説明

ウエーハの研削方法

【課題】バンプが形成されたウエーハでも裏面研削により平坦化を可能とするウエーハの研削方法を提供する。
【解決手段】複数のバンプ17が形成されたバンプ形成領域表面に有するウエーハ11の裏面を研削する研削方法であって、基材フィルムの上面に粘着材層が該バンプの高さより厚く形成された保護テープ23を、該バンプが該粘着材層に埋没するようにウエーハの表面に貼着する保護テープ貼着工程と、ウエーハの表面に貼着された該保護テープの基材フィルムの表面全面を粘着材層には達しない範囲でバイト工具28で切削し、表面を平坦に形成する保護テープ切削工程と、該保護テープが貼着されたウエーハの表面を該保護テープを介して研削装置のチャックテーブルで保持した状態でウエーハの裏面を研削手段により研削してウエーハを所定の厚さに薄化する裏面研削工程とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエーハの表面に形成された各デバイスがバンプと呼ばれる突起状の複数の電極を有するウエーハの裏面を研削して均一に薄化するウエーハの研削方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造プロセスにおいては、シリコンや化合物半導体からなるウエーハ表面にストリートと呼ばれる格子状の分割予定ラインが形成され、分割予定ラインによって区画される各領域にIC、LSI等のデバイスが形成される。これらのウエーハは裏面が研削されて所定の厚みへと薄化された後、ストリートに沿って切削装置等によって分割されることで個々の半導体デバイスが製造される。
【0003】
ウエーハの裏面研削には、例えば特開2002−200545号公報で開示されるような研削装置が用いられる。研削装置のチャックテーブルでウエーハの表面側を保護テープを介して保持し、ウエーハの裏面に研削砥石を当接しつつ摺動させ、研削砥石を研削送りすることで研削が遂行される。
【0004】
近年、半導体デバイスの軽薄短小化を実現するための技術として、デバイス表面にバンプと呼ばれる金属突起物を複数形成し、これらのバンプを配線基板に形成された電極に相対させて直接接合するフリップチップボンディングと呼ばれる実装技術が実用化されている(例えば、特開2001−7135号公報参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−200545号公報
【特許文献2】特開2001−7135号公報
【特許文献3】特許第3121886号公報
【特許文献4】特開昭62−4341号公報
【特許文献5】特開2004−319697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
通常、ウエーハの裏面を研削して薄化する際、デバイスの形成されたウエーハの表面側をチャックで吸引保持する。しかし、各デバイスが複数のバンプを有するウエーハは凹凸があるため吸引保持が難しい。
【0007】
その対策として、バンプが埋没するような厚い粘着材層を有する保護テープをウエーハの表面に貼着してバンプの凹凸を吸収し、吸引保持が可能な程度の平らな面を形成してウエーハの裏面を研削している。
【0008】
ところが、通常ウエーハの外周領域にはデバイスが形成されないため、バンプもウエーハの外周領域には形成されない。そのため、表面に複数のバンプが形成されたウエーハを研削するためにチャックテーブルで保持すると、バンプが形成されていないウエーハの外周領域に貼着された保護テープは、外側に向かってなだらかな傾斜が形成されてしまう。そのため、保護テープの上面は均一な平坦面ではなくなり、ウエーハの裏面研削時のウエーハの吸引保持が不安定になり、研削に困難が生じる。
【0009】
更に、研削装置で使用されるチャックテーブルは、ウエーハより一回り小さい直径の吸引部とその外周の環状バリア部とを有するチャックテーブルが一般的であり、ウエーハで吸引部を塞ぐように載置して吸引すると、リークすることなくウエーハを吸引保持できるように構成されている(特許文献3参照)。
【0010】
ところが、特許文献4に開示されたような先ダイシング方法を実施する場合、ウエーハの強力な吸引保持が必要であるためウエーハのバリア部が重なる範囲が狭くなるようなチャックテーブルを使用する。
【0011】
そうしたチャックテーブルでは、ウエーハの表面に貼着した保護テープが周辺部まで平坦であることが前提となっているため、バンプを有するウエーハではチャックテーブルでの吸引保持が困難となり、一般的な研削方法で使用するのと同じチャックテーブルが使用できなくなるという問題が発生する。
【0012】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、表面に複数のバンプが形成されたウエーハでも裏面研削の際に裏面に貼着された保護テープを確実に吸引保持して、ウエーハの裏面の平坦化を可能とするウエーハの研削方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によると、複数のバンプが形成されたバンプ形成領域と該バンプ形成領域を囲繞する外周バンプ未形成領域とを表面に有するウエーハの裏面を研削する研削方法であって、基材フィルムの上面に粘着材層が該バンプの高さより厚く形成された保護テープを、該バンプが該粘着材層に埋没するようにウエーハの表面に貼着する保護テープ貼着工程と、該保護テープが貼着されたウエーハの裏面をバイト切削装置のチャックテーブルで保持する第1保持工程と、ウエーハの表面に貼着された該保護テープの該基材フィルムの表面全面を該粘着材層には達しない範囲でバイト工具で切削し、該バンプが該粘着材層に埋没した状態で該保護テープの表面を平坦に形成する保護テープ切削工程と、該保護テープ切削工程実施後、該保護テープが貼着されたウエーハの表面を該保護テープを介して研削装置のチャックテーブルで保持する第2保持工程と、研削装置の該チャックテーブルで保持されたウエーハの裏面を研削手段により研削してウエーハを所定の厚さに薄化する裏面研削工程と、を具備したことを特徴とするウエーハの研削方法が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明の研削方法によると、バンプが粘着材層に埋没するように保護テープをウエーハの表面に貼着後、高速回転するバイト工具で保護テープの基材フィルムを切削して、保護テープの表面全面を平坦化するため、ウエーハの裏面を研削する際に平坦になった保護テープをチャックテーブルで問題なく吸引保持することが可能となり、ウエーハの裏面を研削により一様に平坦化することができる。
【0015】
また、先ダイシング法で広く用いられる環状バリア部が狭いチャックテーブルでも、バンプを有するウエーハの強力な吸引保持が可能となり、一般的な研削方法で使用するのと共通のチャックテーブルを用いることができるため、工数の削減やチャックテーブル購入のコスト削減を期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】表面に複数のバンプが形成された半導体ウエーハの斜視図である。
【図2】図2(A)は半導体ウエーハの表面に保護テープを貼着する様子を示す斜視図、図2(B)は表面に保護テープが貼着された半導体ウエーハの斜視図である。
【図3】図3(A)は表面に複数のバンプを有する半導体ウエーハの表面に保護テープを貼着する様子を示す断面図、図3(B)は粘着材層にバンプが埋没するように半導体ウエーハの表面に保護テープが貼着された状態の断面図である。
【図4】バイト切削装置の斜視図である。
【図5】バイト工具で保護テープの基材フィルムを切削している様子を示す一部断面側面図である。
【図6】図6(A)は切削工程前の半導体ウエーハ及び半導体ウエーハの表面に貼着された保護テープの断面図、図6(B)は切削工程後の断面図である。
【図7】研削装置の斜視図である。
【図8】裏面研削工程を示す一部断面側面図である。
【図9】図9(A)は裏面研削工程前の断面図、図9(B)は裏面研削工程後の断面図、図9(C)は保護テープ剥離後の半導体ウエーハの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。図1を参照すると、半導体ウエーハ11の表面側斜視図が示されている。半導体ウエーハ11の表面11aには、格子状に形成された複数の分割予定ライン13によって区画された各領域にIC、LSI等のデバイス15が形成されており、各デバイス15にはデバイスの電極に接続する複数のバンプ17が形成されている。半導体ウエーハ11は、バンプ17が形成されたバンプ形成領域19と、バンプ形成領域19を囲繞する外周バンプ未形成領域21をその表面11aに有している。
【0018】
図2及び図3に示されるように、半導体ウエーハ11の裏面11bの研削を実施するのに当たり、半導体ウエーハ11の表面11aには、基材フィルム23a上にアクリル系の粘着材層23bが形成された保護テープ23が貼着される。図3(B)に示されるように、保護テープ23の粘着材層23bはバンプ17を完全に埋没する厚さを有している。
【0019】
半導体ウエーハ11の表面11a上に保護テープ23を貼着すると、ウエーハ11はその外周部にバンプ未形成領域21を有しているため、保護テープ23の基材フィルム23aにはその外周部分で外側に向かって低くなる傾斜が形成されてしまう。そこで、本発明のウエーハの研削方法では、まず保護テープ23の基材フィルム23aをバイト切削により平坦化する切削工程を実施する。
【0020】
図4を参照すると、この切削工程を実施するのに適したバイト切削装置2の斜視図が示されている。4はバイト切削装置2のベース(ハウジング)であり、ベース4の後方にはコラム6が立設されている。コラム6には、上下方向に伸びる一対のガイドレール(一本のみ図示)8が固定されている。
【0021】
この一対のガイドレール8に沿ってバイト切削ユニット10が上下方向に移動可能に装着されている。バイト切削ユニット10は、そのハウジング20が一対のガイドレール8に沿って上下方向に移動する移動基台12に取り付けられている。
【0022】
バイト切削ユニット10は、ハウジング20と、ハウジング20中に回転可能に収容されたスピンドル22(図5参照)と、スピンドル22の先端に固定されたマウント24と、マウント24に着脱可能に装着されたバイトホイール26とを含んでいる。バイトホイール26には切刃28aを有するバイト工具28が着脱可能に取り付けられている。
【0023】
バイト切削ユニット10は、バイト切削ユニット10を一対の案内レール8に沿って上下方向に移動するボールねじ14とパルスモータ16とから構成されるバイト切削ユニット送り機構18を備えている。パルスモータ16をパルス駆動すると、ボールねじ14が回転し、移動基台12が上下方向に移動される。
【0024】
ベース4の中間部分にはチャックテーブル34を有するチャックテーブル機構32が配設されており、チャックテーブル機構32は図示しないチャックテーブル移動機構によりY軸方向に移動される。35は蛇腹であり、チャックテーブル機構32をカバーする。
【0025】
ベース4の前側部分には、第1のウエーハカセット36と、第2のウエーハカセット38と、ウエーハ搬送用ロボット40と、複数の位置決めピン44を有する位置決め機構42と、ウエーハ搬入機構(ローディングアーム)46と、ウエーハ搬出機構(アンローディングアーム)48と、スピンナ洗浄ユニット50が配設されている。
【0026】
本発明のウエーハの研削方法では、まずバイト切削装置2のチャックテーブル34で半導体ウエーハ11の裏面11b側を吸引保持し、図5に示されるように、バイト切削ユニット10のスピンドル22を約2000rpmで回転させつつ、バイトホイール送り機構18を作動してバイト工具28の切刃28aを保護テープ23の基材フィルム23aに所定深さ切り込ませ、チャックテーブル34を図5で矢印Y1方向に例えば1mm/sの送り速度で移動させながら、保護テープ23の基材フィルム23aを切削する。この切削加工時には、チャックテーブル34は回転させずにY軸方向に加工送りする。
【0027】
チャックテーブル34に吸引保持された半導体ウエーハ11の左端がバイト工具28の取付位置を通過すると、保護テープ23の切削が終了し、図6(B)に示すように、保護テープ23の基材フィルム23aが粘着材層23bに至らない位置まで切削される。
【0028】
図6(A)はバイト切削工程前の表面に保護テープ23が貼着された半導体ウエーハ11の断面図を示しており、保護テープ23の粘着材層23bの厚さAはバンプ17の高さBより大きい値に設定されている。これにより、バンプ17が保護テープ23の粘着材層23b中に完全に埋没される。
【0029】
バイト切削工程を実施すると、図6(B)に示すように、保護テープ23の基材フィルム23aが粘着材層23bに至らない位置まで切削されて、保護テープ23の表面が完全に平坦化される。
【0030】
図6(B)において、aは切削する厚さを示しており、基材フィルム23aを完全には切削しないため、基材フィルムの厚さbより切削する厚さaは当然ながら小さい値となっている。
【0031】
このように保護テープ23の基材フィルム23aを研削して平坦化する切削工程を実施後、図7に示したような研削装置52を用いて半導体ウエーハ11の裏面11bを研削する研削工程を実施する。
【0032】
図7において、54は研削装置52のベースであり、ベース52の後方にはコラム56が立設されている。コラム56には、上下方向にのびる一対のガイドレール58(一本のみ図示)が固定されている。
【0033】
この一対のガイドレール58に沿って研削ユニット60が上下方向に移動可能に装着されている。研削ユニット60は、そのハウジング70が一対のガイドレール58に沿って上下方向に移動される移動基台62に取り付けられている。
【0034】
研削ユニット60は、ハウジング70と、ハウジング70中に回転可能に収容されたスピンドル72(図8参照)と、スピンドル72の先端に固定されたホイールマウント74と、ホイールマウント74に着脱可能に装着された研削ホイール76と、スピンドル72を回転駆動するモータ82とを含んでいる。研削ホイール76は、環状基台78と、環状基台78の下端部外周に固着された複数の研削砥石80とから構成される。
【0035】
研削ユニット60は、研削ユニット60を一対の案内レール58に沿って上下方向に移動するボールねじ64とパルスモータ66とから構成される研削ユニット送り機構68を備えている。パルスモータ66をパルス駆動すると、ボールねじ64が回転し、移動基台62が上下方向に移動される。
【0036】
ベース54の中間部分にはチャックテーブル機構83が配設されており、チャックテーブル機構83は図示しないチャックテーブル移動機構によりY軸方向に移動される。85はチャックテーブル機構83をカバーする蛇腹である。
【0037】
チャックテーブル機構83は回転駆動されるチャックテーブル84を備えている。チャックテーブル84は、枠体84aと枠体84aの上面とその保持面が面一に形成されたポーラスセラミックス等の吸引部84bとから構成される。
【0038】
図8に示されるように、吸引部84bには、環状バリア部84cが形成されている。この環状バリア部84cはポーラス吸引部84bに比べてそのポーラス度が低いセラミックスから形成されている。よって、環状バリア部84cには吸引作用が発生しない。
【0039】
ベース54の前側部分には第1のウエーハカセット86と、第2のウエーハカセット88と、ウエーハ搬送ロボット90と、複数の位置決めピン94を有する位置決め機構92と、ウエーハ搬入機構(ローディングアーム)96と、ウエーハ搬出機構(アンローディングアーム)98と、スピンナ洗浄ユニット100が配設されている。
【0040】
半導体ウエーハ11の裏面研削を実施するには、図8に示すように、切削工程により平坦に切削された保護テープ23をチャックテーブル84で吸引保持し、チャックテーブル84を例えば300rpmで回転しつつ、研削ユニット76をチャックテーブル84と同一方向に例えば6000rpmで回転させるとともに、研削ユニット送り機構68を駆動して、研削ホイール76の研削砥石80を半導体ウエーハ11の裏面11bに接触させる。そして、研削ホイール76を所定の研削送り速度で下方に所定量研削送りする。
【0041】
接触式又は非接触式の厚み測定ゲージで半導体ウエーハ11の厚みを測定しながらウエーハ11を所望の厚みに仕上げる。図9(A)は裏面研削前の保護テープ23が貼着された半導体ウエーハ11の断面図を示している。25は目標研削ラインである。
【0042】
図9(B)は研削工程実施後の保護テープ付半導体ウエーハ11の断面図、図9(C)は保護テープ23剥離後の半導体ウエーハ11の断面図を示している。
【符号の説明】
【0043】
2 バイト切削装置
10 バイト切削ユニット
11 半導体ウエーハ
17 バンプ
23 保護テープ
23a 基材フィルム
23b 粘着材層
28 バイト工具
52 研削装置
60 研削ユニット
76 研削ホイール
80 研削砥石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のバンプが形成されたバンプ形成領域と該バンプ形成領域を囲繞する外周バンプ未形成領域とを表面に有するウエーハの裏面を研削する研削方法であって、
基材フィルムの上面に粘着材層が該バンプの高さより厚く形成された保護テープを、該バンプが該粘着材層に埋没するようにウエーハの表面に貼着する保護テープ貼着工程と、
該保護テープが貼着されたウエーハの裏面をバイト切削装置のチャックテーブルで保持する第1保持工程と、
ウエーハの表面に貼着された該保護テープの該基材フィルムの表面全面を該粘着材層には達しない範囲でバイト工具で切削し、該バンプが該粘着材層に埋没した状態で該保護テープの表面を平坦に形成する保護テープ切削工程と、
該保護テープ切削工程実施後、該保護テープが貼着されたウエーハの表面を該保護テープを介して研削装置のチャックテーブルで保持する第2保持工程と、
研削装置の該チャックテーブルで保持されたウエーハの裏面を研削手段により研削してウエーハを所定の厚さに薄化する裏面研削工程と、
を具備したことを特徴とするウエーハの研削方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−21017(P2013−21017A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−151021(P2011−151021)
【出願日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】