説明

ウェイト算出方法、ウェイト算出装置、アダプティブアレーアンテナ、及びレーダ装置

【課題】ウェイト制御による時空間適応信号処理方式において、不要波方向を零にするためのウェイト算出に際し、比較的に時間を要するヌル行列の算出を、SINR特性の性能劣化を抑制しつつ短縮する。
【解決手段】アダプティブアレーアンテナ11で得られたレーダパルスの目標反射信号を受信部12で受信検波し、データ蓄積部13に用意される所定距離相当の長さの処理レンジセルに対して受信タイミングに沿った対応セル位置に記憶する。時空間適応信号処理部17は、ウェイト算出回路171において、目標信号を含むと想定されるレンジセルを除いたレンジセルのデータから共分散行列を演算し、適応ウェイトによりアンテナ受信信号にウェイト制御を施して出力データとする。ヌル行列Bnの算出方式を処理ステージ毎に、またはヌル行列Bnの算出方式を処理ステージに対して段階的に変更するようにし、演算時間の高速化を図り、かつSINRの劣化を抑える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェイト制御により、不要波を抑圧して目標からの反射信号を検出するのに好適なウェイト算出方法、そのウェイト方法を用いたウェイト算出装置、そのウェイト算出装置を採用したアダプティブアレーアンテナ、及びそのアダプティブアレーアンテナを組み込んだレーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パルスレーダ装置では、より目標検出精度を向上させるために、アダプティブアレーアンテナを組み込んで、いわゆるアダプティブヌルステアリングを行うようになってきている。このアダプティブヌルステアリングは、アダプティブアレーアンテナにおいて受信信号の位相及び振幅にウェイト制御を施すことで、妨害波等の不要波が到来する方向の指向性が零(ヌル)になるように受信合成ビームを形成する処理である。このような用途に用いられるアダプティブアレーアンテナには、多数の遅延信号が到来する環境下やクラッタ及び妨害波等の不要波が存在する環境下においても、上記の受信合成ビームの形成が適正に行われるようにウェイト制御を行うように求められている。
【0003】
そこで、アダプティブアレーアンテナにおいて、時空間適応信号処理(STAP:Space Time Adaptive Processing)方式を採用したウェイト制御方法が注目されている。この時空間適応信号処理(STAP)方式は、SINR(Signal to Interference plus Noise Ratio)をより改善し、不要波の到来方向での指向性が零(ヌル)に近い良好なビーム形成を行い得るという特徴を有する。
【0004】
時空間適応信号処理(STAP)方式では、以下のような処理が行われる。まず、複数(M)本、アレー状に配列されたアンテナ(素子アンテナ、すなわちチャンネル)により目標反射信号を受信し、その受信信号を、受信パルス幅に対応した幅のレンジ(距離)セル(range cell)が時間軸上に所定長さ連なり形成された全処理レンジセルの対応セル位置に記憶する。そして、その記憶されたデータから、目標信号を含むと想定されるレンジセル(処理適用レンジセルという)を除いたレンジセル、すなわち不要波のみから形成されると想定されるセルのデータから共分散行列を演算する。最終的に、ビーム合成回路において、その共分散行列に基づき算出された適応ウェイトによりアンテナ受信信号にウェイト制御を施す。
【0005】
この時空間適応信号処理方式におけるウェイト制御では、適応ウェイトを算出するために、レンジセル毎のウェイト演算がウェイト算出回路において行われる。このウェイト演算には、その一手法としてMWF(Multistage Wiener Filter)方式が知られている(非特許文献1参照)。
【0006】
ところが、上記非特許文献1の付録A(2956頁APPENDIX A : A LOW COMPLEXITY BLOCKING MATRIX)には、不要波方向を零にするためのヌル行列Bn の算出に際し、固有値分解による方法の算出時間を短縮する方法が記載されているものの、その方法を適用した場合の性能(SINR特性)に関しては記述がない。そこで、通常の固有値分解により各ステージのヌル行列Bnを算出する方法と、非特許文献1の付録Aに記載されている算出時間を短縮する方法を用いて、各処理ステージのヌル行列Bnを算出する方式について、それぞれの算出時間及びSINR特性を比較した。その結果、算出時間を短縮する方法を用いた場合は、通常の固有値分解によりヌル行列Bnを算出する方法に比して計算時間が短縮されるものの、性能が劣化することが確認された。
【非特許文献1】IEEE TRANSACTIONS ON INFORMATION THEORY, VOL. 44, NO. 7, NOVEMBER 1998 “A Multistage Representation of the Wiener Filter Based on Orthogonal Projections”
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上述べたように、従来のレーダ装置に用いられるアダプティブアレーアンテナのウェイト制御による時空間適応信号処理方式において、不要波方向を零にするためのウェイト算出に際し、比較的に時間を要するヌル行列の算出を、SINR特性の性能劣化を抑制しつつ短縮する有効な手段がなかった。
【0008】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたもので、ウェイト制御による時空間適応信号処理方式において、不要波方向を零にするためのウェイト算出に際し、比較的に時間を要するヌル行列の算出を、SINR特性の性能劣化を抑制しつつ短縮することのできるウェイト算出方法、ウェイト算出装置、アダプティブアレーアンテナ、レーダ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記問題を解決するために、本発明に係るウェイト演算方法は、アンテナを介して受信されるレーダパルスの目標反射信号を、時間軸上で所定距離相当の長さからなる複数の処理レンジセルに対して受信タイミングに沿った対応セル位置に記憶し、前記複数の処理レンジセルに記憶された値を用いて前記目標反射信号の到来方向に対して不要波の到来方向が零になるように受信合成ビームを形成するための前記受信信号の位相及び振幅に対するウェイトを算出するウェイト算出方法であって、前記目標反射信号の到来方向に対する方向行列に対し、前記不要波の到来方向を零になるようにするためのウェイトのヌル行列の算出方式を処理ステージ毎に、または処理ステージ内で段階的に変更することを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係るウェイト演算装置は、アンテナを介して受信されるレーダパルスの目標反射信号を、時間軸上で所定距離相当の長さからなる複数の処理レンジセルに対して受信タイミングに沿った対応セル位置に記憶する記憶手段と、前記複数の処理レンジセルに記憶された値を用いて前記目標反射信号の到来方向に対して不要波の到来方向が零になるように受信合成ビームを形成するための前記受信信号の位相及び振幅に対するウェイトを算出する算出手段と、前記目標反射信号の到来方向に対する方向行列に対し、前記不要波の到来方向を零になるようにするためのウェイトのヌル行列の算出方式を処理ステージ毎に、または処理ステージ内で段階的に変更する変更手段とを具備することを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係るアダプティブアレーアンテナは、複数の素子アンテナをアレー状に配列し、任意の方向に指向制御されてレーダパルスの目標反射信号を受信するアダプティブアレーアンテナであって、前記目標反射信号を、時間軸上で所定距離相当の長さからなる複数の処理レンジセルに対して受信タイミングに沿った対応セル位置に記憶し、前記複数の処理レンジセルに記憶された値を用いて前記目標反射信号の到来方向に対して不要波の到来方向が零になるように受信合成ビームを形成するための前記受信信号の位相及び振幅に対するウェイトを算出する際に、前記目標反射信号の到来方向に対する方向行列に対し、前記不要波の到来方向を零になるようにするためのウェイトのヌル行列の算出方式を処理ステージ毎に、または処理ステージ内で段階的に変更して得られる適応ウェイトを取り込み、前記適応ウェイトにより前記目標反射信号に対するウェイト制御を行い受信合成ビームを形成することを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係るレーダ装置は、複数の素子アンテナをアレー状に配列し、任意の方向に指向制御されてレーダパルスの目標反射信号を受信し、与えられた適応ウェイトにより前記目標反射信号に対するウェイト制御を行い受信合成ビームを形成するアダプティブアレーアンテナと、前記目標反射信号を、時間軸上で所定距離相当の長さからなる複数の処理レンジセルに対して受信タイミングに沿った対応セル位置に記憶し、前記複数の処理レンジセルに記憶された値を用いて前記目標反射信号の到来方向に対して不要波の到来方向が零になるように受信合成ビームを形成するための前記受信信号の位相及び振幅に対する適応ウェイトを算出する際に、前記目標反射信号の到来方向に対する方向行列に対し、前記不要波の到来方向を零になるようにするためのウェイトのヌル行列の算出方式を処理ステージ毎に、または処理ステージ内で段階的に変更して前記適応ウェイトを生成するウェイト算出装置と、前記アダプティブアレーアンテナでウェイト制御が施された目標反射信号から目標を検出する信号処理装置とを具備することを特徴とする。
【0013】
すなわち、本発明に係るウェイト算出方法では、目標反射信号の到来方向に対する方向行列に対し、前記不要波の到来方向を零になるようにするためのウェイトのヌル行列の算出方式を、処理ステージ毎に、または処理ステージ内で段階的に変更することで、演算時間の高速化を図り、かつSINRの劣化を抑えることができる。
【0014】
本発明のウェイト算出装置は、上記のように、その処理量を短縮可能な上記本発明に係るウェイト算出方法を使用するので、ウェイト算出の時間短縮が可能である。
【0015】
本発明のアダプティブアレイアンテナは、上記のように、ウェイト算出の時間短縮が可能な上記本発明のウェイト算出回路を採用するので、良好な合成ビームを短時間に形成することができる。
【0016】
本発明のレーダ装置は、上記のように、合成ビームを短時間に形成することが可能な本発明のアダプティブアレイアンテナを組み込むので、目標を迅速に捕捉することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明によれば、ウェイト制御による時空間適応信号処理方式において、不要波方向を零にするためのウェイト算出に際し、比較的に時間を要するヌル行列の算出を、SINR特性の性能劣化を抑制しつつ短縮することのできるウェイト算出方法、ウェイト算出装置、アダプティブアレーアンテナ、レーダ装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0019】
まず、前述の非特許文献1に記載されたウェイト演算の一手法としてのMWF(Multistage Wiener Filter)方式について説明する。
【0020】
MWF方式では、受信信号Xの到来方向の方向行列をA、また複素振幅ベクトルをS、平均0,分散σ2で与えられる熱雑音をnとしたとき、受信信号Xは次の(1)式で表される。
【0021】
X=A・S+n …(1)
また、間隔dxをなしてアレー状に配列されたM個の素子アンテナ#m(m:1〜M)により目標信号を受信したとき、受信周波数信号の波長をλ(Λ)、D個の到来目標信号d(d:1〜D)の到来方向を決めるステアリングベクトルa(θd)は、次の(2)式で表される。
【数1】

【0022】
また、空間系列に対する方向行列Aθは下記(3)式となる。
【数2】

【0023】
そこで、目標信号dの到来方向を決めるステアリングベクトルa(fd)は次の(4)式で示される。
【数3】

【0024】
このことから、時系列に対する方向行列Afは下記(5)式で表される。
【数4】

【0025】
よって、方向行列A(θ,f)は、次の(6)式
【数5】

で表される時空間ステアリングベクトルa(θd,fd)を用いて、下記(7)式で与えられる。
【数6】

【0026】
ここで、MWFにおけるウェイト演算は、非特許文献1に記載されているように、各ステージでヌル行列Bnを算出しなければならない。通常、このヌル行列Bnは各ステージへの入力ベクトルhnの固有値分解を行い固有ベクトルの直交を利用することで算出されるが、一般的には多くの算出時間を要する。図1に非特許文献1に記載されているMWFにおけるウェイト算出方法の処理の流れを示す。
【0027】
図1に示す処理は、Forward Recursion(前方回帰)、Backward Recursion(後方回帰)の演算処理を複数の処理ステージで実行している。ここで、Bi=null(hi)はブロッキングマトリクス(Bとhをかけると全てが零になるヌル行列)を示している。ヌル行列Bnの算出方法として、非特許文献1では特異値分解及びQR分解を用いればよいこと、さらには付録Aとして計算量を削減し効率的に算出する方法が記載されており、これらの方式を用いることで、通常の固有値分解を行う方法に比して大幅な算出時間の短縮を図ることができる。しかしながら、前述のように、算出時間を短縮する方法を用いた場合は、通常の固有値分解によりヌル行列Bnを算出する方法に比して計算時間が短縮されるものの、性能が劣化する。
【0028】
一例として、固有値分解により各ステージのヌル行列Bnを算出する方式と、非特許文献1の付録Aに記載されている算出時間を短縮する方法を用いて各ステージのヌル行列Bnを算出する方式とで、算出時間及びSINR特性を確認した結果を図2及び図3に示す。図から分かるように、算出時間を短縮する方法を用いた場合は、固有値分解によりヌル行列Bnを算出する方法に比して計算時間が短縮されるものの、性能が劣化する。
【0029】
そこで、本発明に係るウェイト演算方法は、ヌル行列の算出方法を、処理ステージ毎に、または処理ステージに対して段階的に、固有値分解による方法、非特許文献1の付録Aに記載されている方法、特異値分解による方法、QR分解による方法、実効逆共分散による方法(ECI:Effective Covariance Inverse,例えばI−hn・hn^H,ここで、Iは単位行列、Hは複素共役転置)といった各種方法に変更してウェイトを得る。
【0030】
このように、本発明のウェイト算出方法は、ヌル行列Bnの算出方式を処理ステージ毎に、またはヌル行列Bnの算出方式を処理ステージに対して段階的に変更することで、演算時間の高速化を図り、かつSINRの劣化を抑えることが可能である。
【0031】
本発明のウェイト算出装置は、上記のように、その処理量を短縮可能な上記本発明に係るウェイト算出方法を使用するので、ウェイト算出の時間短縮が可能である。
【0032】
本発明のアダプティブアレイアンテナは、上記のように、ウェイト算出の時間短縮が可能な上記本発明のウェイト算出回路を採用するので、良好な合成ビームを短時間に形成することができる。
【0033】
本発明のレーダ装置は、上記のように、合成ビームを短時間に形成することが可能な本発明のアダプティブアレイアンテナを組み込むので、目標を迅速に捕捉することができる。特に、開口合成レーダ装置に適用した場合には、上記のように、合成ビームを短時間に形成することがアダプティブアレイアンテナを組み込むので、目標の形状を迅速に把握することができる。
【0034】
ここで、ヌル行列Bnの算出方式を処理ステージに対して段階的に変更した場合(M=8、N=8、サンプルデータ数64とし、nステージまではヌル行列算出を固有値分解による方法を用い、(n−1)ステージ以降のヌル行列算出を非特許文献1の付録Aに記載されている方法とした場合)におけるSINR特性例を図4に示す。図4から明らかなように、本発明を適用することで、SINR特性の劣化が抑えることが可能となる。
【0035】
図5は本発明を適用した時空間適応信号処理におけるウェイト算出装置の概略ブロック構成図である。図5において、11はM個のアンテナ素子でレーダパルスの目標反射信号を受信するアダプティブアレーアンテナであり、このアンテナ11の各素子出力は受信部12で受信検波されて、データ蓄積部13に用意される所定距離相当の長さの処理レンジセルに対して受信タイミングに沿った対応セル位置に記憶される。
【0036】
ここで、一部のアンテナ素子出力はリファレンス信号推定部14に送られ、受信信号の振幅・位相の基準として用いられる。励振部16は、リファレンス信号推定部14及びリファレンス信号生成部15を定期的に励振させて、所定距離相当のレンジセルそれぞれのウェイト算出のためのリファレンス信号を推定し生成する。
【0037】
また、上記データ蓄積部13の蓄積データは、時空間適応信号処理部17に送られる。この時空間適応信号処理部17は、ウェイト算出回路171において、目標信号を含むと想定されるレンジセルを除いたレンジセル、すなわち不要波のみから形成されると想定されるセルのデータから共分散行列を演算する。最終的に、ビーム合成回路172において、その共分散行列に基づき算出された適応ウェイトによりアンテナ受信信号にウェイト制御を施して出力データとする。
【0038】
上記構成の時空間適応信号処理方式におけるウェイト制御では、適応ウェイトを算出するために、レンジセル毎のウェイト演算がウェイト算出回路171において行われる。このウェイト算出回路171に先に述べたウェイト算出方法、すなわちヌル行列Bnの算出方式を処理ステージ毎に、またはヌル行列Bnの算出方式を処理ステージに対して段階的に変更する方法を採用する。これにより、演算時間の高速化を図り、かつSINRの劣化を抑えることが可能となる。
【0039】
尚、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】非特許文献1に記載されているMWFにおけるウェイト算出方法の処理の流れを示す図。
【図2】非特許文献1に記載されている固有値分解による方法と付録Aで記載されている方法それぞれのSINR特性を示す図。
【図3】非特許文献1に記載されている固有値分解による方法と付録Aで記載されている方法の計算時間の比較である。
【図4】本発明の例として、nステージまではヌル行列算出を固有値分解による方法を用い、(n−1)ステージ以降のヌル行列算出を非特許文献1の付録Aに記載されている方法とした場合のSINR特性を示す図。
【図5】本発明の実施形態である時空間適応信号処理におけるウェイト算出部の概略構成を示すブロック図。
【符号の説明】
【0041】
11…アダプティブアレーアンテナ、12…受信部、13…データ蓄積部、14…リファレンス信号推定部、15…リファレンス信号生成部、16…励振部、17…時空間適応信号処理部、171…ウェイト算出回路、172…ビーム合成回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナを介して受信されるレーダパルスの目標反射信号を、時間軸上で所定距離相当の長さからなる複数の処理レンジセルに対して受信タイミングに沿った対応セル位置に記憶し、
前記複数の処理レンジセルに記憶された値を用いて前記目標反射信号の到来方向に対して不要波の到来方向が零になるように受信合成ビームを形成するための前記受信信号の位相及び振幅に対するウェイトを算出するウェイト算出方法であって、
前記目標反射信号の到来方向に対する方向行列に対し、前記不要波の到来方向を零になるようにするためのウェイトのヌル行列の算出方式を処理ステージ毎に、または処理ステージ内で段階的に変更することを特徴とするウェイト算出方法。
【請求項2】
前記ヌル行列の算出方式には、固有値分解による方法、固有値分解による方法の算出時間が短縮された方法、特異値分解による方法、QR分解による方法、実効逆共分散による方法のいずれかを用いることを特徴とする請求項1記載のウェイト算出方法。
【請求項3】
アンテナを介して受信されるレーダパルスの目標反射信号を、時間軸上で所定距離相当の長さからなる複数の処理レンジセルに対して受信タイミングに沿った対応セル位置に記憶する記憶手段と、
前記複数の処理レンジセルに記憶された値を用いて前記目標反射信号の到来方向に対して不要波の到来方向が零になるように受信合成ビームを形成するための前記受信信号の位相及び振幅に対するウェイトを算出する算出手段と、
前記目標反射信号の到来方向に対する方向行列に対し、前記不要波の到来方向を零になるようにするためのウェイトのヌル行列の算出方式を処理ステージ毎に、または処理ステージ内で段階的に変更する変更手段と
を具備することを特徴とするウェイト算出装置。
【請求項4】
前記算出手段は、前記目標反射信号に対応したリファレンス信号または推定リファレンス信号を用いて前記ウェイトを算出することを特徴とする請求項3に記載のウェイト算出装置。
【請求項5】
前記ヌル行列の算出方式には、固有値分解による方法、固有値分解による方法の算出時間が短縮された方法、特異値分解による方法、QR分解による方法、実効逆共分散による方法のいずれかを用いることを特徴とする請求項1記載のウェイト算出方法。
【請求項6】
複数の素子アンテナをアレー状に配列し、任意の方向に指向制御されてレーダパルスの目標反射信号を受信するアダプティブアレーアンテナであって、
前記目標反射信号を、時間軸上で所定距離相当の長さからなる複数の処理レンジセルに対して受信タイミングに沿った対応セル位置に記憶し、前記複数の処理レンジセルに記憶された値を用いて前記目標反射信号の到来方向に対して不要波の到来方向が零になるように受信合成ビームを形成するための前記受信信号の位相及び振幅に対するウェイトを算出する際に、前記目標反射信号の到来方向に対する方向行列に対し、前記不要波の到来方向を零になるようにするためのウェイトのヌル行列の算出方式を処理ステージ毎に、または処理ステージ内で段階的に変更して得られる適応ウェイトを取り込み、前記適応ウェイトにより前記目標反射信号に対するウェイト制御を行い受信合成ビームを形成することを特徴とするアダプティブアレーアンテナ。
【請求項7】
複数の素子アンテナをアレー状に配列し、任意の方向に指向制御されてレーダパルスの目標反射信号を受信し、与えられた適応ウェイトにより前記目標反射信号に対するウェイト制御を行い受信合成ビームを形成するアダプティブアレーアンテナと、
前記目標反射信号を、時間軸上で所定距離相当の長さからなる複数の処理レンジセルに対して受信タイミングに沿った対応セル位置に記憶し、前記複数の処理レンジセルに記憶された値を用いて前記目標反射信号の到来方向に対して不要波の到来方向が零になるように受信合成ビームを形成するための前記受信信号の位相及び振幅に対する適応ウェイトを算出する際に、前記目標反射信号の到来方向に対する方向行列に対し、前記不要波の到来方向を零になるようにするためのウェイトのヌル行列の算出方式を処理ステージ毎に、または処理ステージ内で段階的に変更して前記適応ウェイトを生成するウェイト算出装置と、
前記アダプティブアレーアンテナでウェイト制御が施された目標反射信号から目標を検出する信号処理装置と
を具備することを特徴とするレーダ装置。
【請求項8】
前記信号処理装置は、目標の形状を検出することを特徴とする請求項7記載のレーダ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−208702(P2007−208702A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−25790(P2006−25790)
【出願日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(304027279)国立大学法人 新潟大学 (310)
【Fターム(参考)】