。
そして、構成要件(2)、(3)に沿ってラベルの厚さを80ミクロン以下、弾性率を1000MPa以下の範囲とすると共に、さらに[容器本体の弾性率]−[ラベルの弾性率]で算出される弾性率の差を−500MPa以上の範囲として、ラベルの弾性率の上限を抑えることにより、特にラベル貼着面とそれ以外の部分で容器本体の成形収縮が異なることに起因する容器の変形を抑制することができる。
【0018】
本発明の他の構成は、上記主たる構成に加えて、容器本体の成形収縮率とラベルの熱収縮率の差を(+/−)3%以内とする、と云うものである。
【0019】
上記構成により、容器本体の成形収縮率とラベルの熱収縮率の差を(+/−)3%以内とすることにより、容器本体とラベルの収縮率の差に起因する容器の変形を効果的に抑制することができる。
【0020】
本発明のさらに他の構成は、ラベルを、透明性を有する基材フィルム層の一方の面に印刷層を形成し、この印刷層の上から接着層を積層した構成とする、と云うものである。
【0021】
上記構成により、印刷層により図案や模様を現出させて、高品位な加飾性を発揮させることができる。印刷層はラベル表面に露出せず、所謂フィルムの裏印刷であるため、ラベル面同士や外装との摩擦や水、内容液との接触により印刷が剥離したり、脱色したりする心配がない。
【0022】
本発明のさらに他の構成は、容器本体をポリオレフィン系樹脂製とし、ラベルの基材フィルム層と接着層をポリオレフィン系フィルム製とする、と云うものである。
【0023】
上記構成により、ポリオレフィン系樹脂は結晶性で容器本体の成形収縮率が比較的大きくなるが、ラベルを構成する基材フィルム層と接着層をポリオレフィン系フィルム製とすることにより、容器本体の成形収縮率とラベルの熱収縮率の差を小さくすることが可能となる。また、ラベルを接着層を介して容器本体に直接溶着することができる。
【0024】
ここで、本発明において容器本体を構成するポリオレフィン系樹脂として、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン(以下PPと略記する場合がある。)樹脂、あるいはエチレンあるいはプロピレンを主体とした共重合体を使用でき、またこれらのポリオレフィン樹脂系を主体としたブレンド品を使用することができる。また、他の樹脂を中間層として設け、積層としても良く、例えばエチレン−ビニルアルコール共重合体等のガスバリアー製樹脂等を中間層として設けても良い。
また、基材フィルム層と接着層に使用するポリオレフィン系フィルムとしてはポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、あるいはエチレンあるいはプロピレンを主体とした共重合体からなるフィルムや合成紙を使用でき、共押出フィルムやラミネートフィルム、無延伸フィルム、延伸フィルムさらにはその延伸態様、ヒートセット温度等により、広い範囲でその熱収縮率を選択することができる。また、帯電防止剤、着色剤、パール材等が練り込まれていても良いし、一方の面に金属蒸着が施されていても良い。
【0025】
本発明のさらに他の構成は、上記構成において、容器本体をポリエチレン系樹脂製とし、ラベルを、PP樹脂無延伸フィルム製の基材フィルム層に、グラビア印刷により印刷層を形成し、さらにドライラミネート層を介して直鎖状低密度ポリエチレン(以下、LLDPEと略記する。)樹脂フィルム製の接着層を積層する、というものである。
【0026】
上記構成はラベルの具体的な層構成に係るものであり、特にポリエチレン系の容器本体に適したラベルとして使用することができる。

【発明の効果】
【0027】
本発明は、上記した構成となっているので、以下に示す効果を奏する。
すなわち、主たる構成を有するものにあっては、インモールドラベル付き薄肉容器において、ラベルの接着層を容器本体と同系統の合成樹脂製フィルムとし、さらにエンボス加工したものとし、ラベルの厚さを30〜80ミクロン、弾性率を200〜1000MPaの範囲とし、さらに[容器本体の弾性率]−[ラベルの弾性率]で算出される弾性率の差を−500MPa以上とすることにより、
ラベルの金型キャビティ内への連続的な供給に係る生産性を確保しながら、成形中におけるラベルでの皺の発生や、エア溜まりによる浮きの発生を十分抑制することができると共に、成形収縮に起因する容器の変形を効果的に抑制することができ、高い生産性でラベルを容器本体の胴壁に一体的に高品位に強固に接着できると云う、インモールド成形の特徴を損なうことなく生かしながら、ラベルに皺や浮きがなく、容器表面に強固に接着し、容器に変形のない良好な外観のラベル付き薄肉容器を提供することができる。

【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態を実施例に沿って図面を参照しながら説明する。
図1〜図3は本発明の容器の一実施例を示すものであり、図1は正面図、図2は図1中のA−A線に沿って示す平断面図、そして図3はラベル11の層構成を示す縦断面図である。
容器本体1は、高密度ポリエチレン(HDPE)樹脂製のダイレクトブロー成形による楕円筒状の胴部2を有する壜体で、高さが200mm、容量が400mlであり、胴部2の平均肉厚は0.6mmである。
また、この容器本体1の胴部2の成形収縮率は径方向が2.2%、高さ方向が1.8%であり、弾性率は径方向、高さ方向共に550MPa程度である。
【0029】
胴部2の正面と背面には、矩形状のラベル11が、インモールド成形法により容器本体1のブロー成形と同時に貼付されている。
このラベル11は、基材フィルム層12をPP樹脂製無延伸フィルム(CPP)製、そして接着層15をLLDPE樹脂フィルム製とするもので、
基材フィルム層12/グラビア印刷層13/ドライラミネート層14/接着層15と云う層構成を有する(図3参照)。
基材フィルム層12の層厚は30ミクロン、接着層15の層厚は30ミクロンで、全体の平均厚さtは65ミクロン、また、ラベルの横方向の熱収縮率は2.0%、縦方向の熱収縮率は1.4%である。また弾性率は横方向、縦方向共に600MPa程度である。
【0030】
ここで、LLDPE樹脂フィルム製の接着層15はインモールド成形により容器本体1の胴部2の表面に接着(溶着)する機能を果たすものであるが、エンボス加工により凹凸を形成している。
そしてこのエンボス加工により形成される凹凸により、皺の発生の主たる要因である高温のパリソンの接触によるラベルの収縮挙動を緩和することができ、皺の発生を効果的に抑制するようにしている。
また、この凹凸がホルダー内に重ねて整列されたラベル表面とラベル接着面との接触面積を小さくするため、ラベルの金型への自動供給においてラベルを一枚一枚確実にホルダーから取り出し、金型内に供給することができる。
さらに、この凹凸がインモールド成形時における空気の逃げ道としての機能を発揮してラベル11に、空気溜まりに起因する浮き(ブリスター)の発生がないようにしている。
【0031】
そしてこのラベル11は、基材フィルム層12の一方の面をコロナ処理をし、グラビア印刷により印刷層13を形成し、さらにドライラミネーション工程でドライラミネート層14を介して接着層15を積層し、所定の形状でブッシュ方式により打ち抜いて作成したものである。
【0032】
また、上記容器本体1とラベル11において、
[容器本体1の弾性率]−[ラベル11の弾性率]で算出される弾性率の差は550−600=−50MPa程度であり、−500MPa以上の範囲となる。
また、容器本体1の成形収縮率とラベルの熱収縮率の差は、
[容器本体1の径方向の成形収縮率2.2%]−[ラベル11横方向の収縮率2.0%]で、0.2%であり、
[容器本体1の高さ方向の成形収縮率1.8%]−[ラベル11縦方向の収縮率1.4%]で、0.4%であり、いずれも(+/−)3%以内の範囲となる。
【0033】
ここで、図5は、本実施例のインモールドラベル付き薄肉容器を成形する工程の概略説明図である。ダイス21から円筒状のHDPE樹脂製パリソン22を押し出し、その上下をブロー成形割金型23で挟んだ状態である。
この状態で、ブローエアを吹き込むとパリソン22は膨張し(図5中の矢印方向参照)キャビティの形状に賦形され(図5中の2点鎖線の状態参照)、容器本体1が成形されるが、この成形と同時に予め型面に減圧吸気路24により固定配設しておいたラベル11は胴壁2Wに一体化された状態に貼着される。
【0034】
図2はこのように成形された容器本体1の胴部2の平断面を示すものである。接着層15のエンボス加工による凹凸の作用効果が相俟って、ラベル11には皺や浮きもなく、容器本体1の正面部分に、略半周に亘って胴壁2W表面と同一平面に綺麗に貼着されており、平滑で高品位な貼着状態にある。
また、容器の変形についてみると、ラベル11の貼着に起因する容器全体の変形は勿論のこと、ラベル11のエッジ部11e近傍で胴壁2Wが内側に凹むようなヒケの発生も、外見では感知できない程度に十分抑制されたものであった。
【0035】
図4は、本発明の主たる構成に定めた範囲に対して、ラベル11の肉厚が厚い場合、弾性率が高い場合、あるいは容器本体1の成形収縮率がラベル11に比較して大きい場合における、ラベル貼着面とそれ以外の部分で容器本体の成形収縮が異なることに起因する容器の変形態様の一例を平断面で示した概略説明図である。図4中に示されるように、ラベル11が貼着されていない部分(図中の左右の部分)で、胴壁2Wが正常な状態に比べ凸状に出張った変形状態となり、容器全体が大きく変形している。
【0036】
以上、実施例に沿って本発明の実施の形態とその作用効果を説明したが、本願発明はこの実施例に限定されるものではない。
容器本体1とラベル11に使用する材料の組み合わせは、弾性率や収縮率に係る要件を満たす範囲でさまざまな組み合わせとすることができる。たとえば、上記実施例では容器本体1をHDPE樹脂製としたが、たとえばPP樹脂製等の他のポリオレフィン系樹脂や、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂等、従来よりブロー成形に使用されている樹脂を使用することができる。
【0037】
また、ラベル11の基材として、PP樹脂製フィルムの他にもたとえばポリエステル系フィルム等のフィルムを使用することができ、無延伸フィルム、あるいはさまざまな延伸倍率の延伸フィルムの中から選択することができる。

【産業上の利用可能性】
【0038】
以上説明したように本発明のインモールドラベル付き薄肉容器は、ラベルに皺や浮きがなく、容器の変形のないものでありインモールドラベルで高品位に外装した薄肉容器としてさまざまな用途での使用の展開が期待される。

【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の容器の一実施例を示す正面図である。
【図2】図1中のA−A線に沿って示す平断面図である。
【図3】図1の容器に使用されているラベルの層構成を示す縦断面図である。
【図4】容器の変形態様の一例を平断面で示す概略説明図である。
【図5】本発明の容器を成形するための工程の一実施形態を示す概略説明図である。
【符号の説明】
【0040】
1 ;容器本体
2 ;胴部
2w;胴壁
11;ラベル
11e;エッジ部
12;基材フィルム層
13;印刷層
14;ドライラミネート層
15;接着層
21;ダイス
22;パリソン
23;ブロー割型
24;減圧吸気路
t ;厚さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロー成形法による胴部(2)の平均肉厚が0.1〜0.8mmの範囲の合成樹脂製の容器本体(1)に、成形と同時にインモールド成形法により、合成樹脂製の基材フィルム層(12)と、接着層(15)を積層したラベル(11)を前記胴部(2)に貼着した容器において、接着層(15)を容器本体表面と同系統の合成樹脂製フィルムとし、さらにエンボス加工を施したものとし、ラベル(11)の厚さを30〜80ミクロンの範囲とし、ラベル(11)の弾性率を200〜1000MPaの範囲とし、[容器本体(1)の弾性率]−[ラベル(11)の弾性率]で算出される弾性率の差を−500MPa以上の範囲としたことを特徴とするインモールドラベル付き薄肉容器。
【請求項2】
容器本体(1)の成形収縮率とラベルの熱収縮率の差を(+/−)3%以内としたことを特徴とする請求項1記載のインモールドラベル付き薄肉容器。
【請求項3】
ラベル(11)を、透明性を有する基材フィルム層(12)の一方の面に印刷層(13)を形成し、該印刷層(13)の上から接着層(15)を積層した構成とした請求項1または2記載のインモールドラベル付き薄肉容器。
【請求項4】
容器本体(1)をポリオレフィン系樹脂製とし、ラベル(11)の基材フィルム層(12)と接着層(15)をポリオレフィン系フィルム製とした請求項1、2または3記載のインモールドラベル付き薄肉容器。
【請求項5】
容器本体表面(1)をポリエチレン系樹脂製とし、ラベル(11)を、ポリプロピレン樹脂無延伸フィルム製の基材フィルム層(12)に、グラビア印刷により印刷層(13)を形成し、さらにドライラミネート層(14)を介して直鎖状低密度ポリエチレン樹脂フィルム製の接着層(15)を積層した構成とした請求項4記載のインモールドラベル付き薄肉容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−241990(P2009−241990A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−94350(P2008−94350)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】