説明

ウエザストリップ

【課題】軽量化及びコストアップの抑制を図りつつ、意匠性の低下を防止することのできるウエザストリップを提供する。
【解決手段】ウエザストリップ5は、ドア用開口部に沿ってフランジ部33に取付けられる断面略U字状のトリム部11と、トリム部11から車外側に突出するシール部15と、トリム部11から車内側に延びる意匠リップ23とを備えている。トリム部11は、比重が0.6〜0.8、かつ、25%伸長応力が400kPa以上のスポンジゴムで構成され、シール部15は、比重が0.4〜0.6、かつ、25%伸長応力が200kPa以下のスポンジゴムで構成されている。意匠リップ23はソリッドゴムで構成されるとともに、トリム部11の外表面に対し、ソリッドゴムで構成され、意匠リップ23と連続して延びる被覆部25が形成されている。トリム部11、シール部15、意匠リップ23、及び被覆部25は、押出成形により、同時に一体形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両本体に形成されるドア用開口部周縁に沿って取付けられるウエザストリップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車等の車両本体に形成されたドア用開口部周縁にはウエザストリップ(オープニングトリム)が設けられる。ウエザストリップは、ドア用開口部周縁に沿って設けられたフランジ部に取付けられ、車内側側壁部と、車外側側壁部と、両側壁部を連結する連結部とを具備する断面略U字状のトリム部と、車外側側壁部から車外側に突出するシール部とを備えている。そして、ドアを閉めたときに、シール部がドアの周縁部に圧接されることによって、車両本体とドアとの間がシールされるようになっている。また、ウエザストリップは、トリム部から車内側に延出する意匠リップを備えている。当該意匠リップにより内装部材の端縁が覆われ、これによって意匠性の向上が図られている。
【0003】
従来、ウエザストリップは、トリム部がソリッドゴムにより構成されていたが、近年、ウエザストリップの軽量化が求められており、トリム部を微発泡ゴムにより構成することが考えられている。しかしながら、トリム部を微発泡ゴムにより構成する場合には、外観に表れるトリム部の連結部表面に凹凸が形成されてしまい、意匠性の低下を招くおそれがある。また、意匠面へのシボが転写しにくく、意図した外観を得ることが難しい。
【0004】
これに対し、トリム部の連結部及び意匠リップの外表面に対し、TPO(オレフィン系熱可塑性エラストマー)よりなるシート状の被覆部を貼着するといった技術がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−19539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1の構成を採用することで、トリム部や意匠リップを微発泡ゴムにより構成した場合でも、トリム部や意匠リップの表面の凹凸を隠すことができ、意匠性の向上を図ることができる。ところが、連結部及び意匠リップの外表面にTPOよりなるシート状の被覆部を貼着する場合、コストアップや製造作業性の低下を招くことが懸念される。
【0007】
これに対し、押出成形に際して、トリム部の連結部及び意匠リップの外表面に、ソリッドゴムよりなる被覆部を同時に一体形成することが考えられる。この場合、コストアップや製造作業性の低下を抑制することができる。
【0008】
しかしながら、意匠リップを微発泡ゴムで構成するとともに、意匠リップの外表面にソリッドゴムよりなる被覆部を形成する場合、意匠リップ本体は加硫工程等において発泡するのに対し、被覆部はほとんど発泡しないため、意匠リップが内装部材から離間する側に変形してしまうおそれがある。この場合、意匠リップと内装部材とが圧接しなくなってしまう(場合によっては離間してしまう)ことが懸念され、意匠性の低下やシール性の低下等の不具合を招くおそれがある。
【0009】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、軽量化及びコストアップの抑制を図りつつ、意匠性の低下を防止することのできるウエザストリップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下、上記目的等を解決するのに適した各手段につき項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果等を付記する。
【0011】
手段1.車両本体のドア用開口部周縁に沿って設けられたフランジ部に取付けられ、車外側側壁部と車内側側壁部と両側壁部を連結する連結部とを具備する断面略U字状のトリム部と、
前記トリム部から車外側に突出して設けられ、前記ドア用開口部を開閉するドアの閉鎖時に、前記ドアの周縁部に圧接されるシール部と、
前記車内側側壁部と前記連結部との境界部から車内側に向けて延び、内装部材の端縁をドア用開口部内周側から覆う意匠リップとを備え、
前記トリム部には、その長手方向に沿って金属製のインサートが埋設されたウエザストリップであって、
前記トリム部は、比重が0.6〜0.8、かつ、25%伸長応力が400kPa以上のスポンジゴムにより構成され、
前記シール部は、比重が0.4〜0.6、かつ、25%伸長応力が200kPa以下のスポンジゴムにより構成され、
前記意匠リップはソリッドゴムにより構成されるとともに、前記トリム部の前記連結部の外表面に対し、ソリッドゴムにより構成され、前記意匠リップと連続して延びる被覆部が形成され、
前記トリム部、前記シール部、前記意匠リップ、及び前記被覆部は、押出成形により、同時に一体形成されることを特徴とするウエザストリップ。
【0012】
手段1によれば、トリム部は、比重が0.6〜0.8、かつ、25%伸長応力が400kPa以上のスポンジゴムにより構成されているため、軽量化を図ることができる上、トリム部の変形が抑制され、フランジ部への取付状態を確実に維持することができる。また、シール部は、比重が0.4〜0.6、かつ、25%伸長応力が200kPa以下のスポンジゴムにより構成されているため、軽量化が図られるとともに、シール性(形状追従性)を確保することができる。さらに、シール部が上記スポンジゴムで構成されることにより、ドアを閉め切る際に比較的大きな力を要してしまうといった事態を防止することができる。
【0013】
また、意匠リップがソリッドゴムにより構成されるとともに、トリム部の外表面にソリッドゴムよりなる被覆部が設けられている。当該構成により、例えば、トリム部の連結部及び意匠リップがスポンジゴムにより構成されることで、当該連結部及び意匠リップの外表面に凹凸が表れ、意匠性の低下を招いてしまうといった事態を防止することができる。加えて、意匠リップがソリッドゴムにより構成されることで、意匠リップ表面の耐摩耗性を向上させることができる。
【0014】
さらに、本手段では、意匠リップ全体をソリッドゴムにより構成することで、意匠リップ表面に凹凸が形成されてしまうことを回避している。このため、例えば、意匠リップをスポンジゴムにより構成するとともに、意匠リップの外表面に対し、ソリッドゴムよりなる被覆部を意匠リップと同時に押出形成する場合のように、意匠リップとその外表面に形成される被覆部との発泡率が異なることに起因して、意匠リップが内装部材から離間する側に変形してしまうといった事態を回避することができる。従って、意匠リップの前記変形に起因して、意匠リップと内装部材とが圧接しなくなり(場合によっては離間し)、意匠性の低下やシール性の低下等の不具合を招いてしまうといった事態を確実に防止することができる。
【0015】
加えて、トリム部、シール部、意匠リップ、及び被覆部は、押出成形により、同時に一体形成される。このため、例えば、トリム部等に対し別途用意した被覆部を貼着するような場合に比べ、製造作業性の向上、コストアップの抑制等を図ることができる。
【0016】
尚、トリム部の比重が0.8を超える場合、軽量化の点で十分な作用効果が奏されない。一方で、比重が0.6未満、或いは、25%伸長応力が400kPa未満のスポンジ材でトリム部を構成すると、トリム部のフランジ部への取付状態を維持する力が弱まり、トリム部がフランジ部から抜けやすくなったり、フランジ部への取付時にトリム部が傾いてシール部が所期の位置からずれてしまったりするおそれがある。
【0017】
また、シール部の比重が0.4未満であると、発泡セルが大きくなりすぎてセル同士が繋がってしまうおそれがある。一方で、シール部の比重が0.6を超えると、シール部としては剛性が高くなりすぎてしまい、ドア閉まり性の悪化等を招くおそれがある。
【0018】
手段2.前記トリム部の外表面に形成される前記被覆部は、前記インサートの外側面と連接していることを特徴とする手段1に記載のウエザストリップ。
【0019】
トリム部のスポンジ層とインサートとが連接している部位にあっては、スポンジ層の発泡に際して発生したガスがインサートとスポンジ層との間に溜まって空隙を形成してしまうおそれがあり、これに起因してトリム部表面が凹凸してしまうことが懸念される。これに対し、本手段2によれば、ソリッドゴムよりなる被覆部とインサートとが連接している。このため、インサートとスポンジ層とが連接している部位が少なくなって、上記不具合を抑制することができ、前記ガスを抜く作業の簡素化を図ることもできる。特に、被覆部は、トリム部のうち目に付き易い部位である連結部の外表面に形成されている。このため、かかる連結部において外表面が凹凸してしまうといった事態を防止して、意匠性の低下を確実に防止することができる。
【0020】
また、被覆部とインサートとの間にトリム部のスポンジ層が介在しないことにより、ウエザストリップの外観を損ねることなく、被覆部を比較的厚肉とすることができる。この場合、被覆部によって、当該被覆部と連続形成された意匠リップをより確実に支持することができる。従って、車内側側壁部と連結部との境界部においてトリム部のスポンジ層が発泡しても、意匠リップが内装部材から離れる側に傾倒変形してしまうといった事態を抑止することができる。
【0021】
尚、インサートは、トリム部の長手方向に沿って所定間隔毎に埋設された断面略U字状の骨片部と、各骨片部の略中央部同士を連結するセンターボンド部とを備えるセンターボンドタイプのインサートであることとしてもよい。つまり、センターボンドタイプのインサートを使用する場合、センターボンド部や骨片部の中央部に上記発泡に起因するガスが溜まり易い。このため、センターボンド部や骨片部の中央部が埋設されるトリム部の連結部においてインサートと被覆部とが連接する構成を採用することにより、連結部において外表面が凹凸してしまうといった事態をより確実に抑止することができる。
【0022】
尚、前記被覆部の肉厚は、前記連結部において前記インサートよりも前記トリム部内側に形成される前記トリム部のスポンジ層の肉厚よりも厚いこととしてもよい。また、前記被覆部の肉厚は、前記意匠リップの肉厚の1/2以上であることとしてもよい。この場合、意匠リップの変形を抑止するといった上記作用効果が一層確実に奏される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】フロントドアが開状態にある自動車の斜視図である。
【図2】一実施形態のウエザストリップを示す断面図である。
【図3】別の実施形態のウエザストリップを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、一実施形態について図面を参照して説明する。図1に示すように、車両としての自動車1には、自動車ボディ3(車両本体)に形成されたドア用開口部4を開閉する自動車ドア(図ではフロントドア:以下、単に「ドア2」という)が設けられている。また、ドア用開口部4の周縁部には、ドア2の閉鎖時においてドア2とドア用開口部4の周縁部との間をシールするウエザストリップ5が設けられている。本実施形態のウエザストリップ5は、長手方向全域が押出成形により一続きに成形され、ドア用開口部4のうち、下部を除く周縁部に沿って取付けられている。
【0025】
図2に示すように、ウエザストリップ5は、車内側側壁部12と、車外側側壁部13と、両側壁部12、13を連結する連結部14とを具備し、断面略U字状をなすトリム部11と、車外側側壁部13から車外側に突出して設けられ、内部に中空部15aを有してなるシール部15とを備えている。また、トリム部11には、その長手方向に沿って金属製のインサート17が埋設されている。本実施形態のインサート17は、トリム部11の長手方向に沿って所定間隔毎に埋設された断面略U字状の骨片部17aと、各骨片部17aの略中央部同士を連結するセンターボンド部(図示略)とを備える所謂センターボンドタイプのインサートである。尚、トリム部11に埋設されるインサート17の形状は特に限定されるものではなく、その他のタイプのインサートを採用してもよい。
【0026】
トリム部11は、比重が0.7、かつ、25%伸長応力が580kPaのスポンジEPDM(エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム)(以下、高発泡高剛性材と称する)により構成されている。また、シール部15は、比重が0.55、かつ、25%伸長応力が160kPaのスポンジEPDM(以下、発泡材と称する)により構成されている。本実施形態の高発泡高剛性材は、EPDMにオレフィン系熱可塑性樹脂等がブレンドされたものである。一方、発泡材にはオレフィン系熱可塑性樹脂がブレンドされていない。
【0027】
加えて、本実施形態では、トリム部11とシール部15とが車外側側壁部13から車外側に突出する第1延出部27及び第2延出部28を介して連結されている。そして、シール部15は、第1延出部27の先端部と第2延出部28の先端部とにかけて、車外側に凸となるように湾曲形成されている。また、第1延出部27及び第2延出部28はトリム部11と同じ高発泡高剛性材により構成されている。
【0028】
また、ドア用開口部4の周縁部には、自動車ボディ3を構成するインナパネル31及びアウタパネル32が接合されることによりフランジ部33が形成されている。そして、トリム部11の内側にフランジ部33を相対的に嵌め込むことで、ウエザストリップ5がドア用開口部4の周縁部に取付けられている。また、ドア2の閉鎖時においては、シール部15がドア2の周縁部に圧接して潰れ変形し、これによりドア2と自動車ボディ3との間がシールされるようになっている。尚、フランジ部33の強度を高めるべく板状のリーンフォースが両パネル31、32間に設けられていてもよい。
【0029】
また、トリム部11には、車内側側壁部12の内側面から車外側に向けて延びる1本の車内側保持リップ21と、車外側側壁部13の内側面から車内側に向けて延びる4本の車外側保持リップ22とが設けられている。4本の車外側保持リップ22は、トリム部11のフランジ部33への取付方向において所定距離を隔てて設けられている。また、車内側保持リップ21は、車外側保持リップ22よりも太くかつ長く構成されている。そして、トリム部11の内側にフランジ部33を相対的に嵌め込むことで、車内側保持リップ21及び全ての車外側保持リップ22がフランジ部33に圧接するとともに、保持リップ21、22による弾性力等に基づいてウエザストリップ5の取付状態が保持されるようになっている。また、トリム部11(ウエザストリップ5)のフランジ部33への取付状態においては、車内側保持リップ21により、車外側保持リップ22がフランジ部33に押付けられ、車外側側壁部13がフランジ部33に沿って(略平行して)延在することとなる。
【0030】
また、4本の車外側保持リップ22のうち最もドア用開口部4外周側(図2では上側)に位置するものは、シール部15と同様に、比重が0.55、かつ、25%伸長応力が160kPaのスポンジEPDM(発泡材)により構成されている。また、車外側保持リップ22のうちドア用開口部4内周側の3本と、車内側保持リップ21とは、トリム部11と同様に、比重が0.7、かつ、25%伸長応力が580kPaのスポンジEPDM(高発泡高剛性材)により構成されている。
【0031】
尚、トリム部11にインサート17が埋設されることによって、トリム部11の外形状が維持されるとともに、フランジ部33を把持する力が大きくなり、ウエザストリップ5のフランジ部33への取付状態をより安定させることができる。また、ウエザストリップ5の成形に際し、トリム部11に相当する部位が略平板状となるように(車内側側壁部12及び車外側側壁部13が大きく開いた状態となるように)押出成形した後、トリム部11に相当する部位を略コ字状に折り曲げることができるため、押出成形直後に、保持リップ21、22に相当する部位が互いにくっついてしまうといった事態を確実に回避することができる。
【0032】
さらに、ウエザストリップ5は、車内側側壁部12と連結部14との境界部から車内側かつドア用開口部4外周側に向けて、車内側かつドア用開口部4内周側に凸となるようにして湾曲しつつ延び、内装部材35(ガーニッシュ等)の端縁をドア用開口部4内周側から覆う意匠リップ23が設けられている。本実施形態の意匠リップ23は、比重が0.9〜1.2のソリッドEPDM(以下、ソリッド材と称する)により構成されている。
【0033】
また、本実施形態では、トリム部11の連結部14の外表面を被覆する被覆部25が設けられている。被覆部25は、意匠リップ23と同じ比重が0.9〜1.2のソリッド材により構成され、意匠リップ23と連続して延びている。また、本実施形態では、被覆部25とインサート17との間に高発泡高剛性材よりなるトリム部11のスポンジ層が存在する構成となっている。さらに、トリム部11のうち、連結部14においてインサート17と被覆部25との間に位置するスポンジ層の肉厚t1は、車内側側壁部12と連結部14との境界部においてインサート17と意匠リップ23との間に位置するスポンジ層の肉厚t2よりも大きくなっている。
【0034】
次に、ウエザストリップ5を構成するEPDMにブレンドされるオレフィン系熱可塑性樹脂等の配合量と、比重及び25%伸長応力との関係を表1に基づいて説明する。尚、表1において、EPDMにブレンドするオレフィン系熱可塑性樹脂としては、エチレン・オクテン樹脂を使用した。
【0035】
【表1】

【0036】
表1に示すように、サンプル1は、EPDM100重量部に対してオレフィン系熱可塑性樹脂であるエチレン・オクテン樹脂を12重量部ブレンドしている。また、EPDM中のジエン量を9重量部としている。さらに、発泡剤を2.5重量部ブレンドしている。そして、比重が0.7、かつ、25%伸長応力が580kPaとなっている。
【0037】
サンプル2は、EPDM100重量部に対してエチレン・オクテン樹脂を20重量部ブレンドしている。また、EPDM中のジエン量を4.5重量部としている。さらに、発泡剤を2.5重量部ブレンドしている。そして、比重が0.69、かつ、25%伸長応力が530kPaとなっている。
【0038】
サンプル3は、EPDM100重量部に対してエチレン・オクテン樹脂を12重量部ブレンドしている。また、EPDM中のジエン量を4.5重量部としている。さらに、発泡剤を0.65重量部ブレンドしている。そして、比重が1.05、かつ、25%伸長応力が760kPaとなっている。
【0039】
サンプル4は、EPDM100重量部に対してエチレン・オクテン樹脂を12重量部ブレンドしている。また、EPDM中のジエン量を4.5重量部としている。さらに、発泡剤を3重量部ブレンドしている。そして、比重が0.7、かつ、25%伸長応力が350kPaとなっている。
【0040】
サンプル5にはエチレン・オクテン樹脂がブレンドされていない。また、EPDM中のジエン量を9重量部としている。さらに、発泡剤を3重量部ブレンドしている。そして、比重が0.55、かつ、25%伸長応力が160kPaとなっている。
【0041】
サンプル6にはエチレン・オクテン樹脂がブレンドされていない。また、EPDM中のジエン量を9重量部としている。さらに、発泡剤を2重量部ブレンドしている。そして、比重が0.7、かつ、25%伸長応力が220kPaとなっている。
【0042】
尚、ウエザストリップ5の取付状態の安定化等を図る上では、トリム部11の25%伸長応力は400kPa以上であることが望ましく、シール性を確保する上では、シール部15の25%伸長応力は200kPa以下であることが望ましいとの検証がなされている。
【0043】
さて、サンプル5、6に関しては、熱可塑性樹脂(エチレン・オクテン樹脂)がブレンドされていない。このため、エチレン・オクテン樹脂がブレンドされたものに比べ、比重及び剛性(25%伸長応力)が比較的小さくなっている。さらに、サンプル5に関しては、サンプル6よりも発泡剤がより多く加えられることで、比重及び25%伸長応力がより小さくなっている。特に、サンプル5の25%伸長応力は200kPa以下(160kPa)となっている。このため、サンプル5は、ドア2の閉鎖時にドア2の周縁部と圧接し、ドア2の周縁部の形状に応じて変形することで、ドア2と自動車ボディ3との間をシールするシール部15として好適な材料であるといえる。
【0044】
サンプル3は、EPDM100重量部に対して熱可塑性樹脂(エチレン・オクテン樹脂)を12重量部ブレンドしたものであり、比重及び剛性(25%伸長応力)が比較的大きくなっている。特に、比重が0.8を大きく上回っており(1.05となっており)、軽量化が不十分である。
【0045】
サンプル4は、サンプル3の発泡剤の配合量をより多くしたものである。このため、サンプル4の比重は0.8以下(0.7)となり、軽量化を満足するものとなるが、25%伸長応力についても低下して400kPa以下(350kPa)となっている。このため、トリム部11としてサンプル4を使用すると、取付状態の悪化等を招くことが懸念される。また、サンプル4の25%伸長応力は200kPaよりも大きいため、シール部15の材料としても不向きである。
【0046】
サンプル2は、EPDM100重量部に対してエチレン・オクテン樹脂を20重量部ブレンドしている。つまり、サンプル3、4よりも多くのエチレン・オクテン樹脂がブレンドされている。さらに、発泡剤についても2.5重量部ブレンドしている。これにより、サンプル2は、比重が0.8以下(0.69)となる上、25%伸長応力が400kPa以上(530kPa)となっている。このため、サンプル2は、トリム部11及び保持リップ21、22として好適な材料であるといえる。
【0047】
サンプル1は、サンプル3、4と同様に、EPDM100重量部に対してエチレン・オクテン樹脂を12重量部ブレンドしている。さらに、サンプル1は、EPDM中のジエン量をサンプル2〜4よりも増やすことで(サンプル2〜4が4.5重量部であるのに対し9重量部とすることで)、ゴムの架橋密度を大きくして剛性を上げている。これにより、サンプル1は、比重が0.8以下(0.7)となる上、25%伸長応力が400kPa以上(580kPa)となっている。このため、サンプル1は、トリム部11及び保持リップ21、22として好適な材料であるといえる。
【0048】
本実施形態では、トリム部11及び保持リップ21、22を構成する高発泡高剛性材として上記サンプル1が使用され、シール部15を構成する発泡材として上記サンプル5が使用されている。
【0049】
尚、オレフィン系熱可塑性樹脂のブレンド量が12重量部よりも小さい場合、25%伸長応力を400kPa以上とするためには、EPDM中のジエン(二重結合部分)の配合量を通常よりもかなり多くして架橋密度を上げることが必要となる。その結果、ウエザストリップ5の製造コストが著しく上昇してしまう。
【0050】
その一方で、20重量部を超えるオレフィン系熱可塑性樹脂をブレンドすると、比較的容易に25%伸長応力を400kPa以上とすることはできるが、トリム部11や保持リップ21、22の剛性が大きくなりすぎてしまう(可撓性が悪化してしまう)ことが懸念される。このため、ドア用開口部4のコーナー部に対応させてウエザストリップ5を追従変形させ難くなってしまい、結果として、作業性の低下を招いたり、取付状態の不安定化を招いたりするおそれがある。
【0051】
以上詳述したように、本実施形態によれば、トリム部11及び保持リップ21、22は、高発泡高剛性材(比重が0.6〜0.8、かつ、25%伸長応力が400kPa以上のスポンジEPDM)により構成されているため、軽量化を図ることができる上、トリム部11及び保持リップ21、22の変形が抑制され、フランジ部33への取付状態を確実に維持することができる。
【0052】
また、シール部15は、発泡材(比重が0.4〜0.6、かつ、25%伸長応力が200kPa以下のスポンジEPDM)により構成されているため、軽量化が図られるとともに、シール性(形状追従性)を確保することができる。さらに、シール部15が上記発泡材により構成されることにより、ドア2を閉め切る際に比較的大きな力を要してしまうといった事態を防止することができる。
【0053】
また、意匠リップ23がソリッド材により構成されるとともに、トリム部11の外表面にソリッド材よりなる被覆部25が設けられている。当該構成により、例えば、トリム部11の連結部14及び意匠リップ23が高発泡高剛性材により構成されることで、当該連結部14及び意匠リップ23の外表面に凹凸が表れ、意匠性の低下を招いてしまうといった事態を防止することができる。加えて、意匠リップ23がソリッド材により構成されることで、意匠リップ23表面の耐摩耗性を向上させることができる。
【0054】
さらに、本実施形態では、意匠リップ23全体をソリッド材により構成することで、意匠リップ23表面に凹凸が形成されてしまうことを回避している。このため、例えば、意匠リップ23を発泡材により構成するとともに、意匠リップ23の外表面に対し、ソリッド材よりなる被覆部を意匠リップ23と同時に押出形成する場合のように、意匠リップ23とその外表面に形成される被覆部との発泡率が異なることに起因して、意匠リップ23が内装部材35から離間する側に変形してしまうといった事態を回避することができる。従って、意匠リップ23の前記変形に起因して、意匠リップ23と内装部材35とが圧接しなくなり(場合によっては離間し)、意匠性の低下やシール性の低下等の不具合を招いてしまうといった事態を確実に防止することができる。
【0055】
加えて、トリム部11、シール部15、保持リップ21、22、意匠リップ23、及び被覆部25は、押出成形により同時に一体形成される。このため、例えば、トリム部11等に対し別途用意した被覆部を貼着するような場合に比べ、製造作業性の向上、コストアップの抑制等を図ることができる。
【0056】
また、本実施形態では、トリム部11のうち、連結部14においてインサート17と被覆部25との間に位置するスポンジ層(高発泡高剛性材よりなる層)の肉厚t1は、車内側側壁部12と連結部14との境界部においてインサート17と意匠リップ23との間に位置するスポンジ層の肉厚t2よりも大きくなっている。例えば、連結部14においてインサート17と被覆部25との間に位置するスポンジ層よりも、車内側側壁部12と連結部14との境界部においてインサート17と意匠リップ23との間に位置するスポンジ層の方が大きく発泡する場合、意匠リップ23が内装部材35から離間する側に傾倒変形してしまうおそれがある。これに対し、本実施形態では、連結部14においてインサート17と被覆部25との間に位置するスポンジ層の方が大きく発泡するよう構成されているため、上記意匠リップ23の傾倒変形を抑止する(内装部材35に近付く側に傾倒変形させる)ことができ、意匠リップ23と内装部材35とが圧接しなくなってしまう(離間してしまう)といった事態をより確実に防止することができる。
【0057】
加えて、トリム部11とシール部15とを連結する第1延出部27及び第2延出部28はトリム部11と同じ高発泡高剛性材により構成されている。このため、ドア用開口部4のコーナー部に対応してウエザストリップ5を湾曲させた際に、シール部15がいびつに変形してしまうといった事態を抑制することができる。
【0058】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0059】
(a)上記実施形態では、トリム部11及び保持リップ21、22を構成する材料(高発泡高剛性材)は、比重が0.7、かつ、25%伸長応力が580kPaとなっているが、特にこのような数値に限定されるものではなく、比重が0.6〜0.8、かつ、25%伸長応力が400kPa以上となっていればよい。また、シール部15を構成する材料(発泡材)は、比重が0.55、かつ、25%伸長応力が160kPaとなっているが、比重が0.4〜0.6、かつ、25%伸長応力が200kPa以下となっていればよい。
【0060】
尚、トリム部11の比重が0.8を超える場合、軽量化の点で十分な作用効果が奏されない。一方で、比重が0.6未満、或いは、25%伸長応力が400kPa未満のスポンジ材でトリム部11を構成すると、トリム部11のフランジ部33への取付状態を維持する力が弱まり、トリム部11がフランジ部33から抜けやすくなったり、フランジ部33への取付時にトリム部11が傾いてシール部15が所期の位置からずれてしまったりするおそれがある。
【0061】
また、シール部15の比重が0.4未満であると、発泡セルが大きくなりすぎてセル同士が繋がってしまうおそれがある。一方で、シール部15の比重が0.6を超えると、シール部15としては剛性が高くなりすぎてしまい、ドア2を閉める際に比較的大きな力を要してしまう(ドア2を閉め難くなってしまう)といった事態等を招くおそれがある。
【0062】
尚、EPDMにブレンドするオレフィン系熱可塑性樹脂としては、エチレン・オクテン樹脂の他、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等を使用することもできる。
【0063】
(b)上記実施形態では、被覆部25とインサート17との間に高発泡高剛性材よりなるトリム部11のスポンジ層が形成されているが、図3に示すように、被覆部25とインサート17の外側面とを連接させることとしてもよい。例えば、トリム部11のスポンジ層とインサート17とが連接している部位にあっては、スポンジ層の発泡に際して発生したガスがインサート17とスポンジ層との間に溜まって空隙を形成してしまうおそれがあり、これに起因してトリム部11表面が凹凸してしまうことが懸念される。これに対し、当該(b)の構成によれば、ソリッド材よりなる被覆部25とインサート17とが連接している。このため、インサート17とスポンジ層とが連接している部位が少なくなって、上記不具合を抑制することができ、前記ガスを抜く作業の簡素化を図ることもできる。特に、被覆部25は、トリム部11のうち目に付き易い部位である連結部14の外表面に形成されている。このため、かかる連結部14において外表面が凹凸してしまうといった事態を防止して、意匠性の低下を確実に防止することができる。
【0064】
また、被覆部25とインサート17との間にトリム部11のスポンジ層が介在しないことにより、ウエザストリップ5の外観を損ねることなく、被覆部25を比較的厚肉とすることができる。この場合、被覆部25によって、当該被覆部25と連続形成された意匠リップ23をより確実に支持することができる。従って、車内側側壁部12と連結部14との境界部においてトリム部11のスポンジ層が発泡しても、意匠リップ23が内装部材35から離れる側に傾倒変形してしまうといった事態を抑止することができる。
【0065】
尚、図3のインサート17についても、トリム部11の長手方向に沿って所定間隔毎に埋設された断面略U字状の骨片部17aと、各骨片部17aの略中央部同士を連結するセンターボンド部(図示略)とを備えるセンターボンドタイプのインサートであることとしてもよい。つまり、センターボンドタイプのインサート17を使用する場合、センターボンド部や骨片部17aの中央部に上記発泡に起因するガスが溜まり易い。このため、センターボンド部や骨片部17aの中央部が埋設されるトリム部11の連結部14においてインサート17と被覆部25とが連接する構成を採用することにより、連結部14において外表面が凹凸してしまうといった事態をより確実に抑止することができる。
【0066】
尚、図3に示すウエザストリップ5の被覆部25の肉厚は特に限定されるものではなく、例えば、連結部14においてインサート17よりもトリム部11内側に形成されるトリム部11のスポンジ層の肉厚よりも厚いこととしてもよい。また、被覆部25の肉厚は、意匠リップ23の肉厚の1/2以上であることとしてもよい。この場合、意匠リップ23の変形を抑止するといった上記作用効果が一層確実に奏される。
【0067】
また、図3のウエザストリップ5は、車内側側壁部12、車外側側壁部13、及び各側壁部12、13と連結部14との境界部においては、インサート17よりもトリム部11外側において高発泡高剛性材よりなるスポンジ層が形成されている。従って、トリム部11本体を高発泡高剛性材で構成したことによる軽量化が確実に図られる上、トリム部11に相当する部位を略平板状に押出成形した後、略コ字状に折り曲げる際に、スポンジ層が比較的スムースに追従変形するため、前記折り曲げに起因するウエザストリップ5の断面形状の変化を比較的緩やかなものとすることができる。
【0068】
さらに、図3に示すように、発泡材よりなるシール部15の外表面に対し、ソリッド材よりなる被覆部51を形成することとしてもよい。この場合、シール部15外表面において凹凸をなくし、意匠性の向上を図ることができる。
【0069】
(c)上記実施形態では、フロントドアに対応する自動車ボディ3のドア用開口部4の周縁部に設けられるウエザストリップ5について具体化しているが、リヤドア、バックドア、ラゲージドア(トランクリッド)、ルーフドア(スライディングルーフパネル)、スライディングドア等の他の開閉部材の周縁部に圧接されるウエザストリップについて適用することも可能である。
【0070】
(d)上記実施形態では、ウエザストリップ5は、長手方向全域が押出成形により構成されることとしているが、型成形部により複数の押出成形部を接続することで構成されることとしてもよい。加えて、上記実施形態では、ウエザストリップ5が、ドア用開口部4の周縁部の下部を除く部位に取付けられることとしているが、ドア用開口部4の周縁部の全周にわたって環状に取付けられることとしてもよい。また、ドア用開口部4の周縁部に対して部分的に取付けられることとしてもよい。
【0071】
(e)上記実施形態では車外側保持リップ22が4本設けられるとともに、車内側保持リップ21が1本設けられているが、特にこのような構成に限定されるものではなく、例えば、4本の車外側保持リップ22のうち、発泡材よりなる車外側保持リップ22を省略してもよい。また、上記実施形態では、シール部15が中空形状に構成されているが、例えば、リップ状に構成することとしてもよい。
【符号の説明】
【0072】
1…自動車、2…ドア、3…自動車ボディ、4…ドア用開口部、5…ウエザストリップ、11…トリム部、12…車内側側壁部、13…車外側側壁部、14…連結部、15…シール部、17…インサート、21…車内側保持リップ、22…車外側保持リップ、23…意匠リップ、25…被覆部、33…フランジ部、35…内装部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両本体のドア用開口部周縁に沿って設けられたフランジ部に取付けられ、車外側側壁部と車内側側壁部と両側壁部を連結する連結部とを具備する断面略U字状のトリム部と、
前記トリム部から車外側に突出して設けられ、前記ドア用開口部を開閉するドアの閉鎖時に、前記ドアの周縁部に圧接されるシール部と、
前記車内側側壁部と前記連結部との境界部から車内側に向けて延び、内装部材の端縁をドア用開口部内周側から覆う意匠リップとを備え、
前記トリム部には、その長手方向に沿って金属製のインサートが埋設されたウエザストリップであって、
前記トリム部は、比重が0.6〜0.8、かつ、25%伸長応力が400kPa以上のスポンジゴムにより構成され、
前記シール部は、比重が0.4〜0.6、かつ、25%伸長応力が200kPa以下のスポンジゴムにより構成され、
前記意匠リップはソリッドゴムにより構成されるとともに、前記トリム部の前記連結部の外表面に対し、ソリッドゴムにより構成され、前記意匠リップと連続して延びる被覆部が形成され、
前記トリム部、前記シール部、前記意匠リップ、及び前記被覆部は、押出成形により、同時に一体形成されることを特徴とするウエザストリップ。
【請求項2】
前記トリム部の外表面に形成される前記被覆部は、前記インサートの外側面と連接していることを特徴とする請求項1に記載のウエザストリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−173498(P2010−173498A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−18887(P2009−18887)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】