説明

ウィルス感染の治療

本発明は、TRAILリガンド/TRAILレセプター系の阻害剤の、ウィルス性疾患の予防又は治療のための、殊にインフルエンザ又はボルナ病のウィルス感染の予防又は治療のための、医薬品を製造するための使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、TRAILリガンド/TRAILレセプター系の阻害剤の、ウィルス性疾患の予防又は治療のための、殊にインフルエンザ又はボルナ病のウィルス感染の予防又は治療のための医薬品を製造するための使用に関する。
【0002】
HIV−1、HTLV−1、B型肝炎及びC型肝炎ウィルス、EBV、VSV及びインフルエンザウィルスを含む、ウィルスの複数のファミリーによってNF−κBは活性化される。前記ウィルスのうちのいくつか、例えばレトロウィルス又はがんウィルスにとっては、前記転写因子の活性化がウィルス複製を援助する可能性がある一方で、RNAウィルス、例えばVSV又はインフルエンザウィルスによって感染すると、NF−κBは抗ウィルス的に作用することが一般的な見方である2、3。RNAウィルス感染は一般に、I型インターフェロン(IFNs)によって媒介される先天性抗ウィルス反応の活性化を生じる。前記抗ウィルスプログラムはIFNβ遺伝子のウィルスによる誘導により、構成的に発現した転写因子、即ちAP−1、IRF−3及びNF−κBを通して開始される。IFNβの他に、炎症及び免疫反応の誘導に関連したその他の遺伝子も、NF−κBによって調節されていて、例えばIL−6、TNF−α又はIL−12である。従って、IFNβ、IL−6及びIL−12のVSVにより誘導された発現は、NF−κBアクチベーター、IκBキナーゼ2(IKK2)を欠失した細胞において欠損している
【0003】
ウィルス増殖へのNF−κB干渉のその他のレベルは、アポトーシスを調節するその能力を通してである。NF−κBは主として、抗アポトーシス遺伝子、例えばBcl−XL、A20、又はclAPsを上方調節させることによる、生存因子であると考えられている5、6。しかし、NF−κBはある種の状況下では、例えばデス誘導CD95リガンド及びそのレセプターの上方調節により、アポトーシス促進的に作用するとも報告された5、6。このように、NF−κBによるアポトーシスの、状況に応じた調節の概念が生じた。例えば、デングウィルス感染HepG2肝細胞はNF−κB依存的にアポトーシスを経るが、一方でC型肝炎ウィルスコアタンパク質によって誘導されたNF−κB活性化は、同じ細胞系において細胞をアポトーシスから保護する
【0004】
NF−κB依存性反応の一般的なウィルスのインドューサーは二本鎖RNA(dsRNA)のようである。ほとんどのRNAウィルスは、細胞が危険信号と感知する可能性がある、共通した分子的なパターンを表示するdsRNA様複製中間体を産生する
【0005】
インフルエンザウィルス又はインフルエンザウィルス産物によるIκBキナーゼ(IKK)及びNF−κBの活性化はよく記録されている10〜13が、しかし、このシグナリングモジュールの機能はウィルス感染細胞においては未だ明らかでない。これまでの知識は、ウィルスの非構造タンパク質1(NS1)の完全なコード領域の欠失を有する、delNS1と名付けられたリコンビナントウィルスで得られたデータに限られている14。インフルエンザdelNS1ウィルスでの細胞の感染は、促進されたNF−κB活性化及びIFNβ産生と同様に促進されたアポトーシスも生じ15、NS1タンパク質は、前記の推定上の抗ウィルス性反応の少なくとも部分的なアンタゴニストであることを示唆する。それにもかかわらず、感染の結果のための、インフルエンザウィルス誘導NF−κB活性化の重要性は未だに直接的に述べられてはいない。
【0006】
本出願によれば、NF−κB依存的なウィルスによる誘導はアポトーシス促進因子TRAILを介して媒介され、前記TRAILは、オートクリン及びパラクリン様式において、特にインフルエンザウィルス感染の状況において、ウィルス増殖を促進する。
【0007】
本発明の第1の観点は、TRAILリガンド/レセプター系の阻害剤の、ウィルス感染の治療のため、特にRNAウィルス、例えばマイナス鎖RNAウィルス、例えばインフルエンザウィルス及びボルナ病ウィルスによって引き起こされるウィルス感染の治療のための医薬品を製造するための使用に関する。とりわけ有利には、インフルエンザウィルス感染の予防又は治療である。TRAILリガンド/TRAILレセプター阻害剤は、ヒト又は家畜又は野生動物、例えば馬又は羊におけるウィルス感染の予防又は治療のために使用される。本発明の阻害剤は、ウィルス感染の予防及び/又は急性又は慢性的なウィルス感染の治療のために投与されてよい。
【0008】
本発明の有利な実施態様においては、阻害剤はTRAIL(TRAILリガンドAPO−2)阻害剤である。例えばTRAIL阻害剤は、
(a)阻害性の抗TRAIL抗体、又は前記抗体のフラグメント、及び
(b)可溶性のTRAILレセプター分子、又は前記分子のTRAIL結合部
から選択されてよい。
【0009】
有利には、阻害性の抗TRAIL抗体、及び前記抗体の抗原結合フラグメント及び可溶性TRAILレセプター分子又は前記分子のTRAILリガンド結合部である。適した抗TRAIL抗体の例は、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体又はヒト抗体、又は抗体フラグメント、例えばタンパク質分解性フラグメント又はリコンビナント一本鎖フラグメントである。前記抗体はこの分野で公知の免疫化及び選択方法によって得られてよい。更に有利には、可溶性TRAILレセプター分子、例えば膜貫通ドメインを有しない可溶性TRAILレセプター分子28、又はTRAILに結合することが可能なTRAILレセプターペプチドである。
【0010】
TRAILレセプター分子は、TRAILレセプター−1(TRAIL−R1、DR4)、TRAILレセプター−2(TRAIL−R2、Apo2、DR5、KILLER、TRICK2a、TRICK2b)、TRAILレセプター−3(DCR1)、TRAILレセプター−4(DCR2、TRUND)及びOPG(オステオプロテゲリン)から選択されてよい。有利には、TRAILレセプター−1及びTRAILレセプター−2、より有利にはTRAILレセプター−2である。TRAILレセプターは、WO98/32856、WO98/35986、WO98/41629、WO99/10484、WO00/66156及び参考文献28に記載されていて、これらは引用によって本発明に組み込まれる。本発明は、上記した複数のTRAILレセプターの組み合わせた使用を含んでもよい。
【0011】
とりわけ有利には、TRAILレセプター分子の細胞外ドメインを含有するTRAIL阻害剤である。前記細胞外ドメインは、異種ポリペプチドドメイン、特にCH2及びCH3ドメイン及び場合によってヒンジ領域を含むFc免疫グロブリン分子、例えばヒトIgG分子からのFc免疫グロブリン分子に場合によって融合している。
【0012】
本発明の更なる実施態様においては、阻害剤は、
(a)阻害性の抗TRAILレセプター抗体、又は前記抗体のフラグメント、及び
(b)阻害性のTRAILフラグメント
から選択されてよいTRAILレセプター阻害剤である。
【0013】
適した阻害性の抗TRAILレセプター抗体の例、例えばTRAILレセプター−1、TRAILレセプター−2、TRAILレセプター−3、TRAILレセプター−4に対する抗体又はOPG、及び阻害性のTRAILリガンドフラグメントはWO98/35986、WO99/10484、WO00/73349、参考文献31及び参考文献32に記載されていて、これらは引用によって本発明に組込まれる。抗体はモノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体又はヒト抗体、又はタンパク質分解性又はリコンビナント抗体フラグメントであってよい。特に有利には、抗TRAIL R1抗体及び抗TRAIL R2抗体である。
【0014】
更なる実施態様においては阻害剤は、TRAILレセプター−1又はTRAILレセプター−2のデスドメインとFADDのデスドメインとの相互作用を阻害してよい。適した阻害剤の例は、TRAIL−R1、TRAIL−R2又はFADDのデスドメインに特異的に指向した抗体又はフラグメントである。その上、阻害剤はFADDのデスエフェクタードメインとカスパーゼ−8及び/又はカスパーゼ10との相互作用を阻害してよく、これによりデスレセプター、例えばTRAILレセプターにより誘導された過程、例えばアポトーシスの過程を阻害してよい。これに関連して、参考文献33及びこれに引用された参考文献が参照される。
【0015】
本発明のまた更なる実施態様においては、阻害剤は核酸エフェクター分子である。核酸エフェクター分子はアンチセンス分子、RNAi分子及びリボザイムから選択されてよく、これらは少なくとも一つのTRAILレセプター遺伝子及び/又はTRAILリガンド遺伝子の発現を阻害してよい。
【0016】
更なる実施態様においては、阻害剤は細胞内のTRAILレセプターシグナル伝達に指向してよく、例えばTRAILレセプターシグナル伝達の特異的な阻害剤又はアポトーシスシグナル伝達の一般的な阻害剤であってよい。前記細胞内阻害剤の例は、アポトーシス阻害剤、特に細胞内アポトーシス阻害剤、例えばカスパーゼ阻害剤、例えばカスパーゼ−3、カスパーゼ−8又はカスパーゼ−10阻害剤、Bid阻害剤、Bax阻害剤、又はこれらの全ての組み合わせから選択される。適した阻害剤の例は、一般的なカスパーゼ阻害剤、例えば、WO02/094263、WO01/10383、WO01/42216、WO01/90070、WO01/94351、WO01/21600、WO00/61542、WO99/47545、ジペプチド阻害剤(WO99/47154)、カルバマート阻害剤(WO01/72707)、置換されたアスパラギン酸アセタール(WO01/81330)、ヘテロサイクリルジカルバミド(heterocyclyldicarbamides)(WO02/085899)、キノリン−(ジペプチド、トリペプチド、テトラペプチド)誘導体(US200126467)、置換された2−アミノベンズアミドカスパーゼ阻害剤(WO00/55114)、置換されたα−ヒドロキシ酸カスパーゼ阻害剤(WO01/16093)、ニトロシル化による阻害(WO98/43621);CASP−1:(WO02/000853;CASP−3:タンパク質阻害剤(WO02/066050)、アンチセンス分子(WO01/53310)、ニコチニル−アスパルチル−ケトン(WO01/27085)、γ−ケト酸ジペプチド誘導体(WO02/48179、WO00/32620、WO00/55127)、CASP−8:アンチセンス分子(WO01/53541)、相互作用タンパク質(WO00/39160) CASP−9:アンチセンスモジュレーター(WO02/22641);CASP2:アンチセンス分子(WO02/24720);CASP−6:アンチセンス分子(WO02/29066);CASP−7:アンチセンス分子(WO02/22640);CASP−12阻害剤:WO00/59924、これらは引用によって本発明に組み込まれる。更なる例は、ミトコンドリアの阻害剤、例えばBcl−2調節因子(WO02/097094);Bad由来のBcl−2(WO94/27426)ミュータントペプチド(WO02/20568)、Bad(WO96/13614)、BH3相互作用ドメインデスアゴニスト(WO98/09980)、Bax阻害剤タンパク質(WO98/40397)、BLK遺伝子及び遺伝子産物(WO99/50414)、これらは引用によって本発明に組み込まれる。アポトーシスの更に適した細胞内モジュレーターは、CASP9/Apaf−1会合のモジュレーター(WO02/064128)、Apaf−1発現のアンチセンスモジュレーター(WO02/32921)、アポトーシス阻害のためのペプチド(WO99/43701)、単純ヘルペスウィルスのR1サブユニットを含む抗アポトーシス性組成物(WO00/07618)、MEKK1及びそのフラグメント(WO99/41385)、サバイビン(Survivin)のモジュレーター(WO01/64741)、アポトーシス阻害剤のモジュレーター(WO97/06182、WO00/77201、WO01/59108、WO02/053586)及びHIAP2(WO00/08144)であり、これらは引用によって本発明に組み込まれる。更に、上記の阻害剤の全ての組み合わせを使用してよい。
【0017】
阻害剤、又は前記阻害剤の組み合わせは、これを必要とする被験体、特にヒト患者に、特定の症状の治療のために十分な量において、適した方法によって投与される。例えば、阻害剤は薬学的に許容可能なキャリアー、希釈剤及び/又は佐剤と共に、薬学的な組成物として処方されてよい。治療の効能及び毒性は標準的なプロトコルに従って決定されてよい。薬学的な組成物は、全身に、例えば腹腔内に、筋肉内に、又は静脈内に、又は局所的に、例えば鼻腔内に投与されてよい。有利には、静脈内及び/又は鼻腔内投与である。
【0018】
阻害剤のとりわけ有利な組み合わせは、細胞外TRAIL/TRAILレセプター阻害剤、例えば抗TRAIL抗体、又は異種ポリペプチドに場合によって融合した可溶性の細胞外TRAILレセプタードメインと、細胞内のTRAILレセプターシグナル伝達阻害剤との、組み合わせである。
【0019】
場合によって、更なる有効成分が存在し、前記有効成分は抗ウィルス薬、例えばウィルスの膜貫通タンパク質に指向したアマンタジン及び前記誘導体、例えばリマンタジン、ウィルスのノイラミニダーゼ、特にインフルエンザウィルスからのノイラミニダーゼの阻害剤、例えばリレンザ、Raf−Mek−Erkシグナル伝達経路の阻害剤、例えば20126又はPCT/DE01/01292に記載されたその他の阻害剤、MIKK/SEK/YMKシグナル伝達経路の阻害剤、又はDE10138912に記載された更なるシグナル伝達経路の構成要素の阻害剤、及び合成ヌクレオシド類似物、例えば3−デアザアデノジン(3−deazaadenozine)及びリバビリン(ribavirine)である。
【0020】
投与される阻害剤の用量は勿論、治療される被験体、被験体の重量、損傷のタイプ及び重傷度、投与の方法、及び処方する医師の判断に依存する。抗TRAIL−R又は−L抗体又は可溶性TRAIL−Rタンパク質、例えばTRAIL−R融合タンパク質の投与のためには、0.001〜100mg/kgの1日量が適している。
【0021】
更に、本発明の観点は、化合物がTRAILリガンド/TRAILレセプター系を阻害することが可能であるかを決定することを含む、ウィルス感染、特にRNAウィルス、例えばインフルエンザ又はボルナ病のウィルスによる感染の阻害剤を同定及び/又は特性決定する方法である。TRAILリガンド/TRAILレセプター系の阻害は有利には、TRAILリガンド/TRAILレセプター媒介アポトーシス又はTRAILリガンド/TRAILレセプター媒介細胞活性化の阻害を含む。更に有利には、TRAIL−R1及び/又はTRAIL−R2とFADDデスドメインとの相互作用の阻害、又はFADDデスエフェクタードメインとカスパーゼ−8及び/又はカスパーゼ10との相互作用の阻害である。
【0022】
上記の方法は、分子ベースアッセイであってよく、その際TRAILリガンドとTRAILレセプターとの相互作用に及ぼす、試験される化合物の効果は、ほぼ精製されかつ単離された成分、例えばリコンビナント分子を含む試験系において解析される。又は、方法は細胞ベースアッセイとして実施されてもよく、その際適した試験細胞、例えばTRAILレセプターを発現又は過剰発現する試験細胞を使用する。適した分子ベースアッセイ及び細胞ベースアッセイ系、例えばハイスループットアッセイ系はこの分野において公知である。
【0023】
更に本発明は以下の図及び実施例において、より詳細に説明される。
【0024】
図の説明
図1:NF−κBシグナリングは効率的なインフルエンザウィルス産生に重要である
a)IκBα分解のイムノブロット分析。ベクター、IKK2 EE、IKK2 KD又はIκBαmutを安定発現するA549細胞系をTNF−α(20ng/ml)で刺激し、表示した時間の後に回収した。過剰発現したIκBαmutはSDSゲルにおいて遅延を示すことに注意。IKK EE細胞系は構成的なIκBα分解を示さないが、刺激後のde novo IκBα発現の回復はより迅速である。これは、刺激又は感染したIKK2 EE細胞において一貫して観察された、強化したNF−κBシグナル強度のためである可能性がある。
b)NF−κBプロモーター−ルシフェラーゼ−リポーター遺伝子アッセイ。安定に形質導入したMDCK細胞系を3×NF−κB結合部位人工プロモーターによって駆動されるルシフェラーゼ−リポーター遺伝子プラスミドでトランスフェクションした。トランスフェクションの24時間後、細胞をFPVで感染させ(MOI=5)、及び感染後(p.i.)4時間目に回収して、ルシフェラーゼアッセイを行った。各バーは、三回の独立したトランスフェクションの平均及び標準偏差を示す。
c)IFNβプロモーター/エンハンソソームルシフェラーゼ−リポーター遺伝子−アッセイ。安定に形質導入したMDCK細胞系を、誘導可能なIFNβ発現を担うAP−1、IRF及びNF−κB結合部位を有するIFNβ−プロモーター/エンハンソソームによって駆動されるルシフェラーゼ−リポータープラスミドでトランスフェクションした。トランスフェクションの24時間後、細胞をインフルエンザAウィルスで感染させ(MOI=5)、及びp.i.4時間目に回収して、ルシフェラーゼアッセイを行った。各バーは、三回の独立した実験の平均及び標準偏差を示す。
d)異なるMDCK及びI型インターフェロン欠損ベロ細胞系をFPVで感染させた(MOI=1)。上清を9時間に回収し、ウィルス収量をMDCK細胞上のプラークアッセイにおいて定量した。データを、ベクターコントロールと比較したウィルス力価のパーセンテージとして示す。各バーは、三回の独立した実験の平均及び標準偏差を示す。
e)dにおいて記載した通りに、FPVで感染させた異なるA549細胞系を用いて実験を行った。対数目盛りにおいて、絶対プラーク形成単位としてデータを示す。各バーは、三回の独立した実験の平均及び標準偏差を示す。
【0025】
図2:NF−κBは、インフルエンザウィルス感染の状況下においては、A549細胞系においてアポトーシス促進的に作用する。
a)初期のアポトーシスマーカーであるPARP分断のための、イムノブロット。A549細胞系を、模擬感染又はFPVで感染させ(MOI=1)、p.i.24時間目にTritonX−100溶解バッファーにおいて溶解した。SDS PAGE及びブロッティング後、メンブランを抗PARP mAbを用いたウェスタンブロットにかけ、タンパク質の分断及び非分断形状の両方を検出した。Erkブロットは負荷コントロールとして務める。
b)A549細胞系をFPVで感染させ(MOI=1)、幅広いカスパーゼ阻害剤Z−VAD−FMK又は不活性コントロール(Z−FA−FMK)の様々な濃度でインキュベーションした。p.i.24時間目に上清を回収し、ウィルス力価を測定した。
c)b)における通りに、FPVで感染させた(MOI=1)異なるベロ細胞系で実験を実施した。
【0026】
図3:アポトーシス促進タンパク質TRAILはインフルエンザAウィルス感染すると誘導される
a)A549細胞系を模擬処置又はFPVで感染させた(MOI=1)。p.i.24時間目にRNAを単離し、RNアーゼプロテクションアッセイにかけた。
b)A549(野生型)細胞におけるTRAIL発現のイムノブロット法。A549細胞をFPVで感染させ(MOI=10)、異なる時間、TritonX−100溶解バッファー中で溶解させた。ウィルス性のNP蓄積を、感染経過のためのコントロールとして使用した。
c)異なるA549細胞系をFPVで感染させ(MOI=5)、タンパク質分泌を妨げるためにモネンシンで処理した。p.i.8時間目に、細胞を4%パラホルムアルデヒドで固定し、TRAIL発現のために染色し、これをFACS分析において検出した。グレー線:非感染細胞、黒線:ウィルス感染細胞。
【0027】
図4:TRAILはインフルエンザAウィルス増殖のための重要なメディエーターである。
a)可溶性TRAIL−R2−FcはTRAIL媒介カスパーゼ活性化を妨げる。A549細胞を未処置のままにするか、又はリコンビナントのフラッグタグ化したヒトTRAIL(20ng/ml)で、可溶性TRAILレセプター2(TRAIL−R2−Fc、10μg/ml)あり又はなしで16時間刺激した。溶解物を、アポトーシス誘導の測定のために抗PARPウェスタンブロットにかけた。
b)TRAIL−R2−Fcの存在はインフルエンザウィルス産生を減少させる。A549野生型細胞をFPVで感染させた(MOI=1)。感染後、TRAIL−R2−Fc(10μg/ml)又はコントロールとしてTNF−R2−Fc(10μg/ml)を培地に添加した。p.i.9時間後及び24時間後に上清を回収し、ウィルス力価を測定した。
c)TNF−R2−FcはTNFα誘導IκBα分解を妨げる。A549細胞を未処置のままにするか、又はTNF−R2−Fc(10μg/ml)の存在下又は非存在下で、リコンビナントTNFα(20ng/ml)で刺激した。
d)A549細胞系をFPV(MOI=1)で感染させた。p.i.6時間目にリコンビナントのフラッグタグ化ヒトTRAIL(10ng/ml)を感染培地に添加した。p.i.9時間目に上清を回収し、ウィルス力価を測定した。各バーは、三回の独立した実験の平均及び標準偏差を示す。
【0028】
実施例
1.方法
1.1ウィルス、細胞系及びウィルス感染
トリインフルエンザウィルス A/Brastislava/79(H7N7;家禽ペストウィルス(FPV))を、Institute of Virology、Giessenのウィルス株コレクションから取得し、異なる細胞系の感染のために使用した。Madin−Darbyイヌ腎臓(MDCK)細胞及びアフリカミドリザル腎臓細胞(ベロ)を、10%熱非働化ウシ胎児血清(FBS)及び抗生物質を補給した最小必須培地(MEM)中において成長させた。A549ヒト肺癌腫細胞を10%熱非働化FBS及び抗生物質を補給したHam’sF12培地中において成長させた。トランスドミナントmlκBαと同様に構成的に活性があり、ドミナントネガティブなIKK2も安定発現するA549、MDCK及びベロ細胞系を、pCFG5−IEGZレトロウィルスベクター系27及び両種指向性Phoenix producer 細胞系を用いて、ほぼDenk.et al16において記載されたように、レトロウィルス形質導入アプローチによって生じさせた。感染のために、細胞をPBSで洗浄し、示した感染多重度(MOI)で、PBS/BA(0.2%BSA、1mM MgCl、0.9mM CaCl、100U/mlペニシリン及び0.1mg/mlストレプトマイシンを含有するPBS)中で希釈したウィルスで、1時間室温でインキュベートした。接種材料を吸引し、細胞を0.2%BSA及び抗生物質を含有するMEM又はHam’sF12でインキュベートした。p.i.9時間目又は24時間目に上清を回収し、感染粒子(プラーク力価)の数をサンプル中において評価した。簡単に言うと、6ウェルディッシュ中の90%集密度に成長したMDCK細胞をPBSで洗浄し、PBS/BA中で上清の段階希釈で1時間37℃で感染させた。接種材料を吸引し、0.6%寒天(Oxoid)、0.3%DEAE−デキストラン(Pharmacia Biotech)及び1.5%NaHCOで補給したMEM/BA(0.2%BSA及び抗生物質を含有する培地)2ml中で、37℃、5%COで2〜3日間細胞をインキュベートした。ウィルスプラークをニュートラル−レッドでの染色によって視覚化した。
【0029】
1.2阻害剤、抗体及び試薬
カスパーゼ阻害剤、Z−VAD−FMK又は阻害剤コントロールZ−FA−FMK(Alexis Biochemicals)をすぐに使用可能であるようにDMSO中2mMで供給した。DMSOを溶媒コントロールとして、最も高い阻害剤濃度を代表して、2%の終濃度で使用した。マウス抗PARPモノクローナル抗体をTransduction Laboratoriesから購入した。TRAILウェスタンブロットのためにヒトTRAILに対するモノクローナル抗体(mAb)をSanta Cruz Biotechnologyから購入した(sc−8440)。FACSのためのTRAIL及びTRAIL−R1及びR2に対するMAbsも、リコンビナントのフラッグタグ化ヒトTRAILと同様にAlexis Biochemicals、Gruenberg、Germanyから入手可能である。可溶性TRAIL−レセプター2(TRAIL−R2−Fc)及び可溶性のTNF−αレセプター(sTNF−R2−Fc)は、参考文献28にほぼ説明されたように、ヒトIgG−Fcとの融合タンパク質として生産された。
【0030】
1.3 プラスミド、トランスフェクション及びウェスタンブロット
IFNβ−プロモーター−ルシフェラーゼプラスミドは、J.Hiscott、Montreal、Canadaによって好意により提供された。3×NF−κBレポータープラスミドは以前に13に説明されている。MDCK細胞をリポフェクタミン2000(LifeTechnologies)で、Basler et al.29によるプロトコルによりトランスフェクションした。ルシフェラーゼリポーター遺伝子アッセイを以前に説明されたように実施した25、30。ウェスタンブロットのために細胞をTriton溶解バッファー(20mM Tris/HCl、pH7.4、137mM NaCl、10%グリセロール、1%TritonX−100、2mM EDTA、50mMグリセロールリン酸ナトリウム、20mMピロリン酸ナトリウム、5μg/mlロイペプチン、1mMバナジン酸ナトリウム、5mMベンズアミンジン)中で、氷上で10〜20分間溶解した。細胞溶解物を次に遠心分離し、上清中のタンパク質の含量を、protein dye reagent(BIO−RAD laboratories)を用いて測定した。タンパク質の等量をSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)により分離し、ニトロセルロース膜上にブロットした。
【0031】
1.4フローサイトメトリー法
TRAILを細胞内染色法により検出した。A549細胞系をFPVで、5のMOIで8時間、タンパク質分泌をさけるために2μMモネンシンの存在下で感染させた。細胞を4%パラホルムアルデヒドで、4℃で20分間固定し、引き続き透過バッファー(0.1%サポニン/1%ウシ胎仔血清/PBS)中で2回洗浄した。TRAILに対するマウスモノクローナル抗体又はアイソタイプコントロール抗体(Becton Dickinson)でのインキュベーション後、細胞をビオチン−Sp−コンジュゲートヤギ抗マウスIgG(Dianova)、及びストレプトアビジン−Cy−chrome(Becton Dickinson)で染色した。FL3−チャンネルにおいて、FACScalibur cytometer(Becton Dickinson)を用いて蛍光を測定した。全てのFACS分析は少なくとも2回繰り返され、ほぼ類似した結果を示した。
【0032】
1.5 RNアーゼプロテクションアッセイ
A549細胞系を模擬感染させたか又はFPVで1のMOIで感染させた。p.i.24時間目に細胞を溶解させ、TRIzol reagent(Invitrogen)を用いて、製造者の指示に従ってRNAを単離した。精製RNAを、製造者の指示に従って、RiboQuant Multi−Probe RNase Protection Assay hAPO−3(BD−Pharimingen)にかけた。
【0033】
2.結果
インフルエンザウィルス感染の間のIKK及びNF−κB活性化の役割を分析するために、我々は、ドミナントネガティブIKK2(IKK KD)、構成的に活性のあるIKK2(IKK EE)、又はNF−κB活性化を妨げる、IκBαの分解可能でないミュータント(IκBαmut)16を安定発現する宿主細胞系を樹立した。図1はIKK KD又はIκBαmutの発現がNF−κB活性化の効率的な遮断を生じることを示す。TNF−α誘導IκBα分解(図1a)又はNF−κB依存性プロモーターエレメントからのインフルエンザウィルスが誘導した転写(図1b)は前記ミュータントの存在下で損われている。IKK EEの高発現は前記細胞系においては良好に寛容性ではなく、導入遺伝子はいくつかの継代のあとにかろうじて検出可能になるだけであるが(データ掲載せず)、IKK EE細胞系における促進したNF−κB依存性転写活性は、それでもウィルス感染すると検出可能であった。人工NF−κBリポーター遺伝子構造が、IFNβプロモーター/エンハンソソームを収容するリポーター遺伝子プラスミドによって置き換わると、異なるミュータントは転写活性にほぼ同様の効果を示す(図1c)が、しかしIFNβ発現のためのその他の、ウィルスが誘導した転写因子の関与のためにあまり顕著ではない。これはNF−κBは、IFNβ発現を抗ウィルス機能として調節するという、これまでの報告と一致する。
【0034】
しかし、前記の異なる細胞系においてインフルエンザウィルス産生の効率を調べると、異なる結果を見出した。ウィルス増殖はNF−κB阻害すると損なわれ、活性状態、IKK EEを発現する細胞においては促進された(図1d、e)。効果はMadine Darbyイヌ腎臓(MDCK)上皮細胞において、及びベロ細胞においても同様であった(図1d)。後者の細胞系は1型インターフェロンを発現せず17、観察された効果における前記サイトカインの顕著な関与を除外する。ウィルス増殖の阻害又は促進は、導入遺伝子作用の効率と相関し(データ掲載せず)、A549肺上皮細胞においてもっとも強力で、その際異なる細胞系間のウィルス力価の差は10倍までであった(図1e)。この結果は、それぞれのNF−κB欠損CRL細胞系とボルナ病ウィルス(BDV)、別のマイナス鎖RNAウィルスでの感染により得られた結果とは異なる。前記結果では、NF−κBの阻害は複製には顕著な効果を及ぼさず、しかしIKK EEの発現による経路の活性化は、I型インターフェロンの大規模な誘導のために、ウィルス複製を強く損なった(O.P.及びS.L.、未発表データ)。これは、インフルエンザウィルス複製に特異的なNF−κBの決定的な作用を示唆し、前記作用はI型インターフェロン反応とは無関係に生じるようである。
【0035】
NF−κBは転写因子であり、従って根本的な機構は、プロウィルス的な(proviral)作用因子の調節に関与する可能性が高い。NF−κBはアポトーシス促進遺伝子及び抗アポトーシス遺伝子の両方の調節因子6なので、異なるNF−κB細胞系におけるアポトーシスのウィルス誘導を調べた。初期のアポトーシス事象を観察するために、主要なカスパーゼ基質、ポリ(ADPリボース)ポリメラーゼ(PARP)のタンパク質分解による分断を選択した。インフルエンザウィルス感染は、ベクター細胞系における顕著な分断を生じ、これは更にIKK EE発現細胞において促進された(図2a)。対照的に、ウィルス誘導PARP分断は、トランスドミナントネガティブミュータント、IKK又はIκBαを発現する感染細胞において損なわれた(図2a)。この意外な発見は、インフルエンザウィルス感染の状況下では、NF−κBが抗アポトーシス的というよりむしろアポトーシス促進的に作用することを示す。事実、アポトーシス誘導及びカスパーゼ活性化は効率的なウィルス増殖に必要である可能性がある。ウィルス収量は、A549及びベロ細胞の両方において、汎カスパーゼ阻害剤Z−VAD−FMKの存在下では強力に損なわれたが、不活性なアナログZ−FA−FMKによっては損なわれなかった(図2b、c)。
【0036】
まとめると、インフルエンザ感染の間にNF−κBはアポトーシス促進因子を上方調節させ、これはウィルス産生を促進させることをデータは示す。従って、様々なアポトーシス調節因子、例えばカスパーゼ8、Fas(APO−1、CD95)、デスレセプター3(DR3)、TRAIL又はTNF−R1の、ウィルスにより誘導された遺伝子発現を、ベクター、IKK EE、又はIKK KD発現細胞系において、RNアーゼプロテクションアッセイを用いて調べた(図3a)。興味深いことに、ベクタートランスフェクションした細胞系又はIKK EE発現細胞系において、ウィルス感染すると強力に上方調節されるが、IKK KD発現細胞系において完全に存在しない唯一の前記遺伝子は、TNF関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)の遺伝子であった。TRAILはインフルエンザウィルス感染の間の時間にわたって増加しつづける量で発現し(図3b)、IKK KD又はmIκBαによるNF−κBシグナリングの阻害はウィルス誘導TRAIL合成を完全に遮断した(図3c)。
【0037】
NF−κB依存性に促進されたインフルエンザウィルス複製にTRAILが関与しているかを試験するために、我々はTRAIL−R2−Fc、TRAILの効果的な阻害剤28の非存在下又は存在下でウィルス力価を測定した。前記試薬はTRAIL誘導PARP分断を効果的に遮断した(図4a)だけでなく、しかし24時間後にはウィルス産生を約80%減少させた(図4b)。これは、TRAILは確かにプロウィルスの因子であることを示す。反対に、可溶性TNF−R2−Fc、別の、アポトーシス促進的で、ウィルスによって誘導されるサイトカインのためのレセプターは、ウィルス力価の顕著な減少を生じなかった(図4b)が、前記試薬の同濃度は効果的にTNFα誘導IκBα分解を遮断した(図4c)。TRAILがウィルス増殖を援助するという知見と一致して、低濃度リコンビナントヒトTRAILでの感染細胞の刺激は、A549細胞におけるウィルス産生を促進し、異なる細胞系におけるNF−κB欠損の表現型をレスキューした(図4d)。
【0038】
このように、アポトーシスインドューサーTRAILは、インフルエンザウィルス感染細胞において、NF−κB依存的に誘導されたプロウィルスの因子である。
【0039】
3.考察
インフルエンザウィルス感染細胞におけるNF−κBの役割は、詳細には研究されてこなかったが、NF−κB活性化及びアポトーシス誘導の両方は、インフルエンザウィルス感染に対する抗ウィルス反応であると一般的に考えられてきた。本出願に示したデータによれば、NF−κBはインフルエンザウィルス感染の状況下ではむしろ、少なくともアポトーシス促進因子TRAILの発現を調節することによって、プロウィルス的に作用するというシナリオに我々は直面する。
【0040】
これまでは、TRAILの転写調節に関してはほとんど知られていない。しかし、最近の研究では、TRAILの発現は、事実NF−κB依存的にジャーカットT細胞において、c−Rel結合部位を通して近位TRAILプロモーター中で誘導されうることが実証された18。我々は上記に、これが上皮細胞において、ウィルスのインドューサーでも当てはまることを示した。13000個のうち84個の遺伝子中のTRAILを同定し、前記遺伝子がヒトインフルエンザウィルスでの感染に対する反応において調節解除されるという、最近の転写のプロファイリングアプローチ19からの知見によって我々のデータは支持されている。更に、TRAIL及び/又はTRAIL−R1/2は、複数のその他のウィルスでの感染の間に上方調節することが示されており20〜23、これは感染細胞又は免疫系の細胞を選択的に殺すという抗ウィルス性の反応であると仮定されてきた。しかしインフルエンザウィルス感染の場合には、NF−κB依存的なTRAIL誘導及び引き続くTRAIL媒介アポトーシスはプロウィルス的な現象であることを、我々のデータは明らかに示している。従って、インフルエンザウィルスは宿主細胞保護機構の利点を活かす能力を獲得し、これによりウィルス複製を援助する可能性がある。存在する細胞内活動の利点を生かすことは、宿主細胞中に前記方法を積極的に誘導するよりむしろ、ウィルスの侵入者にとっては容易なことである。前記仮定にそうと、ウィルスは抗ウィルス反応の制限と、ウィルス成長を援助する十分なシグナリング強度の維持との間でバランスを保つ機構を必要とする。そのようなバランス制御は、ウィルスNS1タンパク質によって供給されている可能性があり、前記タンパク質はある種の転写因子の活性を許容した制限に維持し3、24、25、これにより抗ウィルス反応の過多を妨げ、しかしいくつかのプロウィルスのタンパク質をそれでも産生させる。前記モデルを支持して、リコンビナントTRAILは、細胞が10〜20ng/mlまでの濃度において感染の後期に刺激される場合のみに、ウィルス増殖を促進させることを観察した(図4d)。より初期の刺激又はTRAILのより高い濃度は、支持的な効果の損失を生じる(データ掲載せず)。TRAILを後期に必要とすることは、ウィルス複製サイクルの間のタンパク質の発現速度論と良好に相関する(図3c)。
【0041】
更に、インフルエンザウィルスはアポトーシス促進タンパク質、PB1−F2をウィルス生活環の後期に発現する26という最近の知見は、効率的なウィルス成長のためにアポトーシス誘導を必要とすることと一致している。我々は、NF−κB及びTRAILを、インフルエンザウィルス複製のための決定的な細胞内因子であるとして同定した。我々の発見は、NF−κB及び/又はより具体的にはTRAILの薬理学的な阻害は、ウィルスに対する防御において治療的な価値がある可能性を示唆し、前記ウィルスはいまだに世界的に、人の健康に対する最も大きな脅威の1つであり続けている。
【0042】
【表1】

【0043】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】図1は、NF−κBシグナリングは効率的なインフルエンザウィルス産生に重要であることを示す図である。
【図2】図2は、NF−κBは、インフルエンザウィルス感染の状況下においては、A549細胞系においてアポトーシス促進的に作用することを示す図である。
【図3】図3は、アポトーシス促進タンパク質TRAILはインフルエンザAウィルス感染すると誘導されることを示す図である。
【図4】図4は、TRAILはインフルエンザAウィルス増殖のための重要なメディエーターであることを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
TRAILリガンド/TRAILレセプター系の阻害剤の、ウィルス感染の予防又は治療のための医薬品を製造するための使用。
【請求項2】
インフルエンザ又はボルナ病の、ウィルス感染の予防又は治療のための請求項1記載の使用。
【請求項3】
インフルエンザウィルス感染の予防又は治療のための請求項1記載の使用。
【請求項4】
ヒトにおけるウィルス感染の予防又は治療のための請求項1から3までのいずれか1項記載の使用。
【請求項5】
家畜又は野生動物におけるウィルス感染の予防又は治療のための請求項1から3までのいずれか1項記載の使用。
【請求項6】
阻害剤はTRAILリガンド阻害剤である、請求項1から5までのいずれか1項記載の使用。
【請求項7】
TRAILリガンド阻害剤は、
(a)阻害性の抗TRAILリガンド抗体、又は前記抗体のフラグメント、及び
(b)可溶性のTRAILレセプター分子、又は前記分子のTRAILリガンド結合部
から選択される請求項6記載の使用。
【請求項8】
TRAILレセプター分子は、TRAILレセプター−1、TRAILレセプター−2、TRAILレセプター−3、TRAILレセプター−4及びOPG(オステオプロテゲリン)から選択される、請求項7記載の使用。
【請求項9】
TRAILリガンド阻害剤は、異種ポリペプチドドメインに場合によって融合した、TRAILレセプター分子の細胞外ドメインである、請求項8又は9記載の使用。
【請求項10】
TRAILリガンド阻害剤は、Fc免疫グロブリン分子に融合した、TRAILレセプター分子の細胞外ドメインである、請求項9記載の使用。
【請求項11】
阻害剤はTRAILレセプター阻害剤である、請求項1から5までのいずれか1項記載の使用。
【請求項12】
TRAILレセプター阻害剤は、
(a)阻害性の抗TRAILレセプター抗体、又は前記抗体のフラグメント;及び
(b)阻害性のTRAILリガンドフラグメント
から選択される、請求項11記載の使用。
【請求項13】
阻害剤は核酸エフェクター分子である、請求項1から5までのいずれか1項記載の使用。
【請求項14】
核酸エフェクター分子は、アンチセンス分子、RNAi分子、及びリボザイムから選択される、請求項13記載の使用。
【請求項15】
阻害剤は細胞内のTRAILレセプターシグナル伝達の阻害剤である、請求項1から5までのいずれか1項記載の使用。
【請求項16】
阻害剤は、TRAILレセプター−1又はTRAILレセプター−2のデスドメインとFADDのデスドメインとの相互作用の阻害剤、又はFADDのデスエフェクタードメインとカスパーゼ−8及び/又はカスパーゼ10との相互作用の阻害剤である、請求項1から5までのいずれか1項記載の使用。
【請求項17】
医薬品は、有効成分として少なくとも1つの阻害剤を、薬学的に許容可能なキャリアー、希釈剤、及び/又は佐剤と共に含む、請求項1から16までのいずれか1項記載の使用。
【請求項18】
医薬品は更なる有効成分を含む、請求項1から17までのいずれか1項記載の使用。
【請求項19】
化合物がTRAIL/TRAILレセプター系を阻害することが可能であるかを決定することを含む、ウィルス感染の阻害剤を同定及び/又は特性決定する方法。
【請求項20】
阻害は、TRAIL/TRAILレセプター媒介アポトーシスの阻害を含む、請求項19記載の方法。
【請求項21】
阻害は、TRAIL/TRAILレセプター媒介細胞活性化の阻害を含む、請求項19記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2007−533595(P2007−533595A)
【公表日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−504879(P2006−504879)
【出願日】平成16年3月26日(2004.3.26)
【国際出願番号】PCT/EP2004/003245
【国際公開番号】WO2004/085479
【国際公開日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【出願人】(505360362)アポゲニクス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (8)
【氏名又は名称原語表記】Apogenix GmbH
【住所又は居所原語表記】Im Neuenheimer Feld 581,D−69120 Heidelberg,Germany
【出願人】(502016769)メディノヴァ・ゲゼルシャフト・フューア・メディツィーニシェ・イノヴァツィオーネン・アウス・アカデーミシャー・フォルシュング・エム・ベー・ハー (1)
【Fターム(参考)】