説明

ウイルス不活化剤、ウイルス感染予防方法及びそのウイルス不活化剤をも収納し得る容器

【課題】安全に使用することができ、短時間で、ウイルスに対して高い不活化効果を発揮する、新規なウイルス不活化剤、ウイルス感染予防方法及び容器を提供するものである。
【解決手段】柿抽出物を有効成分とするウイルス不活化剤、ウイルス感染予防方法及び容器10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は天然物由来のウイルス不活化剤であって、特にノロウイルス等のカリシウイルス(Caliciviridae)に対する不活化効果に優れたウイルス不活化剤、ウイルス感染予防方法及びそのウイルス不活化剤をも収納し得る容器に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、食中毒の原因の一つとして、ウイルスの感染が問題となっている。中でもノロウイルス等のカリシウイルスは、冬季であっても人に感染して下痢や嘔吐等の食中毒の症状を引き起こし、また感染力も強いことから、有効な予防方法の提供が望まれている。
【0003】
ところがカリシウイルスは薬剤に対する耐性が強く、汎用の消毒剤であるエタノールや塩素系薬剤では死滅させることは難しく、感染を防ぐには十分ではないとされている。
【0004】
一方、300ppm以上の次亜塩素酸ナトリウムによる殺菌が有効であるとの報告がなされているが、次亜塩素酸ナトリウムは金属に錆びを発生させたり、皮膚刺激がある等使用面での問題がある。
【0005】
このような状況の中、ウイルスに対する不活化効果に優れ、安全に使用することができる成分の検討がなされている。例えば、所定量のポリヘキサメチレンビグアナイド系化合物を含む液剤からなり、そのpHをアルカリとした消毒液(特許文献1参照。)、コショウの粉末や抽出物を有効成分としたウイルス増殖抑制剤(特許文献2参照。)等が、ネコカリシウイルスに対して抑制効果があるとされている。
【0006】
【特許文献1】特開2007−45732号公報(第1−14頁)
【特許文献2】特開2005−143391号公報(第1−8頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の消毒液は、肌への安全性の点から低濃度での使用に限られたものであり、さらにウイルスの不活化を得るうえでpHの影響が大きく、製剤化においても制限となる。一方、特許文献2に記載されたウイルス増殖抑制剤は、不活化に際して30分間の反応を要し、その不活化率も十分なものではない。
【0008】
また、このようなウイルス不活性剤などの薬剤を安全にして耐久性よく、そして容易に扱うためのスプレー装置又は容器等の提供が必要である。
【0009】
そこで本発明者らは、安全に使用することができ、短時間で、ウイルスに対して高い不活化効果を発揮する、新規な、ウイルス不活化剤、ウイルス感染予防方法及びそのウイルス不活化剤をも収納し得る容器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、柿抽出物がカリシウイルスに対して優れた不活化効果を発揮することを見出し本発明に至った。すなわち、本発明に係るウイルス不活化剤は以下の(1)〜(6)を構成としている。
(1)柿抽出物を有効成分とするウイルス不活化剤。
(2)アルコールを含有する(1)記載のウイルス不活化剤。
(3)有機酸を含有する(1)又は(2)記載のウイルス不活化剤。
(4)液剤である(1)乃至(3)のいずれか1つに記載のウイルス不活化剤。
(5)ウイルスがカリシウイルスである(1)乃至(4)のいずれか1つに記載のウイルス不活化剤。
(6)(1)乃至(5)のいずれか1つに記載のウイルス不活化剤を噴霧することを含むウイルス感染予防方法。
【0011】
また、本発明者らは、鋭意検討した結果、上記(1)〜(6)の構成のウイルス不活化剤などの製剤をより安全に耐久性よく、そして容易に扱うための容器が必要であると考え、このようなウイルス不活化剤等の製剤をも収納し得る容器を発明した。すなわち、本発明に係るウイルス不活化剤をも収納し得る容器は以下の(7)〜(9)を構成としている。
(7) 口部を有して薬剤を収納する薬剤収納部と、外筒と前記口部に嵌合される内筒とを有するキャップと、を備え、ウイルス不活化剤をも収納し得る容器において、
前記内筒には、その軸方向に沿ってスリットがその周方向に間欠的に形成され、且つ
前記内筒の内周面には、前記口部に螺合嵌合するための螺合突起がその周方向に渡って形成されている
ことを特徴とする容器。
(8) 前記キャップの前記外筒及び前記内筒の少なくとも一方に目盛り意匠が設けられている
ことを特徴とする(7)に記載の容器。
(9) 前記螺合突起が前記目盛り意匠として機能する
ことを特徴とする(7)又は(8)に記載の容器。
(10) (1)乃至(5)のいずれか1つに記載のウイルス不活化剤が前記薬剤収納部に収納されることを特徴とする(7)乃至(9)のいずれか1つに記載の容器。
【発明の効果】
【0012】
本発明のウイルス不活化剤は、30秒〜1分程度で90%以上のカリシウイルスを不活化することができるので、短時間で効果的にウイルスの感染を予防することができる。また天然物由来であるので、皮膚刺激等もなく、安全に使用してウイルス感染予防方法とすることができる。さらに大腸菌等の殺菌効果にも優れることから、食中毒を予防するのに有効である。
【0013】
また、本発明の容器では、キャップの内筒に形成されている螺合突起は、薬剤収納部の口部との着脱に用いられる。このとき、内筒に、その軸方向に沿ってスリットがその周方向形成に間欠的に設けられているので、そのスリットにより内筒が弾性変形可能であり、着脱時の応力が一箇所に集中せず内筒全体に分散される。これにより、使用に伴う内筒の割れ等の破損を防止してキャップとしての耐久性を向上させることができる。
【0014】
また、本発明の容器では、キャップが計量カップとして用いられる場合に、スリットを介して内筒と外筒とに略均一に薬剤が注がれることとなるので、内筒及び外筒の区別を気にすることなく、目盛り意匠を見ながら薬剤をキャップに注ぐことができて薬剤の量を容易に計ることができる。また、内筒が仕切りとならないのでキャップ全体として薬剤を投入できるので注ぎ易い。
【0015】
また、本発明の容器は、螺合突起が目盛り意匠として機能するようにすることで、視認性を高めることができ、且つ別所に目盛り意匠を設ける必要がなくなるので、製造コストを抑制することができる。
【0016】
また、本発明の容器が、ウイルス不活化剤などの薬剤をも薬剤収納部に収納することで、安全に使用することができ、容器の使用に伴うキャップの内筒の割れ等の破損を防止して耐久性を高めて、安全且つ使い勝手よく収納、使用することができる。
【0017】
本明細書においてウイルス不活化剤とは、ウイルスの感染または増殖能力を除去もしくは著しく低下させることを意味する。本発明のウイルス不活化剤は、カリシウイルスを不活化対象とすることができる。カリシウイルスは、ノロウイルス(Norovirus)、サポウイルス(Sapovirus)、ラゴウイルス(Lagovirus)、ベシウイルス(Vesivirus)の4種に分類されるが、特にノロウイルスを不活化対象とすることが好ましい。
【0018】
本発明のウイルス不活化剤の有効成分である柿抽出物としては、柿果実搾汁液、柿果実の溶媒抽出液を用いることができ、カキノキ(Diospyros kaki Thunberg(Ebenaceae))の果実より得られる柿抽出液物が好ましい。また柿抽出液物として販売市販されているものを用いてもよく、例えば、商品名パンシルBA−200E−1(リリース科学工業社製)、商品名パンシルPS−SP(リリース科学工業社製)等が挙げられる。
【0019】
本発明のウイルス不活化剤は、天然物由来であり安全性が高いことから、ウイルスが存在していると思われる場所に、液状の柿抽出物をそのまま処理してもよいが、必要以上に処理することはなく、利便性を考慮して、通常は、安全性の高い水、アルコール、グリコール等の溶媒に有効量を配合して用いるのがよい。
【0020】
本発明のウイルス不活化剤における柿抽出物の濃度は、通常は、0.01質量%以上とすることが好ましく、0.01〜1質量%とすることがより好ましい。ウイルス不活化剤における柿抽出物の含有量が少なすぎるとウイルス不活化効果が十分に得ることができない場合があり、多すぎても柿抽出物の溶解性が十分に得られず、濁り、沈殿等が生じる場合があり、またウイルス不活化効果が大きく向上することもないので、上記の範囲の程度で用いることがよい。
【0021】
本発明のウイルス不活化剤は、アルコールを含有することが好ましい。アルコールとしては、例えば、エタノール、イソプロパノール、メトキシブタノール等が挙げられる。本発明のウイルス不活化剤におけるアルコールの濃度は、通常は、20質量%以上とすることが好ましく、20〜99.9質量%とすることがより好ましい。
【0022】
また、本発明のウイルス活性化剤は、有機酸を含有することが好ましい。有機酸としては、例えば、リンゴ酸、クエン酸、コハク酸、酒石酸、フィチン酸等が挙げられる。本発明のウイルス不活化剤における有機酸の濃度は、通常は、0.01質量%以上とすることが好ましく、0.03〜0.5質量%とすることがより好ましい。
【0023】
エタノール等だけではノロウイルスに有効ではないとされているが、柿抽出物単独はもちろん、柿抽出物とアルコール及び/又は有機酸とを併用することで、相乗作用により、ウイルスに対する不活化効果を向上させることができとともに、O−157等の大腸菌、緑膿菌、黄色ブドウ球菌、黒カビ等の菌類に対する殺菌効果をも向上することができる。
【0024】
本発明のウイルス不活化剤の好ましい態様としては、例えば、柿抽出物0.01〜1質量%、エタノール20〜99.9質量%とし、さらにリンゴ酸0.03〜0.1質量%、および精製水を適宜添加して全量が100質量%となるように調整された液剤とするのがよい。
【0025】
例えば、上記のように調製された液剤(薬剤)は、必要に応じて、エアゾール剤、ハンドスプレー剤、電動噴霧器用液剤等として、液状、液滴として処理される形態で用いられるのが好ましい。この他にも、上記液剤を、雑巾等に代えて、不織布や化学繊維の基材に含浸させたもの、使用時に上記液剤を上記基材にスプレー、含浸等して用いるキット等とすることも好ましい。
【0026】
本発明のウイルス不活化剤は、所期の使用場所において、通常は、10〜50ml/m程度となるように、エアゾール剤、ハンドスプレー剤等として噴霧処理されることが好ましい。
【0027】
本発明のウイルス不活化剤は、各種成分を併用して所期効果を付与した製剤とすることができ、除菌、殺菌、防黴、消臭等のために、例えば、モウソウチク抽出物、グレープフルーツ種子抽出物、ユズ種子抽出物、オレンジ抽出物、フラボノイド、緑茶抽出物、ルイボス茶抽出物、ユッカ抽出物、オリーブ葉エキス末、キトサン、ウーロン茶抽出物、ブドウ種子エキス、ムルレイヤエキス、シソオイル、チャ乾留物、甘草油性抽出物、モウソウチク乾留物、シソの実エキス、からし抽出物、ブロッコリーパウダー、ショウガ抽出物、エゴノキ抽出物、カワラヨモギ抽出物、ホオノキ抽出物、レンギョウ抽出物、モミガラ抽出物、ペッパー抽出物、柑橘種子抽出物、生大豆抽出物、ピメンタ抽出物、果実抽出物、果実種子抽出物等の各種植物抽出物の1種又は2種以上を用いることができる。
【0028】
さらに、液化石油ガス、ジメチルエーテル、圧縮ガス等の噴射剤、POEアルキルエーテル、POE硬化ヒマシ油、POPPOE共重合体、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、POEソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、POE脂肪酸エステル、POEアルキルアミン等の界面活性剤、アスコルビン酸、ブチルヒドロキシアニソール等の安定化剤、パラオキシ安息香酸エステル、第四級アンモニウム塩、フェノキシエタノール等の防腐剤、カテキン等のアレルゲン不活化剤、微細酸化チタン等の光触媒、リン酸チタニア等の無光触媒等を用いてもよい。
【0029】
また必要に応じて、殺虫剤や忌避剤(虫除け剤)等を併用してもよく、例えば、天然ピレトリン、ベンジルアルコール、ハッカ油、シトロネラ油、ユーカリ油、ゲラニウム油、蚊連草等の天然物由来の成分を用いるのがよい。
【0030】
本発明のウイルス不活化剤は、上記の成分の他に、柿抽出物によるウイルス不活化効果を阻害しない範囲で、香料が添加されていてもよい。このような香料としては、天然香料、合成香料、および調合香料でもよい。
【0031】
天然香料としては、例えば、オレンジ油、レモン油、グレープフルーツ果皮抽出物、ブドウ果皮抽出物、ライム油、プチグレン油、ユズ油、ネロリ油、ベルガモット油、ラベンダー油、ラバンジン油、アビエス油、ベイ油、ボア・ド・ローズ油、イランイラン油、シトロネラ油、ゼラニウム油、ペパーミント油、スペアミント油、ユーカリ油、レモングラス油、パチュリ油、ジャスミン油、ローズ油、シダー油、ベチバー油、ガルバナム油、オークモス油、パイン油、樟脳油、芳樟油、テレビン油、クローブ油、クローブリーフ油、カシア油、ナツメグ油、カナンガ油、タイム油などの精油が挙げられる。
【0032】
合成香料としては、例えばリナリルアセテート、C6〜C12の各種脂肪族アルデヒド、フェニルエチルアルコール、ベンジルアセテート、ゲラニルアセテート、ゲラニルフォーメイト、バニリン、ニトロムスク類、ガラクソライド、トナリド、ペンタリド、サンタレックス、アミルサリシレート、アミルアセテート、γ−ウンデカラクトン、メチルフェニルグリシド酸エチル、ヘリオトロピンなどが挙げられる。これらの香料はそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を調合した調合香料として用いてもよい。
【0033】
また、本発明のウイルス不活化剤は、柿抽出物を安定化させる目的で、酸化防止剤や光安定化剤等を含有してもよい。このような酸化防止剤としては、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン、ジブチルヒドロキシアニソール等が挙げられる。また、光安定化剤としては、例えば、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0034】
以上に詳述したとおり、本発明のウイルス不活化剤は、天然物由来であり安全に使用できるので、台所、流し台、冷蔵庫等の食品を取り扱う場所、居室や寝室等の居住空間、カーテンや寝具等に用いることができる。さらにウイルスや雑菌が繁殖しやすい、トイレや便器、浴槽や洗面台、さらにはエアコンディショナーや空気清浄器等に用いてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明のウイルス不活化剤などの薬剤をも収納できる容器の好適な実施形態例について、図を参照しながら説明する。
【0036】
図1乃至図3は本発明に係る容器の一実施形態を示すものあり、図1の(a)は本発明の一実施形態に係る容器の一部破断正面図、(b)は(a)の容器におけるキャップの断面図、図2は図1(b)のキャップの一部破断外観斜視図、図3は本発明に係るキャップの他の変形例を示す一部破断外観斜視図、図4は本発明の他の実施形態に係る噴霧装置の斜視図である。
【0037】
図1(a)に示すように、本発明の一実施形態に係る容器10は、薬剤収納部11と、キャップ12と、を備える。
【0038】
薬剤収納部11は、その上端部寄りに、縁部13を有し、中央部に円筒形状の口部14を有する。そして、口部14の外周にねじの谷部を形成するものとしてねじの弦巻線状をなす雄ねじ部15が形成されている。
【0039】
キャップ12は、樹脂製であって、円筒形状に形成されていて天板17を有する外筒16と、前記口部14に嵌合されるため、外筒16の内周側において天板17に結合されて設けられる内筒18と、から主として構成される。
なお、キャップ12の外筒16の形状を、円筒形状に限らず、これに代えて略三角柱形状、略矩形形状など、適宜必要に応じて様々な形状にすることができる。
【0040】
内筒18は、その内周面に、薬剤収納部11の雄ねじ部15にねじ込まれる雌ねじとして機能する螺合突起19が形成されている。
【0041】
キャップ12は、右回転方向に回されることで、螺合突起19が薬剤収納部11の口部14における雄ねじ部15にねじ込まれて、薬剤収納部11に組み付けられる。これに反して、左回転方向に回されることで、螺合突起19が雄ねじ部15から外れていき、薬剤収納部11から取り外される。
なお、ギャップ12の内筒18の天板17側にパッキンを必要に応じて組み付けるとよい。この場合、口部14を確実にシールすることができる。
【0042】
図1(b)に示すように、キャップ12は、内筒18の内周部に、天板17に接続された位置決め突起21が形成されている。位置決め突起21は、円環形状をなし、薬剤収納部11の口部14に挿入されることで、キャップ12を口部14に位置決めする。
【0043】
また、キャップ12は、内筒18に、一対のスリット(他方のスリット22は図2に示される。)22が形成されている。スリット22は、内筒18の軸方向に沿って、円周方向に、ほぼ半周の間隔でもって間欠的に形成されており、天板17側から内筒18の先端部までの長さを有する。
【0044】
そして、螺合突起19は、スリット22に架橋されるようにして内筒18の内周面23に連続して形成されている。
【0045】
図2に示すように、キャップ12は、計量カップとして用いる場合に、図1(a)及び(b)の状態から上下を逆にして用いられる。
【0046】
そして、キャップ12は、外筒16の内周面24に目盛り意匠25が設けられている。目盛り意匠25は、キャップ12が薬剤収納部11から取り外された後に、薬剤収納部11に収納されている薬剤をキャップ12内に注入させることで、薬剤の一回の使用量の目安にするために用いられる。
ここで、一回の使用量とは、位置決め突起21を含む内筒18の内側及びスリット22によって連通されている外筒16の内側における目盛り意匠25までの総量である。
【0047】
このとき、内筒18の螺合突起19が、使用者から視認し易い位置に目盛り状に配置されているために、螺合突起19を目盛り意匠25に合わせておけば、例えば、キャップ12を斜めにしたりすることなく、目盛り意匠25に代えて、螺合突起19を見て、薬剤の量を計ることもできる。
【0048】
このような容器10は、例えば、上述したウイルス不活化剤などの薬剤をも薬剤収納部11内に収納してキャップ12を取付けた形態として用いられる。そして、使用者は、キャップ12を薬剤収納部11から取り外し、バージンシール等の蓋部材を取り外してキャップ12内に薬剤を注入し、適宜使用することができる。例えば、薬剤を雑巾等に含ませて各所に塗ることでウイルスの予防などを適切に図ることもできる。
【0049】
以上説明したように、本発明の一実施形態に係る容器10によれば、キャップ12の内筒18に形成されている螺合突起19は、薬剤収納部11の口部14との着脱に用いられる。このとき、内筒18に、その軸方向に沿ってスリット22がその周方向に間欠的に設けられているので、そのスリット22により内筒18が弾性変形可能であり、着脱時の応力を一箇所に集中せず内筒18全体に分散される。これにより、使用に伴う内筒18の割れ等の破損を防止してキャップ12としての耐久性を向上させることができる。
【0050】
また、容器10によれば、キャップ12が計量カップとして用いられる場合に、スリット22を介して内筒18と外筒16とに略同様にウイルス不活化剤などの薬剤が略均一に注がれることとなるので、内筒18及び外筒16の区別を気にすることなく、目盛り意匠25を見ながら、薬剤の量を容易に測ることができる。また、内筒18が仕切りとならないのでキャップ12全体として薬剤を投入できるので注ぎ易い。
【0051】
また、容器10によれば、螺合突起19が目盛り意匠として機能するようにすることで、視認性を高めることができ、且つ別所に目盛り意匠を設ける必要がなくなるので、製造コストを抑制することができる。
【0052】
また、容器10によれば、ウイルス不活化剤などの薬剤をも薬剤収納部11に収納するので、安全に使用することができ、すなわち容器10の使用に伴うキャップ12の内筒18の割れ等の破損を防止して耐久性を高めて、安全且つ使い勝手よく収納、使用することができる。
【0053】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良等が自在である。
【0054】
その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置場所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
例えば、図3に示すように、上述した容器のキャップ112の変形例として、スリット122を円周方向に1/4周の間隔をもって間欠的に4箇所に形成してもよく、またこれに限らず、1箇所、3箇所、5箇所以上必要に応じて形成することができるが、いずれの場合にも円周方向で等間隔に形成されているとよい。
また、上述した実施形態では螺合突起(19)がスリット(22)に架橋されるようにして内筒(18)の内周面(23)に連続して形成されているとして説明したが、これに限らず、図3に示すように螺合突起119がスリット122に架橋しておらず断続的に形成されていてもよい。
さらに、上述した実施形態では、外筒(16)の内周面(24)に目盛り意匠(25)が設けられているとして説明したが、これに限らず、図3に示すように、目盛り意匠125を内筒18の外周面の一部に設けてもよい。この場合には視認性が高まって好ましい。
【0055】
さらに、本発明のウイルス不活化剤を噴霧するために用いられる容器としては、図4に示す噴霧装置30を他の実施形態として例示することができる。
【0056】
図4に示すように、本発明のウイルス不活化剤が収納される容器として例示されるハンドスプレー型の噴霧装置30は、中空略円筒形状の薬剤収納部31と、薬剤収納部31の上端部の中心付近に、薬剤収納部31の軸方向に沿って突出して設けられ且つ傾動されることにより薬剤収納部31内の薬剤を噴霧する不図示の噴霧手段と、薬剤収納部31の上端部に取り付けられたキャップ32と、を備えて構成される。また、キャップ32は、ねじ込み部材34によって薬剤収納部31に取り付けられている。
そして、キャップ32はトリガ35を有し、トリガ35が引かれることで薬剤収納部31に収納されたウイルス不活化剤が噴霧されることになる。
【実施例】
【0057】
以下に実施例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0058】
試験例1
本発明のウイルス不活化剤の効果を確認するため、以下のとおりにウイルスの不活化試験を行なった。
〈試験方法〉
1)試験検体
表1に示す試験検体を調製して用いた。また柿抽出物として、商品名パンシルBA−200E−1(リリース科学工業社製)を用いた。
【0059】
【表1】

【0060】
2)試験ウイルス
ネコカリシウイルス(Feline calicivirus vaccine strain)
【0061】
3)使用細胞
CRFK細胞(大日本製薬社製)
【0062】
4)使用培地
(1)細胞増殖培地
Eagle MEM(0.06mg/mlカナマイシン含有)に新生コウシ血清を10%加えたものを使用した。
(2)細胞維持培地
新生コウシ血清2%添加Eagle MEM
【0063】
5)ウイルス浮遊液の調製
(1)細胞の培養
細胞増殖培地を用い、使用細胞を組織培養用フラスコ内に単層培養した。
(2)ウイルスの接種
単層培養後にフラスコ内から細胞増殖培地を除き、試験ウイルスを接種した。次に細胞維持培地を加えて37℃±1℃の炭酸ガスインキュベーター(CO2濃度;5%)内で2日間培養した。
(3)ウイルス浮遊液の調製
培養後、倒立位相差顕微鏡を用いて細胞の形態を観察し、細胞に形態変化(細胞変性効果)が起こっていることを確認した。次に、培養液を遠心分離(3000r/min、10分間)し、得られた上澄み液をウイルス浮遊液とした。
【0064】
6)試験操作
試験検体1mlにウイルス浮遊液0.1mlを添加、混合し、作用液とした。室温で作用させ、30秒並びに1、5、10及び15分間作用後に細胞維持培地を用いて10倍に希釈した。なお、精製水を対照の試験液として同様に試験し、開始時及び15分後に測定を行なった。
【0065】
7)ウイルス感染価の測定
細胞増殖培地を用い、使用細胞を組織培養用マイクロプレート(96穴)内で単層培養した後、細胞増殖培地を除き細胞維持培地を0.1mlずつ加えた。次に、作用液の希釈液0.1mlを4穴ずつに接種し、37℃±1℃の炭酸ガスインキュベーター(CO2濃度;5%)内で7日間培養した。培養後、倒立位相差顕微鏡を用いて細胞の形態変化(細胞変性効果)の有無を観察し、Reed−Muench法により50%組織培養感染量(TCID50)を算出して作用液1ml当たりのウイルス感染価に換算した。
【0066】
〈試験結果〉
表2に示す作用液の測定値(TCID50)から、試験検体のウイルス不活化率(%)を以下の式により算出した。その結果を表3に示す。
式:不活化率(%)=100−測定時TCID50÷開始時TCID50×100
【0067】
【表2】

【0068】
【表3】

【0069】
表2から分かるように、試験検体は、ネコカリシウイルスの感染価を短時間で顕著に低減することができた。また、表3から分かるように、試験検体は、30秒後に90%以上、1分後に95%以上、10分後にほぼ100%の不活化率を示した。
【0070】
これらの結果から、柿抽出物を含む本発明のウイルス不活化剤は、ノロウイルス等のカリシウイルスに対して、短時間で高い不活化効果を発揮でき、カリシウイルスの感染予防に有効であることが確認された。
【0071】
試験例2
本発明のウイルス不活化剤の大腸菌に対する殺菌効果を確認するため、以下のとおりに殺菌試験を行なった。
[試験方法]
1)試験検体
表1記載の試験検体を調製して用いた。
2)試験菌株
大腸菌、血清型O−157;H7、ベロ毒素I及びII型産生株(Escherichia coli ATCC 43895)
3)菌数測定用培地及び培地条件
SCDLP寒天培地(日本製薬社製)、混釈平板培養法、35℃±1℃、2日間。
4)試験菌液の調製
試験菌株を普通寒天培地(栄研化学社製)で35℃±1℃、18〜24時間培養した後、生理食塩水に浮遊させ、菌数が約107/mlとなるように調製し、試験菌液とした。
5)試験操作
試験検体10mlに試験菌液を0.1ml接種し、試験液とした。室温で保存し、30秒並びに1、5、10、15分後に試験液1mlをSCDPL培地9mlに添加し、試験液中の生菌数を、菌数測定用培地を用いて測定した。
なお、対照として、精製水を用いて同様に試験し、開始時及び15分後に生菌数を測定した。
[試験結果]
表4に記載した生菌数の測定値から、試験検体の殺菌率を以下の式により算出した。その結果を表5に示す。
式:殺菌率(%)=100−測定時の生菌数÷開始時の生菌数×100
【0072】
【表4】

【0073】
【表5】

【0074】
表4から分かるように、試験検体は大腸菌に対して高い殺菌力を示した。また、表5から分かるように、試験検体は、大腸菌に対して30秒後でほぼ100%の殺菌率を有することが確認された。すなわち、柿抽出物を含む本発明のウイルス不活化剤は、カリシウイルスに対する不活化効果を有するとともに、大腸菌のような菌類に対しても短時間で顕著な殺菌力を有することが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】(a)は本発明の一実施形態に係る容器の一部破断正面図、(b)は(a)の容器におけるキャップの断面図である。
【図2】図1(b)のキャップの一部破断外観斜視図である。
【図3】本発明に係るキャップの他の変形例を示す一部破断外観斜視図である。
【図4】本発明の他の実施形態に係る噴霧装置の斜視図である。
【符号の説明】
【0076】
10 容器
11 薬剤収納部
12 キャップ
16 外筒
18 内筒
19 螺合突起
22 スリット
25 目盛り意匠
30 エアゾール噴霧装置
31 薬剤収納部
32 キャップ
34 ねじ込み部材
35 トリガ
36 ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柿抽出物を有効成分とするウイルス不活化剤。
【請求項2】
アルコールを含有する請求項1記載のウイルス不活化剤。
【請求項3】
有機酸を含有する請求項1又は2記載のウイルス不活化剤。
【請求項4】
液剤である請求項1乃至3のいずれか1項に記載のウイルス不活化剤。
【請求項5】
ウイルスがカリシウイルスである請求項1乃至4のいずれか1項に記載のウイルス不活化剤。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載のウイルス不活化剤を噴霧することを含むウイルス感染予防方法。
【請求項7】
口部を有して薬剤を収納する薬剤収納部と、外筒と前記口部に嵌合される内筒とを有するキャップと、を備え、ウイルス不活化剤をも収納し得る容器において、
前記内筒には、その軸方向に沿ってスリットがその周方向に間欠的に形成され、且つ
前記内筒の内周面には、前記口部に螺合嵌合するための螺合突起がその周方向に渡って形成されている
ことを特徴とする容器。
【請求項8】
前記キャップの前記外筒及び前記内筒の少なくとも一方に目盛り意匠が設けられている
ことを特徴とする請求項7に記載の容器。
【請求項9】
前記螺合突起が前記目盛り意匠として機能することを特徴とする請求項7又は8に記載の容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−7323(P2009−7323A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−258997(P2007−258997)
【出願日】平成19年10月2日(2007.10.2)
【出願人】(000100539)アース製薬株式会社 (191)
【Fターム(参考)】