説明

ウェハのパターン検査方法及び装置

【課題】パターンの異なるウェハに対して自動学習機能を備えたウェハパターン検査方法及び装置を提供する。
【解決手段】ウェハパターン検査方法及び装置は、検査対象であるウェハのパターン又はチップの検査画像を入力し、入力した検査画像と予め記憶されたリファレンス画像とを比較し、比較画像の相違量よりパターン又はチップの良否を判定する段階を備える。検査中に良品率が所定の閾値以下に低下した場合、ずれたパターン又はチップの画像をリファレンス画像として学習処理を再度行う。そして学習処理でパターンを学習した後に均一なパターンを探し、均一なパターン部分であれば、パターン検査以外のピッチ検査などの検査でウェハの検査を行うか、あるいは均一パターン部分でパターン検査とピッチ検査を同時に行ない、パターン検査の感度を決定し、決定した感度でウェハ全面のパターン又はチップを検査する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェハのパターンを検査するパターン検査方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、特許文献1の請求項1に示すように、ウェハの検査画像を入力する手段と、入力した検査画像と予め記憶されたマスタ画像とを比較する手段と、比較画像の相違量よりウェハの良否を判定する手段と、上記相違量が所定値以下の時に、上記入力された検査画像を新たなマスタ画像として記憶する手段と、上記良否の判定結果を出力する手段とを具備するウェハパターン検査装置が知られている。
【特許文献1】特開平5−281151号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来のパターンマッチング検査ではパターンが大きく異なると、検査ができない。なぜなら、相違量が大きすぎて、判定結果が常に否となってしまう虞があるからである。
【0004】
一方、現状では製造プロセスによってパターンが異なるウェハ、すなわちパターンのずれ、色むら等が異なるウェハが検査対象となることがある。
【0005】
また、製品によってはパターンの差異が品質、性能上問題にならない場合がある。このような製品はウェハのパターンマッチング検査では適正に検査できなかった。
【0006】
他方、パターンが異なるウェハの場合、差異について学習処理と検査感度を甘くすれば、ある程度検査を行う事ができる。
【0007】
しかし、差異の学習処理や検出感度を甘くしすぎると、検出性が低下してしまう。
【0008】
しかも、学習処理を自動で行う場合、所望の検出性を保証することが難しい。
【0009】
本発明の課題は、パターンの異なるウェハに対して自動学習機能を可能とするウェハパターン検査方法及び装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明の解決手段を例示すると、特許請求の範囲の各請求項に記載されたウェハのパターン検査方法及び装置である。
【発明の効果】
【0011】
もとのリファレンスからのパターンずれ、色むら等が大きく異なるパターンやチップがあった場合であっても、製品の性能上問題にならないウェハとして良品か否かを判定し、検査の作業効率、本来の良品率の維持を保つことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明を実施するための最良の形態を以下説明する。
【0013】
(1)検査中に過剰検出が大量に発生した場合(良品率が極端に低下した場合)、学習処理を再度行なう。詳述すると、学習処理でパターンを学習した後に均一なパターンを探し、均一なパターン部分であれば、ピッチ検査などのパターン検査以外の検査でウェハの検査を行う。
【0014】
(2)均一パターン部分でパターン検査とピッチ検査を同時に行ない、ピッチ検査の結果からパターン検査の感度を決定する。
【0015】
(3)上記のように決定した感度でウェハ全面のパターン又はチップを検査する。
【0016】
このようにすることで、パターンが大きく異なる場合であっても、製品の性能上問題にならないウェハとして良品を判定し、検査の作業効率、本来の良品率の維持を保つことができる。
【0017】
良品率が極端に低下して所定の閾値以下になる場合、学習処理を再度行なうが、その所定の閾値は、装置の使用者が任意に設定可能である(例えば90〜95%の間の良品率)。ただし、所定の閾値は、1つの所望の値のみに固定してもよいし、最低の値のみを固定しておいて、所望の値を可変にしておいて必要に応じて調整するようにしてもよい。例えば、最低の値を90%に固定し、それ以上の任意の閾値(例えば95%)を設定するようにしてもよい。とくに、検査対象に応じて所望の閾値に調整することを可能とするのが好ましい。
【0018】
本発明は、ウェハのパターン又はチップの検査画像を入力し、入力した検査画像と予め記憶されていたリファレンス画像とを比較し、比較画像の相違量によってウェハの良否を判定する段階を備えたウェハのパターン検査方法及び装置を改良したものである。
【0019】
本発明においては、検査中に良品率が極端に低下して所定値(例えば90%や95%、あるいは他の値)以下になった場合、検査中のパターン又はチップの画像をリファレンス画像として学習処理を再度行い、又は、学習処理でパターンを学習した後に均一なパターンを探し、均一なパターン部分であれば、ピッチ検査などのパターン検査以外の検査でウェハの検査を行うか、あるいは均一パターン部分でパターン検査とピッチ検査を同時に行ない、パターン検査の感度を決定し、決定した感度でウェハ全面のパターン又はチップを検査する。
【実施例】
【0020】
図面を参照して、本発明の好適な実施例を説明する。
【0021】
図1は本発明に係るウェハのパターン(外観)検査方法を実施するのに好適な外観検査装置10を示す。
【0022】
図1の(A)において、外観検査装置10は、例えば図1の(B)に示すような半導体ウェハ11上に整列して形成された多数の半導体チップ11aに形成されたそれぞれの回路パターンの欠陥が許容内であるか否かを判定するのに使用される。以下、本発明を半導体ウェハ11上に形成された半導体チップ11aの検査に適用した例に沿って説明する。
【0023】
外観検査装置10は、図1の(A)に示すように、光学的撮影機構10aと、該光学的撮影機構の動作を制御しかつこの光学的撮影機構10aにより得られた画像情報を演算処理するための制御演算手段10bとを備える。
【0024】
光学的撮影機構10aは、半導体ウェハ11を保持するステージ12aが設けられた移動部12と、該移動部のステージ12aをXY平面上でX軸方向、Y軸方向に移動させ、Z軸の回りに回転させるためのドライバ13と、照明部14による照明下でステージ12a上の半導体ウェハ11に形成された所望の半導体チップ11aの表面画像を撮影するための撮像部15とを有する。この撮像部15は、従来よく知られているように、例えばCCD撮像素子およびその光学系で構成される。
【0025】
制御演算手段(演算処理部)10bは演算処理回路16を有し、該演算処理回路16は、例えばメモリー17に格納されたプログラムに沿って動作する中央処理装置(CPU)により構成することができる。演算処理回路16は、制御回路18を介して、光学的撮影機構10aのドライバ13、照明部14および撮像部15の各作動を制御し、またメモリー17に格納された情報に従って撮像部15により得られた画像に欠陥検出処理を施す。
【0026】
この演算処理回路16には、撮像部15により得られた画像の検査領域を複数のエリアに区画するためのエリア設定部16aと、前記画像の検査領域と検査のためのテンプレートとの比較により欠陥部位を抽出する欠陥抽出部16bと、該欠陥抽出部により抽出された欠陥部位が許容内であるか否かを判定する判定部16cと、許容内であるが製品の性能上問題がないパターンのズレがある場合に、そのずれたパターンの画像あるいはチップの画像、あるいはそれらの平均画像をリファレンス画像(参照画像または基準画像)として学習する学習機能部16dが設けられている。
【0027】
また、演算処理回路16には、例えば液晶あるいはCRTで構成された表示部を有するモニタ19と、例えばキーボードおよびマウス等で構成された入力部20とが接続されている。モニタ19には、撮像部15で撮影された画像および演算処理回路16で処理された画像が表示可能であり、また光学的撮影機構10aの操作に必要な情報が表示される。これらモニタ19に表示される情報に基づいて、入力部20から外観検査装置10の操作に必要な命令を適宜入力することができる。
【0028】
撮像部15は、リファレンス画像(参照画像または基準画像)および被検査体のための画像を撮影する。撮像部15により撮影された半導体チップ11aの表面画像から所望の検査領域が切り出され、モニタ19上に表示される。
【0029】
図2において、左側の画像は、前述のようにして切り出された検査領域の表示画面21Aの一例である。この表示画面21Aは、半導体チップ11aがメモリーチップである例を示している。
【0030】
図6には、パターン画像、チップ画像が示されている。表面画像中、星印つまり★印で示す箇所に欠陥部位が観察される。観察される欠陥は、回路パターンへの異物の付着あるいは回路パターンの部分的な欠損等の欠陥である。
【0031】
リファレンス画像(基準画像)には、半導体ウェハ11の各半導体チップ11aから得られる前記した表面画像21Aのうち、欠損や異物から成る前記欠陥が少ない最も良質の半導体チップ11aの表面画像(21A)、あるいは平均画像が選択され、これがリファレンス画像(基準画像)として使用される。このリファレンス画像(基準画像)と、検査対象つまり被検査体である他の半導体チップ11aの表面画像21Aとが、演算処理回路16により、欠陥の抽出のために比較される。
【0032】
演算処理回路16は、従来よく知られているように、リファレンス画像(基準画像)と被検査体の半導体チップ11aの画像との比較を行う。パターン画像全体、あるいはパターン画像中の一部のチップ画像について、リファレンス画像(基準画像)と被検査体のパターン全体、あるいはチップについて、感度調整を行う。
【0033】
その際、前処理として、照明部14による照明むらを除去するためのシェーディング処理、エッジの明確化を促進するための多値化処理、エッジ検出に際してパターンの粗密や画像の濃淡の影響を低減するための色調変換処理、パターンの認識を容易とするための色度変換あるいはノイズを除去するための膨張/収縮フィルタを用いた膨張/収縮処理等の処理を行う。これらの処理は、従来よく知られている方法で実施できる。これらは、適宜選択して組み合わせることができる。
【0034】
演算処理回路16は、リファレンス画像(基準画像)と被検査体の画像前処理が施された画像を比較し、パターンの粗密や画像の濃淡、色度などから、リファレンス画像(基準画像)を用いた検出の感度を調整する。
【0035】
以下、最適の検査手順の一例を説明する。
【0036】
図2に示すように、パターン検査において、事前に比較対象となる画像を登録する。
【0037】
まず、検査の基準とするリファレンス画像(基準画像)を作成する(レシピ作成)。この場合、リファレンス画像(基準画像)は、例えば1チップとする。ただし、複数のチップ画像を組として基準画像としてもよい。
【0038】
装置の演算処理部と別体に設けられた記憶部(メモリー)に、このリファレンス画像(基準画像)を記憶させ、演算処理部の学習機能を介して、学習させておく。学習後、平均画像がリファレンス画像(基準画像)として記憶部に記憶される。
【0039】
その結果、図3に示すように、左側のパターンは、リファレンス画像(基準画像)と一致するので、検査OKと判定されるが、右側のパターンは、リファレンス画像(基準画像)とパターンが異なるため、検査NGであると判定される。
【0040】
しかしながら、この場合、パターンがズレているので、検査するウェハのパターン(あるいはチップ)がNGになってしまうが、製品には多少のパターンズレは問題にならないものがある。そこで、良品率(基準画像との相違量が少ない良品の占める割合)が所定値以下に下がると、自動的にリファレンス画像(基準画像)を作り直す。例えば、ほぼ97%の良品率でパターン検査作業を続けるうちに、急に良品率が95%に下がってしまう場合、閾値が95%に設定されていると、そこで自動的にリファレンス画像(基準画像)を作り直し、その良品率でパターン検査を再開する。
【0041】
図4に示すように、例えば95%に良品率が下がってしまったが、製品には問題にならないズレがあるウェハのパターン(あるいはチップ)を基準画像としてリファレンス画像を作成し直すのである。平均画像を変更し、リファレンス画像(基準画像)を再学習し、そのリファレンス画像(基準画像)をもとにウェハのパターンあるいはチップの検査を再開する。
【0042】
図5に示すように、リファレンス画像(基準画像)が修正されると、リファレンス画像修正前のパターンと異なっていても、検査結果はOKとなる。
【0043】
本発明によれば、例えば、良品率が最低の90%よりも小さい、例えば、85%、あるいは他の所定値に下がってしまった場合に直ちに再学習処理を行い、リファレンス画像(基準画像)を作り直すことが望ましい。
【0044】
なお、本発明は、一定の固定された良品率(95%やその他の設定値)に限定されず、作業者が所定の最低良品率(例えば90%であるが、これに限らない)までの範囲内の任意の閾値で自由に再学習するように、学習機能を調整することができる。
【0045】
また、好ましくは、リファレンス画像(基準画像)をもとにしたパターン検査とあわせて、検出感度を自動調整する機能を演算制御部が有する。ここで、感度の自動調整とは、パターン検査とピッチ検査の検出性を比較して感度を自動決定する機能をいう。
【0046】
図6に示すように、パターン検査では、通例、チップ全体をリファレンス画像(基準画像)の全体と比較し、一致するかどうかの検査を行うが、パターンのうち均一なパターン部分であるピッチのみを検査するピッチ検査も同時に行うのが好ましい。
【0047】
好ましくは、パターン検査の結果とピッチ検査の結果を比較して、同じ欠陥が検出できるようにパターン検査の感度を調整する。パターン検査における照射光の光量等、反射する光の検出感度等をパターン検査、ピッチ検査でほぼ同一になるように、パターン検査の検出感度を調整する。
【0048】
なお、パターン検査はチップ全体を検査できるが、ピッチ検査は、通例、均一パターン部分しか検査できない。
【0049】
図7は、フローチャートを示す。
【0050】
この図示例においては、1枚目のウェハでレシピを作成し、ウェハ検査を行う。良品率が設定した値(例えば90%)よりも低い場合は検査中のウェハで学習処理を行う。再学習後のリファレンス画像(基準画像)を元に再度検査を行う。再学習後のリファレンス画像(基準画像)での検査結果をウェハの検査結果として保存して検査を終了する。
【0051】
パターンにズレの生じたチップに対して次のような対応をするのが好ましい。
【0052】
ロット毎又はウェハ毎にパターンにズレがある場合でも良品にすることを可能にする。パターンにズレが発生したら、発生したウェハを学習処理し直して検査を行う。
【0053】
なお、良品率低下の原因がパターンズレか否かを装置で自動的に判断するのは容易ではないが、良品率が所定の閾値以下になったら学習処理をやり直して検査することが好ましい。
【0054】
本発明の好ましい態様では、良品率が所定の閾値を下回った時に学習処理をやり直す。
【0055】
実験例において、良品率が低下した場合に再度学習処理を行い検査すると、パターンズレの過剰検出を大幅に抑えた検査ができた。
【0056】
なお、ウェハによっては学習によって検出性能が落ちるものがある。例えば、色むらの激しいウェハや同じ位置に欠陥の連続するウェハなどにおいて検出性能の低下が顕著に現れるが、それらのウェハにおいても、ピッチ検査との併用、検出感度の調整を行うことによって、製品の性能上問題にならないパターン又はチップを良品と判定し、検査の作業効率、本来の良品率の維持を保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明に係るウェハのパターン検査装置の概略を示す図。
【図2】レシピ(リファレンス)作成を説明するための図。
【図3】レシピ(リファレンス)をもとにした検査を説明するための図。
【図4】再学習した後のレシピ作成を説明するための図。
【図5】再学習した後の検査を説明するための図。
【図6】パターン検査とピッチ検査の違いを説明するための図。
【図7】フローチャートを示す図。
【符号の説明】
【0058】
10 外観検査装置
11 半導体ウェハ
12 移動部
13 ドライバ
14 照明部
15 撮像部
16 演算処理回路
17 メモリー
19 モニタ
20 入力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象であるウェハのパターン又はチップの検査画像を入力し、入力した検査画像と予め記憶されていたリファレンス画像とを比較し、比較画像の相違量よりウェハの良否を判定する段階を備えたウェハのパターン検査方法であって、
検査中に良品率が所定の閾値以下に低下した場合、検査中のパターン又はチップの画像をリファレンス画像として用いて学習処理を再度行い、又は、学習処理でパターンを学習した後に均一なパターンを探し、均一なパターン部分であれば、パターン検査以外の、ピッチ検査などの検査でウェハの検査を行うか、あるいは均一パターン部分でパターン検査とピッチ検査を同時に行ない、ピッチ検査の結果からパターン検査の感度を決定し、決定した感度でウェハ全面のパターン又はチップを検査することを特徴とするウェハのパターン検査方法。
【請求項2】
検査対象であるウェハのパターン又はチップの検査画像を入力する手段と、入力した検査画像と予め記憶されていたリファレンス画像とを比較する手段と、比較した結果に基づきウェハの良否を判定する判定手段を有する演算処理手段とを備えたウェハのパターン検査装置であって、
演算処理手段は、検査中に良品率が所定の閾値以下に低下した場合、検査中のパターン又はチップの画像をリファレンス画像として用いて学習処理を再度行い、又は、学習処理でパターンを学習した後に均一なパターンを探し、均一なパターン部分であれば、パターン検査以外の、ピッチ検査などの検査でウェハの検査を行うか、あるいは均一パターン部分でパターン検査とピッチ検査を同時に行ない、ピッチ検査の結果からパターン検査の感度を決定し、決定した感度でウェハ全面のパターン又はチップを検査することを特徴とするウェハのパターン検査装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−117132(P2010−117132A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−286708(P2008−286708)
【出願日】平成20年11月7日(2008.11.7)
【出願人】(000220343)株式会社トプコン (904)
【Fターム(参考)】