説明

ウエーハの分割方法

【課題】ストリート幅を大きくすること無くストリートに沿って変質層を形成することができ、分割することができるウエーハの分割方法を提供する。
【解決手段】デバイス領域とデバイス領域を囲繞する外周余剰領域とを有するウエーハ2の分割方法であって、レーザー光線をウエーハ2の裏面側から内部に集光点Pを位置付けて照射し、ウエーハ2の内部に表面側に未加工領域を残して第1の変質層251を形成する第1の変質層形成工程と、ウエーハ2の裏面2bを環状のフレームに装着されたダイシングテープに貼着するウエーハ支持工程と、レーザー光線をダイシングテープに貼着されたウエーハ2の表面側から内部の未加工領域に集光点を位置付けて照射し、ウエーハ2の未加工領域に第2の変質層を形成する第2の変質層形成工程と、ウエーハ2に外力を付与し第1の変質層および第2の変質層が形成されたストリートに沿って破断する破断工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に複数のストリートが格子状に形成されているとともに該複数のストリートによって区画された複数の領域にデバイスが形成されたウエーハを、ストリートに沿って個々のデバイスに分割するウエーハの分割方法に関する。
【0002】
半導体デバイス製造工程においては、略円板形状である半導体ウエーハの表面に格子状に配列されたストリートと呼ばれる分割予定ラインによって複数の領域が区画され、この区画された領域にIC、LSI、微小電気機械システム(MEMS)等のデバイスを形成する。そして、半導体ウエーハをストリートに沿って切断することによりデバイスが形成された領域を分割して個々のデバイスを製造している。
【0003】
上述したウエーハのストリートに沿った切断は、通常、ダイサーと呼ばれている切削装置によって行われている。この切削装置は、ウエーハ等の被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物を切削するための切削ブレードを備えた切削手段と、チャックテーブルと切削手段とを相対的に切削送りする切削送り手段とを具備し、切削ブレードを回転するとともに該切削ブレードによる切削部に切削水を供給しつつチャックテーブルを切削送りすることにより、ウエーハをストリートに沿って切断する。
【0004】
しかるに、切削ブレードは20〜30μm程度の厚さを有するため、デバイスを区画するストリートとしては幅が50μm程度必要となる。このため、ストリートの占める面積比率が高くなり、生産性が悪いという問題がある。
【0005】
一方、ウエーハをストリートに沿って分割する方法として、ウエーハに対して透過性を有する波長のパルスレーザー光線を内部に集光点を合わせストリートに沿って照射し、ウエーハの内部にストリートに沿って破断の起点となる変質層を連続的に形成し、この破断起点となる変質層が形成され強度が低下せしめられたストリートに沿って外力を加えることにより、ウエーハをストリートに沿って分割する方法が提案されている。(例えば、特許文献1参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3408805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に記載されたウエーハを分割する方法として、ストリートが形成されていないウエーハの裏面側からストリートと対応する領域の内部にレーザー光線の集光点を位置付けてレーザー光線を照射することにより変質層を形成し、その後ウエーハの裏面をダイシングテープに貼着し、ストリートに沿って内部に変質層が形成されたウエーハに外力を加えることによりウエーハを分割する方法が実施されている。しかるに、ストリートに沿って内部に変質層が形成されたウエーハをダイシングテープに貼着する際にウエーハがストリートに沿って割れるという問題がある。
一方、ウエーハの裏面を環状のフレームに装着されたダイシングテープに貼着した状態で、ウエーハの表面側からストリートの内部にレーザー光線を集光させて変質層を形成する方法を実施することのより、上述した問題は回避されるが、レーザー光線の照射領域としてウエーハの厚みに対して20〜30%の幅が必要であり、例えば400μmの厚みを有する微小電気機械システム(MEMS)が形成されたウエーハにおいては、100μm前後のストリート幅が必要となり、ウエーハの設計上の制約が大きく生産性が悪いという問題がある。
なお、ウエーハの表面を環状のフレームに装着されたダイシングテープに貼着した状態で、ウエーハの裏面側からストリートの内部にレーザー光線を集光させて変質層を形成する方法を採用すれば、上記問題を解消することはできるが、マイクロホーン、加速度センサー、圧力センサー等の微小電気機械システム(MEMS)からなるデバイスが形成されたウエーハにおいては、デバイスの表面をダイシングテープに貼着すると粘着剤が微小電気機械システム(MEMS)に付着してデバイスが損傷するという問題がある。
【0008】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、ストリート幅を大きくすること無くウエーハの内部にストリートに沿って変質層を形成することができ、デバイスに損傷を与えることなくストリートに沿って個々のデバイスに分割することができるウエーハの分割方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、表面に複数のストリートが格子状に形成され該複数のストリートによって区画された複数の領域にデバイスが形成されたデバイス領域と該デバイス領域を囲繞する外周余剰領域とを有するウエーハをストリートに沿って分割するウエーハの分割方法であって、
ウエーハに対して透過性を有する波長のレーザー光線をウエーハの裏面側から内部に集光点を位置付けてストリートに沿って照射し、ウエーハの内部に表面側に未加工領域を残してストリートに沿って第1の変質層を形成する第1の変質層形成工程と、
該第1の変質層形成工程が実施されたウエーハの裏面を環状のフレームに装着されたダイシングテープに貼着するウエーハ支持工程と、
ウエーハに対して透過性を有する波長のレーザー光線をダイシングテープに貼着されたウエーハの表面側から内部の該未加工領域に集光点を位置付けてストリートに沿って照射し、ウエーハの該未加工領域にストリートに沿って第2の変質層を形成する第2の変質層形成工程と、
該第2の変質層形成工程が実施されたウエーハに外力を付与し、該第1の変質層および第2の変質層が形成されたストリートに沿って破断する破断工程と、を含む、
ことを特徴とするウエーハの分割方法が提供される。
【0010】
ウエーハに形成されるデバイスは微小電気機械システム(MEMS)からなるデバイスであって、上記第1の変質層形成工程は上記外周余剰領域のみを支持した状態で実施する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によるウエーハの分割方法においては、ウエーハに対して透過性を有する波長のレーザー光線をウエーハの裏面側から内部に集光点を位置付けてストリートに沿って照射し、ウエーハの内部に表面側に未加工領域を残してストリートに沿って第1の変質層を形成する第1の変質層形成工程を実施した後に、ウエーハの裏面を環状のフレームに装着されたダイシングテープに貼着するウエーハ支持工程を実施するので、未加工領域が強度を保持しているため、ウエーハをレーザー加工装置のチャックテーブルから搬出する際、またはダイシングテープに貼着する前後においてウエーハがストリートに沿って割れるという問題が解消でき、また、ウエーハの表面であるデバイスの表面にダイシングテープを貼着する必要がないので特にデバイスが微小電気機械システム(MEMS)であっても損傷することは無い。
また、本発明によるウエーハの分割方法においては、ウエーハの該未加工領域にストリートに沿って第2の変質層を形成する第2の変質層形成工程は、ウエーハに対して透過性を有する波長のレーザー光線をダイシングテープに貼着されたウエーハの表面側から内部の該未加工領域に集光点を位置付けてストリートに沿って照射するので、ウエーハの表面側から表面側の浅い位置に残された未加工領域にレーザー光線の集光点を位置付けて照射するため、ストリートの幅が狭くともレーザー光線がデバイスに照射されることは無い。従って、ウエーハの設計上においてストリートの幅が制約されることは無い。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明によるウエーハの分割方法によって個々のデバイスに分割されるウエーハの斜視図。
【図2】本発明によるウエーハの分割方法における第1の変質層形成工程を実施するためのレーザー加工装置の要部斜視図。
【図3】本発明によるウエーハの分割方法における第1の変質層形成行程の説明図。
【図4】本発明によるウエーハの分割方法におけるウエーハ支持工程の説明図。
【図5】本発明によるウエーハの分割方法における第2の変質層形成行程を実施するためのレーザー加工装置の要部斜視図。
【図6】本発明によるウエーハの分割方法における第2の変質層形成行程の説明図。
【図7】本発明によるウエーハの分割方法におけるウエーハ破断工程を実施するためのテープ拡張装置の斜視図。
【図8】本発明によるウエーハの分割方法におけるウエーハ破断工程の説明図。
【図9】本発明によるウエーハの分割方法におけるピックアップ工程の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明によるウエーハの分割方法の好適な実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
図1には、本発明によるウエーハの分割方法によって個々のデバイスに分割されるウエーハの斜視図が示されている。図1に示すウエーハ2は、厚みが例えば400μmのシリコンウエーハからなっており、表面2aに格子状に形成された複数のストリート21によって複数の領域が区画されるとともに該区画された領域にデバイス22としての微小電気機械システム(MEMS)が形成されている。このように構成された半導体ウエーハ2は、デバイス22が形成されているデバイス領域220と、該デバイス領域220を囲繞する外周余剰領域230を備えている。
【0015】
以下、上述したウエーハ2を複数のストリート21に沿って個々のデバイス22に分割する方法について説明する。
先ず、ウエーハ2に対して透過性を有する波長のレーザー光線をウエーハ2の裏面側から内部に集光点を位置付けてストリート21に沿って照射し、ウエーハ2の内部に表面側に未加工領域を残してストリート21に沿って第1の変質層を形成する第1の変質層形成工程を実施する。この第1の変質層形成工程は、図2に示すレーザー加工装置3を用いて実施する。図2に示すレーザー加工装置3は、被加工物を保持するチャックテーブル31と、該チャックテーブル31上に保持された被加工物にレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段32と、チャックテーブル31上に保持された被加工物を撮像する撮像手段33を具備している。チャックテーブル31は、中央部上面に形成された円形の凹部311と、該円形の凹部311の外側に形成された環状の吸引保持部312とからなっている。環状の吸引保持部312には、上面である吸引保持面に開口する複数の吸引孔313が形成されており、この複数の吸引孔313が図示しない吸引手段に連通されている。従って、図示しない吸引手段を作動することにより、環状の吸引保持部312の上面である吸引保持面に載置された被加工物を吸引保持する。このように構成されたチャックテーブル31は、図示しない加工送り手段によって図2において矢印Xで示す方向に加工送りされるとともに、図示しない割り出し送り手段によって図2において矢印Yで示す方向に割り出し送りされるようになっている。
【0016】
上記レーザー光線照射手段32は、実質上水平に配置された円筒形状のケーシング321の先端に装着された集光器322からパルスレーザー光線を照射する。また、上記レーザー光線照射手段32を構成するケーシング321の先端部に装着された撮像手段33は、図示の実施形態においては可視光線によって撮像する通常の撮像素子(CCD)の外に、被加工物に赤外線を照射する赤外線照明手段と、該赤外線照明手段によって照射された赤外線を捕らえる光学系と、該光学系によって捕らえられた赤外線に対応した電気信号を出力する撮像素子(赤外線CCD)等で構成されており、撮像した画像信号を図示しない制御手段に送る。
【0017】
上述したレーザー加工装置3を用いて実施する第1の変質層形成工程について、図2および図3を参照して説明する。
第1の変質層形成工程を実施するには、先ず上述した図2に示すレーザー加工装置3のチャックテーブル31上にウエーハ2の表面2a側を載置する。このとき、図3の(a)に示すようにチャックテーブル31の環状の吸引保持部312の上面である吸引保持面にウエーハ2の外周余剰領域230を載置し、図示しない吸引手段を作動してチャックテーブル31の環状の吸引保持部312上にウエーハ2の外周余剰領域230を吸引保持する(ウエーハ保持工程)。従って、チャックテーブル31上に保持されたウエーハ2は、裏面2bが上側となる。このようにチャックテーブル31上に表面側が保持されたウエーハ2は、外周余剰領域230のみが環状の吸引保持部312上に支持されるので、デバイス22が損傷することは無い。このようにしてウエーハを吸引保持したチャックテーブル31は、図示しない加工送り手段によって撮像手段33の直下に位置付けられる。
【0018】
チャックテーブル31が撮像手段33の直下に位置付けられると、撮像手段33および図示しない制御手段によってウエーハ2のストリート21に沿ってレーザー加工すべき加工領域を検出するアライメント工程を実行する。即ち、撮像手段33および図示しない制御手段は、ウエーハ2の所定方向に形成されているストリート21と、該ストリート21に沿ってレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段32の集光器322との位置合わせを行うためのパターンマッチング等の画像処理を実行し、レーザー光線照射位置のアライメントを遂行する。また、ウエーハ2に形成されている複数のストリート21と直交する方向に形成されている複数のストリート21に対しても、同様にレーザー光線照射位置のアライメントが遂行される。このとき、ウエーハ2の複数のストリート21が形成されている表面2aは下側に位置しているが、撮像手段33が上述したように赤外線照明手段と赤外線を捕らえる光学系および赤外線に対応した電気信号を出力する撮像素子(赤外線CCD)等で構成された撮像手段を備えているので、裏面2bから透かしてストリート21を撮像することができる。
【0019】
以上のようにしてチャックテーブル31上に保持されたウエーハ2に形成されているストリート21を検出し、レーザー光線照射位置のアライメントが行われたならば、図3の(a)で示すようにチャックテーブル31をレーザー光線照射手段32の集光器322が位置するレーザー光線照射領域に移動し、所定のストリート21の一端(図3の(a)において左端)をレーザー光線照射手段32の集光器322の直下に位置付ける。そして、パルスレーザー光線の集光点Pをウエーハ2の表面2a(下面)から例えば100μm上方位置に合わせる。次に、集光器322からシリコンウエーハに対して透過性を有する波長のパルスレーザー光線を照射しつつチャックテーブル31を図3の(a)において矢印X1で示す方向に所定の加工送り速度で移動せしめる。そして、図3の(b)で示すようにレーザー光線照射手段32の集光器322の照射位置にストリート21の他端(図3の(b)において右端)が達したら、パルスレーザー光線の照射を停止するとともにチャックテーブル31の移動を停止する。この結果、ウエーハ2の内部には、ストリート21に沿ってウエーハ2の表面2a(下面)側に70μm程度の未加工領域240を残して第1の変質層251が形成される。この第1の変質層251は、溶融再固化層として形成される。
【0020】
上記第1の変質層形成工程における加工条件は、例えば次のように設定されている。
光源 :LD励起QスイッチNd:YVO4レーザー
波長 :1064nmのパルスレーザー
平均出力 :1.2W
繰り返し周波数 :80kHz
パルス幅 :120ns
集光スポット径 :φ2μm
加工送り速度 :100mm/秒
【0021】
なお、上述した加工条件においては1回のレーザー光線の照射によって形成される第1の変質層251の厚さは50〜60μmである。従って、厚みが400μmのウエーハ2を容易に分割するには、厚さが50〜60μmの変質層を5層程度形成することが望ましい。このため、図示の実施形態においては、図3の(c)に示すようにウエーハ2の表面2a(下面)側に未加工領域240を残して、裏面2b側(上面)に4層の第1の変質層251を積層して形成する。なお、第1の変質層形成工程は、ウエーハ2の裏面2b(上面)側からパルスレーザー光線を照射するので、デバイス22にパルスレーザー光線が照射されることは無い。
【0022】
このようにして、ウエーハ2の所定方向に延在する全てのストリート21に沿って上記第1の変質層形成工程を実行したならば、チャックテーブル31を90度回動せしめて、上記所定方向に対して直交する方向に延びる各ストリート21に沿って上記第1の変質層形成工程を実行する。
【0023】
上述した第1の変質層形成工程を実施したならば、表面2a側に未加工領域240を残して第1の変質層251が形成されたウエーハ2の裏面を環状のフレームに装着されたダイシングテープに貼着するウエーハ支持工程を実施する。即ち、図4に示すように環状のフレーム4の内側開口部を覆うように外周部が装着されたダイシングテープ5の表面にウエーハ2の裏面2bを貼着する。なお、上記ダイシングテープ5は、ポリ塩化ビニル(PVC)やポリオレフィン(PO)からなるシート基材によって形成されており、その表面に粘着剤が厚さ5μm程度塗布されている。このようにウエーハ支持工程はウエーハ2の表面2a側に未加工領域240を残して第1の変質層251が形成されたウエーハ2の裏面2bを環状のフレーム4に装着されたダイシングテープ5に貼着するので、未加工領域240が強度を保持しているため、ウエーハ2をレーザー加工装置3のチャックテーブル31から搬出する際、またはダイシングテープ5に貼着する前後においてウエーハ2がストリート21に沿って割れるという問題が解消でき、また、ウエーハ2の表面2aであるデバイス22の表面にダイシングテープ5を貼着する必要がないので図示の実施形態のようにデバイス22が微小電気機械システム(MEMS)であっても損傷することは無い。
【0024】
次に、ウエーハ2に対して透過性を有する波長のレーザー光線をダイシングテープ5に貼着にされたウエーハ2の表面2a側から内部の未加工領域240に集光点を位置付けてストリート21に沿って照射し、ウエーハ2の未加工領域240にストリート21に沿って第2の変質層を形成する第2の変質層形成工程を実施する。この第2の変質層形成工程は、図5に示すレーザー加工装置30を用いて実施する。図5に示すレーザー加工装置30は、被加工物を保持するチャックテーブル301以外は上記図2に示すレーザー加工装置3と実質的に同様な構成であるため、同一部材には同一符号を付して、その説明は省略する。チャックテーブル301は、上面である保持面に被加工物を吸引保持するように構成されており、図示しない加工送り手段によって図5において矢印Xで示す加工送り方向に移動せしめられるとともに、図示しない割り出し送り手段によって図5において矢印Yで示す割り出し送り方向に移動せしめられるようになっている。
【0025】
上述したレーザー加工装置30を用いて、第2の変質層形成工程を実施するには、先ず図5に示すレーザー加工装置30のチャックテーブル301上にウエーハ2の裏面2bが貼着されたダイシングテープ5を載置する。そして、図示しない吸引手段を作動することにより、ダイシングテープ5を介してウエーハ2をチャックテーブル301上に吸引保持する(ウエーハ保持工程)。従って、チャックテーブル301に保持されたウエーハ2は、表面2aが上側となる。なお、図5においては、ダイシングテープ5が装着された環状のフレーム4を省いて示しているが、環状のフレーム4はチャックテーブル301に配設された適宜のフレーム保持手段に保持されている。このようにして、ウエーハ2を吸引保持したチャックテーブル301は、図示しない加工送り手段によって撮像手段33の直下に位置付けられる。
【0026】
チャックテーブル301が撮像手段33の直下に位置付けられると、撮像手段33および図示しない制御手段によってウエーハ2のレーザー加工すべき加工領域を検出するアライメント作業を実行する。即ち、撮像手段33および図示しない制御手段は、ウエーハ2の所定方向に形成されているストリート21と、該ストリート21に沿ってレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段32の集光器322との位置合わせを行うためのパターンマッチング等の画像処理を実行し、レーザー光線照射位置のアライメントを遂行する(アライメント工程)。また、ウエーハ2に上記所定方向と直交する方向に形成されたストリート21に対しても、同様にレーザー光線照射位置のアライメントが遂行される。
【0027】
以上のようにしてチャックテーブル301上に保持されたウエーハ2の表面に形成されているストリート21を検出し、レーザー光線照射位置のアライメントが行われたならば、図6の(a)で示すようにチャックテーブル301をレーザー光線照射手段32の集光器322が位置するレーザー光線照射領域に移動し、所定のストリート21の一端(図6の(a)において左端)をレーザー光線照射手段32の集光器322の直下に位置付ける。そして、パルスレーザー光線の集光点Pをウエーハ2の表面2a側に残された未加工領域240の厚さ方向中間位置に合わせる。次に、集光器322からシリコンウエーハに対して透過性を有する波長のパルスレーザー光線を照射しつつチャックテーブル301を図6の(a)において矢印X1で示す方向に所定の加工送り速度で移動せしめる。そして、図6の(b)で示すようにレーザー光線照射手段32の集光器322の照射位置にストリート21の他端(図6の(b)において右端)が達したら、パルスレーザー光線の照射を停止するとともにチャックテーブル301の移動を停止する。この結果、図6の(b)および図6の(c)に示すようにウエーハ2の上記未加工領域240には、ストリート21に沿って第2の変質層252が形成される。この第2の変質層252は、溶融再固化層として形成される。なお、第2の変質層形成工程における加工条件は上記第1の変質層形成工程の加工条件と同様でよい、従って、ウエーハ2の上記未加工領域240には、厚さが50〜60μmの第2の変質層252が形成される。この第2の変質層形成工程は、ウエーハ2の表面2a側から表面側の浅い位置に残された未加工領域240にレーザー光線の集光点を位置付けて照射するので、ストリート21の幅が狭くともレーザー光線がデバイス22に照射されることは無い。
【0028】
上述した第2の変質層形成工程を実施したならば、ウエーハ2に外力を付与し、第1の変質層251および第2の変質層252が形成されたストリート21に沿って破断する破断工程を実施する。この破断工程は、図7に示すテープ拡張装置6を用いて実施する。図7に示すテープ拡張装置6は、上記環状のフレーム4を保持するフレーム保持手段61と、該フレーム保持手段61に保持された環状のフレーム4に装着されたダイシングテープ5を拡張するテープ拡張手段62と、ピックアップコレット63を具備している。フレーム保持手段61は、環状のフレーム保持部材611と、該フレーム保持部材611の外周に配設された固定手段としての複数のクランプ612とからなっている。フレーム保持部材611の上面は環状のフレーム4を載置する載置面611aを形成しており、この載置面611a上に環状のフレーム4が載置される。そして、載置面611a上に載置された環状のフレーム4は、クランプ612によってフレーム保持部材611に固定される。このように構成されたフレーム保持手段61は、テープ拡張手段62によって上下方向に進退可能に支持されている。
【0029】
テープ拡張手段62は、上記環状のフレーム保持部材611の内側に配設される拡張ドラム621を具備している。この拡張ドラム621は、環状のフレーム4の内径より小さく該環状のフレーム4に装着されたダイシングテープ5に貼着されるウエーハ2の外径より大きい内径および外径を有している。また、拡張ドラム621は、下端に支持フランジ622を備えている。図示の実施形態におけるテープ拡張手段62は、上記環状のフレーム保持部材611を上下方向に進退可能な支持手段623を具備している。この支持手段623は、上記支持フランジ622上に配設された複数のエアシリンダ623aからなっており、そのピストンロッド623bが上記環状のフレーム保持部材611の下面に連結される。このように複数のエアシリンダ623aからなる支持手段623は、図8の(a)に示すように環状のフレーム保持部材611を載置面611aが拡張ドラム621の上端と略同一高さとなる基準位置と、図8の(b)に示すように拡張ドラム621の上端より所定量下方の拡張位置の間を上下方向に移動せしめる。
【0030】
以上のように構成されたテープ拡張装置6を用いて実施するウエーハは破断工程について図8を参照して説明する。即ち、ウエーハ2が貼着されているダイシングテープ5が装着された環状のフレーム4を、図8の(a)に示すようにフレーム保持手段61を構成するフレーム保持部材611の載置面611a上に載置し、クランプ612によってフレーム保持部材611に固定する(フレーム保持工程)。このとき、フレーム保持部材611は図8の(a)に示す基準位置に位置付けられている。
【0031】
上述したフレーム保持工程を実施したならば、図8の(b)に示すようにテープ拡張手段62を構成する支持手段623としての複数のエアシリンダ623aを作動して、環状のフレーム保持部材611を拡張位置に下降せしめる。従って、フレーム保持部材611の載置面611a上に固定されている環状のフレーム4も下降するため、図8の(b)に示すように環状のフレーム4に装着されたダイシングテープ5は拡張ドラム621の上端縁に接して拡張せしめられる(テープ拡張工程)。この結果、ダイシングテープ5に貼着されているウエーハ2は放射状に引張力が作用する。このようにウエーハ2に放射状に引張力が作用すると、ストリート21に沿って形成された第1の変質層251および第2の変質層252は強度が低下せしめられているので、ウエーハ2は強度が低下せしめられている第1の変質層251および第2の変質層252が破断起点となってストリート21に沿って破断され個々のデバイス22に分割される。
【0032】
上述したウエーハ破断工程を実施することにより、ウエーハ2を第1の変質層251および第2の変質層252が形成されたストリート21に沿って破断し個々のデバイス22に分割したならば、図9に示すようにピックアップコレット63を作動してデバイス22を吸着し、ダイシングテープ5から剥離してピックアップする。なお、ピックアップ工程においては、個々のデバイス22間の隙間Sが広げられているので、隣接するデバイス22と接触することなく容易にピックアップすることができる。
【0033】
以上、本発明を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲で種々の変形は可能である。例えば、上述した実施形態においては微小電気機械システム(MEMS)からなるデバイスが形成されたウエーハを個々のデバイスに分割する例を示したが、本発明はIC、LSI等のデバイスが形成された半導体ウエーハや発光ダイオード、CCD等の光デバイスが形成された光デバイスウエーハに適用してもよい。
【符号の説明】
【0034】
2:ウエーハ
21:ストリート
22:デバイス
220:デバイス領域
230:外周余剰領域
3:レーザー加工装置
31:レーザー加工装置のチャックテーブル
32:レーザー光線照射手段
322:集光器
33:撮像手段
30:レーザー加工装置
301:レーザー加工装置のチャックテーブル
4:環状のフレーム
5:ダイシングテープ
6:テープ拡張装置
61:フレーム保持手段
62:テープ拡張手段
63:ピックアップコレット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に複数のストリートが格子状に形成され該複数のストリートによって区画された複数の領域にデバイスが形成されたデバイス領域と該デバイス領域を囲繞する外周余剰領域とを有するウエーハをストリートに沿って分割するウエーハの分割方法であって、
ウエーハに対して透過性を有する波長のレーザー光線をウエーハの裏面側から内部に集光点を位置付けてストリートに沿って照射し、ウエーハの内部に表面側に未加工領域を残してストリートに沿って第1の変質層を形成する第1の変質層形成工程と、
該第1の変質層形成工程が実施されたウエーハの裏面を環状のフレームに装着されたダイシングテープに貼着するウエーハ支持工程と、
ウエーハに対して透過性を有する波長のレーザー光線をダイシングテープに貼着されたウエーハの表面側から内部の該未加工領域に集光点を位置付けてストリートに沿って照射し、ウエーハの該未加工領域にストリートに沿って第2の変質層を形成する第2の変質層形成工程と、
該第2の変質層形成工程が実施されたウエーハに外力を付与し、該第1の変質層および第2の変質層が形成されたストリートに沿って破断する破断工程と、を含む、
ことを特徴とするウエーハの分割方法。
【請求項2】
ウエーハに形成されるデバイスは微小電気機械システム(MEMS)からなるデバイスであって、該第1の変質層形成工程は該外周余剰領域のみを支持した状態で実施する、請求項1記載のウエーハの分割方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−178523(P2012−178523A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−41779(P2011−41779)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】