説明

ウェザストリップ

【課題】窓ガラスに押付けられるシールリップからの急激な反力の増大をもたらすことなく、シールリップの間隔を狭めてベース部の幅を狭くし、トリムからのはみ出しを少なくして見栄えを向上させる。
【解決手段】ベース部22と、該ベース部22より斜め上向きに突出するシールリップ23a、23bよりなるインナシール21において、窓ガラス4に押付けられたとき、上下のシールリップ23a、23bが重ならないように上位のシールリップ23aに抉りを形成し、これにより上位のシールリップ23aの取付け位置を下げ、上下のシールリップ23a、23bの間隔を狭めても反力の急激な増大をもたらさないようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用ドアのベルトラインにおけるウェザストリップに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用ドアのベルトラインには、昇降する窓ガラスに弾接して窓ガラスとの間をシールするシールリップを備えたウェザストリップが取付けられている。
【0003】
図1は、インナシールとアウタシールよりなるベルトライン用ウェザストリップのうち、ドアインナパネルに取付けられるインナシールの一例を示すもので、該インナシール1は、ドアインナパネルに取着のトリム2に差込んで取付けられる倒L形断面のベース部3と、該ベース部から斜め上向きに突出して窓ガラス4に弾接し、窓ガラス4との間をシールするシールリップ5a、5bからなり、シールリップ5a、5bは所望のシール性能を確保するため図示するように2枚以上設けられていることが多い。
【0004】
図2は、特許文献1に開示されるベルトライン用ウェザストリップを示すもので、インナシール7とアウタシール8からなり、いずれも窓ガラス9の内側面及び外側面に弾接するシールリップ11a、11bとシールリップ12a、12bを上下に有している。
【特許文献1】実願昭62−139025号(実開昭64−44213号)のマイクロフィルム
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、図1に例示されるドアパネルのインナシール1において、ベース部3の幅を狭くしてウェザストリップの小型化を図らんとするものであるが、図3に示すように単に下位に位置するシールリップ5bの取付位置を上下にシフトしたのでは、シールリップ5b下のベース部3をカットでき(図3のc部がカット部分を示す)、カット部だけベース部3の幅(図の上下方向の幅)を狭くできたとしても、上下のシールリップ5a、5bの間隔が狭くなるため、シールリップ5a、5bが窓ガラス4に押付けられて撓んだとき、図示するようにシールリップ同士が重なり、これがためシールリップ5a、5bからの反力が急激に上昇して窓ガラスの昇降不良を来たすおそれがあるほか、シールリップ5a、5bの撓みが増加してトリム2からのシールリップ5aのはみ出しも増加し、見栄えも低下する。
【0006】
図2に示されるウェザストリップにおいて、アウタシール8の下位に位置するシールリップ12bに顕著に示されるように、切断V形状に形成すれば、ベース部13の幅を狭くでき、また窓ガラス9に押付けられて撓んだとき、上位に位置するシールリップ12aとの間に格納スペース14も確保できると共に、上下のシールリップ同士が重なり合わないようにできるため、シールリップ同士が重なることによって生ずるシールリップ12a、12Bからの反力の急激な増加も回避できるが、シールリップ12bをV形状に形成することにより、シールリップ12bの形状が複雑となり、シールリップ12bを形成するための材料使用量も多くなる。
【0007】
本発明は、上記のような問題を生ずることなく、ベース部の幅を狭くして小型化を可能にするベルトライン用ウェザストリップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、ドアインナパネルに取付けられるインナシールと、ドアアウタパネルに取付けられるアウタシールからなり、インナシールとアウタシールのうち、少なくとも一方はパネルに取付けられるベース部と、該ベース部より上下に適宜の間隔を存して、それぞれ斜め上向きに突出し、窓ガラスに弾接する複数のシールリップを有する自動車用ドアのベルトラインに設けられるウェザストリップにおいて、インナシール及び若しくはアウタシールの複数のシールリップのうち、少なくとも上下に隣合う二本のシールリップは、そのうちの少なくとも一方に窓ガラスに押付けられて撓んだとき、他方が納まり、或いは他方との接触を回避するための抉りが形成されていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、シールリップは下面に抉りを形成した上位に位置するシールリップと、下位に位置するシールリップの二枚のシールリップとなることを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る発明は、ドアインナパネルに取付けられるインナシールと、ドアアウタパネルに取付けられるアウタシールよりなり、インナシールとアウタシールのうち、少なくとも一方はパネルに取付けられるベース部と、該ベース部より突設される中空シール部と、前記中空シール部より突設され、中空シール部と共に窓ガラスに弾接するシールリップを有する自動車用ドアのベルトラインに設けられるウェザストリップにおいて、上記中空シール部には窓ガラスに押し付けられた状態で上記シールリップが納まるか、或いは該シールリップとの接触を回避するための抉りが形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1及び2に係る発明によると、シールリップは間隔を狭めると、窓ガラスに押付けられて撓んだとき、重なり合うが、上位に位置するシールリップには下位に位置するシールリップの撓みに対応して抉りが形成され、下位に位置するシールリップが撓んでも上位に位置するシールリップと接触しないか、接触するにしてもシールリップからの反力の急激な増大を回避することができる。したがって少なくとも隣り合う2つのシールリップにおいてはシールリップの反力の急激な増大をもたらすことなく、シールリップの間隔を狭めることができ、狭めた分だけベース部の幅を狭くできる。またシールリップの間隔を狭めることができることにより最上位に位置するシールリップの取付位置を下げ、はみ出しを少なくしてベルトラインでの露出を少なくし、見栄えを向上させることができる。
【0012】
請求項3に係る発明によると、シールリップは中空シール部に形成されているため、ベース部は中空シール部を形成できるだけの幅を有していればよく、シールリップをベース部に形成するのに比べ、ベース部の幅を狭くできること、中空シール部には抉りが形成されていることにより、窓ガラスに押付けられるシールリップが撓んでも中空シール部と接触しないか、接触するにしても中空シール部とシールリップからの反力の急激な増大を回避することができる。また反力の急激な増大を回避できることにより、中空シール部の変形を少なくできるうえ、中空シール部の取付位置を下げることにより、はみ出しを少なくしてベルトラインでの露出を少なくし、見栄えを向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態のウェザストリップについて図面により説明する。図中、図1及び図2に示すものと同一構造部分には、同一符号を付した。
【0014】
図4に示すウェザストリップのインナシール21は、ドアインナパネルに取着のトリム2に差込んで取付けられる差込部22aを備えた略倒L形断面のベース部22と、該ベース部22から斜め上向きに突出し、窓ガラス4に弾接するシールリップ23a、23bとからなり、上位に位置するシールリップ23aには下位に位置するシールリップ23bに対向する側(図の下側)に抉り24が形成されている。図1に示すインナシール1と形状を異にするのは、上位に位置するシールリップ23aに抉り24を形成し、窓ガラス4に押付けられて撓んだとき、図5に示すように下位に位置するシールリップ23bが抉り24によって上位に位置するシールリップ23aと接触しないか、接触するにしてもシールリップ23a、23bからの反力を低減できるようにしてあり、シールリップ23a、23b間の間隔を狭くしてベース部23の幅を前記図1に示すベース部3の幅より狭くしていることである。
【0015】
本実施形態のインナシール21においては、シールリップ23a、23bの間隔が狭く、該シールリップ23a、23bが窓ガラス4に押付けられて重なりあっても上位に位置するシールリップ23aに形成される抉り24によって下位に位置するシールリップ23bの撓みが吸収され、両シールリップ23a、23bからの反力の急激な増大を抑えることができる。したがって反力の急激な増大をもたらすことなくシールリップ23a、23bの間隔を狭めてベース部22の幅を狭くし、ベース部22のための材料の使用量を少なくすることができる。また上位に位置するシールリップ23aの取付位置を下げてシールリップ間の間隔を狭めることが可能であり、シールリップの反力の増大による撓みの増加も少ないことから、図1及び図2に示す従来のインナシール1よりもトリム2からのはみ出し量を少なくし、ベルトラインでの露出を少なくして見栄えを向上させることができる。また、シールリップ23a、23bの先端付近は、ベースとの連結部と比較して肉厚で、鈍角な丸みのある面でガラスと接触しているため、窓ガラスの昇降時にまき込まれ難い。
【0016】
前述の実施形態にシールリップ23a、23bが二枚設けられている例を示すが、別の実施形態ではシールリップが三枚以上形成され、そのうち最下位に位置するシールリップを除く、少なくとも一つのシールリップのみに前記抉り24が形成され、好ましくは最下位に位置するシールリップを除く他の全てのシールリップに抉り24が形成される。前者のインナシールにおいては、抉りを形成したシールリップと、その下位に位置するシールリップの間隔のみを狭めることができ、後者のインナシールにおいては、全てのシールリップ間の間隔を狭め、ベース部の幅を最小にすることができる。
【0017】
前記実施形態はインナシール21について示したがアウタシールについても、シールリップを同様に形成し、ベース部の幅を狭くすることができる。
【0018】
図6に示すインナシール31は、前記ベース部22と同一形態の幅狭のベース部32と、該ベース部32より突設される中空シール部33と、該中空シール部33と一体形成されるシールリップ34よりなり、中空シール部33にはシールリップ34の撓みに対応する箇所に抉り35が形成されている。
【0019】
本実施形態のインナシール31によると、シールリップ34を中空シール部33に一体形成したことによりベース部32の幅が狭められ、これによりベース部32を形成するための材料の使用量を少なくできると共に、中空シール部33の取付位置を下げてトリム2からのはみ出しを少なくし、ベルトラインでの露出を少なくして見栄えを向上させることができる。シールリップ24を中空シール部33に一体形成されるが、中空シール部33に抉り35を形成したことにより窓ガラス4に押付けられたときの反力の急激な増大を避けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】従来のインナシールの断面図。
【図2】従来のベルトライン用ウェザストリップの断面図。
【図3】図1に示すインナシールにおいて下位に位置するシールリップを上方にシフトした場合の断面図。
【図4】本発明に係るインナシールの断面図。
【図5】窓ガラスに押付けられ撓んだ状態を示す断面図。
【図6】本発明に係るインナシールの別の態様の断面図。
【符号の説明】
【0021】
1、21、31・・インナシール
2・・トリム
3、22、32・・ベース部
4・・窓ガラス
5a、5b、23a、23b、34・・シールリップ
22a・・差込部
24、35・・抉り
33・・中空シール部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドアインナパネルに取付けられるインナシール21と、ドアアウタパネルに取付けられるアウタシールからなり、インナシール21とアウタシールのうち、少なくとも一方はパネルに取付けられるベース部22と、該ベース部22より上下に適宜の間隔を存して、それぞれ斜め上向きに突出し、窓ガラス4に弾接する複数のシールリップ23a、23bを有する自動車用ドアのベルトラインに設けられるウェザストリップにおいて、インナシール21及び若しくはアウタシールの複数のシールリップ23a、23bのうち、少なくとも上下に隣合う二本のシールリップは、そのうちの少なくとも一方に窓ガラス4に押付けられて撓んだとき、他方が納まり、或いは他方との接触を回避するための抉り24が形成されていることを特徴とするウェザストリップ。
【請求項2】
シールリップは下面に抉り24を形成した上位に位置するシールリップ23aと、下位に位置するシールリップ23bの二枚のシールリップとなることを特徴とする請求項1記載のウェザストリップ。
【請求項3】
ドアインナパネルに取付けられるインナシール31と、ドアアウタパネルに取付けられるアウタシールよりなり、インナシール31とアウタシールのうち、少なくとも一方はパネルに取付けられるベース部32と、該ベース部32より突設される中空シール部33と、前記中空シール部33より突設され、中空シール部33と共に窓ガラス4に弾接するシールリップ34を有する自動車用ドアのベルトラインに設けられるウェザストリップにおいて、上記中空シール部33には窓ガラス4に押し付けられた状態で上記シールリップ34が納まるか、或いは該シールリップ34との接触を回避するための抉り35が形成されることを特徴とするウェザストリップ。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate