説明

ウシならびに他の動物における微生物感染および寄生虫感染を処置するための組成物

駆虫化合物(例えば、アベルメクチン)を、フッ素化クロラムフェニコール誘導体抗生物質またはチアンフェニコール誘導体抗生物質(例えば、フロルフェニコール)と組み合わせる新規の処方物が開示される。ウシおよびブタの感染性疾患(ウシ呼吸器性疾患および寄生虫感染を含む)の処置および予防にそのような処方物を使用する方法もまた開示される。好ましい実施形態において、動物における微生物感染および寄生虫感染の処置のための組成物は、以下:a)フロルフェニコール;b)駆虫活性を有するエンドエクトシディック化合物;およびc)キャリア、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、動物における細菌感染、寄生虫感染および寄生虫外寄生を処置するための組成物および方法に関する。より具体的には、本発明は、ウシ、ヒツジおよびブタのような動物における細菌感染、寄生虫感染および寄生虫外寄生の処置における使用のための、抗生物質および駆虫剤の両方を含む組成物に関する。
【0002】
本明細書中に引用される全ての参考文献は、本明細書によってそれらの全体が参考として援用される。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
米国、カナダおよび世界の他の地域において、肥育場は、肉牛に対して一般に使用されている。ウシが肥育場に到着すると、ウシは、通常、駆虫剤を投与され、その肥育場への運搬前にその仔ウシが放牧されていた、蠕虫の幼虫で汚染された牧場からウシが獲得した内部寄生虫および外部寄生虫を根絶させられる。このときの内部寄生虫および外部寄生虫の除去が、寄生虫感染のサイクルを断ち切り、その肥育場の他の動物寄生虫の広がりを防止する。なぜなら、仔ウシおよび他の動物は、寝だなまたは飼い葉桶から寄生虫を含まない供給物を食べるので、その肥育場では仔牛および他の動物が寄生虫を獲得する可能性はより低いからである。
【0004】
駆虫剤の使用がない場合、内部寄生虫および外部寄生虫は、家畜を飼育することにおける経済的に重要な拘束の1つであった。虫がもたらす損失は、その動物の低下した生産性からそれらの死までの範囲にわたる。
【0005】
寄生虫の処置のための第一線の治療は、しばしば、駆虫性化合物の投与を介して実施される。これらの化合物の1つのクラスは、アベルメクチンである。このアベルメクチンのファミリーの化合物は、一連の非常に強力な駆虫剤であり、哺乳動物の広い範囲の内部寄生虫および外部寄生虫に対して有用であることが公知である。
【0006】
肥育場におけるウシまたは他の動物の寄生虫外寄生および幅広い感染の危険に加えて、異なる供給源からのウシおよび他の家畜の混ぜ合わせは、その仔ウシおよび他の動物を、病原菌に対する免疫が発達していないその病原菌に曝露させる。運搬のストレスおよび飼料の変化は、その仔ウシの免疫防御および他の動物の免疫防御を低下させる。さらには、仔ウシおよび他の家畜が、通常、牧場から肥育場へ移される秋の劣悪な天候は、病気の危険をさらに高める。同時に、これらの状況は、仔ウシが初めてその肥育場に到着したときまたはその後まもなく、ウシおよび他の動物の呼吸器性疾患の高い発生を生じる。肥育場ウシおよび他の家畜における呼吸器性の病気の発生およびその重篤度を低減するために、仔ウシおよび他の肥育場動物に、肥育場への到着のときに抗菌剤を投与することが一般的になった。
【0007】
抗菌剤の使用がない場合は、ウシ呼吸器性疾患(bovine respiratory disease:BRD)は、全世界にわたってウシ産業にとって経済的損失の主要な原因の1つである。過度の致死率、体重増加の低減ならびに処置コストおよび予防コストが、その産業に重い負担を負わせている。
【0008】
ウシ呼吸器性疾患(bovine respiratory disease:BRD)は、乳牛および肉牛の両方において生じ、そして世界中にわたってウシ産業への経済的損失の主要原因の1つである。これらの経済的損失は、過度の致死率、体重増加の低減ならびに処置コストおよび予防コストに起因する。BRDはしばしば、多因子性の病因に起因して、「ウシ呼吸器性疾患複合症」といわれる。
【0009】
呼吸性疾患に起因した死亡損失のコストは、世界中で変動する。米国における死亡損失は、年間10億ドルに達すると見積もられる。欧州諸国における損失は、7500万ドルから1億2000万ドルの範囲にわたる。臨床的BRDまたは潜在性BRDを患うウシは、健康なウシほどには体重を増加させないかまたはミルクを生産しない。BRDを患う肉牛は、体重が少なく、飼料効率を低減させており、そしてしばしば、屠殺時により低品質の生肉(carcass)を生じる。Perino L.J.,Apley M.,Bovine Respiratory Disease,CURRENT VETERINARY THERAPY 4(FOOD ANIMAL PRACTICE),第4版,446−455(Howard J.L.,Smith R.A.編,1999)。屠殺時に観察される肺の病変と体重増加の低減との間の直接的な相関作用は、潜在的感染症を患うウシにおいて確認されている。Whittem T.E.ら,J.Am.Vet.Med.Assoc.,209:814−818(1996)。
【0010】
致死率および羅患率に関係した生産損失に加え、種々の治療的薬剤のコスト、およびこれらの動物を隔離および観察するための余分な労力に加えて、これらの薬剤を投与するのに必要な労力に起因して、甚大なコストがBRDの処置に関係する。
【0011】
BRDの病因は、感染性因子と結びついた、環境的ストレスおよび生理学的ストレスの相互作用に起因すると考えられている。Mannheimia(Pasteurella)haemolytica、Pasteurella multocidaおよびHaemophilus somnusは、ウシ上部気道の通常の微生物叢の一部とみなされる。環境的ストレス因子および生理学的ストレス因子が本来の抵抗性を低減しそして肺の防御機構を阻害する場合、これらの生物は増殖し、そして下部気道にコロニーを形成する。さらに、種々のウシウイルス(例えば、ウシ伝染性鼻気管炎ウイルス(IBRV)、ウシウイルス性下痢ウイルス(BVDV)、ウシ呼吸性シンシチウムウイルス(BRSV)、およびパラインフルエンザ3ウイルス(PI−3))は、肺における免疫抑制性作用を有することが公知である。
【0012】
同様に、ブタ呼吸器性疾患(swine respiratory disease:SRD)もまた、多因性の病因を有する。P.multocida、H. parasuis、Bordetella bronchiseptica、Actinobacillus pleuropneumoniae、Streptococcus suis、Salmonella cholerasuisおよびMycoplasma sp.により引き起こされる細菌性感染は、ブタにおける呼吸性疾患の原因となり、重大な経済的損失を生じる。ブタの密集、混合および移動のようなストレス、ならびに一過性ウイルス感染は、疾患の重篤度の一因となり得る。
【0013】
数年間にわたって、抗微生物治療法は、BRD治療法の中核であった。BRDの処置に対して現在利用可能な、多くの有効な抗微生物薬剤が存在する。NUFLOR(登録商標)(広域スペクトルの抗生物質フロルフェニコールの注射可能処方物)は、全世界ベースの主要な抗生物質の1つとして現れた。これは、M.haemolytica、P.multocidaおよびH.somnusに関係したBRDの処置および制御、ならびにこれらの細菌に関係したBRDの発症の高いリスクにあるウシにおける呼吸性疾患の予防のために必要とされる。NUFLOR(登録商標)はまた、Fusobacterium necrophorumおよびBacteroides melaninogenicusに関係したウシ趾間フレグモーネ(腐蹄症、急性趾間壊死杆菌症、感染性足皮膚炎)の処置のために必要とされる。NUFLOR(登録商標)は、皮下投与され得、そして筋肉内投与され得る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記製品は、代表的には、単一活性成分処方物として−代表的には、何らかの注入形態、注ぎ込み処方物(pour on formulation)または経口投与により、投与される。その処方物が注射可能な場合には、考慮される必要がある特定の要件が存在する。同じ部位または異なる部位での多数の注射は、局所的な炎症および刺激を導き得る。さらには、処置されるべき被験体は、しばしば、取り押さえられそして扱われなければならないので、その薬物を投与することに関連する労働の増加が存在する。従って、上記の問題を改善するために抗生物質を駆虫剤と組合せて両方含有する処方物を使用することは、有利である。従って、ウシ呼吸器性疾患および他の感染性疾患に関連する感染症を制御および予防し得、そして寄生虫感染を制御および予防し得る、便利に投与される安定な組成物の必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
(発明の要旨)
本発明は、ウシならびに他の動物の呼吸性疾患、寄生虫感染、寄生虫外感染、細菌感染および他の感染の処置のための、改善した組成物および方法を提供する。
【0016】
従って、動物における微生物感染および寄生虫感染の処置のための組成物が開示され、この組成物は、以下:
a)式I:
【0017】
【化2】

の化合物からなる群より選択される化合物;
b)駆虫活性を有するエンドエクトシディック(endectocidic)化合物;ならびに
c)キャリア、
を含み、
ここで、Rは、メチルまたはエチルあるいはそのハロゲン化誘導体、ジハロゲノジューテリオメチル、1−ハロゲノ−1−ジュウーテリオエチル、1,2−ジハロゲノ−1−ジューテリオエチル、アジドメチルおよびメチルスルホニルメチルからなる群より選択されるメンバーであり;
XおよびX’の各々は、NO、SO、SOR、SR、SONH、SONH、SONHR、SONHR、COR、OR、R、CN、ハロゲン、水素、フェニルならびにハロゲン、NO、R、PO、CONHR、NHR、NR、CONR、OCORまたはORによって置換されたフェニルからなる群より独立して選択されるメンバーであり、ここで、RおよびRは、以下:メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、イソブチルおよびフェニルからなる群より独立して選択されるメンバーであり;
そしてZは、水素または16個までの炭素原子を有する炭化水素カルボン酸のアシル基あるいは12個までの炭素原子を有するアミノ炭化水素カルボン酸のアシル基;およびこのアシル基の薬学的に受容可能な塩である。
【0018】
動物における微生物感染および寄生虫感染の処置のための組成物がまた開示され、その組成物は、以下:a)チルミコシンおよびツラスロマイシン(Tulathromycin)からなる群より選択されるマクロライド系抗生物質;b)駆虫活性を有するエンドエクトシディック化合物;およびc)キャリア、を含む。
【0019】
動物における微生物感染および寄生虫感染の処置のための組成物がまた開示され、その組成物は、以下:a)セフチオフールおよびセフキノームからなる群より選択されるセファロスポリン;b)駆虫活性を有するエンドエクトシディック化合物;ならびにc)キャリア、を含む。
【0020】
動物における微生物感染および寄生虫感染の処置のための組成物がまた開示され、その組成物は、以下:a)エンロフロキサシン、ダノフロキサシンおよびマルボフロキサシン(Marbofloxacin)からなる群より選択されるフルオロキノロン系抗生物質;b)駆虫活性を有するエンドエクトシディック化合物;ならびにc)キャリア、を含む。
【0021】
本発明の処方物を使用して、微生物ベースの感染および寄生虫ベースの感染を処置する方法がまた、開示される。
【0022】
(発明の詳細な説明)
本発明は、家畜におけるウシ呼吸器性疾患のような感染性疾患ならびに寄生虫感染および寄生虫外寄生の処置のための新規な組成物を提供する。これらの組成物は、駆虫性化合物、好ましくはアベルメクチンを、特定の抗菌剤(例えば、フロルフェニコール、チルミコシン、ツラスロマイシン、セフチオフール、セフキノーム,エンロフロキサシン、マルボフロキサシンまたはダノフロキサシン)と組合せて含む処方物である。
【0023】
以下の用語は、当業者に公知なように定義される。「アシル」は、H−C(O)−基、アルキル−C(O)−基、アルケニル−C(O)−基、アルキニル−C(O)−基、シクロアルキル−C(O)−基、シクロアルケニル−C(O)−基またはシクロアルキニル−C(O)−基を意味し、ここで、これら種々の基は、上記に記載されるとおりである。親部分への結合は、カルボニルを介してである。好ましいアシルは、低級アルキルを含む。適切なアシル基の非限定的な例としては、ホルミル、アセチル、プロパノイル、2−メチルプロパノイル、ブタノイルおよびシクロヘキサノイルが挙げられる。
【0024】
「アルキル」は脂肪族炭化水素基を意味し、これは直鎖状であっても分枝状であってもよく、その鎖内に1〜約20個の炭素原子を含む。好ましいアルキル基は、その鎖内に1〜12個の炭素原子を含む。より好ましいアルキル基は、その鎖内に1〜約6個の炭素原子を含む。分枝状は、1つ以上の低級アルキル基(例えば、メチル、エチルまたはプロピル)が直鎖状のアルキル鎖に結合されることを意味する。「低級アルキル」は、その鎖内に1〜約6個の炭素原子を有する基を意味し、これは直鎖状または分枝状であり得る。用語「置換アルキル」は、同じであっても異なっていてもよい1つ以上のその置換基によってアルキル基が置換され得ることを、意味する。
【0025】
「アリール」は、約6〜約14個の炭素原子、好ましくは約6〜約10個の炭素原子を含む、芳香族単環式環系または芳香族多環式環系を意味する。アリール基は、同じであっても異なっていてもよくそして本明細書中で定義されるとおりである、1つ以上の「環系置換基」で必要に応じて置換され得る。
【0026】
「アルコキシ」はアルキル−O−基を意味し、ここでこのアルキル基は上記に定義されるとおりである。適切なアルコキシ基の非限定的な例としては、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシおよびn−ブトキシが挙げられる。親部分への結合は、エーテル酸素を介してである。
【0027】
「アジド」とは、−N基をいう。
【0028】
「ハロ」および「ハロゲノ」は、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基またはヨード基を意味する。フルオロ、クロロまたはブロモが好ましく、そしてフルオロおよびクロロがより好ましい。
【0029】
「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を意味する。フッ素、塩素または臭素が好ましく、そしてフッ素および塩素がより好ましい。
【0030】
「ハロアルキル」および「ハロゲノアルキル」は、アルキル上の1つ以上の水素原子が上記のハロ基で置き換えられた、上記のようなアルキル基を意味する。
【0031】
「環系置換基」は、芳香族環系または非芳香族環系に結合した置換基を意味し、この置換基は、例えば、環系上の利用可能な水素を置き換える。環系置換基は、同じであっても異なっていてもよい。
【0032】
用語「必要に応じて置換された」は、特定された基、ラジカルまたは部分での必要に応じた置換を意味する。
【0033】
本明細書中で使用される場合、用語「組成物」は、特定された成分を特定された量で含有する生成物、ならびに特定された量の特定された成分の組み合わせから直接的または間接的に生じる任意の産物を含むように、意図される。
【0034】
「有効量」は、感染、外寄生、もしくは疾患の特定の症状を緩和するためか、または感染、外寄生もしくは疾患に対して動物を防御するために必要とされる用量である。
【0035】
本明細書中で使用される場合、用語「ウシ」とは、牛属の動物(例えば、ウシ)をいう。用語「ウシ科の動物」とは、ウシ科における動物をいい、これは、有蹄の中空有角の反芻動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ヤギ、水牛、雄牛など)を含む。本明細書中で使用される場合、用語「ブタ」とは、イノシシ科の動物をいい、これは、ブタ、イノシシ、イボイノシシを含む。
【0036】
抗生物質であるクロラムフェニコールおよびチアンフェニコールのフッ素含有アナログは、クロラムフェニコールおよびチアンフェニコールに感受性の生物ならびにクロラムフェニコールおよびチアンフェニコールに耐性の生物の両方に対して、抗生物質活性を有することが示されている。Schafer,T.W.ら,「Novel Fluorine−Containing Analogs of Chloramphenicol and Thiamphenicol:Antibacterial and Biological Properties」CURRENT CHEMOTHERAPY AND INFECTIOUS DISEASE PROCEEDINGS OF THE 11TH ICC AND THE 19TH ICAAC AMERICAN SOCIETY OF MICROBIOLOGY 1980,444−446を参照のこと。このような化合物の例およびそれらの製造方法は、米国特許第4,235,892号に記載され、そして特許請求される。医者仲間は、ヒトを処置するのに有用である抗生物質が家畜に投与される場合に、細菌耐性のヒトへの移動について、ますます関心を持つようになった。クロラムフェニコール群の抗生物質は、現在ではヒトを処置するのには稀に使用されるので、その誘導体は獣医学的使用のために特に適切である。3−フルオロ、3−デオキシ誘導体は、特に関心が持たれる。
【0037】
本発明の組成物は、駆虫化合物、好ましくはアベルメクチン、および少なくとも1つの式I:
【0038】
【化3】

の抗生物質を含み、ここで、Rは、メチルまたはエチルあるいはそのハロゲン化誘導体、ジハロゲノジューテリオメチル、1−ハロゲノ−1−ジューテリオエチル、1,2−ジハロゲノ−1−ジューテリオエチル、アジドメチルおよびメチルスルホニルメチルからなる群より選択されるメンバーであり;
XおよびX’の各々は、NO、SO、SOR、SR、SONH、SONH、SONHR、SONHR、COR、OR、R、CN、ハロゲン、水素、フェニルならびにハロゲン、NO、R、OR、PO、CONHR、NHR、NR、CONR、またはOCORによって置換されたフェニルからなる群より独立して選択されるメンバーであり、ここで、RおよびRの各々は、以下:メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、イソブチルおよびフェニルからなる群より独立して選択されるメンバーであり;
そしてZは、水素または16個までの炭素原子を有する炭化水素カルボン酸のアシル基(好ましくは、炭化水素カルボン酸)あるいは12個までの炭素原子を有するアミノ−炭化水素カルボン酸のアシル基;およびこのアシル基の薬学的に受容可能な塩である。
【0039】
式Iにおける部分Rに対して企図されるハロゲン化基としては、モノフルオロメチル基、ジフルオロメチル基およびトリフルオロメチル基、モノクロロメチル基、ジクロロメチル基およびトリクロロメチル基、モノブロモメチル基およびジブロモメチル基ならびにヨードメチル基、ならびにモノフルオロエチル基およびジフルオロエチル基、モノクロロエチル基およびジクロロエチル基、モノブロモエチル基およびジブロモエチル基ならびにヨードエチル基が挙げられ、ここで、これらハロゲン置換基は、好ましくは、カルボニル官能基に対してα位の炭素上にある。また、混成のジハロゲノアルキル基(例えば、フルオロクロロメチル基、フルオロブロモメチル基およびクロロブロモメチル基、フルオロクロロエチル基、フルオロブロモエチル基およびクロロブロモエチル基)(両方のハロゲンは、好ましくは、カルボニル基に対してα位の炭素に結合される)ならびにトリハロゲンメチル基(例えば、ジクロロフルオロメチル基およびジフルオロクロロメチル基)もまた挙げられる。
【0040】
また、式Iの化合物の中に、エステル誘導体も含まれ、それは、例えば、式Iの1−炭化水素カルボン酸エステルであり、ここで、Zは、16個までの炭素原子を有する炭化水素カルボン酸のアシル基であり、この炭化水素カルボン酸は、飽和であっても不飽和であってもよく、直鎖であっても分枝鎖であってもよく、脂肪族、環式、環式脂肪族、芳香族、アリール脂肪族またはアルキル芳香族であり得、そしてヒドロキシ、1〜5個の炭素原子を含むアルコキシ、カルボキシ、NO、NHR、NR、SR、SORまたはハロゲン(RおよびRは上記の通りである)によって置換され得る。
【0041】
式Iの他の抗細菌活性エステル誘導体は、Zが12個までの炭素原子を含むアミノ酸のアシル基であるエステル誘導体であり、ここで、Zは、飽和であっても不飽和であっても直鎖であっても分枝鎖であっても環式であってもよく、芳香族基を含んでいてもよく、そしてヒドロキシル基で置換され得る。
【0042】
好ましいエステル誘導体としては、二塩基性炭化水素カルボキシレートから導かれるエステル誘導体(例えば、1−コハク酸エステルおよび1−パルミチン酸エステル)が挙げられ、それらは、水溶性の薬学的に受容可能なカチオン塩(例えば、ナトリウム塩またはカリウム塩ならびにアミン(例えば、トリメチルアミン)との塩)を提供する。また、鉱酸または有機酸との水溶性の薬学的に受容可能な酸付加塩(例えば、塩酸付加塩または硫酸付加塩またはコハク酸付加塩)を提供する、アミノ酸のエステル誘導体もまた、好ましい。
【0043】
従って、本明細書中で使用される場合、用語「薬学的に受容可能な塩」としては、本発明の二塩基性炭化水素カルボン酸エステルの酸性水素がカチオンで置き換えられる塩(例えば、D−(スレオ)−1−p−ニトロフェニル−2−ジクロロアセトアミド−3−フルオロ−1−プロピルヘミコハク酸ナトリウム)、ならびに酸性水素がアミンと酸付加塩を形成する塩(例えば、D−(スレオ)−1−p−ニトロフェニル−2−ジクロロアセトアミド−3−フルオロ−1−プロピルヘミコハク酸N−トリメチルアミン塩)が挙げられる。式Iの化合物のアミノ酸エステルにおいて、鉱酸または有機酸とアミンとの間で形成される酸付加塩(例えば、D−(スレオ)−1−p−ニトロフェニル−2−ジクロロアセトアミド−3−フルオロ−1−プロピルグリシン酸塩酸塩)もまた含まれる。
【0044】
式Iに含まれる二塩基性炭化水素カルボン酸エステルの薬学的に受容可能なカチオン塩の中には、アルカリ金属およびアルカリ土類金属(例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アルミニウム)の塩、ならびにアミン(例えば、トリアルキルアミン、プロカイン、ジベンジルアミン、N−ベンジル−β−フェネチルアミン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、N−(低級)アルキルピペリジン(例えば、N−エチルピペリジン)およびN−メチルグルカミン)が、存在する。
【0045】
好ましくは、Rはメチルのハロゲン化誘導体またはエチルのハロゲン化誘導体であり、Zは水素であり、Xはフェニル、CORまたはSOであり、Rはメチルであり、X’は水素である。最も好ましくは、RはCHClまたはCHFである。
【0046】
本発明の化合物のプロドラッグおよび溶媒和物はまた、本明細書中に企図される。用語「プロドラッグ」は、本明細書中で用いられる場合、被験体への投与によって、代謝プロセスまたは化学プロセスにより化学的変換を受け、式Iの化合物またはその塩および/もしくはその溶媒和物を与える薬物前駆体である化合物を示す。プロドラッグに関する議論は、T.HiguchiおよびV.Stella,Pro−drugs as Novel Delivery Systems(1987)、A.C.S Symposium Seriesの14、およびBioreversible Carriers in Drug Design,(1987)Edward B.Roche編、American Pharmaceutical Association and Pergamon Press中に提供され、これらの両方が本明細書中で参考として援用される。
【0047】
「溶媒和物」とは、本発明の化合物の一つ以上の溶媒分子との物理的会合を意味する。この物理的会合は、様々な程度のイオン結合および共有結合(水素結合を含む)を伴なう。特定の事例においては、上記溶媒和物は、例えば、一つ以上の溶媒分子がその結晶性固体の結晶格子中に組み込まれている場合には、単離することが可能である。「溶媒和物」は、溶液相の溶媒和物および単離可能な溶媒和物の両方を包含する。適切な溶媒和物の非限定的な例としては、エタノレート、メタノレートなどが挙げられる。「水和物」は、上記溶媒分子がHOである溶媒和物である。
【0048】
好ましい抗生物質作用化合物は、D−(スレオ)−1−p−メチルスルホニルフェニル−2−ジクロロアセトアミド−3−フルオロ−1−プロパノールとしても公知のフロルフェニコールである。別の好ましい抗生物質作用化合物は、D−(スレオ)−1−p−メチルスルホニルフェニル−2−ジフルオロアセトアミド−3−フルオロ−1−プロパノールである。別の好ましい抗生物質作用化合物は、チアンフェニコールである。これらの好ましい抗生物質作用化合物の製造プロセス、およびこのようなプロセスで有用な中間体は、米国特許第4,311,857号、同第4,582,918号、同第4,973,750号、同第4,876,352号、同第5,227,494号、同第4,743,700号、同第5,567,844号、同第5,105,009号、同第5,382,673号、同第5,352,832号、および同第5,663,361号に記載されている。上記抗生物質作用化合物がフロルフェニコールである場合、フロルフェニコールの濃度は、代表的には、約10%w/v〜約50%w/vであり、好ましいレベルは約20%w/v〜約40%w/vであり、一層好ましいのは、少なくとも約30%w/vである。
【0049】
別の好ましい抗生物質作用化合物は、チルミコシンである。チルミコシンは、化学的には20−ジヒドロ−20−デオキシ−20−(シス−3,5−ジメチルピペリジン−1−イル)−デスミコシンと定義されるマクロライド系抗生物質であり、伝えられるところによれば、米国特許第4,820,695号に開示されている。また、米国特許第4,820,695号には、50%(体積による)のプロピレングリコール、4%(体積による)のベンジルアルコール、および50〜500mg/mlの活性成分を含む注射可能な、水性処方物が開示されている。チルミコシンは、塩基としてまたはリン酸塩として存在し得る。チルミコシンは、4日間の処置期間にわたって注射により投与される場合に、ウシにおける呼吸器性感染症、特にPasteurella haemolytica感染の処置に有用であることが見出されている。従って、チルミコシンは、例えば、新生期の仔ウシの肺炎およびウシの呼吸器性疾患の処置において使用され得る。チルミコシンが存在する場合には、それは、約1%〜約50%、好ましくは10%〜約50%、好ましくは30%の量で存在する。
4日間の処置期間にわたって注射により投与される場合に、ウシにおける呼吸器性感染症、特にPasteurella haemolytica感染の処置に有用であることが見出されている。従って、チルミコシンは、例えば、新生期の仔ウシの肺炎およびウシの呼吸器性疾患の処置において使用され得る。チルミコシンが存在する場合には、それは、約1%〜約50%、好ましくは10%〜約50%、好ましくは30%の量で存在する。
【0050】
本発明における使用のために適した別の抗生物質は、ツラスロマイシン(Tulathromycin)である。ツラスロマイシンは、以下の化学構造:
【0051】
【化4】

を有する。
【0052】
ツラスロマイシンは、1−オキサ−6−アザシクロペンタデカン−15−オン、13−[[2,6−ジデオキシ−3−C−メチル−3−O−メチル−4−C−[(プロピルアミノ)メチル]−α−L−リボ−ヘキソピラノシル]オキシ]−2−エチル−3,4,10−トリヒドロキシ−3,5,8,10,12,14−ヘキサメチル−11−[[3,4,6−トリデオキシ−3−(ジメチルアミノ)−β−D−キシロ−ヘキソピラノシル]オキシ]−、(2R,3S,4R,5R,8R,10R,11R,12S,13S,14R)と同定され得る。ツラスロマイシンは、米国特許公報第2003/0064939A1号に示される手順に従って調製され得、米国出願第2003/0064939A1号は、その全体が参考として援用される。ツラスロマイシンは、約5.0重量%〜約70重量%の範囲にわたる濃度レベルでの注射可能投薬形態で存在し得る。ツラスロマイシンは、最も望ましくは、範囲の投薬量で投与される。ツラスロマイシンは、約5.0重量%〜約70重量%の範囲にわたる濃度レベルでの注射可能投薬形態で存在し得る。
【0053】
また、本発明における使用のために好ましい抗生物質としては、例えばセフチオフール、セフキノームなどのようなセファロスポリン類が挙げられる。本発明の処方物におけるこのセファロスポリンの濃度は、約1mg/mlと500mg/mlとの間で変動し得る。
【0054】
また、好ましい抗生物質としては、例えばエンロフロキサシン、ダノフロキサシン、ジフロキサシン(Difloxacin)、オルビフロキサシン(Orbifloxacin)、およびマルボフロキサシン(Marbofloxacin)などのようなフルオロキノロンが挙げられる。エンロフロキサシンの場合には、それは、約100mg/mlの濃度で投与され得る。ダノフロキサシンは、約180mg/mlの濃度で存在し得る。
【0055】
他の好ましいマクロライド系抗生物質としては、ケトライド(ketolide)、またはより具体的には、アザライド(azalide)のクラスからの化合物が挙げられる。そのような化合物は、例えば、Pfizerに譲渡された米国特許第6,514,945号、同第6,472,371号、同第6,270,768号、同第6,437,151号およびMerialに譲渡された米国特許第6,239,112号、同第5,958,888号、ならびにMerck & Co.に譲渡された米国特許第6,339,063号、同第6,054,434号に記載され、これらの米国特許はそれらの全体が参考として援用される。
【0056】
他の抗生物質としては、テトラサイクリン、特にクロルテトラサイクリンおよびオキシテトラサイクリンが挙げられ得る。他の抗生物質としては、ペニシリンのようなβ−ラクタム(例えば、ペニシリン、アンピシリン、アモキシシリン)またはアモキシシリンとクラブラン酸との組合わもしくはアモキシシリンと他のβ−ラクタマーゼインヒビターとの組合わせが挙げられ得る。
【0057】
さらには、本発明は、動物における微生物感染および寄生虫感染の処置のための組成物を含み得、その組成物は、以下:a)オキシテトラサイクリン;b)イベルメクチン、ドラメクチン(Doramectin)、アバメクチン、セラメクチン(Selamectin)、エマメクチン(Emamectin)、エピリノメクチン(Epirinomectin)、モキシデクチンおよびミルベマイシン(Milbemycin)のような、駆虫活性を有するエンドエクトシディック化合物;およびc)少なくとも1種のキャリア、を含む。
【0058】
本発明の範囲内で有用な駆虫化合物は、好ましくはアベルメクチン化合物のクラスから構成される。上述のように、アベルメクチンファミリーの化合物は、一連の非常に強力な駆虫剤であり、哺乳動物の広域スペクトルの内部寄生虫および外部寄生虫に対して有用であることが公知である。本発明の組成物は、内部の寄生虫感染および外部の寄生虫外寄生の両方に対して有用である。
【0059】
本発明の範囲内での使用のための好ましい化合物は、イベルメクチンである。イベルメクチンは、アベルメクチンの半合成誘導体であり、一般に、少なくとも80%の22,23−ジヒドロアベルメクチンB1および20%未満の22,23−ジヒドロアベルメクチンB1の混合物として製造される。イベルメクチンは、米国特許第4,199,569号(本明細書により参考として援用される)に開示される。イベルメクチンは、種々の動物の寄生虫および寄生虫疾患を処置するための駆虫剤として、1980年代半ばから使用されている。
【0060】
アバメクチンは、米国特許第4,310,519号(その全体が、本明細書中に参考として援用される)に、アベルメクチンB1a/B1bとして開示される、アベルメクチンである。アバメクチンは、少なくとも80%のアベルメクチンB1および20%以下のアベルメクチンB1を含有する。
【0061】
別の好ましいアベルメクチンは、25−シクロヘキシル−アベルメクチンBとしても公知のドラメクチンである。ドラメクチンの構造と調製は、米国特許第5,089,480号に開示され、この米国特許第5,089,480号は、本明細書中に参考として援用される。
【0062】
別の好ましいアベルメクチンは、モキシデクチンである。LL−F28249αとしても公知のモキシデクチンは、米国特許第4,916,154号から公知であり、この米国特許第4,916,154号は、本明細書中に参考として援用される。
【0063】
別の好ましいアベルメクチンは、セラメクチンである。セラメクチンは、25−シクロヘキシル−25−デ(1−メチルプロピル)−5−デオキシ−22,23−ジヒドロ−5−(ヒドロキシイミノ)アベルメクチンB単糖である。
【0064】
ミルベマイシン(Milbemycin)またはB−41は、Streptomycesの株を産生するMilbemycinの発酵ブロスから単離される物質である。この微生物、その発酵条件および単離手順は、米国特許第3,950,360号および同第3,984,564号により十分に記載される。
【0065】
エマメクチン(4’’−デオキシ−4’’エピメチルアミノアベルメクチンB)は、米国特許第5,288,710号または同第5,399,717号に記載されるように調製され得、それは、4’’−デオキシ−4’’−エピ−メチルアミノアベルメクチンB1aおよび4’’−デオキシ−4’’−エピ−メチルアミノアベルメクチンB1bという2つのホモログの混合物である。好ましくは、エマメクチンの塩が使用される。本発明において使用され得るエマメクチンの塩の非限定的な例としては、米国特許第5,288,710号に記載される塩、例えば、安息香酸、置換安息香酸、ベンゼンスルホン酸、クエン酸、リン酸、酒石酸、マレイン酸などから誘導される塩が挙げられる。最も好ましくは、本発明において使用されるエマメクチン塩は、安息香酸エマメクチンである。
【0066】
エプリノメクチンは、化学的には4’’−エピ−アセチルアミノ−4’’−デオキシ−アベルメクチンBとして公知である。エプリノメクチンは、すべてのウシのクラスおよび年齢のグループにおいて使用されるよう特異的に開発された。それは、肉や牛乳の中に最小の残渣を残しつつも、内部寄生虫および外部寄生虫の両方に対して広域スペクトルの活性を示す、最初のアベルメクチンであった。それは、局所送達与された場合に、非常に強力であるというさらなる利点を有する。
【0067】
本発明の組成物はまた、殺吸虫剤(flukicide)をさらに含み得る。適切な殺吸虫剤としては、例えば、トリクラベンダゾール、フェンベンダゾール、アルベンダゾール、クロルサロン(Clorsulon)およびオキシベンダゾールが挙げられる。上記の組合わせは、抗生物質、駆虫剤および抗吸虫活性化合物をさらに含み得ることが理解される。
【0068】
本発明の処方物は、注射により投与され得る。組合わせ生成物処方物の使用のより大きい便宜および容易さに加えて、本発明に従う組合わせ生成物の毎日1回の皮下投与は、動物を処置するために必要とされる注射の数を減らすことにより、思いやりのある動物医療を促す。注射の数を減らすことにより、人的資源コストも、相当に低減され得る。あるいは、本発明の処方物は、注ぎ込み溶液(pour on solution)として投与され得る。別の実施形態では、本発明の処方物は、例えば、経口投与され得(例えば、食品添加物またはペースト)、非経口投与され得る(例えば、静脈内投与により)。
【0069】
本発明の処方物の残りの部分は、薬学的に受容可能なキャリアであり、このキャリアは少なくとも1種の溶媒を含む。この薬学的に受容可能なキャリアは、上記処方物の約15%〜約80%を構成する。
【0070】
フロルフェニコールは、一般的に、非プロトン性極性溶媒(例えば、ピロリドン溶媒、またはN,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、DMSO、アセトンあるいはグリセロールホルマール)に可溶である。好ましいピロリドン溶媒は、N−メチル−2−ピロリドン、および2−ピロリドンである。従って、フロルフェニコールまたは類似の抗生物質を含む本発明の処方物における使用のために、このような非プロトン性極性溶媒(またはこれらの溶媒の組み合わせ)が好ましい。好ましくは、このような溶媒は、処方物の約5重量%〜約80重量%で存在する。より好ましくは、このような溶媒は、処方物の約10%〜約35%で存在する。
【0071】
他の薬学的に受容可能な溶媒が、本発明の処方物に存在し得る。適切な溶媒としては、水、エタノール、イソプロパノール、1,2−プロパンジオール、グリセリン、ベンジルアルコール、トリアセチン、ジメチルイソソルビド、ジメチルイソソルビド、トリアセチン、グリコールエーテル、モノチオグルセロール、プロピレングリコール、およびポリエチレングリコール(PEG)が挙げられる。特に好ましい溶媒としては、約200〜約400の間の平均分子量を有するPEG、トリアセチン、ジメチルイソソルビド、エタノール、および水、ならびにこれらを組み合わせが挙げられる。これらの溶媒は、処方物の0%〜約75%を構成し得る。好ましくは、これらの溶媒は、約15%〜約60%を構成する。より好ましくは、これらの溶媒は、処方物の約40%〜約55%を構成する。
【0072】
1種以上のこのようなさらなる溶媒の添加は、実行可能な注射可能性を生成物に与えるために、処方物の粘性を減少させるのに望ましくあり得る。本発明の処方物の粘性を調節するために特に有用な溶媒の例としては、水、エタノール、イソプロパノール、プロピレングリコール、ジメチルイソソルビド、およびトリアセチン、ならびにそれらを組み合わせが挙げられる。
【0073】
所望である場合、他の不活性成分が本組成物に添加され得る。そのような成分としては、防腐剤、キレート剤、酸化防止剤、および安定剤が挙げられる。例示的な防腐剤としては、メチルp−ヒドロキシベンゾエート(メチルパラベン)、およびプロピルp−ヒドロキシベンゾエート(プロピルパラベン)が挙げられる。例示的なキレート剤としては、エデト酸ナトリウムが挙げられる。例示的な酸化防止剤としては、ブチル化ヒドロキシアニソール、およびモノチオグリセロールナトリウムが挙げられる。
【0074】
本発明の組成物を調製するために、ビヒクルまたはビヒクルの一部を、配合容器に添加し、その後、残りの賦形剤と活性剤を添加する。混合物を、すべての固体が溶解するまで混ぜる。必要な場合には、組成物を最終容積まで合わせるために付加溶媒を添加し得る。添加物(例えば、上記で列挙したような添加物)もまた、その容器中に含まれ得、処方物中に混合し得る(添加の順序は重要ではない)。
【0075】
上記抗生物質がフロルフェニコールである場合、本発明に従う組成物は、一般的にウシ(cattle)に対して、体重1kg当たり約1mg〜約100mgの抗菌剤が投与される。好ましくは、本発明の組成物はウシ(bovine)に対して、体重1kg当たり約20mg〜約50mgの抗菌剤が投与される。より好ましくは、その用量は、約40mg/kgの抗菌剤である。本発明に従う組成物は、一般的にブタに対して、体重1kg当たり15mg〜約100mgの抗菌剤の用量として投与される。好ましくは、本発明の組成物は、ブタに対して、体重1kg当たり約20mg〜約50mgの抗菌剤が投与される。
【0076】
好ましくは、上記抗生物質がチルミコシンである場合、チルミコシンの用量は、約10mg/kgである。ツラスロマイシンは、最も好ましくは、単一用量または分割用量(すなわち、1日あたり1〜4用量)で、1日あたり、体重1kgあたり約0.2mg(mg/kg/日)〜約200mg/kg/日の範囲の投薬で、より好ましくは、単一用量として1.25mg/kg、2.5mg/kgまたは5mg/kgで投与されるが、変動は、処置されようとする被験体の種、体重および状態に依存して、必然的に生じる。
【0077】
好ましくは、塩酸セフチオフールに対しては、その濃度は約50mg/mlである。それは、体重1kgあたり1〜2.2mgとして、連続3〜5日の間、24時間間隔で、筋内注射または皮下注射により、投与され得る。
【0078】
単一用量治療に対しては、エンロフロキサシンは、体重1キログラムあたり7.5〜12.5ミリグラムのエンロフロキサシンを投与される。多数日治療に対しては、それは、3〜5日間、1日1回、皮下注射により、投与される体重1キログラムあたり2.5〜5.0ミリグラムを投与され得る。ダノフロキサシンの場合には、それは、約180mg/kgの濃度で、体重1kgあたり6mgの用量で、単一用量または複数用量で投与され得る。
【0079】
ウシに対しては、エンデクトシド(endectocide)50キログラムあたり10ミリグラムを投与する。それは、ウシにおいて、胃腸の線虫(成虫および第4段階の幼虫)(Haemonchus placei、Ostertagia ostertagi(阻害された幼虫を含む)O.Iyrata、Trichostrongylus axei、T.colubriformis、Cooperia oncophora、C.punctata、C.pectinata、Oesophagostomum radiatum、Nematodirus helvetianus(成虫のみ)、N.spathiger(成虫のみ)、Bunostomum phlebotomum);肺虫(成虫および第4段階の幼虫)(Dictyocaulus viviparus);地虫(第1虫齢、第2虫齢、および第3虫齢)(Hypoderma bovis、H.lineatum);シラミ(Linognathus vituli、Haematopinus eurysternus、Solenopotes capillatus);ダニ(Psoroptes ovis(syn.P.communis var.bovis)、Sarcoptes scabiei var.bovis、の処置および制御のために、使用される。それはまた、処置後28日間のD.viparusの感染および処置後21日間のO.ostertagiの感染、ならびに処置後14日間のH.placei、T.axei、C.punctata、C.oncophora、およびOesophagostomum radiatumの感染を制御するために使用される。
【0080】
ドラメクチンが、ウシにおける使用のために存在する場合には、単一の皮下注射または単一の筋内注射として、1キログラムあたり200ミリグラム(110ポンドあたり10ミリグラム)を投与する。ドラメクチンは、胃腸の回虫、肺虫、目虫(eyeworm)、地虫、吸血シラミ、および疥癬ダニ(mange mite)の処置および制御のために必要とされる。処置後14日間、Cooperia oncophoraおよびHaemonchus placeiによる感染を制御し、そして処置後14日間、Cooperia oncophoraおよびHaemonchus placeiによる再感染を防止するために、処置後21日間、Ostertagia ostertagiによる感染を制御し、そして処置後21日間、Ostertagia ostertagiによる再感染を防止するために、ならびに処置後28日間、C.punctata、Oesophagostomum radiatum、およびDictyocaulus viviparusによる感染を制御し、そして処置後28日間、C.punctata、Oesophagostomum radiatum、およびDictyocaulus viviparusによる再感染を防止するために。ブタに対しては、単一の筋内注射として、1キログラムあたり300マイクログラム(75ポンドあたり10ミリグラム)を投与する。それは、胃腸の回虫、肺虫、腎虫(kidney worm)、吸血シラミ、および疥癬ダニの処置および制御のために必要とされる。
【0081】
他の駆虫性化合物のための他の用量は、当業者により把握され得る。
【0082】
上記組成物は、1日1回用量または多数の用量に分割して投与され得る。しばしば、ただ1回の用量が、上記感染を処置するに十分である。ある状況では、1回の用量および48時間後の引き続く第2の用量が、上記動物を処置するために必要とされる。その正確な用量は、当業者に理解されるとおり、感染の段階および重篤度、感染する生物の上記組成物に対する感受性、および処置されようとする動物種の個体特性に依存する。
【0083】
本発明に従う組成物は、ウシおよび他のウシ科の動物、ブタ、および他の大きい哺乳動物のために、特に有用である。ウシ呼吸性疾患の処置に加えて、本発明の組成物はまた、ブタ呼吸性疾患、腐蹄症、急性乳房炎、急性カタル性結膜炎(伝染性角結膜炎)、急性肺炎、子宮炎および腸炎のような感染症の処置に適している。このような疾患の処置のための投薬レジメンは、上記されたとおりである。
【0084】
急性カタル性結膜炎は、ウシ、ヒツジおよび他の動物における急性感染性疾患であり、目の組織の炎症によって特徴付けられ、鼻の分泌物、流涙、および大量の眼漏を伴って起こる。発症した動物は、極度の不快感を示し得、乳の生産の低下を生じ得;極端な事例では、永久的な失明が生じる。ウシにおけるMoraxella bovisによって引き起こされるこの疾患は、特に放牧されているウシおよび肥育場のウシの間で流行しており、ウシ産業にとって大きな経済的重要性を有している。
【0085】
腐蹄症(指趾間部蜂巣炎)は、指趾間部腔の急性感染症であり、世界中で肉用ウシおよび乳牛の両方に起こる感染症である。Fusobacterium necrophorumが、腐蹄症の主要な原因であるが、他の生物体(Bacteroides melaninogenicusを含む)も関与し得る。主な症状としては、疼痛、重度の歩行困難、発熱、摂食障害、および乳の生産の減少が挙げられる。
【0086】
現在のところ、腐蹄症は抗生物質治療により処置され;推奨される治療は、5日間までの処置を含み得る。腐蹄症の処置のための本発明の処方物の使用は、現在の既知の処置を超える改善である。なぜなら、それは、フロルフェニコールの証明された効力(より少ない投与を用いて)を提供するからである。本発明の組成物はまた、これらの疾患が発症する危険性の高い動物におけるこれらの疾患の予防に対しても有用である。例えば、本発明の特許請求の範囲の組成物は、ウシ呼吸器性疾患の処置として推奨される量と同じ投薬量を、ウシ呼吸器性疾患が発症する危険性の高いウシに投与し得る。
【0087】
本発明は、以下の非限定的な実施例においてより詳しく記載される。
【実施例】
【0088】
(実施例1)
本発明の範囲の処方物を、当該分野で慣用的な手順に従って調製した。その処方物は、以下の表に示される、以下の成分濃度を含有した。
【0089】
【化5】

上記処方物は、以下の表に示されるように、温度サイクルに供され、そして高性能液体クロマトグラフィーによりアッセイされた場合に、受容可能な安定性プロフィールを実証した。
【0090】
【化6】

(実施例2)
実施例1に従って調製された処方物を、動物に投与した。以下の研究を、実施例1に従って調製された処方物を用いて実施した。10頭の仔ウシに、40mg/kgのフロルフェニコール用量および0.2mg/kgのイベルメクチン用量の単一の皮下注射として投与される実施例1の処方物を投与したか、またはその仔ウシに、0.2mg/kgの単一のイベルメクチン用量を投与したかのいずれかであった。平均の血清濃度を決定した。実施例1の処方物を、また、単一の活性薬剤としてのフロルフェニコールの市販されている処方物の投与によって以前に得られたデータに対して比較した。実施例1の処方物は、単一の活性薬剤としてフロルフェニコールまたはイベルメクチンのいずれかを含む市販されている処方物の投与によって得られた平均血清レベルのような、投与後に得られた受容可能な平均血清レベルを達成した。
【0091】
本発明の特定の現時点での好ましい実施形態が本明細書中に記載されているが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、記載される実施形態のバリエーションおよび改変がなされ得ることことは、本発明が関係する当業者にとって明白である。従って、本発明は添付の特許請求の範囲および法の適用可能な規則によって要求される程度にのみ限定されることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物の微生物感染および寄生虫感染の処置のための組成物であって、該組成物は、以下:
a)式I:
【化1】

の化合物からなる群より選択される化合物;
b)駆虫活性を有するエンドエクトシディック化合物;ならびに
c)少なくとも1種のキャリア、
を含み、
ここで、Rは、メチルまたはエチルあるいはそのハロゲン化誘導体、ジハロゲノジューテリオメチル、1−ハロゲノ−1−ジュウーテリオエチル、1,2−ジハロゲノ−1−ジューテリオエチル、アジドメチルおよびメチルスルホニルメチルからなる群より選択されるメンバーであり;
XおよびX’の各々は、NO、SO、SOR、SR、SONH、SONH、SONHR、SONHR、COR、OR、R、CN、ハロゲン、水素、フェニルならびにハロゲン、NO、R、PO、CONHR、NHR、NR、CONR、OCORまたはORによって置換されたフェニルからなる群より独立して選択されるメンバーであり、ここで、RおよびRの各々は、以下:メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、イソブチルおよびフェニルからなる群より独立して選択されるメンバーであり;
そしてZは、水素または16個までの炭素原子を有する炭化水素カルボン酸のアシル基あるいは12個までの炭素原子を有するアミノ炭化水素カルボン酸のアシル基;および該アシル基の薬学的に受容可能な塩である、組成物。
【請求項2】
Rがメチルまたはエチルのハロゲン化誘導体である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
RがCHClまたはCHFである、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
Zが水素であり、XがSOまたはフェニルであり、そしてX’が水素である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
がメチルである、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
式Iの化合物が、フロルフェニコールであり、該フロルフェニコールが、約10%w/v〜約50%w/vの量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記エンドエクトシディック化合物が、アベルメクチンであり、該アベルメクチンが、イベルメクチン、ドラメクチン、アバメクチン、セラメクチン、エマメクチン、エプリノメクチン、モキシデクチン、およびミルベマイシンからなる群より選択される化合物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記アベルメクチン化合物が、約0.03%w/v〜約20%w/vの量で存在する、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記アベルメクチン化合物が、イベルメクチンである、請求項7に記載の組成物。
【請求項10】
前記少なくとも1種のキャリアが、溶媒である、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記溶媒が、約15%w/v〜約80%w/vの量で存在する、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記溶媒が、ピロリドン溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、DMSO、アセトン、グリセロールホルマールおよびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項10に記載の組成物。
【請求項13】
前記溶媒が、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドンおよびそれらの組合わせからなる群より選択されるピロリドン溶媒である、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
第2の溶媒をさらに含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項15】
前記第2の溶媒が、水、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、トリアセチン、ジメチル−イソソルビド、エタノール、イソプロパノール、グリセリン、1,2−プロパンジオール、グリコールエーテル、ベンジルアルコールおよびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
動物の微生物感染および寄生虫感染の処置のための組成物であって、該組成物は、以下:
a)チルミコシンおよびツラスロマイシンからなる群より選択されるマクロライド系抗生物質;
b)駆虫活性を有するエンドエクトシディック化合物;ならびに
c)少なくとも1種のキャリア
を含む、組成物。
【請求項17】
前記エンドエクトシディック化合物が、アベルメクチンであり、該アベルメクチンが、イベルメクチン、ドラメクチン、アバメクチン、セラメクチン、エマメクチン、エプリノメクチン、モキシデクチン、およびミルベマイシンからなる群より選択される化合物である、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記アベルメクチン化合物が、約0.03%w/v〜約20%w/vの量で存在する、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記少なくとも1種のキャリアが、溶媒である、請求項16に記載の組成物。
【請求項20】
前記溶媒が、約15%w/v〜約80%w/vの量で存在する、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記溶媒が、ピロリドン溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、DMSO、アセトン、グリセロールホルマール、水、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、トリアセチン、ジメチル−イソソルビド、エタノール、イソプロパノール、グリセリン、1,2−プロパンジオール、グリコールエーテル、モノチオグリセロール、ベンジルアルコールおよびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項19に記載の組成物。
【請求項22】
動物の微生物感染および寄生虫感染の処置のための組成物であって、該組成物は、以下:
a)セフチオフルまたはセフキノムからなる群より選択されるセファロスポリン;
b)駆虫活性を有するエンドエクトシディック化合物;および
c)少なくとも1種のキャリア
を含む、組成物。
【請求項23】
前記エンドエクトシディック化合物が、アベルメクチンであり、該アベルメクチンが、イベルメクチン、ドラメクチン、アバメクチン、セラメクチン、エマメクチン、エプリノメクチン、モキシデクチン、およびミルベマイシンからなる群より選択される化合物であ、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
前記アベルメクチン化合物が、約0.03%w/v〜約20%w/vの量で存在する、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
前記少なくとも1種のキャリアが、溶媒であり、該溶媒が、ピロリドン溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、DMSO、アセトン、グリセロールホルマール、水、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、トリアセチン、ジメチル−イソソルビド、エタノール、イソプロパノール、グリセリン、1,2−プロパンジオール、グリコールエーテル、モノチオグリセロール、ベンジルアルコールおよびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項22に記載の組成物。
【請求項26】
前記溶媒が、約15%w/v〜約80%w/vの量で存在する、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
動物の微生物感染および寄生虫感染の処置のための組成物であって、該組成物は、以下:
a)エンロフロキサシン、ダノフロキサシンおよびマルボフロキサシンからなる群より選択されるフルオロキノロン系抗生物質;
b)駆虫活性を有するエンドエクトシディック化合物;ならびに
c)少なくとも1種のキャリア
を含む、組成物。
【請求項28】
前記エンドエクトシディック化合物が、アベルメクチンであり、該アベルメクチンが、イベルメクチン、ドラメクチン、アバメクチン、セラメクチン、エマメクチン、エプリノメクチン、モキシデクチン、およびミルベマイシンからなる群より選択される化合物である、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
前記アベルメクチン化合物が、約0.03%w/v〜約20%w/vの量で存在する、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
前記少なくとも1種のキャリアが、溶媒であり、該溶媒が、ピロリドン溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、DMSO、アセトン、グリセロールホルマール、水、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、トリアセチン、ジメチル−イソソルビド、エタノール、イソプロパノール、グリセリン、1,2−プロパンジオール、グリコールエーテル、モノチオグリセロール、ベンジルアルコールおよびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項27に記載の組成物。
【請求項31】
前記溶媒が、約15%w/v〜約80%w/vの量で存在する、請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
殺吸虫剤をさらに含む、請求項1、16、22または27のいずれかに記載の組成物。
【請求項33】
ウシ呼吸器性疾患および動物の寄生虫感染を処置する方法であって、該方法は、
そのような処置を必要とする動物に、治療有効量の請求項1、16、22、27または32のいずれかに記載の組成物を皮下投与する工程
を包含する、方法。

【公表番号】特表2006−522147(P2006−522147A)
【公表日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−509616(P2006−509616)
【出願日】平成16年4月1日(2004.4.1)
【国際出願番号】PCT/US2004/010143
【国際公開番号】WO2004/089355
【国際公開日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【出願人】(505361750)シェーリング−プラウ リミテッド (7)
【Fターム(参考)】