説明

ウエハに液状ドーパント溶液を塗布するための機器

ウエハに液状ドーパント溶液を塗布するための機器は、ドーパント分配機器と、第一ローラ位置及び第二ローラ位置の間で水平方向に並進可能な回転可能ドーパント移送ローラと、ウエハを保持するためのワークテーブルと、を備えて成り、分配機器は、ドーパント移送ブロックと端部によって囲まれた開放側面を有する流体容器とを備えて成り、当該開放側面はドーパント移送ブロック方に向けられ、ブロックホルダーは、ドーパント移送ブロックが流体容器の開放側面の下にある第一ブロック位置と、ドーパント移送ブロックが回転可能ドーパント移送ロールにその第一ロール位置で接触する第二ブロック位置との間で水平方向に並進可能であり、通常運転の間に、第二ロール位置では、回転可能ドーパント移送ロールは、ウエハの表面上にドーパント溶液を与えるためにウエハと接触してきている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状ドーパント溶液をウエハ表面に塗布することに関する。そのようなウエハは、適当には、光電池を製造する際に用いられるシリコンウエハである。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】USA Patent specification No.5972784
【特許文献2】USA Patent specification No.4557195
【特許文献3】International patent application publication No. 93/09950
【特許文献4】International patent application publication No. 02/08243
【特許文献5】International patent application publication No. 02/061854
【0003】
ウエハが光電池を製造する際に用いられる場合、それは、バルクドーピングを与えられる。ウエハの2つの表面の1つは、受光表面(light receiving surface)と称され、ウエハの当該側面が受光側である。その受光側で、ウエハは、バルクドーピングとは異なるドーピングを有する薄い層を与えられる。バルク領域と薄い領域の間の移行部は、接合部(junction)と呼ばれる。
【0004】
ウエハの裏面(受光側のウエハ反対側)にも同様にドーピングを塗布する傾向がある。これはいわゆる裏面電解(back surface field)を作り出すためになされ、当該裏面電解は、少数担体を偏向させ、裏面で再結合速度を減少させる裏面の内蔵電解である。
【0005】
ウエハの受光側に、又は、その裏側に薄くドープされた層を3つの方法で得ることができる。(1)高温においてガス状形態でドーパントを堆積させ、ウエハの中へガス状ドーパントを拡散させる。(2)ウエハ表面にドーパントを含んだペーストを塗布し、ウエハの中へドーパントを拡散させるためにウエハを加熱する。(3)ウエハ表面に液状ドーパント溶液を塗布し、溶媒を蒸発させ、且つ、ウエハの中へドーパントを拡散させるためにウエハ表面にドーパント溶液の付いたウエハを加熱する。
【0006】
液状ドーパント溶液の塗布を異なる技術でなすことが可能であり、当該技術は、特許文献1に開示される。一つめの技術は、ウエハ表面に液状ドーパント溶液をスプレーする。別の技術は、回転するウエハの表面に少量の液状ドーパント溶液を落とし、表面上に均一に液状ドーパント溶液を広げさせる。3つめの技術は、ドーパント溶液にウエハを浸す。
【0007】
本発明も、ウエハ表面に液状ドーパント溶液を塗布することに関係する。
【0008】
ドーパント溶液を与えることができるウエハの数である、公知技術の生産速度は低い。太陽エネルギーのコストを減少するために、より高い生産速度が要求される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、高い生産速度を許容する、ウエハ表面に液状ドーパント溶液を塗布するための機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的を達成するために、ウエハ表面に液状ドーパント溶液を塗布するための機器は、ドーパント分配機器と、第一ロール位置及び第二ロール位置の間でドーパント移送ロールの回転軸に垂直な方向で水平方向に並進可能な回転可能ドーパント移送ロールと、通常運転の間ドーパント溶液を与えられるべきウエハを保持するためのワークテーブルと、を備えて成り、ドーパント分配機器は、ブロックホルダーによって支持されるドーパント移送ブロックと、端部で囲まれた開放側面を有する流体容器とを備えて成り、当該開放側面はドーパント移送ブロックの方に向けられ、当該端部はドーパント移送ブロック、ブロックホルダー、又はその両方とドーパント溶液のリークを防止するために協働し、ブロックホルダーと流体容器とは、互いに対して変位させることができ、ブロックホルダーは、ドーパント移送ブロックが流体容器の開放側面の下にある第一ブロック位置と、ドーパント移送ブロックが回転可能ドーパント移送ロールにその第一ロール位置で接触する第二ブロック位置との間で、ドーパント移送ロールの回転軸に垂直な方向で水平方向に並進可能であり、第二ロール位置では通常運転の間に、回転可能ドーパント移送ロールは、ウエハの表面上にドーパント溶液を与えるためにウエハと接触してきている。
【0011】
完全を期すために、特許文献2が参照される。この文献は、対象物を印刷するための機器に関し、当該機器は、印刷ブロックにインクをつけるための機器を含む。公知の機器は、ブロックホルダーによって支持される印刷ブロックと、端部によって囲まれた開放側面を有するインク容器と、を備えるインク分配機器を備えて成り、当該開放側面は印刷ブロックの方に向けられ、当該端部はインクのリークを防止するために印刷ブロックとブロックホルダーと協働し、ブロックホルダーとインク容器とは互いに対して変位させることができ、ブロックホルダーは、印刷ブロックがインク容器の開放側面の下にある第一ブロック位置と印刷ブロックが流体容器から自由である露光位置との間で水平方向に並進可能である。
【0012】
通常運転の間に、彫り込まれた印刷ブロック(クリシェとも呼ばれる)は静止状態に保たれ、インク容器は印刷ブロックがインクをつけられる第一位置から露光位置まで変位させられる。露光位置で、ラバーパッドが、印刷ブロックからインクを受け取るために印刷ブロック上に押圧される。インクを受け取った後、パッドは、対象物を印刷するために向きを変えられる。
【0013】
上記機器の変形例が特許文献3に開示される。この文献に開示される機器は、通常運転の間、印刷ブロックが静止状態に保たれ、インク容器が印刷ブロックに対して変位させられるという点で、印刷ブロックにインクをつけるための上述の機器とは異なる。
【0014】
更に特許文献4が参照される。この文献は、連続するバンド形態のスクリーンを用いるスクリーン印刷によってサブストレートに薄い層を塗布することに関する。
【0015】
更に特許文献5が参照される。この文献は、サブストレートに適用される酸化物層を構築する方法に関し、スクリーン印刷法にしたがって、酸化物をエッチングするための成分を含むペーストが酸化物層に塗布され、印刷されたペーストは、酸化物層で所定の間作用した後、取り除かれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は、添付の図面を参照してより詳細に例示を介して論じられ、図1a、1b、1cは、3つの異なる運転位置で、本発明にしたがう液状ドーパント溶液を塗布するための機器を概略的且つノンスケールで示す。
【0017】
ウエハ3の表面に液状ドーパント溶液を塗布するための機器1は、ドーパント分配機器5、回転可能ドーパント移送ロール7、及び、通常運転の間ドーパント溶液を与えられるべきウエハ3を保持するためのワークテーブル9を備えて成る。
【0018】
回転可能ドーパント移送ロール7は、第一ロール位置15と第二ロール位置17との間で、ドーパント移送ロール7の回転軸12に垂直な方向で水平方向に並進可能である。軸12は図平面に垂直に延びることに注意されたい。
【0019】
分配機器5は、ブロックホルダー21によって支持されるドーパント移送ブロック20と、シール端部26によって囲まれる開放下側側面を有する流体容器24とを備えて成る。開放側面はドーパント移送ブロック20の方に向けられる。シール端部26は、ドーパント溶液のリークを防止するために、ドーパント移送ブロック20、ブロックホルダー21、又は、ドーパント移送ブロック20とブロックホルダー21の両方と協働する。
【0020】
ドーパント移送ブロック20を支持するブロックホルダー21と流体容器24とは、互いに対して変位させることができる。ブロックホルダー21は、ドーパント移送ブロック20が流体容器24の開放側面の下にある第一ブロック位置30と、ドーパント移送ブロック20が回転可能ドーパント移送ロール7にその第一ロール位置15で接触する第二ブロック位置31との間で、ドーパント移送ロール7の回転軸12に垂直な方向で水平方向に並進可能である。
【0021】
回転可能ドーパント移送ロール7の第二ロール位置17は、第二ロール位置17では、ドーパント移送ロール7がウエハ3の表面上にドーパント溶液を与えるためにウエハ3と接触してきているように選ばれる。
【0022】
ブロックホルダー21とドーパント移送ロール7とを案内し、支持するための手段と、ワークテーブル9を支持するための手段とは、図に示されていない。
【0023】
通常運転の間、ドーパント溶液を与えられるべきウエハ3は、ワークテーブル9に固定される。流体容器24は、ドーパント溶液で満たされる。ブロックホルダー21は、その第一ブロック位置30にあり、ドーパント移送ロール7は、その第一位置15にある。ブロック20は、その第一位置で、流体容器の開放側面の下にあり、ドーパント溶液は、ドーパント移送ブロック20を濡らすことができる。この初期位置が、図1aに示される。
【0024】
その後、ブロックホルダ21は、第一ブロック位置30から、ドーパント移送ブロック20が回転可能ドーパント移送ロール7にその第一ロール位置15で接触する第二ブロック位置31まで、ドーパント移送ロール7の回転軸12に垂直な方向で水平方向に並進させられる。この位置は、図1bに示される。ブロック20、ブロックホルダー21、又は、その両方と協働するシール端部26は、ドーパント溶液のリークを防止する。
【0025】
ブロックホルダー21の並進移動の間、ドーパント移送ロール7は、持上げられるので、ドーパント移送ブロック20がドーパント移送ロール7の下を移動する。その並進移動方向におけるドーパント移送ブロック20の大きさは、ドーパント移送ロール7の外周に少なくとも等しい。
【0026】
その後、回転可能ドーパント移送ロール7は、ドーパント移送ブロック20と回転可能ドーパント移送ロールを接触させるために降ろされ、その後、回転可能ドーパント移送ロール7は、第一ロール位置15から第二ロール位置17まで、ドーパント移送ロール7の回転軸12に垂直な方向で水平方向に並進させられる。第二ロール位置17では、ドーパント移送ロール7は、ウエハ3の表面上にドーパント溶液を与えるためにウエハ3と接触してきている。これは、最終位置であり、図1cに示される。
【0027】
ドーパント移送ロール7は、並進移動の一部分の間に、ドーパント移送ブロック20の上で且つそれに接触して動き、ドーパント溶液はドーパント移送ロール7に移送される。ドーパント移送ロール7上のドーパント溶液は、並進移動の最後の部分の間に、ドーパント溶液を与えられるべきウエハ3の表面に移送される。ドーパント移送ロール7の外周は、適当には、ドーパント移送ロール7の並進移動方向においてウエハ3の大きさとほぼ等しい。
【0028】
その後、ドーパント移送ロール7とブロックホルダー21とは、図1aに示されるように、それらそれぞれの第一位置に戻り、ドーパント溶液を与えられたウエハ3は取り外され、新しいウエハがワークテーブルに置かれる。
【0029】
ドーパント移送ロール7を第二ロール位置17まで並進させるのと同時にブロックホルダー21を第一ブロック位置30まで戻し、その後、ドーパント移送ロール7を第一ロール位置15に戻すことで、図1aに示されるような初期位置に達することもできることが理解される。
【0030】
適当には、ドーパント移送ブロック20は、プラスチック、スチール、又は、セラミック材料から作られ、適した構造で設けられる。ドーパント移送ロール7は、適当には、シリコーンゴムから作られる。
【0031】
ドーパント溶液が塗布されるウエハ表面は、平坦な表面又は構造化された表面であることができる。
【0032】
本発明にしたがう機器は、一時間あたり約1000枚のウエハをドープすることを許容する。さらに、本発明は、ドーパント溶液の薄く均一な層を塗布することを許容し、ドーパント溶液の層の厚さは、1〜10マイクロメーターの間である。大きな表面領域(100cm以上)上で、薄いウエハ(約100マイクロメーター以下)に層を塗布することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1a】ブロックホルダー21が第一ブロック位置30にあり、その第一ブロック位置30で、流体容器24の開放側面の下にあるドーパント移送ブロック20が、ドーパント溶液で濡らされる初期位置を示す図である。
【図1b】ブロックホルダー21が、第一ブロック位置30から、ドーパント移送ブロック20が回転可能ドーパント移送ロール7にその第一ロール位置15で接触させられる第二ブロック位置31まで、ドーパント移送ロール7の回転軸に対して垂直な方向で水平方向に並進させられた位置を示す図である。
【図1c】ドーパント移送ロール7が第二ロール位置17でウエハ3の表面上にドーパント溶液を与えるためにウエハ3と接触してきた位置を示す図である。
【符号の説明】
【0034】
1 機器
3 ウエハ
5 ドーパント分配機器
7 ドーパント移送ロール
9 ワークテーブル
12 ドーパント移送ロールの回転軸
15 第一ロール位置
17 第二ロール位置
20 ドーパント移送ブロック
21 ブロックホルダー
24 流体容器
26 シール端部
30 第一ブロック位置
31 第二ブロック位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエハ(3)の表面に液状ドーパント溶液を塗布するための機器(1)であって、機器(1)は、ドーパント分配機器(5)と、第一ロール位置(15)及び第二ロール位置(17)の間でドーパント移送ロール(7)の回転軸(12)に垂直な方向で水平方向に並進可能な回転可能ドーパント移送ロール(7)と、通常操作の間にドーパント溶液を与えられるべきウエハ(3)を保持するためのワークテーブル(9)と、を備えて成り、ドーパント分配機器(5)は、ブロックホルダー(21)によって支持されるドーパント移送ブロック(20)と、端部(26)によって囲まれた開放側面を有する流体容器(24)と、を備えて成り、開放側面は、ドーパント移送ブロック(20)の方に向けられ、端部(26)は、ドーパント移送ブロック(20)、ブロックホルダー(21)、又はその両方と、ドーパント溶液のリークを防止するために協働し、ブロックホルダー(21)と流体容器(24)とは、互いに対して変位させることができ、ブロックホルダー(21)は、ドーパント移送ブロック(20)が流体容器(24)の開放側面の下にある第一ブロック位置(30)と、ドーパント移送ブロック(20)が回転可能ドーパント移送ロール(7)にその第一ロール位置(15)で接触する第二ブロック位置(31)との間で、ドーパント移送ロール(7)の回転軸(12)に垂直な方向で水平方向に並進可能であり、通常運転の間に第二ロール位置(17)では、回転可能ドーパント移送ロール(7)は、ウエハ(3)の表面上にドーパント溶液を与えるためにウエハ(3)と接触してきている機器。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【公表番号】特表2007−526631(P2007−526631A)
【公表日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−552628(P2006−552628)
【出願日】平成17年2月11日(2005.2.11)
【国際出願番号】PCT/EP2005/050611
【国際公開番号】WO2005/081286
【国際公開日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【出願人】(506276343)シェル ゾーラー ゲーエムベーハー (1)
【Fターム(参考)】