説明

イージーピール性を有する包装体およびその製造方法

【課題】食品、医薬品などの常温で可塑性または糊状の被包装物を密封包装した常温流通可能なイージーピール性を有する包装体およびその製造方法の提供。
【解決手段】一枚のシート基材2を折り畳んで両面を重ね合わせ、底部を形成する折目3以外の3方の所定の端部を密封シールしてイージーピール性を有するシール部4−1、4−2、4−3を形成するとともに底部3の反対側に位置するシール部4−2から延在するシート基材2の部分を把持部5とした包装体1内部に、必要に応じて無菌処理した常温で可塑性または糊状の被包装物6を収納した包装体1により課題を解決できる。使用時には、把持部5のシール部4−2を剥離して開封した後、残りの2方のシール部4−1、4−3を総て開封してシート基材2を被包装物6の支持体とした状態で、支持体上に置かれた被包装物6を取出す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はイージーピール性を有する包装体およびその製造方法に関するものであり、更に詳述すると、常温で可塑性または糊状の被包装物、例えば食品、医薬品、漢方薬品、化粧品、飼料、肥料、農薬、接着剤、塗料などを密封包装したイージーピール性を有する包装体およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、常温で液体の被包装物や、常温で可塑性または糊状の被包装物などの包装体としては、プラスチック製袋やボトルなどが使用されてきた。プラスチック製ボトルは使い勝手がよく、被包装物の包装適性に優れ、広く使用されているがコストアップになる問題があり、プラスチック製袋は被包装物の保存、運搬などの取り扱いを考えると封止性を高くしなければならず、そのため包装体を構成するフィルムやシート自体の強度およびヒートシール部のシール強度を一定以上の大きさに保つ必要があった。
【0003】
しかしヒートシール部のシール強度の高い包装体を開封しようとすると開封が困難になるばかりか、不所望の箇所から裂け目が生じて被包装物の液体が飛び散ったり、羊羮など常温で可塑性の被包装物の場合には変形したり崩れたりする問題があった。
そこで、少なくとも2層からなる多層構造のフィルムを用い、所定の層間の剥離強度を他より小さくして、開封時にその箇所が容易に剥離できるようにして、被包装物の変形したり崩れたりするのを防止する提案がなされた(特許文献1参照)。
【0004】
一方、基材フィルムとしてポリエチレンテレフタレートフィルムなどを用い、バリアー材としてアルミニウム箔または塩化ビニリデン系樹脂組成物をコーテイングした樹脂フィルムと、ヒートシール性樹脂層としてポリエチレン系樹脂層とを順次に積層した積層フィルムを製袋してなる小袋が知られている。小袋を作るには前記積層フィルムの合掌重合縁部をヒートシールして筒状袋体とするとともに、この筒状袋体内に液体や粘調体の内容物を充填し、続いて横方向をヒートシールして充填包装して包装体を製造することができる(特許文献2、3参照)
【特許文献1】特開昭63−91238号公報
【特許文献2】特開2001−79991号公報
【特許文献3】特開2005−263281号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の包装体は、開封時に被包装物の液体が飛び散ったり、羊羮など常温で可塑性の被包装物の場合に変形したり崩れたりする問題を解決できても、包装体の製造に使用された基材フィルムは廃棄されるだけで、基材フィルムの利用については考慮されていなかった。
【0006】
常温で固体の被包装物は、保型性があるので包装が容易であるが、グミ、ゼリー、生キャラメルなどの常温で可塑性または糊状の被包装物は柔らかくややベトつき、冷やさないと保型性がないので、包装が困難である。
グミ、ゼリー、生キャラメルなどの常温で可塑性または糊状の被包装物は包装しないと、水分活性が高く、冷やさないと腐敗する恐れがあるため、チルド流通させる必要があり、手間がかかりコスト高になる問題がある。
【0007】
本発明の第1の目的は、食品、医薬品、漢方薬品、化粧品、飼料、肥料、農薬、接着剤、塗料などの常温で可塑性または糊状の被包装物を密封包装した常温流通可能なイージーピール性を有する包装体であって、この包装体を開封した後、包装体の製造に使用されたシート基材をすぐには廃棄せず、この基材フィルムの利用を図った包装体を提供することである。
本発明の第2の目的は、そのような包装体を容易に製造できる製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解消するための本発明の請求項1記載のイージーピール性を有する包装体は、一枚のシート基材を折り畳んで両面を重ね合わせ、底部を形成する折目以外の3方の所定の端部を密封シールしてイージーピール性を有するシール部を形成するとともに前記底部の反対側に位置する前記シール部から延在する前記シート基材の部分を把持部とした包装体内部に、必要に応じて無菌処理した常温で可塑性または糊状の被包装物を収納した包装体であって、
使用時には、前記把持部のシール部を剥離して開封した後、残りの2方のシール部を総て開封して前記シート基材を前記被包装物の支持体とした状態で、前記支持体上に置かれた前記被包装物を取出すように構成したことを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項2記載のイージーピール性を有する包装体は、シール部となる箇所以外の所定の箇所に、必要に応じて無菌処理した常温で可塑性または糊状の被包装物が粘着した一枚のシート基材を前記被包装物を内側にして折り畳んで両面を重ね合わせ、底部を形成する折目以外の3方の所定の端部を密封シールしてイージーピール性を有するシール部を形成するとともに前記底部の反対側に位置する前記シール部から延在する前記シート基材の部分を把持部とした包装体であって、
使用時には、前記把持部のシール部を剥離して開封した後、残りの2方のシール部を総て開封して前記被包装物を粘着した一枚のシート基材の状態として使用に供することを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項3記載の発明は、請求項1あるいは請求項2記載のイージーピール性を有する包装体の製造方法であって、
必要に応じて無菌雰囲気中で、一枚のシート基材を折り畳んで両面を重ね合わせ、底部を形成する折目の反対側に位置する所定の端部をシールしてイージーピール性を有するシール部を形成し、かつ前記シール部から延在する前記シート基材の部分を把持部として縦長の筒状物を形成するとともに、残りの一端をシールしてイージーピール性を有するシール部を形成した後、
前記筒状物の未シールの開口部から、必要に応じて無菌処理し、液状とした常温で可塑性または糊状の被包装物を適量供給しつつ、所定の間隔で前記筒状物を横切る方向にシールしてイージーピール性を有するシール部を形成して密封することを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項4記載の発明は、請求項2記載のイージーピール性を有する包装体の製造方法であって、
無菌雰囲気中で、シール部となる箇所以外の所定の箇所に、必要に応じて無菌処理した常温で可塑性または糊状の被包装物からなる層を形成した一枚のシート基材を前記層を内側にして折り畳んで両面を重ね合わせ、底部を形成する折目の反対側に位置する所定の端部をシールしてイージーピール性を有するシール部を形成し、かつ前記シール部から延在する前記シート基材の部分を把持部として縦長の筒状物を形成し、所定の間隔で残りの二端をシールしてイージーピール性を有するシール部を形成して密封することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の請求項1に記載のイージーピール性を有する包装体は、一枚のシート基材を折り畳んで両面を重ね合わせ、底部を形成する折目以外の3方の所定の端部を密封シールしてイージーピール性を有するシール部を形成するとともに前記底部の反対側に位置する前記シール部から延在する前記シート基材の部分を把持部とした包装体内部に、必要に応じて無菌処理した常温で可塑性または糊状の被包装物を収納した包装体であって、
使用時には、前記把持部のシール部を剥離して開封した後、残りの2方のシール部を総て開封して前記シート基材を前記被包装物の支持体とした状態で、前記支持体上に置かれた前記被包装物を取出すように構成したことを特徴とするものであり、
常温で可塑性または糊状の被包装物が食品など腐敗する恐れのある場合は、必要に応じて無菌処理したものを、無菌雰囲気中で包装するので、常温で流通させることができる。
食品、医薬品、漢方薬品、化粧品、飼料、肥料、農薬、接着剤、塗料などの常温で可塑性または糊状の被包装物を密封包装したので保存、運搬などの取り扱い時に、保護できるとともに、シール部がイージーピール性を有するので使用時には、前記把持部を手で持ってシール部を容易に剥離して開封でき、そしてシール部を総て開封する際に、不所望の箇所から裂け目が生じたり、常温で可塑性または糊状の被包装物が変形したり崩れたりせず、包装体の製造に使用したシート基材を被包装物の支持体(例えば、受け皿、容器など)とし、その支持体の上に置かれた状態で被包装物を取出すことができ、被包装物が食品であれば食に供したり、被包装物が医薬品であれば医療に供したりできる、という顕著な効果を奏する。
【0013】
本発明の請求項2に記載のイージーピール性を有する包装体は、シール部となる箇所以外の所定の箇所に、必要に応じて無菌処理した常温で可塑性または糊状の被包装物が粘着した一枚のシート基材を前記被包装物を内側にして折り畳んで両面を重ね合わせ、底部を形成する折目以外の3方の所定の端部を密封シールしてイージーピール性を有するシール部を形成するとともに前記底部の反対側に位置する前記シール部から延在する前記シート基材の部分を把持部とした包装体であって、
使用時には、前記把持部のシール部を剥離して開封した後、残りの2方のシール部を総て開封して前記被包装物を粘着した一枚のシート基材の状態として使用に供することを特徴とするものであり、
常温で可塑性または糊状の被包装物が食品など腐敗する恐れのある場合は、必要に応じて無菌処理したものを、無菌雰囲気中で包装するので、常温で流通させることができる。
別に作成した箱やケースや袋などの中に入れなくても、食品、医薬品、漢方薬品、化粧品、飼料、肥料、農薬、接着剤、塗料などの常温で可塑性または糊状の被包装物を前記シート基材に粘着して密封包装したので、保存、運搬などの取り扱い時に、保護できるとともに、シール部がイージーピール性を有するので、使用時には、前記把持部を手で持ってシール部を容易に剥離して開封でき、そしてシール部を総て開封する際に、不所望の箇所から裂け目が生じたりせず、前記被包装物を変形させたり崩れさせたりせずに、包装体の製造に使用したシート基材の所定の箇所に前記被包装物を粘着した一枚のシート基材が得られるので、被包装物が例えば、鎮痛剤、消炎剤などの医薬品であれば膏薬として身体の患部に貼るなどしてすぐに使用できる、という顕著な効果を奏する。
【0014】
本発明の請求項3記載の発明は、請求項1あるいは請求項2記載のイージーピール性を有する包装体の製造方法であって、請求項1あるいは請求項2記載のイージーピール性を有する包装体を容易に製造できる、という顕著な効果を奏する。
【0015】
本発明の請求項4記載の発明は、請求項2記載のイージーピール性を有する包装体の製造方法であって、請求項2記載のイージーピール性を有する包装体をより容易に製造できる、という顕著な効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に本発明を図を用いて実施の形態に基づいて詳細に説明する。
[第1の実施態様]
図1(イ)、(ロ)、(ハ)は、本発明のイージーピール性を有する包装体の1例を説明する説明図である。
【0017】
図1(イ)に示したように、本発明のイージーピール性を有する包装体1は、一枚のシート基材2を底部を形成する折目3で折り畳んで両面を重ね合わせ、底部3以外の3方の所定の端部を密封シールしてイージーピール性を有するシール部4−1、4−2、4−3を形成するとともに、前記底部3の反対側に位置する前記シール部4−2から延在する前記シート基材2の部分が把持部5として構成されている。
そして包装体1内部には、常温で可塑性または糊状の被包装物6(食品など腐敗する恐れのある場合は、無菌処理した被包装物6)が密封包装されて収納されている。
なお本発明のイージーピール性を有する包装体とは、JISZ−D238に従ってシール部の剥離強度を測定した時、剥離強度が0.3〜0.8kg/15mmであるものをいう。剥離強度が0.3kg/15mm未満では保存、運搬などの取り扱い時に、被包装物を保護できない恐れがあり、剥離強度が0.8kg/15mmを越えると、使用時に開封する際に、不所望の箇所から裂け目が生じたり、被包装物が変形したり崩れたりする恐れがある。
【0018】
図1(ロ)に示したように、本発明の包装体1を使用する際には、前記把持部5を手で持ってシール部4−2を剥離する。
把持部5の7は、把持部5の所定の位置に所定の数だけ形成したイージーピール性を有する補助シール部である。
【0019】
三角形状に形成されている補助シール部7は、把持部5を手で持ってシール部4−2を剥離する際に、力が分散せず、力はまず補助シール部7に集中して作用して剥離されるように構成されており、補助シール部7が剥離されると、次いで力がシール部4−2全体に均一に作用してシール部4−2を均一に剥離できるようになっている。
このように構成すると、不所望の箇所から裂け目が生じることがなく、シール部4−2を容易に剥離して開封することができる。
【0020】
そして、開封後、前記把持部5の一端を手で持ってそのまま続けて外側に開くと、力がシール部4−1、4−3全体に均一に作用するので、シール部4−1、4−3を剥離できる。
このようにするとシール部を総て開封する際に、不所望の箇所から裂け目が生じたり、常温で可塑性または糊状の被包装物6が変形したり崩れたりしない。
【0021】
図1(ハ)に示したように、シート基材2が被包装物6の支持体(例えば、受け皿、容器、基材など)となった状態となる。すなわち支持体上に置かれた状態で被包装物6を取出すことができる。
【0022】
被包装物6が食品であればそのまま食に供することができる。被包装物6が医薬品や医療用培養物などであれば、そのまま摂取したり、患部に適用したり、塗布したり、あるいは再加熱して医療に供したりできる。被包装物6が化粧品、飼料、肥料、農薬、接着剤、塗料などである場合もそれぞれ目的に応じて使用することができる。
【0023】
被包装物6の形状や大きさなどは、図1に示した形状や大きさに限定されるものではなく、被包装物6の種類やその使用目的などに応じて無定形状のものを含めてそれぞれ制御して形成することができる。
【0024】
図1(ハ)に示した被包装物6は、シール部を総て開封した時に折目(底部)3の左側のシート基材2上に置かれた例を示したが、例えば折目(底部)3の左側のシート基材2上に油やシリコ−ンなどの剥離剤を予め塗布するなどしておくことにより、被包装物6が折目(底部)3の右側のシート基材2上に置かれた状態で取出すようにすることも可能である。
図1(ハ)に示したように、シール部を総て開封した時、被包装物6がシート基材2の左側に必ずくるようにするためには、シート基材2の左側の表面に例えば粘着性を有するポリマー材料を積層しておき、シート基材2の右側の表面に例えば剥離剤を塗布しておくことができる。
【0025】
以上のように、シート基材2の表面に対する被包装物6の粘着性を調整し、被包装物6がシート基材2の表面に対して粘着し易くしたり、あるいは逆に被包装物6がシート基材2の表面に対して非粘着性にするなどのために、マット処理、コロナ処理などの表面処理を利用する他に、少なくとも被包装物6が接するシート基材2の表面に公知の手段を用いて剥離剤、油剤、ポリマーなどを塗布、積層する。例えばポリテトラフルオロエチレン製シート、シリコン系樹脂製シート、シリコン系剥離剤含浸シートなどを積層するなどして適用したり、被包装物6に対して親和性、粘着性、接着性を有する材料、ポリマーなどを塗布、積層するなどして適用したりすることができる。
【0026】
本発明の被包装物は常温で可塑性または糊状のものであればよく、特に限定されるものではない。具体的には、例えば、食品、医薬品、漢方薬品、化粧品、飼料、肥料、農薬、接着剤、塗料などを挙げることができる。
本発明で用いる常温で可塑性の被包装物とは、常温では保形性を有する固体あるいは半固体であって所定の形状を保持するが、常温を超える所定の温度で加熱すると流動性を有する液体となるかあるいは液状化する被包装物である。
本発明で用いる常温で糊状の被包装物とは、常温で糊状であって難流動性を示しその形状が保持されるが、常温を超える所定の温度で加熱すると流動性を有する液体となるかあるいは液状化する被包装物である。
したがって、本発明で用いる常温で可塑性または糊状の被包装物を包装する際には、後述するように常温を超える所定の温度で加熱して流動性を有する液体とするかあるいは液状化して容易に自動包装したりあるいは手作業で包装を行うことができる。
しかし、本発明で用いる常温で可塑性または糊状の被包装物の包装方法はこれに限定されるものではなく、例えば、本発明で用いる常温で可塑性または糊状の被包装物を所定の形状に成形したものを公知の方法で包装することもできる。
食品としては、具体的には、例えば、グミ、ゼリー、生キャラメル、チーズなどを挙げることができる。
医薬品としては、具体的には、例えば、シップ剤、軟膏、などを挙げることができる。
化粧品としては、具体的には、例えば、石けん、各種クリーム、コラーゲン、パック剤、脱毛剤などを挙げることができる。
飼料としては、具体的には、例えば、甲虫、鈴虫などの餌、牛の餌などを挙げることができる。
肥料としては、具体的には、例えば、ゲル状肥料、鉢の上に置くシート、幹に貼り付けるシートなどを挙げることができる。
農薬としては、具体的には、例えば、果実、樹幹、樹枝の表面に貼り付けるシートなどを挙げることができる。
接着剤としては、具体的には、例えば、ハエ取り粘着剤、ガラス破損防止シート、自動車ガラス破損防止シートなどを挙げることができる。
塗料としては、具体的には、例えば、チキソトロピー性塗料、などを挙げることができる。
【0027】
これらの常温で可塑性または糊状の被包装物が食品、化粧品、接着剤など腐敗する恐れのある場合は、例えば90℃以上の温度で3分間熱処理したり、レトルト殺菌するなどの公知の方法、装置を用いて無菌処理したものを使用することが好ましい。
そして無菌処理したものを雰囲気中で包装することが好ましい。
このようにすることにより被包装物が食品などであっても常温で流通させることができる。
【0028】
本発明の包装体1のシート基材2を構成するプラスチック製シートの構成は特に限定されるものではないが、2〜4層構造のものを例示することができる。
2層構造のものとしては、例えば外側層が厚さ15μm程度のポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルフィルム、2軸延伸ポリプロピレンフィルムなどで、被包装物と接する内側層が厚さ50μm程度のポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリオレフィン系エラストマー、ポリプロピレンなどのポリオレフィンフィルムからなるものを挙げることができる。
【0029】
これらの中でも、内側層として無延伸ポリプロピレンフィルムを用いると、ヒートシールして得られるシール部がイージーピール性に優れるので本発明において特に好ましく使用できる。
【0030】
3層構造のものとしては、例えば外側層がポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルフィルム、2軸延伸ポリプロピレンフィルムなどで、内側層がポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリオレフィン系エラストマー、ポリプロピレンなどのポリオレフィンフィルムからなり、内側層のなかでシール部を除き被包装物と接する部分にアルミニウム箔やアルミニウム蒸着層などのバリヤー層を積層したものを挙げることができる。内側層として無延伸ポリプロピレンフィルムを用いると、ヒートシールして得られるシール部がイージーピール性に優れるので本発明において特に好ましく使用できる。
アルミニウム箔やアルミニウム蒸着層を設けると、光や酸素に対するバリヤー性が向上し長期常温流通性が一層向上する。
【0031】
4層構造のものとしては、例えば外側層がポリエチレンテレフタレートフィルム、外側中間層がアルミニウム箔、内側中間層がポリアミドフィルム、内側層がポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリオレフィン系エラストマー、ポリプロピレンなどのポリオレフィンフィルムから選ばれるもの、を挙げることができる。内側層として無延伸ポリプロピレンフィルムを用いると、ヒートシールして得られるシール部がイージーピール性に優れるので本発明において特に好ましく使用できる。
【0032】
上記の2〜4層構造のものはいずれも各層間はドライラミネートで積層したものであるが、ホットラミネートなど従来公知または周知の技術による方法で積層しても差し支えない。
【0033】
これらの合成フィルムを用いる場合には接着性、印刷性などを改善するために基材の表面をマット処理、コロナ処理などの表面処理を施したり、印刷性などをさらに改善するためにコート層を設けたりするのが好ましい。
【0034】
図3は、図1に示した本発明のイージーピール性を有する包装体1を製造する装置の1例を説明する説明図である。
外側層の厚さ15μm程度の2軸延伸ポリプロピレンフィルムに、被包装物と接する内側層が厚さ50μm程度の無延伸ポリプロピレンフィルムを接着剤を使用してドライラミにより積層した3層構成からなるシート基材2を巻取りロ−ル11から供給し、段差ロ−ル12、12・・・を介してその供給を調整しながらガイドロ−ル13に案内する。
【0035】
ガイドロ−ル13に案内されたシート基材2を図示しない三角板を通してイ−ジ−ピ−ル性を有するヒ−ト−ル部を形成する内側層の無延伸ポリプロピレンフィルムの面を対向させるために2つ折りにし、さらに2つ折りにしたシート基材2を案内するガイド枠14を通って、一対の縦シ−ル用ロ−ル15に供給する。 この一対の縦シ−ル用ロ−ル15により、2つ折りにしたシート基材2の折目3の反対側に位置する所定の端部を加熱加圧してサイドシールしてイージーピール性を有するシール部4−2および図示しない補助シール部7を形成し、かつシール部4−2から延在するシート基材2の部分を把持部5として縦長の筒状物を形成する。
【0036】
次いでこの縦長の筒状物を1対の横シ−ル用ロ−ル16に供給し、この一対の横シ−ル用ロ−ル16により加熱加圧して、縦長の筒状物の一端を横シールしてイージーピール性を有する横シール部19を形成する。
そして、必要に応じて無菌処理し、液状とした被包装物を充填ノズル17から、シール部4−2および図示しない補助シール部7を形成し、かつ横シールして横シール部19を形成した前記筒状物の未シールの開口部を経て連続的に適量供給して充填する。
【0037】
そして液状とした被包装物を筒状物の未シールの開口部を経て連続的に供給しながら充填し、あわせてサイドシールしてシール部4−2を形成するのと横シールして横シール部19を形成するのを同期して順次繰り返して形成する。
そして、一対の横シール用ロ−ル16に類似の構造を有する一対のロ−ル18にて加圧しながら被包装物を賦形するとともにシール部を冷却し、しかる後に図示しない冷却水を入れた水槽中に通して全体を冷却する。
【0038】
その後、図示しないカッタ装置を用いて各シール部19の中心部を切断して、イージーピール性を有するシール部4−1および4−3を形成し、被包装物6を収容した包装体1を得ることができる。
【0039】
[第2の実施態様]
図2(イ)、(ロ)、(ハ)は、本発明の他のイージーピール性を有する包装体を説明する説明図である。
図2(イ)、(ロ)、(ハ)において、図1(イ)、(ロ)、(ハ)に示した構成部分と同じ構成部分には同一参照符号を付すことにより、重複した説明を省略する。
【0040】
図2(イ)は本発明のイージーピール性を有する包装体1Aを説明する説明図である。
図2(イ)に示したように、本発明のイージーピール性を有する包装体1Aは、一枚のシート基材2を底部を形成する折目3で折り畳んで両面を重ね合わせ、底部3以外の3方の所定の端部を密封シールしてイージーピール性を有するシール部4−1、4−2、4−3を形成するとともに、前記底部3の反対側に位置する前記シール部4−2から延在する前記シート基材2の部分が把持部5として構成されている。
【0041】
図2(ハ)に示したように、折目3より左側のシート基材2の上のシール部4−1、4−2、4−3となる箇所以外の所定の箇所に常温で可塑性または糊状の被包装物からなる層6Aが粘着して形成されており、折目3より右側のシート基材2のシール部4−1、4−2、4−3となる箇所以外の表面には剥離剤8がコートされており、層6Aは形成されていない。
本発明の包装体1Aは以上のように構成した以外は、図1(イ)、(ロ)、(ハ)に示した包装体1と同様になっている。
【0042】
本発明の包装体1Aを図1に示した包装体1の場合と同様にしてすべてのシール部を剥離すると、不所望の箇所から裂け目が生じたり、被包装物からなる層6Aが変形したり崩れたりしないで、図2(ハ)に示したように、折目3より左側のシート基材2の上の被包装物からなる層6Aが粘着して形成されており、折目3より右側のシート基材2の表面には層6Aが形成されていない状態で、シート基材2の左側が被包装物6Aの支持体(例えば、基材)となった状態で、すなわち支持体上に置かれた状態で被包装物6Aが現れる。
【0043】
被包装物6Aが食品であればそのまま食に供したり、被包装物6Aが鎮痛剤、消炎剤などの医薬品であれば膏薬として身体の患部に貼るなどしてすぐに医療に供することができる。
【0044】
本発明の包装体1Aを製造するには、例えば、前記の外側層の厚さ15μm程度の2軸延伸ポリプロピレンフィルムに、被包装物と接する内側層が厚さ50μm程度の無延伸ポリプロピレンフィルムを接着剤を使用してドライラミにより積層した3層構成からなるシート基材2であって、このシート基材2の表面の所定の箇所(すなわち、折目3より右側のシート基材2のシール部4−1、4−2、4−3となる箇所以外の箇所)に剥離剤8がコートされているシート基材2を用いる以外は、図3に示した装置を用いて本発明の包装体1の製造法と同様にして製造することができる。
【0045】
上記実施の形態の説明は、本発明を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或は範囲を減縮するものではない。又、本発明の各部構成は上記実施の形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。
【実施例】
【0046】
以下実施例および比較例を示して本発明を説明するが、本発明の主旨を逸脱しない限り本発明は実施例に限定されるものではない。
【0047】
(実施例1)
糖質として酵素糖化水飴20.95質量部、砂糖21.3質量部を混合して十分量の水を加え煮詰め温度110℃まで加温する。そこに全脂加糖練乳8.4質量部、生クリーム41.9質量部、大豆レシチン0.4質量部、食塩0.05質量部を加え更に温度120℃まで加熱する。そして、香料を適量加え、80℃まで冷却して、常温で可塑性を有する生キャラメル(被包装物)を調製した。
【0048】
図3に示した装置として(株)コマックERL−1300を用いて図1に示す本発明の包装体を製造した。被包装物は無菌処理し、無菌雰囲気中で包装を行った。
シート基材2として(PET#12/DL/VMPET#12/DL/CPP#40(内側層となるCPP#40は厚さ40μmの無延伸ポリプロピレンフィルムであり、接着剤を使用してドライラミDLにより積層した5層構成からなる)シート基材2を用い、シート基材2を巻取りロ−ル11から供給し(回転数300r.p.m)、段差ロ−ル12、12・・・を介してその供給を調整しながらガイドロ−ル13に案内した。
【0049】
ガイドロ−ル13に案内されたシート基材2を図示しない三角板を通してイ−ジ−ピ−ル性を有するヒ−ト−ル部を形成する内側層の面を対向させるために2つ折りにし、さらに2つ折りにしたシート基材2を案内するガイド枠14を通って、一対の縦シ−ル用ロ−ル15に供給し、この一対の縦シ−ル用ロ−ル15により、2つ折りにしたシート基材2の折目3の反対側に位置する所定の端部を加熱(165℃)加圧してサイドシールしてイージーピール性を有するシール部4−2および図示しない補助シール部7を形成し、かつシール部4−2から延在するシート基材2の部分を把持部5として縦長の筒状物を形成した。
【0050】
次いでこの縦長の筒状物を1対の横シ−ル用ロ−ル16に供給し、この一対の横シ−ル用ロ−ル16により加熱(163℃)加圧して、縦長の筒状物の一端を横シールしてイージーピール性を有する横シール部19を形成した。
そして加熱して液状とした被包装物を充填ノズル17から、シール部4−2および図示しない補助シール部7を形成し、かつ横シールして横シール部19を形成した前記筒状物の未シールの開口部を経て連続的に適量供給して充填した。
【0051】
そして液状とした被包装物を筒状物の未シールの開口部を経て連続的に供給しながら充填し、あわせてサイドシールしてシール部4−2を形成するのと横シールして横シール部19を形成するのを同期して順次繰り返して形成した。
そして、一対の横シール用ロ−ル16に類似の構造を有する一対のロ−ル18にて加圧しながら被包装物を賦形するとともにシール部を冷却し、しかる後に図示しない冷却水を入れた水槽中に通して全体を冷却した。
その後、図示しないカッタ装置を用いて各シール部19の中心部を切断して、イージーピール性を有するシール部4−1および4−3を形成し、被包装物6を収容した包装体1を製造した。
【0052】
(実施例2)
シート基材2として、PET#12/DL/CPP#40(内側層となるCPP#40は厚さ40μmの無延伸ポリプロピレンフィルムであり、接着剤を使用してドライラミDLにより積層した3層構成からなる)シート基材2を用い、シート基材2の供給を回転数200r.p.mで行い、横シ−ル温度145℃とした以外は実施例1と同様にして包装体1を製造した。
【0053】
実施例1、2で製造した包装体は、常温で流通させることができる上、被包装物を密封包装したので保存、運搬などの取り扱い時に、保護できるとともに、使用時には、前記把持部を手で持ってシール部を容易に剥離して開封でき、そしてシール部を総て開封する際に、不所望の箇所から裂け目が生じたり、被包装物が変形したり崩れたりせしなかった。そして、包装体の製造に使用したシート基材を被包装物の支持体(受け皿)とした状態で被包装物を取出すことができ、被包装物を食に供することができた。
【0054】
(比較例1)
シート基材2として、PET#12/DL/LDPE#40(内側層となるLDPE#40は厚さ40μmの低密度ポリエチレンであり、接着剤を使用してドライラミDLにより積層した3層構成からなる)シート基材2を用い、シート基材2の供給を回転数200r.p.mで行い、縦シ−ル温度200℃、横シ−ル温度200℃とした以外は実施例1と同様にして包装体1を製造した。
【0055】
比較例1で製造した包装体は、被包装物の保存、運搬、保護については実施例1、2で製造した包装体と同等であったが、各シール部は十分にヒートシールされていてイージーピール性を有していないので、前記把持部を手で持ってシール部を剥離して開封する際に、不所望の箇所から裂け目が生じ、被包装物が変形して崩れた。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明のイージーピール性を有する包装体は、被包装物が食品など腐敗する恐れのある場合は、必要に応じて無菌処理したものを、無菌雰囲気中で包装するので、常温で流通させることができる上、被包装物を密封包装したので保存、運搬などの取り扱い時に、保護できるとともに、シール部がイージーピール性を有するので、使用時には、前記把持部を手で持ってシール部を容易に剥離して開封でき、不所望の箇所から裂け目が生じたり、被包装物が変形したり崩れたりせず、シート基材を被包装物の支持体(例えば、受け皿、容器など)とした状態で被包装物を取出すことができ、被包装物が食品であれば食に供したり、被包装物が医薬品であれば医療に供したりできる、という顕著な効果を奏するので、産業上の利用価値が高い。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】(イ)、(ロ)、(ハ)は、本発明のイージーピール性を有する包装体を説明する説明図である。
【図2】(イ)、(ロ)、(ハ)は、本発明の他のイージーピール性を有する包装体を説明する説明図である。
【図3】本発明のイージーピール性を有する包装体を製造する装置の1例を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0058】
1、1A イージーピール性を有する包装体
2 シート基材
3 折目(底部)
4−1、4−2、4−3 イージーピール性を有するシール部
5 把持部
6 被包装物
6A 被包装物からなる層
7 補助シール部
8 剥離剤コート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一枚のシート基材を折り畳んで両面を重ね合わせ、底部を形成する折目以外の3方の所定の端部を密封シールしてイージーピール性を有するシール部を形成するとともに前記底部の反対側に位置する前記シール部から延在する前記シート基材の部分を把持部とした包装体内部に、必要に応じて無菌処理した常温で可塑性または糊状の被包装物を収納した包装体であって、
使用時には、前記把持部のシール部を剥離して開封した後、残りの2方のシール部を総て開封して前記シート基材を前記被包装物の支持体とした状態で、前記支持体上に置かれた前記被包装物を取出すように構成したことを特徴とするイージーピール性を有する包装体。
【請求項2】
シール部となる箇所以外の所定の箇所に、必要に応じて無菌処理した常温で可塑性または糊状の被包装物が粘着した一枚のシート基材を前記被包装物を内側にして折り畳んで両面を重ね合わせ、底部を形成する折目以外の3方の所定の端部を密封シールしてイージーピール性を有するシール部を形成するとともに前記底部の反対側に位置する前記シール部から延在する前記シート基材の部分を把持部とした包装体であって、
使用時には、前記把持部のシール部を剥離して開封した後、残りの2方のシール部を総て開封して前記被包装物を粘着した一枚のシート基材の状態として使用に供することを特徴とするイージーピール性を有する包装体。
【請求項3】
請求項1あるいは請求項2記載のイージーピール性を有する包装体の製造方法であって、
必要に応じて無菌雰囲気中で、一枚のシート基材を折り畳んで両面を重ね合わせ、底部を形成する折目の反対側に位置する所定の端部をシールしてイージーピール性を有するシール部を形成し、かつ前記シール部から延在する前記シート基材の部分を把持部として縦長の筒状物を形成するとともに、残りの一端をシールしてイージーピール性を有するシール部を形成した後、
前記筒状物の未シールの開口部から、必要に応じて無菌処理し、液状とした常温で可塑性または糊状の被包装物を適量供給しつつ、所定の間隔で前記筒状物を横切る方向にシールしてイージーピール性を有するシール部を形成して密封することを特徴とするイージーピール性を有する包装体の製造方法。
【請求項4】
請求項2記載のイージーピール性を有する包装体の製造方法であって、
無菌雰囲気中で、シール部となる箇所以外の所定の箇所に、必要に応じて無菌処理した常温で可塑性または糊状の被包装物からなる層を形成した一枚のシート基材を前記層を内側にして折り畳んで両面を重ね合わせ、底部を形成する折目の反対側に位置する所定の端部をシールしてイージーピール性を有するシール部を形成し、かつ前記シール部から延在する前記シート基材の部分を把持部として縦長の筒状物を形成し、所定の間隔で残りの二端をシールしてイージーピール性を有するシール部を形成して密封することを特徴とするイージーピール性を有する包装体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−111402(P2010−111402A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−283284(P2008−283284)
【出願日】平成20年11月4日(2008.11.4)
【出願人】(592113809)カバヤ食品株式会社 (6)
【出願人】(508329302)株式会社コマック (4)
【Fターム(参考)】