インモールド加飾成形方法及び成形品
【課題】薄い肉厚を有する成型品の端縁を被覆することができるインモールド加飾成形方法及び成形品を提供する。
【解決手段】本発明のインモールド加飾成形方法は、加飾フィルムを提供するステップと、第一成形金型で成形品の表面に貼付可能な貼付部及び貼付部の辺縁から内側方向へ傾斜された被覆部を備えるように加飾フィルムを予備成形するステップと、被覆部の貼付部から離れている辺縁に沿って加飾フィルムを切断するステップと、凹部が形成された雌型及び雄型からなる第二成形金型を提供し、加飾フィルムを雌型の凹部内に装着するステップと、雄型と雌型とを型閉めした後、雄型の金型分割面で加飾フィルムを押圧するステップと、成形空間部内に溶融樹脂を射出して、成形品の表面及び端縁を加飾フィルムに貼付させるステップと、雄型と雌型とを型開きして成形品を取り出すステップと、を備える。本発明は、該方法によって製造された成形品を更に提供する。
【解決手段】本発明のインモールド加飾成形方法は、加飾フィルムを提供するステップと、第一成形金型で成形品の表面に貼付可能な貼付部及び貼付部の辺縁から内側方向へ傾斜された被覆部を備えるように加飾フィルムを予備成形するステップと、被覆部の貼付部から離れている辺縁に沿って加飾フィルムを切断するステップと、凹部が形成された雌型及び雄型からなる第二成形金型を提供し、加飾フィルムを雌型の凹部内に装着するステップと、雄型と雌型とを型閉めした後、雄型の金型分割面で加飾フィルムを押圧するステップと、成形空間部内に溶融樹脂を射出して、成形品の表面及び端縁を加飾フィルムに貼付させるステップと、雄型と雌型とを型開きして成形品を取り出すステップと、を備える。本発明は、該方法によって製造された成形品を更に提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インモールド加飾成形方法及び該方法による成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車、家電製品、及び電子製品などの表面加飾技術として、一般的にインモールド加飾成形技術が採用されている。
【0003】
従来のインモールド加飾成形技術は、加飾フィルムを採用する。前記加飾フィルムは、積載層、離型層、硬質保護層(硬化層)、絵柄層、及び接着層からなる複数層構造である。インモールド加飾成形方法とは、成形と同時に前記加飾フィルムを成形品に付着させて、成形品の装飾を行う加飾法である。前記成形品を成形し、次いで前記離型層を介して前記積載層を成形品から剥離すると、前記硬質保護層及びカラーパターンを有する絵柄層は前記成形品の表面に粘着される。紫外線を照射することにより、透明材料として硬化された前記硬質保護層は、高い光沢効果を有し、前記成形品を保護し、且つ前記絵柄層が摩損されないようにする(特許文献1、特許文献2、特許文献3を参照)。しかし、前記インモールド加飾成形技術において、型を開ける時、前記加飾フィルムの積載層及び離型層は、前記成形品の表面に粘着されている硬質保護層から剥離され、前記成形品と前記硬質保護層及び前記絵柄層とを整斉に切ることができない。前記硬質保護層の厚みが5μm以内であるため、長時間にわたって使用すると、前記硬質保護層が摩損されて、光沢度が低くなり、カラーパターンも摩損される可能性がある。前記積載層及び前記離型層を剥離してから再利用することができないため、製作コストも高い。
【0004】
従来の他のインモールド加飾成形技術において、先ず、伝送装置で加飾フィルムを切断金型内に配置してから、適当の形状又は寸法に切断する。次に、前記伝送装置で前記フィルムを前記切断金型から取り出して、射出金型内に配置する(特許文献4を参照)。しかし、前記射出金型内に位置されたフィルムが定位置に配置されない場合があるので、成形樹脂を射出する時、成形樹脂の流動及び生じる射出圧力は、前記加飾フィルムの位置移動又は褶曲を招き、前記加飾フィルムは成型品に完全に付着することができない。
【0005】
従来のフィルムインサート(IMF)成形方法においては、成形金型で加飾フィルムを成形し、且つ辺縁を切断する。成形された加飾フィルムは、成形品の三次元表面と同一の形状を有し、前記加飾フィルムを成形キャビティに配置して射出成形することにより、成形と同時に前記加飾フィルムを成形品に付着させる。従来のインサート成形品の製造方法において、樹脂射出孔を有する凸部の周囲に溝部が、形成された雄型と、凹部が形成された雌型とからなる射出成形金型を提供し、プリフォームされたインサート材を雌型の凹部内に装着させ、雄型と雌型とを型閉めした後、キャビティ内に溶融樹脂を射出し、溶融樹脂が冷却固化した後、成形品の外表面にインサート材が形成されたインサート成形品を取り出す(特許文献5を参照)。しかし、前記インサート成形品の製造方法において、成形品の底面端縁がインサート材に被覆されなかったので、成形品の底面端縁に対する外観要求を満足することができない場合あり、且つ前記射出金型内に位置されたインサート材が定位置に配置されない場合があるので、インサート材の位置移動又は褶曲を招く。
【0006】
図9に示されたように、従来の他のインサート成形品の製造方法において、雄型1と雌型2とで構成される成形空間部3を有する射出成形金型を用い、予備成形及び打抜き加工されたインサートフィルム4を雌型2内に装着し、雄型1と雌型2とを型閉めした後、前記成形空間部3内に溶融樹脂を射出し、溶融樹脂の冷却固化を待って、金型の型開きを行い、成形品の外表面にインサートフィルム4が形成されたインサート成形品を取り出す。雄型1と雌型2とが型閉めされたときに、インサートフィルム4の端面4aが雄型1の内面1cの端縁に接触し、インサートフィルム4の側面4bの中部が雌型2の内側壁に当接するため、インサートフィルム4が成形品の端縁を被覆することができる(特許文献6を参照)。しかし、図10に示されるように、前記インサート成形品の製造方法において、成形品の肉厚が小さい時、図11に示されるように、インサートフィルム4が成形品の端縁9を完全に被覆することができないので、成形品の外観の要求を満足することができない。
【0007】
フィルムインサート(IMF)成形方法において、インサートフィルムの延展性を顧慮しなければならなく、インサートフィルムのパターンが歪曲すると、被覆質量を低減する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】日本特許第3546034号明細書
【特許文献2】台湾特許第350820号明細書
【特許文献3】米国特許第5993588号明細書
【特許文献4】米国特許第5800759号明細書
【特許文献5】日本特許特開平6−328498号明細書
【特許文献6】日本特許第3762923号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、前記課題を解決し、小さい肉厚を有する成型品の端縁を被覆することができるインモールド加飾成形方法及び成形品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明に係るインモールド加飾成形方法は、加飾フィルムを提供するステップと、第一成形金型で必要とする成形品の三次元表面の形状によって前記成形品の表面に貼付可能な貼付部及び前記貼付部の辺縁から内側方向へ所定角度で傾斜された被覆部を備えるように前記加飾フィルムを予備成形するステップと、前記被覆部の前記貼付部から離れている辺縁に沿って前記加飾フィルムを切断するステップと、雄型及び凹部が形成された雌型からなる第二成形金型を提供し、切断された加飾フィルムを前記雌型の凹部内に装着させ、且つ前記加飾フィルムを前記雌型の金型分割面の近傍、即ち前記雌型の前記加飾フィルムの貼付部と被覆部との連接部に対応する箇所に接触させるステップと、前記雄型と前記雌型とを型閉めした後、前記雄型の金型分割面で前記加飾フィルムを押圧するステップと、前記雄型と前記雌型とが型閉めして形成された成形空間部内に溶融樹脂を射出して、成形品の表面及び端縁を前記加飾フィルムに貼付させるステップと、前記溶融樹脂の冷却固化を待って、前記雄型と前記雌型とを型開きして成形品を取り出すステップと、を備える。
【0011】
前記目的を達成するために、本発明に係る成形品は、肉厚の範囲が0.5mm〜2.5mmであって、表面、端縁、及び端縁における内側部分が加飾フィルムに被覆される。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るインモールド加飾成形方法は、予備成形および切断加工された加飾フィルムを成形品の表面及び端縁に被覆することにより、その外観が加飾された成形品を獲得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のインモールド加飾成形方法のフローチャートである。
【図2】本発明のインモールド加飾成形方法の加飾フィルムを予備成形する流れを示す図である。
【図3】本発明のインモールド加飾成形方法の予備成形された加飾フィルムを金型のキャビティに装着する工程を示す断面図である。
【図4】本発明のインモールド加飾成形方法の型閉め工程を示す断面図である。
【図5】本発明のインモールド加飾成形方法の射出成形工程示す断面図である。
【図6】本発明のインモールド加飾成形方法によって成形された成形品の構造を示す図である。
【図7】本発明のインモールド加飾成形方法で用いる加飾フィルムの一例を示す断面図である。
【図8】本発明のインモールド加飾成形方法で用いる加飾フィルムの別の一例を示す断面図である。
【図9】特許文献6に記載されたインサート成形品の製造方法の型閉め工程を示す断面図である。
【図10】特許文献6に記載されたインサート成形品の製造方法において、成形品の肉厚が薄い時の型閉め工程を示す断面図である。
【図11】特許文献6に記載されたインサート成形品の製造方法において、成形品の肉厚が薄い時、射出成形した後インサート材が成形品の端縁を完全に被覆できないことを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1及び図2に示されるように、本発明は、三次元表面を有する成形品のインモールド加飾成形方法を提供する。前記インモールド加飾成形方法は、以下のステップを備える。
【0015】
ステップ202:加飾フィルム20を提供する。
【0016】
ステップ204:第一成形金型で必要とする成形品の三次元表面の形状によって前記加飾フィルム20を予備成形する。予備成形された加飾フィルムは、前記成形品の表面に貼付可能な貼付部21及び前記貼付部21の辺縁から内側方向へ所定角度で傾斜された被覆部22を備える。前記被覆部22は、前記成形品の端縁を被覆するために用いられる。
【0017】
ステップ206:切断工具50で前記被覆部22の前記貼付部21から離れている辺縁に沿って切断する。前記予備成形された加飾フィルムの余分な部分の切断した後の成形された加飾フィルムは、成形品の三次元表面に対応する形状及び寸法を有する。
【0018】
ステップ208:図3に示されるように、凹部442が形成された雌型44と、雄型42とからなる第二成形金型40を提供し、切断された加飾フィルム20を前記雌型44の凹部442内に装着させ、且つ前記加飾フィルム20を前記雌型44の金型分割面の近傍、即ち前記雌型44の前記加飾フィルム20の貼付部21と被覆部22との連接部に対応する箇所に接触させる。
【0019】
ステップ210:図4に示されるように、前記雄型42と前記雌型44とを型閉めした後、前記雄型42の金型分割面で前記加飾フィルム20を押圧する。
【0020】
ステップ212:図5に示されるように、前記雄型42と前記雌型44とが型閉めして形成された成形空間部内に溶融樹脂を射出して、成形品の表面及び端縁を前記加飾フィルム20で被覆させる。
【0021】
ステップ214:図6に示されるように、溶融樹脂の冷却固化を待って、金型の型開きを行い、成形品の端縁30に加飾フィルム20が形成された成形品を取り出して、必要とする成形品の端縁の外観を獲得する。
【0022】
前記三次元表面を有する成形品のインモールド加飾成形方法は、携帯電話、ノートパソコンのような三次元造形を有する電子製品のハウジング又は他のパネルの成形に適用され、いろいろなパターン及び色彩を成形することができる。
【0023】
本発明のインモールド加飾成形方法によって、小さい体積を有する携帯電話及び大きい体積を有する電子製品(ノートパソコンなど)のハウジングに加飾フィルムを被覆することができる。本発明のインモールド加飾成形方法によって携帯電話のハウジングを成形する一例において、携帯電話のハウジングの断面の長さは80mmであり、貼付される加飾フィルム20の延展量は3‰であり、さらに、携帯電話のハウジングの肉厚は1.3mmである場合、生じる変形量は約2%だけであるので、被覆技術が容易である。本発明のインモールド加飾成形方法によってノートパソコンのハウジングを成形する別の一例において、ノートパソコンの断面の長さは350mmであり、貼付される加飾フィルム20の延展量は3‰であり、ノートパソコンのハウジングの肉厚は1.5mmである場合、生じる変形量は70%であるけれども、前記加飾フィルム20は前記雌型44の金型分割面の近傍、即ち前記雌型44の前記加飾フィルム20の貼付部21と被覆部22との連接部に対応する箇所に接触するため、射出成形し、大きい体積を有する成形品の表面及び端縁30に前記加飾フィルム20を被覆することができ、成形品の肉厚が薄い時、例えば肉厚の範囲が0.5mm〜2.5mmである時、前記加飾フィルム20は、さらに成形品の端縁30の内側部分31を被覆することができ、被覆質量が優れる。
【0024】
図7に示されるように、前記加飾フィルム20は、基体層202、図柄層204、及び接着層206を備える。
【0025】
前記基体層202は、成形品の表面に被覆され、その内部の図柄層204を保護して、前記図柄層204及び成形品が摩損されないようにする。前記基体層202は、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)、オリエンテットポリプロピレン(OPP)、及びポリ塩化ビニル(PVC)などの中の一種又は二種以上の高分子材料から製造した単層フィルムであるか、又はこれらの材料の中の二種又は二種以上の高分子材料から製造した複数層フィルム又はポリマーフィルムである。前記基体層202の厚みは、0.01mm〜0.125mmであることが好ましい。
【0026】
前記基体層202の下表面にパターン及び色彩を表す図柄層204が形成されている。前記図柄層204は、前記基体層202の上にインクを塗布して形成される。前記図柄層204は、金属薄膜層からなるものでもよい。前記金属薄膜層は、金属光沢を表現するためのものであり、真空蒸着法、スパッターリング法などで形成され、アルミニウム、クロム、銅、ニッケル、インジウム、及びスズなどの金属、これらの合金、またはこれらの化合物を使用することができる。
【0027】
前記接着層206は、前記加飾フィルム20と前記成形品とを接着するために用いられる。前記接着層206の材料としては、アクリル酸樹脂、硝化ファイバー樹脂、ポリアミンギ酸塩樹脂、塩素化ゴム樹脂、塩化ビニール−酢酸ビニール共重合体樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、アルケン樹脂、及びアクリロニトリル−ブチレン−スチレン樹脂などを使用することができる。前記接着層206の形成方法としては、グラビアコート法、ロールコート法、コンマコート法などのコート法、グラビア印刷法、及びスクリーン印刷法などの印刷法がある。他の実施形態において、前記接着層206は、熱硬化性を有する材料からなり、加熱した後すぐに成形品の表面に粘着される。
【0028】
前記加飾フィルム20の基体層202は、透明又は半透明であって、前記図柄層204のパターン及び色彩をはっきりと表す。
【0029】
本発明の加飾フィルム20は、単に基体層202及び接着層206だけを備えることもできる。前記接着層206は、前記基体層202に塗布され、透明又は半透明の前記基体層202において前記成形品の元の色彩をはっきりと表す。前記基体層202は、色彩を有する材料からなってもよく、このような基体層202を前記成形品の表面に貼付して、成形品に前記基体層202の色彩を表現することができる。
【0030】
本発明の加飾フィルム20は、他の図柄層204’を備えることもでき、前記図柄層204’は、前記基体層202の上部表面に位置する(図8を参照)。
【0031】
以上、本発明を実施例に基づいて具体的に説明したが、本発明は、上述の実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々変更可能であることは勿論であり、本発明の権利範囲は、以下の特許請求の範囲により定められる。
【符号の説明】
【0032】
1,42 雄型
1c 内面
2,44 雌型
3 成形空間部
4 インサートフィルム
4a 端面
4b 側面
9 成形品の端縁
20 加飾フィルム
21 貼付部
22 被覆部
30 端縁
31 内側部分
40 第二成形金型
50 切断工具
202 基体層
204,204’ 図柄層
206 接着層
442 凹部
【技術分野】
【0001】
本発明は、インモールド加飾成形方法及び該方法による成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車、家電製品、及び電子製品などの表面加飾技術として、一般的にインモールド加飾成形技術が採用されている。
【0003】
従来のインモールド加飾成形技術は、加飾フィルムを採用する。前記加飾フィルムは、積載層、離型層、硬質保護層(硬化層)、絵柄層、及び接着層からなる複数層構造である。インモールド加飾成形方法とは、成形と同時に前記加飾フィルムを成形品に付着させて、成形品の装飾を行う加飾法である。前記成形品を成形し、次いで前記離型層を介して前記積載層を成形品から剥離すると、前記硬質保護層及びカラーパターンを有する絵柄層は前記成形品の表面に粘着される。紫外線を照射することにより、透明材料として硬化された前記硬質保護層は、高い光沢効果を有し、前記成形品を保護し、且つ前記絵柄層が摩損されないようにする(特許文献1、特許文献2、特許文献3を参照)。しかし、前記インモールド加飾成形技術において、型を開ける時、前記加飾フィルムの積載層及び離型層は、前記成形品の表面に粘着されている硬質保護層から剥離され、前記成形品と前記硬質保護層及び前記絵柄層とを整斉に切ることができない。前記硬質保護層の厚みが5μm以内であるため、長時間にわたって使用すると、前記硬質保護層が摩損されて、光沢度が低くなり、カラーパターンも摩損される可能性がある。前記積載層及び前記離型層を剥離してから再利用することができないため、製作コストも高い。
【0004】
従来の他のインモールド加飾成形技術において、先ず、伝送装置で加飾フィルムを切断金型内に配置してから、適当の形状又は寸法に切断する。次に、前記伝送装置で前記フィルムを前記切断金型から取り出して、射出金型内に配置する(特許文献4を参照)。しかし、前記射出金型内に位置されたフィルムが定位置に配置されない場合があるので、成形樹脂を射出する時、成形樹脂の流動及び生じる射出圧力は、前記加飾フィルムの位置移動又は褶曲を招き、前記加飾フィルムは成型品に完全に付着することができない。
【0005】
従来のフィルムインサート(IMF)成形方法においては、成形金型で加飾フィルムを成形し、且つ辺縁を切断する。成形された加飾フィルムは、成形品の三次元表面と同一の形状を有し、前記加飾フィルムを成形キャビティに配置して射出成形することにより、成形と同時に前記加飾フィルムを成形品に付着させる。従来のインサート成形品の製造方法において、樹脂射出孔を有する凸部の周囲に溝部が、形成された雄型と、凹部が形成された雌型とからなる射出成形金型を提供し、プリフォームされたインサート材を雌型の凹部内に装着させ、雄型と雌型とを型閉めした後、キャビティ内に溶融樹脂を射出し、溶融樹脂が冷却固化した後、成形品の外表面にインサート材が形成されたインサート成形品を取り出す(特許文献5を参照)。しかし、前記インサート成形品の製造方法において、成形品の底面端縁がインサート材に被覆されなかったので、成形品の底面端縁に対する外観要求を満足することができない場合あり、且つ前記射出金型内に位置されたインサート材が定位置に配置されない場合があるので、インサート材の位置移動又は褶曲を招く。
【0006】
図9に示されたように、従来の他のインサート成形品の製造方法において、雄型1と雌型2とで構成される成形空間部3を有する射出成形金型を用い、予備成形及び打抜き加工されたインサートフィルム4を雌型2内に装着し、雄型1と雌型2とを型閉めした後、前記成形空間部3内に溶融樹脂を射出し、溶融樹脂の冷却固化を待って、金型の型開きを行い、成形品の外表面にインサートフィルム4が形成されたインサート成形品を取り出す。雄型1と雌型2とが型閉めされたときに、インサートフィルム4の端面4aが雄型1の内面1cの端縁に接触し、インサートフィルム4の側面4bの中部が雌型2の内側壁に当接するため、インサートフィルム4が成形品の端縁を被覆することができる(特許文献6を参照)。しかし、図10に示されるように、前記インサート成形品の製造方法において、成形品の肉厚が小さい時、図11に示されるように、インサートフィルム4が成形品の端縁9を完全に被覆することができないので、成形品の外観の要求を満足することができない。
【0007】
フィルムインサート(IMF)成形方法において、インサートフィルムの延展性を顧慮しなければならなく、インサートフィルムのパターンが歪曲すると、被覆質量を低減する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】日本特許第3546034号明細書
【特許文献2】台湾特許第350820号明細書
【特許文献3】米国特許第5993588号明細書
【特許文献4】米国特許第5800759号明細書
【特許文献5】日本特許特開平6−328498号明細書
【特許文献6】日本特許第3762923号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、前記課題を解決し、小さい肉厚を有する成型品の端縁を被覆することができるインモールド加飾成形方法及び成形品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明に係るインモールド加飾成形方法は、加飾フィルムを提供するステップと、第一成形金型で必要とする成形品の三次元表面の形状によって前記成形品の表面に貼付可能な貼付部及び前記貼付部の辺縁から内側方向へ所定角度で傾斜された被覆部を備えるように前記加飾フィルムを予備成形するステップと、前記被覆部の前記貼付部から離れている辺縁に沿って前記加飾フィルムを切断するステップと、雄型及び凹部が形成された雌型からなる第二成形金型を提供し、切断された加飾フィルムを前記雌型の凹部内に装着させ、且つ前記加飾フィルムを前記雌型の金型分割面の近傍、即ち前記雌型の前記加飾フィルムの貼付部と被覆部との連接部に対応する箇所に接触させるステップと、前記雄型と前記雌型とを型閉めした後、前記雄型の金型分割面で前記加飾フィルムを押圧するステップと、前記雄型と前記雌型とが型閉めして形成された成形空間部内に溶融樹脂を射出して、成形品の表面及び端縁を前記加飾フィルムに貼付させるステップと、前記溶融樹脂の冷却固化を待って、前記雄型と前記雌型とを型開きして成形品を取り出すステップと、を備える。
【0011】
前記目的を達成するために、本発明に係る成形品は、肉厚の範囲が0.5mm〜2.5mmであって、表面、端縁、及び端縁における内側部分が加飾フィルムに被覆される。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るインモールド加飾成形方法は、予備成形および切断加工された加飾フィルムを成形品の表面及び端縁に被覆することにより、その外観が加飾された成形品を獲得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のインモールド加飾成形方法のフローチャートである。
【図2】本発明のインモールド加飾成形方法の加飾フィルムを予備成形する流れを示す図である。
【図3】本発明のインモールド加飾成形方法の予備成形された加飾フィルムを金型のキャビティに装着する工程を示す断面図である。
【図4】本発明のインモールド加飾成形方法の型閉め工程を示す断面図である。
【図5】本発明のインモールド加飾成形方法の射出成形工程示す断面図である。
【図6】本発明のインモールド加飾成形方法によって成形された成形品の構造を示す図である。
【図7】本発明のインモールド加飾成形方法で用いる加飾フィルムの一例を示す断面図である。
【図8】本発明のインモールド加飾成形方法で用いる加飾フィルムの別の一例を示す断面図である。
【図9】特許文献6に記載されたインサート成形品の製造方法の型閉め工程を示す断面図である。
【図10】特許文献6に記載されたインサート成形品の製造方法において、成形品の肉厚が薄い時の型閉め工程を示す断面図である。
【図11】特許文献6に記載されたインサート成形品の製造方法において、成形品の肉厚が薄い時、射出成形した後インサート材が成形品の端縁を完全に被覆できないことを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1及び図2に示されるように、本発明は、三次元表面を有する成形品のインモールド加飾成形方法を提供する。前記インモールド加飾成形方法は、以下のステップを備える。
【0015】
ステップ202:加飾フィルム20を提供する。
【0016】
ステップ204:第一成形金型で必要とする成形品の三次元表面の形状によって前記加飾フィルム20を予備成形する。予備成形された加飾フィルムは、前記成形品の表面に貼付可能な貼付部21及び前記貼付部21の辺縁から内側方向へ所定角度で傾斜された被覆部22を備える。前記被覆部22は、前記成形品の端縁を被覆するために用いられる。
【0017】
ステップ206:切断工具50で前記被覆部22の前記貼付部21から離れている辺縁に沿って切断する。前記予備成形された加飾フィルムの余分な部分の切断した後の成形された加飾フィルムは、成形品の三次元表面に対応する形状及び寸法を有する。
【0018】
ステップ208:図3に示されるように、凹部442が形成された雌型44と、雄型42とからなる第二成形金型40を提供し、切断された加飾フィルム20を前記雌型44の凹部442内に装着させ、且つ前記加飾フィルム20を前記雌型44の金型分割面の近傍、即ち前記雌型44の前記加飾フィルム20の貼付部21と被覆部22との連接部に対応する箇所に接触させる。
【0019】
ステップ210:図4に示されるように、前記雄型42と前記雌型44とを型閉めした後、前記雄型42の金型分割面で前記加飾フィルム20を押圧する。
【0020】
ステップ212:図5に示されるように、前記雄型42と前記雌型44とが型閉めして形成された成形空間部内に溶融樹脂を射出して、成形品の表面及び端縁を前記加飾フィルム20で被覆させる。
【0021】
ステップ214:図6に示されるように、溶融樹脂の冷却固化を待って、金型の型開きを行い、成形品の端縁30に加飾フィルム20が形成された成形品を取り出して、必要とする成形品の端縁の外観を獲得する。
【0022】
前記三次元表面を有する成形品のインモールド加飾成形方法は、携帯電話、ノートパソコンのような三次元造形を有する電子製品のハウジング又は他のパネルの成形に適用され、いろいろなパターン及び色彩を成形することができる。
【0023】
本発明のインモールド加飾成形方法によって、小さい体積を有する携帯電話及び大きい体積を有する電子製品(ノートパソコンなど)のハウジングに加飾フィルムを被覆することができる。本発明のインモールド加飾成形方法によって携帯電話のハウジングを成形する一例において、携帯電話のハウジングの断面の長さは80mmであり、貼付される加飾フィルム20の延展量は3‰であり、さらに、携帯電話のハウジングの肉厚は1.3mmである場合、生じる変形量は約2%だけであるので、被覆技術が容易である。本発明のインモールド加飾成形方法によってノートパソコンのハウジングを成形する別の一例において、ノートパソコンの断面の長さは350mmであり、貼付される加飾フィルム20の延展量は3‰であり、ノートパソコンのハウジングの肉厚は1.5mmである場合、生じる変形量は70%であるけれども、前記加飾フィルム20は前記雌型44の金型分割面の近傍、即ち前記雌型44の前記加飾フィルム20の貼付部21と被覆部22との連接部に対応する箇所に接触するため、射出成形し、大きい体積を有する成形品の表面及び端縁30に前記加飾フィルム20を被覆することができ、成形品の肉厚が薄い時、例えば肉厚の範囲が0.5mm〜2.5mmである時、前記加飾フィルム20は、さらに成形品の端縁30の内側部分31を被覆することができ、被覆質量が優れる。
【0024】
図7に示されるように、前記加飾フィルム20は、基体層202、図柄層204、及び接着層206を備える。
【0025】
前記基体層202は、成形品の表面に被覆され、その内部の図柄層204を保護して、前記図柄層204及び成形品が摩損されないようにする。前記基体層202は、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)、オリエンテットポリプロピレン(OPP)、及びポリ塩化ビニル(PVC)などの中の一種又は二種以上の高分子材料から製造した単層フィルムであるか、又はこれらの材料の中の二種又は二種以上の高分子材料から製造した複数層フィルム又はポリマーフィルムである。前記基体層202の厚みは、0.01mm〜0.125mmであることが好ましい。
【0026】
前記基体層202の下表面にパターン及び色彩を表す図柄層204が形成されている。前記図柄層204は、前記基体層202の上にインクを塗布して形成される。前記図柄層204は、金属薄膜層からなるものでもよい。前記金属薄膜層は、金属光沢を表現するためのものであり、真空蒸着法、スパッターリング法などで形成され、アルミニウム、クロム、銅、ニッケル、インジウム、及びスズなどの金属、これらの合金、またはこれらの化合物を使用することができる。
【0027】
前記接着層206は、前記加飾フィルム20と前記成形品とを接着するために用いられる。前記接着層206の材料としては、アクリル酸樹脂、硝化ファイバー樹脂、ポリアミンギ酸塩樹脂、塩素化ゴム樹脂、塩化ビニール−酢酸ビニール共重合体樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、アルケン樹脂、及びアクリロニトリル−ブチレン−スチレン樹脂などを使用することができる。前記接着層206の形成方法としては、グラビアコート法、ロールコート法、コンマコート法などのコート法、グラビア印刷法、及びスクリーン印刷法などの印刷法がある。他の実施形態において、前記接着層206は、熱硬化性を有する材料からなり、加熱した後すぐに成形品の表面に粘着される。
【0028】
前記加飾フィルム20の基体層202は、透明又は半透明であって、前記図柄層204のパターン及び色彩をはっきりと表す。
【0029】
本発明の加飾フィルム20は、単に基体層202及び接着層206だけを備えることもできる。前記接着層206は、前記基体層202に塗布され、透明又は半透明の前記基体層202において前記成形品の元の色彩をはっきりと表す。前記基体層202は、色彩を有する材料からなってもよく、このような基体層202を前記成形品の表面に貼付して、成形品に前記基体層202の色彩を表現することができる。
【0030】
本発明の加飾フィルム20は、他の図柄層204’を備えることもでき、前記図柄層204’は、前記基体層202の上部表面に位置する(図8を参照)。
【0031】
以上、本発明を実施例に基づいて具体的に説明したが、本発明は、上述の実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々変更可能であることは勿論であり、本発明の権利範囲は、以下の特許請求の範囲により定められる。
【符号の説明】
【0032】
1,42 雄型
1c 内面
2,44 雌型
3 成形空間部
4 インサートフィルム
4a 端面
4b 側面
9 成形品の端縁
20 加飾フィルム
21 貼付部
22 被覆部
30 端縁
31 内側部分
40 第二成形金型
50 切断工具
202 基体層
204,204’ 図柄層
206 接着層
442 凹部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加飾フィルムを提供するステップと、
第一成形金型で必要とする成形品の三次元表面の形状によって前記成形品の表面に貼付可能な貼付部及び前記貼付部の辺縁から内側方向へ所定角度で傾斜された被覆部を備えるように前記加飾フィルムを予備成形するステップと、
前記被覆部の前記貼付部から離れている辺縁に沿って前記加飾フィルムを切断するステップと、
雄型及び凹部が形成された雌型からなる第二成形金型を提供し、切断された加飾フィルムを前記雌型の凹部内に装着させ、且つ前記加飾フィルムを前記雌型の金型分割面の近傍、即ち前記雌型の前記加飾フィルムの貼付部と被覆部との連接部に対応する箇所に接触させるステップと、
前記雄型と前記雌型とを型閉めした後、前記雄型の金型分割面で前記加飾フィルムを押圧するステップと、
前記雄型と前記雌型とが型閉めして形成された成形空間部内に溶融樹脂を射出して、成形品の表面及び端縁を前記加飾フィルムに貼付させるステップと、
前記溶融樹脂の冷却固化を待って、前記雄型と前記雌型とを型開きして成型品を取り出すステップと、
を備えることを特徴とするインモールド加飾成形方法。
【請求項2】
前記加飾フィルムは、基体層及び接着層を備えることを特徴とする請求項1に記載のインモールド加飾成形方法。
【請求項3】
前記加飾フィルムは、前記基体層と前記接着層との間に位置された第一図柄層をさらに備えることを特徴とする請求項2に記載のインモールド加飾成形方法。
【請求項4】
前記加飾フィルムは、前記基体層の上部表面に位置された第二加飾層をさらに備えることを特徴とする請求項3に記載のインモールド加飾成形方法。
【請求項5】
前記成形品の肉厚範囲が0.5mm〜2.5mmであることを特徴とする請求項1に記載のインモールド加飾成形方法。
【請求項6】
前記成形品の端縁における内側部分は、前記加飾フィルムに被覆されることを特徴とする請求項6に記載のインモールド加飾成形方法。
【請求項7】
請求項1に記載のインモールド加飾成形方法によって製作され、表面及び端縁が加飾フィルムに被覆されることを特徴とする成形品。
【請求項8】
肉厚の範囲が0.5mm〜2.5mmであって、表面、端縁、及び端縁における内側部分が加飾フィルムに被覆される成形品。
【請求項1】
加飾フィルムを提供するステップと、
第一成形金型で必要とする成形品の三次元表面の形状によって前記成形品の表面に貼付可能な貼付部及び前記貼付部の辺縁から内側方向へ所定角度で傾斜された被覆部を備えるように前記加飾フィルムを予備成形するステップと、
前記被覆部の前記貼付部から離れている辺縁に沿って前記加飾フィルムを切断するステップと、
雄型及び凹部が形成された雌型からなる第二成形金型を提供し、切断された加飾フィルムを前記雌型の凹部内に装着させ、且つ前記加飾フィルムを前記雌型の金型分割面の近傍、即ち前記雌型の前記加飾フィルムの貼付部と被覆部との連接部に対応する箇所に接触させるステップと、
前記雄型と前記雌型とを型閉めした後、前記雄型の金型分割面で前記加飾フィルムを押圧するステップと、
前記雄型と前記雌型とが型閉めして形成された成形空間部内に溶融樹脂を射出して、成形品の表面及び端縁を前記加飾フィルムに貼付させるステップと、
前記溶融樹脂の冷却固化を待って、前記雄型と前記雌型とを型開きして成型品を取り出すステップと、
を備えることを特徴とするインモールド加飾成形方法。
【請求項2】
前記加飾フィルムは、基体層及び接着層を備えることを特徴とする請求項1に記載のインモールド加飾成形方法。
【請求項3】
前記加飾フィルムは、前記基体層と前記接着層との間に位置された第一図柄層をさらに備えることを特徴とする請求項2に記載のインモールド加飾成形方法。
【請求項4】
前記加飾フィルムは、前記基体層の上部表面に位置された第二加飾層をさらに備えることを特徴とする請求項3に記載のインモールド加飾成形方法。
【請求項5】
前記成形品の肉厚範囲が0.5mm〜2.5mmであることを特徴とする請求項1に記載のインモールド加飾成形方法。
【請求項6】
前記成形品の端縁における内側部分は、前記加飾フィルムに被覆されることを特徴とする請求項6に記載のインモールド加飾成形方法。
【請求項7】
請求項1に記載のインモールド加飾成形方法によって製作され、表面及び端縁が加飾フィルムに被覆されることを特徴とする成形品。
【請求項8】
肉厚の範囲が0.5mm〜2.5mmであって、表面、端縁、及び端縁における内側部分が加飾フィルムに被覆される成形品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−241138(P2010−241138A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−87715(P2010−87715)
【出願日】平成22年4月6日(2010.4.6)
【出願人】(500080546)鴻海精密工業股▲ふん▼有限公司 (1,018)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月6日(2010.4.6)
【出願人】(500080546)鴻海精密工業股▲ふん▼有限公司 (1,018)
【Fターム(参考)】
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